JP3578902B2 - リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はリチウム二次電池の改良、特に正極活物質の改良に関わり、電池の充放電容量及びサイクル特性の向上を意図するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池の正極活物質として、マンガンとリチウムの複合酸化物であるLiMn2 O4 が提案され、研究が盛んに行われている。高電圧・高エネルギー密度という特徴を有しているものの、充放電サイクル寿命が短いといった課題を有しており、実用電池としての利用には至っていない。これまで、特開平7−282798等に開示されているようにリチウムを過剰にしてLi1+X Mn2−X O4 としたり、特開平3−108261、特開平3−219571等に開示されているようにマンガンの一部をCo、Cr等の他の金属で置換してLiMn2−X CoX O4 、LiMn2−X CrX 04 として、リチウムマンガン酸化物の改質を図り、サイクル特性を改良することが提案されているがこれらの改質方法では充放電容量の低下を招くため、充放電容量を低下させることなくサイクル特性が改善されたリチウムマンガン酸化物が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、充放電容量を高い値に維持しつつも、充放電サイクルに伴う容量劣化の少ないスピネル系リチウムマンガン酸化物を正極活物質材料としたリチウムイオン二次電池を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
課題解決の手段は、正極の主たる活物質として一般式
【0005】
【化2】
Li( Mn2−x Lix ) O4
【0006】
(ただし、0≦X≦0. 05)で示される立方晶スピネル結晶のX線回折パターンにおける不均一歪ηが、0≦η≦0 . 75×10 -3 の範囲にあるリチウムマンガン酸化物を使用することにある。スピネル系リチウムマンガン酸化物(LiMn2 O4 )を正極活物質とした電池において、4V(Li対極の時)領域における正極の充放電反応は次式で示される。
【0007】
【数2】
LiMn2 O4 ⇔Li1−n Mn2 O4 +nLi+ +ne− (2)
【0008】
従来、スピネル系リチウムマンガン酸化物は、上記充放電反応を繰り返して行わせると、充放電機能を失い易いという性質を有している。そこでLiを過剰に仕込んで合成したり、Mnサイトの一部をCo、Crなどの金属で置換することで結晶構造を緻密化し、充放電機能の低下を改善することが可能である。しかし、Mnサイトの他の陽イオン置換に着目した従来の手法では容量が小さくなってしまうという欠点があるので、根本的な改善法とは言い難い。
そこで本発明者らは鋭意検討を行った結果、電池特性と結晶子の不均一歪との間に相関があり、不均一歪の増大に伴い、電池特性が低下することを見出した。すなわち、一定以上に高容量を維持しつつも充放電サイクルに伴う容量劣化の少ないスピネル系リチウムマンガン酸化物は、Li/Mnモル比が定比近傍であって、かつX線回折パターンにおける結晶子の不均一歪が規定値以下に小さいことを実験的につきとめた。
【0009】
このような不均一歪の発生にはいくつかの理由があると考えられるが、主として以下に記述する2点が大きく影響していると推察される。一つは、Li/Mn比が定比近傍のリチウムマンガン酸化物を合成した場合、その比率が1/2に限りなく近づく程、そのMn平均原子価は低下し、Li過剰の場合と比較して、Mn3+Jahn−Tellerイオンの割合が多くなる。そのため、結晶構造に不均一な歪みがより生じ易くなる。もう一つはMn出発原料の粒子サイズがばらついていると、反応が不均一に進行するためこれによって組成変動が起こり、結晶子の不均一歪が発生する。この場合、Liがある程度過剰のものであっても不均一歪が生成すると考えられる。これらの理由によって、サイクル特性が悪かったものと考えられる。したがって、適当な出発原料を使用したり、好ましい合成法を適用しないと規定した範囲内のものを得るのは容易ではない。
【0010】
立方晶LiMn2 O4 の不均一歪とサイクル特性の相関は既に電気化学会第64回大会要旨集[3A10],p31(1997)、電池技術委員会資料9−7で報告されており、不均一歪の小さいものはサイクル特性が良好であると指摘している。しかし、MnサイトへのLi置換量や不均一歪の範囲については何ら言及されていない。本願発明では、Li( Mn2−x Lix ) O4 のX値及び不均一歪ηと容量・サイクル特性バランスとの相関を調べたところ、X, ηが規定された範囲にあるものが容量・サイクル特性バランスに優れ、これを逸脱すると本願発明を満たす性能が発揮されないことが分かった。
【0011】
以上より、一般式Li( Mn2−x Lix ) O4 のX値を限定し、X線回折パターンにおける結晶子の不均一歪を限定することによって高い容量を維持させながらサイクル特性を改善することが可能となり、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、一般式
【0012】
【化3】
Li( Mn2−x Lix ) O4
【0013】
(ただし、0≦X≦0. 05) で示され、かつ、そのX線回折パターンにおける結晶子の不均一歪ηが式(1)
【0014】
【数3】
βcos θ=λ/D+2ηsin θ (1)
【0015】
(ただし、βは積分幅(rad) 、θは回折角(°)、λは1.54056Å(CuK α)、Dは結晶子サイズ(Å)、ηは結晶子の不均一歪を表す。)において、0≦η≦0 . 75×10 -3 の範囲にあるスピネル系リチウム含有金属酸化物を使用することにより、初期放電容量が大きく、加えてサイクル特性に優れているので100th後の放電容量が115mAh/g以上のものが得られる。
【0016】
なお、本発明では正極活物質となるLi( Mn2-x LiX ) O4 (ただし、0≦X≦0. 05)で示される立方晶スピネル結晶におけるLi過剰量が0≦X≦0. 05、X線回折パターンにおける不均一歪ηが、0≦η≦0 . 75×10 -3 の範囲にあると規定しているがこの範囲は電池系において正極活物質からリチウムが脱ドープされる前の初期の状態の範囲を示している。この範囲を逸脱すると所望の電池特性を得るのが困難となる。なお酸素量に関しては形式的に4と記載しているが、その不定比性は公知であり、特に限定されないが定比に近いほど好ましい。
【0017】
このようなLi( Mn2−x Lix ) O4 は、マンガン化合物とリチウム化合物を出発原料として混合した混合物を焼成することで生成される。混合は通常の方法でよく、両原料を乾式混合する方法、湿式混合する方法、リチウム塩水溶液中にマンガン化合物を懸濁させた後、該懸濁液を乾燥する方法、共沈させる方法、または、ボールミルで粉砕混合する方法など均一に混合できる方法であればよい。
【0018】
この出発原料に用いられるリチウム化合物としては、Li2 CO3 、LiNO3 、LiOH、LiOH・H2 O、LiCl、CH3 COOLi、Li2 Oジカルボン酸Li等が挙げられ、中でもLiOH・H2 O、LiOHあるいはジカルボン酸Liを用いることが好ましい。
【0019】
また、マンガン化合物としては、粒子サイズにばらつきのないものが好ましい。具体的には、Mn2 O3 等のマンガン酸化物、MnCO3 、Mn(NO3 )2 、ジカルボン酸マンガン等のマンガン塩等が挙げられるが、中でもMn2 O3 、ジカルボン酸マンガンを用いることが好ましく、この場合のMn2 O3 はMnCO3 やMnO2 などの化合物を適切に熱処理して作製したものを用いても構わない。なお、γ− MnO2 は凝集粒子サイズのばらつきが比較的大きいのでこれとLi出発原料を直接反応させるのは好ましくない。
【0020】
本発明のリチウムマンガン酸化物は、例えば特願平8−120068、特願平8−125574、特願平9−077235、特願平9−089568に開示されている方法で作製すると比較的容易に得られる。具体的な製造方法の一例として、γ−MnO2 を800℃で24時間、大気中で加熱して得たMn2 O3 とLiOH・H2 OをLiとMnのモル比で1:2になるように混合した混合物を仮焼後、800℃、24時間、大気中で本焼した後、600℃、500℃、450℃、400℃、350℃と各3時間ずつ保持しながら段階的に1℃/min.の速度で降温し、350℃以降から炉冷する方法や、リチウム塩とマンガン塩の非水溶液をジカルボン酸塩共沈法により共沈させた粉末を焼成する方法などを挙げることができる。この時のサンプルの冷却方法としては急冷すると酸素欠損が生じやすくなるので好ましくない。
なお、本発明は先に示した製造方法によって何ら限定されるものではない。
【0021】
以上のような一般式Li( Mn2−x Lix ) O4 (ただし、0≦X≦0. 05)を持ち、結晶子の不均一歪の範囲を規定したスピネル系リチウムマンガン酸化物よりなる正極と組み合わせて用いられる負極活物質としては、通常、この種の非水電解液二次電池に用いられる材料がいずれも使用可能である。
【0022】
例えば、リチウムやリチウム合金であってもよいが、より安全性の高いリチウムを挿入・放出できる化合物、特には炭素材料が好ましい。この炭素材料は特に限定されないが、黒鉛、及び石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0023】
負極は、負極活物質と結着剤( バインダー) とを溶媒でスラリー化したものを塗布し乾燥したものを用いることができる。
正極は、正極活物質と結着剤( バインダー) と導電剤とを溶媒でスラリー化したものを塗布し乾燥したものを用いることができる。
負極、正極活物質の結着剤( バインダー) としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM( エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体) 、SBR( スチレン−ブタジエンゴム) 、NBR( アクリロニトリル−ブタジエンゴム) 、フッ素ゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
正極の導電剤としては、黒鉛の微粒子、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等が使用されるが、これらに限定されない。
また、セパレーターを使用する場合には、通常、セパレーターとして、微多孔性の高分子フィルムが用いられ、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子よりなるものが用いられる。セパレーターの化学的及び電気化学的安定性は重要な因子である。この点からポリオレフィン系高分子が好ましく、電池セパレーターの目的の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが望ましい。
【0025】
ポリエチレンセパレーターの場合、高温形状維持性の点から超高分子量ポリエチレンであることが好ましく、その分子量の下限は好ましくは50万、さらに好ましくは100万、最も好ましくは150万である。他方分子量の上限は、好ましくは500万、更に好ましくは400万、最も好ましくは300万である。分子量が大きすぎると、流動性が低すぎて加熱された時セパレーターの孔が閉塞しない場合があるからである。
【0026】
また、本発明のリチウム二次電池におけるイオン伝導体には、たとえば公知の有機電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いることができるが、中でも有機電解液が好ましい。有機電解液は、有機溶媒と溶質から構成される。
【0027】
有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。これらの代表的なものを列挙すると、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等の単独もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
【0028】
また、この溶媒に溶解させる溶質としては、従来公知のいずれもが使用でき、LiCl4 、LiAsF6 、LiPF6 、LiBF4 、LiB(C6 H5 )4 、LiCl、LiBr、CH3 SO3 Li、CF3 SO3 Li等が用いられる。
高分子固体電解質を使用する場合にも、この高分子化合物に公知のものを用いることができ、特にリチウムイオンに対するイオン導電性の高い高分子化合物を使用することが好ましく、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等が好ましく使用される。またこの高分子化合物に対して上記の溶質と共に、上記の溶媒を加えてゲル状電解質として使用することも可能である。
【0029】
無機固体電解質を使用する場合にも、この無機物に公知の結晶質、非晶質固体電解質を用いることができる。結晶質の固体電解質としては、例えばLil、Li3 N、Li1+x Mx Ti2−x (PO4 )3 (M=Al、Sc、Y、La)、Li0.5−3xRE0.5+x TiO3 (RE=La、Pr、Nd、Sm)等が挙げられ、非晶質の固体電解質としては、例えば4.9Lil−34.1Li2 O−61B2 O5 、33.3Li2 O−66.7SiO2 等の酸化物ガラスや0.45Lil−0.37Li2 S−0.18P2 S5 、0.44Lil−0.30Li2 S−0.26B2 S3 、0.30Lil−0.42Li2 S−0.28SiS2 等の硫化物ガラス等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種以上のものを用いることができる。
【0030】
【実施例】
以下実施例によって本発明の方法をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
本発明の実施例および比較例を表1に示す。ここで、初期放電容量並びに容量維持率を評価するに当たり、負極として金属Liを用いており、初期放電容量は正極活物質1g当たりに換算している。
【0031】
実施例1
1mol/lのLiNO3 と1mol/lのMn(NO3 )2 ・6H2 0のエタノール溶液をLi/Mnのモル比が1/2となるように混合した溶液を攪拌させ、その中に1.5倍当量のシュウ酸エタノール溶液を徐々に添加した。この共沈溶液を2時間攪拌し、次にトリエチルアミンでpH6.87に調整し、更に3時間攪拌した後、静置して共沈させた。その後、濾過、乾燥することにより共沈粉(Li2 (C2 O4 )とMn(C2 O4 )の混合粉)を調製した。得られた共沈粉を焼成することにより、LiMn2 O4 の合成を行った。なお焼成条件は、まず温度;400℃、時間;6hr、昇降温速度;5℃/min.とし、大気中で熱分解し、次に温度;750℃、時間;24hr、昇温速度;5℃/min.とし、大気中で焼成を行い、次に0.2℃/min.で450℃まで冷却後、6hr保持し、次に室温まで5℃/min.で冷却した。
【0032】
参考例1
Li2 CO3 とMnCO3 をLi/Mn=1/2の割合で乳鉢を用いて湿式混合した後、混合物を大気中で450、500、550、600℃と各12時間ずつ保持しながら段階的に昇温し、次に750℃、48時間、大気中で本焼した後、450℃まで0.2℃/min.の速度で徐冷した。
【0033】
参考例2
γ−MnO2 を800℃で24時間、大気中で加熱して得たMn2 O3 とLiOH・H2 Oとを出発原料とし、リチウムとマンガンの原子比が1:2となるように配合した。この配合物にエタノールを加え、乳鉢中でよくすりつぶし、均一な混合物とした。得られた混合物を大気中で500℃、24時間仮焼した。次に大気中で800℃、24時間本焼した後、600、500、450、400、350℃と各3時間ずつ保持しながら段階的に1℃/min.の速度で降温し、350℃以降は炉冷した。
【0034】
比較例1
γ−MnO2 を800℃で4時間、大気中で加熱して得たMn2 O3 とLiOH・H2 Oとを出発原料とし、リチウムとマンガンの原子比が1/2となるように配合した。この配合物にエタノールを加え、乳鉢中でよくすりつぶし、均一な混合物とした。得られた混合物を大気中で500℃、24時間仮焼した。次に大気中で800℃、24時間本焼した後、600、500、450、400、350℃と各3時間ずつ保持しながら段階的に1℃/min.の速度で降温し、350℃以降は炉冷した。
【0035】
比較例2
LiOH・H2 Oとγ−MnO2 をLi/Mn=1/2の割合で乳鉢を用いて湿式混合した後、混合物を大気中で400℃、6時間仮焼した。次に大気中で750℃、24時間本焼した後、450℃まで0.2℃/min.の速度で徐冷した。
【0036】
比較例3
LiOH・H2 Oとγ−MnO2 をLi/Mn=1/2の割合で乳鉢を用いて湿式混合した後、混合物を大気中で450、500、550、600℃と各12時間ずつ保持しながら段階的に昇温し、次に750℃、48時間、大気中で本焼した後、450℃まで0.2℃/min.の速度で徐冷した。
粉末X線回折測定により実施例及び比較例で合成したサンプルは全て室温で立方晶の単一相であることを確認した。
本発明の実施例及び比較例における粉末X線回折パターンは、以下の条件で測定した。
【0037】
測定機種: 理学社製 LINT1500
照射X線: Cu Kα線
管電圧: 50kV
管電流: 200mA
発散、散乱スリット: 1/4゜
受光スリット: 0.15mm
スキャンタイプ: ステップ
ステップサイズ: 0.004゜
ステップ当たりの時間: 5秒
測定範囲:2θとして30〜31、35〜37、37〜38.5、63〜65、75〜78、80〜82度
【0038】
結晶子の不均一歪ηは上記した条件のもとで測定された結果よりそれぞれ次式
【0039】
【数4】
βcos θ=λ/D+2ηsin θ (1)
【0040】
(ただし、βは積分幅(rad) 、θは回折角(°)、λは1.54056Å(CuK α)、Dは結晶子サイズ(Å)、ηは結晶子の不均一歪を表す。)を用い、面反射(220)(311)(222)(440)(533)(622)(444)の回折角θと積分幅βを代入し、横軸をsinθ、縦軸をβcosθとした際の傾き(2η)を2で割ることにより求めた。表1の実施例、参考例及び比較例におけるX値は以下に示す方法で求めた。
【0041】
(Li の全量分析)
50℃、1時間の真空乾燥処理後、精秤したリチウムマンガン酸化物を塩酸酸性溶液中で加熱させ、測定溶液を調製した。原子吸光装置を用い、検量線法によってLi濃度を求め、一定重量当たりのLi含有量を算出した。
【0042】
(Mn の全量分析:EDTA キレート滴定)
50℃、1時間の真空乾燥処理後、精秤したリチウムマンガン酸化物を塩酸酸性溶液中で加熱させ、測定溶液を調製した。溶液をホールピペットにてコニカルビーカーに分取し、少過剰の0.01M−EDTA溶液を加えた。次に純水を加えて全量を75mlとし、8N−NaOH水溶液とアンモニア緩衝液を適当量加えてpH10に調整した。純水で全量が100mlとなるように調整し、その後BT指示薬を滴下した。滴定溶液として0.01M−Mgイオン標準溶液を使用し、ミクロビュレットにて滴定を行った。BT指示薬の色が青から赤に変色したところを終点とした。この時の滴定結果より、一定重量当たりのMn含有量を算出した。
【0043】
(Li とMnの組成比)
前記で求めたLiの定量結果とMnの定量結果よりLiとMnの組成比を算出した。尚、Li/Mnのモル比率が1/2以上の時は、生成物の組成は結晶学的にLi( Mn2−x Lix ) O4 となるので、組成比は総和が3になるように求めた。
【0044】
電池の製造法及び充放電条件について以下に説明する。
表1に示した如く合成した正極活物質と導電剤としてのアセチレンブラック及び結着剤としてのポリ4フッ化エチレン樹脂を重量比で75:20:5の割合で混合して正極合剤とした。また、正極合剤0.1gを直径16mmに1ton/cm2 でプレス成型して正極とした。図2の正極1の上にセパレーター3として多孔性ポリプロピレンフィルムを置いた。負極4とした直径16mm、厚さ0.4mmのリチウム板を、ポリプロピレン製ガスケット5を付けた封口管6に圧着した。非水電解液として1 モル/lの過塩素酸リチウムを溶解したエチレンカーボネート+1,2−ジメトキシエタン(50vol%:50vol%)溶液を用い、これをセパレーター3上及び負極4上に加えた。この後、電池を封口した。
これらの電池の充放電サイクル特性の比較を行った。
なお、本実施例における充放電サイクル試験は、充放電電流2mA、電圧範囲が4.35Vから3.2Vの間で定電流充放電することで行った。
これらの結果を表1及び図1に示す。
【0045】
【表1】
結晶子の不均一歪ηと初期(1th)・100th後の放電容量並びに100th放電容量維持率
【0046】
本発明にかなう実施例では、初期放電容量が大きく、加えてサイクル特性に優れているので、100th後の放電容量が115mAh/g以上であることがわかる。
本実施例では電池の負極材料として金属リチウムを用いているが、リチウム合金またはリチウムを挿入・放出することができる化合物を用いた場合にも同様の結果を得ている。
【0047】
【発明の効果】
以上の様に、正極の活物質材料に一般式Li( Mn2-X LiX ) O4 (ただし、0≦X≦0. 05)で示される立方晶スピネル結晶のX線回折パターンにおける不均一歪ηが、0≦η≦0 . 75×10 -3 の範囲にあるリチウムマンガン酸化物を使用すれば、高い充放電容量を維持したままサイクル特性が改善された電池となる。その結果、安価な材料のリチウムマンガン酸化物が正極材料として使用可能となり、高性能で安全で安価なリチウムイオン二次電池が広い用途に供給できるようになりその工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ηと電池性能(100th放電容量)の相関図
【図2】本発明の実施例の非水電解液二次電池用活物質の製造法の試験に用いたコイン型電池の縦断面図
【符号の説明】
1 正極
2 ケース
3 セパレーター
4 負極
5 ガスケット
6 封口缶
Claims (1)
- 正極にリチウムを挿入・放出することができるリチウム含有金属酸化物を用いたリチウム二次電池において、該リチウム含有金属酸化物が、一般式[化1]Li( Mn2-x LiX ) O4(ただし、0≦X≦0. 05) で示され、かつ、そのX線回折パターンにおける結晶子の不均一歪ηが式(1)
[数1] βcosθ=λ/D+2ηsin θ (1)
(ただし、βは積分幅(rad) 、θは回折角(°)、λは1.54056Å(CuK α)、Dは結晶子サイズ(Å)、ηは結晶子の不均一歪を表す。)において、0≦η≦0 . 75×10 -3 の範囲にあることを特徴とするリチウム二次電池。
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