以下,本発明の好ましい実施の形態を説明する。図1及び図2に示す本発明にかかる車輪支持構造1は,略円盤形状の車輪2を支持している。車輪2は,車体の一例としての車椅子の前輪であり,車椅子本体3の前部を支持しながら接地して回転する。図1に示すように,車輪支持構造1は,車椅子本体3に固定支持されたフレーム4と,回転体としての歯車5を備えている。車輪2は,車輪2の中心部に位置する回転軸8を中心として,車椅子本体3の前方(図1において左方)への進行(前進)に伴う回転方向W1(図1において時計方向),及び,車椅子本体3の後方(図1において右方)への退行(後退)に伴う回転方向W2(図1において反時計方向)に回転可能に取り付けられている。歯車5は,車椅子本体3の前進方向に対して,車輪2の後方かつ上方(図1において右方かつ上方)に配置され,フレーム4によって支持されている。
歯車5の後方には,歯車5を一方向にのみ回転させるための係止部材としての係止板16が設けられている。歯車5は,歯車5の中心部に位置する回転軸17を中心として回転可能である。回転軸17は,車輪2の回転軸8に対して略平行になるように,また,車輪2の前進方向に対して,車輪2の回転軸8よりも後方かつ上方に配置されており,フレーム4によって支持されている。係止板16も,フレーム4によって支持されている。係止板16の下部は,前方に向かうほど下方に傾斜するように形成されており,回転軸17より下方において,歯車5の歯同士の間に,係止板16の下端部が当接するように配置されている。即ち,歯車5は,係止板16の下部表面に沿って,車輪2の後退時の回転方向と同じ回転方向W2に回転することは可能であるが,歯車5が車輪2の前進時の回転方向と同じ回転方向W1に回転しようとしても,係止板16の下端部によって歯が押さえられるため,回転できないようになっている。従って,歯車5は,回転方向W1に対して反対方向である回転方向W2にのみ回転可能になっている。
図3に示すように,回転軸8は,車輪2と歯車5が連動しない位置まで車椅子本体3の前進方向に向かって前方に移動した基準位置P1から,車輪2の周面と歯車5の周面とが接触して連動する連動位置P2までの間を移動自在である。さらに,回転軸8は,車輪2と歯車5とを連動させた状態で,連動位置P2より後方かつ下方に向かって,歯車5の回転軸17を中心として円弧状の軌道Rに沿って移動自在である。軌道Rは,歯車5の回転軸17を中心として歯車5の半径と車輪2の半径を加算した長さを半径とした円弧に沿った軌道である。
図3において実線で示すように,回転軸8が基準位置P1にあるときは,図4に示すように,車輪2の周面と歯車5の周面に形成された歯とが離れており,車輪2と歯車5が連動していない状態になっている。図3において一点鎖線で示すように,回転軸8’が連動位置P2にあるときは,図5に示すように,車輪2の周面と歯車5の歯とが接触して,車輪2と歯車5が連動して回転可能になる。図3において一点鎖線で示すように,回転軸8”が軌道Rに沿って移動するときは,図6に示すように,車輪2の周面と歯車5の歯とが接触して,車輪2と歯車5が連動して回転可能な状態のまま,車輪2が歯車5を中心として回転するようになっている。
図2に示すように,フレーム4は,互いに略平行に配置された板状部材20A,20Bを有する。板状部材20A,20Bは,車椅子本体3が走行する平坦面(地面)に対し垂直に,かつ,車椅子本体3の進行方向に向かう方向に沿って配置されており,車輪2の左右両側にそれぞれ配置される。前述の歯車5の回転軸17は,左右両端部をそれぞれ板状部材20A,20Bによって支持されている。
各板状部材20A,20Bには,車輪2の回転軸8を基準位置P1,連動位置P2,軌道Rに沿って移動させるようにガイドするためのガイド溝25が形成されている。図2に示すように,板状部材20Aのガイド溝25は回転軸8の左端部をガイドし,板状部材20Bのガイド溝25は回転軸8の右端部をガイドするようになっている。図3に示すように,各ガイド溝25は,回転軸8の左端部又は右端部を基準位置P1と連動位置P2との間でガイドする第1のガイド部25aと,回転軸8の左端部又は右端部を連動位置P2から後方に円弧状の軌道Rでガイドする第2のガイド部25bとによって構成されている。
第2のガイド部25bは,軌道Rに沿って,後方に行くに従って下方に湾曲する円弧状に形成されている。第1のガイド部25aの後端と第2のガイド部25bの上端は連続しており,回転軸8は,第1のガイド部25aから第2のガイド部25bに,また,第2のガイド部25bから第1のガイド部25aに移動自在になっている。なお,第1のガイド部25aの上面は,基準位置P1から連動位置P2に向かうに従い下がるように傾斜させて設けられている。このようにすると,車椅子本体3が平坦面上にある状態において,第1のガイド部25aの上斜面から回転軸8の上面に対して,車椅子本体3の自重による力が加えられるため,回転軸8は第1のガイド部25aの上斜面によって前方に押し出され,第1のガイド部25aの上端部に押さえられる。従って,車椅子本体3が平坦面上で前進しているときに,回転軸8が基準位置P1から連動位置P2に向かって後方に移動することを防止できる。また,回転軸8を基準位置P1から軌道Rに向かって円滑に移動させることができる。なお,第2のガイド部25bの後端は,歯車5の回転軸17の直下より前方に位置していることが好ましい。このようにすると,車輪2が歯車5の後側に移動することを確実に防止できる。もし,第2のガイド部25bの後端が歯車5の回転軸17の直下より後方に位置していると,回転軸8が歯車5の回転軸17より後方に移動して車輪2が歯車5の後側に移動したときに,第2のガイド部25bの上面から回転軸8の上面に対して,車椅子本体3の自重による力が加えられるため,回転軸8は第2のガイド部25bの後部の上面によって後方に押し出され,第2のガイド部25bの後端部に押さえられてしまい,車輪2を歯車5の前側に戻すことが困難となるが,第2のガイド部25bの後端を回転軸17の直下より前方に配置しておけば,そのような事態を防ぐことができる。また,各第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bの幅を,回転軸8の直径より僅かに大きく形成して,回転軸8が各第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bの内側で余裕を持って円滑に移動及び自転できるようにすることが好ましい。各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bは,互いに面対称な形状及び位置に形成されており,回転軸8は,板状部材20A,20Bに対して垂直な姿勢で支持されるようになっている。
図1及び図2に示すように,車輪2の回転軸8の左右両側には,各板状部材20A,20Bの外側にそれぞれ備えるフランジ部28A,28Bが形成されている。フレーム4に車輪2を取り付けた状態において,車輪2は,回転軸8を各板状部材20A,20Bに対して垂直な向きにした状態で,板状部材20A,20Bの間に配置され,回転軸8は,左右両端部が各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bの内側を貫通するように備えられる。フランジ部28A,28Bは,それぞれ各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bの外側に配置される。従って,回転軸8が各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bの内側から外れることを防止でき,回転軸8が各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25a及び第2のガイド部25bの内側に確実に保持される。
次に,以上のように構成された車輪支持構造1の作用について説明する。図4に示すように,車椅子本体3が略水平な平坦面30上を前進しているときは,回転軸8は基準位置P1に位置し,回転軸8の左右両端部が,各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25a内に位置し,車輪2の外周面と歯車5の歯は離隔している。車輪2は,回転軸8を中心として回転方向W1に回転しながら前進する。また,回転軸8の左右両端部の上部に,各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25aの上縁が接触しており,車椅子本体3は,フレーム4と回転軸8を介して車輪2に支持されている。回転軸8は第1のガイド部25aの上斜面によって前方に押し出され,第1のガイド部25aの上端部に確実に固定されており,基準位置P1から外れることはない。従って,車輪2がフレーム4に安定して保持され,車椅子本体3を円滑に走行させることができる。
車輪2の前方において,平坦面30から障害物としての段差31が突出していると,車輪2の外周面の前下部が段差31の角部に突き当たる。段差31の高さが車輪2の大きさと比較して十分に低い場合は,車輪2は段差31に当たって止められることなく,回転軸8の左右両端部が第1のガイド部25a内に位置した状態のまま,段差31を乗り越えて前進することができる。
一方,段差31の高さが車輪2の大きさと比較して高く,車輪2の前進が止められた場合は,図5に示すように,車輪2が段差31に当接したまま,車椅子本体3及びフレーム4が前進する。車輪2は車椅子本体3及びフレーム4に対して相対的に後退し,回転軸8が基準位置P1から連動位置P2に移動する。回転軸8の左右両端部は,第1のガイド部25aと第2のガイド部25bの連続部分に移動する。回転軸8の左右両端部は,各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25aにガイドされて第2のガイド部25bに向かってスムーズに移動することができる。回転軸8が連動位置P2に移動すると,車輪2の外周面が歯車5の前下部の歯に当接する。車輪2は,歯車5を中心として回転可能な状態になり,また,段差31の角部と歯車5との間に挟まれた状態となる。
その後,車椅子本体3及びフレーム4がさらに前進しようとすると,歯車5が車輪2の外周面を前進方向に押す。すると,図6に示すように,車輪2は,歯車5が車輪2の外周面を押す力により,段差31の角部を中心として,段差31の上面に上がる方向に回転移動を開始する。ここで,歯車5は,一方向の回転方向W2にのみ回転するようになっているので,歯車5の前下部によって車輪2を押しても,歯車5が車輪2からの反力によって回転することはなく,車輪2の自転が抑止され,車椅子本体3の前進方向の推進力が,歯車5を介して車輪2の外周面に確実に伝達される。従って,歯車5によって車輪2を確実に押し上げることができる。
車輪2は,段差31の上面に上がる方向に回転移動する一方で,歯車5からみて相対的に,歯車5を中心として回転方向W1に回転移動する。車輪2の回転軸8は,左右両端部を各板状部材20A,20Bの第2のガイド部25bによってガイドされながら,第2のガイド部25b内で軌道Rに沿って円滑に移動することができ,歯車5の回転軸17を中心として回転方向W1に回転移動する。回転軸8の左右両端部が第2のガイド部25b内を移動する間も,回転軸8の左右両端部は,第2のガイド部25bの縁から離れており,第2のガイド部25bの内側で浮いた状態になっている。車椅子本体3はフレーム4と歯車5を介して車輪2に支持されながら前進,上昇移動する。
こうして,車輪2は,歯車5が車輪2の外周面を押す力により,段差31の角部を中心として,図7に示すように,段差31の上面に乗り上がることができる。ここで,通常の車輪2の支持構造,即ち,回転軸8をフレーム4に対して固定した場合と比較して,本発明の効果を述べる。通常は車椅子本体3の前進方向の推進力が,フレーム4及び回転軸8を介して車輪2の中心部に伝達され,回転軸8によって加えられる力により,段差31の角部を支点として車輪2が上昇移動することとなる。これに対し,本発明においては,歯車5が車輪2の外周面を押す力により,段差31の角部を支点として車輪2が上昇移動する。歯車5は回転軸8より高い位置にあるので,通常の場合よりも力点の位置が高くなる。即ち,通常の場合よりも力点と支点との距離が離れているので,車輪2を少ない力で段差31の上方に移動させることができる。従って,車輪2を円滑に段差31の上に乗り上げさせることができる。また,巨視的には,回転軸17と段差31の角部との間の距離を半径とし歯車5を回転中心とした仮想の車輪が,段差31の上面に向かって移動する状態になると考えられる。この仮想車輪は,段差31の高さに対して十分に大きく,段差31を容易に乗り越えることができる大きさである。こうした作用によって,車輪支持構造1全体を段差31の上に容易に乗り上げさせることができる。
車輪2が段差31の上方に移動すると,図7に示すように,車輪2は回転軸8を中心として回転方向W1に回転して前進し,歯車5,フレーム4及び車椅子本体3は,自重によって下降する。歯車5は,回転軸17を中心として回転方向W2に回転しながら,車輪2の外周面を滑り降りるように下降する。車輪2は,歯車5に押されて,回転方向W1に円滑に回転して前進する。こうして,車輪2を段差31の上に乗り上げさせた後,車輪2の前進を円滑に開始させることができる。
車輪2が前進し,歯車5,フレーム4及び車椅子本体3が下降する間,車輪2は,歯車5からみて相対的に,歯車5を中心として回転方向W2に回転移動する。車輪2の回転軸8は,第2のガイド部25bによってガイドされながら,第2のガイド部25b内で軌道Rに沿って円滑に移動することができ,歯車5の回転軸17を中心として回転方向W2に回転移動する。回転軸8の左右両端部が第2のガイド部25b内を移動する間も,回転軸8の左右両端部は,第2のガイド部25bの縁から離れており,第2のガイド部25bの内側で浮いた状態になっている。車椅子本体3はフレーム4及び歯車5を介して車輪2に支持されながら前進,下降移動する。
その後,図8に示すように,回転軸8が連動位置P2に達し,さらに,図9に示すように,車輪2がフレーム4及び車椅子本体3に対して相対的に前進して,回転軸8が連動位置P2から基準位置P1に移動し,第2のガイド部25b内から第1のガイド部25a内に回転軸8の左右両端部が移動し,車輪2の外周面が歯車5から離隔する。こうして,段差31に突き当たる前と同様に,車輪2は回転軸8を中心として回転方向W1,W2に回転可能な状態になり,また,回転軸8の左右両端部の上部に,各板状部材20A,20Bの第1のガイド部25aの上縁が接触し,車椅子本体3はフレーム4及び回転軸8を介して車輪2に支持された状態になる。
なお,回転軸8の左右両端部が,第2のガイド部25bの後端に当接することがあるが,第2のガイド部25bの後端は歯車5より前方に位置しているので,回転軸8が歯車5より後方に移動することはない。従って,歯車5が車輪2の前方に相対的に移動してしまうことはなく,歯車5によって車輪2を前進方向に確実に押すことができる。また,回転軸8の左右両端部が第2のガイド部25bの後端に当接した状態では,歯車5によって車輪2を外周面の後上部から押し,かつ,第2のガイド部25bの後端によって回転軸8の左右両端部を持ち上げる状態になるので,車輪2を段差31の上方に移動させやすくなる。
かかる車輪支持構造1によれば,歯車5によって車輪2を後上方から前方に向かって押すことにより,通常の場合より少ない力で,車輪2を段差31の上に円滑に乗り上げさせることができる。また,歯車5が回転方向W2にのみ回転する構成としたことにより,車輪2を段差31の上に乗り上げさせた後,歯車5を迅速に下降させ,車輪2を確実かつ迅速に前進させることができる。従って,段差31があっても,円滑な走行が可能である。さらに,段差31のような障害物が連続する場合であっても,車輪2を円滑に乗り上げさせ,前進を迅速に開始させることができるので,円滑な走行が可能である。また,構造が簡素であり,アームや補助部材等が障害物に突き当たって破損するといったおそれが無く,安全である。
以上,本発明の好適な実施の形態の一例を示したが,本発明はここで説明した形態に限定されない。例えば,本実施の形態においては,車輪支持構造1は車椅子本体3の前輪を車輪2として支持していることとしたが,本発明を車椅子の後輪に適用して,車椅子本体3が後退するときに,車椅子本体3の後方の段差を円滑に乗り越えさせるようにすることもできる。さらに,本発明は,車椅子以外の各種の運搬器具や移動用器具,例えば,台車,ベビーカー,ストレッチャー等の車輪を支持するものに適用できる。
本実施の形態では,回転体は歯車5としたが,かかるものに限定されず,一方向に回転可能な構成であればよい。回転体の形状は,例えば,円板,リング,円柱体,円筒体,球体,適当数の多角形の板,リング,柱体若しくは筒体,適当数の多面体,又は,外周面に多数の凸部や凹部を有する円板,リング,円柱体,円筒体若しくは球体等であってもよい。
本実施の形態では,回転軸8の左右両端部は,第2のガイド部25bの縁から離れて第2のガイド部25bの内側で浮いた状態で移動することとしたが,勿論,第2のガイド部25bの縁に接触しながら移動することとしても良い。この場合,回転軸8の左右両端部を確実に誘導でき,安全である。
本実施の形態では,第2のガイド部25bの後端を歯車5の回転軸17の直下より前方に配置することとしたが,かかる構成は必ずしも必要なものではない。図10に示すように,第2のガイド部25bの後端は,歯車5の回転軸17の直下より後方に配置されていても良い。この場合は,図11に示すように,段差31を乗り越えるときに,車体3’を前進方向に向かうに従い上がるように大きく傾斜させれば良い。図11においては,車体3’からみると,回転軸8は回転軸17の後側に移動し,車輪2が歯車5の後側に移動しているが,鉛直方向を基準としてみると,回転軸8は回転軸17の前側に,車輪2は歯車5の前側にある。このように,車体3’の傾斜角度を調整することで,車輪2が常に歯車5の前側になるように調整することができ,歯車5によって車輪2を前進方向に押すことができる。しかし,車体3’が十分に大きく傾斜させることができない構成である場合や,大きく傾斜させることが望ましくない場合や,傾斜角度をスムーズに調整することが困難である場合などは,図12に示すように,車体3’の傾斜角度が小さいときに車輪2が歯車5の後に移動して,回転軸8が第2のガイド部25bの上面によって後方に押し出され,第2のガイド部25bの後端部に押さえられてしまい,車輪2を歯車5の前側に戻すことが困難となり,また,車輪2を歯車5によって前方に押すことができなくなる事態も考えられる。そのような場合は,第2のガイド部25bの後端を歯車5の回転軸17の直下より前方に配置することで,車輪2が歯車5の後側に移動することを確実に防止でき,車体3’を円滑に走行させることができる。
本実施の形態では,第2のガイド部25bは円弧状としたが,かかるものに限定されず,例えば,円弧状の軌道Rに沿う形状の縁を有する扇形状等であっても良い。また,本実施の形態では,第2のガイド部25bの後端は歯車5より前方に位置していることとしたが,かかる構成に代えて,歯車5が車輪2の前方に相対的に移動してしまうことを防止できる他の構成を備えても良い。例えば,第2のガイド部25bの途中に,歯車5より前方の位置で回転軸8の左右両端部に当接して止める突起物を設けても良い。また,車輪2に当接して,車輪2が歯車5の後方に移動することを防止するストッパーを,フレーム4に設けても良い。
図13に示すように,第1のガイド部25aの下面に突起40を形成しても良い。図13において,突起40は,第1のガイド部25aの後部に,下縁から上方に向かって突出するように設けられている。車輪2の回転軸8の左右両端部は,突起40を越えて第1のガイド部25a内の基準位置P1から連動位置P2に移動するようになっている。突起40の材質は,例えばゴム等であることが好ましい。かかる構成によれば,小さな段差を乗り越えるときや,車椅子本体3が後退するとき等に,回転軸8が連動位置P2に移動して車輪2が歯車5に接触することを防止できる。従って,車椅子本体3の前進及び後退を安定した状態で行うことができる。
また,車輪2の回転軸8を連動位置P2から基準位置P1に戻すように付勢する弾性体を接続しても良い。例えば,図14及び図15に示すように,各板状部材20A,20Bの外側に,弾性体としてのバネ42をそれぞれ備える。図14及び図15において,各バネ42の上端は,基準位置P1に位置する回転軸8より前方かつ上方において,板状部材20A,20Bに対してそれぞれ固定接続されている。各バネ42の下端は,回転軸8の左右両端部に固定接続されている。回転軸8の左右両端部が,第1のガイド部25aから第2のガイド部25bに向かって移動すると,バネ42が伸びて,回転軸8の左右両端部に対し,第1のガイド部25a側に戻そうとする力が働くようになっている。かかる構成によれば,小さな段差を乗り越えるときや,車輪2が後退するとき等に,回転軸8が連動位置P2に移動して車輪2が歯車5に接触することを防止できる。従って,車輪2の前進及び後退を安定した状態で行うことができる。また,車輪2が段差31の上方に移動した後,回転軸8を連動位置P2から基準位置P1に戻し易くなる。なお,バネ42の一端を回転軸8より前方かつ上方ではなく,回転軸8の後下方に固定して,回転軸8の左右両端部が第1のガイド部25aから第2のガイド部25bに向かって移動するときにバネ42が圧縮され,回転軸8の左右両端部に対し,第1のガイド部25a側に戻そうとする力が働くようにしても良い。また,弾性体としては,バネの他,ゴム等の伸縮性を有するものを使用しても良い。
なお,本実施の形態では,第1のガイド部25aの上面を,基準位置P1から連動位置P2に向かうに従い下がるように傾斜させることとしたが,回転軸8を連動位置P2から基準位置P1に戻すように付勢する弾性体を設ける場合は,第1のガイド部25aの上面は,水平,あるいは,基準位置P1から連動位置P2に向かうに従い上がるように傾斜させても良い。このような場合も,弾性体により加えられる力によって,車輪2が平坦面を走行しているときに回転軸8が基準位置P1から連動位置P2に向かって移動することを防止できる。
本実施の形態では,車輪2の外周面と歯車5の歯を接触させることで車輪2と歯車5を連動させることとしたが,車輪2と歯車5を連動させる構成は,かかる形態に限定されない。例えば,車輪2の側面に形成した小輪の周面に,回転体の周面を接触させることで,車輪2と歯車5を連動させるようにしても良い。また,車輪と連動させる回転体の個数は,2個以上であっても良い。
例えば,図16及び図17に示すように,車輪2の左右両側に,円板状に形成された小輪45A,45Bをそれぞれ形成する。小輪45A,45Bは,車輪2の左右両面から外側に向かって突出しており,車輪2の直径より小さい直径で形成されている。また,小輪45A,45Bの回転軸は,車輪2と同じ回転軸8である。一方,板状部材20A,20Bの内側には,それぞれ実施の形態に示したものと同様の,回転体としての歯車5と係止板16が備えられている。各歯車5は,それぞれ小輪45A,45Bの外周面の後上方に配置されている。各歯車5の回転軸17は,車輪2の回転軸8に対して略平行になるように,また,車輪2の前進方向に対して,車輪2の回転軸8よりも後方かつ上方に配置されており,フレーム4の板状部材20A,20Bによってそれぞれ支持されている。
回転軸8が基準位置にある状態では,小輪45A,45Bの外周面と歯車5の歯はそれぞれ離れており,車輪2と歯車5が連動していない状態になっている。回転軸8の左右両端部は,第1のガイド部25a内にある。回転軸8が連動位置に移動した状態では,小輪45A,45Bの外周面と歯車5の歯がそれぞれ接触することで,車輪2と歯車5が連動して回転可能になる。回転軸8の左右両端部は,第1のガイド部25aと第2のガイド部25bの連続部分に移動する。回転軸8を円弧状の軌道に沿って移動させるときは,小輪45A,45Bの外周面を歯車5の歯にそれぞれ接触させたまま,即ち,車輪2と歯車5を連動させた状態のまま,各歯車5を中心として車輪2を回転させることができる。回転軸8の左右両端部は,第2のガイド部25b内で移動する。かかる構成によれば,各歯車5によって,小輪45A,45Bを後上方から前方に向かってそれぞれ押すことにより,通常の場合より少ない力で,車輪2を段差の上に円滑に乗り上げさせることができる。
なお,車輪2の左右いずれかの片側のみに小輪と歯車5を備え,あるいは,いずれか片方の小輪45A,45Bのみ歯車5によって押すようにしても,通常の場合より少ない力で車輪2を段差の上に乗り上げさせることができるが,車輪2の左右両側の小輪45A,45Bを同時に押すことにより,車輪2をさらに安定した状態で押し上げることができる。
また,車輪2の側面に形成される小輪としては,円板状の他,円筒体,適当数の多角形等であっても良い。さらに,小輪の周面に,回転体である歯車5と噛み合って回転する歯車を形成し,回転体の歯車5と小輪の歯車とを互いに噛み合わせながら押すことができるようにしても良い。
車輪は,図18及び図19に示すような双輪キャスター50であっても良い。図18及び図19において,双輪キャスター50用の車輪支持構造51は,フレーム52を備えている。双輪キャスター50は,直径が同じ2個の車輪55A,55Bの間に,各車輪55A,55Bの中心部を連結する回転軸57を備え,車輪55A,55Bが回転軸57を中心として回転するようになっている。また,車輪55A,55Bの内面には,円板状の小輪60がそれぞれ形成されている。小輪60は,車輪55A,55Bの内側の面,即ち車輪55A,55Bが互いに向かい合う側の面から突出して形成されており,車輪55A,55Bの直径より小さい直径で形成されている。また,各小輪60の回転軸は,車輪55A,55Bと同じ回転軸57である。フレーム52は,平坦面に対して垂直な向きになるように配置された板状部材62を備えており,実施の形態に示したガイド溝25と同様のガイド溝65が形成されている。即ち,第1のガイド部25aと第2のガイド部25bと同様の,第1のガイド部65aと第2のガイド部65bが形成されている。車輪55A,55Bは,それぞれ板状部材62の左右両側に配置される。回転軸57は,ガイド溝65の内側を貫通するように備えられる。
一方,板状部材62の左右両側には,それぞれ実施の形態に示したものと同様の歯車5と係止板16が備えられている。各歯車5は,各車輪55A,55Bに形成された小輪60の外周面の後上方にそれぞれ配置されている。各歯車5の回転軸17は,回転軸57に対して略平行になるように,また,双輪キャスター50の前進方向に対して,回転軸57よりも後方かつ上方に配置されており,板状部材62の左右両面によってそれぞれ支持されている。
回転軸57が基準位置にある状態では,各車輪55A,55Bに形成された小輪60の外周面と各歯車5の歯はそれぞれ離隔している。回転軸57の中央部分は,第1のガイド部65a内にある。回転軸57が連動位置に移動した状態では,各小輪60の外周面と各歯車5の歯がそれぞれ接触することにより,双輪キャスター50と各歯車5とが連動する状態になる。回転軸57の中央部分は,第1のガイド部65aと第2のガイド部65bの連続部分に移動する。回転軸8を円弧状の軌道に沿って移動させるときは,各小輪60の外周面を各歯車5の歯にそれぞれ接触させたまま,即ち,双輪キャスター50と各歯車5を連動させた状態のまま,各歯車5を中心として双輪キャスター50を回転させることができる。回転軸57の中央部分は,第2のガイド部65b内で移動する。この場合も,各歯車5によって各小輪60を後上方から前方に向かってそれぞれ押すことにより,通常の場合より少ない力で,双輪キャスター50を段差の上に円滑に乗り上げさせることができる。
なお,各歯車5は,車輪55A,55Bに形成された小輪60でなく,車輪55A,55Bの外周面に接触させるようにしても良い。また,実施の形態と同様に2枚の板状部材の間に双輪キャスター50を備え,各車輪55A,55Bの外側に回転軸57をそれぞれ突出させ,回転軸57の左右両端部を,各板状部材の支持溝及びガイド溝の内側に配置するようにし,各板状部材の内側で,各歯車5を支持しても良い。
車輪55A,55Bの側方に形成される小輪としては,円板状の他,円筒体,適当数の多角形等であっても良い。さらに,小輪の周面に,回転体である歯車と噛み合って回転する歯車を形成し,回転体である歯車と小輪の歯車とを互いに噛み合わせながら押すことができるようにしても良い。
本実施の形態では,係止板16を歯車5の歯同士の間に当接させることで歯車5を一方向にのみ回転可能にする構成を説明したが,例えば,歯車5の左側面又は右側面に,周面に歯車を設けた小輪を形成し,この小輪の歯車における歯同士の間に,係止板16を当接させるようにしても良い。
また,本実施の形態では,係止部材として歯車5の歯同士の間に下端部を当接させる係止板16を説明したが,係止部材の形状はかかるものに限定されず,例えば図20に示すように,突起を複数備えた形状にしても良い。図20において,係止部材71は,上下方向に一列に並べた複数の爪72を備えている。各爪72は,係止部材71の前縁部から前方に突出しており,各爪72の上面が前方に向かうほど下方に傾斜した形状になっている。歯車5の右側面には,周面に複数の爪73を歯車状に設けた小輪75が形成されている。各爪73は,回転方向W2と反対方向に向かうに従い外側に向かうように湾曲した形状になっている。即ち,歯車5の回転に伴い爪73が小輪75の後部に移動したとき,爪73の先端が上方に向かうように形成されている。爪73の回転方向W2に対して前側の面は,小輪75の周囲に向かって凸状に湾曲した円滑な曲面になっている。係止部材71は小輪75の後方に配置されており,後方に移動した爪73同士の間に爪72の先端が配置されるようになっている。
かかる構成において,歯車5を回転方向W2に回転させようとすると,小輪75の後部において,爪73の回転方向W2に対して前側の面が爪72の上面に沿って円滑に下降移動する。そして,爪72同士の間に爪73の先端が入り込み,さらに,爪72の間から円滑に退出して下降移動する。従って,歯車5を回転方向W2に円滑に回転させることができる。一方,歯車5を回転方向W1に回転させようとすると,小輪75の後部において,爪73の先端が爪72の間に挟まり,爪73の上方に位置する爪72の下面によって押さえられる。そのため,爪73は爪72の間から退出できず,上昇移動することができない。従って,歯車5を回転方向W1に回転させることができないようになっている。
本実施の形態では,車輪2の回転軸8が第1のガイド溝25a内で基準位置P1から連動位置P2まで移動するように車輪2が移動して,車輪2に歯車5が接触することにより,車輪2と歯車5が連動する状態になるように構成したが,車輪と回転体が連動する状態と連動しない状態とを切り替える構成は,かかるものに限定されない。例えば,図21に示すように,板状部材20A,20Bを前後に移動可能な構成とし,車輪2の回転軸8をガイド溝85に対して静止させたまま,車輪2を板状部材20A,20Bと共に歯車5に向かって後方に移動させることにより,車輪2と歯車5を接触させ,連動する状態になるように構成しても良い。
図21及び図22に示す車輪支持構造80において,車輪2,歯車5,係止板16は,実施の形態に示したものと同様の構成を有するので説明を省略する。フレーム4は,車輪2を保持する保持体81と,保持体81を車椅子本体3の進行方向に沿って前後にスライドさせる保持体支持部材82を備えている。
保持体81には,実施の形態に示した板状部材20A,20Bが形成されている。板状部材20A,20Bには,ガイド溝85が形成されている。このガイド溝85は,実施の形態に示したガイド溝25の第2のガイド部25bと同様に,軌道Rに沿って形成されており,後方に行くに従い下方に湾曲する円弧状の形状をなす。
保持体81の上部は,保持体支持部材82の内側に配設されている。図23に示すように,保持体支持部材82の内面の左右両側には,内側に向かって凸状に形成されたレール87A,87Bが設けられている。レール87A,87Bは,車椅子本体3の進行方向に沿って前後に延びるように形成されている。また,保持体81の上部の左右両側には,レール87A,87Bにそれぞれ噛み合う凹部88A,88Bが形成されている。凹部88A,88Bは,車椅子本体3の進行方向に沿って前後に延びるように形成されている。保持体81は,凹部88A,88Bをレール87A,87Bにそれぞれ噛み合わせた状態で,保持体支持部材82に支持されている。凹部88A,88Bは,レール87A,87Bに沿って前後に移動させることができ,これにより,保持体81を前後にスライドさせることができる。即ち,板状部材20A,20Bを車椅子本体3の進行方向に沿ってスライドさせることができる構成になっている。
保持体支持部材82は,車椅子本体3に固定支持されている。図21に示すように,保持体支持部材82の後部には,歯車5と係止板16を支持する回転体支持体91が形成されている。歯車5と係止板16は,回転体支持体91を介して保持体支持部材82に固定支持されている。
図24に示すように,車輪2は,板状部材20A,20Bと共に前後に移動させることができる。また,車輪2の回転軸8をガイド溝85の上端部に配置した状態で板状部材20A,20Bを前後に移動させることにより,車輪2と歯車5が連動しない位置まで前方に移動した基準位置P3から,車輪2と歯車5が連動する位置まで後方に移動した連動位置P4までの間で回転軸8を移動させることができる。即ち,回転軸8は,板状部材20A,20Bが後方に移動することにより,基準位置P3から連動位置P4に移動し,また,板状部材20A,20Bが前方に移動することにより,連動位置P4から基準位置P3に移動する。
このような構成を有する車輪支持構造80において,車椅子本体3が前進しているとき,保持体81は,保持体支持部材82の前部に位置しており,車輪2と歯車5は離隔して連動していない。回転軸8は基準位置P3に位置している。
車輪2が段差31に当接すると,図24に示すように,車輪2が段差31に当接したまま,車椅子本体3及び保持体支持部材82が前進する。車輪2及び保持体81は,車椅子本体3及び保持体支持部材82に対して相対的に後退する。保持体81は,保持体支持部材82のレール87A,87Bに沿って保持体支持部材82に対して相対的に後退する。車輪2は,回転軸8をガイド溝85の上端部に配置させたまま,保持体81と共に保持体支持部材82に対して相対的に後退する。これにより,車輪2の外周面が歯車5に当接する。回転軸8は基準位置P3から連動位置P4に移動する。こうして,車輪2は,歯車5を中心として回転可能な状態となり,回転軸8は,車輪2と歯車5を連動させながら,円弧状の軌道Rに沿って移動自在な状態となる。そして,実施の形態に説明した動作と同様にして,段差31を乗り越えることができる。
なお,図21及び図22に示した車輪支持構造80においては,保持体81の後方に配置した回転体支持体91によって歯車5と係止板16を固定する構成としたが,歯車5と係止板16を固定する構成は,かかるものに限定されない。例えば図25及び図26に示す車輪支持構造80のように,歯車5の回転軸17の左右両端部を支持する回転体回転軸支持体92A,92Bを,保持体81の左右両側に配置し,また,回転軸17の左右両端部をガイドする回転体回転軸ガイド溝93を,板状部材20A,20Bにそれぞれ形成する。歯車5は,回転体回転軸支持体92A,92Bを介して保持体支持部材82に固定支持されている。係止板16は,保持体支持部材82の後部に固定支持されている。即ち,回転軸17の左右両端部を回転体回転軸ガイド溝93内で相対的に移動させながら,保持体81をスライドさせるようになっている。
保持体81と保持体支持部材82をスライドさせる構成は,図23に示したレール87A,87Bと凹部88A,88Bによってスライドさせるものに限定されない。また,保持体81をスライドさせ易くするために,保持体81と保持体支持部材82の間で回転する回転部材を設けても良い。例えば図27に示すように,保持体支持部材82の内側の上面に複数の回転部材95を備えるようにする。図27において,各回転部材95は球状に形成されている。回転部材95は,保持体支持部材82の内側の上面に形成された穴96の内側に保持されており,穴96内で自在に回転可能になっている。回転部材95の下端部は,保持体支持部材82の内側の上面より下方に突出しており,回転部材95の下端と保持体81の上面が接触する高さに配置されている。保持体81の上面は,保持体81がスライドする方向に沿った平面になっている。この構成において,保持体81をスライドさせると,各回転部材95が保持体81のスライド方向に沿ってそれぞれ回転するので,保持体81を保持体支持部材82に対して円滑にスライドさせることができる。
なお,回転部材は上述した球状の他,例えば,保持体81がスライドする方向に沿って回転するように回転軸を保持した円板状にしても良い。また,回転部材を設ける場所は,保持体支持部材82の内側の上面に限定されず,例えば,保持体81の上面などに設けても良い。
さらに,保持体81を保持体支持部材82の前部に戻すように付勢する弾性体を接続しても良い。例えば,図28に示すように,保持体支持部材82の内側の左右両側面に,弾性体としてのバネ98をそれぞれ備える。図28において,バネ98は保持体81の前方に配置され,バネ98の前端は保持体支持部材82の内側の左右両側面に接続されており,バネ98の後端は保持体81の前縁部に接続されている。保持体81が保持体支持部材82に対して後方に移動すると,バネ98が伸びて,保持体81を前方に戻そうとする力が働くようになっている。かかる構成によれば,平坦面を走行しているときや,小さな段差を乗り越えるとき等に,保持体81が後退して車輪2と歯車5が連動することを防止できる。従って,車輪2の走行を安定させることができる。また,車輪2が段差31の上方に移動した後,保持体81が前方に戻るように付勢され,車輪2と歯車5が連動しない状態に戻し易くなる。なお,バネ98を保持体81の後方に配置し,バネ98の前端を保持体81の後縁部に接続し,バネ98の後端を保持体支持部材82の内側の左右両側面に接続するようにして,保持体81が保持体支持部材82に対して後方に移動するときにバネ98が圧縮され,保持体81を前方に戻そうとする力が働くようにしても良い。また,バネ98を保持体81の前方と後方にそれぞれ配置して,2個のバネ98によって保持体81を前方に戻すように付勢しても良い。弾性体としては,バネの他,ゴム等の伸縮性を有するものを使用しても良い。
また,以上に示した各実施の形態では,車輪と回転体を接触させる状態と離隔させる状態とを切り替える構成を示したが,回転体を一方向にのみ回転可能な状態と自由に回転可能な状態とに切り替える構成を備えても良い。例えば,係止部材と回転体とを互いに移動可能な構成にすれば,係止部材と回転体を当接させることで回転体を一方向にのみ回転可能な状態にし,係止部材と回転体を離隔させることで回転体を自在に回転可能な状態にすることができる。
図29及び図30に示す車輪支持構造100では,保持体81に保持された車輪2と歯車5が,保持体支持部材82に支持された係止板16に対して前後に移動可能に支持されている。車輪2と歯車5は連動させた状態,即ち,車輪2の外周面と歯車5の歯が接触した状態で配置され,保持体81によって保持されている。係止板16は,保持体支持部材82に固定支持されている。
この車輪支持構造100においては,保持体81を保持体支持部材82に対して相対的に後方に移動させると,車輪2と歯車5が保持体81と共に移動し,歯車5に係止板16が当接して,歯車5が回転方向W2にのみ回転可能な状態になる。保持体81を保持体支持部材82に対して相対的に前方に移動させると,車輪2と歯車5が保持体81と共に移動し,歯車5から係止板16が離隔して,歯車5が車輪2の回転方向に伴って回転方向W1,W2に自在に回転可能な状態になる。
また,係止部材と回転体が当接した状態と,係止部材と回転体が離隔した状態とを切り替える構成として,例えば図31に示す車輪支持構造105のように,係止板16を後方から押して移動させる係止部材移動体106を備え,係止板16を係止部材移動体106に対して相対的に移動させるようにしても良い。図31及び図32において,車輪2と歯車5は連動させた状態,即ち,車輪2の外周面と歯車5の歯が接触した状態で配置され,保持体81によって保持されている。係止板16は,上縁部を中心として前後方向に揺動自在な状態で,保持体81によって保持されている。係止部材移動体106は,保持体支持部材82に固定支持されており,係止板16の後方に配置されている。
この車輪支持構造105においては,車輪2,歯車5,係止板16及び保持体81を保持体支持部材82及び係止部材移動体106に対して相対的に後方に移動すると,係止板16が係止部材移動体106に前方から当接する。即ち,係止板16が係止部材移動体106によって後方から押されて回動し,係止板16の下縁部が前方に向かって移動する。すると,図32に示すように,係止板16の下縁部が歯車5に当接し,歯車5が回転方向W2にのみ回転可能な状態になる。車輪2,歯車5,係止板16及び保持体81が車椅子本体3,保持体支持部材82及び係止部材移動体106に対して相対的に前方に移動すると,係止板16が係止部材移動体106から離隔して,係止板16の下縁部が後方に戻る。即ち,係止板16が歯車5から離隔して,歯車5が車輪2の回転方向に伴って回転方向W1,W2に自在に回転可能な状態になる。
また,係止部材と回転体が当接した状態と,係止部材と回転体が離隔した状態とを切り替える構成として,例えば図33に示した車輪支持構造110のように,歯車5に対して当接及び離隔させるように係止板16を移動させることができる係止部材移動装置111を設けた構成としても良い。図33の車輪支持構造110において,板状部材20A,20B,係止部材移動装置111は,車椅子本体3に対して固定支持されている。車輪2と歯車5は連動させた状態,即ち,車輪2の外周面と歯車5の歯が接触した状態で配置され,板状部材20A,20Bによって保持されている。係止板16は,上縁部を中心として前後方向に揺動自在な状態で,板状部材20A,20Bによって保持されている。また,係止部材移動装置111の駆動を制御する制御部112が備えられている。この制御部112の制御信号によって,係止部材移動装置111を駆動させ,係止部材移動体113を前後方向に移動させる構成となっている。車椅子の操作を行う者は,制御部112を操作することにより,係止部材移動体113を前後方向に任意に移動させる操作を行うことができる。
この車輪支持構造110においては,制御部112の制御信号によって係止部材移動機構97を駆動させ,係止部材移動体113を前方に突出させると,図34に示すように係止板16が係止部材移動体113によって後方から押されて回動し,係止板16の下縁部が前方に向かって移動する。すると,係止板16の下縁部が歯車5に当接し,歯車5が回転方向W2にのみ回転可能な状態になる。また,制御部112の制御信号によって係止部材移動機構97を駆動させ,係止部材移動体113を後退させると,図33に示すように係止板16から係止部材移動体113が離隔して,係止板16の下縁部が後方に戻る。即ち,係止板16が歯車5から離隔して,歯車5が車輪2の回転方向に伴って回転方向W1,W2に自在に回転可能な状態になる。従って,車椅子の操作を行う者は,制御部112を操作することにより係止部材移動装置111を駆動させ,係止板16を前後に移動させ,歯車5を回転方向W2にのみ回転可能な回転体とした状態と,歯車5を回転方向W1,W2に自在に回転可能にした状態とに切り替える操作を行うことができる。このようにすると,車椅子の操作を行う者の任意で,歯車5を回転方向W2にのみ回転可能な状態に切り替えて,実施の形態に示した車輪2を段差に円滑に乗り上げさせる動作を行うことができる。例えば段差を乗り越えるときのみ,歯車5を回転方向W2にのみ回転可能な状態にし,平坦面においては,歯車5を回転方向W1,W2に自在に回転可能な状態にすれば,平坦面において車輪2の前進及び後退を安定した状態で円滑に行うことができる。
なお,係止部材移動装置は,係止部材移動体113を前後に移動させる係止部材移動装置111に限定されず,例えば,係止板16を係止部材移動装置に支持させて,係止板16を係止部材移動装置の駆動により前後に移動させるようにしても良い。また,係止部材移動装置は,例えば,自転車の前輪用のブレーキ装置として一般的に使用されているキャリパーブレーキ等のように,レバーとワイヤーロープを備えた構成によって係止板16を移動させる構成としても良い。即ち,レバーと係止板16をワイヤーロープを介して接続し,レバーを操作することによりワイヤーロープを引っ張ると,係止板16が歯車5に向かって前方に移動し,レバーを戻すと係止板16が後方に戻り,歯車5から離隔する構成としても良い。
また,レバーとワイヤーロープを備えた構成によって係止部材移動体113を移動させるようにしても良い。即ち,レバーと係止部材移動体113をワイヤーロープを介して接続し,レバーを操作することによりワイヤーロープを引っ張ると,係止部材移動体113が前方に移動し,係止板16が係止部材移動体113によって押されて歯車5に向かって前方に移動し,レバーを戻すと係止部材移動体113が後方に移動し,係止板16が後方に戻り歯車5から離隔する構成としても良い。
車輪2と歯車5が連動する状態と連動しない状態との切り替えは,例えば図35に示した車輪支持構造115のように,歯車5と係止板16を移動させることができる回転体移動装置116によって行っても良い。図35に示した車輪支持構造115において,板状部材20A,20B,回転体移動装置116は,車椅子本体3に対して固定支持されている。車輪2の回転軸8は板状部材20A,20Bのガイド溝85に保持されている。回転体移動装置116は,板状部材20A,20Bの後方に支持されており,歯車5と係止板16を支持する回転体支持体120を支持している。歯車5と係止板16は接触させた状態,即ち,歯車5が回転方向W2にのみ回転可能な状態で,回転体支持体120に支持されている。また,回転体移動装置116の駆動を制御する制御部121が備えられている。この制御部121の制御信号によって,回転体移動装置116を駆動させ,回転体支持体120を前後方向に移動させることにより,歯車5を車輪2と接触しない位置まで車体の進行方向に対して後方に移動させ,また,車輪2と接触して連動する位置まで車体の進行方向に対して前方に移動させる構成となっている。車椅子の操作を行う者は,制御部121を操作することにより,歯車5を任意に移動させる操作を行うことができる。
この車輪支持構造115においては,制御部121の制御信号によって回転体移動装置116を駆動させ,回転体支持体120を前方に移動させ,歯車5を車輪2に接触させると,車輪2と歯車5が連動する状態となる。また,制御部121の制御信号によって回転体移動装置116を駆動させ,回転体支持体120を後方に移動させ,歯車5を車輪2から離隔させると,車輪2と歯車5が連動しない状態となる。従って,車椅子の操作を行う者は,制御部121の操作により回転体移動装置116を駆動させ,歯車5を前後に移動させることで,車輪2と歯車5が連動する状態と連動しない状態とを切り替える操作を行うことができる。このようにすると,車椅子の操作を行う者の任意で,車輪2と歯車5を接触させる状態に切り替えて,実施の形態に示した車輪2を段差に円滑に乗り上げさせる動作を行うことができる。例えば段差を乗り越えるときのみ,歯車5を車輪2に接触させて連動する状態にし,平坦面においては,歯車5を車輪2から離隔させて連動しない状態にすれば,平坦面において車輪2の前進及び後退を安定した状態で円滑に行うことができる。
なお,回転体移動装置は,例えば,自転車の前輪用のブレーキ装置として一般的に使用されているキャリパーブレーキ等のように,レバーとワイヤーロープを備えた構成によって回転体支持体120を移動させる構成としても良い。即ち,レバーと係止板16をワイヤーロープを介して接続し,レバーを操作することによりワイヤーロープを引っ張ると,回転体支持体120が車輪2に向かって前方に移動して歯車5が車輪2に接触し,レバーを戻すと回転体支持体120が後方に戻り,歯車5が車輪2から離隔する構成としても良い。
本実施の形態では,車輪の後方に回転体を備え,車輪が前進するとき段差を容易に乗り越えるための構成を説明したが,例えば図36に示すように,車輪2の前方にも第2の回転体を備え,車輪と第2の回転体を連動させながら,車輪の回転軸を前方に向かって第2の回転体の回転軸を中心として円弧状の軌道に沿って移動自在に構成することにより,車輪2が前進するときも後退するときも,車輪の前方又は後方に位置する段差を容易に乗り越えさせることができる。図36に示す車輪支持構造130において,車輪2の前進方向に対して後方には,実施の形態において説明したものと同様の構成を有する歯車5,係止板16が備えられている。また,車椅子本体3の前進方向に対して車輪2の前方(車椅子本体3の後退方向に対しては,車輪2の後方)かつ上方に,第2の回転体としての歯車135が配置されている。また,歯車5の前方に,歯車135を一方向にのみ回転させるための係止部材としての係止板136を設ける。
歯車135,係止板136は,歯車5,係止板16とそれぞれほぼ同様の構成を有する。即ち,歯車135は,歯車135の中心部に位置する回転軸137を中心として回転可能である。回転軸137は,車輪2の回転軸8に対して略平行になるように,また,車輪2の前進方向に対して,車輪2の回転軸8よりも前方かつ上方に配置されており,フレーム4によって支持されている。係止板136も,フレーム4によって支持されている。係止板136の下部は,後方に向かうほど下方に傾斜するように形成されており,回転軸137より下方において,歯車135の歯同士の間に,係止板136の下端部が当接するように配置されている。即ち,歯車135は,係止板136の下部表面に沿って,車輪2の前進時の回転方向と同じ回転方向W1に回転することは可能であるが,歯車135が車輪2の後退時の回転方向と同じ回転方向W2に回転しようとしても,係止板136の下端部によって歯が押さえられるため,回転できないようになっている。従って,歯車135は,回転方向W2に対して反対方向である回転方向W1にのみ回転可能になっている。
図37に示すように,回転軸8は,車輪2と歯車5が連動せず,かつ,車輪2と歯車135が連動しない基準位置P1から,車輪2の周面と歯車5の周面とが接触して連動する連動位置P2までの間を移動自在である。基準位置P1は,歯車5と歯車135の中間に位置する。さらに,回転軸8は,車輪2と歯車5とを連動させた状態で,連動位置P2より後方かつ下方に向かって,歯車5の回転軸17を中心として円弧状の軌道Rに沿って移動自在である。
また,回転軸8は,基準位置P1から,車輪2の周面と歯車135の周面とが接触して連動する連動位置P5までの間を移動自在である。さらに,回転軸8は,車輪2と歯車135とを連動させた状態で,連動位置P2より前方かつ下方に向かって,歯車135の回転軸137を中心として円弧状の軌道R2に沿って移動自在である。軌道R2は,歯車135の回転軸137を中心として歯車135の半径と車輪2の半径を加算した長さを半径とした円弧に沿った軌道である。回転軸8が連動位置P5にあるときは,車輪2の周面と歯車135の歯とが接触して,車輪2と歯車135が連動して回転可能になる。回転軸8が軌道R2に沿って移動するときは,車輪2の周面と歯車135の歯とが接触して,車輪2と歯車135が連動して回転可能な状態のまま,車輪2が歯車135を中心として回転するようになっている。
板状部材20A,20Bには,車輪2の回転軸8を基準位置P1,連動位置P2,軌道Rに沿って,また,基準位置P1,連動位置P5,軌道R2に沿って移動させるようにガイドするためのガイド溝145がそれぞれ形成されている。各ガイド溝145は,回転軸8の左端部又は右端部を基準位置P1と連動位置P2との間でガイドする第1のガイド部145aと,回転軸8の左端部又は右端部を連動位置P2から後方に円弧状の軌道Rでガイドする第2のガイド部145bと,回転軸8の左端部又は右端部を基準位置P1と連動位置P5との間でガイドする第3のガイド部145cと,回転軸8の左端部又は右端部を連動位置P5から後方に円弧状の軌道R2でガイドする第4のガイド部145dとによって構成されている。
第1のガイド部145a,第2のガイド部145bは,それぞれ実施の形態に示した第1のガイド部25a,第2のガイド部25bと同様の形状に形成されている。第4のガイド部145dは,軌道R2に沿って,前方に行くに従って下方に湾曲する円弧状に形成されている。第3のガイド部145cの前端と第4のガイド部145dの上端は連続しており,回転軸8は,第3のガイド部145cから第4のガイド部145dに,また,第4のガイド部145dから第3のガイド部145cに移動自在になっている。さらに,第1のガイド部145aの前端と第3のガイド部145cの後端は連続しており,回転軸8は,第1のガイド部145aから第3のガイド部145cに,また,第3のガイド部145cから第1のガイド部145aに移動自在になっている。
なお,第3のガイド部145cの上面は,基準位置P1から連動位置P5に向かうに従い下がるように傾斜させて設けられている。車椅子本体3が平坦面上にある状態においては,回転軸8は第1のガイド部145aの上斜面と第3のガイド部145cの上斜面の間に押さえられる。従って,車椅子本体3が平坦面上で前進又は後退しているときに,回転軸8が基準位置P1から連動位置P2,P5に向かって移動することを防止できる。また,段差を乗り越えるときは,回転軸8を基準位置P1から軌道R又はR2側に向かって円滑に移動させることができる。なお,第4のガイド部145dの前端は,歯車135の回転軸137の直下より後方に位置していることが好ましい。このようにすると,車輪2が歯車135の前側に移動することを確実に防止できる。もし,第4のガイド部145dの前端が歯車135の回転軸137の直下より前方に位置していると,回転軸8が歯車135の回転軸137より前方に移動して車輪2が歯車135の前側に移動したときに,第4のガイド部145dの上面から回転軸8の上面に対して,車椅子本体3の自重による力が加えられるため,回転軸8は第4のガイド部145dの前部の上面によって前方に押し出され,第4のガイド部145dの前端部に押さえられてしまい,車輪2を歯車135の後側に戻すことが困難となるが,第4のガイド部145dの前端を回転軸137の直下より後方に配置しておけば,そのような事態を防ぐことができる。また,各第3のガイド部145c及び第4のガイド部145dの幅を,回転軸8の直径より僅かに大きく形成して,回転軸8が各第3のガイド部145c及び第4のガイド部145dの内側で余裕を持って円滑に移動及び自転できるようにすることが好ましい。
各板状部材20A,20Bの第1のガイド部145a,第2のガイド部145b,第3のガイド部145c及び第4のガイド部145dは,互いに面対称な形状及び位置に形成されており,回転軸8は,板状部材20A,20Bに対して垂直な姿勢で支持されるようになっている。回転軸8の左右両側のフランジ部28A,28Bは,それぞれ各板状部材20A,20Bの第1のガイド部145a,第2のガイド部145b,第3のガイド部145c及び第4のガイド部145dの外側に配置される。
この車輪支持構造130においては,車椅子本体3が前進しているときに,車輪2の前方において突出している段差31に車輪2の前下部が突き当たった場合は,実施の形態に示した動作と同様の動作を行うことにより,段差31を乗り越えることができる。先ず,回転軸8が第1のガイド部145aにガイドされながら基準位置P1から連動位置P2に移動し,車輪2が歯車5に当接する。さらに,歯車5によって車輪2が段差31の上面に向かって押し上げられる。これにより,車輪2を段差31の上に容易に乗り上げさせることができる。歯車5によって車輪2が押し上げられる間,回転軸8は,第2のガイド部145bにガイドされながら軌道Rに沿って移動する。また,車輪2が段差31の上方に移動した後,回転方向W2にのみ回転する歯車5によって車輪2が押されて,回転方向W1に回転しながら前進する。回転軸8は,第2のガイド部145bにガイドされながら軌道Rに沿って移動し,連動位置P2に移動する。そして,車輪2が歯車5から離隔し,回転軸8が第1のガイド部145aにガイドされながら連動位置P2から基準位置P1に戻る。
一方,車椅子本体3が後退しているときに,車輪2の後方において突出している段差に車輪2の後下部が突き当たった場合も,実施の形態に示した動作と同様の動作を行うことにより,段差を乗り越えることができる。先ず,回転軸8が第3のガイド部145cにガイドされながら基準位置P1から連動位置P5に移動し,車輪2が歯車135に当接する。さらに,歯車135によって車輪2が段差の上面に向かって押し上げられる。これにより,車輪2を段差の上に容易に乗り上げさせることができる。歯車135によって車輪2が押し上げられる間,回転軸8は,第4のガイド部145dにガイドされながら軌道R2に沿って移動する。また,車輪2が段差の上方に移動した後,回転方向W1にのみ回転する歯車135によって車輪2が押されて,回転方向W2に回転しながら後退する。回転軸8は,第4のガイド部145dにガイドされながら軌道R2に沿って移動し,連動位置P5に移動する。そして,車輪2が歯車135から離隔し,回転軸8が第3のガイド部145cにガイドされながら連動位置P5から基準位置P1に戻る。このように,車椅子本体3が後退するときも,車輪2を段差の上に容易に乗り上げさせることができる。
なお,車輪2と一方向にのみ回転する回転体としての歯車5とが連動する状態に切り替える構成は,上記の構成,即ち,車輪2の回転軸8を第1のガイド部145a内で基準位置P1から連動位置P2まで移動させるようにして車輪2を歯車5に接触させ連動させるものに限定されない。また,車輪2と一方向にのみ回転する第2の回転体としての歯車135とが連動する状態に切り替える構成も,上記の構成,即ち,車輪2の回転軸8を第3のガイド部145c内で基準位置P1から連動位置P5まで移動させるようにして車輪2を歯車135に接触させ連動させるものに限定されない。車輪2と一方向にのみ回転するようにした歯車5又は歯車135とが連動する状態に切り替える構成としては,別の実施の形態として前述した種々のものを適用できる。即ち,例えば,図21及び図22に示した車輪支持構造80,又は,図25及び図26に示した車輪支持構造80のように,車輪2を保持した保持体81をスライドさせることにより車輪2と歯車5を接触させ連動させるもの,図29及び図30に示した車輪支持構造100のように,車輪2及び歯車5を保持した保持体81をスライドさせることにより,歯車5に係止板16を接触させ,歯車5を回転方向W2にのみ回転可能な回転体にするもの,図31に示した車輪支持構造105のように,車輪2,歯車5及び揺動可能な係止板16を保持した保持体81をスライドさせることにより,係止部材移動体106によって係止板16を押すようにして,係止板16を歯車5に接触させ,歯車5を回転方向W2にのみ回転可能な回転体にするもの,図33に示した車輪支持構造110のように,係止部材移動装置111によって係止板16を移動させ,係止板16を歯車5に接触させ,歯車5を回転方向W2にのみ回転可能な回転体にするもの,図35に示した車輪支持構造115のように,回転体移動装置116によって歯車5を車輪2に向かって移動させ,車輪2と歯車5を接触させ連動させるもの,等を適用することができる。なお,車輪2と歯車135が連動する状態と連動しない状態とを切り替える構成は,歯車5を歯車135,係止板16を係止板136と置き換えて,車椅子本体3が前進するときに前方の段差を乗り越えるための構成として説明した上記の各構成に対して,鉛直面を中心としてほぼ対称な構成とすれば良い。また,車輪2と一方向にのみ回転するようにした歯車5が連動する状態に切り替える構成と,車輪2と一方向にのみ回転するようにした歯車135が連動する状態に切り替える構成は,互いに別の構成であっても良い。
また,車輪支持構造130において,車輪2の回転軸8を連動位置P1,P5から基準位置P1に戻すように付勢する弾性体を備える場合は,図38に示すように,弾性体を回転軸8の真上に備えるようにすると良い。即ち,例えば各板状部材20A,20Bの外側に,弾性体としてのバネ147をそれぞれ備え,各バネ147の上端は,基準位置P1に位置する回転軸8の上方において,板状部材20A,20Bに対してそれぞれ固定する。各バネ147の下端は,回転軸8の左右両端部に固定する。回転軸8の左右両端部が,第1のガイド部145aから第2のガイド部145bに向かって移動すると,バネ147が伸びて,回転軸8の左右両端部に対し,前上方に引っ張り第1のガイド部145a側に戻そうとする力が働く。また,回転軸8の左右両端部が,第3のガイド部145cから第4のガイド部145dに向かって移動すると,バネ147が伸びて,回転軸8の左右両端部に対し,後上方に引っ張り第3のガイド部145c側に戻そうとする力が働く。これにより,小さな段差を乗り越えるときや,車輪2が後退するとき等に,回転軸8が基準位置P1から連動位置P2,P5に移動して車輪2が歯車5,135に接触することを防止でき,車輪2の前進及び後退を安定した状態で行うことができる。また,車輪2が段差の上方に移動した後,回転軸8を連動位置P2又はP5から基準位置P1に戻し易くなる。