JP3577842B2 - ゴム・樹脂積層体及びガス不透過性補強ホース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム・樹脂積層体及びそれを適用したガス不透過性補強ホースに関する。特に、冷媒ホース(エアコンホース)等に好適な発明である。
【0002】
ここでは、エアコンホースを例にとり説明するが、これに限られるものではない。
【0003】
【従来の技術】
従来、エアコンホースの構成は、例えば、下記のような構成であった。
【0004】
繊維補強層の内側に形成される内管において、内側層がポリアミド(PA)樹脂で形成され、繊維補強層に接触する外側層が、エチレン・αオレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPR配合物)で形成されている積層体が用いられていた。内管内側層をPA系樹脂で形成するのは、ガス不透過性を担保するためであり、内管外側層をEPR配合物で形成するのは、繊維補強層(通常、レゾルシンホルマリンラテックス(RFL)処理されている。)との加硫接着性、及び、繊維補強層の外側に形成される外管(通常、耐候性の良好なEPR配合物で形成される。)との接着性を担保するためである。
【0005】
ここで、上記内管内側層と外管内側層とは、前者が極性材料であり後者が非極性材料であるため、接着性があまり良好でない。接着性が良好でないと、負圧等により、内管閉塞が発生するおそれがある。
【0006】
このため、通常、内管内側層と内管外側層との間に、接着剤を使用して対処していた。
【0007】
しかし、内管内側層押出し後、接着剤の塗布作業を必要とし、生産性が良好でない。
【0008】
この問題点を解決するために、例えば、下記内容のゴム積層体が開示されている(特開平8−34886号)。
【0009】
下記変性PA樹脂▲1▼からなるPA樹脂層と下記ゴム配合物▲2▼からなるハロゲン化ブチルゴム層とが加硫接着されてなるゴム・樹脂積層体。
【0010】
▲1▼PA樹脂90〜50容量%と、不飽和カルボン酸またはその誘導体モノマーのグラフト重合により変性したエチレン・αオレフィン・非共役ジエンゴム(EOR)10〜50容量%とからなる変性PA樹脂。
【0011】
▲2▼ハロゲン化ブチルゴム100重量部に対して、不飽和カルボン酸またはその誘導体モノマーのグラフト重合により変性したポリイソプレン0.1〜35重量部を添加したものに、加硫剤として臭素化アルキルフェノールホルムアルヒデド樹脂3〜15重量部添加されてなるゴム配合物。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記内容のゴム・樹脂積層体の場合、本発明者らが、追跡試験をした結果、十分な接着性をゴム・樹脂間との間に安定して得ようとすると、加硫時間を長くする必要があり、生産性に問題が発生することが分かった。
【0013】
本発明は、上記にかんがみて、加硫時間を長くしなくても、十分な接着性をゴム・樹脂間との間に安定して得られ、生産性の向上が期待できるゴム・樹脂積層体及びガス不透過性補強ホースを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明のゴム・樹脂積層体は、上記課題を下記構成により解決するものである。
【0015】
下記変性PA▲1▼からなるPA系樹脂層とEOR層との間に、下記ゴム配合物▲2▼からなるハロゲン化ブチル系ゴム層が介在されて相互に加硫接着されてなることを特徴とするゴム・樹脂積層体。
【0016】
▲1▼PA樹脂90〜50容量%と、不飽和カルボン酸またはその誘導体モノマーのグラフト重合により変性したEOR10〜50容量%とからなる変性PA樹脂。
【0017】
▲2▼ハロゲン化ブチルゴム100重量部に対してカルボキシル基または水酸基を導入した変性液状ポリイソプレン(変性液状IR)1〜10重量部を添加したものに、加硫剤として臭素化アルキルフェノールホルムアルヒデド樹脂が、加硫促進剤として、亜鉛華及びチウラム系加硫促進剤が添加されてなるゴム配合物。
【0018】
(2) 本発明のガス不透過性補強ホースは、上記課題を下記構成により解決するものである。
【0019】
繊維補強層の内側に形成される内管として、上記(1) のゴム・樹脂積層体を、樹脂層が内管内側層となるように適用したものである。
【0020】
【構成の詳細な説明】
以下の説明で、配合単位は、特に断らない限り、重量単位である。
【0021】
(1) 図1は、本発明の樹脂・ゴム積層体を、適用したガス不透過性補強ホースの一例である。
【0022】
当該ホースは、外管12と、繊維補強層14と、内管16とを備えている。
【0023】
ここで、外管12は、通常、耐候性の良好なエチレン・αオレフィン・非共役ジエンゴム(EOR)配合物で形成されている。
【0024】
ここで、EORとしては、上市されている汎用のものを使用できる。通常、エチレン含量50〜75%のものを使用する。EORのαオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のうちから1種または複数種を選択して使用するが、通常、プロピレンを使用する。また、非共役ジエン(第3成分)としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる、その含量は、通常、0.5〜5%とする。
【0025】
繊維補強層14は、スパイラル、ニッティング、編組等に任意であるが、通常、編組補強層とする。該補強層に使用する繊維としては、ポリエステル(PET)・ポバール・ナイロン(PA)等任意である。
【0026】
(2) 上記内管16において、内側層18、介在層20及び外側層22の3層構造となっている。
【0027】
そして、最外層22は、前述の如く、外管12と同様の材料であるEOR配合物で形成されている。この外側層22の厚みは、1〜4mm(好ましくは、1.5〜3.0mm)とする。薄すぎると、補強糸との接着性に劣り、厚過ぎると、介在層(IIR)の相対的厚みが薄くなり、ガス不透過性及び水分不透過性を担保し難くなる。
【0028】
(3) 内側層18は、前述の公報に記載の変性PA樹脂を使用できる。すなわち、PA樹脂90〜50容量%と不飽和カルボン酸またはその誘導体モノマーのグラフト重合により変性したエチレン・αオレフィン・非共役ジエンゴム(EOR)10〜50容量%とからなる。
【0029】
PA樹脂が50容量%未満になると樹脂材料のガス不透過性が低下し、EORが10容量%未満では、後述のIIR層(ハロゲン化ブチル系ゴム層)との接着性に問題が発生し易くなる。
【0030】
PA樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/66/610、またはこれらのブレンド物等を挙げることができる。また、変性EORのグラフト重合成分である不飽和カルボン酸としては、及び、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸を挙げることができる。その誘導体としては、酸無水物・アミド・エステル及び酸ハライド等を挙げることができる。これらグラフト重合成分は、変性エチレン・αオレフィン・ジエン三元共重合体中において、0.1〜20モル%の範囲とすることが望ましい。
【0031】
内側層18の厚みは、0.05〜0.2mmとする。薄過ぎると、ガス不透過性を担保しがたく、厚過ぎると、補強ホースの可撓性が阻害されるおそれがある。
【0032】
(4) 介在層20は、ハロゲン化ブチルゴム(ハロゲン化IIR)100部に対してカルボキシル基または水酸基を導入した変性液状IR1〜10重量部を添加したものに、加硫剤として臭素化アルキルフェノールホルムアルヒデド樹脂が、加硫促進剤として、亜鉛華及びチウラム系加硫促進剤が添加されてなるゴム配合物で形成されている。
【0033】
上記介在層20の厚みは、0.05〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.5mm)とする。薄過ぎると、ガス不透過性及び水分不透過性を担保し難くなるとともに接着性が低下し、厚過ぎると、外側層の厚みが相対的に薄くなり、補強糸との接着性が低下するためである。
【0034】
ここで、加硫促進剤として、亜鉛華及びチウラム系のどちらか一方でも、本発明の効果、加硫時間の短縮は期待できない。
【0035】
そして、カルボキシル基及び水酸基の導入量は、それぞれ1分子当り、3〜10個、3〜6個とする。
【0036】
上記臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂の配合量は、2〜10部、望ましくは、3〜6部とする。過多では、スコーチが速く、過少では、加硫が甘く、夫々、十分な物性が安定して得難い。
【0037】
また、亜鉛華及びチウラム系加硫促進剤の配合量は、前記ハロゲン化IIR100部に対して、それぞれ、3〜8部(望ましくは4〜6部)、及び、0.1〜1.0部(望ましくは0.2〜0.8部)とする。
【0038】
なお、チウラム系加硫促進剤としては、汎用のものを使用でき、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等を挙げることができる。
【0039】
【試験例】
A.表1・2に示す各配合処方の塩素化IIR配合物及びエチレンプロピレン非共役ジエン三元共重合体(EPDM)配合物を使用して、下記各試験を行った。なお、変性PA樹脂は、「ザイテルST811HS」(デュポン社製)を使用した。
【0040】
(1) スコーチ特性:各配合物を125℃において、ムーニー粘度計で粘度を測定し、最低値から5単位上昇するまでの最初からの時間とスコーチタイム(t5 )とし、同様にさらに35単位上昇するまでの時間をt△30とした。
【0041】
(2) 常態物性:引張破断強度・伸び、100%モジュラス、硬度(JIS A)、圧縮永久歪みについては、JIS K 6301 に準じて行った。
【0042】
(3) 変性PA樹脂層と塩素化IIR層との接着試験:
マンドレルに変成PA樹脂層を薄層コーティングし、冷却後、その上に塩素化IIR層をコーティングした。続いて、160℃×60分のスチーム加硫により試験片を得た。接着性は手で剥したときの界面状態で評価した。
【0043】
(4)EPDM層と塩素化IIR層との接着試験
EPDM、IIRをそれぞれロールによりシート状に成形したものを貼り合わせ、80℃、20kgf/cm2で10秒間圧着し、160℃×60分のスチーム加硫により試験片を得た。接着性は、巾1cmの短冊ピースに切り出し、180°ピーリング試験(50mm/分)を実施した。
【0044】
B.各試験結果を表3・4に示す。各試験結果から、本発明の各実施例は、加硫時間が短くても、接着性が良好であることが分かる。また、EPDMの加硫時間も塩素化IIRのそれと近似し、望まし処方であることがわかる。
【0045】
【発明の作用・効果】
本発明のゴム・樹脂積層体及びガス不透過性補強ホースは、上記のような構成により、加硫時間が短くても、十分な接着性を、変性PA樹脂層とハロゲン化IIR層、及び、ハロゲン化IIR層とEOR層との間に得られる。
【0046】
従って、加硫時間を長くしなくても、十分な接着性をゴム・樹脂間との間に安定して得られ、生産性の向上が期待できる。特に、ガス不透過性補強ホースに適用した場合、その効果は大きい。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴム・樹脂積層体を適用したガス不透過性補強ホースの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
12 外管
14 繊維補強層
16 内管
18 内管の内側層
20 内管の介在層
22 内管の外側層
Claims (2)
- 下記変性ポリアミド樹脂(1)からなるポリアミド樹脂層とエチレン・αオレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム層との間に、下記ゴム配合物(2)からなるハロゲン化ブチルゴム層が介在されて相互に加硫接着されてなることを特徴とするゴム・樹脂積層体。
(1)ポリアミド樹脂90〜50容量%と、不飽和カルボン酸またはその誘導体モノマーのグラフト重合により変性したエチレン・αオレフィン・非共役ジエンゴム10%〜50容量%とからなる変性ポリアミド樹脂。
(2)ハロゲン化ブチルゴム100重量部に対して、カルボキシル基または水酸基を導入した変性液状ポリイソプレン1〜10重量部が添加されるとともに、加硫剤として臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂2〜10重量部が、加硫促進剤として、亜鉛華3〜8重量部及びチウラム系加硫促進剤0.1〜1.0重量部が添加されてなるゴム配合物。 - 繊維補強層の内側に形成される内管において、内側層が、下記変性ポリアミド樹脂(1)で形成され、前記繊維補強層に接触する外側層が、エチレン・αオレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物で形成されている補強ホースにおいて、前記内側層と外側層との間に下記ゴム配合物(2)からなる介在層が介在されて相互に加硫接着されてなることを特徴とするガス不透過性補強ホース。
(1)ポリアミド樹脂90〜50容量%と、不飽和カルボン酸またはその誘導体モノマーのグラフト重合により変性したエチレン・αオレフィン・非共役ジエンゴム10〜50容量%とからなる変性ポリアミド樹脂。
(2)ハロゲン化ブチルゴム100重量部に対してカルボキシル基または水酸基を導入した変性液状ポリイソプレン1〜10重量部が添加されるとともに、加硫剤として臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂2〜10重量部が、加硫促進剤として亜鉛華3〜8重量部及びチウラム系加硫促進剤0.1〜1.0重量部が添加されてなるゴム配合物。
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