JP3577124B2 - 力制御ロボットを用いて嵌合データを取得する方法 - Google Patents

力制御ロボットを用いて嵌合データを取得する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本願発明は、部品の組立等に用いられる産業用ロボット(以下、単に「ロボット」と言う。)の技術に関し、更に詳しく言えば、部品の組立等の為に行なわれるワーク間の嵌め合い作業に関する嵌合データを取得する為の方法に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば、工場で行なわれる部品の組立工程には、ワーク同士の嵌め合い作業が含まれていることが非常に多い。従って、このような嵌め合い作業を含む組立工程をロボットを用いて自動化、省力化しようとする場合には、何らかの方法でロボットに嵌め合い作業を教示する必要がある。
【0003】
その為に従来から用いられてきた方法は、ロボットを手動操作(ジョグ送り)し、マスターワーク(基準となるワーク)について嵌め合い作業をプレイバック方式で教示するというものであった。この方式で嵌め合い作業を教示する場合、アプローチ点、即ちワーク同士の嵌め合いを開始する一歩手前でロボットがとるべき位置(姿勢を含む。以下同様。)とそのアプローチ点から嵌め合いの為に移動する方向が教示される。
【0004】
しかし、アプローチ点と挿入方向をオペレータの手動操作で行なった場合、オペレータの熟練度や教示作業にかけることが出来る時間の制約から、教示されたアプローチ点と挿入方向に不確定な誤差が生じる。
【0005】
教示に多少の誤差があっても嵌め合い作業を適正に実行し得るようにする為に、嵌め合い作業時を行なうロボットの制御に力制御の手法を適用することが知られている。この方法によれば、嵌め合い作業時に教示誤差に応じてワーク間に作用する力(またはそこから派生する力)が検出され、検出された力を指標に用いたロボットの制御が行われる。力制御の手法が適用されるロボットは、力制御ロボットと呼ばれている。
【0006】
しかし、力制御ロボットは検出された力に基づいてロボット動作の修正を行なうものであるから、嵌め合い作業時には教示誤差の大きさに対して比例的にロボット動作の修正時間が必要となる。従って、力制御ロボットを用いた場合にも、正確な教示が行なわれていなければ、嵌め合い作業を含む工程の作業効率が低下する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本願発明の目的は、嵌め合い作業を行なうロボットの為に正しい嵌合データ(アプローチ点、挿入方向等に関するデータ)を取得する方法を提供することにある。また本願発明は、このことを通して、嵌め合い作業の為の教示作業の負担を軽減するとともに嵌め合い作業を含む工程の作業効率の向上を図るものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、手動操作等による嵌め合い作業の教示(予備教示)が行なわれた力制御ロボットの再生運転の過程を通して嵌合データを獲得することによって上記技術課題を解決したものである。
【0009】
即ち、嵌め合いが行なわれる一方を代表するマスターワーク(以下、「支持ワーク」と言う。)を支持したロボットに対して先ず予備的な嵌め合い作業の教示が行なわれる。この予備的な教示は、通常、オペレータによるロボットの手動操作によって行なわれるが、オフラインデータが利用出来る場合にはそれを援用しても構わない。
【0010】
この予備教示では、通常、嵌め合い作業のアプローチ点(位置と姿勢)並びに支持ワークの嵌め合いの為の移動方向がロボットに教示される。次いで、この予備教示の下で力制御ロボットの再生運転を行なう。再生運転の実行過程において、適正なアプローチ点の位置及び嵌め合い移動方向を表わすデータが取得される。取得したデータをロボットコントローラに記憶させれば、より正確に嵌め合い作業を実行する為に必要なデータがロボットに教示されることになる。
【0011】
ロボットには、嵌め合い作業ではめ込む側のワーク(例えば、部品受け入れ部材の穴乃至凹部に収容される部品)を支持させるの通常であり、その場合には、前記嵌合方向は支持ワークの挿入方向となる。一方、ロボットに嵌め合い作業ではめ込まれる側のワーク(例えば、部品を受け入れる穴乃至凹部を有する部材)を支持させた場合であれば、前記嵌め合いの為の移動方向はそのロボットに支持されていない方のワークの挿入方向(但し、向きは反対)となる。力制御は、例えばインピーダンス制御と呼ばれる方式で実行される。
【0012】
嵌合データは、前記再生運転過程で嵌め合い進行状態が異なる少なくとも二つの状態におけるロボット位置に基づいて計算される。嵌合データには、嵌め合い作業のアプローチ点の位置・姿勢を表わすデータと嵌め合い実行の為のロボットの移動方向を表わすデータが含まれるが、更に、嵌め合い実行の為のロボットの移動距離を表わすデータが含まれることが好ましい。
【0013】
【作用】
本願発明においては、手動操作等による嵌め合い作業の予備教示が行なわれた力制御ロボットの再生運転の過程を通して嵌合データが獲得される。予備教示では、通常、嵌め合い作業のアプローチ点(位置と姿勢)並びに支持ワークの嵌め合いの為の移動方向がロボットに教示される。次いで、この予備教示の下で力制御ロボットの再生運転が行わる。そして、再生運転の実行過程において、適正なアプローチ点の位置及び嵌め合い移動方向を表わすデータが取得される。取得したデータをロボットコントローラに記憶させれば、より正確に嵌め合い作業を実行する為に必要なデータがロボットに教示されることになる。
【0014】
嵌合データは、前記再生運転過程で嵌め合い進行状態が異なる少なくとも二つの状態(例えば、挿入中途時点と挿入完了時点)におけるロボット位置に基づいて計算することが出来る。嵌合データには、嵌め合い作業のアプローチ点の位置・姿勢を表わすデータと嵌め合い実行の為のロボットの移動方向を表わすデータが含まれるが、更に、嵌め合い実行の為のロボットの移動距離を表わすデータが含まれていれば、嵌合データとしてより有用なものが取得される。取得された嵌合データは、以後実際のワーク間の嵌め合い時により短時間でより正確な嵌め合い作業を実施する為に使用される。
【0015】
【実施例】
本願発明の方法の適用例として、図1に示したようにロボットの手先に挿入側のマスターワークを支持し、被挿入ワークへの嵌め合い作業に関する嵌合データを取得する方法を説明する。なお、手動操作による教示の下での再生運転時に用いる力制御の方式として、本実施例ではインピーダンス制御法を採用する。
【0016】
図1において、符号1は力制御ロボット本体で、ケーブル11を介してロボットコントローラ2に接続されている。ロボット(本体)1の構造自体は従来のものと特に変わるところはない。また、ロボットコントローラ2についても、後述する処理を実行する為のソフトウェア手段を除けば、従来より使用されているものと同じで良い。
【0017】
力制御ロボット1の手首先端には、X,Y,Z軸方向の並進力とそれらの軸回りのモーメント(まとめて6軸力と言う。)を検出できる力センサ3が取り付けられている。符号31は、力センサ3とロボットコントローラ2を接続するケーブルを表わしている。
【0018】
嵌め合い作業の対象とされるワークを代表する一組のマスターワークが符号4,5で示されており、突起41を有する方のマスターワーク4は力センサ3を介してロボット1に取り付けられている。また、穴51を有するマスターワーク5はワークテーブル6上に位置決めされている。
【0019】
マスターワーク4の突起41は、マスターワーク5の穴51と整合した形状と寸法を有しており、嵌め合い作業実行時にはロボット1の移動によって突起41が穴51内に挿入される。なお、本実施例とは逆に、力制御されるロボット1に穴を有する方のワークを支持して嵌め合い作業を実行する場合もある。
【0020】
図2は、上記配置で使用されるシステムの概要を要部ブロック図で示したものである。同図を参照すると、システム全体は、ロボットコントローラ20、該ロボットコントローラ20によって制御されるロボット(本体機構部)1、ロボット本体のアーム先端部に支持される6軸力センサ3、該力センサ3の検出信号を処理する信号処理装置30から構成される。
【0021】
ロボットコントローラ20は中央演算処理装置(以下、CPUという。)21を備えている。、該CPU21には、ROMからなるメモリ22、RAMからなるメモリ23、不揮発性メモリ24、ロボットの教示及び他のシステム各部の動作についての各種の指令入力あるいは設定値入力を行なうキーボードを備えた教示操作盤25、信号処理装置30との間のインターフェイス機能を果たす入出力装置26、及びロボット本体1の各軸の動作をサーボ回路28を介して制御するロボット軸制御部277が、各々バス29を介して接続されている。
【0022】
ロボット本体1のアーム先端部に搭載される力センサ3には、例えば歪ゲージで構成され発振器により交流駆動される複数のブリッジ回路を内蔵した公知の構造のものが使用出来る。力センサ3からは、6軸力の各成分を表わす検出信号が信号処理装置30に出力される。
【0023】
信号処理装置30に於ける信号処理の概略を例記すれば、次のようになる。力センサ3から出力された各検出信号は、差動アンプで増幅後、同期整流されて直流信号に変換された上で信号処理装置内のマルチプレクサに入力される。マルチプレクサは、ロボットコントローラ20のCPU21から入出力装置26を介して受け取る制御信号に従い、各成分を表わす検出信号を順次サンプルホールド回路及びA/Dコンバータを介して入出力装置26へ送り出す。
【0024】
CPU21は、これを順次不揮発性メモリ24内の所定領域に格納する。格納された力センサ3の検出データは、後述する態様で行なわれるロボットの力制御(ここでは、インピーダンス制御)の為に利用される。
【0025】
ROM22、RAM23及び不揮発性メモリ24は、上記力センサ3の検出データの格納の他に、ロボットコントローラ20自身の動作を制御するプログラム、後述するインピーダンス制御及び嵌合データ取得の為の処理、信号処理装置20との間の信号授受のコントロール等を実行するプログラム並びに各処理の関連設定値の格納等に用いられる。この設定値には、力センサ3に設定されたセンサ座標系とロボットに設定された直交座標系との間の変換行列のデータが含まれている。
【0026】
以上の事項を前提として、以下、本実施例における嵌合データの取得方法について図3〜図8を参照して説明する。嵌合データを取得するプロセスは、[1]予備教示の段階と[2]インピーダンス制御(一般には、力制御)による再生運転の段階に大別される。
【0027】
[1]予備教示の段階
図3は、予備教示されるアプローチ点(位置と姿勢)と移動方向(挿入方向)を模式化して示した図である。予備教示は通常オペレータによる手動操作(ジョグ送り)によるティーチング・プレイバック方式によって行なわれる。この予備教示は、後述する力制御(インピーダンス制御)に支障を来さない程度の精度で行なえば良く、従って、オペレータに重い作業負担を負わせることがない。
【0028】
図3中においては、ロボットに支持されるマスターワークはその突起を含めて符号4で表示されている。なお、本図以下、図4、図5及び図6においては、力センサ及びロボットの手首の図示は省略した。
【0029】
ATはアプローチ点として予備教示されたツール先端点TCPの位置・姿勢をベース座標系Σ 上で表わした行列である。また、 は予備教示されたマスターワーク4の挿入方向(一般には、嵌め合い実行時のロボットの移動方向)を同じくベース座標系Σ 上で表わしたベクトルである。
【0030】
アプローチ点の位置・姿勢の予備教示は、ロボットに支持されたマスターワーク4の突起が他方のマスターワーク5の穴51にほぼ正対する位置・姿勢(一般には、嵌め合いに移行し得る直前の位置・姿勢)をとるようにロボットを移動させ、その時の位置・姿勢を表わす行列 ATのデータをロボットコントローラ20の不揮発性メモリ14の所定領域に書き込むことによって実行される。
アプローチ点の位置・姿勢を表わす行列 ATは、回転行列 ATと位置ベクトル ATを含む同次変換行列として次式(1)のように書ける。
【0031】
【数1】
Figure 0003577124
次いで、マスターワーク4の挿入方向を教示する為に、オペレータはロボットに支持されたマスターワーク4の突起が他方のマスターワーク5の穴51内に挿入されると思われる方向にロボットを移動させ、適当な位置(例えば、実際に支持ワーク4の突起が穴51内にいくらか挿入されかかった状態)で停止させる。この時のTCPの位置・姿勢を GTとする。また、同次変換行列行列 GTに含まれる回転行列を GTとし、位置ベクトルを GTとする。行列 GTを記せば次式(2)のように書ける。
【0032】
【数2】
Figure 0003577124
挿入方向を表わすベクトル は、次式(3)の計算によって求められる。このベクトルのデータをロボットコントローラ20の不揮発性メモリ14の所定領域に書き込むことで挿入方向の予備教示は完了する。
【0033】
=( GTAT)/| GTAT| ・・・(3)
[2]インピーダンス制御による再生運転の段階
図4〜図8を参照して説明する。図4及び図5は、図3と併せて再生運転による挿入プロセスの進行の様子を図3と同様の形式で概念的に表わした図である。また、図6は図3〜図5と同様の描示形式を用いて、本実施例で得られる嵌合データの内容を表わした図である。図7は、この再生運転の段階で実行される処理の概要について説明するフローチャートである。更に、図8はインピーダンス制御について説明するフローチャートである。
【0034】
図7のフローチャートに記したように、先ず最初に、上記予備教示で作成された嵌合データを含むプログラムの一ポイント分(アプローチ点の分)を読み込み(ステップS1)、予備教示されたアプローチ点へロボットのTCPを移動させる(ステップS2)。この時の状態は、図3に描示したものとなる。
【0035】
次いで、プログラムの次の一ポイント分(ベクトル のデータを含むブロック)を読み込み(ステップS3)、教示された挿入方向へのTCPの移動を開始させる(ステップS4)。通常、予備教示された方向には多少の誤差が存在するから、ベクトル の方向への移動開始後のある時点で支持マスターワーク4が他方のマスターワーク5と接触し、それによって発生する6軸力が力センサ3によって感知される(ステップS5)。
【0036】
本実施例においては、この時点からインピーダンス制御が開始される(ステップS6)。支持マスターワーク4が他方のマスターワーク5と接触するまでは、ロボットの移動方向は教示された移動方向と一致するが、両マスターワークが接触し、インピーダンス制御が開始されると、ロボットの移動方向はインピーダンス制御の結果、穴51の軸方向に修正される。
【0037】
そして、予備教示されたアプローチ点またはマスターワーク接触時点の位置から予め設定された適当な距離sだけロボットが移動した時点で(ステップS7)、その時点におけるTCPの位置・姿勢をロボットコントローラ20の不揮発性メモリ24内に記憶する(ステップS8)。図4はこの挿入途中位置における状態を概念的に示したものである。
【0038】
ここで記憶されたロボットのTCPの位置・姿勢を 、それに含まれる回転行列を 、位置ベクトルを とする。行列 を記せば次式(4)のように書ける。
【0039】
【数3】
Figure 0003577124
ロボットを更に穴51の軸方向に移動させ、支持マスターワーク4の先端(突起先端)が穴51の底部に到達したならば(ステップS9)、その時点におけるTCPの位置・姿勢をロボットコントローラ20の不揮発性メモリ24内に記憶する(ステップS10)。図5はこの時点における状態を概念的に示したものである。ここで記憶されたロボットのTCPの位置・姿勢を 、それに含まれる回転行列を 、位置ベクトルを とする。行列 を記せば次式(5)のように書ける。
【0040】
【数4】
Figure 0003577124
次いで、次式(6)〜(9)の計算によって嵌合データを求め、ロボットコントローラ20の不揮発性メモリ24内に記憶し(ステップS11)、処理を終了する。なお、式(10)は教示されるアプローチ点におけるTCPの位置・姿勢をまとめて表わした同次変換行列を表わしている。アプローチ点と挿入方向のデータについては、予備教示で書き込まれた行列 ATのデータとベクトル ATのデータを、ここで計算される行列 のデータとベクトル のデータに各々書き換える方式とすることが出来る。
【0041】
挿入距離;l=| AT | ・・・(6)
挿入方向; n=( )/| | ・・・(7)
アプローチ点における姿勢; ・・・(8)
アプローチ点における位置; −l ・ n ・・・(9)
【0042】
【数5】
Figure 0003577124
上記方法で得られた嵌合データは、以後多数の嵌め合い対象ワークについて力制御ロボットを用うて行なわれる嵌め合い作業に利用出来る。その際には、高精度の嵌合データに基づいて定められるロボット経路に対して力制御時による僅かな修正が行なわれるだけなので、修正時間が非常に短くなる。
【0043】
最後に、上記実施例の中で用いられているインピーダンス制御法について説明するが、この制御方法自体は公知であるから、概要のみを述べる。
インピーダンス制御法は、ロボットを後述の式(11)の運動方程式に従い、手先に加わった力に応じて動作するように制御する力制御法である。
【0044】
マスターワーク4の先端面と中心軸の交点を原点とし、x軸をツールの進行方向としたツールに固定された座標系(図4で、行列 で表わした座標系)を考え、この座標系を前述した座標系 Σ に一致させることを位置制御の目標とする。そして、力の目標力 は、 =[ τ とする。
【0045】
ここで、 は目標とする力、 τ は目標とするトルクである。これらは、嵌め合いが完了した状態(図5参照)で望まれる力の状態に応じて設定される。ここでは、 =[ ,0,0 ]τ =[0,0,0]とする。
【0046】
従って、ロボットが穴51の内壁面に沿って移動し、嵌め合いが完了して図5に示した状態になると、マスターワーク4の先端が穴51の底に突き当たり、ロボットは上記目標 に設定された平衡状態に到達し、移動は停止される。この平衡状態到達による移動停止が、図7のフローチャート中ステップS9で判断される。
【0047】
今、座標系 Σ を位置、姿勢の6次元ベクトルで表したものを とすると、目標インピーダンスは次の(11)式となる。
【0048】
【数6】
Figure 0003577124
上記(11)式において、変数rの上に付したドット数はその数だけの微分を表す。また、上記(11)式において、
Mは6行6列の目標慣性行列
Dは6行6列の目標粘性行列
Kは6行6列の目標剛性行列
である。この実施例のように、力制御方向、位置制御方向を決めた場合には、
M=diag(m1 ,m2 ,・・・m6 )
D=diag(d1 ,d2 ,・・・d6 )
K=diag(k1 ,k2 ,・・・k6 ) ・・・(12)
とし、
K=0 ・・・(13)
とする。そして、残りのパラメータと9式の具体的な数値は制御対象に依存するので、チューニングなどにより決定する。上述のインピーダンス設定と目標力の設定により、ロボットに支持されたマスターワーク4に加わる力に応じ、ロボットが位置・姿勢を穴51の位置・姿勢に整合させるよう力制御により動作し、嵌合作業が可能となる。
【0049】
上記(11)式より、次の(14)式によってロボットの手先の目標加速度が求まる。
【0050】
【数7】
Figure 0003577124
ロボットの関節変数をθとし、この関節変数の1回微分と上記ベクトル の1回微分の関係を表すヤコビ行列をJとすると、次の(15)式が成り立つ。
【0051】
【数8】
Figure 0003577124
上記22式における目標加速度(θ の2ドット)を直接的に実現する方法の1つとして、ロボットの運動方程式を次の(16)式として、(17)式で求められる値uをアクチュエータへの指令値(モータへのトルク指令)uとする方法がある。
【0052】
【数9】
Figure 0003577124
【0053】
【数10】
Figure 0003577124
なお、上記(16),(17)式において、
τ :ロボットの各関節のトルク
I(θ):ロボット慣性行列
h(θ,θの1ドット):コリオリ力、遠心力等の非線形力
である。
【0054】
また、各アクチュエータ(モータ)毎に位置、速度のサーボ系が構成されている場合には、
【0055】
【数11】
Figure 0003577124
【0056】
【数12】
Figure 0003577124
として、順次Δt時間後の位置θ 、速度の目標値(θ の1ドット)を与えるようにすればよい。
次に、インピーダンス制御演算の処理の概要を図8のフローチャートに示す。この処理では、上記求められた同次変換行列 Diに基づいて、ロボットの各軸値、及び速度より6次元ベクトル 及びその微分値が求められる。また、設定された力の目標力 及び、力センサ3で検出される力 によって(14)式の演算を行い目標加速度( の2ドット)が求められる。更に、求められた目標加速度と各軸の速度より(15)式の演算を行って、各軸毎の目標加速度(θ の2ドット)を求める(ステップS61)。
【0057】
そして、各軸毎にステップS601で求めた目標加速度と検出速度より(18)式並びに(19)式の演算を行って目標速度、目標位置を求め各軸サーボ系に出力する(ステップS62,S63)。
【0058】
上記インピーダンス制御演算の1サイクル分が終了すると、現時点のロボット手先位置ri を求め、該位置と一つ手前の位置ri−1 からロボットの進行方向ベクトルΔiを求め、次のインピーダンス制御演算の処理に備える。
【0059】
以上、本実施例では力制御としてインピーダンス制御法を適用したが、粗い予備教示の下で再生運転を行なうことで、嵌め合いを実行出来るような力制御法である限り、いかなる制御法も採用可能であることは上記説明から明らかであろう。即ち、再生運転を行なうことで嵌め合いに成功すれば、上記説明した計算によってアプローチ点、挿入方向及び挿入距離を含む嵌合データが必ず取得可能となる。
【0060】
【発明の効果】
本願発明によれば、簡単な予備教示を行なうだけで、実際に嵌合が行なわれた時の状態で正しい嵌合データが自動的に取得される。従って、嵌め合い作業の為の教示作業の負担を軽減される。また、本願発明の方法で得られた嵌合データに基づいて力制御ロボットによる嵌め合い作業を実行すれば、嵌合データの精度が高いために力制御時の修正時間が非常に短くなる。これによって、嵌め合い作業を含む工程の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例の全体配置の概要を説明する見取り図である。
【図2】図1に示した配置で使用されるシステムの概要を要部ブロック図で示したものである。
【図3】予備教示されるアプローチ点(位置と姿勢)と移動方向(挿入方向)を模式化して示した図である。
【図4】実施例において、支持マスターワークが中途まで挿入された状態を概念的に表わした図である。
【図5】実施例において、支持マスタワークの挿入が完了した状態を概念的に表わした図である。
【図6】図3〜図5と同様の描示形式を用いて、本実施例で得られる嵌合データの内容を表わした図である。
【図7】実施例において、再生運転の段階で実行される処理の概要について説明するフローチャートである。
【図8】実施例におけるインピーダンス制御演算の処理の概要を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 ロボット本体
2 ロボットコントローラ
3 力センサ
4,5 マスターワーク
11,31 ケーブル
21 中央演算処理装置(CPU)
22 ROM
23 RAM
24 不揮発性メモリ
25 教示操作盤
26 入出力装置
27 ロボット軸制御部
28 サーボ回路
29 バス
30 信号処理装置
41 突起
51 穴

Claims (4)

  1. 嵌め合い作業対象ワークの一方を代表するマスターワークを支持するロボットに該嵌め合い作業を予備的に教示する段階と、
    前記予備教示の下で前記ロボットの再生運転を行なうことを通して前記嵌め合い作業に関する嵌合データを取得する段階を含み、
    前記再生運転の、少なくともその一部において力制御が実行され、
    前記嵌合データが、前記再生運転過程で嵌め合い進行状態が異なる少なくとも二つの状態におけるロボット位置に基づいて計算されるようにした、力制御による嵌合データ取得方法。
  2. 前記嵌合データが、少なくとも前記嵌め合い作業のアプローチ点の位置・姿勢を表わすデータと嵌め合い実行の為のロボットの移動方向を表わすデータを含んでいる、請求項1に記載された力制御による嵌合データ取得方法。
  3. 前記嵌合データが、少なくとも前記嵌め合い作業のアプローチ点の位置・姿勢を表わすデータ、嵌め合い実行の為のロボットの移動方向を表わすデータ並びに嵌め合い実行の為のロボットの移動距離を表わすデータを含んでいる、請求項1に記載された力制御による嵌合データ取得方法。
  4. 前記力制御がインピーダンス制御である、請求項1〜請求項3の内のいずれか1項に記載された力制御による嵌合データ取得方法。
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