JP3576496B2 - エアバック装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両事故の際に乗員の頭部等を保護するエアバック装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に車両の側部には、図4〜図6に示す如くエアバック装置(以下、サイドエアバック装置1)を配置し、サイドエアバック装置1は、ドア開口周縁部2の車両前方端に配置されてセンサー等の指令によりガスを噴出し得るインフレータ3と、インフレータ3に接続されて噴出ガスにより膨脹展開するエアバック本体4とを備え、通常時におけるエアバック本体4は、下方から上方に向かって水平に複数回折り返して折り畳まれ、車内側のドア開口周縁部2であるフロントピラー部及びルーフレール部等のトリム(図示せず)に収納されている。
【0003】
又、エアバック本体4は、膨脹の際において前席の側部を覆う膨張部5と、全体形状を確保すると共に膨張部5の容積を減らして膨脹完了までの時間を短縮させる非膨張部6とから構成されている。
【0004】
膨張部5は、車内側のドア開口周縁部2から取付部7を介して下垂し、車両前方にインフレータ3と連通する連通部8を配すると共に、所定位置に連なるマット体を形成するよう、内部に、連通可能な複数の気室9を形成する区画用接続部10を備え、連通部8の下辺には縁部11を、膨張部5の車両前方辺部には所定幅の第一余白部12を、膨張部5の車両後方辺部には所定幅の第二余白部13を夫々形成している。
【0005】
膨張部5の材質は、2重ジャガード織(紋織)または袋織等からなる2重織の組織の製織方法を利用して表裏2枚の布を織ると同時に、気室9を画する表裏両布の区画用接続部10を共通の組織で一体にし、シリコン、ポリエステル、ナイロン等のコーティング材料によりコーティングし、裁断して整形されている。なお、他の材質としては、ナイロン等の布地にシリコンをコーティングした引布を裁断して得られた2枚の布地、又は1枚の布地を折り返したもの、縫製や接着等の接合手段で袋状に形成したものがあり、コーティング手段としてはディッピング処理方法を利用するものがある。
【0006】
一方、非膨張部6は、連通部8と膨張部5の間を塞ぐよう連通部8の縁部11及び第一余白部12に接合される第一非膨張部14と、膨張部5の車両後方より延在するよう第二余白部13に接合されると共に上部をルーフレール部に取付部7を介して締結される第二非膨張部15とからなり、第一余白部12と第一非膨張部14が重なり合う第一接続部16、及び第二余白部13と第二非膨張部15が重なり合う第二接続部17は、夫々鉛直方向に沿って略直線上に形成されている。
【0007】
又、非膨張部6の材質は、膨張部5の材質と異なり一枚の安価な布で形成すると共にコーティング層を有しないノンコートで構成し、コストの低減を図っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非膨張部6を一枚の布及びコーティング層を有しないノンコートで構成したとしても、エアバック本体4を下方から上方に向かって折り畳んだ際には、図6に示す如く、接続部17の膨張部5と非膨張部6が幾重にも重なり合い、接続部17が他の部位に比べて嵩張るため、エアバック本体4をトリムの内側に収納することが困難になり、トリムの大型化を招いて室内空間を狭めるという問題があった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、エアバック本体を折り畳んだ際に一層コンパクトに収納し得るエアバック装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車内側のドア開口周縁部に折り畳まれて収納されたエアバック本体をガスの流入により前記開口を覆うよう展開膨張させるエアバック装置であって、前記エアバック本体を、ガスの流入により膨脹する膨張部と、該膨脹部の車両前または後に形成される余白部と、前記余白部に夫々接合される非膨張部とを備えて全体形状を確保し、
前記膨張部の余白部と非膨張部の重なり合う接続部を、夫々折り畳み方向に対して斜めになるよう、垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう傾斜に形成したことを特徴とするエアバック装置、に係るものである。
【0011】
本発明のエアバック装置によれば、エアバック本体の膨張部と非膨張部の重なり合う接続部は折り畳み方向に対して斜めに位置するので、エアバック本体を折り畳む際には接続部における膨張部と非膨張部の重なり合いが少なく、接続部の嵩張りを低減してエアバック本体を一層コンパクトに収納し、結果的にエアバック本体を収納するトリムの大型化を抑制して、室内空間を狭めることを防止すると共にコストの低減を図ることができる。又、接続部を垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう傾斜にした場合には、余白部の後側辺部が乗車した人の背中の角度と略平行になり、頭部を覆う必要のある膨張部の気室の形成範囲を容易に確保することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1、図2は本発明を実施する形態の第一例を示すもので、図4〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0014】
第一例のエアバック装置(以下サイドエアバック装置18)に用いられるエアバック本体19は、従来と同様な連通部8及び気室9を備えると共に、膨張部5の車両前方に第一余白部21を、膨張部5の車両後方に第二余白部22を夫々形成している。
【0015】
第一余白部21は、車両前方に位置する前方辺部21aを、垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう方向に傾斜させており、第二余白部22は、車両後方に位置する後方辺部22aを、同様に垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう方向に傾斜させている。又、前方辺部21aの傾斜角及び後方辺部22aの傾斜角は特に垂直線に対して何度でもよいが、その中でも垂直線に対して約30゜以上の傾斜が好ましい。
【0016】
一方、連通部8と膨張部20の間及び膨張部20の車両後方側には非膨張部23を備えており、非膨張部23は、連通部8と膨張部20の間を塞ぐよう縁部11及び前方辺部21aに縫合、接着等により接合される第一非膨張部24と、後方辺部22aに縫合、接着等により接合されると共に上部をルーフレール部より取付部7を介して締結される第二非膨張部25とを備えており、前方辺部21aと第一非膨張部24が重なり合う第一接続部26は、第一非膨張部24の辺部を前方辺部21aと略同じ傾斜角にすることにより一定幅で形成され、同様に後方辺部22aと第二非膨張部25が重なり合う第二接続部27も、第二非膨張部25の辺部を後方辺部22aと略同じ傾斜角にすることにより一定幅で形成されている。
【0017】
以下、本発明のエアバック装置を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0018】
サイドエアバック装置18のエアバック本体19を車内側のドア開口周縁部2に収納する際には、エアバック本体19を、下方から上方に向かって水平に複数回折り返して折り畳み収納する。
【0019】
このとき、膨張部20の第一余白部21と第一非膨張部24の重なり合う第一接続部26、及び膨張部20の第二余白部22と第二非膨張部25の重なり合う第二接続部27は、夫々、折り畳み方向(垂直方向)に対して斜めに位置するので、各接続部26,27の膨張部20と非膨張部23の重なり合いが少なく、各接続部26,27の嵩張りを他の部分と略同じ嵩張りにするよう低減してエアバック本体19を一層コンパクトに収納し、結果的にエアバック本体19を収納するトリムの大型化を抑制して、室内空間を狭めることを防止すると共にコストの低減を図ることができる。
【0020】
又、第二接続部27を垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう傾斜にした場合には、第二余白部22の後側辺部が乗車した人の背中の角度と略平行になり、頭部を覆う必要のある膨張部20の気室9の形成範囲を容易に確保することができる。更に、第二接続部27は、一枚の布で構成される非膨張部23をエアバック本体19の下部において広くするので、エアバック本体19を折り畳み開始時に簡単に折り畳むことができ、且つ二枚の布で構成される膨張部20をエアバック本体19の上部において広くするので、エアバック本体19の上部を安定して折り込むことができる。
【0021】
更に又、第一接続部26及び第二接続部27の傾斜角を垂直線に対し30゜以上に傾斜させると、各接続部26,27の膨張部20と非膨張部23の重なり合いが一層少なく、エアバック本体19を極めてコンパクトに収納することができる。
【0022】
図3は本発明を実施する形態の第二例を示すもので、図4〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
第二例のエアバック装置(サイドエアバック装置28)に用いられるエアバック本体29は、膨脹の際において前席の側部を覆う膨張部30の第一膨張部31と、後席の側部を覆う膨張部30の第二膨張部32と、全体形状を確保すると共に膨張部30の容積を減らして膨脹完了までの時間を短縮させる非膨張部33とから構成されている。
【0024】
第一膨張部31は、車内側のドア開口周縁部から取付部7を介して下垂し、車両前方にインフレータ(図示せず)と連通する第一連通部34を配すると共に、所定位置に連なるマット体を形成するよう、内部に、連通可能な複数の気室(図示せず)を形成する区画用接続部(図示せず)を備え、第一連通部34の下辺には第一縁部35を、第一膨張部31の車両前方辺部には第一例と略同様な第一余白部36を、第一膨張部31の車両後方辺部には第一例と略同様な第二余白部37を夫々形成している。
【0025】
第二膨張部32は、第一膨張部31と連通するよう第二連通部38を介して接続されると共に車内側のドア開口周縁部から取付部7を介して下垂し、且つ第一膨張部31と同様に気室(図示せず)を備え、第二連通部38の下辺には第二縁部39を、第二膨張部32の車両前方辺部には第一膨張部31の第一余白部36と略同様な第三余白部40を形成している。
【0026】
一方、非膨張部33は、第一連通部34と第一膨張部31の間を塞ぐよう第一縁部35及び第一余白部36に縫合、接着等により接合される第一非膨張部41と、第一膨張部31と第二膨張部32の間を塞ぐよう第二余白部37、第二縁部39、第三余白部40に縫合、接着等により接合される第二非膨張部42とからなり、第一余白部36と第一非膨張部41が重なり合う第一接続部43、及び第二余白部37と第二非膨張部42が重なり合う第二接続部44は第一例と略同様に形成され、第三余白部40と第二非膨張部42が重なり合う第三接続部45は第一接続部43と略同様に形成されている。
【0027】
以下、本発明のエアバック装置を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0028】
サイドエアバック装置28のエアバック本体29を車内側のドア開口周縁部2に収納する際には、第一例と略同様にエアバック本体29を、下方から上方に向かって水平に複数回折り返して折り畳み収納する。
【0029】
このとき、第一膨張部31の第一余白部36と第一非膨張部41の重なり合う第一接続部43、第一膨張部31の第二余白部37と第二非膨張部42の重なり合う第二接続部44、及び第二膨張部32の第三余白部40と第二非膨張部42の重なり合う第三接続部45は折り畳み方向(垂直方向)に対して斜めに位置するので、各接続部における膨張部と非膨張部の重なり合いが少なく、各接続部43,44,45の嵩張りを他の部分と略同じ嵩張りにするよう低減してエアバック本体29を一層コンパクトに収納し、結果的にエアバック本体29を収納するトリムの大型化を抑制して、室内空間を狭めることを防止すると共にコストの低減を図ることができる。
【0030】
又、第二接続部44及び第三接続部45を垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう傾斜にした場合には、第二余白部37の後側辺部及び第三余白部40の前側辺部が乗車した人の背中の角度と略平行になり、頭部を覆う必要のある第一膨張部31及び第二膨張部32の気室の形成範囲を容易に確保することができる。更に、第二接続部44は、一枚の布で構成される第二非膨張部42をエアバック本体29の下部において広くするので、エアバック本体29を折り畳み開始時に簡単に折り畳むことができ、且つ二枚の布で構成される第二非膨張部42をエアバック本体29の上部において広くするので、エアバック本体29の上部を安定して折り込むことができる。
【0031】
更に又、第一接続部43、第二接続部44及び第三接続部45の傾斜角を垂直線に対し30゜以上に傾斜させると、各接続部43,44,45の膨張部30と非膨張部33の重なり合いが一層少なく、エアバック本体29を極めてコンパクトに収納することができる。
【0032】
なお、本発明のエアバック装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、非膨張部を膨張部の車両前方側、車両後部側の一方もしくは両方に接続してもよいこと、エアバック本体を前席、後席、前後席の両方等どの位置に対応させてもよいこと、インフレータをフロントピラー側、ルーフレール側、クォータピラー側等のどこに配設してもよいこと、各ピラー部、フロントピラーからルーフレール、クォータピラーからルーフレール、リアピラーからルーフレール、フロントピラーからリアピラーのいずれかにおいてエアバック本体を適用してもよいこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のエアバック装置によれば、下記のごとき、種々の優れた効果を奏し得る。(I)エアバック本体の膨張部と非膨張部の重なり合う接続部は折り畳み方向に対して斜めに位置するので、エアバック本体を折り畳む際には接続部における膨張部と非膨張部の重なり合いが少なく、接続部の嵩張りを低減してエアバック本体を一層コンパクトに収納し、結果的にエアバック本体を収納するトリムの大型化を抑制して、室内空間を狭めることを防止すると共にコストの低減を図ることができる。(II)接続部を垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう傾斜にした場合には、余白部の後側辺部が乗車した人の背中の角度と略平行になり、頭部を覆う必要のある膨張部の気室の形成範囲を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアバック装置を実施する形態の第一例を示す側面図である。
【図2】本発明のエアバック装置において図1のII−II方向より見たエアバック本体の折り畳んだ状態を示す断面図である。
【図3】本発明のエアバック装置を実施する形態の第二例のエアバック本体を示す側面図である。
【図4】従来例のエアバック装置を示す側面図である。
【図5】従来のエアバック装置において図4のV−V方向より見たエアバック本体の折り畳んだ状態を示す断面図である。
【図6】従来のエアバック装置において図4のVI−VI方向より見たエアバック本体の折り畳んだ状態を示す断面図である。
【符号の説明】
2 ドア開口周縁部
18 サイドエアバック装置(エアバック装置)
19 エアバック本体
20 膨張部
21 第一余白部(余白部)
22 第二余白部(余白部)
23 非膨張部
26 第一接続部(接続部)
27 第二接続部(接続部)
28 サイドエアバック装置(エアバック装置)
29 エアバック本体
30 膨張部
33 非膨張部
36 第一余白部(余白部)
37 第二余白部(余白部)
40 第三余白部(余白部)
43 第一接続部(接続部)
44 第二接続部(接続部)
45 第三接続部(接続部)

Claims (1)

  1. 車内側のドア開口周縁部に折り畳まれて収納されたエアバック本体をガスの流入により前記開口を覆うよう展開膨張させるエアバック装置であって、前記エアバック本体を、ガスの流入により膨脹する膨張部と、該膨脹部の車両前または後に形成される余白部と、前記余白部に夫々接合される非膨張部とを備えて全体形状を確保し、
    前記膨張部の余白部と非膨張部の重なり合う接続部を、夫々折り畳み方向に対して斜めになるよう、垂直線に対して上方より車両前側の下方へ向かう傾斜に形成したことを特徴とするエアバック装置。
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