JP3576074B2 - 工業用炉等における強制冷却方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業用炉等において炉及び炉内で加熱処理若しくは焼成された物品を強制的に短時間で冷却する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の工業用炉において加熱処理を施した物品の冷却は、加熱処理後に炉内にそのまま自然放置して冷却する方法、炉内の天井部に冷却装置の冷却用パイプを配置して固定し、そのパイプに外気を送給することにより強制的に冷却して物品を外気にさらしてもよい程度の温度まで冷却する方法等により行われている。
また、燻し瓦を製造する焼成炉においては、バーナーから噴出するガス炎を炉体の燃焼口より投入して約1180℃までの昇熱により瓦素地の締焼きを施し(所要時間:21時間)、ついで燃料の供給が停止されたバーナーから外気を炉内に送り込み又は自然冷却により炉内温度を約920〜900℃の温度まで降下させた後、バーナーによる外気の供給を停止すると共に燃焼口及び煙道を閉じた密閉状態にて燻化用ガスを散布して締焼瓦に燻化着色を施し、続いてそのまま約48時間ほど自然放置して冷却を施している。燻し瓦の焼成炉における強制冷却に関しては、本件出願人に係る実公昭59−20637号公報に、燻化及び冷却時に炉の底部壁に設けた空気予熱道に外気を送り込んで炉体を強制冷却する技術内容が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の工業用炉等における炉及び加熱処理された物品の冷却については、炉の処理能力・生産効率の点から言えば、自然放置による冷却よりも強制冷却方法による方が望ましい。ところが、前者の工業用炉の強制冷却方法においては、冷却用パイプは炉の加熱昇温時に常に高温にさらされることから、パイプが傷み易く耐用年数が短い。このため、加熱処理後の冷却過程のみならず、加熱昇温中にも冷却用パイプに外気を送給することによりパイプの傷みを出来るだけ少なくするとか、耐熱性の高い材質のパイプを使用する等の処置がされている。しかし、加熱昇温時から冷却装置を運転する場合には、冷却作用による炉の熱効率の低下によってランニングコストが高くつき、また耐熱性に優れたパイプを使用する場合には設備費が高くなる等の問題がある。
【0004】
後者の強制冷却方法を採用した燻し瓦の焼成炉において、1ロット当たりの焼成から物品の取り出しに至るまでに要する時間は、自然放冷による場合に比較して約10時間ほど短縮される効果を生ずる。ところが、その1ロット当たりの所要時間をさらに短縮して生産効率を向上させたいという需要者からの要望があり、従来の強制冷却方法ではその要求を満たすことは困難である。
【0005】
この発明の目的は、加熱処理・焼成処理後の炉及び物品についての冷却時間の短縮化を図る工業用炉等における強制冷却方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、炉内に装填された被加熱物の加熱処理が施された後の炉内に、強制冷却装置の冷却用パイプ内に冷却用流体を循環供給させつつ当該パイプを移動手段により又は手動操作により挿入させ、外気を遮断して密閉状態とされた炉及び被加熱物を前記冷却用パイプによる冷却作用によって強制的に短時間で冷却することを特徴とする。
【0007】
同様の目的を達成するために請求項2に記載の発明は、バーナーから噴出するガス炎を炉体の燃焼口より投入して炉内に装填された瓦素地の締焼きを施し、ついで燃料の供給を停止して前記燃焼口及び煙道を閉じた密閉状態にて燻化用ガスを散布して締焼瓦に燻化着色を施し、続いて炉内の温度が着色炭素の燃焼温度以下に低下するまで冷却が施される焼成炉において、前記締焼きの終了後の炉内に、強制冷却装置の単一若しくは複数の冷却用パイプ内に冷却用流体を循環供給させつつ当該パイプを移動手段により又は手動操作により挿入させ、外気を遮断して密閉状態とされた炉及び焼成された瓦を前記冷却用パイプによる冷却作用によって強制的に短時間で冷却することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の効果】
(請求項1の発明)
この工業用炉における強制冷却方法は、冷却用パイプが炉の昇温加熱中には炉外にあり、冷却を施す際には冷却用流体を循環供給させつつを挿入されるので、そのパイプについては比較的低温に対応する材質のものを用いることができて材料コストの低減と耐久性の向上を図ることができる。しかも、炉の昇温加熱中に強制冷却装置により炉内が冷却されることがないので、炉の熱効率が低下しないという利点を生ずる。また、加熱処理処理後の炉及び物品についての冷却時間が短縮されるので、作業能率が著しく向上する。
【0009】
(請求項2の発明)
この燻し瓦の焼成炉における強制冷却方法は、締焼終了後に冷却用パイプ内に冷却用流体を循環供給させつつ当該パイプを炉内に挿入し、炉及び焼成された瓦をその冷却用パイプによる冷却作用によって強制的に冷却するので、燻化処理後の冷却時間は従来の冷却を全く施さない焼成炉の約半分(24時間)となり、1ロット当たりの燻し瓦の焼成に要する時間が大幅に短縮されて生産性の向上に寄与する。これに加えて、上記した請求項1の発明による効果と同様の効果を生ずる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明方法を図面に基づいて説明する。図1は本発明の燻し瓦の焼成炉における強制冷却方法を実施するための強制冷却装置の概要図、図2は冷却用パイプを炉内に挿入して冷却を施す状態を示す説明図、図3は冷却用パイプ内における流体の流れ方向を示す説明図、図4は本発明の強制冷却方法を適用する燻し瓦の焼成炉の概要を示す説明図である。
【0011】
図1に示す強制冷却装置Cは、本発明方法を適用する燻し瓦の焼成炉50の天井壁57に適宜間隔をおいて立設される一対のガイドレール1、1にスライダー2、2を上下方向に移動自由に設け、それらスライダー2、2に冷却用流体としてのエアーの供給用チャンバー11と排気用チャンバー12とを差し渡して一体状に設けている。その排気用チャンバー12にはウインチ装置3のワイヤー4の一端部4aを連結し、該ウインチ装置3の駆動により供給用チャンバー11と排気用チャンバー12とからなる冷却装置本体10を昇降自由に設ける。5、5は前記ワイヤー4を案内するプーリー、6は供給用チャンバー11に配管7を介して冷却用エアーを供給するためのブロワである。
【0012】
なお、上記ガイドレール1、スライダー2及びウインチ装置3からなる一連の昇降装置は移動手段の一例であり、本発明方法においてはこの昇降装置に限定されるものではない。
【0013】
上記排気用チャンバー12の下部には、図1、図2に示すように、複数の排気管13を配設し、それら排気管13に所定長さの冷却用パイプ14を夫々取り付ける。その冷却用パイプ14内の中心部には冷却用エアーを供給する子管15を設け、当該パイプ14の上方寄りに皿形のカバー16を設ける。その子管15の入口部15aにはダンパー17を取り付け、そのダンパー17と前記供給用チャンバー11の出口部11aとをダクトホース18で連結する。
【0014】
しかして、ウインチ装置3の駆動により冷却装置本体10を下降させて冷却用パイプ14の先端側を炉内に挿入し、ブロワ6から送給される冷却用エアーを供給用チャンバー11を介して冷却用パイプ14の子管15に導き(図3)、その子管15の先端から排出されて周囲の気体の熱を奪ったエアーを排気用チャンバー12に送ることにより炉内の雰囲気ガス及び焼成瓦を冷却する強制冷却装置Cが構成される。
【0015】
次に、本発明方法を適用する一般的な燻し瓦の焼成炉50について、図4に基づき簡単に説明する。
炉体51の側壁52には適宜数の燃焼口53を穿設し、それらの燃焼口53にLPガスを燃料とするガスバーナー65の火口が夫々臨むように設けられている。炉体51の底壁54には、多数の吸引口56を介して炉内に連通する2列の排炎道55、55を前後方向に配設し、その排炎道55の奥端部を煙突59に連通するように設ける。炉体51の天井壁57には、上記強制冷却装置Cの冷却用パイプ14を挿入するための挿入口61が形成された台座60と、燻化用ガスを散布するガス供給口62が配設されている。
【0016】
なお、この実施形態においては、強制冷却装置Cの冷却用パイプ14を天井壁57に対して上下方向に移動させる構成とされているところ、該パイプ14を側壁52に対して水平方向に移動させて炉内に挿入自在とする構成とすることも可能である。
【0017】
本発明方法を適用して行われる上記燻し瓦の焼成炉50における焼成操作について説明する。
(1)ガスバーナ65から噴出するガス炎を炉体51の燃焼口53より投入して約1180℃までの昇熱により炉内に装填される図示しない瓦素地の締焼きを施し(所要時間:21時間)、ついでLPガス燃料の供給が停止されたガスバーナー65から外気を炉内に送り込み又は燃焼口53を閉じて自然冷却により炉内温度を約920〜900℃の温度まで降下させる。その後、ガスバーナー65による冷却を施した場合には、外気の供給を停止して前記燃焼口53及び煙道を閉じて炉内を密閉状態とする。
(2)締焼きを施した瓦素地に燻化着色を施す前に、強制冷却装置Cの冷却用パイプ14内に冷却用流体を循環供給させつつ当該パイプをウインチ装置3の駆動により下降させて挿入口61から炉内に挿入させる。その冷却用パイプ14を挿入したときにはカバー16が台座60に当接して同パイプ14が一定位置で停止するので、この状態にて図示しないクランプによりカバー16を固定して外気が炉内に侵入しないように密閉を施す。
(3)(2)の冷却用パイプ14が炉内にセットされた後に、天井のガス供給口62から燻化用ガスを散布して締焼瓦に燻化着色を施す。ブロワ6から供給される冷却用エアーは供給用チャンバー11を介して冷却用パイプ14の子管15に送給される。そして、子管15の先端から排出されて雰囲気ガスの熱を奪ったエアーは、排気用チャンバー12を経て外部に排出される。
(4)しかして、炉内の温度が着色炭素の燃焼温度(約300℃)以下に低下し、製品を炉外に取出すことが可能な温度に至るまで強制冷却装置Cを作動させて冷却操作を施す(約24時間)。冷却操作終了後には強制冷却装置Cのウインチ装置3を再び駆動させて冷却装置本体10を上昇させ、冷却用パイプ14を挿入口61から炉外に退避させたうえでブロワ6の作動を停止させ、製品の取り出しを適宜行う。
【0018】
上述した燻し瓦の焼成炉における強制冷却方法によれば、締焼瓦の燻化処理時より若しくは燻化処理終了後に冷却用パイプに流体を送給して炉及び焼成された瓦を強制的に冷却するため、燻化処理後の冷却時間については従来の冷却を全く施さない焼成炉の約半分(24時間)となる結果、1ロット当たりの燻し瓦の焼成に要する時間が著しく短縮されるという効果を生ずる。加えて、強制冷却装置の冷却用パイプは炉の昇温加熱中には炉外にあり、冷却を施す際には冷却用流体を循環供給させつつ挿入されるため、比較的低温に対応する材質のものを用いることができて材料コストの低減と耐久性の向上をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燻し瓦の焼成炉における強制冷却方法を実施するための強制冷却装置の概要図
【図2】冷却用パイプを炉内に挿入して冷却を施す状態を示す説明図
【図3】冷却用パイプ内における流体の流れ方向を示す説明図
【図4】本発明の強制冷却方法を適用する燻し瓦の焼成炉の概要を示す説明図
【符号の説明】
C→強制冷却装置
1→ガイドレール 2→スライダー 3→ウインチ装置 6→ブロワ
10→冷却装置本体 11→供給用チャンバー 12→排気用チャンバー
14→冷却用パイプ 15→子管 16→カバー
50→燻し瓦の焼成炉 51→炉体 53→燃焼口 57→天井壁
60→台座 61→挿入口
65→ガスバーナー(バーナー)
Claims (2)
- 炉内に装填された被加熱物の加熱処理が施された後の炉内に、予め強制冷却装置の冷却用パイプ内に冷却用流体を循環供給させた当該パイプを、当該パイプ内に当該冷却用流体を循環供給させつつ移動手段により又は手動操作により挿入させ、外気を遮断して密閉状態とされた炉及び被加熱物を前記冷却用パイプによる冷却作用によって強制的に短時間で冷却することを特徴とする工業用炉における強制冷却方法。
- バーナーから噴出するガス炎を炉体の燃焼口より投入して炉内に装填された瓦素地の締焼きを施し、ついで燃料の供給を停止して前記燃焼口及び煙道を閉じた密閉状態にて燻化用ガスを散布して締焼瓦に燻化着色を施し、続いて炉内の温度が着色炭素の燃焼温度以下に低下するまで冷却が施される焼成炉において、前記締焼きの終了後の炉内に、予め強制冷却装置の単一若しくは複数の冷却用パイプ内に冷却用流体を循環供給させた当該パイプを、当該パイプ内に当該冷却用流体を循環供給させつつ移動手段により又は手動操作により挿入させ、外気を遮断して密閉状態とされた炉及び焼成された瓦を前記冷却用パイプによる冷却作用によって強制的に短時間で冷却することを特徴とする燻し瓦の焼成炉における強制冷却方法。
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JP2000192034A JP3576074B2 (ja) | 2000-06-27 | 2000-06-27 | 工業用炉等における強制冷却方法 |
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