JP3575660B2 - 高減衰材料組成物 - Google Patents
高減衰材料組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3575660B2 JP3575660B2 JP36274797A JP36274797A JP3575660B2 JP 3575660 B2 JP3575660 B2 JP 3575660B2 JP 36274797 A JP36274797 A JP 36274797A JP 36274797 A JP36274797 A JP 36274797A JP 3575660 B2 JP3575660 B2 JP 3575660B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acid
- material composition
- examples
- tan
- substance
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Vibration Dampers (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高減衰材料組成物に関し、更に詳しくは、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切、車両の防音壁等に適用される振動や騒音を吸収する制振材・防音材としての高減衰材料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の高減衰材料組成物としての高分子系材料は、典型的な粘弾性挙動を呈するものであり、その材料微小部が何等かの原因で振動すると、夫々の材料微小部に、複素正弦歪(ε*)が発生し、これにより複素正弦応力(σ*)が発生する。複素弾性係数 (E*)は、次式に示したように、これらの比をとったものである。
複素弾性係数(E*)=複素正弦応力(σ*)/複素正弦歪(ε*)
【0003】
この複素弾性係数 (E*)の実数部は、材料の弾性的な性質に係る貯蔵弾性係数(E’)と定義され、その虚数部は、材料の粘性的な性質に係る損失弾性係数(E”)と定義される。損失正接(tanδ)は、次式に示したように、これらの比をとったものである。
損失正接(tanδ)=損失弾性係数(E”)/貯蔵弾性係数(E’)
【0004】
この損失正接(以下、単に「tanδ」とする)は、防音・制振特性を決定する因子の一つであり、この値が高いほど力学的エネルギーを電気あるいは熱エネルギーとして吸収・放出して、優れた吸音性や制振性等の機械特性を示すことが知られている。高減衰材料組成物のtanδとして求められる値は、0.5以上である。
【0005】
この従来の要求特性を満たした高減衰材料組成物として、例えば、高分子系複合材料が知られている。この高分子系複合材料はポリマーアロイ或いは高分子網目構造(IPN技術)を有する高分子化合物をベースポリマーとしており、これに充填剤(マイカ剤等)や可塑剤を添加し、所定の製造工程を経て得られたものである。この場合に、一般にベースポリマーとしては各種ゴム、高分子樹脂材料の他に、エラストマー樹脂材料等が用いられている。しかし、このような高分子系複合材料のtanδの値は、ベースポリマーとして各種ゴム材料を用いた場合は、0.3〜1.0程度、高分子樹脂材料を用いた場合は、1.0〜2.0程度である。
【0006】
また、他の高減衰材料としては、ベースポリマーとして、ポリ塩化ビニル(或いは、これを含む高分子)を用い、これに種々の添加剤、可塑剤などを配合した例がよく知られている。例えば、特開平5−65382号公報に開示された高減衰材料組成物は、配合物質として縮合多環式化合物を用いており、そのtanδは、0.98〜1.7程度である。また特開平5−59241号公報に開示されたものは、配合物質として、石油系樹脂及び可塑剤を用いており、そのtanδは、0.9〜1.85程度である。
【0007】
一方、このような高分子系複合材料の他、所定の製造工程を経て得られた単独材料からなる高減衰材料が知られている。従来知られた好適な例としては、塩素化ポリエチレンによるものや、上記したポリ塩化ビニルによるもの等が挙げられる。ちなみに、塩素化ポリエチレン単独品による高減衰材料は、そのtanδピークが1.3であり、そのピーク温度が10℃である。また、ポリ塩化ビニル単独品による高減衰材料は、そのtanδピークが1.8程度であり、そのピーク温度が92℃前後である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した種々の高減衰材料は、従来の要求特性(tanδ≧0.5)に応えているとはいえ、それが使用される環境或いは、その用途等の要請から、より優れたtanδを発現できるものが望まれている。また、特開平5−65382号公報、特開平5−59241号公報等に開示されたものは、そのtanδピーク値が比較的高めであるが、そのピーク温度は、室温から著しく離れている。したがって、室温でのtanδは低く、室温環境で使用すると、所期する減衰性能は得られない。
【0009】
また、上述した従来の高分子系複合材料(高減衰材料組成物)と、単独材料による高減衰材料とを比べてみると、高分子系複合材料は、単独品に対して飛躍的に優れたtanδを発現できるものとはいえない。更にまた、上述した単独品は、複合材料に比べると、比較的安価かつ容易に製造できるという利点から注目されている。しかし、更なる高減衰性能を付与するためには、これをベースポリマーとして用いることを前提に、従来とは異なった観点から材料設計を行う必要がある。
【0010】
ちなみに、従来の高減衰材料が、より高いtanδ値を発現できない原因として、分子間相互作用の大きさ、分子間の相互作用の均一さ、分子間の絡み合いが挙げられる。図5は、上述した従来の高減衰材料組成物のミクロ構造を示したものであり、矢示されるAに係る部分では、高分子が互いに絡み合っている。しかし、それ以外に矢示されるBの部分のように、高分子の間にはファン・デル・ワールス力が働き、約20〜30個程の炭素原子の集団が結合している。
【0011】
したがって、図6に示したように分子間ポテンシャルの分布が広くなり、緩和時間の分布幅が広くなる。ここで、緩和時間の分布幅(H)と損失弾性係数(E”)の関係は、数1で表せるので、緩和時間の分布幅(H)が広くなると、損失弾性係数E”の分布は低く広がる。また、緩和時間の分布幅(H)と貯蔵弾性係数(E’)の関係は、数2で表せるので、緩和時間の分布幅が広くなると、貯蔵弾性係数(E’)の傾きは小さくなる。つまり、緩和時間の分布が広くなるほど、tanδは小さくなる。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】
このことから、そのファン・デル・ワールス力による相互作用(矢示Bに係る部分)を遮断させれば、分子間ポテンシャルの分布の幅を狭め、その高さを最適値にして、分子間の絡み合いを減らすので、より高いtanδを発現させることができると推察される。
【0015】
そこで、上記の問題を解決するために、本出願人は、塩基性の減衰性添加剤を配合することにより、高分子鎖間のファン・デル・ワールス力による相互作用を遮断し、その分子間ポテンシャルを高め、かつ均一化した高減衰材料組成物を提案している。
【0016】
しかしながら、このような高減衰材料組成物によれば、減衰性添加剤として配合する塩基性物質は、全体としては、そのtanδを高める働きをするものの、その塩基性度は、その塩基性物質の種類と配合量とに依存する。したがって、その塩基性度は、より高いtanδを発現できる好適な範囲にあるとは限らない。つまり、より高いtanδを発現させるためには、塩基性度を最適な状態に調節する必要がある。
【0017】
本発明の解決しようとする課題は、配合成分と高分子側鎖との相互作用を変化させることにより、高いtanδを発現することができる高減衰材料組成物を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明の高減衰材料組成物は、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質を1種又は2種以上を配合し、これに酸性物質を配合させたことを要旨とするものである。
【0019】
「塩基」とは、Lewisの定義より非共有電子対を持ち、その非共有電子対を授与することにより配位結合をつくる性質を有するものであり、「酸」とは、この電子対を受け取る能力を有するものを指している。
【0020】
Lewisの定義からすれば、塩基性物質だけでなく酸性物質をも配合すると、酸・塩基反応により上記塩基性物質に含まれる窒素原子に第4級アンモニウム(カチオン)が形成され、それとベースポリマーの極性側鎖との相互作用が高まり、高いtanδの発現に適した程度に変化させられると考えられる。
【0021】
この場合に、「極性側鎖を有するベースポリマー」としては、ゴム材料、熱可塑性エラストマー材料、あるいは、樹脂材料より選ばれた少なくとも1種又は2種以上のベースポリマーからなるものが好適なものとして挙げられる。
【0022】
更に詳しくは、「ゴム材料」としては、天然ゴム、変性天然ゴム、グラフト天然ゴム、環化天然ゴム、塩素化天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、ニトリルゴム/塩化ビニル樹脂ブレンド、ニトリルゴム/EPDMゴムブレンド、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、メチルシリコンゴム、ビニル−メチルシリコンゴム、フェニル−メチルシリコンゴム、フッ化シリコンゴム、フッ素ゴムより選ばれた少なくとも1種又は2種以上のゴム材料が好適なものとして挙げられる。
【0023】
また、「熱可塑性エラストマー材料」としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーより選ばれた少なくとも1種又は2種以上のエラストマー材料が好適なものとして挙げられる。
【0024】
そして、「樹脂材料」としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリふっ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタアクリレート、スチレン・アクリルニトリル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体、塩ビ・酢ビ共重合体、アクリル・塩ビグラフト共重合体、エチレン・塩ビ共重合体、エチレン・ビニルアルコール、塩素化塩化ビニルより選ばれた少なくとも1種又は2種以上の樹脂材料が好適なものとして挙げられる。
【0025】
「塩基性物質」としては、第2級アミン、第3級アミン及び含窒素複素環より選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質、例えばスルフェンアミド系添加剤、チアゾール系添加剤、チウラム系添加剤、グアニジン系添加剤、ベンゾトリアゾール系添加剤、ジチオカルバミン酸塩系添加剤、顔料、ピリジン系添加剤、潤滑油添加剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、ウレタン触媒、イソシアヌル酸誘導物、ヒンダードアミン系添加剤、モルホリン系添加剤より選ばれた少なくとも1種又は2種以上の塩基性の添加剤からなるものが好適なものとして挙げられる。
【0026】
この場合に、「スルフェンアミド系添加剤」としては、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド等が好適なものとして挙げられる。
【0027】
「チアゾール系添加剤」としては、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が好適なものとして挙げられるほか、「チウラム系添加剤」としては、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド又はテトラメチルチウラムジスルフィド等が好適なものとして挙げられる。「グアニジン系添加剤」としては、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−O−トリルグアニジン等が好適なものとして挙げられる。
【0028】
また、「ベンゾトリアゾール系添加剤」としては、紫外線吸収剤である2−(2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、防錆剤である1−[N,N−ビス(2−エチル−ヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)−2−エチルヘキシルアミン、N,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)−ジアミノヘキサン、光安定剤である2,2’−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−6[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]}、N,N−ビス(ベンゾトリアゾールメチル)−2エチルヘキシルアミン、N,N−ビス(ベンゾトリアゾールメチル)−ラウリルアミン、1−(2−エチルヘキシルアミノメチル)−ベンゾトリアゾール、1−(ラウリルアミノメチル)−ベンゾトリアゾール、1−(モルホリノメチル)−ベンゾトリアゾール等が好適なものとして挙げられる。
【0029】
「ジチオカルバミン酸塩系添加剤」としては、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が好適なものとして挙げられるほか、「顔料」としては、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン、2,2’−(1,2−エーテンジイル)ビス(5−メチルベンゾオキサゾール)とジシクロヘキシルフタレート等が好適なものとして挙げられ、「ピリジン系添加剤」としては、2,2−ジチオジオイリジンのブレンド、1,10−フェナントロリン等が好適なものとして挙げられる。
【0030】
「潤滑油添加剤」としては、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)「エポキシ樹脂硬化促進剤」としては、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールが、それぞれ好適なものとして挙げられる。
【0031】
更にまた、「ウレタン触媒」としては、ジモルホリンエーテル、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N,N,N−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N−メチル−N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン等が好適なものとして挙げられる。
【0032】
「イソシアヌル酸誘導物」としては、不飽和樹脂架橋剤であるトリアリルイソシアヌレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等が好適なものとして挙げられる。「ヒンダードアミン系添加剤」としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ビペリジル/トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物等が好適なものとして挙げられる。「モルホリン系添加剤」としては、4,4’−ジチオジモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0033】
「酸性物質」としては、Lewisの定義からすれば、無機酸、有機酸のどちらでも適用できる。本発明では、有機酸の中で特に性能が確認された2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール等より選ばれた少なくとも1種又は2種以上の酸性物質が好適なものとして挙げられる。
【0034】
「塩基性物質の体積」は「ベースポリマーの体積」に対して、0.3以上の割合であることが望ましい。塩基性物質とベースポリマーの体積比がこの範囲内にあれば、適度な割合で、この塩基性物質がベースポリマーの高分子に分散し、高減衰材料組成物に優れた減衰性能が与えられる。一方、塩基性物質とベースポリマーの体積比が0.3未満だと、高減衰材料組成物に減衰性能が与えられない。
【0035】
また、「酸性物質」の「塩基性物質」に対するモル比は、0.5〜3.0の範囲内にあることが望ましい。これらのモル比が、この範囲内にあれば、高減衰材料組成物のtanδを適度なものとする電子供与性が、塩基性物質に与えられる。
【0036】
酸性物質の配合量が、この範囲より少ない場合、その効果は殆ど見られず、また、この範囲より多い場合、適度な相互作用を与えることが困難になるばかりでなく、材料の加工性及び基本物性にも悪影響が及ぼされる傾向にある。一般的に、これらのモル比は、2前後が最適だと思われる。
【0037】
上記構成を有する高減衰材料組成物は、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上有する塩基性物質を少なくとも1種又は2種以上配合し、これに酸性物質を配合させたものであるから、高いtanδの発現に適した電子供与性が塩基性物質に与えられる。これによって、ベースポリマーと塩基性物質との相互作用(インターラクション)が調節され、高減衰材料組成物は、より高いtanδを発現することができる。したがって、本発明に係る高減衰材料組成物によれば、騒音や振動が大幅に吸収される。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。なお、以下の説明において「重量%」とは、ベースポリマー100重量%に対する配合成分の重量%を意味するものである。
【0039】
初めに、表1及び表2は、ベースポリマーに酸性物質と塩基性物質とを配合した本発明品(実施例1〜6)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果、並びにベースポリマーに塩基性物質を配合した比較品(比較例1〜6)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果とを対比して示したものである。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
本発明品(実施例1〜6)は、いずれも極性側鎖を有するベースポリマーとして塩素系ポリマー材料である塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を配合成分としている。また、本発明品(実施例1〜6)は酸性添加剤として、1,2,3−ベンゾトリアゾール(城北化学工業(株)製:商品名「BT−120」)を配合成分としている。
【0043】
上記酸性添加剤1,2,3−ベンゾトリアゾール(BT−120)の構造式を表10に示す。
【0044】
【表10】
【0045】
そして更に、本発明品(実施例1〜3)は、塩基性物質として、実施例1が2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーMDB」)を配合成分とし、実施例2が2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合成分とし、実施例3がテトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーTT」)を配合成分としている。これらの構造式を表11に示す。
【0046】
【表11】
【0047】
また、本発明品(実施例4〜6)は、塩基性物質として、実施例4がテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーTOT」)を配合成分とし、実施例5が4,4’−ジチオジモルホリン(大内新興化学工業(株)製:商品名「バルノックR」)を配合成分とし、実施例6が1,10−フェナントロリン(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。これらの構造式を表12に示す。
【0048】
【表12】
【0049】
一方、比較品(比較例1〜6)は、いずれも、同じくベースポリマーとしてエラスレン401Aを配合成分とする他、塩基性物質として、比較例1がノクセラーMDB、比較例2がスミソーブ250、比較例3がノクセラーTT、比較例4がノクセラーTOT、比較例5がバルノックR、比較例6が1,10−フェナントロリンをそれぞれ配合成分としている。ちなみに、比較品(比較例1〜6)には、酸性物質を配合していない。
【0050】
そして、本発明品(実施例1〜6)及び比較品(比較例1〜6)の作製工程は、以下の通りである。すなわち、実施例1〜6は、上述したエラスレン401A(塩素化ポリエチレン)100重量%に対し、BT−120を実施例1に45重量%、実施例2に31%、実施例3に50重量%、実施例4に19重量%、実施例5に44重量%、実施例6に60重量%それぞれ配合する。そして、これらに塩基性物質をそれぞれ100重量%ずつ配合して、室温で約15〜20分程度、2本ロールで混練する。次に、この混練材料を、熱プレス機により所定の型枠内で、170℃の温度条件下、10分程度溶融プレス成形する。そして更に、0℃の温度条件下、これに130kgf/cm2 の面圧を掛けて冷却プレス成形し、これを2mmシートとする。
【0051】
このとき、塩基性物質は、その体積がベースポリマーの体積に対して、0.3以上の割合で高分子鎖中に分散している。また、その分子相互作用は、配合した酸性物質の塩基性物質に対するモル比(0.5〜3.0)に応じて、本発明品のtanδを高めるのに適した程度になっている。なお、比較品は、表1及び表2に示した各配合成分をいずれも100重量%ずつ配合し、本発明品と同じ工程により作製したものである。
【0052】
次に、本発明品(実施例1〜6)及び比較品(比較例1〜6)のtanδピーク値及びそのピーク温度を測定した。この測定には、株式会社レオロジ社製のスペクトロメータを用い、その測定条件を、歪が0.05%(一定)、周波数が100Hz(一定)とした。
【0053】
以下、測定結果について説明する。まず、実施例1は、比較例1と比べるとtanδピーク値が、一層高くなっている。更に、ピーク温度は、一般的に室温と考えられる20℃前後になっており、極めて優れた結果が得られたといえる。実施例2は、比較例2と比べるとtanδピーク値が上昇し、かつピーク温度は室温に10℃ほど近づいているので、優れた結果といえる。実施例3は、比較例3と比べるとピーク値の上昇の割合が大きいので、極めて優れた成果が得られたといえる。
【0054】
これらの結果について、表1では、極めて優れたものを(◎印)、優れたものを(○印)、一応の成果を得られたものを(△印)、不良なものを(×印)の4段階で評価してある。これにより、実施例1は極めて良好(◎印)、実施例2は極めて良好(◎印)、実施例3は極めて良好(◎印)と評価された。
【0055】
表2においても、前記同様4段階で評価した。実施例4は、比較例4と比べてtanδピーク値も高くなっており、ピーク温度も室温に近くはなっているが、その割合がやや小さいので、良好(○印)と評価された。実施例5は、比較例5と比べてピーク温度が若干室温から少し離れてしまったが、ピーク値の上昇の割合が非常に大きいので、極めて良好(◎印)と評価された。実施例6は、比較例6と比べてピーク値が上昇し、ピーク温度は室温の範囲のままなので、極めて良好(◎印)と評価された。
【0056】
次に、表3及び表4は、ベースポリマーに酸性物質と塩基性物質とを配合した本発明品(実施例7〜10)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果、並びにベースポリマーに塩基性物質を配合した比較品(比較例7〜8)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果とを対比して示したものである。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
本発明品(実施例7〜10)は、いずれも、ベースポリマーとして塩素系ポリマー材料である塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を配合成分としている。また、本発明品(実施例7〜10)は酸性物質として、2−メルカプトベンゾチアゾール(三新化学工業(株)製:商品名「サンセラーM」)を配合成分としている。この酸性物質の構造式は表10に示されている。
【0060】
また、本発明品(実施例7〜8)は、塩基性物質として、実施例7がN−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(三新化学工業(株)製:商品名「サンセラーNOB」)を配合成分とし、実施例8が2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーMDB」)を配合成分としている。サンセラーNOBの構造式を表13に示す。
【0061】
【表13】
【0062】
そして、本発明品(実施例9〜10)は、塩基性物質として、実施例9がテトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーTT」)を配合成分とし、実施例10が2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合成分としている。
【0063】
一方、比較品(比較例7〜8)は、いずれも、同じくベースポリマーとしてエラスレン401Aを配合成分とする他、塩基性物質として、比較例7がサンセラーNOB、比較例8がノクセラーMDBをそれぞれ配合成分としている。
【0064】
そして、本発明品(実施例7〜10)及び比較品(比較例7〜8)の作製工程は以下の通りである。すなわち、実施例7〜10は、上述したエラスレン401A(塩素化ポリエチレン)100重量%に対し、サンセラーMを実施例7に66重量%、実施例8に59重量%、実施例9に50重量%、実施例10に31%それぞれ配合する。そして、これらに塩基性物質をそれぞれ100重量%ずつ配合した後、実施例1〜6と同様の工程により、作製したものである。比較品は、表3及び表4に示した各配合成分をいずれも100重量%ずつ配合し、本発明品と同じ工程により作製したものである。
【0065】
次に、本発明品(実施例7〜10)及び比較品(比較例7〜8)のtanδピーク値及びそのピーク温度の測定した。測定条件は実施例1〜6と同じである。
【0066】
以下、測定結果について説明する。表3においても、上述と同様4段階で評価した。実施例7は、比較例7と比べて元々高いピーク値が一層高くなり、なおかつピーク温度は室温にあるので、極めて良好(◎印)と評価できる。実施例8は、比較例8と比べてとても高いピーク値を示し、なおかつピーク温度が室温にあるので、極めて良好(◎印)と評価できる。
【0067】
表4についても、前記同様4段階で評価した。実施例9は、比較例3と比べて、ピーク温度が0℃まで下がったもののピーク値の上昇の割合が大きいので、良好(○印)と評価された。実施例10は、比較例2と比べてピーク温度が室温から離れているが、3.14という極めて高いピーク値を示したので、極めて良好(◎印)と評価された。
【0068】
表1〜4は、同一の酸性物質に対して様々な塩基性物質を適用したものの比較と見てとれるが、上記に示した通り総じて優れた結果を示したことから、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質であれば、様々なものが適用できることを示している。
【0069】
次に、表5は酸性物質の配合量が本発明品に与える影響を示したものである。これらは、実施例10と同じ配合成分で、酸性物質の配合量が異なったものである。すなわち、実施例10〜13は、ベースポリマーとしてエラスレン401Aを、酸性物質としてサンセラーMを、塩基性物質としてスミソーブ250を配合成分としている。但し、実施例10〜13は、すべてベースポリマー100重量%に対し、塩基性物質を100重量%配合されているが、酸性物質はベースポリマー100重量%に対し、実施例11が15.5重量%、実施例10が31重量%、実施例12が46.5重量%、実施例13が62重量%配合されている。これらの比較品としては、表1で用いた比較例2を用いた。
【0070】
【表5】
【0071】
実施例10から13の配合成分において、塩基性物質に対する酸性物質のモル比は、実施例11が0.5、実施例10が1、実施例12が2、実施例13が3になっている。また、これらの作製工程及び測定条件は表1と同様である。そして、表5における酸性物質であるサンセラーMの配合量とtanδの関係を表したのが、図1である。
【0072】
表5及び図1から、酸性物質の配合量が増えるにしたがって、tanδが上がっていき、ある配合量を超えると、tanδが下がっていく傾向にある。表5の場合、塩基性物質に対する酸性物質のモル比は1.5前後が好適であると思われる。以上のことから、実施例10〜13を比較例2に対して、表1と同様に4段階で評価すると、実施例11が良好(○印)、実施例10、12、13が極めて良好(◎印)と評価された。
【0073】
次に、表6は酸性物質の酸性度が本発明品に与える影響を示したものである。本発明品(実施例14〜17)は、ベースポリマーとして塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を、塩基性物質として2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合したものに、酸性物質としてα置換安息香酸を配合したものである。
【0074】
すなわち、実施例14が安息香酸のα位をアミノ基で置換したアントラニル酸(名古屋片山化学工業(株)製)を、実施例15がメチル基で置換したトルイル酸(名古屋片山化学工業(株)製)を、実施例16が水酸基で置換したサリチル酸(名古屋片山化学工業(株)製)を、実施例17がニトロ基で置換したα−ニトロ安息香酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。
【0075】
【表6】
【0076】
本発明品(実施例14〜17)は、ベースポリマー(エラスレン401A)を100重量%、塩基性物質(スミソーブ250)を100重量%をそれぞれ配合し、酸性物質を実施例14が35重量%、実施例15が35重量%、実施例16が36重量%、実施例17が43重量%それぞれ配合している。この配合量において、酸性物質の塩基性物質に対するモル比は1になっている。また、これらの作製工程及び測定条件は表1と同様である。尚、比較品としては、表1で用いた比較例2を用いた。
【0077】
表6における酸性度とtanδの関係を表したものが図2である。このグラフによれば、pKaが高くなるにつれ、tanδの値も上がり、あるpKaを過ぎると、tanδが減少していく傾向にあることが分かる。ベースポリマーにエラスレン401Aを、塩基性物質としてスミソーブ250を用いた場合には、高いtanδを与えるpKaは3.0前後であるといえる。以上のことから、実施例14〜17を比較例2に対して、表1と同様に4段階で評価したところ、実施例14、15、17は良好(○印)、実施例16は極めて良好(◎印)と評価された。
【0078】
次に、表7〜9は、ベースポリマーに酸性物質と塩基性物質とを配合した本発明品(実施例18〜26)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果、並びにベースポリマーに塩基性物質を配合した比較品(比較例2)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果とを対比して示したものである。
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
本発明品(実施例18〜26)は、いずれも極性側鎖を有するベースポリマーとして塩素系ポリマー材料である塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を配合成分としている。また、本発明品(実施例18〜26)は塩基性物質として、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合成分としている。
【0083】
そして更に、本発明品(実施例18〜20)は、酸性物質として、実施例18が(2−ベンゾチアジルチオ)酢酸(三新化学工業(株)製:商品名「サンビットABT」)を配合成分とし、実施例19が(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸(三新化学工業(株)製:商品名「サンビットPBT」)を配合成分とし、実施例20がジベンゾチアジルジスルフィド(三新化学工業(株)製:商品名「サンセラーDM」)を配合成分としている。
【0084】
また、本発明品(実施例21〜23)は、酸性物質として、実施例21がテトラリン(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分とし、実施例22がナフトエ酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分とし、実施例23がキナルジン酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。
【0085】
そして、本発明品(実施例24〜26)は、酸性物質として、実施例24がナフテン酸(三共油化工業(株)製:商品名「ISAN185」)を配合成分とし、実施例25が2−クロロ−n−酪酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分とし、実施例26が3−クロロ−n−酪酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。
【0086】
これらの配合量は、ベースポリマー100重量%に対し、塩基性物質は全て100重量%配合されており、酸性物質は、実施例18が58重量%、実施例19が42重量%、実施例20が42重量%、実施例21が30重量%、実施例22が44重量%、実施例23が44重量%、実施例24が40重量%、実施例25が32重量%、実施例26が32重量%配合されている。
【0087】
これらの作製工程及び測定条件は、表1と同様である。そして、比較品としては表1で用いた比較例2を用いた。上記の配合量において、各実施例の塩基性物質に対する酸性物質のモル比は1になっている。
【0088】
実施例18〜26はピーク温度が若干室温より高いものの、比較例2より室温に近づいており、なおかつ高いピーク値を示している。以上のことから、実施例18〜26を比較例9に対して、表1と同様4段階で評価すると、実施例18、21、25、26は良好(○印)、実施例19、20、22、23、24は極めて良好と評価できた。
【0089】
実施例18〜26は、同じ塩基性物質に対して、異なる酸性物質を配合したものとの比較と見てとれるが、上記に示した通り全て優れた結果を示したことから、モル比及び酸性度等の条件を適当にできれば、様々な酸性物質を用いることができることを示している。
【0090】
次に、本発明の高減衰材料の高分子物質と低分子物質の相互作用について考察する。まず、図3は、本発明に係る高減衰材料組成物のミクロ構造を概念的に示したものである。本発明においては、極性側鎖を有する高分子物質、すなわち、塩素化ポリエチレンは、矢示Aで示したように、ところどころで絡み合っている。一方、酸性物質或いは塩基性物質等の低分子物質はその塩基性度が最適な状態にあれば、高分子同士の相互作用は小さくなり、代わりに高分子と低分子の間に均一で適度な双極子−双極子相互作用ができる。
【0091】
つまり、図4に示したように、分子間ポテンシャルと緩和時間の関係が、分子間ポテンシャルが高く、緩和時間の分布幅が狭まり、分子間の絡み合いが少なくなり、高めのtanδが発現できるようになったと思われる。
【0092】
以上、本実施例を順に説明したが、要するに、本実施例に係る高減衰材料組成物は、ベースポリマーである塩素化ポリエチレンに、塩基性の減衰性添加剤として、スルフェンアミド系添加剤、チアゾール系添加剤、チウラム系添加剤、グアニジン系添加剤、ベンゾトリアゾール系添加剤、ジチオカルバミン酸塩系添加剤、顔料、ピリジン系添加剤、潤滑油添加剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、ウレタン触媒、イソシアヌル酸誘導物、ヒンダードアミン系添加剤、モルホリン系添加剤のうちいずれかを配合するとともに、酸性物質を配合したので、これらの塩基性物質は、高いtanδを発現させるのに適した電子供与性を備えた状態で、高分子鎖中に分散される。したがって、ベースポリマーと塩基性物質との相互作用は高いtanδの発現に好適な状態になり、tanδが高くなる。
【0093】
本発明は、上記した実施例に何等限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、ベースポリマーとしては、塩素化ポリエチレンに代えて、ポリ塩化ビニル、エチレン−ポリ塩化ビニル、エチレン,酢酸共重合体−ポリ塩化ビニル、ウレタン−ポリ塩化ビニルの他、変性天然ゴム、グラフト天然ゴム、環化天然ゴム、塩素化天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、ニトリルゴム/塩化ビニル樹脂ブレンド、ニトリルゴム/EPDMゴムブレンド、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、メチルシリコンゴム、ビニル−メチルシリコンゴム、フェニル−メチルシリコンゴム、フッ化シリコンゴム、フッ素ゴムや、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の極性側鎖を有するベースポリマーであれば何等限定されることなくを適用することができる。
【0094】
また、塩基性物質の改変としては、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質であれば、上記実施例に何等限定されることなく適用できる。
【0095】
本実施例では、酸性物質として酸性有機化合物を用いたが、これらは配合成分の塩基性度を調節するために配合したものであるから、酸性物質の改変としては、その調節機能を果たすものであれば、酸性有機化合物だけでなく塩酸等の酸性無機化合物等をも何等限定されることなく適用することができる。
【0096】
【発明の効果】
本発明に係る高減衰材料組成物によれば、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性の減衰性添加剤を配合させたものに、酸性物質を配合したものであるから、減衰性添加剤として用いた塩基性物質の電子供与性が、高いtanδの発現に適した程度に変化することにより、高いtanδを発現することができる。したがって、本発明に係る高減衰材料組成物は、高い減衰性能が要求される条件下で使用することができる。このような高減衰材料組成物は、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切、車両の防音壁等、幅広い分野に適用することができ、産業上極めて有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高減衰材料組成物の配合成分の酸性度とtanδの関係を示した図である。
【図2】本発明に係る高減衰材料組成物の酸性物質の配合量とtanδの関係を示した図である。
【図3】本発明に係る高減衰材料組成物の分子鎖のミクロ構造を示した図である。
【図4】本発明に係る高減衰材料組成物の分子間ポテンシャルの分布を示した図である。
【図5】従来一般に知られる高減衰材料組成物の分子鎖のミクロ構造を示した図である。
【図6】従来一般に知られる高減衰材料組成物の分子間ポテンシャルの分布を示した図である。
【表14】 【表15】 【表16】 【表17】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高減衰材料組成物に関し、更に詳しくは、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切、車両の防音壁等に適用される振動や騒音を吸収する制振材・防音材としての高減衰材料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の高減衰材料組成物としての高分子系材料は、典型的な粘弾性挙動を呈するものであり、その材料微小部が何等かの原因で振動すると、夫々の材料微小部に、複素正弦歪(ε*)が発生し、これにより複素正弦応力(σ*)が発生する。複素弾性係数 (E*)は、次式に示したように、これらの比をとったものである。
複素弾性係数(E*)=複素正弦応力(σ*)/複素正弦歪(ε*)
【0003】
この複素弾性係数 (E*)の実数部は、材料の弾性的な性質に係る貯蔵弾性係数(E’)と定義され、その虚数部は、材料の粘性的な性質に係る損失弾性係数(E”)と定義される。損失正接(tanδ)は、次式に示したように、これらの比をとったものである。
損失正接(tanδ)=損失弾性係数(E”)/貯蔵弾性係数(E’)
【0004】
この損失正接(以下、単に「tanδ」とする)は、防音・制振特性を決定する因子の一つであり、この値が高いほど力学的エネルギーを電気あるいは熱エネルギーとして吸収・放出して、優れた吸音性や制振性等の機械特性を示すことが知られている。高減衰材料組成物のtanδとして求められる値は、0.5以上である。
【0005】
この従来の要求特性を満たした高減衰材料組成物として、例えば、高分子系複合材料が知られている。この高分子系複合材料はポリマーアロイ或いは高分子網目構造(IPN技術)を有する高分子化合物をベースポリマーとしており、これに充填剤(マイカ剤等)や可塑剤を添加し、所定の製造工程を経て得られたものである。この場合に、一般にベースポリマーとしては各種ゴム、高分子樹脂材料の他に、エラストマー樹脂材料等が用いられている。しかし、このような高分子系複合材料のtanδの値は、ベースポリマーとして各種ゴム材料を用いた場合は、0.3〜1.0程度、高分子樹脂材料を用いた場合は、1.0〜2.0程度である。
【0006】
また、他の高減衰材料としては、ベースポリマーとして、ポリ塩化ビニル(或いは、これを含む高分子)を用い、これに種々の添加剤、可塑剤などを配合した例がよく知られている。例えば、特開平5−65382号公報に開示された高減衰材料組成物は、配合物質として縮合多環式化合物を用いており、そのtanδは、0.98〜1.7程度である。また特開平5−59241号公報に開示されたものは、配合物質として、石油系樹脂及び可塑剤を用いており、そのtanδは、0.9〜1.85程度である。
【0007】
一方、このような高分子系複合材料の他、所定の製造工程を経て得られた単独材料からなる高減衰材料が知られている。従来知られた好適な例としては、塩素化ポリエチレンによるものや、上記したポリ塩化ビニルによるもの等が挙げられる。ちなみに、塩素化ポリエチレン単独品による高減衰材料は、そのtanδピークが1.3であり、そのピーク温度が10℃である。また、ポリ塩化ビニル単独品による高減衰材料は、そのtanδピークが1.8程度であり、そのピーク温度が92℃前後である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した種々の高減衰材料は、従来の要求特性(tanδ≧0.5)に応えているとはいえ、それが使用される環境或いは、その用途等の要請から、より優れたtanδを発現できるものが望まれている。また、特開平5−65382号公報、特開平5−59241号公報等に開示されたものは、そのtanδピーク値が比較的高めであるが、そのピーク温度は、室温から著しく離れている。したがって、室温でのtanδは低く、室温環境で使用すると、所期する減衰性能は得られない。
【0009】
また、上述した従来の高分子系複合材料(高減衰材料組成物)と、単独材料による高減衰材料とを比べてみると、高分子系複合材料は、単独品に対して飛躍的に優れたtanδを発現できるものとはいえない。更にまた、上述した単独品は、複合材料に比べると、比較的安価かつ容易に製造できるという利点から注目されている。しかし、更なる高減衰性能を付与するためには、これをベースポリマーとして用いることを前提に、従来とは異なった観点から材料設計を行う必要がある。
【0010】
ちなみに、従来の高減衰材料が、より高いtanδ値を発現できない原因として、分子間相互作用の大きさ、分子間の相互作用の均一さ、分子間の絡み合いが挙げられる。図5は、上述した従来の高減衰材料組成物のミクロ構造を示したものであり、矢示されるAに係る部分では、高分子が互いに絡み合っている。しかし、それ以外に矢示されるBの部分のように、高分子の間にはファン・デル・ワールス力が働き、約20〜30個程の炭素原子の集団が結合している。
【0011】
したがって、図6に示したように分子間ポテンシャルの分布が広くなり、緩和時間の分布幅が広くなる。ここで、緩和時間の分布幅(H)と損失弾性係数(E”)の関係は、数1で表せるので、緩和時間の分布幅(H)が広くなると、損失弾性係数E”の分布は低く広がる。また、緩和時間の分布幅(H)と貯蔵弾性係数(E’)の関係は、数2で表せるので、緩和時間の分布幅が広くなると、貯蔵弾性係数(E’)の傾きは小さくなる。つまり、緩和時間の分布が広くなるほど、tanδは小さくなる。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】
このことから、そのファン・デル・ワールス力による相互作用(矢示Bに係る部分)を遮断させれば、分子間ポテンシャルの分布の幅を狭め、その高さを最適値にして、分子間の絡み合いを減らすので、より高いtanδを発現させることができると推察される。
【0015】
そこで、上記の問題を解決するために、本出願人は、塩基性の減衰性添加剤を配合することにより、高分子鎖間のファン・デル・ワールス力による相互作用を遮断し、その分子間ポテンシャルを高め、かつ均一化した高減衰材料組成物を提案している。
【0016】
しかしながら、このような高減衰材料組成物によれば、減衰性添加剤として配合する塩基性物質は、全体としては、そのtanδを高める働きをするものの、その塩基性度は、その塩基性物質の種類と配合量とに依存する。したがって、その塩基性度は、より高いtanδを発現できる好適な範囲にあるとは限らない。つまり、より高いtanδを発現させるためには、塩基性度を最適な状態に調節する必要がある。
【0017】
本発明の解決しようとする課題は、配合成分と高分子側鎖との相互作用を変化させることにより、高いtanδを発現することができる高減衰材料組成物を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明の高減衰材料組成物は、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質を1種又は2種以上を配合し、これに酸性物質を配合させたことを要旨とするものである。
【0019】
「塩基」とは、Lewisの定義より非共有電子対を持ち、その非共有電子対を授与することにより配位結合をつくる性質を有するものであり、「酸」とは、この電子対を受け取る能力を有するものを指している。
【0020】
Lewisの定義からすれば、塩基性物質だけでなく酸性物質をも配合すると、酸・塩基反応により上記塩基性物質に含まれる窒素原子に第4級アンモニウム(カチオン)が形成され、それとベースポリマーの極性側鎖との相互作用が高まり、高いtanδの発現に適した程度に変化させられると考えられる。
【0021】
この場合に、「極性側鎖を有するベースポリマー」としては、ゴム材料、熱可塑性エラストマー材料、あるいは、樹脂材料より選ばれた少なくとも1種又は2種以上のベースポリマーからなるものが好適なものとして挙げられる。
【0022】
更に詳しくは、「ゴム材料」としては、天然ゴム、変性天然ゴム、グラフト天然ゴム、環化天然ゴム、塩素化天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、ニトリルゴム/塩化ビニル樹脂ブレンド、ニトリルゴム/EPDMゴムブレンド、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、メチルシリコンゴム、ビニル−メチルシリコンゴム、フェニル−メチルシリコンゴム、フッ化シリコンゴム、フッ素ゴムより選ばれた少なくとも1種又は2種以上のゴム材料が好適なものとして挙げられる。
【0023】
また、「熱可塑性エラストマー材料」としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーより選ばれた少なくとも1種又は2種以上のエラストマー材料が好適なものとして挙げられる。
【0024】
そして、「樹脂材料」としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリふっ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタアクリレート、スチレン・アクリルニトリル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体、塩ビ・酢ビ共重合体、アクリル・塩ビグラフト共重合体、エチレン・塩ビ共重合体、エチレン・ビニルアルコール、塩素化塩化ビニルより選ばれた少なくとも1種又は2種以上の樹脂材料が好適なものとして挙げられる。
【0025】
「塩基性物質」としては、第2級アミン、第3級アミン及び含窒素複素環より選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質、例えばスルフェンアミド系添加剤、チアゾール系添加剤、チウラム系添加剤、グアニジン系添加剤、ベンゾトリアゾール系添加剤、ジチオカルバミン酸塩系添加剤、顔料、ピリジン系添加剤、潤滑油添加剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、ウレタン触媒、イソシアヌル酸誘導物、ヒンダードアミン系添加剤、モルホリン系添加剤より選ばれた少なくとも1種又は2種以上の塩基性の添加剤からなるものが好適なものとして挙げられる。
【0026】
この場合に、「スルフェンアミド系添加剤」としては、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド等が好適なものとして挙げられる。
【0027】
「チアゾール系添加剤」としては、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が好適なものとして挙げられるほか、「チウラム系添加剤」としては、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド又はテトラメチルチウラムジスルフィド等が好適なものとして挙げられる。「グアニジン系添加剤」としては、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−O−トリルグアニジン等が好適なものとして挙げられる。
【0028】
また、「ベンゾトリアゾール系添加剤」としては、紫外線吸収剤である2−(2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、防錆剤である1−[N,N−ビス(2−エチル−ヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)−2−エチルヘキシルアミン、N,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)−ジアミノヘキサン、光安定剤である2,2’−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−6[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]}、N,N−ビス(ベンゾトリアゾールメチル)−2エチルヘキシルアミン、N,N−ビス(ベンゾトリアゾールメチル)−ラウリルアミン、1−(2−エチルヘキシルアミノメチル)−ベンゾトリアゾール、1−(ラウリルアミノメチル)−ベンゾトリアゾール、1−(モルホリノメチル)−ベンゾトリアゾール等が好適なものとして挙げられる。
【0029】
「ジチオカルバミン酸塩系添加剤」としては、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が好適なものとして挙げられるほか、「顔料」としては、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン、2,2’−(1,2−エーテンジイル)ビス(5−メチルベンゾオキサゾール)とジシクロヘキシルフタレート等が好適なものとして挙げられ、「ピリジン系添加剤」としては、2,2−ジチオジオイリジンのブレンド、1,10−フェナントロリン等が好適なものとして挙げられる。
【0030】
「潤滑油添加剤」としては、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)「エポキシ樹脂硬化促進剤」としては、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールが、それぞれ好適なものとして挙げられる。
【0031】
更にまた、「ウレタン触媒」としては、ジモルホリンエーテル、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N,N,N−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N−メチル−N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン等が好適なものとして挙げられる。
【0032】
「イソシアヌル酸誘導物」としては、不飽和樹脂架橋剤であるトリアリルイソシアヌレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等が好適なものとして挙げられる。「ヒンダードアミン系添加剤」としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ビペリジル/トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物等が好適なものとして挙げられる。「モルホリン系添加剤」としては、4,4’−ジチオジモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0033】
「酸性物質」としては、Lewisの定義からすれば、無機酸、有機酸のどちらでも適用できる。本発明では、有機酸の中で特に性能が確認された2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール等より選ばれた少なくとも1種又は2種以上の酸性物質が好適なものとして挙げられる。
【0034】
「塩基性物質の体積」は「ベースポリマーの体積」に対して、0.3以上の割合であることが望ましい。塩基性物質とベースポリマーの体積比がこの範囲内にあれば、適度な割合で、この塩基性物質がベースポリマーの高分子に分散し、高減衰材料組成物に優れた減衰性能が与えられる。一方、塩基性物質とベースポリマーの体積比が0.3未満だと、高減衰材料組成物に減衰性能が与えられない。
【0035】
また、「酸性物質」の「塩基性物質」に対するモル比は、0.5〜3.0の範囲内にあることが望ましい。これらのモル比が、この範囲内にあれば、高減衰材料組成物のtanδを適度なものとする電子供与性が、塩基性物質に与えられる。
【0036】
酸性物質の配合量が、この範囲より少ない場合、その効果は殆ど見られず、また、この範囲より多い場合、適度な相互作用を与えることが困難になるばかりでなく、材料の加工性及び基本物性にも悪影響が及ぼされる傾向にある。一般的に、これらのモル比は、2前後が最適だと思われる。
【0037】
上記構成を有する高減衰材料組成物は、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上有する塩基性物質を少なくとも1種又は2種以上配合し、これに酸性物質を配合させたものであるから、高いtanδの発現に適した電子供与性が塩基性物質に与えられる。これによって、ベースポリマーと塩基性物質との相互作用(インターラクション)が調節され、高減衰材料組成物は、より高いtanδを発現することができる。したがって、本発明に係る高減衰材料組成物によれば、騒音や振動が大幅に吸収される。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。なお、以下の説明において「重量%」とは、ベースポリマー100重量%に対する配合成分の重量%を意味するものである。
【0039】
初めに、表1及び表2は、ベースポリマーに酸性物質と塩基性物質とを配合した本発明品(実施例1〜6)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果、並びにベースポリマーに塩基性物質を配合した比較品(比較例1〜6)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果とを対比して示したものである。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
本発明品(実施例1〜6)は、いずれも極性側鎖を有するベースポリマーとして塩素系ポリマー材料である塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を配合成分としている。また、本発明品(実施例1〜6)は酸性添加剤として、1,2,3−ベンゾトリアゾール(城北化学工業(株)製:商品名「BT−120」)を配合成分としている。
【0043】
上記酸性添加剤1,2,3−ベンゾトリアゾール(BT−120)の構造式を表10に示す。
【0044】
【表10】
【0045】
そして更に、本発明品(実施例1〜3)は、塩基性物質として、実施例1が2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーMDB」)を配合成分とし、実施例2が2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合成分とし、実施例3がテトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーTT」)を配合成分としている。これらの構造式を表11に示す。
【0046】
【表11】
【0047】
また、本発明品(実施例4〜6)は、塩基性物質として、実施例4がテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーTOT」)を配合成分とし、実施例5が4,4’−ジチオジモルホリン(大内新興化学工業(株)製:商品名「バルノックR」)を配合成分とし、実施例6が1,10−フェナントロリン(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。これらの構造式を表12に示す。
【0048】
【表12】
【0049】
一方、比較品(比較例1〜6)は、いずれも、同じくベースポリマーとしてエラスレン401Aを配合成分とする他、塩基性物質として、比較例1がノクセラーMDB、比較例2がスミソーブ250、比較例3がノクセラーTT、比較例4がノクセラーTOT、比較例5がバルノックR、比較例6が1,10−フェナントロリンをそれぞれ配合成分としている。ちなみに、比較品(比較例1〜6)には、酸性物質を配合していない。
【0050】
そして、本発明品(実施例1〜6)及び比較品(比較例1〜6)の作製工程は、以下の通りである。すなわち、実施例1〜6は、上述したエラスレン401A(塩素化ポリエチレン)100重量%に対し、BT−120を実施例1に45重量%、実施例2に31%、実施例3に50重量%、実施例4に19重量%、実施例5に44重量%、実施例6に60重量%それぞれ配合する。そして、これらに塩基性物質をそれぞれ100重量%ずつ配合して、室温で約15〜20分程度、2本ロールで混練する。次に、この混練材料を、熱プレス機により所定の型枠内で、170℃の温度条件下、10分程度溶融プレス成形する。そして更に、0℃の温度条件下、これに130kgf/cm2 の面圧を掛けて冷却プレス成形し、これを2mmシートとする。
【0051】
このとき、塩基性物質は、その体積がベースポリマーの体積に対して、0.3以上の割合で高分子鎖中に分散している。また、その分子相互作用は、配合した酸性物質の塩基性物質に対するモル比(0.5〜3.0)に応じて、本発明品のtanδを高めるのに適した程度になっている。なお、比較品は、表1及び表2に示した各配合成分をいずれも100重量%ずつ配合し、本発明品と同じ工程により作製したものである。
【0052】
次に、本発明品(実施例1〜6)及び比較品(比較例1〜6)のtanδピーク値及びそのピーク温度を測定した。この測定には、株式会社レオロジ社製のスペクトロメータを用い、その測定条件を、歪が0.05%(一定)、周波数が100Hz(一定)とした。
【0053】
以下、測定結果について説明する。まず、実施例1は、比較例1と比べるとtanδピーク値が、一層高くなっている。更に、ピーク温度は、一般的に室温と考えられる20℃前後になっており、極めて優れた結果が得られたといえる。実施例2は、比較例2と比べるとtanδピーク値が上昇し、かつピーク温度は室温に10℃ほど近づいているので、優れた結果といえる。実施例3は、比較例3と比べるとピーク値の上昇の割合が大きいので、極めて優れた成果が得られたといえる。
【0054】
これらの結果について、表1では、極めて優れたものを(◎印)、優れたものを(○印)、一応の成果を得られたものを(△印)、不良なものを(×印)の4段階で評価してある。これにより、実施例1は極めて良好(◎印)、実施例2は極めて良好(◎印)、実施例3は極めて良好(◎印)と評価された。
【0055】
表2においても、前記同様4段階で評価した。実施例4は、比較例4と比べてtanδピーク値も高くなっており、ピーク温度も室温に近くはなっているが、その割合がやや小さいので、良好(○印)と評価された。実施例5は、比較例5と比べてピーク温度が若干室温から少し離れてしまったが、ピーク値の上昇の割合が非常に大きいので、極めて良好(◎印)と評価された。実施例6は、比較例6と比べてピーク値が上昇し、ピーク温度は室温の範囲のままなので、極めて良好(◎印)と評価された。
【0056】
次に、表3及び表4は、ベースポリマーに酸性物質と塩基性物質とを配合した本発明品(実施例7〜10)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果、並びにベースポリマーに塩基性物質を配合した比較品(比較例7〜8)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果とを対比して示したものである。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
本発明品(実施例7〜10)は、いずれも、ベースポリマーとして塩素系ポリマー材料である塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を配合成分としている。また、本発明品(実施例7〜10)は酸性物質として、2−メルカプトベンゾチアゾール(三新化学工業(株)製:商品名「サンセラーM」)を配合成分としている。この酸性物質の構造式は表10に示されている。
【0060】
また、本発明品(実施例7〜8)は、塩基性物質として、実施例7がN−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(三新化学工業(株)製:商品名「サンセラーNOB」)を配合成分とし、実施例8が2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーMDB」)を配合成分としている。サンセラーNOBの構造式を表13に示す。
【0061】
【表13】
【0062】
そして、本発明品(実施例9〜10)は、塩基性物質として、実施例9がテトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製:商品名「ノクセラーTT」)を配合成分とし、実施例10が2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合成分としている。
【0063】
一方、比較品(比較例7〜8)は、いずれも、同じくベースポリマーとしてエラスレン401Aを配合成分とする他、塩基性物質として、比較例7がサンセラーNOB、比較例8がノクセラーMDBをそれぞれ配合成分としている。
【0064】
そして、本発明品(実施例7〜10)及び比較品(比較例7〜8)の作製工程は以下の通りである。すなわち、実施例7〜10は、上述したエラスレン401A(塩素化ポリエチレン)100重量%に対し、サンセラーMを実施例7に66重量%、実施例8に59重量%、実施例9に50重量%、実施例10に31%それぞれ配合する。そして、これらに塩基性物質をそれぞれ100重量%ずつ配合した後、実施例1〜6と同様の工程により、作製したものである。比較品は、表3及び表4に示した各配合成分をいずれも100重量%ずつ配合し、本発明品と同じ工程により作製したものである。
【0065】
次に、本発明品(実施例7〜10)及び比較品(比較例7〜8)のtanδピーク値及びそのピーク温度の測定した。測定条件は実施例1〜6と同じである。
【0066】
以下、測定結果について説明する。表3においても、上述と同様4段階で評価した。実施例7は、比較例7と比べて元々高いピーク値が一層高くなり、なおかつピーク温度は室温にあるので、極めて良好(◎印)と評価できる。実施例8は、比較例8と比べてとても高いピーク値を示し、なおかつピーク温度が室温にあるので、極めて良好(◎印)と評価できる。
【0067】
表4についても、前記同様4段階で評価した。実施例9は、比較例3と比べて、ピーク温度が0℃まで下がったもののピーク値の上昇の割合が大きいので、良好(○印)と評価された。実施例10は、比較例2と比べてピーク温度が室温から離れているが、3.14という極めて高いピーク値を示したので、極めて良好(◎印)と評価された。
【0068】
表1〜4は、同一の酸性物質に対して様々な塩基性物質を適用したものの比較と見てとれるが、上記に示した通り総じて優れた結果を示したことから、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質であれば、様々なものが適用できることを示している。
【0069】
次に、表5は酸性物質の配合量が本発明品に与える影響を示したものである。これらは、実施例10と同じ配合成分で、酸性物質の配合量が異なったものである。すなわち、実施例10〜13は、ベースポリマーとしてエラスレン401Aを、酸性物質としてサンセラーMを、塩基性物質としてスミソーブ250を配合成分としている。但し、実施例10〜13は、すべてベースポリマー100重量%に対し、塩基性物質を100重量%配合されているが、酸性物質はベースポリマー100重量%に対し、実施例11が15.5重量%、実施例10が31重量%、実施例12が46.5重量%、実施例13が62重量%配合されている。これらの比較品としては、表1で用いた比較例2を用いた。
【0070】
【表5】
【0071】
実施例10から13の配合成分において、塩基性物質に対する酸性物質のモル比は、実施例11が0.5、実施例10が1、実施例12が2、実施例13が3になっている。また、これらの作製工程及び測定条件は表1と同様である。そして、表5における酸性物質であるサンセラーMの配合量とtanδの関係を表したのが、図1である。
【0072】
表5及び図1から、酸性物質の配合量が増えるにしたがって、tanδが上がっていき、ある配合量を超えると、tanδが下がっていく傾向にある。表5の場合、塩基性物質に対する酸性物質のモル比は1.5前後が好適であると思われる。以上のことから、実施例10〜13を比較例2に対して、表1と同様に4段階で評価すると、実施例11が良好(○印)、実施例10、12、13が極めて良好(◎印)と評価された。
【0073】
次に、表6は酸性物質の酸性度が本発明品に与える影響を示したものである。本発明品(実施例14〜17)は、ベースポリマーとして塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を、塩基性物質として2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合したものに、酸性物質としてα置換安息香酸を配合したものである。
【0074】
すなわち、実施例14が安息香酸のα位をアミノ基で置換したアントラニル酸(名古屋片山化学工業(株)製)を、実施例15がメチル基で置換したトルイル酸(名古屋片山化学工業(株)製)を、実施例16が水酸基で置換したサリチル酸(名古屋片山化学工業(株)製)を、実施例17がニトロ基で置換したα−ニトロ安息香酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。
【0075】
【表6】
【0076】
本発明品(実施例14〜17)は、ベースポリマー(エラスレン401A)を100重量%、塩基性物質(スミソーブ250)を100重量%をそれぞれ配合し、酸性物質を実施例14が35重量%、実施例15が35重量%、実施例16が36重量%、実施例17が43重量%それぞれ配合している。この配合量において、酸性物質の塩基性物質に対するモル比は1になっている。また、これらの作製工程及び測定条件は表1と同様である。尚、比較品としては、表1で用いた比較例2を用いた。
【0077】
表6における酸性度とtanδの関係を表したものが図2である。このグラフによれば、pKaが高くなるにつれ、tanδの値も上がり、あるpKaを過ぎると、tanδが減少していく傾向にあることが分かる。ベースポリマーにエラスレン401Aを、塩基性物質としてスミソーブ250を用いた場合には、高いtanδを与えるpKaは3.0前後であるといえる。以上のことから、実施例14〜17を比較例2に対して、表1と同様に4段階で評価したところ、実施例14、15、17は良好(○印)、実施例16は極めて良好(◎印)と評価された。
【0078】
次に、表7〜9は、ベースポリマーに酸性物質と塩基性物質とを配合した本発明品(実施例18〜26)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果、並びにベースポリマーに塩基性物質を配合した比較品(比較例2)の材料組成とtanδピーク値及びピーク温度の測定結果とを対比して示したものである。
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
本発明品(実施例18〜26)は、いずれも極性側鎖を有するベースポリマーとして塩素系ポリマー材料である塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:商品名「エラスレン401A」)を配合成分としている。また、本発明品(実施例18〜26)は塩基性物質として、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)製:商品名「スミソーブ250」)を配合成分としている。
【0083】
そして更に、本発明品(実施例18〜20)は、酸性物質として、実施例18が(2−ベンゾチアジルチオ)酢酸(三新化学工業(株)製:商品名「サンビットABT」)を配合成分とし、実施例19が(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸(三新化学工業(株)製:商品名「サンビットPBT」)を配合成分とし、実施例20がジベンゾチアジルジスルフィド(三新化学工業(株)製:商品名「サンセラーDM」)を配合成分としている。
【0084】
また、本発明品(実施例21〜23)は、酸性物質として、実施例21がテトラリン(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分とし、実施例22がナフトエ酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分とし、実施例23がキナルジン酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。
【0085】
そして、本発明品(実施例24〜26)は、酸性物質として、実施例24がナフテン酸(三共油化工業(株)製:商品名「ISAN185」)を配合成分とし、実施例25が2−クロロ−n−酪酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分とし、実施例26が3−クロロ−n−酪酸(名古屋片山化学工業(株)製)を配合成分としている。
【0086】
これらの配合量は、ベースポリマー100重量%に対し、塩基性物質は全て100重量%配合されており、酸性物質は、実施例18が58重量%、実施例19が42重量%、実施例20が42重量%、実施例21が30重量%、実施例22が44重量%、実施例23が44重量%、実施例24が40重量%、実施例25が32重量%、実施例26が32重量%配合されている。
【0087】
これらの作製工程及び測定条件は、表1と同様である。そして、比較品としては表1で用いた比較例2を用いた。上記の配合量において、各実施例の塩基性物質に対する酸性物質のモル比は1になっている。
【0088】
実施例18〜26はピーク温度が若干室温より高いものの、比較例2より室温に近づいており、なおかつ高いピーク値を示している。以上のことから、実施例18〜26を比較例9に対して、表1と同様4段階で評価すると、実施例18、21、25、26は良好(○印)、実施例19、20、22、23、24は極めて良好と評価できた。
【0089】
実施例18〜26は、同じ塩基性物質に対して、異なる酸性物質を配合したものとの比較と見てとれるが、上記に示した通り全て優れた結果を示したことから、モル比及び酸性度等の条件を適当にできれば、様々な酸性物質を用いることができることを示している。
【0090】
次に、本発明の高減衰材料の高分子物質と低分子物質の相互作用について考察する。まず、図3は、本発明に係る高減衰材料組成物のミクロ構造を概念的に示したものである。本発明においては、極性側鎖を有する高分子物質、すなわち、塩素化ポリエチレンは、矢示Aで示したように、ところどころで絡み合っている。一方、酸性物質或いは塩基性物質等の低分子物質はその塩基性度が最適な状態にあれば、高分子同士の相互作用は小さくなり、代わりに高分子と低分子の間に均一で適度な双極子−双極子相互作用ができる。
【0091】
つまり、図4に示したように、分子間ポテンシャルと緩和時間の関係が、分子間ポテンシャルが高く、緩和時間の分布幅が狭まり、分子間の絡み合いが少なくなり、高めのtanδが発現できるようになったと思われる。
【0092】
以上、本実施例を順に説明したが、要するに、本実施例に係る高減衰材料組成物は、ベースポリマーである塩素化ポリエチレンに、塩基性の減衰性添加剤として、スルフェンアミド系添加剤、チアゾール系添加剤、チウラム系添加剤、グアニジン系添加剤、ベンゾトリアゾール系添加剤、ジチオカルバミン酸塩系添加剤、顔料、ピリジン系添加剤、潤滑油添加剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、ウレタン触媒、イソシアヌル酸誘導物、ヒンダードアミン系添加剤、モルホリン系添加剤のうちいずれかを配合するとともに、酸性物質を配合したので、これらの塩基性物質は、高いtanδを発現させるのに適した電子供与性を備えた状態で、高分子鎖中に分散される。したがって、ベースポリマーと塩基性物質との相互作用は高いtanδの発現に好適な状態になり、tanδが高くなる。
【0093】
本発明は、上記した実施例に何等限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、ベースポリマーとしては、塩素化ポリエチレンに代えて、ポリ塩化ビニル、エチレン−ポリ塩化ビニル、エチレン,酢酸共重合体−ポリ塩化ビニル、ウレタン−ポリ塩化ビニルの他、変性天然ゴム、グラフト天然ゴム、環化天然ゴム、塩素化天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、ニトリルゴム/塩化ビニル樹脂ブレンド、ニトリルゴム/EPDMゴムブレンド、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、メチルシリコンゴム、ビニル−メチルシリコンゴム、フェニル−メチルシリコンゴム、フッ化シリコンゴム、フッ素ゴムや、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の極性側鎖を有するベースポリマーであれば何等限定されることなくを適用することができる。
【0094】
また、塩基性物質の改変としては、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質であれば、上記実施例に何等限定されることなく適用できる。
【0095】
本実施例では、酸性物質として酸性有機化合物を用いたが、これらは配合成分の塩基性度を調節するために配合したものであるから、酸性物質の改変としては、その調節機能を果たすものであれば、酸性有機化合物だけでなく塩酸等の酸性無機化合物等をも何等限定されることなく適用することができる。
【0096】
【発明の効果】
本発明に係る高減衰材料組成物によれば、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性の減衰性添加剤を配合させたものに、酸性物質を配合したものであるから、減衰性添加剤として用いた塩基性物質の電子供与性が、高いtanδの発現に適した程度に変化することにより、高いtanδを発現することができる。したがって、本発明に係る高減衰材料組成物は、高い減衰性能が要求される条件下で使用することができる。このような高減衰材料組成物は、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切、車両の防音壁等、幅広い分野に適用することができ、産業上極めて有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高減衰材料組成物の配合成分の酸性度とtanδの関係を示した図である。
【図2】本発明に係る高減衰材料組成物の酸性物質の配合量とtanδの関係を示した図である。
【図3】本発明に係る高減衰材料組成物の分子鎖のミクロ構造を示した図である。
【図4】本発明に係る高減衰材料組成物の分子間ポテンシャルの分布を示した図である。
【図5】従来一般に知られる高減衰材料組成物の分子鎖のミクロ構造を示した図である。
【図6】従来一般に知られる高減衰材料組成物の分子間ポテンシャルの分布を示した図である。
【表14】 【表15】 【表16】 【表17】
Claims (3)
- 極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環から選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質を1種又は2種以上配合し、これに酸性物質を配合したことを特徴とする高減衰材料組成物であって、
前記ベースポリマーは、塩素化ポリエチレンからなり、
前記塩基性物質は、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、4,4’−ジチオジモルホリン、1,10−フェナントロリン、及びN−オキシジエチレンベンゾチアゾル−2−スルフェンアミドより選ばれた少なくとも1種又は2種以上からなり、
前記酸性物質は、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、アントラニル酸、トルイル酸、サリチル酸、α−ニトロ安息香酸、(2−ベンゾチアジルチオ)酢酸、(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸、ジベンゾチアジルジスルフィド、テトラリン、ナフトエ酸、キナルジン酸、ナフテン酸、2−クロロ−n−酪酸、及び3−クロロ−n−酪酸より選ばれた少なくとも1種又は2種以上からなる高減衰材料組成物。 - 前記塩基性物質の体積は、前記ベースポリマーの体積に対して、0.3以上の割合であることを特徴とする請求項1に記載される高減衰材料組成物。
- 前記酸性物質の前記塩基性物質に対するモル比は、0.5以上3.0以下の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載される高減衰材料組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36274797A JP3575660B2 (ja) | 1997-12-12 | 1997-12-12 | 高減衰材料組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36274797A JP3575660B2 (ja) | 1997-12-12 | 1997-12-12 | 高減衰材料組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11172124A JPH11172124A (ja) | 1999-06-29 |
JP3575660B2 true JP3575660B2 (ja) | 2004-10-13 |
Family
ID=18477637
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP36274797A Expired - Fee Related JP3575660B2 (ja) | 1997-12-12 | 1997-12-12 | 高減衰材料組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3575660B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6962132B2 (ja) * | 2017-10-26 | 2021-11-05 | 東ソー株式会社 | ゴム組成物 |
-
1997
- 1997-12-12 JP JP36274797A patent/JP3575660B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11172124A (ja) | 1999-06-29 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6265475B1 (en) | High damping material composition | |
JP2006131871A (ja) | 防振ゴム組成物及び防振ゴム部材 | |
JP4622619B2 (ja) | 防振ゴム組成物 | |
JP5049838B2 (ja) | 防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物ならびに防振ゴム | |
JP5231148B2 (ja) | 防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物 | |
JP5049837B2 (ja) | 防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物 | |
JP3575659B2 (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP3575660B2 (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP5376878B2 (ja) | 防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物ならびに防振ゴム | |
JP3575661B2 (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP3468073B2 (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JPH1192675A (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP5130198B2 (ja) | 高減衰ゴム組成物 | |
JP2010111742A (ja) | 防振ゴム用ゴム組成物及び防振ゴム | |
JP3661178B2 (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP2000044818A (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JPH1192674A (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP3661179B2 (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP2009030037A (ja) | 防振ゴム組成物および防振部材 | |
JPH1135738A (ja) | 高減衰材料 | |
JPH1180562A (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JPH11106580A (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP2009084427A (ja) | 防振ゴム組成物およびそれを用いた防振ゴム | |
JPH11181307A (ja) | 高減衰材料組成物 | |
JP3664210B2 (ja) | 高減衰材料組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040618 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040701 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090716 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |