JP3664210B2 - 高減衰材料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高減衰材料組成物に関し、更に詳しくは、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切り、車両の防音壁等に適用される振動や騒音を吸収する制振材・防音材としての高減衰材料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の高減衰材料組成物としての高分子系材料は、典型的な粘弾性挙動を呈するものであり、その材料微小部が何等かの原因で振動すると、夫々の材料微小部に、複素正弦歪(ε*)が発生し、これにより複素正弦応力(σ*)が発生する。複素弾性係数(E*)は、次式に示したように、これらの比をとったものである。
複素弾性係数(E*)=複素正弦応力(σ*)/複素正弦歪(ε*)
【0003】
この複素弾性係数(E*)の実数部は、材料の弾性的な性質に係る貯蔵弾性係数(E’)と定義され、その虚数部は、材料の粘性的な性質に係る損失弾性係数(E”)と定義される。損失正接(tanδ)は、次式に示したように、これらの比をとったものである。
損失正接(tanδ)=損失弾性係数(E”)/貯蔵弾性係数(E’)
【0004】
この損失正接(以下、単に「tanδ」とする。)は、防音・制振特性を決定する因子の一つであり、この値が高いほど力学的エネルギーを電気或いは熱エネルギーとして吸収・放出して、優れた吸音性や制振性等の機械特性を示すことが知られている。従来、高減衰材料組成物のtanδとして求められていた値は、0.5以上である。
【0005】
この従来の要求特性を満たした高減衰材料組成物として、例えば、高分子系複合材料が知られている。この高分子系複合材料はポリマーアロイ或いは高分子網目構造(IPN技術)を有する高分子化合物をベースポリマーとしており、これに充填剤(マイカ等)や可塑剤を添加し、所定の製造工程を経て得られたものである。この場合に、ベースポリマーとしては各種ゴム、高分子樹脂材料の他に、エラストマー樹脂材料等が用いられている。
【0006】
また、他の高減衰材料としては、本出願人により特願平9−362125号に開示されたもので、極性側鎖を有するベースポリマーに、第2級アミン、第3級アミン及び含窒素複素環より選ばれた塩基を1分子中に2個以上含む塩基性物質を配合したものがある。具体的には、ベースポリマーとして塩素化ポリエチレンが、減衰性付与剤としては、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド等が用いられ、tanδピークが1.0を超えており、一応の成果が得られている。
【0007】
上述した塩素化ポリエチレン等の極性側鎖を有するベースポリマーの側鎖には、特に塩素を中心としたハロゲンを有するものが多く使用されており、これらを用いて合成した材料を使用・廃棄等する際には環境に与える影響が大きくなることから問題視されている。
【0008】
そこで、本出願人は、従来とは異なった観点からの材料設計として、極性側鎖を有する他のベースポリマーに、ヒンダードフェノール系化合物等の減衰性付与剤を配合したものを提唱している。この材料は、環境に与える影響が少ないばかりでなく、上記塩素化ポリエチレン等の極性側鎖を有するベースポリマーを用いた材料よりも、高いtanδを発現するものとなっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記塩素化ポリエチレン等の極性側鎖を有するベースポリマーを用いた高減衰材料組成物は、従来の要求特性(tanδ≧0.5)を超える値を発現するものもあるが、経時的変化によりtanδが低下してしまうものとなっている。
【0010】
上述の経時的変化とは、配合されている減衰性付与剤がブリード現象(染み出し)を起こしたり、結晶として析出したりすることによって、tanδが著しく低下してしまうというものである。
【0011】
高減衰材料組成物が高い減衰性を発揮できるのは、ベースポリマーと減衰性付与剤との間に働く相互作用によるものであるが、この相互作用を長期にわたって維持させるためには、ベースポリマー中に減衰性付与剤を均一に分散させ、しかもその均一な分散を長期にわたって維持させる必要がある。
【0012】
しかしながら、上述した従来から知られる減衰材料においては配合されている減衰性付与剤が均一に分散していない。図1に示すように、減衰性付与剤をベースポリマーの中にうまく均一に分散させることができれば、長期にわたってベースポリマーと減衰性付与剤との間に働く相互作用を得られるものとなるが、従来の減衰材料ではこうした材料設計が実現できていない。
【0013】
図2に示したグラフから分かるとおり、配合する減衰性付与剤の分子量が小さいと成形直後の減衰性は高い(tanδが高い)ものの、経時的変化によるtanδの低下が大きく(tanδ保持率が小さく)なってしまう。これは成形直後においては低分子の減衰性付与剤がベースポリマー中に均一に分散しやすいが、一方で低分子の運動及び高分子のセグメント運動により、低分子と高分子との相分離が起こり、結晶化したり、表面へ拡散しブリードしたりする。
【0014】
また、配合する減衰性付与剤の分子量が大きい場合、減衰性付与剤がベースポリマーの中に均一に分散しにくいため減衰性が小さなものとなっているが、分子量が大きいことから減衰性付与剤が流動しにくくなっているため経時変化は少ないものとなっている。
【0015】
本発明の解決しようとする課題は、塩基性の極性側鎖を有するベースポリマーに配合する減衰性付与剤の分子量を適切にすることにより、高い減衰特性(tanδ)を発現し、しかも経時的変化の少ない高減衰材料組成物を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明の高減衰材料組成物は、特定の極性側鎖を有するベースポリマーが、ヒンダードアミン系化合物より選ばれた1種又は2種以上の減衰性付与剤を含有し、ヒンダードアミン系化合物の分子量が特定の範囲にあることを要旨とするものである。
【0017】
この場合に、「ベースポリマー」としては、アクリル系、メタクリル系、エチレン−アクリル系共重合体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体より選ばれた1種又は2種以上のポリマーを配合したものを用いる。
【0018】
そして、「減衰性付与剤」としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物からなるヒンダードアミン系化合物を用いる。なお、この化合物の縮合の割合は特に限定されるものではない。
【0019】
そして、上記減衰性付与剤として用いたヒンダードアミン系化合物の分子量としては500〜2000の範囲であり、更に好ましくは、800〜1500の範囲が望ましい。ここで、分子量が2000を超えると、減衰性付与剤がベースポリマーの中にうまく均一に分散できないことから高いtanδを得られない。また逆に、500以下だと減衰性付与剤がベースポリマー中に長期にわたって均一に分散することが困難になり、経時変化してしまう。この減衰性付与剤の選択において、当初からこの範囲にある減衰性付与剤を選択する手段を用いても良いが、実際にはこの範囲より小さい分子量の減衰性付与剤をオリゴマー化することによりその分子量を好適な範囲にして用いた方が選択の幅が広がり、より好適なものを選択しやすい。
【0020】
更にまた、ベースポリマーには必要に応じて、以下に掲げる種々の材料を添加することができる。その材料としては、まず、硬度、強度或いは加工性の向上、若しくは重量化等を図る場合に添加する充填剤が挙げられる。その充填剤としては、マイカ、タルク、クレー或いは炭酸カルシウム等の無機微粉末、若しくはセルロース粉末等の有機微粉末等が好適なものとして挙げられる。
【0021】
また、ベースポリマーに添加できる別の材料としては、tanδピーク温度の広域化を図る場合に添加する非結晶性樹脂が挙げられる。その非結晶性樹脂としてはクマロン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、マレイン酸樹脂、エステル化ロジン、エポキシ樹脂、尿素樹脂或いはメラミン樹脂等が好適なものとして挙げられる。
【0022】
更に、ベースポリマーに添加できる別の材料としては、着色剤(顔料、染料)、光沢剤、老化防止剤、粘着付与剤、難燃剤、発泡剤、発砲助剤、加工助剤、オゾン劣化防止剤、ブロッキング防止剤、耐候剤、耐熱剤、架橋剤、架橋助剤、加硫剤、分散剤、相溶化剤、界面活性剤、帯電防止剤或いは滑剤等が好適なものとして挙げられる。
【0023】
上記構成を有する高減衰材料組成物は、アクリル系、メタクリル系、エチレン−アクリル系共重合体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体より選ばれた1種又は2種以上のポリマーからなるベースポリマーが、減衰性付与剤として適切な分子量を有する特定のヒンダードアミン系化合物を含有するようにしたことにより、減衰性付与剤がベースポリマー中に均一に分散し、ベースポリマーと減衰性付与剤との間の適切な相互作用を得られる。しかも、減衰性付与剤をベースポリマー中に長期にわたって均一に分散するようにしたものであるから、高い減衰性を発現し、経時変化の少ないものとなる。したがって、本発明に係る高減衰材料組成物によれば、長期にわたり安定して、振動や騒音が大幅に吸収できるものとなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。まず、本発明の各実施例は種々の材料組成で作製したので、これについて説明する。尚、以下の説明において「phr」とは、「parts per hundred resin」の略で、ベースポリマー100重量部に対する配合成分の重量部を意味するものである。また各表に示した材料組成の単位も「phr」で表している。
【0025】
初めに表1に記載した本発明品(実施例1〜5)の材料組成について説明する。実施例1乃至実施例5は、いずれもベースポリマーとしてアクリルゴムを用い、これに減衰性付与剤として分子量が500〜2000の範囲にあるヒンダードアミン系化合物を配合している。
【0026】
【表1】
【0027】
具体的に説明すると本発明品の実施例1は、ベースポリマーとしてアクリルゴム(日本ゼオン(株)製:商品名「ニポールAR51」)を用い、これに減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1700のアデカスタブT−706(旭電化工業(株)製)を50phr配合している。この1700という分子量は上述した好適な範囲である500〜2000の範囲にあるが、最も好適な範囲である800〜1500の範囲よりやや大きめの分子量である。
【0028】
実施例2の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてニポールAR51を用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1500のアデカスタブT−707(旭電化工業(株)製)を50phr配合している。この分子量1500は最も好適な範囲である800〜1500の範囲の上限の分子量である。
【0029】
実施例3の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてニポールAR51を用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1200のアデカスタブT−708(旭電化工業(株)製)を50phr配合している。この1200という分子量は最も好適な範囲である800〜1500の範囲のほぼ中間にあるものである。
【0030】
実施例4の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてニポールAR51を用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1000のアデカスタブT−717(旭電化工業(株)製)を50phr配合している。この分子量は実施例3と同じく最も好適な範囲にあるが、実施例3より小さくなっており、好適な範囲の下限を確認できるものである。
【0031】
また実施例5の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてニポールAR51を用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1900のアデカスタブLA−68LD(旭電化工業(株)製)を50phr配合している。この分子量1900は、好適な範囲500〜2000内の上限に近いもので、好適な範囲の上限を確認できるものである。
【0032】
上記の減衰性付与剤として用いたアデカスタブT−706、アデカスタブT−707、アデカスタブT−708、アデカスタブT−717、アデカスタブLA−68LDは、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物を基本構造とし、それぞれの違いとしては縮合の割合及び分子量が異なるものである。
【0033】
次に、本発明品(実施例1〜5)の作製工程について説明する。まず、上述したベースポリマー100phrに、各実施例の配合成分を配合する。これを、室温で約15〜20分程度、2本ロールで混練する。次に、この混練材料を、熱プレス機により所定の型枠内において、170℃で、10分程度溶融プレス成形する。そして更に、0℃の温度条件下、これに130kgf/cm2の面圧を掛けて冷却プレス成形し、これを2mmシートとする。
【0034】
次に、本発明品(実施例1〜5)のtanδピーク値(成形直後及び2ヶ月後)及びそのピーク温度を測定した。この測定には、株式会社レオロジ社製のスペクトロメータを用い、その測定条件を、歪が0.05%(一定)、周波数が100Hz(一定)とした。
【0035】
以下、実施例1〜5の測定結果について説明する。表1に示したように、実施例1は成形直後において2.0を超える高いtanδを発現している。この値は分子量がやや高めなことから、比較的高い値となっている。そして、2ヶ月後においても要求特性を超えるtanδを発現し、そのtanδ保持率は101%という値を示し、全く変化を示していないことが分かる。つまり、長期にわたって高い減衰性能を発揮できるものであることが分かる。また、ピーク温度が室温付近(20℃前後)にあることから室温環境での使用に適した実用的なものとなっている。
【0036】
また、実施例2も成形直後において2.0を超える高いtanδを発現している。これは実施例1より分子量が小さいことからtanδも実施例1より高い値となっている。そして、2ヶ月後におけるtanδは低下しないばかりでなく若干高い値を示し、その保持率は106%と極めて優れた値を示している。この実施例2も長期にわたって高い減衰性能を発揮できていることが分かる。また、ピーク温度についても室温環境にある。
【0037】
実施例3は成形直後においては要求特性(tanδ≧2.5)を超える高いtanδを発現している。そして、2ヶ月後のtanδは全く低下せず、そのtanδ保持率は99%と良好な結果を示している。また、ピーク温度も室温付近にあり優れた結果を示している。
【0038】
実施例4も成形直後においては要求特性(tanδ≧2.5)を超える高いtanδを発現している。そして、2ヶ月後のtanδは低下するどころか、やや高い値を示し、そのtanδ保持率は99%と良好な結果を示している。この分子量1000前後の減衰性付与剤を用いたものがtanδ及び経時変化共に最も優れた値を示すものとなっている。また、ピーク温度も室温付近にあり、優れた結果を示している。
【0039】
また、アデカスタブLA−68LDを配合した実施例5は、その分子量が大きいことから、実施例1〜4と比べて低いtanδを発現しているものの、比較的良好な減衰特性を示している。そして、tanδ保持率は100%と良好な値を示している。ただし、ピーク温度が30℃を超え、室温付近で使用できる上限的数値を示している。つまり、これ以上ピーク温度が室温環境から離れた場合、tanδ保持率が良好な値を示したとしても、減衰特性(tanδ)が著しく低下するので、減衰性材料の実用面を考えると、分子量2000前後が限界の値であるように思われる。
【0040】
以上の結果から、実施例1〜5は、ベースポリマーに分子量を考慮して減衰性付与剤が配合されていることから高いtanδを発現するだけでなく、長期にわたって高い減衰性能を発現できることが分かる。また、ベースポリマーにアクリルゴムを用いる場合には、配合する減衰性付与剤の分子量は1000前後が適切であることが分かる。更に、実施例1〜5は室温に近い温度環境にピーク温度を有し、実用性の高いものとなっている。
【0041】
よって、実施例1は比較的高いtanδを発現し、経時変化が少ないことから優れている(○印)と評価された。そして、実施例2は高いtanδを示し、極めて優れたtanδ保持率を示したことから、極めて優れている(◎印)と評価された。実施例3及び4は極めて高いtanδを発現し、しかも経時変化が少ないことから極めて優れている(◎印)と評価された。更に、実施例5はtanδが比較的高く、経時変化が抑制されていることから、優れている(○印)と評価された。
【0042】
次に表2に記載した本発明品(実施例6〜10)の材料組成について説明する。実施例6乃至実施例10は、いずれもベースポリマーとしてエチレン−アクリル酸メチル共重合体を用い、これに減衰性付与剤としてヒンダードアミン系化合物を配合している。
【0043】
【表2】
【0044】
具体的に説明すると本発明品の実施例6は、ベースポリマーとしてエチレン−アクリル酸メチル共重合体(昭和電工(株)・デュポン(株)製:商品名「ベイマックGLS」)を用い、これに減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1700のアデカスタブT−706を50phr配合している。
【0045】
実施例7の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてベイマックGLSを用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1500のアデカスタブT−707を50phr配合している。
【0046】
実施例8の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてベイマックGLSを用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1200のアデカスタブT−708を50phr配合している。
【0047】
実施例9の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてベイマックGLSを用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1000のア
デカスタブT−717を50phr配合している。
【0048】
そして、実施例10の配合成分としては、同じくベースポリマーとしてベイマックGLSを用い、減衰性付与剤のヒンダードアミン系化合物として分子量が1900のアデカスタブLA−68LDを50phr配合している。
【0049】
これら実施例6〜10の作製工程並びにtanδの測定方法については実施例1〜5と同様の方法を用いている。
【0050】
以下、実施例6〜10の測定結果について説明する。表2に示したように、実施例6は分子量が大きなことから成形直後において、比較的高いtanδを発現している。そして、2ヶ月後においても高いtanδを発現し、そのtanδ保持率は99%という値を示し、全く変化を示していないことが分かる。つまり、長期にわたって高い減衰性能を発揮できるものであることが分かる。また、ピーク温度が室温付近(20℃前後)にあることから室温環境での使用に適した実用的なものとなっている。
【0051】
また、実施例7は成形直後において2.0を超える高いtanδを発現している。そして、2ヶ月後におけるtanδは全く低下しておらず、その保持率は101%と優れた値を示している。この実施例も長期にわたって高い減衰性能を発
揮できていることが分かる。また、ピーク温度についても室温環境にある。
【0052】
実施例8は成形直後において2.0を超える高いtanδを発現している。そして、2ヶ月後のtanδも全く低下せず、そのtanδ保持率は99%と良好な結果を示している。また、ピーク温度も室温付近にあり優れた結果を示している。
【0053】
実施例9も成形直後においては要求特性(tanδ≧2.5)を超える高いtanδを発現している。そして、2ヶ月後のtanδは全く低下しておらず、そのtanδ保持率は99%と良好な結果を示している。また、ピーク温度も室温付近にあり優れた結果を示している。
【0054】
尚、大きめの分子量を有するアデカスタブLA−68LDを配合した実施例10はtanδが1.80と他の実施例に比べるとやや低めの値になっているが、減衰性材料のtanδとしては十分な値である。また、経時変化については、tanδ保持率100%という結果を得られた。これ以上大きな分子量のものを配合すると、減衰性が著しく低下してしまい、減衰材料として不適なものとなってしまうことから、配合する分子量の上限は、やはり2000前後と思われる。
【0055】
以上の結果から、実施例6〜10は、ベースポリマーに分子量を考慮して減衰性付与剤が配合されていることから高いtanδを発現するだけでなく、長期にわたって高い減衰性能を発現できることが分かる。また、ベースポリマーにエチレン−アクリル酸メチル共重合体を用いる場合には、配合する減衰性付与剤の分子量は1000〜1700の範囲が適切であることが分かる。
【0056】
よって、実施例6及び7は比較的高いtanδを発現し、経時変化が少ないことから優れている(○印)と評価され、実施例8及び9は極めて高いtanδを発現し、しかも経時変化が少ないことから極めて優れている(◎印)と評価された。尚、実施例10はややtanδが低いものの、経時変化の抑制効果が高いことから優れている(○印)と評価された。
【0057】
以上、表1及び表2にまとめた本実施例の結果から減衰性付与剤の好適な分子量をみてみると、500〜2000の範囲で優れた結果が得られることが分かる。これより小さい分子量とした場合は従来技術にあるように経時変化が大きくなる。そして、減衰性付与剤の分子量と減衰特性(tanδ)及び経時変化の関係をみると、減衰性付与剤の分子量が800〜1500の範囲がより好ましいように思われる。また、上限としては、実施例5及び実施例10の結果からも分かるとおり、2000より大きな分子量とした場合は高い減衰性を得られないものとなってしまう。
【0058】
以上、本発明の各実施例を順に説明したが、要するに、本発明に係る高減衰材料組成物は、アクリル系、メタクリル系、エチレン−アクリル系共重合体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体より選ばれた1種又は2種以上のポリマーからなるベースポリマーが、減衰性付与剤として適切な分子量を有する特定のヒンダードアミン系化合物を含有するようにしたことから、減衰性付与剤がベースポリマー中に均一に分散し、しかもブリード現象及び結晶化を起こすことのないものとしているため、長期にわたり安定して減衰性を発現できるものとなる。
【0059】
本発明は、上記した実施例に何等限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、ベースポリマーとしては、本発明で用いたもの以外に、他のアクリル系、メタクリル系、エチレン−アクリル系共重合体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体等のベースポリマーが挙げられる。
【0060】
また、減衰性付与剤も、上記実施例に示したもの以外に、縮合の割合や分子量が異なるものも使用できることは、その官能基等の共通性をみれば容易に判断できるはずである。
【0061】
また、ベースポリマーには、上述したような充填剤、着色剤等或いは非結晶性樹脂等を必要に応じて添加することができ、これらを添加することによって様々な機能向上を図ることができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明に係る高減衰材料組成物によれば、特定のベースポリマーに減衰性付与剤として特定のヒンダードアミン系化合物を配合するに際し、その減衰性付与剤の分子量を考慮して減衰性付与剤を選択して配合したもの或いは好適な範囲に分子量を有するようにその減衰性付与剤をオリゴマー化等の手段を用いてから配合したものであるから、高いtanδを発現する減衰特性を示すだけでなく、ベースポリマー中に減衰性付与剤が均一に分散し、更にベースポリマーと減衰性付与剤とがうまく絡み合うので、長期にわたって高い減衰性を維持することのできる高減衰材料組成物を提供することができる。したがって、本発明に係る高減衰材料組成物を、音響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切り、車両の防音壁等、幅広い分野に適用することは、極めて有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る高減衰材料組成物のベースポリマーと減衰性付与剤の絡み合いの様子を示した図である。
【図2】 配合する減衰性付与剤の分子量と成形直後の減衰性能及び結晶化抑制効果との関係を示した図である。
Claims (1)
- アクリル系、メタクリル系、エチレン−アクリル系共重合体、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体より選ばれた1種又は2種以上のポリマーからなるベースポリマーが、ヒンダードアミン系化合物より選ばれた1種又は2種以上の減衰性付与剤を含有し、
前記ヒンダードアミン系化合物は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物であり、かつ、その分子量が500〜2000の範囲にあることを特徴とする高減衰材料組成物。
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1998
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