JP3575149B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐光性に優れ、混練加工時及び成形加工時の金属への付着が少ない難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、難燃性、熱安定性、耐光性に優れ、混練加工時及び成形加工時の金属への付着が少ない熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS、HIPS等に代表されるスチレン系樹脂は成形加工性、機械的特性、外観等の優れた特徴から、電機製品、OA機器、事務機器等の用途に広く用いられている。これらの用途では、内部部品の発熱、発火源等の問題から樹脂の難燃化が必要とされ、臭素や塩素等のハロゲン元素を含有する有機化合物を難燃剤として配合している。また蛍光灯、日光等の光による変色を防ぐために、コンピュータやファクシミリ等の用途では難燃性、耐衝撃性に加えて耐光性が要求されている。例えば特開昭61−211354号公報では両末端にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシ化合物を用いて、耐光性に優れた熱可塑性樹脂を得る技術が開示されている。
しかし、上記のようなハロゲン化エポキシ化合物を使用した場合、混練加工時及び成形加工時に樹脂が加工機の金属スクリュー表面に付着してエポキシ化合物のゲル化反応を起こし、更に樹脂の着変色、炭化等が発生して成形品の特性が著しく低下するという問題があった。
【0003】
エポキシ化合物のゲル化反応を抑制する技術として、特開平1−101350号公報には末端にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシ化合物を三酸化アンチモン、ハイドロタルサイト等の塩基性無機化合物と共に添加して熱安定性を改良する技術が、また特開平6−93156号公報には末端にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシ化合物をゼオライト、エチレンジアミン四酢酸金属塩と共に添加して熱安定性を改良する技術が開示されているが、フィラー添加による耐衝撃性の低下、及びこれらの化合物が水和物であるために成形加工時にシルバーストリーク、発泡等の外観不良が発生する等の問題があった。
【0004】
一方、混練加工時及び成形加工時の樹脂の金属への付着を抑制する技術としては、特開平5−117463号公報にハロゲン化エポキシ化合物とエポキシ樹脂のエポキシ基の一部ないし全部が長鎖脂肪族カルボン酸で封止された構造を有する化合物を溶融混合した混合物を用いる技術が開示されているが、十分な効果を得るためには該混合物中の長鎖脂肪族カルボン酸の添加量を多くせざるを得ず、成形加工時に添加物または反応化合物から分解ガスが発生してシルバーストリーク等の不良が起こる問題があった。また上記で得られるエステル等の反応化合物の融点が室温付近となる場合には、混練加工時の作業性が大幅に低下する問題点もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン化エポキシ化合物を含む耐光性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物において、成形加工時のシルバーストリーク等の不良や耐衝撃強さの低下を起こすことなく、混練加工時及び成形加工時の金属スクリューや金属ロールへの付着が抑制された組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
そして本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、スチレン系樹脂にハロゲン化エポキシ化合物と共にペンタエリスリトール脂肪酸エステルを添加することにより、該エポキシ化合物を含む樹脂組成物の熱安定性が著しく改良され、混練加工時及び成形加工時にシルバーストリーク等の不良が起こらず、該樹脂組成物の金属のスクリューや金属ロールへの付着が抑制されることを見いだしたのである。更には、高級脂肪酸アミドを必要に応じて加えることによってその効果が相乗的に向上すること、及び該エポキシ化合物が一方の末端がエポキシ基であり他方の末端エポキシ基に臭素化又は塩素化されていても良いアルコール類及び/又はフェノール類等が付加されているハロゲン化エポキシ化合物を含む場合には、さらに高い効果が得られるということを見いだしたのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の単量体混合物を、ゴム質重合体の存在下で重合させた(A)グラフト共重合体10〜100重量部と、芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の単量体混合物を重合された(B)共重合体0〜90重量部より成る樹脂混合物100重量部に、
(C)下記一般式
【0008】
【化4】
(式中nは0〜15の整数を、Xは臭素又は塩素を、a,b,c,dは1〜4の整数を、R1はイソプロピリデン基、メチレン基又はスルホン基を、R2、R3はそれぞれ2,3エポキシプロピル基及び/又は−CH2・CH(OH)・CH2−O−R4基[R4は臭素又は塩素で置換されていてもよいアルキル基又はアリル基]を示す。)
【0009】
で表されるハロゲン化エポキシ化合物を1〜30重量部、及び
(D)下記一般式
【0010】
【化5】
(式中R5〜R10は、それぞれ水素又は−CO−R’で表されるアルキルカルボニル基及び/又はアルケニルカルボニル基[但し、R’は炭素数4〜30のアルキル基及び/又はアルケニル基]を、nは0〜2の整数を示す。)
【0011】
で表されるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを0.05〜5重量部を配合してなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
また、請求項2において、請求項1記載の(C)ハロゲン化エポキシ化合物が下記一般式
【0012】
【化6】
(式中nは0〜15の整数を、Xは臭素又は塩素を、a,b,c,dは1〜4の整数を、R1はイソプロピリデン基、メチレン基又はスルホン基を示す。)
【0013】
で表される構造を有するハロゲン化エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0014】
請求項3において、請求項1記載の(C)ハロゲン化エポキシ化合物が、請求項2記載のハロゲン化エポキシ化合物35〜85モル%と臭素化又は塩素化されていても良いアルコール類及び/又はフェノール類15〜65モル%との反応生成物であることを特徴とする請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、請求項1〜3いずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物において、請求項1記載の樹脂混合物100重量部に対して(E)高級脂肪酸アミド0.05〜5重量部を更に配合してなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明における(A)グラフト共重合体とは、芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の単量体混合物を、ガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−20℃以下のゴム質重合体の存在下で重合させて得られるグラフト共重合体をいう。
本発明に係る樹脂組成物が優れた物性、難燃性、加工性を有するためには、(A)グラフト共重合体が含有するゴム質重合体のゴム重量平均粒子径は0.1〜3μmであることが好ましく、更にゴム含有量は5〜70重量%であることが好ましい。これらの値が上記範囲に満たないと最終的に得られる樹脂の耐衝撃性が低下し、上記範囲を越えると最終的に得られる樹脂の難燃性が低下するので好ましくない。
【0017】
(A)グラフト共重合体で用いられるゴム質重合体とは、ガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−20℃以下のものであり、例えば、ポリブタジエン、ブタジエンと他の単量体との共重合体からなるゴム質重合体等が挙げられる。
また、本発明において構成成分である芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のα−アルキルスチレン、p−メチルスチレン等の核置換アルキルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物であってもよい。
芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのアルキルエステルであるブチルアクリレート、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のアクリル系単量体、無水マレイン酸、及びマレイミド、N−フェニルマレイミド等の不飽和無水酸誘導体系の単量体等が挙げられる。これらは1種または2種以上の混合物であってもよい。
(A)グラフト共重合体に使用する単量体混合物中の芳香族ビニル単量体成分の比率は、60〜100重量%の範囲とする。60重量%に満たないと、得られる樹脂組成物の耐熱性や耐衝撃性、色調等が低下するので好ましくない。
【0018】
(A)グラフト共重合体の具体例としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体(ACS樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。
(A)グラフト共重合体は、上記の単量体ないしはその単量体混合物から公知の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法を用いて、回分方式または連続方式で製造することができる。
【0019】
本発明における(B)共重合体とは、芳香族ビニル単量体60〜100重量%、芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%よりなる単量体混合物を重合させて得られる共重合体をいう。
(B)共重合体の構成成分である芳香族ビニル単量体及びそれと共重合可能な単量体とは、上記(A)グラフト共重合体で具体例として挙げたものを同様に使用することができる。なお、(B)共重合体の構成単量体の種類及び混合割合は、特許請求の範囲内にあればよく、必ずしも(A)グラフト共重合体の構成単量体と全く同一である必要性はない。
(B)共重合体中に占める芳香族ビニル単量体成分の混合比率は、60〜100重量%の範囲とする。60重量%に満たないと、得られる樹脂組成物の耐熱性や耐衝撃性、色調等が低下するので好ましくない。
【0020】
この(B)共重合体は、例えば公知のアクリロニトリル・スチレン共重合体の製造技術に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法を用いて、回分方式または連続方式で製造することができる。また(B)共重合体は、(A)グラフト共重合体の重合操作において同時に同一の重合系内で製造または副成させることもできるし、別途重合方法および重合条件を設定して製造することもできる.
本発明の樹脂組成物における各樹脂の配合比率は(A)グラフト共重合体10〜100重量%及び、(B)共重合体0〜90重量%の範囲でなければならない。この範囲を外れると得られる樹脂組成物に十分な難燃性、物性を付与することができない。(A)グラフト共重合体または(B)共重合体を乳化重合法により製造する場合には、乳化剤、塩析剤等に由来する脂肪酸や金属塩の残留物を少なくすると得られる樹脂組成物の熱安定性や機械的強度が向上するので好ましい。
本発明樹脂組成物には、必要に応じて、更に任意の他の樹脂を添加することができる。添加することのできる他樹脂の例としてはポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明における(C)ハロゲン化エポキシ化合物とは、ハロゲン化ビスフェノールと、ハロゲン化ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピハロヒドリンとの反応生成物であり、下記一般式で表される。
【0022】
【化7】
(式中nは0〜15の整数を、Xは臭素又は塩素を、a,b,c,dは1〜4の整数を、R1はイソプロピリデン基、メチレン基又はスルホン基を、R2、R3はそれぞれ2,3エポキシプロピル基及び/又は−CH2・CH(OH)・CH2−O−R4基[R4は臭素又は塩素で置換されていてもよいアルキル基又はアリル基]を示す。)
【0023】
(C)ハロゲン化エポキシ化合物の製造に使用されるハロゲン化ビスフェノールの具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ジブロモビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールF、ジクロロビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールS、ジブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールS、ジクロロビスフェノールS等が挙げられる。これらは1種または2種以上の混合物であっても良い。
【0024】
本発明組成物における(C)ハロゲン化エポキシ化合物の重合度nは、0〜15の整数である。重合度nが15を越えると得られる樹脂組成物の耐衝撃性、耐光性が低下するので好ましくない。これらは、重合度nの異なるものを2種類以上混合されたものであっても良い。
(C)ハロゲン化エポキシ化合物の末端はエポキシ基であっても、またエポキシ基がアルコール等によって、アリル基やアルキル基等と結合したエーテル基に置換され封止されていてもよく、末端を封止するアリル基やアルキル基は必要に応じて塩素、臭素などのハロゲン元素で修飾されていても良い。末端を封止する基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等の無置換アリル基、トリブロモフェニル基、ペンタブロモフェニル基、トリクロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等のハロゲン化アリル基、ステアリル基等のアルキル基等が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる(C)ハロゲン化エポキシ化合物の末端は上記の範囲内であれば制限はなく、一方の末端と他方の末端の構造は同一であっても、また異なっていても良い。特に、一方の末端がエポキシ基であり他方の末端が臭素化又は塩素化されていても良いアルキル基又はアリル基で封止されている(C)ハロゲン化エポキシ化合物を使用する場合には、本発明の効果をより向上させることができる。このような(C)ハロゲン化エポキシ化合物は、両末端にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシ化合物に、少量の臭素化又は塩素化されていても良いアルコール類又はフェノール類を反応させることによって得ることができる。具体的に好ましい反応仕込み比率として、両末端にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシ化合物35〜85モル%、より好ましくは40〜75モル%に対して、臭素化又は塩素化されていても良いアルコール類又はフェノール類15〜65モル%、より好ましくは25〜60モル%とすることにより、好適な反応生成物が得られる。
【0026】
(C)ハロゲン化エポキシ化合物の添加量は、共重合体(A)及び(B)の樹脂混合物100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは5〜30重量部である。添加量が30重量部を越えると経済的に不利なだけでなく得られる樹脂組成物の物性が低下する。添加量が5重量部に満たないと得られる樹脂組成物に十分な難燃性を付与することができないのでそれぞれ好ましくない。
【0027】
本発明に用いられる(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとはペンタエリスリトール及び/又はそのオリゴマーと、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油系脂肪酸、パーム油系脂肪酸、牛脂系脂肪酸等の炭素数が4〜30の脂肪酸とのエステルであって、一般に市販されているものを使用することができる。同一分子中に用いられる脂肪酸は同一のものであっても異なっていてもよい。更に、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれも使用できるが、飽和脂肪酸を用いるのがより好ましい。
ペンタエリスリトール及び/又はそのオリゴマーの水酸基は、脂肪酸により全てがエステル化されている必要はないが、エステル化されずに残る水酸基の数が少ないほど、(C)ハロゲン化エポキシ化合物とのゲル化反応を抑制するので好ましい。
【0028】
(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルの具体例としては、例えばジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサラウレート、ジペンタエリスリトールテトララウレート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトララウレート、ペンタエリスリトールトリラウレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールモノラウレート等のモノペンタエリスリトール脂肪酸エステル等があげられる。これらは1種または2種以上の混合物であっても良い。
本発明における(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルの配合量は、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。配合量が0.05重量部未満では金属付着性に対する十分な抑制効果が得られず、5重量部を超えると成形加工時にシルバーストリーク等の不良が発生し易くなる。
【0029】
本発明に用いられる(E)高級脂肪酸アミドとは、アルキレンジアミンと炭素数4〜30の高級脂肪酸とのアミドであって、通常市販されているものを使用することができる。
(E)高級脂肪酸アミドの具体例としては、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミド、メチレンビスステアリルアミド等を挙げることができる。本発明に用いられる(E)高級脂肪酸アミドの配合量は、樹脂混合物100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。配合量が0.05重量部未満では十分なスクリュー付着性抑制効果が得られなかったり、5重量部を超えると成形加工時にシルバーストリーク等の不良が発生することがあるので好ましくない。
【0030】
本発明に係わる樹脂組成物は、(A)グラフト共重合体、(B)共重合体、(C)ハロゲン化エポキシ化合物、(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、及び必要に応じて(E)高級脂肪酸アミドを、これまで説明した範囲内で秤量し公知の方法で混合、混練することにより得られる。例えば、粉末、ビーズ、フレーク又はペレット状の各構成物の混合物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機、又はバンバリーミキサー、加圧ニーダー、二本ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより、樹脂組成物を得ることができる。液体を配合する必要のある場合には、公知の液体注入装置を用いて上記の方法で混練すればよい。また、その際、必要に応じて本樹脂組成物の性質を阻害しない種類および量の潤滑剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、他の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、ポリテトラフルオロエチレン等のドリップ(燃焼時の火種の垂れ落ち)防止剤、紫外線吸収剤、耐光性安定剤、耐熱性安定剤等の各種樹脂添加剤や、タルク等の充填材、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー等の補強材等を適宜組合せて添加することができる。
【0031】
【実施例】
次に本発明を実施例に基いて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例で「部」とあるのは「重量部」の略である。
【0032】
(1)(A)グラフト共重合体の製造
攪拌装置、加熱冷却装置、及び各原料、助剤仕込装置を備えた容量5Lの反応器に、無水酢酸を用いて0.25μmに粒径肥大した共役ジエン系ゴム質重合体ラテックスを固形分として100部、及び脱イオン水を270部(ラテックス中の水分を含む)仕込み、70℃に昇温した。昇温の途中60℃で、水45部に溶解したピロリン酸ナトリウム1.0部、デキストロース0.5部及び硫酸第一鉄0.01部を添加した。70℃に達した時点から2.5時間かけて、スチレン70部、アクリロニトリル30部、t−ドデシルメルカプタン1.1部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.5部、不均化ロジン酸カリウム石鹸1.8部、水酸化カリウム0.37部、脱イオン水35部を添加した。添加終了後、更に30分間反応を続け、冷却して、反応を終了した。
このグラフト共重合体ラテックスに老化防止剤5部を添加後、95℃に加熱した硫酸マグネシウム水溶液中に攪拌しながら加えて凝固させ、凝固物を水洗乾燥して白色粉末状のグラフト共重合体を得た。
【0033】
(2)(B)共重合体
スチレン/アクリロニトリル=70/30重量比であり、分子量が12万のものを使用した。
【0034】
(3)(C)ハロゲン化エポキシ化合物
(C−1)末端未封止型
市販の末端未封止型テトラブロモビスフェノールA型エポキシオリゴマー(東都化成(株)製、商品名 エポトートYDB406)を使用した。構造式を以下に示す。
【0035】
【化8】
(但し、n=0及び1の混合物。)
【0036】
(C−2)末端半封止型
末端未封止型テトラブロモビスフェノールA型エポキシオリゴマー50モル%とトリブロモフェノール50モル%の反応生成物である、市販の末端半封止型テトラブロモビスフェノールA型エポキシオリゴマー(東都化成(株)製、商品名エポトートYDB416)を使用した。構造式を以下に示す。
【0037】
【化9】
(A、B、Cの混合物でありそのモル比はA:B:C=1:2:1。A、B、Cは各々、n=0及び1の混合物。)
【0038】
(C−3)滑剤添加(末端未封止)型
比較例として、市販の末端未封止テトラブロモビスフェノールA型エポキシオリゴマーと芳香族高級脂肪酸エステル系滑剤との溶融混合物(大日本インキ化学工業(株)製、商品名 プラサームEPR−13)を使用した。
【0039】
(4)(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステル
(D−1)ダイマー型
市販のジペンタエリスリトールヘキサステアレート(理研ビタミン(株)製、商品名リケスターSL02)を使用した。構造式を以下に示す。
【0040】
【化10】
【0041】
(D−2)モノマー型
市販のペンタエリスリトールジステアレート(日本油脂(株)製、商品名 ユニスターH476D)を使用した。構造式を以下に示す。
【0042】
【化11】
【0043】
(5)(E)高級脂肪酸アミド
市販のエチレンビスステアリルアミド(花王(株)製、商品名 カオーワックスEB−P)を使用した。
【0044】
(6)(F)ステアリン酸マグネシウム
比較例として、市販のステアリン酸マグネシウムを使用した。
【0045】
(7)(G)三酸化アンチモン
難燃助剤として、市販の三酸化アンチモン(ローレルインダストリー(株)製、商品名 ファイアシールドH07)を使用した。
【0046】
(8)樹脂組成物の物性評価方法
樹脂組成物の物性は、射出成形法により作製した試験片について、以下に示す方法で金属付着性、アイゾット衝撃強度、UL燃焼規格を試験し測定した。
【0047】
・金属付着性試験
厚さ3mmのプレス成型品から切り出した20mm×20mmの試験片を、2枚のステンレス製鋼板の間に固定してギアオーブン中で200℃、6時間加熱した。放冷後、インストロン万能試験機で鋼板と樹脂との剥離強度(kg)を測定し、金属付着性の指標とした。
【0048】
・シルバーストリーク
成型品表面を目視によって、○(良)、×(不良)で判定した。
・UL燃焼試験
米国アンダーライターラボラトリーズ発行のUL−94に準拠した方法で垂直燃焼試験を行い、難燃性の指標とした(試験片厚み1/12インチ)。
・アイゾッド衝撃強さ
JIS−K7110に準拠した方法で23℃で測定し、耐衝撃性の指標とした(試験片厚み1/8インチ、Vノッチ入り)。
【0049】
実施例1〜6、比較例1〜7
上記の方法で得られた(A)グラフト共重合体、(B)共重合体、(C)ハロゲン化エポキシ化合物、(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、(E)高級脂肪酸アミド、(F)ステアリン酸マグネシウム、(G)三酸化アンチモンを、第1表〜第3表に記載した配合割合(重量部)で秤量、タンブラーで混合した。得られた混合物を、ベント付2軸押出し機を用いて揮発分を除去しながら混練して、樹脂組成物のペレットを作成した。
この樹脂組成物のペレットから、射出成形法により試験片を作製し、物性を測定した。結果を第1表〜第3表に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
第1表、第2表より、本発明に係る樹脂組成物は、(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを配合することにより、優れた耐衝撃性、難燃性を保持し、しかもシルバーストリーク等の不良も発生させずに(C)ハロゲン化エポキシ化合物を含む樹脂組成物が得られ、この樹脂組成物は金属付着性を抑制し、更に極めて優れた熱安定性を有していることがわかる(実施例1〜4)。
一方、(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを添加しない場合は、金属付着が観測され(比較例1、5)、(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルの代わりに(E)エチレンビスステアリルアミド、(F)ステアリン酸マグネシウム等の滑剤のみを添加した場合は、金属付着性が改善されず(比較例2、3、6、7)、更に(E)エチレンビスステアリルアミドのみを使用した場合には難燃性も低下することがわかる(比較例2、6)。更に、芳香族高級脂肪酸エステル系滑剤が添加されたハロゲン化エポキシ化合物(C−3)を使用した場合も、金属付着性は改善されずシルバーストリークが発生する(比較例4)。
【0054】
また、第2表の実施例3、4と第1表の実施例1、2との比較から、半封止型のハロゲン化エポキシ化合物(C−2)を使用すると、未封止型のハロゲン化エポキシ化合物(C−1)に比べ金属付着性が更に改善されることが判る。
第3表からは(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステルと(E)高級脂肪酸アミドを併用すると、(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステル単独の場合に比べて相乗的に金属付着性が改善されることが判る(実施例5、6)。
【0055】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、(A)グラフト重合体、(B)共重合体、(C)ハロゲン化エポキシ化合物に(D)ペンタエリスリトール脂肪酸エステル及び必要に応じて更に(E)高級脂肪酸アミドを配合することにより、混練加工時及び成形加工時の金属スクリューや金属ロールへの付着が抑制され、且つ成形加工時のシルバーストリーク等の不良が抑制された難燃性熱可塑性樹脂材料として利用することが可能であり、その産業上の利用価値は極めて高い。
Claims (4)
- 芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の単量体混合物を、ゴム質重合体の存在下で重合させた(A)グラフト共重合体10〜100重量部と、芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の単量体混合物を重合させた(B)共重合体0〜90重量部よりなる樹脂混合物100重量部に、
(C)下記一般式
で表されるハロゲン化エポキシ化合物を1〜30重量部、及び
(D)下記一般式
で表されるペンタエリスリトール脂肪酸エステルを0.05〜5重量部を配合してなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。 - 請求項1記載の(C)ハロゲン化エポキシ化合物が、請求項2記載のハロゲン化エポキシ化合物35〜85モル%と臭素化又は塩素化されていても良いアルコール類及び/又はフェノール類15〜65モル%との反応生成物であることを特徴とする請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物において、請求項1記載の樹脂混合物100重量部に対して(E)高級脂肪酸アミド0.05〜5重量部を更に配合してなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。
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