JP3574701B2 - 自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用の電動格納ドアミラーは、図6に示すように、一般に、自動車のドアに固定されるステー10と、ステー10に設けられた支点軸11に回転可能に保持されるとともにミラー12を角度調整可能に保持するケーシングであるバイザー13とから構成され、バイザー13を、支点軸11を中心として、ドアから起立した使用位置と、ドアに沿わせた格納位置との間で回転駆動できるようになっている。この回転駆動のための電動格納機構は、図示していないが、一般に、支点軸11に回転可能かつ軸方向移動可能に装着した被駆動ギヤと、支点軸に回転を規制した状態で装着したクラッチプレートと、バイザー内に固定したモータ(図示せず)と、モータから被駆動ギヤに回転を伝達する減速ギヤ列(バイザー内に位置固定)とから構成されている。
【0003】
被駆動ギヤとクラッチプレートの合わせ面には、一方に凸部が、他方に凸部と係合する凹部が形成される。この凸部と凹部は、それぞれ、被駆動ギヤの回転方向の両端面が傾斜面として形成され、また、凸部の傾斜面と凹部の傾斜面とを支点軸11の軸方向沿いに圧接させるように、被駆動ギヤをクラッチプレート側へ向かってスプリングで付勢するようになっている。
【0004】
以上の構成において、モータを起動したとき、凸部と凹部の作用で被駆動ギヤが回転規制されるためにモータが支点軸の回りで公転し、それに伴ってバイザー13が回転する。なお、凸部と凹部の端面が傾斜面として形成されているので、バイザー13が障害物に当たった場合などには、モータの公転に伴って被駆動ギヤが回転しようとしたとき、その力が一定の大きさ以上であればスプリングの付勢力に抗して凸部と凹部の係合が外れ(クラッチが切れ)て、バイザー13が回転するようになっている。
【0005】
ところで、被駆動ギヤとしてウォームホイールを用い、減速ギヤ列の再終段にウォームを用いる場合があるが、この場合でも、バイザーを回そうとする外力が加わってウォームが支点軸の回りで公転しようとするとウォームホイールを回す方向への力が作用する。ここで、ウォームホイールの歯すじが斜めになっている関係で、バイザーを前方へ倒すときと後方へ倒すときとでクラッチを切るのに必要な力が異なることになる。このことを、図を用いて以下に説明する。
【0006】
図7はクラッチ機構の側面図、図8はクラッチプレートとウォームホイールの合わせ面の平面図、図9は図8のIX−IX線断面図である。図において、ウォームホイール(被駆動ギヤ)1にウォーム3が噛み合っており、ウォームホイール1がスプリング4によってクラッチプレート2の方へ付勢されている。また、凸部5と凹部6は、支点軸の中心から半径Rのところに90゜間隔で4か所に配置されている。以上の構成においてスプリング4の付勢力をPとすると、ウォームホイール1を図9の(I)方向へ回すために必要なトルクT1は、
T1=R・P・tan(β1+ψ)=R・P・tan(α+γ+ψ)
となる。一方、(II)方向へ回すために必要なトルクT2は、
T2=R・P・tan(β2+ψ)=R・P・tan(α−γ+ψ)
となる。ただし、αは凸部5及び凹部6の傾斜面の傾斜角度、γはウォーム3の進み角、ψは摩擦角である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来はウォーム3とウォームホイール1を減速の最終段に用いると、バイザー13を前方へ倒す場合と後方へ倒す場合で必要なトルクが異なるという問題があった。これに対して、トルクが両方向でほぼ等しくなるように両傾斜面の傾斜角度を変えることが実用新案登録第3004709号公報に記載されているが、傾斜面の傾斜角度を変えると、クラッチが切れるときのウォームホイール1の回転角度がバイザー13を倒す方向によって異なることになる。したがって、回転角度が小さい側では衝撃吸収の時間が短く、瞬間的な衝撃でもバイザー13が回避してしまうことになる。
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、バイザーを倒す力を前後両方向で実質同一にし、しかも、クラッチが切れるときの回転角度も両方向で実質的に等しくすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構は、ステーの支点軸に回転可能かつ軸方向移動可能に支持されかつ駆動源の回転力がウォームを介して伝達されるウォームホイールと、ウォームホイールに重なるように支点軸に位置固定されたクラッチプレートの合わせ面の一方に凸部が、他方に凸部と係合する凹部が形成され、凸部と凹部が、それぞれ、支点軸に対する回転方向の両端面が傾斜面として形成され、ウォームホイールをクラッチプレート側へ付勢する付勢手段により、凸部と凹部の傾斜面同士が支点軸の軸方向沿いに圧接してなる自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構であって、上述の技術的課題を解決するために、以下のように構成されたことを特徴としている。
【0010】
すなわち、凸部と凹部が、支点軸からの距離の異なる第1位置と第2位置にそれぞれ形成されるとともに、第2位置よりも支点軸に近い第1位置ではウォームホイールの歯すじの傾斜方向に傾斜した傾斜面同士が接するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が離反し、第2位置では該歯すじの傾斜方向の傾斜面同士が離反するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が接している。
【0011】
そして、ウォームホイールの回転の所要トルクをT、支点軸から第1位置までの距離をR1、第2位置までの距離をR2、各傾斜面同士の圧接力をP、各傾斜面の傾斜角度をα、ウォームの進み角をγ、摩擦角をψ、凸部と凹部の脱離の際のウォームホイールの回転の角度をθ、第1位置及び第2位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをそれぞれS1及びS2としたときに、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)と、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2の関係が満たされている。
【0012】
【作用・効果】
上記構成においては、通常はクラッチプレートとウォームホイールの凸部と凹部がかみ合っていてウォームホイールが回転しないので、駆動モータを起動すると、ウォームからウォームホイールへの動力伝達の反力でバイザーが回転する。
【0013】
一方、バイザーに大きな外力が加わり、バイザーが回転するとき、支点軸の回りでのウォームの公転により、ウォームホイールがクラッチプレートから軸方向沿いに逃げながら回転し、凸部と凹部のかみ合いが外れる。上記構成では、凸部と凹部を支点軸からの距離の小さな第1位置とその距離の大きな第2位置とにそれぞれ設け、かつ第1位置と第2位置とで互いに反対側の傾斜面が接するようにしてウォームの進み角に対する凸部と凹部の傾斜面の角度の違いを相殺しているので、バイザーを前方へ倒す場合も後方へ倒す場合もトルクは実質的に同じである。
【0014】
また、第1位置の傾斜面同士が離れるときと第2位置の傾斜面同士が離れるときのウォームホイールの回転角度θが実質的に等しくなるようにストロークS1とS2を設定しているので、前後どちらかの方向へだけ衝撃吸収の時間が短くなることはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る電動格納ドアミラーのクラッチ機構の第1の実施の形態を、図1から図4を用いて詳細に説明する。図1はウォームホイールとクラッチプレートを重ねた状態での平面図、図2(A)は図1のA−A線断面図、図2(B)は図1のB−B線断面図、図3(A)はクラッチプレートの下面の要部斜視図、図3(B)はウォームホイールの上面の要部斜視図、図4はウォームホイールとクラッチプレートの動作説明図である。
【0016】
このクラッチ機構が適用されるドアミラーは、図6を用いて説明したように、自動車のドアに固定されるステー10と、このステー10に設けられたほぼ垂直の支点軸11に回転可能に保持されたバイザー13とから構成されている。また、このドアミラーは、ステー10の支点軸11に回転可能かつ軸方向移動可能に装着されたウォームホイール1と、支点軸11に回転を禁止された状態でウォームホイール1に重ねて位置固定されたクラッチプレート2と、ウォームホイール1に噛み合う位置でバイザー側に支持されたウォーム3と、バイザー側の部材に支持されかつ駆動モータの回転力をウォーム3に伝達する駆動機構(図示せず)とを備えている。
【0017】
次に、クラッチ機構について説明する。図示するように、ウォームホイール1に凸部5が、クラッチプレート2に凸部5と係合する凹部6が形成されている。凸部5は、5aと5bで示すように、支点軸11の中心から小さい距離(半径)R1の第1位置と、大きい距離R2の第2位置に形成されている。なお、図では凸部5と凹部6を1カ所のみに示しているが、図8に示した従来例と同様、それぞれ、90゜間隔で4カ所に形成されている。ただし、凸部5と凹部6は、4ケ所に限らず、360゜を整数等分した間隔(バランス上、2ケ所以上)に設ければよい。
【0018】
第1位置の凸部5aと第2位置の凸部5bはわずかに左右にずれた位置に形成され、それぞれ、回転方向の両端面がウォームホイール1とクラッチプレート2の合わせ面に対して同じ角度αで逆方向に傾斜した傾斜面として形成されている。また、凹部6は、両方の凸部5a,5bが入るものとして形成され、第1位置の凸部5aと図の左側の傾斜面で接し、第2位置の凸部5bと右側の傾斜面で接するようになっている。なお、両凸部5a,5bと凹部6との接触関係をウォームホイール1の歯すじの傾斜に対する関係で説明すると、回転中心に近い第1位置の凸部5aと凹部6は、ウォームホイール1の側面から見て、その歯すじの傾斜方向に傾斜した傾斜面同士が接するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が分離し、回転中心に遠い第2位置の凸部5bと凹部6は、この歯すじ方向の傾斜面同士が離反するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が接している。
【0019】
また、支点軸11の中心から各凸部5a,5bまでの距離R1,R2は、ウォームホイール1の回転に必要なトルクをT、スプリング4によるウォームホイール1とクラッチプレート2の圧接付勢力をP、傾斜面の傾斜角度をα、ウォームの進み角をγ、摩擦角をψとしたときに、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)
の関係を満たすように定められている。
【0020】
さらに、クラッチが切れる時(凸部5と凹部6の脱離時)のウォームホイール1の回転の角度をθ(不図示)とすると、第1位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをS1、第2位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをS2としたときに、ストロークS1とS2は、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2
の関係を満たすように定められている。
【0021】
上記構成においては、通常はクラッチプレート2とウォームホイール1の凸部5a,5bと凹部6がかみ合っていてウォームホイール1が回転しないので、駆動モータを起動すると、ウォーム3からウォームホイール1への動力伝達の反力でバイザー13が回転する。一方、バイザー13に大きな外力が加わってバイザー13が回転するときは、支点軸11の回りでのウォーム3の位置変化によりウォームホイール1がクラッチプレートから軸方向沿いに離れながら回転し、凸部5a,5bと凹部6のかみ合いが外れる。上記構成では、凸部5a,5bと凹部6を回転中心からの距離の小さな第1位置とその距離の大きな第2位置とで係合するように設けて、ウォーム3の進み角に対する傾斜面の角度の違いをその距離の違いで相殺し、さらに、第1位置と第2位置とで凸部5a,5bと凹部6が互いに反対側の傾斜面で接するようにしているので、バイザー13を前方へ倒す場合も後方へ倒す場合もトルクは実質的に同じである。
【0022】
また、第1位置の傾斜面同士が離れるときと第2位置の傾斜面同士が離れるときのウォームホイール1の回転角度θが実質的に等しくなるようにストロークS1とS2を設定しているので、バイザー13を前後どちらかの方向へ倒すときだけ衝撃吸収の時間が短くなることはない。
【0023】
次に、図5に示した第2の実施の形態について説明する。この例では、凸部5を第1位置から第2位置まで同一の径線上に連続したものとして形成し、凹部6a,6bを第1位置と第2位置とで左右にずれたものとして形成している点を除き、第1の実施の形態と同様に構成されている。したがって、R1とR2についても、上述と同様に、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)の関係を満たすように設定されている。また、S1とS2についても、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2の関係を満たすように定められている。このため、クラッチを切る際にクラッチプレート2に対してウォームホイール1を回転させるのに要するトルクと回転角度は、上述した第1の実施の形態と同様、回転方向に拘わらず同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動格納ドアミラーのクラッチ機構の第1の実施の形態を示す平面図である。
【図2】(A)図は図1のA−A線断面図、(B)図は図1のB−B線断面図である。
【図3】(A)図はクラッチプレートの下面の要部斜視図、(B)図はウォームホイールの上面の要部斜視図である。
【図4】ウォームホイールとクラッチプレートの動作説明図である。
【図5】第2の実施の形態を示す要部斜視図である。
【図6】一般的なドアミラーの正面図である。
【図7】従来のクラッチ機構の側面図である。
【図8】クラッチプレートとウォームホイールの合わせ面の平面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【符号の説明】
1 ウォームホイール
2 クラッチプレート
3 ウォーム
4 スプリング
5,5a,5b 凸部
6,6a,6b 凹部
10 ステー
11 支点軸
12 ミラー
13 バイザー
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用の電動格納ドアミラーは、図6に示すように、一般に、自動車のドアに固定されるステー10と、ステー10に設けられた支点軸11に回転可能に保持されるとともにミラー12を角度調整可能に保持するケーシングであるバイザー13とから構成され、バイザー13を、支点軸11を中心として、ドアから起立した使用位置と、ドアに沿わせた格納位置との間で回転駆動できるようになっている。この回転駆動のための電動格納機構は、図示していないが、一般に、支点軸11に回転可能かつ軸方向移動可能に装着した被駆動ギヤと、支点軸に回転を規制した状態で装着したクラッチプレートと、バイザー内に固定したモータ(図示せず)と、モータから被駆動ギヤに回転を伝達する減速ギヤ列(バイザー内に位置固定)とから構成されている。
【0003】
被駆動ギヤとクラッチプレートの合わせ面には、一方に凸部が、他方に凸部と係合する凹部が形成される。この凸部と凹部は、それぞれ、被駆動ギヤの回転方向の両端面が傾斜面として形成され、また、凸部の傾斜面と凹部の傾斜面とを支点軸11の軸方向沿いに圧接させるように、被駆動ギヤをクラッチプレート側へ向かってスプリングで付勢するようになっている。
【0004】
以上の構成において、モータを起動したとき、凸部と凹部の作用で被駆動ギヤが回転規制されるためにモータが支点軸の回りで公転し、それに伴ってバイザー13が回転する。なお、凸部と凹部の端面が傾斜面として形成されているので、バイザー13が障害物に当たった場合などには、モータの公転に伴って被駆動ギヤが回転しようとしたとき、その力が一定の大きさ以上であればスプリングの付勢力に抗して凸部と凹部の係合が外れ(クラッチが切れ)て、バイザー13が回転するようになっている。
【0005】
ところで、被駆動ギヤとしてウォームホイールを用い、減速ギヤ列の再終段にウォームを用いる場合があるが、この場合でも、バイザーを回そうとする外力が加わってウォームが支点軸の回りで公転しようとするとウォームホイールを回す方向への力が作用する。ここで、ウォームホイールの歯すじが斜めになっている関係で、バイザーを前方へ倒すときと後方へ倒すときとでクラッチを切るのに必要な力が異なることになる。このことを、図を用いて以下に説明する。
【0006】
図7はクラッチ機構の側面図、図8はクラッチプレートとウォームホイールの合わせ面の平面図、図9は図8のIX−IX線断面図である。図において、ウォームホイール(被駆動ギヤ)1にウォーム3が噛み合っており、ウォームホイール1がスプリング4によってクラッチプレート2の方へ付勢されている。また、凸部5と凹部6は、支点軸の中心から半径Rのところに90゜間隔で4か所に配置されている。以上の構成においてスプリング4の付勢力をPとすると、ウォームホイール1を図9の(I)方向へ回すために必要なトルクT1は、
T1=R・P・tan(β1+ψ)=R・P・tan(α+γ+ψ)
となる。一方、(II)方向へ回すために必要なトルクT2は、
T2=R・P・tan(β2+ψ)=R・P・tan(α−γ+ψ)
となる。ただし、αは凸部5及び凹部6の傾斜面の傾斜角度、γはウォーム3の進み角、ψは摩擦角である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来はウォーム3とウォームホイール1を減速の最終段に用いると、バイザー13を前方へ倒す場合と後方へ倒す場合で必要なトルクが異なるという問題があった。これに対して、トルクが両方向でほぼ等しくなるように両傾斜面の傾斜角度を変えることが実用新案登録第3004709号公報に記載されているが、傾斜面の傾斜角度を変えると、クラッチが切れるときのウォームホイール1の回転角度がバイザー13を倒す方向によって異なることになる。したがって、回転角度が小さい側では衝撃吸収の時間が短く、瞬間的な衝撃でもバイザー13が回避してしまうことになる。
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、バイザーを倒す力を前後両方向で実質同一にし、しかも、クラッチが切れるときの回転角度も両方向で実質的に等しくすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構は、ステーの支点軸に回転可能かつ軸方向移動可能に支持されかつ駆動源の回転力がウォームを介して伝達されるウォームホイールと、ウォームホイールに重なるように支点軸に位置固定されたクラッチプレートの合わせ面の一方に凸部が、他方に凸部と係合する凹部が形成され、凸部と凹部が、それぞれ、支点軸に対する回転方向の両端面が傾斜面として形成され、ウォームホイールをクラッチプレート側へ付勢する付勢手段により、凸部と凹部の傾斜面同士が支点軸の軸方向沿いに圧接してなる自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構であって、上述の技術的課題を解決するために、以下のように構成されたことを特徴としている。
【0010】
すなわち、凸部と凹部が、支点軸からの距離の異なる第1位置と第2位置にそれぞれ形成されるとともに、第2位置よりも支点軸に近い第1位置ではウォームホイールの歯すじの傾斜方向に傾斜した傾斜面同士が接するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が離反し、第2位置では該歯すじの傾斜方向の傾斜面同士が離反するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が接している。
【0011】
そして、ウォームホイールの回転の所要トルクをT、支点軸から第1位置までの距離をR1、第2位置までの距離をR2、各傾斜面同士の圧接力をP、各傾斜面の傾斜角度をα、ウォームの進み角をγ、摩擦角をψ、凸部と凹部の脱離の際のウォームホイールの回転の角度をθ、第1位置及び第2位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをそれぞれS1及びS2としたときに、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)と、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2の関係が満たされている。
【0012】
【作用・効果】
上記構成においては、通常はクラッチプレートとウォームホイールの凸部と凹部がかみ合っていてウォームホイールが回転しないので、駆動モータを起動すると、ウォームからウォームホイールへの動力伝達の反力でバイザーが回転する。
【0013】
一方、バイザーに大きな外力が加わり、バイザーが回転するとき、支点軸の回りでのウォームの公転により、ウォームホイールがクラッチプレートから軸方向沿いに逃げながら回転し、凸部と凹部のかみ合いが外れる。上記構成では、凸部と凹部を支点軸からの距離の小さな第1位置とその距離の大きな第2位置とにそれぞれ設け、かつ第1位置と第2位置とで互いに反対側の傾斜面が接するようにしてウォームの進み角に対する凸部と凹部の傾斜面の角度の違いを相殺しているので、バイザーを前方へ倒す場合も後方へ倒す場合もトルクは実質的に同じである。
【0014】
また、第1位置の傾斜面同士が離れるときと第2位置の傾斜面同士が離れるときのウォームホイールの回転角度θが実質的に等しくなるようにストロークS1とS2を設定しているので、前後どちらかの方向へだけ衝撃吸収の時間が短くなることはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る電動格納ドアミラーのクラッチ機構の第1の実施の形態を、図1から図4を用いて詳細に説明する。図1はウォームホイールとクラッチプレートを重ねた状態での平面図、図2(A)は図1のA−A線断面図、図2(B)は図1のB−B線断面図、図3(A)はクラッチプレートの下面の要部斜視図、図3(B)はウォームホイールの上面の要部斜視図、図4はウォームホイールとクラッチプレートの動作説明図である。
【0016】
このクラッチ機構が適用されるドアミラーは、図6を用いて説明したように、自動車のドアに固定されるステー10と、このステー10に設けられたほぼ垂直の支点軸11に回転可能に保持されたバイザー13とから構成されている。また、このドアミラーは、ステー10の支点軸11に回転可能かつ軸方向移動可能に装着されたウォームホイール1と、支点軸11に回転を禁止された状態でウォームホイール1に重ねて位置固定されたクラッチプレート2と、ウォームホイール1に噛み合う位置でバイザー側に支持されたウォーム3と、バイザー側の部材に支持されかつ駆動モータの回転力をウォーム3に伝達する駆動機構(図示せず)とを備えている。
【0017】
次に、クラッチ機構について説明する。図示するように、ウォームホイール1に凸部5が、クラッチプレート2に凸部5と係合する凹部6が形成されている。凸部5は、5aと5bで示すように、支点軸11の中心から小さい距離(半径)R1の第1位置と、大きい距離R2の第2位置に形成されている。なお、図では凸部5と凹部6を1カ所のみに示しているが、図8に示した従来例と同様、それぞれ、90゜間隔で4カ所に形成されている。ただし、凸部5と凹部6は、4ケ所に限らず、360゜を整数等分した間隔(バランス上、2ケ所以上)に設ければよい。
【0018】
第1位置の凸部5aと第2位置の凸部5bはわずかに左右にずれた位置に形成され、それぞれ、回転方向の両端面がウォームホイール1とクラッチプレート2の合わせ面に対して同じ角度αで逆方向に傾斜した傾斜面として形成されている。また、凹部6は、両方の凸部5a,5bが入るものとして形成され、第1位置の凸部5aと図の左側の傾斜面で接し、第2位置の凸部5bと右側の傾斜面で接するようになっている。なお、両凸部5a,5bと凹部6との接触関係をウォームホイール1の歯すじの傾斜に対する関係で説明すると、回転中心に近い第1位置の凸部5aと凹部6は、ウォームホイール1の側面から見て、その歯すじの傾斜方向に傾斜した傾斜面同士が接するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が分離し、回転中心に遠い第2位置の凸部5bと凹部6は、この歯すじ方向の傾斜面同士が離反するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が接している。
【0019】
また、支点軸11の中心から各凸部5a,5bまでの距離R1,R2は、ウォームホイール1の回転に必要なトルクをT、スプリング4によるウォームホイール1とクラッチプレート2の圧接付勢力をP、傾斜面の傾斜角度をα、ウォームの進み角をγ、摩擦角をψとしたときに、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)
の関係を満たすように定められている。
【0020】
さらに、クラッチが切れる時(凸部5と凹部6の脱離時)のウォームホイール1の回転の角度をθ(不図示)とすると、第1位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをS1、第2位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをS2としたときに、ストロークS1とS2は、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2
の関係を満たすように定められている。
【0021】
上記構成においては、通常はクラッチプレート2とウォームホイール1の凸部5a,5bと凹部6がかみ合っていてウォームホイール1が回転しないので、駆動モータを起動すると、ウォーム3からウォームホイール1への動力伝達の反力でバイザー13が回転する。一方、バイザー13に大きな外力が加わってバイザー13が回転するときは、支点軸11の回りでのウォーム3の位置変化によりウォームホイール1がクラッチプレートから軸方向沿いに離れながら回転し、凸部5a,5bと凹部6のかみ合いが外れる。上記構成では、凸部5a,5bと凹部6を回転中心からの距離の小さな第1位置とその距離の大きな第2位置とで係合するように設けて、ウォーム3の進み角に対する傾斜面の角度の違いをその距離の違いで相殺し、さらに、第1位置と第2位置とで凸部5a,5bと凹部6が互いに反対側の傾斜面で接するようにしているので、バイザー13を前方へ倒す場合も後方へ倒す場合もトルクは実質的に同じである。
【0022】
また、第1位置の傾斜面同士が離れるときと第2位置の傾斜面同士が離れるときのウォームホイール1の回転角度θが実質的に等しくなるようにストロークS1とS2を設定しているので、バイザー13を前後どちらかの方向へ倒すときだけ衝撃吸収の時間が短くなることはない。
【0023】
次に、図5に示した第2の実施の形態について説明する。この例では、凸部5を第1位置から第2位置まで同一の径線上に連続したものとして形成し、凹部6a,6bを第1位置と第2位置とで左右にずれたものとして形成している点を除き、第1の実施の形態と同様に構成されている。したがって、R1とR2についても、上述と同様に、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)の関係を満たすように設定されている。また、S1とS2についても、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2の関係を満たすように定められている。このため、クラッチを切る際にクラッチプレート2に対してウォームホイール1を回転させるのに要するトルクと回転角度は、上述した第1の実施の形態と同様、回転方向に拘わらず同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動格納ドアミラーのクラッチ機構の第1の実施の形態を示す平面図である。
【図2】(A)図は図1のA−A線断面図、(B)図は図1のB−B線断面図である。
【図3】(A)図はクラッチプレートの下面の要部斜視図、(B)図はウォームホイールの上面の要部斜視図である。
【図4】ウォームホイールとクラッチプレートの動作説明図である。
【図5】第2の実施の形態を示す要部斜視図である。
【図6】一般的なドアミラーの正面図である。
【図7】従来のクラッチ機構の側面図である。
【図8】クラッチプレートとウォームホイールの合わせ面の平面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【符号の説明】
1 ウォームホイール
2 クラッチプレート
3 ウォーム
4 スプリング
5,5a,5b 凸部
6,6a,6b 凹部
10 ステー
11 支点軸
12 ミラー
13 バイザー
Claims (1)
- ステー(10)の支点軸(11)に回転可能かつ軸方向移動可能に支持されかつ駆動源の回転力がウォーム(3)を介して伝達されるウォームホイール(1)と、該ウォームホイール(1)に重ねた位置で該支点軸(11)に位置固定されたクラッチプレート(2)の合わせ面の一方に凸部(5)が、他方に該凸部(5)と係合する凹部(6)が形成され、該凸部(5)と凹部(6)は、それぞれ、支点軸(11)に対する回転方向の両端面が傾斜面として形成され、該ウォームホイール(1)をクラッチプレート(2)側へ付勢する付勢手段(4)により、該凸部(5)と凹部(6)の傾斜面同士が支点軸(11)の軸方向沿いに圧接してなる自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構において、
上記凸部(5)と凹部(6)は、上記支点軸(11)からの距離の異なる第1位置と第2位置にそれぞれ形成されるとともに、第2位置よりも該支点軸(11)に近い第1位置ではウォームホイール(1)の歯すじの傾斜方向に傾斜した傾斜面同士が接するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が離反し、第2位置では該歯すじの傾斜方向の傾斜面同士が離反するとともに逆方向に傾斜した傾斜面同士が接し、
上記ウォームホイール(1)の回転の所要トルクをT、上記支点軸(11)から第1位置までの距離をR1、第2位置までの距離をR2、上記各傾斜面同士の圧接力をP、該各傾斜面の傾斜角度をα、ウォーム(3)の進み角をγ、摩擦角をψ、上記凸部(5)と凹部(6)の脱離の際のウォームホイール(1)の回転の角度をθ、第1位置及び第2位置で接触している傾斜面同士が離れるまでのストロークをそれぞれS1及びS2としたときに、
T≒R1・P・tan(α+γ+ψ)≒R2・P・tan(α−γ+ψ)と、
sinθ≒S1/R1≒S2/R2
が満たされたことを特徴とする自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構。
Priority Applications (1)
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JP23667195A JP3574701B2 (ja) | 1995-09-14 | 1995-09-14 | 自動車用電動格納ドアミラーのクラッチ機構 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH0976820A JPH0976820A (ja) | 1997-03-25 |
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Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP3574701B2 (ja) |
-
1995
- 1995-09-14 JP JP23667195A patent/JP3574701B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0976820A (ja) | 1997-03-25 |
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