JP3574234B2 - ロータ製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機に用いられるロータの製造方法に関し、特に、製造が容易な、スキュー角を有するロータの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機のトルク特性を円滑にするために、ロータに組み込まれるラミネーションにスキューを形成することがある。従来、このスキューの形成は、次のようにして行っていた。
【0003】
すなわち、打ち抜いたラミネーションの一枚一枚を、所定スキュー角に配列させるよう形成した型内に、必要枚数積層してサブアッシーとしてのラミネーションパックを形成した後、加締めや溶接等により、所定スキュー角に積層したラミネーションパックを固定するとともに、ロータシャフトを圧入等により嵌合するために内径を仕上げる。次に、ロータシャフトを嵌合して、または嵌合と溶接とにより所定スキュー角のロータを形成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記製造方法では、わざわざ所定スキュー角に形成された型がラミネーションパックの数だけ必要となる。また、内径の仕上げやラミネーションパックとロータシャフトとの嵌合が必要となる。
【0005】
特に、パワーステアリング装置に用いられるような、ラックバーの周囲に配置される電動機は、径が大きくできない分、長くならざるを得ず、そのために通常の2,3倍の長さのロータを必要とする。このようなロータを従来のようにして製造することは、ラミネーションパックを精度良く維持する長くて強固な型の必要性、内径の仕上げの困難性、ロータシャフトとの嵌合の困難性が増加して、歩留まりや製造コストを悪化させていた。更に圧入のような嵌合が困難な場合には、焼き嵌め、冷し嵌めをする場合も有り、更に製造コストが悪化した
本発明は、通常の電動機においても、更にロータが長い電動機においても、製造が容易な、スキュー角を有するロータの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
請求項1記載の発明は、
ロータシャフトの外周面にスキュー角となる角度の螺旋溝または螺旋突条を形成し、
複数の各ラミネーションの内径を、前記螺旋溝または前記螺旋突条に沿って相対的に回転させつつ嵌合した後、ロータシャフトと少なくとも両端のラミネーションとを固定処理するロータ製造方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、
前記ラミネーションの内径の内縁部分に、突起または切欠を形成してからロータシャフトに嵌合することを特徴とする請求項1記載のロータ製造方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、
ロータシャフトの外周面に、スキュー角となる角度の螺旋直線面または前記ロータシャフトの外周面の曲率半径よりも大きい螺旋円弧面を形成し、
ラミネーションの内径の内縁部分に、前記螺旋直線面に対応した位置に直線部、または前記螺旋円弧面に対応した位置に前記内径より曲率半径の大きい円弧部を形成する。
【0009】
そして、複数の各ラミネーションを、ロータシャフトの前記螺旋直線面または前記螺旋円弧面に、ラミネーションの内径の前記直線部または前記円弧部の位置を合わせた状態で前記螺旋直線面または前記螺旋円弧面に沿って相対的に回転させつつ嵌合した後、ロータシャフトと少なくとも両端のラミネーションとを固定処理するロータ製造方法である。
【0010】
ここで、請求項1のロータ製造方法では、そのロータシャフトは、スキュー角となる角度の螺旋溝または螺旋突条を外周面に有し、そのラミネーションは、複数がこのロータシャフトにラミネーションの内径部分にて前記スキュー角にて嵌合される。このラミネーションには、その内径の内縁部分に、突起または切欠が形成されていても良い。
【0011】
そして、ロータシャフトに、各ラミネーションを、ロータシャフトの螺旋溝または螺旋突条に沿って相対的に回転させつつ嵌合した後、ロータシャフトと少なくとも両端のラミネーションとを固定処理する。
【0012】
ロータシャフトには、その外周面に、スキュー角となる角度の螺旋溝または螺旋突条が存在しているため、ラミネーションを嵌合した場合に、ラミネーションの内径の内縁部がロータシャフトの螺旋溝に食い込んだり、あるいは螺旋突条が内縁部に食い込む。あるいはラミネーションの内径の内縁部とロータシャフトの螺旋突条(螺旋溝)とが相互に噛み合う。しかも、ラミネーションは、螺旋溝または螺旋突条に沿って相対的に回転させつつ嵌合されているので、食い込みあるいは噛み合い状態を維持した状態で、全てのラミネーションが嵌合される。したがって、嵌合時にスキュー角が精密に形成されてロータシャフトと一体化する。この後、少なくともロータシャフトと両端のラミネーションとを固定処理、例えば、溶接、加締、ロウ付け、スナップリング、ベベルスナップリング等により、固定すれば、ロータシャフトとラミネーションとの組み立てが完成する。尚、ラミネーションの嵌合は1枚ずつでも良く、2枚以上を組み合せて、その2枚以上を同時に嵌合しても良い。
【0013】
尚、ラミネーションは、螺旋溝または螺旋突条に沿って相対的に回転させられれば良いので、ラミネーションを回転させても、ロータシャフトを回転させても、あるいはラミネーションとロータシャフトとの両者を回転させても良い。また、ラミネーションを回転自在に支持した状態でロータシャフトに嵌合すれば、ラミネーションがロータシャフトに嵌合された後は、螺旋溝または螺旋突条にガイドされることにより、自然にラミネーションが回転するので、嵌合時にラミネーションを強制的に回転させる必要はない。
【0014】
このように、ラミネーションを直接、ロータシャフトに嵌合するのみで、所定スキュー角にラミネーションを配列したロータが完成する。従来は、一旦、ラミネーションのみを、所定スキュー角に形成された型に入れて、ラミネーションパックをサブアッシーとして形成し、ラミネーション同士の接合とその内径の仕上げの後、大出力の圧入機にてラミネーションパックとロータシャフトとの嵌合を行う必要が有ったが、本発明のロータではラミネーションパックを中間に形成する必要が無く、小出力の圧入機にて、極めて容易に製造できる。特に、パワーステアリング装置に用いられる電動機のごとく、ラックバーの周囲に配置される通常の2,3倍の長さのロータにおいては、特にその製造容易化に大きな効果をもたらすものである。
【0015】
尚、嵌合としては、圧入や、すきまばめ等の嵌め込み方法が含まれる。
また、ロータシャフトの外周面が、螺旋溝または螺旋突条の代りに、スキュー角となる角度の螺旋直線面または前記ロータシャフトの外周面の曲率半径よりも大きい螺旋円弧面を形成し、ラミネーションの内径の内縁部分に、前記螺旋直線面に対応した位置に直線部、または前記螺旋円弧面に対応した位置に前記内径より曲率半径の大きい円弧部が形成されているロータであっても良い。
【0016】
ここで、螺旋直線面とは、ロータシャフトの軸に直角に切断した場合に、ロータシャフトの周囲に直線状の縁となって現れる面が、ロータシャフトの軸回りにスキュー角となる角度の螺旋状に外周面に形成された面を意味する。またロータシャフトの外周面の曲率半径よりも大きい螺旋円弧面とは、ロータシャフトの軸に直角に切断した場合に、ロータシャフトの周囲にその位置での曲率半径よりも大きい円弧状に現れる面が、ロータシャフトの軸回りにスキュー角となる角度の螺旋状に外周面に形成された面を意味する。
【0017】
この場合の製造方法は、次のようになされる。
すなわち、ロータシャフトに、各ラミネーションを、ロータシャフトの螺旋直線面または螺旋円弧面に、ラミネーションの内径の直線部または円弧部の位置を合わせた状態でロータシャフトの螺旋直線面または螺旋円弧面に沿って相対的に回転させつつ嵌合した後、ロータシャフトと少なくとも両端のラミネーションとを固定処理する。
【0018】
このことにより、前述したロータシャフトの螺旋溝または螺旋突条にてラミネーションが固定されている場合と同様な効果を生じる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、本発明の実施の形態の一例を示すロータ2である。ロータ2はロータシャフト4と複数のラミネーション6とから構成されている。
ロータシャフト4は、図1(b)に示すごとく、内部に円柱形の中空部8を有する円筒形に形成され、中央に大径部10、両端に小径部12,14が形成されている。大径部10の表面には、図2の拡大右側面図に示すごとく、断面が略長方形の多数の螺旋溝16が形成されている。この螺旋溝16の角度は、形成されるロータ2のスキュー角となる角度である。
【0020】
ロータ2の製造は、このロータシャフト4に対して、ラミネーション6を圧入することによりなされる。まず、ラミネーション6用の帯状金属板から打ち抜き装置にて、図3に示す形状にラミネーション6を打ち抜く。
ラミネーション6は、その中心に内径18を有し周縁には6つのコアティース20とその間の6つのスロット22を有する円環状をなしている。このラミネーション6を、図4に示すごとく、1枚ずつ、ラミネーション6の内径18にロータシャフト4の大径部10を圧入する。このとき、コアティース20およびスロット22が所定スキュー角に配列されるようにラミネーション6を大径部10の螺旋溝16に沿って相対的に回転させつつ圧入する。このために、圧入機自体がラミネーション6およびロータシャフト4の一方または両方を圧入速度と回転速度とをスキュー角に適合させて圧入しても良いが、ラミネーション6がロータシャフト4の大径部10に圧入されると、図5に示すごとく、ラミネーション6の内縁部24がロータシャフト4の螺旋溝16内に食い込み(あるいは噛み合い)、この状態で螺旋溝16がガイドとなるので、圧入機がラミネーション6を回転自在に支持して圧入するようにすれば、特に圧入機がわざわざラミネーション6を螺旋溝16に沿って回転させなくても、矢印Bで示すごとく、自然にラミネーション6は螺旋溝16に沿って回転し、所定スキュー角で積層する。
【0021】
こうして必要枚数のラミネーション6を積層した後、少なくとも両端のラミネーション6をロータシャフト4の大径部10に固定すれば、ロータ2が完成する。
この固定処理は図6の概略図の(a)に示すごとくスポット的に溶接やロウ付けによりラミネーション6と大径部10との間に溶着部30を形成して固定する方法、(b)に示すごとく大径部10を部分的に加締めて加締部32を形成してラミネーション6を固定する方法、(c)に示すごとく大径部10の全周を加締めて加締部34を形成してラミネーション6を固定する方法、(d)に示すごとく大径部10に設けた全周にわたる溝にスナップリング36を嵌めることによりラミネーション6を固定する方法、(e)に断面を示すベベルスナップリング38を(d)と同様な大径部10に設けた全周にわたる溝40に嵌めることによりラミネーション6を固定する方法等が挙げられる。尚、更に溶接やロウ付けなどにより、ラミネーション6同士を接合しても良い。
【0022】
本ロータ2は、前述したごとく、ラミネーション6を直接、ロータシャフト4に圧入するのみで、所定スキュー角にラミネーション6を配列したロータ2が完成する。従来は、一旦、ラミネーション6のみを、所定スキュー角に形成された型に入れて、ラミネーションパックをサブアッシーとして形成し、ラミネーション6同士の接合とその内径の仕上げの後、大出力の圧入機にてラミネーションパックとロータシャフト4との圧入を行う必要が有ったが、本ロータ2ではその必要が無くなり、小出力の圧入機にて、極めて容易に製造できる。特に、パワーステアリング装置に用いられる電動機のごとく、ラックバーの周囲に配置される通常の2,3倍の長さのロータにおいても極めて容易に製造でき、特に大きな効果をもたらすものである。
【0023】
本形態例では、ロータシャフト4の大径部10の表面に、断面略長方形の螺旋溝16を設けた。この螺旋溝16は、螺旋溝16の間に該当する部分を螺旋突条として形成しても同様な形状を構成することができる。この他、図7に示すごとくの螺旋溝または螺旋突条であっても良い。図7には角度により異なる例を端面で示している。
【0024】
すなわち、図7(a)は螺旋突条17aおよび螺旋溝16aの断面が略サイン曲線状となるもの、図7(b)は螺旋突条17bおよび螺旋溝16bの断面が略台形となるもの、図7(c)は螺旋溝16cの断面が逆三角形となるもの、図7(d)は断面が略長方形であるが螺旋突条17dより螺旋溝16dの幅の狭いもの、図7(e)は螺旋溝16eの断面が半円形であるもの、図7(f)は螺旋突条17fおよび螺旋溝16fがセレーション状に細かいもの、図7(g)は断面が略長方形であるが螺旋突条17gより螺旋溝16gの幅の広いもの、図7(h)は大径部10の外周面が、螺旋溝または螺旋突条の代りに、スキュー角となる角度の螺旋直線面50を形成しているものを示している。尚、図7(h)の場合は、螺旋直線面50が、破線で示す通常の円形の外周面52よりも凹んでいることにより、螺旋溝と同じ働きをする。
【0025】
また、ラミネーション6においても、図8,図9に示すごとく、内縁部24に、大径部10の螺旋突条17,17a〜17gあるいは螺旋溝16,16a〜16gに対応された形状の突起、切欠、直線部または円弧部を形成しても良い。図8,図9には角度により異なる例を示している。
【0026】
すなわち、図8(a)は突起54aおよび切欠56aが略台形となるもの、図8(b)は突起54bおよび切欠56bが略長方形となるもの、図8(c)は突起54cが半円形となるもの、図8(d)は突起54dおよび切欠56dがセレーション状となるもの、図8(e)は突起54eと切欠56eとが略長方形であるが突起54eより切欠56eの幅が広いもの、図8(f)は突起54fおよび切欠56fがスプライン状に形成されているもの、図9(g)は突起54gが三角形に形成されているもの、図9(h)は破線の領域に直線部58hが設けられているもの、図9(i)はすべて直線部58iとされているもの、図9(j)は破線の領域に内径18より曲率半径の大きい円弧部60jが設けられているもの、図9(k)は破線の領域に内径18とは逆の曲率半径の円弧状の突起54kが設けられているものを示している。この他、図示しないが、突起および切欠がサイン曲線状に形成されているものが挙げられる。
【0027】
これら図8,図9に示したラミネーション6は、その内縁部24の形状と対応する図7に示したロータシャフト4の大径部10の螺旋溝16,16a〜16gまたは螺旋突条17,17a〜17gと組み合せて用いることが好ましい。このようにすれば、螺旋溝16,16a〜16gまたは螺旋突条17,17a〜17gによるガイド効果を一層確実なものとして、より精密なスキュー角を実現できる。
【0028】
尚、ラミネーション6については、前述した形態例にて示したごとく、その内縁部24に図8,図9に示したような突起54a〜54kまたは切欠56a〜56fが形成されていない図3に示したようなラミネーション6であっても良い。
[その他]
前記形態例では、ラミネーション6は1枚ずつ、ロータシャフト4に圧入したが、2枚ずつでも良く、それ以上でも、圧入機が大型化しない範囲で、複数枚組み合せて圧入すれば良く、製造設備の大型化を招くことなく、より効率的にロータ2の製造が可能となる。
【0029】
また、圧入以外の嵌合方法として、すきまばめ等を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロータおよびロータシャフトの説明図であり、(a)はロータの正面図、(b)はロータシャフトの正面図である。
【図2】ロータシャフトの拡大右側面図である。
【図3】ラミネーションの正面図である。
【図4】ロータシャフトへのラミネーションの圧入説明図である。
【図5】ロータシャフトへのラミネーションの圧入状態説明図である。
【図6】ロータシャフトとラミネーションとの固定方法を示す概略説明図である。
【図7】ロータシャフトの他の螺旋溝、他の螺旋突条または螺旋直線面の例を示す説明図である。
【図8】ラミネーションの内径の突起または切欠の例を示す説明図である。
【図9】ラミネーションの内径の突起、直線部または円弧部の例を示す説明図である。
【符号の説明】
2…ロータ 4…ロータシャフト 6…ラミネーション
8…中空部 10…大径部 12,14…小径部
16,16a〜16g…螺旋溝 17,17a〜17g…螺旋突条
18…内径 20…コアティース 22…スロット
24…内縁部 30…溶着部 32,34…加締部
36…スナップリング 38…ベベルスナップリング 40…溝
50…螺旋直線面 52…外周面 54a〜54k…突起
56a〜56f…切欠 58h,58i…直線部 60j…円弧部
Claims (3)
- ロータシャフトの外周面にスキュー角となる角度の螺旋溝または螺旋突条を形成し、
複数の各ラミネーションの内径を、前記螺旋溝または前記螺旋突条に沿って相対的に回転させつつ嵌合した後、ロータシャフトと少なくとも両端のラミネーションとを固定処理するロータ製造方法。 - 前記ラミネーションの内径の内縁部分に、突起または切欠を形成してからロータシャフトに嵌合することを特徴とする請求項1記載のロータ製造方法。
- ロータシャフトの外周面に、スキュー角となる角度の螺旋直線面または前記ロータシャフトの外周面の曲率半径よりも大きい螺旋円弧面を形成し、
ラミネーションの内径の内縁部分に、前記螺旋直線面に対応した位置に直線部、または前記螺旋円弧面に対応した位置に前記内径より曲率半径の大きい円弧部を形成し、
複数の各ラミネーションを、ロータシャフトの前記螺旋直線面または前記螺旋円弧面に、ラミネーションの内径の前記直線部または前記円弧部の位置を合わせた状態で前記螺旋直線面または前記螺旋円弧面に沿って相対的に回転させつつ嵌合した後、ロータシャフトと少なくとも両端のラミネーションとを固定処理するロータ製造方法。
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