JP3573479B2 - 走査型プローブ顕微鏡およびそれを用いる測定方法 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡およびそれを用いる測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、試料の表面情報を測定する走査型プローブ顕微鏡およびそれを用いる測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、IBM社が特開昭63−309802号公報において提案した原子間力顕微鏡の測定方法について説明する。
尖った自由端部を有する片持ちばりを、自由端部の原子と試料表面の原子との間に原子間力が作用可能な距離に接近させた状態で走査する。このとき、原子間力によって生じた片持ちばりの振動数が、片持ちばりの固有振動数に対してどの程度シフトしているのかを検出する。そして、検出された振動数のシフト量を片持ちばりの自由端部と試料表面との間の距離情報として取り込むことによって、試料の表面情報が測定される。
【0003】
片持ちばりの固有振動数に対するシフト量を検出する方法としては、例えば、固有振動数近傍の周波数で片持ちばりを振動させ、そのときの片持ちばりの自由端部の振幅変化を検出する方法が知られている。
【0004】
図7には、ACモード(ノンコンタクトモード)の走査型プローブ顕微鏡(以下、従来例と称する)の構成が示されている。
即ち、マイコン2によって制御された変調信号発生部4から出力された正弦波信号(変調信号)S3に基づいて、加振圧電体10は、カンチレバー11を振動させる。このとき生ずるカンチレバー11の変位は、探針変位検出部9によって検出され、変位信号S1として振幅検出部8に出力される。振幅検出部8は、変位信号S1のうち、上記正弦波信号S3と同一周波数成分を有する信号の振幅を振幅信号S2として出力する。この振幅信号S2は、A/D変換部3によってデジタル変換された後、マイコン2に入力される。マイコン2は、入力したデータに基づいて、X制御部6及びY制御部7を介してXYZ駆動圧電体12を2次元走査させて、試料13の表面情報を測定する。この2次元走査中、カンチレバー11の変位情報は、上記の手順で順次マイコン2を介してホストコンピュータ1に転送され、試料13の表面情報として画像化される。
【0005】
なお、試料13の表面情報の測定方法としては、コンスタント力勾配測定法とコンスタントハイト測定法が知られている。
コンスタント力勾配測定法において、マイコン2は、A/D変換部3を介して出力されるデータに基づいて、振幅信号S2が一定値に保持されるようにZ制御部5を制御して、XYZ駆動圧電体12をZ方向(即ち、カンチレバー11に接近する方向)に伸縮させる。この場合、マイコン2には、Z制御部5を制御する際のZ制御データが測定データとして取り込まれる。
【0006】
一方、コンスタントハイト測定法において、マイコン2は、一定の周波数で振動しているカンチレバー11の振動中心と試料13表面との間の距離を固定した状態でXY走査させる。この場合、マイコン2には、振幅検出部8からA/D変換部3を介して出力された振幅信号S2が測定データとして取り込まれる。
【0007】
図8には、振幅検出部8の回路構成が示されている。
即ち、バンドパスフィルタ14は、探針変位検出部9から出力された変位信号S1から正弦波信号S3と同一周波数成分を有するバンドパス信号S8(図9 (a)参照)を検出する。バンドパスフィルタ14から出力されたバンドパス信号S8は、絶対値回路15によって絶対値信号S9(図9(b)参照)に変換される。そして、正弦波信号Sに比べてカットオフ周波数が2桁以上低く設定されたローパスフィルタ16によって、絶対値信号S9に対する実効値が検出され、その実効値信号が振動の振幅信号S2(図9(c)参照)として出力される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例に適用された振幅検出部8において、ローパスフィルタ16は、正弦波信号Sに比べてカットオフ周波数が2桁以上低く設定されているため、振幅信号(実効値信号)S2の周波数応答が遅延してしまうという問題がある。即ち、カンチレバー11の走査速度を上げると、2次元走査時間内に現れる低い周波数特性が、時間軸方向に詰まった状態で、あたかも高周波成分の如く現れるため、ローパスフィルタ16は、この周波数成分をカットしてしまう。この結果、試料13(図7参照)の微細な表面情報を高精度に測定することができなくなってしまうという問題がある。
【0009】
従って、試料13表面の微細な力の変化を検出するためには、XYZ駆動圧電体12(図7参照)の2次元走査速度を2桁以上遅くしなければならない。本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、走査速度を上げた場合でも、試料の微細な表面情報を高精度に測定することができる走査型プローブ顕微鏡および測定方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバーと、カンチレバーを振動させる振動体と、カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査手段と、カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、変位検出手段から出力される変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出手段と、振幅検出手段から出力される振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする。
また、本発明の別の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバーと、カンチレバーを振動させる振動体と、カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査手段と、カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、変位検出手段から出力される変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出手段と、振幅検出手段から出力される振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする。
また、本発明の別の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバーと、カンチレバーを振動させる振動体と、カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査手段と、カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、変位検出手段から出力される変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号を出力する振幅検出手段と、振幅検出手段から出力される上端側ピーク値の信号と下端側ピーク値の信号を別々にA/D変換し、A/D変換された上端側ピーク値の信号と下端側ピーク値の信号を演算処理して、上端側ピーク値と下端側ピーク値の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する処理手段と、処理手段から出力される振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする。
さらに、本発明の走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法は、カンチレバーを振動させる振動工程と、カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査工程と、カンチレバーの振動変位を検出する変位検出工程と、変位検出工程で得られた変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出工程と、振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御工程とを有していることを特徴とする。
また、本発明の走査型プローブ顕微鏡を用いた別の測定方法は、カンチレバーを振動させる振動工程と、カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査工程と、カンチレバーの振動変位を検出する変位検出工程と、変位検出工程で得られた変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出工程と、振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御工程とを有していることを特徴とする。
【0011】
【作用】
本発明においては、カンチレバーを振動させながら試料に対して相対的に走査させ、走査中に生じるカンチレバーの振動変位を検出し、その変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力するとともに、その振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する。
本発明においては、または、カンチレバーを振動させながら試料に対して相対的に走査させ、走査中に生じるカンチレバーの振動変位を検出し、その変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力するとともに、その振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する。
本発明においては、または、カンチレバーを振動させながら試料に対して相対的に走査させ、走査中に生じるカンチレバーの振動変位を検出し、その変位検出手段から出力される変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号を出力し、上端側ピーク値の信号と下端側ピーク値の信号を別々にA/D変換し、A/D変換された上端側ピーク値の信号と下端側ピーク値の信号を演算処理して、上端側ピーク値と下端側ピーク値の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力するとともに、その振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の第1の実施例に係る走査型プローブ顕微鏡について、図1ないし図3を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例の走査型プローブ顕微鏡は、振幅検出部30の改良に係り、他の構成は上記従来例(図7参照)と同一であるため、同一符号を付してその説明を省略する。
【0013】
図2及び図3に示すように、本実施例に適用された振幅検出部30は、バンドパスフィルタ14と、このバンドパスフィルタ14から出力されたバンドパス信号S8の各周波数毎(又は、必要なタイミングに応じた瞬間の各周波数毎)のピーク値をホールドするピークホールド回路31と、このピークホールド回路31を駆動制御することによって、バンドパス信号S8の各周波数毎のピーク値をホールドするタイミング及びピーク値をホールドした信号を振動振幅(振幅信号S2)として出力するタイミングを制御するタイミング制御回路32とを備えている。
【0014】
バンドパスフィルタ14は、探針変位検出部9(図1参照)から出力された変位信号S1から正弦波信号S3と同一周波数成分を有するバンドパス信号S8を検出して出力する。
【0015】
バンドパスフィルタ14から出力されたバンドパス信号S8は、ピークホールド回路31及びタイミング制御回路32に夫々入力される。
タイミング制御回路32に入力されたバンドパス信号S8は、まず、コンパレータ23によって、例えばGNDレベルと比較され、GNDレベルよりも高い周波数成分はH(ハイ)、低い周波数成分はL(ロー)に変換されたデジタル信号として出力される。このとき出力されたデジタル信号がサンプルホールド制御信号S10である。
【0016】
コンパレータ23から出力されたサンプルホールド制御信号S10は、ワンショットマルチバイブレータ24及び後述するピークホールド回路31に夫々入力される。
【0017】
ワンショットマルチバイブレータ24は、サンプルホールド制御信号S10の立ち上がりを利用して、Hレベル幅が時間t3としたパルス信号を出力する。このHレベル幅(時間t3)は、バンドパス信号S8の1/4周期以内で且つバンドパス信号S8の各周波数成分のピーク値に至る前にHからLに切り換わっていることが条件となる。
【0018】
ワンショットマルチバイブレータ24から出力されたパルス信号は、次に、ディレイIC25によって、時間t2だけ遅延される。即ち、パルス信号は、後述するピークホールド回路31によってピーク値をホールドする際に要する時間以上遅延されることになる。この結果、信号ホールドに対する精度的な安全性が確保されることになる。
【0019】
このディレイIC25から出力された信号は、リセット信号S11であり、アナログスイッチ20は、このリセット信号S11によってON/OFF制御される。即ち、リセット信号S11がHレベルの間(即ち、時間t3)、アナログスイッチ20はON状態となり、Lレベルの間(即ち、時間(t1−t3))、OFF状態となる。
【0020】
ここで、アナログスイッチ20がOFF状態の間(即ち、時間(t1−t3)の間)、バンドパスフィルタ14からピークホールド回路31に入力されたバンドパス信号S8は、まず、ダイオード17、コンデンサ18及びバッファアンプ21によって、そのピーク値がホールドされる。
【0021】
一方、アナログスイッチ20がON状態の間(即ち、時間t3の間)、コンデンサ18に蓄えられた電荷は、アナログスイッチ20から抵抗19を介して放電(ピーク値のリセット)される。
【0022】
このとき、バッファアンプ21から出力される信号は、ピーク値がホールドされた信号即ちピークホールド信号S12であり、このピークホールド信号S12は、アナログスイッチ20がON状態となるt2時間前のサンプルホールド制御信号S10の立ち上がりのタイミングに同期して、サンプルホールドアンプ22にホールドされる。
【0023】
サンプルホールドアンプ22は、コンパレータ23から出力されるサンプルホールド制御信号S10が、Hレベルの間ホールド状態、Lレベルの間サンプル状態となる。
【0024】
このとき、サンプルホールドアンプ22は、バンドパス信号S8の各周期t1毎にバンドパス信号S8の振幅値を更新して出力する。このときサンプルホールドアンプ22から出力された信号S2が、バンドパス信号S8の周期t1遅れの振幅信号S2となる。
【0025】
サンプルホールドアンプ22から出力された振幅信号S2は、A/D変換部3(図1参照)によってデジタル変換された後、マイコン2(図1参照)に振幅値データとして取り込まれ、ホストコンピュータ1(図1参照)によって画像化される。
【0026】
このように本実施例によれば、ピークホールド回路31は、タイミング制御回路32から出力されるバンドパス信号S8に対応したリセット信号S11によって、ピーク値のホールドとリセットが制御されているため、走査速度を上げた場合でも、試料の微細な表面情報を高精度に測定することができる走査型プローブ顕微鏡を提供することが可能となる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施例の構成に限定されることはなく、以下のように構成することも可能である。
即ち、上記振幅検出部30(図1及び図2参照)では、バンドパス信号S8の上端ピーク値をホールドしたが、更に、ダイオード17を逆向きに配置した下端ピーク値をホールドする回路と、上端ピーク信号と下端ピーク信号を差動増幅する差動増幅回路とを付加して、この差動増幅回路によって差動増幅した信号を振幅信号S2として用いることも可能である。そして、上記実施例と同様に、かかる振幅信号S2をA/D変換し、振幅値データとしてマイコン2に取り込んで画像化する。
【0028】
このような構成によれば、検出する振幅領域が大きくなるため、検出感度即ち分解能を向上させることが可能となる。なお、他の効果は、上記実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0029】
なお、本変形例において、上端ピーク信号と下端ピーク信号を差動増幅回路によって差動増幅した振幅信号S2として取り込む代わりに、上端ピーク信号と下端ピーク信号を別々にA/D変換し、マイコン2内部又はホストコンピュータ1内部において演算処理を施して差動増幅データを得ることも可能である。
【0030】
本発明の第2の実施例に係る走査型プローブ顕微鏡について、図4ないし図6を参照して説明する。
図4に示すように、本実施例の走査型プローブ顕微鏡は、振幅検出部40の改良に係り、他の構成は上記従来例(図7参照)と同一であるため、同一符号を付してその説明を省略する。
【0031】
図5及び図6に示すように、本実施例に適用された振幅検出部40は、バンドパスフィルタ14と、このバンドパスフィルタ14から出力されたバンドパス信号S8の各周波数毎(又は、必要なタイミングに応じた瞬間の各周波数毎)のピーク値をホールドするピークホールド回路41とを備えている。
【0032】
また、本実施例において、アナログスイッチ20は、マイコン2(図4参照)から出力されるリセット信号S7によってON/OFF制御される。
ここで、リセット信号S7がLレベル即ちアナログスイッチ20がOFF状態の間、バンドパスフィルタ14からピークホールド回路41に入力されたバンドパス信号S8は、まず、ダイオード17、コンデンサ18及びバッファアンプ21によって、そのピーク値がホールドされる。
【0033】
一方、リセット信号S7がHレベル即ちアナログスイッチ20がON状態の間、コンデンサ18に蓄えられた電荷は、アナログスイッチ20から抵抗19を介して放電(ピーク値のリセット)される。
【0034】
このとき、バッファアンプ21から出力される信号は、ピーク値がホールドされたピークホールド信号であり、本実施例では、このピークホールド信号を上記振幅信号S2として利用している。
【0035】
バッファアンプ21から出力された振幅信号S2は、次に、A/D変換部3 (図4参照)によってデジタル変換されることになるが、このA/D変換部3は、マイコン2(図4参照)から出力されるA/D変換信号S14(図6参照)に基づいて駆動制御されている。
【0036】
このA/D変換信号S14は、マイコン2から一定のタイミング、即ち、試料13(図4参照)上の測定点間の走査時間に対応したタイミング(全走査時間を測定点の個数で割り算して得られる時間に対応したタイミング)で出力されている。
【0037】
そして、上記リセット信号S7のHレベル成分は、A/D変換信号S14の出力タイミングに対して時間t4だけ前に、マイコン2から出力される。換言すれば、アナログスイッチ20がOFF(リセット)状態となってからウェイト時間t4経過した後、マイコン2がA/D変換信号S14を出力することになる。このとき、ウェイト時間t4とバンドパス信号S8の周期t1との間の関係は、
ウェイト時間t4>周期t1
に規定されている。
【0038】
ウェイト時間t4を上記関係に規定することによって、リセットしてからA/D変換するまでの間に、ピークホールド回路41には、バンドパス信号S8の1周期分のピーク値がホールドされる。
【0039】
マイコン2によってA/D変換部3をタイミング制御することによって、バッファアンプ21から出力された振幅信号S2は、所定のタイミングでデジタル変換され、振幅値データとしてマイコン2に取り込まれる。このとき、マイコン2に取り込まれたデータは、A/D変換する直前のバンドパス信号S8の振幅値データとなっている。
【0040】
このように本実施例によれば、ピークホールド回路41は、マイコン2から出力されるリセット信号S11によって、そのピーク値のホールドとリセットが制御されているため、2次元走査速度を上げた場合でも、試料の微細な表面情報を高精度に測定することができる走査型プローブ顕微鏡を提供することが可能となる。更に、本実施例によれば、第1の実施例に適用されたタイミング制御回路32が不要となるため、回路構成を簡略化させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施例の構成に限定されることはなく、以下のように構成することも可能である。
即ち、上記振幅検出部40(図4及び図5参照)では、バンドパス信号S8の上端側ピーク値をホールドしたが、更に、ダイオード17を逆向きに配置した下端側ピーク値をホールドする回路と、上端ピーク信号と下端ピーク信号を差動増幅する差動増幅回路とを付加して、この差動増幅回路によって差動増幅した信号を振幅信号S2として用いることも可能である。そして、上記実施例と同様に、かかる振幅信号S2をA/D変換し、振幅値データとしてマイコン2に取り込んで画像化する。
【0042】
このような構成によれば、検出する振幅領域が大きくなるため、検出感度即ち分解能を向上させることが可能となる。なお、他の効果は、上記実施例と同様であるため、その説明は省略する。
【0043】
なお、本変形例において、上端ピーク信号と下端ピーク信号を差動増幅回路によって差動増幅した振幅信号S2として取り込む代わりに、上端ピーク信号と下端ピーク信号を別々にA/D変換し、マイコン2内部又はホストコンピュータ1内部において演算処理を施して差動増幅データを得ることも可能である。
【0044】
また、本発明は、上記第1及び第2の実施例の構成に限定されることはなく、以下のように構成することも可能である。
例えば、バンドパスフィルタ14の代わりに、例えばハイパスフィルタ等の他のフィルタ手段を適用すること、マイコン2の代わりに例えばデジタル信号処理用プロセッサ(DSP)等の他の制御ICを適用すること、あるいは、各実施例に適用された基本的なピークホールド回路31,41を更に高精度にするための応用回路に置き換えること等も可能である。
【0045】
また、上記第1及び第2の実施例では、カンチレバー11を変調するACモードAFMについて説明したが、カンチレバーに限らず、例えばXYZ駆動圧電体12等の他の微動手段を変調させるモードのSPM全般に応用することが可能である。
【0046】
更に、AFMに限らず、例えばSTMや、探針位置やバイアス電圧を変調させてトンネル電流の変調成分を検出するトンネル分光測定等にも応用することが可能である。
【0047】
また、本発明は、以下のように構成することも可能である。
(1) 尖った先端を有するカンチレバーと、
このカンチレバーを振動させる振動体と、
前記カンチレバーを試料に対して相対的に走査させる走査手段と、
この走査手段によって走査させることによって生じる前記カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、
この変位検出手段から出力された変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出手段と、
この振幅検出手段から出力された前記振幅信号に基づいて、試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
(2) 前記振幅検出手段には、前記変位検出手段から出力された変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするピークホールド回路と、このピークホールド回路を駆動制御することによって、前記変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするタイミング及びピーク値をホールドした信号を振幅信号として出力するタイミングを制御するタイミング制御回路とを備えていることを特徴とする上記(1)に記載の走査型プローブ顕微鏡。
(3) 前記制御手段には、前記振幅検出手段を制御することによって、前記変位検出手段から出力された変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするタイミング及びピーク値をホールドした信号を振幅信号として出力するタイミングを制御するタイミング制御部が設けられていることを特徴とする上記(1)に記載の走査型プローブ顕微鏡。
(4) 尖った先端を有するカンチレバーと、
このカンチレバーを振動させる振動体と、
前記カンチレバーを試料に対して相対的に走査させる走査手段と、
この走査手段によって走査させることによって生じる前記カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、
この変位検出手段から出力された変位信号の上端及び下端ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端及び下端ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出手段と、
この振幅検出手段から出力された前記振幅信号に基づいて、試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
(5) 前記振幅検出手段には、前記変位検出手段から出力された変位信号の各周期毎の上端及び下端ピーク値をホールドするピークホールド回路と、このピークホールド回路を駆動制御することによって、前記変位信号の各周期毎の上端及び下端ピーク値をホールドするタイミング、及び、上端及び下端ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として出力するタイミングを制御するタイミング制御回路とを備えていることを特徴とする上記(4)に記載の走査型プローブ顕微鏡。
(6) 前記制御手段には、前記振幅検出手段を制御することによって、前記変位検出手段から出力された変位信号の各周期毎の上端及び下端ピーク値をホールドするタイミング、及び、上端及び下端ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として出力するタイミングを制御するタイミング制御部が設けられていることを特徴とする上記(4)に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【0048】
このような構成によれば、走査速度を上げた場合でも、試料の微細な表面情報を高精度に測定することができる走査型プローブ顕微鏡を提供することが可能となる。
【0049】
また、本発明は、装置の発明に限定されることはなく、以下のように走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法の発明に言及することも可能である。
(1) カンチレバーを振動させる工程と、
前記カンチレバーを試料に対して相対的に走査させる工程と、
前記カンチレバーの振動変位を変位信号として検出する工程と、
前記変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドし、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出工程と、
前記振幅信号に基づいて、試料の表面情報を測定する工程とを有していることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法。
(2) 前記振幅検出工程は、前記変位信号の各周期毎のピーク値をピークホールド回路によってホールドする第1の工程と、前記ピークホールド回路を駆動制御することによって、前記変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするタイミング及びピーク値をホールドした信号を振幅信号として出力するタイミングを制御する第2の工程とを有していることを特徴とする上記(1)に記載の走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法。
(3) 前記振幅検出工程は、前記変位信号の各周期毎の上端及び下端ピーク値をピークホールド回路によってホールドする第1の工程と、前記ピークホールド回路を駆動制御することによって、前記変位信号の各周期毎の上端及び下端ピーク値をホールドするタイミング、及び、上端及び下端ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として出力するタイミングを制御する第2の工程とを有していることを特徴とする上記(1)に記載の走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法。
このような測定方法によれば、走査速度を上げた場合でも、試料の微細な表面情報を高精度に測定することができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、走査速度を上げた場合でも、試料の微細な表面情報を高精度に測定することができる走査型プローブ顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る走査型プローブ顕微鏡の全体の構成を概略的に示すブロック図。
【図2】図1に示す走査型プローブ顕微鏡に適用された振幅検出部の回路構成を示すブロック図。
【図3】図2に示す振幅検出部から振幅信号が出力されるまでの信号処理の状態を示す図。
【図4】本発明の第2の実施例に係る走査型プローブ顕微鏡の全体の構成を概略的に示すブロック図。
【図5】図4に示す走査型プローブ顕微鏡に適用された振幅検出部の回路構成を示すブロック図。
【図6】図5に示す振幅検出部から振幅信号が出力されるまでの信号処理の状態を示す図。
【図7】従来の走査型プローブ顕微鏡の全体の構成を概略的に示すブロック図。
【図8】図7に示す走査型プローブ顕微鏡に適用された振幅検出部の回路構成を示すブロック図。
【図9】(a),(b),(c)は、図8に示す振幅検出部から振幅信号が出力されるまでの信号処理の状態を示す図。
【符号の説明】
14…バンドパスフィルタ、30…振幅検出部、31…ピークホールド回路、32…タイミング制御回路、S2…振幅信号、S8…バンドパス信号。

Claims (14)

  1. カンチレバーと、
    カンチレバーを振動させる振動体と、
    カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査手段と、
    カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、
    変位検出手段から出力される変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出手段と、
    振幅検出手段から出力される振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  2. 振幅検出手段は、変位検出手段から出力される変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするピークホールド回路と、変位信号の各周期毎のピークホールドを開始するタイミングと、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として出力するタイミングとを制御するタイミング回路とを備えており、
    ピークホールド回路は、タイミング回路から出力される信号に対応して、各周期毎のピーク値のホールドとリセットを制御することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 制御手段は、変位検出手段から出力される変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするタイミングと、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として出力するタイミングとを制御するタイミング制御部を備えており、
    振幅検出手段は、タイミング制御部から出力される信号に対応して、各周期毎のピーク値のホールドとリセットを制御することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  4. カンチレバーと、
    カンチレバーを振動させる振動体と、
    カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査手段と、
    カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、
    変位検出手段から出力される変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出手段と、
    振幅検出手段から出力される振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  5. 振幅検出手段は、変位検出手段から出力される変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドするピークホールド回路と、ピークホールド回路を制御駆動することによって、変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドするタイミングと、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として出力するタイミングとを制御するタイミング回路とを備えており、
    ピークホールド回路は、タイミング回路から出力される信号に対応して、各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値のホールドとリセットを制御することを特徴とする請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  6. 制御手段は、変位検出手段から出力される変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドするタイミングと、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として出力するタイミングとを制御するタイミング制御部を備えており、
    振幅検出手段は、タイミング制御部から出力される信号に対応して、各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値のホールドとリセットを制御することを特徴とする請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  7. カンチレバーと、
    カンチレバーを振動させる振動体と、
    カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査手段と、
    カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、
    変位検出手段から出力される変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号を出力する振幅検出手段と、
    振幅検出手段から出力される上端側ピーク値の信号と下端側ピーク値の信号を別々にA/D変換し、A/D変換された上端側ピーク値の信号と下端側ピーク値の信号を演算処理して、上端側ピーク値と下端側ピーク値の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する処理手段と、
    処理手段から出力される振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  8. 振幅検出手段は、変位検出手段から出力される変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドするピークホールド回路と、ピークホールド回路を制御駆動することによって、変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドするタイミングを制御するタイミング回路とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  9. 制御手段は、振幅検出手段からの振幅信号に基づいて、カンチレバーと試料の間隔を一定に保つように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載の走査型プローブ顕微鏡。
  10. カンチレバーを振動させる振動工程と、
    カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査工程と、
    カンチレバーの振動変位を検出する変位検出工程と、
    変位検出工程で得られた変位信号のピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出工程と、
    振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御工程とを有していることを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法。
  11. 振幅検出工程は、変位信号の各周期毎のピーク値をピークホールドする第1の工程と、変位信号の各周期毎のピーク値をホールドするタイミングと、ピーク値をホールドした信号を振幅信号として出力するタイミングとを制御する第2の工程とを有していることを特徴とする請求項10に記載の測定方法。
  12. カンチレバーを振動させる振動工程と、
    カンチレバーと試料とを相対的に走査させる走査工程と、
    カンチレバーの振動変位を検出する変位検出工程と、
    変位検出工程で得られた変位信号の上端側ピーク値と下端側ピーク値を一定のタイミングでホールドして、且つ、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として一定のタイミングで出力する振幅検出工程と、
    振幅信号に基づいて試料の表面情報を測定する制御工程とを有していることを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡を用いた測定方法。
  13. 振幅検出工程は、変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドする第1の工程と、変位信号の各周期毎の上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドするタイミングと、上端側ピーク値と下端側ピーク値をホールドした信号の差動信号を振幅信号として出力するタイミングとを制御する第2の工程とを有していることを特徴とする請求項12に記載の測定方法。
  14. 振幅信号に基づいてカンチレバーと試料の間隔を一定に保つように制御することを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれかひとつに記載の測定方法。
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