JP3572953B2 - 能動型騒音振動制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、周期的な騒音又は振動に制御音又は制御振動を干渉させることにより騒音レベル又は振動レベルの低減を図る能動型騒音振動制御装置に関し、特に、ディジタル信号である駆動信号によってラウドスピーカや制御振動発生装置を駆動させることにより制御音や制御振動を発生させるようになっているものにおいて、騒音又は振動の一周期内に生成される駆動信号としてのディジタル信号の個数の切り換えや、駆動信号を生成する際に使用する基準信号の構成の切り換えによる制御特性の劣化を軽減できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の技術としては、騒音低減制御に関するものであるが、例えば特開平8−339192号公報に記載された能動型騒音制御装置がある。即ち、かかる従来の装置にあっては、エンジン回転騒音のような周期的な騒音を相殺できる制御音を、逐次更新型の適応アルゴリズムであるLMSアルゴリズムに従って生成するようになっている。そして、その一実施例では、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を、4パルス又は8パルスのいずれかにするようになっていて、そのパルス数の切り換えを、騒音周波数の200Hzを境界として行うようになっている。
【0003】
つまり、騒音の周波数が高い(周期が短い)状況で、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数が多いと、各パルスの出力に同期して実行されるフィルタ係数の更新処理や割り込み処理として実行されるD/A変換処理等に費やせる時間が短くなって、処理を実行するマイクロプロセッサの能力によっては演算が間に合わない場合があるし、逆に、騒音の周波数が低い(周期が長い)状況で、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数が少ないと、同じパルス信号の出力時間が長くなり、実際にラウドスピーカから発せられる制御音の滑らかさが失われて騒音低減効果が低くなってしまう場合がある、という問題点がある。そこで、上記従来の装置にあっては、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を固定ではなく可変にして、上記問題点に対処することとしているのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の装置では、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を騒音周波数に応じて単に切り換える構成であるため、そのパルス数を切り換える際に騒音低減制御の悪化を招くという問題点がある。
【0005】
つまり、上記従来の装置にあっては、各パルス信号の出力間隔(サンプリング・クロック)は、常に騒音の周期Tをパルス数(分割数)Dで割ったT/Dであり、そのときのパルス数が4、8のいずれであっても、騒音の一周期に同期した信号(タコパルス信号)の立ち上がり検知後直ちに第一番目のパルスの出力を開始し、それからT/D経過後に第二番目のパルスの出力を開始し、それからさらにT/D経過後に第三番目のパルスの出力を開始し…、という具合であったので、それら4パルス時と8パルス時とで同じパルス信号が存在する場合、その同じパルス信号の中間時点(パルス信号の出力を開始してから次のパルス信号の出力を開始するまでの中間の時点)を騒音の一周期に対する位置として表現すると、4パルス時と8パルス時とで異なってしまい、その分位相特性が変化して、適応演算が収束するまでの間は騒音低減制御が悪化してしまうのである。
【0006】
換言すれば、適応処理を行うようになっている上記従来の装置にあっては、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を切り換える際に、その制御音となる駆動信号の相対的な精度低下が必ず生じてしまい、適応演算によって適応ディジタルフィルタのフィルタ係数が最適値に収束するまでの間、騒音レベルの悪化を余儀なくされていたのである。
【0007】
その他、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数が一定であっても、その制御音を、騒音の発生状態を表す基準信号とフィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタとの畳み込みによって演算するようになっている装置においては、その畳み込みに用いる基準信号の構成を切り換えた結果、生成される制御音の位相特性が変化してしまう場合が有り、これによっても、上記と同様に、適応演算によって適応ディジタルフィルタのフィルタ係数が最適値に収束するまでの間、騒音レベルが悪化することになる。
【0008】
本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、上記のような駆動信号の位相特性の変化を低減することにより、騒音・振動の低減効果が大きく低下することを防止できる能動型騒音振動制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、周期的な騒音又は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源又は制御振動源と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動が低減するように前記制御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記騒音又は振動の基本周期を所定の分割数で分割した時間をサンプリング周期として、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタを用いて前記駆動信号を生成するようになっているとともに、前記分割数を所定の条件に従って切り換えるようになっている能動型騒音振動制御装置において、前記分割数を切り換える際には、その分割数の切り換えに伴う前記駆動信号の位相特性の変化を低減する位相特性変化低減処理を、前記適応ディジタルフィルタに対して実行し、その位相特性変化低減処理が実行された適応ディジタルフィルタを、前記分割数の切り換え後における前記駆動信号の生成処理に用いるようにした。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を要素としたベクトルに対して正方行列による変換を施す処理を含むようにした。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数に対して前記位相特性の変化を相殺するような補間演算を行って新たな適応ディジタルフィルタを作成し、その作成された適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなる新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理とした。
【0012】
そして、請求項4に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタを作成し、そのディジタルフィルタの各フィルタ係数に対して前記位相特性の変化を相殺するような補間演算を行って新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理とした。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を要素としたベクトルに対して、切り換え前の前記分割数と同じ次数の正方行列による変換を施し、その変換後のベクトルの各要素を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなる新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理とした。
【0014】
そして、請求項6に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタを作成し、そのディジタルフィルタの各フィルタ係数を要素としたベクトルに対して、前記切り換え後の分割数と同じ次数の正方行列による変換を施し、その変換後のベクトルの各要素をフィルタ係数として新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理とした。
【0015】
さらに、請求項7に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記周期的な騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期の正弦波を前記基準信号として生成するようになっており、前記適応ディジタルフィルタは、二つのフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号及び前記適応ディジタルフィルタを畳み込んで前記駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数を要素としたベクトルに対して、二次の正方行列による変換を施し、その変換後のベクトルの二つの要素をフィルタ係数として新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理とした。
【0016】
一方、上記目的を達成するために、請求項8に係る発明は、周期的な騒音又は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源又は制御振動源と、前記周期的な騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動が低減するように前記制御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する制御手段と、を備えるとともに、前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期の正弦波を前記基準信号として生成するようになっており、前記制御手段は、前記基準信号及び前記適応ディジタルフィルタを畳み込んで前記駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えており、前記駆動信号生成手段は、前記畳み込みに使用する前記基準信号の構成を前記騒音又は振動の基本周期に応じて切り換えるようになっている能動型騒音振動制御装置において、前記畳み込みに使用する前記基準信号の構成を切り換える際には、その切り換えに伴う前記駆動信号の位相特性の変化を低減する位相特性変化低減処理を、前記適応ディジタルフィルタに対して実行し、その位相特性変化低減処理が実行された適応ディジタルフィルタを、前記切り換え後における前記駆動信号の生成処理に用いるようにした。
【0017】
ここで、請求項1〜7に係る発明にあっては、分割数を切り換える際に、位相特性変化低減処理が適応ディジタルフィルタに対して実行され、その処理が実行された適応ディジタルフィルタが、分割数の切り換え後における駆動信号の生成処理に用いられるため、分割数の切り換え前に使用していた適応ディジタルフィルタをそのまま分割数の切り換え後に使用する場合に比べて、駆動信号の位相特性の変化が低減される、或いは、そのような位相特性の変化が解消されるようになる。
【0018】
特に、請求項2に係る発明は、正方行列による変換を施す処理を位相特性変化低減処理に含ませているため、その正方行列を適宜作成しておくことにより、所望の位相特性変化を適応ディジタルフィルタに確実に与えることができる。
【0019】
請求項3〜び請求項6に係る発明は、同期式Filtered−X LMSアルゴリズム(以下、SFXアルゴリズムと称す。)等のように、基準信号として騒音又は振動の基本周期に同期したインパルス列を用いるようになっている適応アルゴリズムを適用した能動型騒音振動制御装置に関するものであって、この場合、適応ディジタルフィルタは、分割数と同数のフィルタ係数を有することになる。このため、分割数が切り換わると、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の個数(タップ数)も増加又は減少することになる。
【0020】
すると、適応ディジタルフィルタのタップ数を増加させる場合であれば、例えば元の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を用いた補間演算により新たなフィルタ係数を生成しタップ数を増加させることになるし、逆に、タップ数を減少させる場合であれば、例えば元の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を間引くことによりタップ数を減少させることになる。
【0021】
そして、位相特性変化低減処理にあっては、請求項3又は5に係る発明のように、元の適応ディジタルフィルタに対して位相調整のための処理を施した後に、上記のような補間演算や間引くことによってタップ数を増減して新たな適応ディジタルフィルタを作成してもよいし、或いは、請求項4又は6に係る発明のように、先ずは上記のような補間演算や間引くことによってタップ数を増減してディジタルフィルタを作成し、そのディジタルフィルタに対して位相調整のための処理を施して新たな適応ディジタルフィルタを作成してもよい。
【0022】
請求項7に係る発明は、通常のLMSアルゴリズム等のように、基準信号として騒音又は振動の基本周期と同じ周期の正弦波を用いるようになっている適応アルゴリズムを適用した能動型騒音振動制御装置に関するものであって、しかも、適応ディジタルフィルタのタップ数を2としている。この場合、分割数が切り換わっても、適応ディジタルフィルタのタップ数は2のままである。従って、位相特性変化低減処理は、適応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数を要素としたベクトルに対して、二次元(2×2)の正方行列による変換を施す処理によって実現される。
【0023】
一方、請求項8に係る発明は、サンプリング周期(駆動信号の出力周期)を一定とした能動型騒音振動制御装置であって、しかも、通常のLMSアルゴリズム等のように、基準信号として騒音又は振動の基本周期と同じ周期の正弦波を用いるようになっている適応アルゴリズムを適用した能動型騒音振動制御装置に関するものである。そして、駆動信号を生成する際の畳み込み演算に使用する基準信号の構成を、騒音又は振動の基本周期に応じて切り換えるようになっている能動型騒音振動制御装置を前提としている。
【0024】
ここで、「基準信号の構成を切り換える」とは、例えば、適応ディジタルフィルタのタップ数を2、サンプリング周期に同期してサンプリングされる基準信号をx(n)、x(n−1)、x(n−2)とする(n、n−1、n−2は、サンプリング時刻)と、駆動信号を生成するための畳み込み演算に使用される基準信号は、通常はx(n)とx(n−1)とであるが、これを、所定の条件に従って、x(n)とx(n−2)とに変更するようなことを意味している。
【0025】
このように基準信号の構成を切り換える理由としては、基準信号の実質的なサンプリング周期と騒音又は振動の基本周期との比を1:4に近づけることが、LMSアルゴリズム等の勾配アルゴリズムにおいていわゆるエラーサーフェイスの形状を真円に近づける上で有益だからである。この点は、例えば本出願人が先に提案した特開平5−323975号公報にも詳しい。
【0026】
そして、基準信号の構成を上記のように切り換えれば、駆動信号のサンプリング周期はそのままでも、基準信号の実質的なサンプリング周期を変えることができ、その結果、上記比を所望の値に容易に近づけることができるのである。
【0027】
しかし、基準信号の構成を上記のように切り換えると、その切り換え前後で、駆動信号の位相特性が変化してしまい、騒音又は振動の低減代を悪化させる要因になるのである。
【0028】
そこで、この請求項6に係る発明のように、基準信号の構成を切り換える際に位相特性変化低減処理を適応ディジタルフィルタに対して実行すれば、そのような処理を行わない場合に比べて、駆動信号の位相特性の変化が低減される、或いは、そのような位相特性の変化が解消されるようになる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1〜7に係る発明によれば、分割数を切り換える際に、位相特性変化低減処理を適応ディジタルフィルタに対して実行し、その処理が実行された適応ディジタルフィルタを分割数の切り換え後における駆動信号の生成処理に用いるようにしたため、分割数の切り換え前に使用していた適応ディジタルフィルタをそのまま分割数の切り換え後に使用する場合に比べて、駆動信号の位相特性の変化が低減される、或いは、そのような位相特性の変化が解消されるようになり、それだけ良好な騒音又は振動の低減制御が実行できるという効果がある。
【0030】
また、請求項8に係る発明によれば、基準信号の構成を切り換える際に位相特性変化低減処理を適応ディジタルフィルタに対して実行するようにしたため、そのような処理を行わない場合に比べて、駆動信号の位相特性の変化が低減される、或いは、そのような位相特性の変化が解消されるようになり、それだけ良好な騒音又は振動の低減制御が実行できるという効果がある。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図5は本発明の一実施の形態を示す図であって、図1は本発明に係る能動型騒音振動制御装置の一形態である能動型振動制御装置を適用した車両の概略側面図である。
【0032】
先ず、構成を説明すると、横置きに搭載したエンジン17が、車体前後方向の後方に配置した能動型エンジンマウント20を介して、サスペンションメンバ等から構成される車体18に支持されている。なお、実際には、エンジン17及び車体18間には、能動型エンジンマウント20の他にエンジン17及び車体18間の相対変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジンマウントも介在している。受動的なエンジンマウントとしては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常のエンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウントインシュレータ等が適用できる。
【0033】
図2は、エンジン17に固定したブラケット(図示せず)を介して連結する能動型エンジンマウント20の上部構造を平面視で示すものであり、エンジン側連結部材30から上方に向けて突出している2本の連結ボルト30aを、上述したブラケットの挿通孔に下側から挿通し、ナットを螺合することによりエンジン17に上端部が固定される。また、符号60はリバウンド規制部材であり、このリバウンド規制部材60は、2本の連結ボルト30a間を結ぶ線に対して直交し、エンジン側連結部材30の上方をアーチ状に延在しながら装置ケース43に固定されており、エンジン側連結部材30の上面に固定したゴム製の弾性体からなるリバウンドストッパ31の上方に位置している。
【0034】
図3は、図2の矢視断面図で示す能動型エンジンマウント20の内部構造を示すものであり、図2の2本の連結ボルト30a間を結ぶ線に沿うA−A矢視断面を、図3の軸心(以下、マウント軸と称する)Pを境界として右側に示し、図2の2本の連結ボルト30a間を結ぶ線に対して直交する方向のB−B矢視断面を、図3のマウント軸Pを境界として右側に示している。
【0035】
この能動型エンジンマウント20は、装置ケース43に外筒34、中間筒36、オリフィス構成部材37、支持弾性体32等のマウント部品を内蔵し、これらマウント部品の下部に、流体室84の隔壁の一部を形成しながら弾性支持された可動部材78を流体室84の容積が変化する方向に変位させる電磁アクチュエータ52と、図示しない車体メンバの振動状況を検出する荷重センサ64とを内蔵した装置であり、より具体的に説明していくと、前述したエンジン側連結部材30は、下端周縁部30gが丸みを付けて形成されていると共に、マウント軸Pに沿う位置に第1孔30cが形成されている。また、このエンジン連結部材30に下側から嵌入されて上方を向いている連結ボルト30aは、その頭部30dがエンジン側連結部材30の下面から突出している。ここで、その頭部30dの外周縁部は、丸みが付けられて形成されている。
【0036】
また、エンジン側連結部材30の下面には、断面逆台形状の中空筒体30bが固定されている。この中空筒体30bには、連結ボルト30aに近接する位置に第2孔30eが形成されていると共に、マウント軸Pに沿う下面に第3孔30fが形成されている。なお、この中空筒体30bの連結ボルト30aから離間している位置には、孔を形成していない。
【0037】
そして、前記エンジン側連結部材30の下面側には、中空筒体30bの内部及びエンジン側連結部材30の下部側を覆うように、ゴム製の支持弾性体32が加硫接着により固定されている。
【0038】
すなわち、この支持弾性体32は、エンジン側連結部材30側から下方に向けて拡径した形状のゴム製の弾性体であって、内面に断面山形状の空洞部32aを形成しているが、連結ボルト30aから離れている部分の支持弾性体32の外周面は、図3の左側に示すように、エンジン側連結部材30の外周部を覆いながらリバウンドストッパ31に連続している。一方、連結ボルト30aに近接している支持弾性体32は、図3の右側に示すように、連結ボルト30aの頭部30dの全域を覆う被覆部32bが形成されていると共に、頭部30dの下方位置の外周を、内側に大きく凹んだ形状としている(以下、符号32cで示す凹み外周部と称する)。そして、前述した空洞部32aを形成しながら前記凹み外周部32cに対向している支持弾性体32の内面も、内側に大きく膨らんだ形状としている(以下、符号32dで示す膨らみ内周部と称する)。そして、連結ボルト30aに近接している部分の支持弾性体32の肉厚は、凹み外周部32cに対向して膨らみ内周部32dを設けたことにより、連結ボルト30aから離れている部分の肉厚と略同一に設定している。
【0039】
そして、薄肉形状とした支持弾性体32の下端部は、マウント軸Pが中空筒体30bと同軸に振動体支持方向を向く中間筒体36の内周面に加硫接着により結合している。
【0040】
中間筒体36は、同一外周径とした上端筒部36a及び下端筒部36bの間に小径筒部36cを連続して形成した部材であり、外周に環状凹部を設けている。また、図示しないが、小径筒部36cには開口部が形成されており、この開口部を介して中間筒体36の内側及び外側が連通している。
【0041】
中間筒体36の外側には外筒34が嵌合しており、この外筒34は内周径を中間筒体36の上端筒部36a及び下端筒部36bの外周径と同一寸法とし、軸方向の長さを中間筒体36と同一寸法に設定した円筒部材である。また、この外筒34には開口部34aが形成されており、この開口部34aの開口縁部にゴム製の薄膜弾性体からなるダイアフラム42の外周が結合して開口部34aを閉塞しつつ、外筒34の内側に向けて膨出している。
【0042】
そして、上記構成の外筒34を、環状凹部を囲むように中間筒体36に外嵌すると、外筒34及び中間筒体36間の周方向に環状空間が画成され、その環状空間にダイアフラム42が膨出した状態で配設される。そして、中間筒体36の内側に、筒状のオリフィス構成部材37が嵌合している。
【0043】
このオリフィス構成部材37は、中間筒体36の小径筒部36cより小径に形成した最小径筒部37aを備え、その最小径筒部37aの上下端部に径方向外方に向けて上部環状部37b及び下部環状部37cが形成されており、これら最小径筒部37a、上部及び下部環状部37b、37cで囲んだ位置と中間筒体36との間に環状空間が設けられている。また、最小径筒部37aの一部に第2開口部37dが形成されている。ここで、上部環状部37bは、支持弾性体32の下方に位置しているが、図2の右側に示すように、連結ボルト30aに近接している支持弾性体32の下方に位置している上部環状部37bは肉厚を薄く形成して凹みを設けており、支持弾性体32の膨らみ内周部32dから離れた位置で対向している。
【0044】
また、装置ケース43は、その上端部に上端筒部36aの外周径より小径の円形開口部を有する上端かしめ部43aが形成されていると共に、この上端かしめ部43aと連続するケース本体の形状を、内周径が外筒34の外周径と同一寸法で下端開口部まで連続する円筒形状(下端開口部を図2の破線で示した形状)とした部材であり、全てのマウント部品の組み込みが完了した後に下端開口部を径方向内方に向けてかしめていくことにより、図2の実線で示すかしめ部が形成される。
【0045】
そして、支持弾性体32、中間筒体36、オリフィス構成部材37及びダイアフラム42を一体化した外筒34を装置ケース43の下端開口部から内部に嵌め込んでいき、上端かしめ部43aの下面に外筒34及び中間筒体36の上端部を当接させると、それらが装置ケース43内の上部に配設される。この際、装置ケース43の内周面とダイヤフラム42とで囲まれた部分に空気室42cが画成されるが、この空気室42cを臨む位置に空気孔43aが形成されており、この空気孔43aを介して空気室42cと大気が連通している。
【0046】
装置ケース43内の下部には円筒状のスペーサ70が嵌め込まれており、このスペーサ70内の上部に可動部材78が配置されていると共に、スペーサ70内の下部に電磁アクチュエータ52が配置されている。前記スペーサ70は、円筒状の上部筒体70aと、円筒状の下部筒体70bと、これら筒体の上下端部間に加硫接着したゴム製の薄膜弾性体からなる略円筒状のダイアフラム70cとで構成されている。
【0047】
前記電磁アクチュエータ52は、外観円筒形のヨーク52aと、ヨーク52aの上端面側に配設した円環状の励磁コイル52bと、ヨーク52aの上面中央部に磁極を上下方向に向けて固定した永久磁石52cとで構成されている。また、前記ヨーク52aは、円環状の第1ヨーク部材53aと、中央円筒部に永久磁石52cを固定した第2ヨーク部材53bとで構成されている。
【0048】
そして、上部及び下部筒体70a、70b間のダイアフラム70cは、ヨーク52aの外周に形成した凹部52dに向かって膨出している。
また、ヨーク52aの下面と、車体側連結ボルト60を備えた蓋部材62との間には、振動低減制御に必要な残留振動を検出するために、荷重センサ64が介装されている。荷重センサ64としては、圧電素子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能であり、このセンサの検出結果は、図1に示すように、残留振動信号eとしてコントローラ25に供給されるようになっている。
【0049】
一方、前記電磁アクチュエータ52の上方には、シール部材固定用のシールリング72と、後述する板ばね82の外周部を下側から自由端支持する支持リング74と、電磁アクチュエータ52の永久磁石52c及び可動部材78間のギャップHを設定するギャップ保持リング76とが配置されている。これらシールリング72、支持リング74及びギャップ保持リング76の外周径は、前述したスペーサ70の上部筒体70aの内周径と同一寸法に設定されており、ヨーク52aから上方に突出している上部筒体70a内にシールリング72、支持リング74及びギャップ保持リング76の全てが内嵌されている。そして、これらシールリング72、支持リング74及びギャップ保持リング76の内側には、上下方向に変位可能となるように可動部材78が配置されている。
【0050】
この可動部材78は、外観円盤状の隔壁形成部材78Aと、この隔壁形成部材78Aより大径円盤状に形成した磁路形成部材78Bとで構成した部材であって、電磁アクチュエータ52に対して遠い方に位置する隔壁形成部材78Aの軸心にボルト孔80aを形成し、電磁アクチュエータ52に近い磁路形成部材78Bを貫通した可動部材用ボルト80がボルト孔80aに螺合することにより、隔壁形成部材78A及び磁路形成部材78Bを一体に連結した構造となっている。
【0051】
隔壁形成部材78A及び磁路形成部材78B間には、リング状に連続したくびれ部79が画成されているが、このくびれ部79に可動部材78を弾性支持するための板ばね82が収容されている。つまり、板ばね82は、中央部に孔部を形成した円盤形状の部材であり、この板ばね82の内周部を隔壁形成部材78Aの裏面中央部の下側から自由端支持し、板ばね82の外周部を支持リング74のばね支持部74aが下側から自由端支持しており、これにより可動部材78が装置ケース43に板ばね82を介して弾性支持されている。
【0052】
前記隔壁形成部材78Aは、流体室84に面している隔壁部80cの肉厚を薄くし、隔壁部80cの外周から上方に突出する環状のリブ80bを形成した部材である。そして、隔壁形成部材78Aの上面と、支持弾性体32の下面と、オリフィス構成部材37の内周面とで流体室84が形成され、この流体室84内に流体が封入される。
【0053】
また、流体室84から板ばね82を収容しているくびれ部79側への流体の漏洩を防止するため、隔壁形成部材78Aの外周とシールリング72の内周との間には、ゴム状弾性体からなるリング形状のシール部材86が固定されており、このシール部材86の弾性変形によって、シールリング72や装置ケース43に対する可動部材78の上下方向への相対変位を許容している。
【0054】
次に、本実施形態の能動型エンジンマウント20の振動入力減衰作用について簡潔に説明する。本実施形態の能動型エンジンマウント20は、支持弾性体32の空洞部32aとオリフィス構成部材37の軸中央空間とが連通し、オリフィス構成部材37の軸中央空間及びオリフィス構成部材37と中間筒体36との間の環状空間が、第2開口部37dを介して連通し、前記環状空間及びダイアフラム42が膨出している空間が、中間筒体36に形成した開口部を介して連通しており、これら支持弾性体32の空洞部32aからダイアフラム42が膨出している空間までの連通路内に、エチレングリコール等の流体が封入されている。
【0055】
そして、支持弾性体32の空洞部32aからオリフィス構成部材37と中間筒体36との間の環状空間までの連通路を主流体室84とすると、中間筒体36に形成した開口部の近傍をオリフィスとし、この開口部に対向しながらダイアフラム42に囲まれている領域を副流体室とした流体共振系が形成されている。この流体共振系の特性、即ち、オリフィス内の流体の質量と、支持弾性体32の拡張方向ばね、ダイアフラム42の拡張方向ばねで決まる特性は、車両停止中のアイドル振動の発生時、つまり20〜30Hzでエンジンマウント20A、20Bが加振された場合に高動ばね定数、高減衰力を示すように調整されている。
【0056】
一方、電磁アクチュエータ52の励磁コイル52bは、コントローラ25から例えばハーネスを通じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の電磁力を発生するようになっている。コントローラ25は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,RAM等の記憶媒体等を含んで構成され、エンジン17で発生する振動を低減できる能動的な支持力が能動型エンジンマウント20に発生するように、能動型エンジンマウント20に対する駆動信号yを生成し出力するようになっている。
【0057】
また、前述したように能動型エンジンマウント20には荷重センサ64が内蔵されており、車体18の振動状況を荷重の形で検出して残留振動信号eとして出力し、その残留振動信号eが干渉後における振動を表す信号として例えばハーネスを通じてコントローラ25に供給されている。
【0058】
ここで、エンジン17で発生するアイドル振動やこもり音振動は、例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動が車体18に伝達されることが主な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期して駆動信号yを生成し出力すれば、車体側振動の低減が可能となる。そこで、本実施の形態では、エンジン17のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして出力するパルス信号生成器19を設けていて、その基準信号xが、コントローラ25に供給されている。
【0059】
そして、コントローラ25は、供給される残留振動信号e及び基準信号xに基づき、適応アルゴリズムの一つであるSFXアルゴリズムを実行することにより、能動型エンジンマウント20に対する駆動信号yを演算し、その駆動信号yを能動型エンジンマウント20に出力するようになっている。
【0060】
具体的には、コントローラ25は、フィルタ係数W(i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリング・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wを順番に駆動信号yとして出力する一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wを適宜更新する処理を実行するようになっている。
【0061】
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wの更新式は、SFXアルゴリズムに従った下記の(1)式のようになる。
(n+1)=W(n)+αRe(n) ……(1)
ここで、(n),(n+1)が付く項は、サンプリング時刻n,n+1,における値であることを表している。また、更新用基準信号Rは、理論的には、基準信号xを、能動型エンジンマウント20の電磁アクチュエータ52及び荷重センサ64間の伝達関数Cをモデル化した伝達関数フィルタC^でフィルタ処理をした値であるが、基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達関数フィルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期して次々と生成した場合のそれらインパルス応答波形のサンプリング時刻nにおける和に一致する。
【0062】
また、理論的には、基準信号xを適応ディジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるため、フィルタ係数Wを順番に駆動信号yとして出力しても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ結果になる。
【0063】
そして、コントローラ25は、上記のような駆動信号yの出力処理及び適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wの更新処理を、基準信号xの最新のインパルスが生成された時点を基準に開始されるサンプリング・クロックに同期して実行するようになっており、そのサンプリング・クロックの周期(サンプリング周期)Tは、本実施の形態では、振動の基本周期、つまり基準信号xの周期Tを分割数Dで割った時間(T=T/D)とするようになっている。
【0064】
具体的には、コントローラ25は、その機能構成をブロック線図で表す図4に示すように、適応ディジタルフィルタWと、その適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wのフィルタ係数Wを上記(1)式に従って更新するフィルタ係数更新部25Aと、基準信号xの最新のインパルスが生成された時点からサンプリング周期毎に適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wを順番にアナログ信号に変換して駆動信号yとして出力するD/A変換器25Bと、同じくサンプリング周期毎に残留振動信号eをディジタル信号に変換してフィルタ係数更新部25Aに供給するA/D変換器25Cと、を備えていて、基本的には、適応ディジタルフィルタW及びフィルタ係数更新部25AによってSFXアルゴリズムが実行されるようになっている。
【0065】
そして、コントローラ25は、基準信号xの最新のインパルスとその一つ前のインパルスとの入力間隔に基づいて振動の基本周期Tを求める周期測定部25Dと、この周期測定部25Dが求めた基本周期Tに基づいて分割数Dを設定する分割数設定部25Eと、基本周期T及び分割数Dに基づいてサンプリング周期T(=T/D)を設定するサンプリング周期設定部25Fと、を備えている。
【0066】
分割数設定部25Eは、例えば基本周期Tの長さを所定のしきい値に基づいて二段階(長、短)に分類し、基本周期Tが長い場合には例えばD=8、基本周期Tが短い場合には例えばD=4とするようになっている。
【0067】
さらに、コントローラ25は、分割数DがDからDに切り換わった際(以下、切り換え前の分割数をD、切り換え後の分割数をDとする。)に、適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数に対して、分割数Dの切り換わりに伴う駆動信号yの位相特性の変化を相殺するような補間演算を行って新たな適応ディジタルフィルタWを作成し、次いで、その補間演算後の適応ディジタルフィルタW各フィルタ係数Wを適宜補間又は間引くことによりD個のフィルタ係数からなる新たな適応ディジタルフィルタWを作成する位相特性変化低減処理部25Gを備えていて、分割数Dが切り換わった後には、その新たな適応ディジタルフィルタWを用いて駆動信号yを生成する処理を実行するようになっている。
【0068】
位相特性変化低減処理部25Gにおける処理をさらに詳述すると、ここでは、分割数Dを常時監視していて、その分割数Dが切り換わった場合にのみ、所定の処理を実行するようになっている。
【0069】
そして、位相特性変化低減処理部25Gは、先ず、分割数Dの切り換えに伴う駆動信号yの位相のずれ量Pを演算する。即ち、図5(a)は、D=4における駆動信号yの出力波形を示し、図5(b)は、D=8における駆動信号yの出力波形を示しているが、第1番目の駆動信号yの出力開始時点は一周期内で同じ位置にあるため、第1番目の駆動信号yの中間時点は、D=4の場合とD=8の場合とで、Pだけずれてしまうのであり、そのずれ量Pに応じた位相調整を適応ディジタルフィルタWに施すことにより、分割数Dが切り換わっても、結果として、駆動信号yに位相ずれが生じないようにしたいのである。
【0070】
ずれ量Pは、下記の(2)式に従って演算される。
P=(1/2D−1/2D)/(1/D
=(D−D)/2D ……(2)
この(2)式で求められるずれ量Pは、切り換え前の分割数Dで正規化した値であり、例えば、D=4、D=8の場合のずれ量P(図5に図示したずれ量P)は、1/4となる。
【0071】
次に、ずれ量Pに基づいて適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wを補間して、ずれ量Pに応じた分だけ位相が進んだ(D>Dの場合)又はその分だけ位相が遅れた(D<Dの場合)適応ディジタルフィルタWの新たなフィルタ係数Wを作成する。このときの演算式は、下記のようになる。
【0072】
i<D−1;
=(1−P)×W+P×W(i+1) ……(3)
i=D−1;
(D1−1)=(1−P)×W(D1−1)+P×W ……(4)
その後、上記(3)式及び(4)式で求められたタップ数Dの適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wをさらに補間し、位相特性及びゲイン特性は変わらないように、タップ数Dの新たな適応ディジタルフィルタWを作成する。例えば、D=4、D=8の場合の演算式は、下記のようになる。
【0073】
i=0、2、4、6;
BUFi=W(i/2) ……(5)
i=1、3、5、7;
BUFi=(22/1 /2)×{W(i−1) +W(i+1) } ……(6)
=WBUFi ……(7)
なお、(3)〜(7)式の演算は、タップ数Dの適応ディジタルフィルタWに対してずれ量Pに基づいて位相調整を行った後に、それをタップ数Dの適応ディジタルフィルタWに変換するような手順に従っているが、これとは逆に、タップ数Dの適応ディジタルフィルタWをタップ数Dの適応ディジタルフィルタWに変換した後に、ずれ量Pに基づいた位相調整を行うようにしてもよい。つまり、上記(5)〜(7)式の補間演算を行った後に、上記(3)、(4)式の演算を行うようにしてもよい。ただし、かかる場合には、ずれ量Pを、切り換え後の分割数Dに基づいて正規化する必要があるため、ずれ量Pの演算式は下記のようになる。
【0074】
P=(1/2D−1/2D)/(1/D
=(D−D)/2D ……(8)
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0075】
即ち、エンジンシェイク発生時には、オリフィス5aの流路形状等を適宜選定している結果、この能動型エンジンマウント1は高動ばね定数,高減衰力の支持装置として機能するため、エンジン30側で発生したエンジンシェイクが能動型エンジンマウント1によって減衰され、車体35側の振動レベルが低減される。なお、エンジンシェイクに対しては、特に可動板12を積極的に変位させる必要はない。
【0076】
一方、オリフィス5a内の流体がスティック状態となり流体室15及び副流体室16間での流体の移動が不可能になるアイドル振動周波数以上の周波数の振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信号Yを出力し、能動型エンジンマウント1に振動を低減し得る能動的な支持力を発生させる。
【0077】
つまり、駆動信号Yが出力されると、励磁コイル10Bに駆動信号Yに応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、既に永久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているから、その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10Cの磁力を強める又は弱めるように作用すると考えることができる。つまり、励磁コイル10Bに駆動信号Yが供給されていない状態では、磁路部材12は、板ばね11による支持力と、永久磁石10Cの磁力との釣り合った中立の位置に変位することになる。そして、この中立の状態で励磁コイル10Bに駆動信号Yが供給されると、その駆動信号Yによって励磁コイル10Bに発生する磁力が永久磁石10Cの磁力と逆方向であれば、磁路部材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが増大する方向に変位する。逆に、励磁コイル10Bに発生する磁力が永久磁石10Cの磁力と同じ方向であれば、磁路部材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが減少する方向に変位する。
【0078】
このように磁路部材12は正逆両方向に変位可能であり、磁路部材12が変位すれば主流体室15の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6の拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウント1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのである。
【0079】
一方、コントローラ25内では、基準信号xの入力間隔を例えばクロックパルスの間隔で計数することにより、周期演算部25Dにおいて基準信号xの周期Tが演算される。なお、ここで求められる周期Tは、最新の基準信号xとその一つ前の基準信号xとの入力間隔であるため、その最新の基準信号xが入力された後の新たな周期の長さを表しているとは厳密にはいえないが、車両の加減速中であっても基準信号xの隣り合った周期は略等しいと見なせることができるから、特に問題はない。
【0080】
周期演算部25Dにおいて周期Tが演算されると、分割数設定部25Eは、その周期Tの長短に基づいて、分割数Dを、例えば4又は8に設定する。
分割数Dが設定されると、サンプリング周期設定部は、周期Tを分割数Dで割ることにより、サンプリング周期Tを演算し設定する。すると、D/A変換器25Bからは、そのサンプリング周期Tの間隔で適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wを順番に駆動信号yとしてアナログ信号に変換し電磁アクチュエータ10に出力する一方、A/D変換器25Cも、サンプリング周期Tの間隔で残留振動信号eをディジタル信号に変換してフィルタ係数更新部25Aに供給する。残留振動信号eが供給されたフィルタ係数更新部25Aも、サンプリング周期Tに同期し、上記(1)式に従って適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wを更新する。
【0081】
ここで、サンプリング周期Tは、周期Tと分割数Dとの両方で決まるため、分割数Dが変化しなくても、周期Tの増減に応じても変化する。
これに対し、分割数Dが変化しなければ、適応ディジタルフィルタWのタップ数も変化しないため、位相特性変化低減処理部25Gは待機したままである。
【0082】
そして、分割数Dが、例えば4から8、或いは、8から4に変化すると、位相特性変化低減処理は、上記(3)〜(7)式に示したような補間演算を適応ディジタルフィルタWに対して実行し、その補間演算が施された適応ディジタルフィルタWが、それ以降の駆動信号yの生成処理に用いられるようになる。
【0083】
すると、分割数Dを切り換えた直後でも、その切り換え前と同じ位相特性を示す適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理が実行されるから、位相特性が変化することにより極短い時間であっても信号低減処理の効果が低くなるような状態を避けることができ、それだけ良好な振動低減処理が可能になる。
【0084】
ここで、本実施の形態では、能動型エンジンマウント1が制御振動源に対応し、コントローラ25が制御手段に対応し、パルス信号生成器19が基準信号生成手段に対応し、荷重センサ64が残留振動検出手段に対応し、サンプリング周期設定部25Fがサンプリング周期設定手段に対応し、D/A変換器25Bが駆動信号生成手段に対応し、フィルタ係数更新部25Aが適応処理手段に対応し、分割数設定部25Eが分割数設定手段に対応し、位相特性変化低減処理部25Gが位相特性変化低減処理手段に対応する。
【0085】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態の車両等に関する全体的な構成及びコントローラ25の機能構成の基本的な部分は、上記第1の実施の形態と同様であるため、重複する部分についての図示及び説明は省略する。
【0086】
具体的には、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と比較して、コントローラ25内の位相特性変化低減処理部25Gにおける処理の内容が異なるだけで、それ以外の構成及び作用は同じである。そこで、本実施の形態でも、図4を参照して説明を行う。
【0087】
即ち、本実施の形態の位相特性変化低減処理部25Gでは、適応ディジタルフィルタWを、そのフィルタ係数Wを要素としたベクトルと見なし、これに正方行列による変換を施すことにより、分割数Dの切り換え時における位相特性の変化を相殺するようにしたものである。つまり、上記第1の実施の形態では、適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wに対して内挿(補間)という演算により行った位相特徴の調整処理を、行列とベクトルとの積により実現するものである。
【0088】
そして、上記正方行列による上記ベクトルに対する変換の目的は、分割数Dの切り換えに伴い適応ディジタルフィルタWに生じるタイミングのずれを周期Tで正規化した位相θで表現したとき、適応ディジタルフィルタWの基本次数成分の位相特性をθだけ、第2調波成分(基本次数の2倍の周波数成分)の位相特性を2θだけ、第k調波成分の位相特性をkθだけ、遅らせる(D<D)或いは進ませる(D>D)ことである。つまり、解消したいタイミングのずれ(時間軸上でのずれ)を位相(周期Tに対する角度)で表現すると、低い周波数成分に対しては小さい位相、高い周波数成分に対しては大きな位相となるから、上記のような割合で位相を遅らせる或いは進ませることが必要なのである。
【0089】
基準信号xが、本実施の形態のように、騒音の基本周期に対して一つだけパルスを持つインパルス列であるときには、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数列がそのまま駆動信号列となるから、各周波数成分に対して上記のような位相特性があるディジタルフィルタが存在したとして、適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wを繰り返した信号列をそのディジタルフィルタで畳み込み、その畳込みの結果から一周期分だけ取り出したものは、元の適応ディジタルフィルタWの各周波数成分毎の位相特性を、上記変換の目的として説明した分だけ変化させたものになる。
【0090】
ただし、分割数Dを切り換えるのであるから、上記第1の実施の形態と同様に適応ディジタルフィルタWのタップ数を増減させるための補間処理を、例えば上記正方行列による位相変換処理を実行する前に行っておく必要がある。
【0091】
図6は、本実施の形態の位相特性変化低減処理部25Gにおける処理の概要を示したフローチャートであって、先ず、ステップ101において、タップ数Dの元の適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wを補間する若しくは間引くことにより、位相特性等はそのままで、タップ数Dの適応ディジタルフィルタWを作成する。
【0092】
次いで、ステップ102に移行し、ステップ101で作成したタップ数Dの適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wを要素としたベクトルに対して正方行列による位相変換を施して、ベクトルWBUF を作成し、そして、ステップ103に移行し、そのベクトルWBUF の各要素を用いて新たな適応ディジタルフィルタWを作成し、それ以降は、その新たな適応ディジタルフィルタWを用いて駆動信号yの生成処理を実行する。
【0093】
以上がこの実施の形態における位相特性変化低減処理の概要であるが、ここで重要なのは、上記のような正方行列の作成手順であるから、以下、その点について詳述する。ただし、ここでは、図6に示したように正方行列による位相変換処理の前にタップ数の調整処理を実行し、且つ、切り換え後の分割数Dが、偶数の場合について詳述し、それ以外の場合について後述することとする。
【0094】
先ず、分割数DがDからDに切り換わった場合に駆動信号yに生じる位相特性の変化分(図5におけるずれ量Pに対応)は、下記式のようになる。
θ=π/D−π/D ……(9)
次に、下記のようなベクトルVを考える。
【0095】
【数1】
Figure 0003572953
【0096】
……(10)
このベクトルVは、実現すべき位相特性を、各次数毎にフーリエ係数の形で表現し、それを順に縦に並べたものである。ただし、実数演算のみで処理が行えるように、フーリエ係数の実数部と虚数部とを、その順番で別の行に表している。また、D/2次の高調波成分に関しては、ナイキスト周波数に相当するため、位相特性を変化させることはできないので、実数成分のみを調整するようベクトルVの最終行を1としている。また、その上の行を0としているのは、直流成分をゼロにするためである。
【0097】
次に、下記のような行列Mを考える。
【0098】
【数2】
Figure 0003572953
【0099】
……(11)
この行列Mは、FIR型フィルタ(有限インパルス応答型フィルタ)のフーリエ係数を求める計算を、実数のみの行列とベクトルとの積で行えるように、実数項と虚数項とを別の行に分けて、各行内は基本次数から順番に係数を並べたものである。
【0100】
従って、行列Mと任意のベクトルAとの積(M・A)は、そのベクトルAをFIR型フィルタと解釈したときの位相特性、つまりフーリエ係数を、基本次数から順に実数部と虚数部を縦に並べたものになる。
【0101】
ここで、ベクトルA(=[A(1) A(2) A(3) …A(N) ])の要素がその順番で繰り返し表れる信号列の周波数特性V(=[V(1) V(2) V(3) …V(N) ])を求める計算式は、下記のようになる。
【0102】
【数3】
Figure 0003572953
【0103】
……(12)
なお、jは虚数単位であり、下記の関係がある。
【0104】
【数4】
Figure 0003572953
【0105】
……(13)
このとき、V(1) は信号列の周波数0、すなわち直流成分の特性を、V(2) は信号列の基本周波数(繰り返し周波数)成分の特性を、V(k) は基本周波数のk−1倍(k=3、4、5、…、N/2)の周波数成分の特性を、それぞれ表している。
【0106】
上記(13)式から、上記(12)式によって得られるフーリエ係数は複素数であり、いま仮にこの信号列の基本周波数での特性が、位相θ、ゲインBであるとすると、V(1) は下記のようになる。
【0107】
V(1) =B・cos(θ)+j・B・sin(θ) ……(14)
以上の(12)〜(14)式に関する説明は、周期的信号列に対する離散フーリエ変換の簡単な説明であるが、信号列の各要素をディジタルフィルタのフィルタ係数に置き換えれば、同様の計算によって、ディジタルフィルタの周波数特性を求めることが可能である。
【0108】
そこで、ベクトルAの要素は全て実数であるから、上記(12)式を下記のように実数部VReと虚数部VImとに分けることにより、実数のみの計算で周波数特性を求められるようにする。
【0109】
【数5】
Figure 0003572953
【0110】
……(15)
【0111】
【数6】
Figure 0003572953
【0112】
……(16)
上記(10)式のベクトルVは、1番目の要素が基本周波数(k=1)において求められる周波数特性(フーリエ係数)の実数項、つまり上記(15)式によって得られるVRe(2) 、2番目の要素が基本周波数において求められる周波数特性の虚数項、つまり上記(16)式によって得られるVIm(2) 、というように、N−2番目までに基本周波数の(N/2−1)倍の周波数における特性の実数項と虚数項とを順番に並べた後、ナイキスト周波数、すなわち基本周波数のN/2倍の周波数における特性と、直流成分に対する特性とを並べたものである。
【0113】
なお、ナイキスト周波数及び直流成分に対する周波数特性は、実数項のみになるため、ベクトルVの要素としては一つずつとなっている。
そして、上記(11)式の行列Mの各要素は、上記(15)式や(16)式における右辺の「cos(2π・k・i/N)」や「−sin(2π・k・i/N)」に相当する。
【0114】
つまり、M・A=VとなるようにベクトルAを定めれば、ベクトルAの要素を並べたディジタルフィルタAは、ベクトルVと同じ周波数特性のディジタルフィルタとなるから、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数WをディジタルフィルタAで畳み込んだものは、適応ディジタルフィルタWの基本次数成分及び高調波成分の各位相を、ベクトルVで定めるように調整したものとなる。
【0115】
つまり、ベクトルAは、
A=D・M−1・V ……(17)
として求まり、このベクトルAの要素を畳み込みの計算手順に従って並べれば、図6のステップ102の演算に用いる正方行列が求まり、ステップ102における演算は下記のようになる。
【0116】
【数7】
Figure 0003572953
【0117】
……(18)
切り換え後の分割数Dが奇数の場合には、ベクトルV及び行列Mは、下記のようになる。
【0118】
【数8】
Figure 0003572953
【0119】
……(19)
【0120】
【数9】
Figure 0003572953
【0121】
……(20)
分割数Dが奇数の場合には、ベクトルVの最終行は必要なくなるので、その分、ベクトルV及び行列Mの形が、分割数Dが偶数の場合と異なっている。
【0122】
また、図7は、位相特性変化低減処理部25Gが、図6の場合とは逆に、適応ディジタルフィルタWの位相調整を行った後にタップ数の調整を行うようにした場合の処理の概要を示すフローチャートである。
【0123】
この場合は、先ずステップ201において、タップ数Dの適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wを要素としたベクトルに対して正方行列による位相変換を施して、ベクトルWBUF を作成し、次いで、ステップ202に移行し、そのベクトルWBUF の各要素を用いて新たな適応ディジタルフィルタWを作成する。そして、ステップ203に移行し、その新たな適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wを補間する若しくは間引くことにより、位相特性等はそのままで、そのタップ数をDからDに変更し、それ以降は、そのタップ数が変更された新たな適応ディジタルフィルタWを用いて駆動信号yの生成処理を実行する。
【0124】
位相特性変化低減処理部25Gが、図7の処理を実行するようになっている場合であって、切り換え前の分割数Dが偶数の場合のベクトルV及び行列Mは、下記の(21)式、(22)式のようになり、その分割数Dが奇数の場合のベクトルVベクトルV及び行列Mは、下記の(23)式、(24)式のようになる。
【0125】
【数10】
Figure 0003572953
【0126】
……(21)
【0127】
【数11】
Figure 0003572953
【0128】
……(22)
【0129】
【数12】
Figure 0003572953
【0130】
……(23)
【0131】
【数13】
Figure 0003572953
【0132】
……(24)
そして、ベクトルAは、
A=D・M−1・V ……(25)
として求まり、このベクトルAの要素を畳み込みの計算手順に従って並べれば、図7のステップ201の演算に用いる正方行列が求まり、ステップ201における演算は下記のようになる。
【0133】
【数14】
Figure 0003572953
【0134】
……(26)
正方行列Aは、実際には、分割数設定部25Eで選択される分割数Dや、位相特性変化低減処理部25Gが図6又は図7のいずれの処理を実行するようになっているかに基づいて、予め演算して求めておき、その結果だけをROM等の記憶装置に保存しておき、それを読み出して上記(18)又は(26)式の演算に用いるようになっている。
【0135】
そして、分割数Dが切り換わる際に、位相特性変化低減処理部25Gが、図6又は図7に示す処理を実行するから、本実施の形態にあっても、上記第1の実施の形態と同様に、分割数Dを切り換えた直後でもその切り換え前と同じ位相特性を示す適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理が実行されるから、位相特性が変化することにより極短い時間であっても信号低減処理の効果が低くなるような状態を避けることができ、それだけ良好な振動低減処理が可能になる。
【0136】
しかも、本実施の形態にあっては、上述したような手順で作成される正方行列を用いて適応ディジタルフィルタWに対する位相調整処理を実行するようになっているから、より高精度の位相調整処理が可能であるという利点もある。
【0137】
図8は本発明の第3の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態における図5と同様に、コントローラ25の機能構成を示すブロック図である。なお、全体構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略するとともに、コントローラ25の機能構成に関しても同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0138】
即ち、本実施の形態のコントローラ25は、振動の基本周期に同期した基準信号xを受け取り、それと同じ周期の正弦波Xを生成する正弦波生成部25Hを備えていて、この正弦波生成部25Hが生成した正弦波Xが、適応ディジタルフィルタW及びフィルタ係数更新部25Aに、基準信号xの代わりに供給されるようになっている。つまり、本実施の形態では、正弦波Xを基準信号Xとして用いるようになっている。
【0139】
一方、適応ディジタルフィルタWは、W、Wという二つのフィルタ係数からなるのディジタルフィルタであって、駆動信号yは、その適応ディジタルフィルタWと基準信号Xとを畳み込むことにより生成されるようになっている。
【0140】
従って、駆動信号yの演算式は、下記のようになる。
y(n)=W・X(n)+W・X(n−1) ……(27)
ここで、上記(14)式で示したフーリエ係数と位相特性との関係を図で表現すると、図9に示すようになる。
【0141】
即ち、図9(a)及び(b)は複素数であるフーリエ係数とその周波数成分の波形との関係を示しており、同(a)は、実数軸(Real )と虚数軸(Imag )とからなる直交座標系に、原点からフーリエ係数に至るベクトルをプロットし、そのベクトルを反時計方向に回転させたものであり、同(b)は、その反時計方向に回転するベクトルの実数成分を横時間軸でプロットしたものであって、これが周波数成分の波形である。そして、ベクトルの長さが周波数成分の大きさを示し、ベクトルと実数軸とがなす角度がその周波数成分の位相を示している。
【0142】
次に、図10及び図11を参照して、2タップの適応ディジタルフィルタの動作を説明する。
2タップの適応ディジタルフィルタにおけるフィルタ処理は、上記(27)式に示す通りであるから、図10(a)及び(c)に示した正弦波のそれぞれをW倍、W倍して加算したものが出力(駆動信号y)となる。なお、図10(c)中の「D」は、分割数のことであり、X(n−1)は、X(n)と比較して2π/Dだけ位相が遅れていることを示している。
【0143】
駆動信号yの位相や振幅は、図11のように表現できる。即ち、実数軸に重ねてW軸を定め、その実数軸から時計方向に2π/Dだけ回転した軸を、W軸と定める。
【0144】
そして、W軸及びW軸のそれぞれに、フィルタ係数W、Wの値をプロットし、原点からそのプロットした点に向かうベクトルを、ベクトルW、Wとする。
【0145】
適応ディジタルフィルタWの特性は、それら二つのベクトルW、Wを合成したもので表される。即ち、合成したベクトルの座標を、元の実数軸と虚数軸からなる座標系で読み取ったものが、その適応ディジタルフィルタWの位相と振幅を表現するフーリエ係数である。図11では、その合成したベクトルを太線で示しているが、その値は、次のようにして求められる。
【0146】
W(実数部)=W+W・cos(2π/D) ……(28)
W(虚数部)=−W・sin(2π/D) ……(29)
分割数Dが切り換わることにより駆動信号yに生じる位相ずれは、図5に示すようなものであるから、そのような位相ずれが相殺されるように、元の適応ディジタルフィルタWの位相特性を予めその分だけ逆方向に回転させておけばよい。具体的には、上記(28)式、(29)式に示す適応ディジタルフィルタWの実数部と虚数部とが、分割数を切り換えた後に位相変化が生じると丁度元の適応ディジタルフィルタWの位相特性と同じになるように、フィルタ係数W及びWを変化させておけばよい。
【0147】
一方、本実施の形態の場合、分割数Dが切り換わると、図10に示したような基準信号X(n)とX(n−1)との位相関係も同時に変わり、それによっても駆動信号yの位相特性が変化してしまう。
【0148】
つまり、分割数Dが切り換わると、大きく別けて二つの理由によって、駆動信号yの位相特性が変化するのであり、その一つが図5に示したような理由、もう一つが図10に示したような理由である。
【0149】
後者の理由について、具体的に分割数DがD=6からD=8に変化する場合を想定して、図12を参照しつつ説明する。
即ち、分割数D=6のときには、実数軸に重なるW軸から時計方向に2π/D=60°回転したところにW軸がある。しかし、分割数D=8になると、W軸は、W軸から時計方向に2π/8=45°回転したところに存在する。従って、フィルタ係数W、Wの大きさが変化しなくても、分割数Dが6から8に変化したことのみによって、適応ディジタルフィルタWのフィルタ特性(フーリエ係数)は、図12に合成ベクトルで示すように、大きく変化してしまうのである。
【0150】
このような特性変化を防止するためには、図13に示すように、分割数D=6のときのフィルタ係数Wを、分割数D=8のときのW軸とW軸との成分に分解し(つまり、両軸に射影し)て、その分解したうちのW軸成分については、元からあるW軸成分(フィルタ係数W)に加え、W軸成分については、その射影分を新たなW軸成分(フィルタ係数W)とすればよい。
【0151】
かかる操作をすれば、図12に示したような理由による適応ディジタルフィルタWの位相変化が相殺されるようになるから、そのような操作が行われた後の適応ディジタルフィルタWについて、上記各実施の形態と同様の手法により位相調整すればよい。
【0152】
つまり、上記(28)式、(29)式で示される複素数を要素とするベクトルを、θ(=π/D−π/D)だけ反時計方向に回転させたものが、最終的に作成された新たな適応ディジタルフィルタWのフィルタ特性となるように、フィルタ係数W、Wを変化させればよい。
【0153】
ここで、実数軸と虚数軸とが直交する複素平面上で回転を表す行列は、下記のようになる。
【0154】
【数15】
Figure 0003572953
【0155】
……(30)
ここで回転の対象となるのは、上記(28)式、(29)式の実数部と虚数部とを要素とする列ベクトルであり、その列ベクトルは、フィルタ係数W、Wを要素とする列ベクトルに、下記式で表される行列を、左からかけたものと等価である。
【0156】
【数16】
Figure 0003572953
【0157】
……(31)
従って、分割数DがD=6のときの上記(31)式の行列をM、分割数DがD=8のときの上記(31)式の行列をM、上記(30)式の行列をM、分割数Dの切り換え前のフィルタ係数W、Wを要素とする列ベクトルをV、正方行列をMとすると、列ベクトルVに正方行列Mをかけたもの(位相調整処理を行った後の適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数W、Wからなるベクトル)に、さらに行列Mをかけたものが、最終的な位相調整処理を完了した後の適応ディジタルフィルタWの特性(フーリエ係数)であり、これが、分割数切り換え前の列ベクトルVに行列Mをかけたもの(切り換え前の適応ディジタルフィルタWの特性(フーリエ係数))にさらに行列Mをかけたもの(図5に示したようなずれの補正)と等しくなればよい。
【0158】
即ち、下記式を成立するように正方行列Mを定めれば、分割数Dの変化による駆動信号yの位相特性の変化を相殺できて、上記第1の実施の形態と同様に、良好な振動低減制御が可能となるのである。
【0159】
・M・V=M・M・V ……(32)
よって、正方行列Mは下記式で求められる。
=M −1・M・M ……(33)
この正方行列Mは、分割数Dの切り換わりパターン毎に予め演算して求めておき、それをコントローラ25内のROM等に記憶しておいて、位相特性変化低減処理部25Gでは、分割数Dの切り換わりに応じて正方行列Mを読み出して使用すればよい。
【0160】
従って、分割数Dが切り換わる際の位相特性変化低減処理部25Gにおける処理の概要は、図14に示すようになる。
即ち、ステップ301において、その時点の適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数W、Wを用いて、列ベクトルVを作成し、次いでステップ302に移行し、分割数Dの切り換えパターンに従って読み出した正方行列Mと、ステップ301で作成した列ベクトルVとをかけあわせて、ディジタルフィルタWBUF を作成し、ステップ303に移行し、そのディジタルフィルタWBUF の各要素を用いて新たな適応ディジタルフィルタWを作成し、それ以降の振動低減処理では、その新たな適応ディジタルフィルタWを使用する。
【0161】
なお、正方行列Mを求める手順は、例えば以下のようなものであって構わない。
先ずは、分割数DがDからDに変化しても、基準信号X(n)とX(n−1)との位相関係が変化しないように、X(n−1)の特性を調整することを想定する。
【0162】
例えば、分割数Dが4と8との間で切り換わる構成の場合、D=4のときは、上記(27)式に示したように、基準信号X(n)とX(n−1)とを用いて駆動信号yを生成する一方、D=8のときは、基準信号X(n−1)の代わり、その一つ前のサンプリング時刻に取り込んだ基準信号X(n−2)を使用する、といった具合である。これは、LMSアルゴリズムのエラーサーフェイスの等高線を真円に近づけて、最適値への収束性を良好にするために採用される手法の一つである。つまり、駆動信号yの生成のための畳み込み演算に使用する基準信号X(n)とX(n−1)との位相関係を、できるだけπ/2(rad )に近づけたい場合に採用される手法である。
【0163】
この場合、分割数D=4であるときの駆動信号yの計算式は上記(27)式に示す通りであるが、分割数D=8であるときの駆動信号yの計算式は、下記のようになる。
【0164】
y(n)=W・X(n)+W・X(n−2) ……(34)
この場合には、分割数Dが変化しても、W軸とW軸との関係は変化しないので、上述した分割数Dが切り換わることにより駆動信号yの位相特性が変化する理由のうちの二つ目は考えなくてもよくなり、その結果、上記(32)式は下記のようになる。
【0165】
・M・V=M・M・V ……(35)
よって、正方行列Mは下記式で求められる。
=M −1・M・M ……(36)
ここで、本実施の形態では、パルス信号生成器19及び正弦波生成部25Hによって基準信号生成手段が構成され、A/D変換器25B及び上記(27)、(34)式の演算によって駆動信号生成手段が構成される。
【0166】
図15は本発明の第4の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態における図5と同様に、コントローラ25の機能構成を示すブロック図である。なお、全体構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略するとともに、コントローラ25の機能構成に関しても上記各実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0167】
即ち、本実施の形態のコントローラ25は、上記第3の実施の形態と同様にタップ数2の適応ディジタルフィルタWを有するとともに、正弦波生成部25の出側に基準信号構成変更部25Iを設けていて、この基準信号構成変更部25Iには、正弦波である基準信号Xの他に、周期測定部25Dが測定した周期Tも供給されるようになっている。そして、基準信号構成変更部25Iは、周期Tに基づき、駆動信号yの生成のための畳み込み演算に使用する二つの基準信号Xの位相関係ができるだけπ/2(rad )に近づくように、例えば、周期Tが短いときには基準信号X(n)とX(n−1)とを出力し、周期Tが長いときには基準信号X(n)とX(n−2)とを、或いは、基準信号X(n)とX(n−3)とを出力するようになっている。
【0168】
従って、駆動信号yの計算式は、例えば駆動信号yの生成に用いられる基準信号Xの構成が二つのパターンの間で切り換わると仮定した場合、下記式のようになる。
【0169】
y(n)=W・X(n)+W・X(n−k) ;i=1、2……(37)
また、本実施の形態では、駆動信号yの出力周期であるサンプリング周期は一定であって、周期Tが変化しても同じサンプリング周期が用いられるようになっている。
【0170】
一方、位相特性変化低減処理部25Gにも周期Tが供給されていて、位相特性変化低減処理部25Gは、その周期Tに基づいて基準信号Xの構成が切り換わるタイミングであるか否かを判断し、それが切り換わる際には、上記第3の実施の形態で説明した図14の手順に従って、適応ディジタルフィルタWに対して位相調整処理を実行するようになっている。
【0171】
正方行列Mを求める手順も、上記第3の実施の形態の場合と同様であるが、その際の分割数D、Dは、下記のように定義される。
=k・f/f ……(38)
=k・f/f ……(39)
、kは、上記(37)式の右辺第2項の基準信号Xの離散時刻を表すかっこ内のkのことであり、fはサンプリング周波数、fは基準信号xの基本周波数である。
【0172】
本実施の形態にあっても、基準信号Xの構成を切り換える際に、適応ディジタルフィルタWに対して位相調整を施すようにしたため、基準信号Xの構成を切り換えに伴い生じる駆動信号yの位相特性の変化を低減又は相殺できるから、それだけ良好な振動低減制御が実行できる。
【0173】
ここで、本実施の形態にあっては、D/A変換器25B及び基準信号構成変更部25I並びに上記(37)式の演算によって駆動信号生成手段が構成される。
なお、上記第1の実施の形態では、上記(3)式、(4)式を用いた補間演算により適応ディジタルフィルタWの位相調整を行うようにしているが、このような補間演算ではなく、例えば、ずれ量Pごとに、つまり分割数D、Dの切り換えパターン毎に、予め計算しておいた係数を用いた下記式のような計算式を用いてもよい。
【0174】
i<D−1;
=a(P)×W+a(P)×W(i+1) ……(40)
i=D−1;
(D1−1)=a(P)×W(D1−1)+a(P)×W ……(41)
例えば、D=4、D=8の場合には、
=0.9239、a=0.3827
とする。これは、エンジン17で発生する振動波形の基本次数を重視して補間演算を行う場合に相当する。因みに、上記(3)式、(4)式を用いる場合には、基本次数以外の高調波成分にも広く影響する補間演算となる。
【0175】
なお、上記(40)式、(41)式は、適応ディジタルフィルタWのタップ数を、DからDに変更した後に位相調整を行う場合の計算式であり、これとは逆に先に位相調整を行う場合の計算式は下記のようになる。
【0176】
i<D−1;
=a(P)×W+a(P)×W(i+1) ……(42)
i=D−1;
(D2−1)=a(P)×W(D2−1)+a(P)×W ……(43)
また、上記第1の実施の形態等では、分割数Dを周期Tに基づいて設定、つまり周期Tが短くなると分割数Dが少なくなる傾向で設定するようにしているが、例えば、コントローラ25が振動低減制御以外の制御、例えばエンジンの点火時期制御や駆動力制御等を実行するようになっている場合には、それら振動低減制御以外の制御の演算負荷の軽重変化に応じて、分割数Dを設定するようにしてもよい。つまり、振動低減制御よりも優先度の高い制御の演算負荷が大きくなると、振動低減制御用の演算時間を割いてでもその優先度の高い制御に演算時間を割り当てる方が車両全体として望ましい場合があるからである。
【0177】
そして、上記各実施の形態では、エンジン30から車体35に伝達される振動を低減する車両用の能動型振動制御装置に適用した場合について説明したが、かかる発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば騒音を低減する装置であってもよい。かかる能動型騒音制御装置とする場合には、車室内に制御音を発生するための制御音源としてのラウドスピーカと、車室内の残留騒音を検出する残留騒音検出手段としてのマイクロフォンとを設け、上記実施の形態と同様の演算処理を実行すれば、上記実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0178】
さらに、本発明の適用対象は車両に限定されるものではなく、エンジン30以外で発生する周期的な振動や騒音を低減するための能動型振動制御装置,能動型騒音制御装置であっても本発明は適用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態と同等の作用効果を奏することができる。例えば、工作機械からフロアや室内に伝達される振動や騒音を低減する装置等であっても、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す車両の概略側面図である。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を平面視で示した図である。
【図3】図2のA−A矢視断面及びB−B矢視断面図である。
【図4】第1の実施の形態のコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図5】駆動信号の位相変化を説明する波形図である。
【図6】第1の実施の形態の処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態の処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態のコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図9】フーリエ係数と周波数成分との関係を示す図である。
【図10】タップ数2の適応ディジタルフィルタの動作の説明図である。
【図11】適応ディジタルフィルタの特性の説明図である。
【図12】分割数と位相変化との関係を説明する図である。
【図13】位相変化の相殺原理を説明する図である。
【図14】第3の実施の形態の処理の概要を示すフローチャートである。
【図15】第4の実施の形態のコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
17 エンジン(振動源)
18 車体
19 パルス信号生成器(基準信号生成手段)
20 能動型エンジンマウント(制御振動源)
25 コントローラ(制御手段)
25A フィルタ係数更新部(フィルタ係数更新手段)
25B D/A変換器(駆動信号生成手段)
25C A/D変換器
25D 周期測定部
25E 分割数設定部(分割数設定手段)
25F サンプリング周期設定部(サンプリング周期設定手段)
25G 位相特性変化低減処理部(位相特性変化低減処理手段)
52 電磁アクチュエータ
64 荷重センサ(残留振動検出手段)

Claims (8)

  1. 周期的な騒音又は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源又は制御振動源と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動が低減するように前記制御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記騒音又は振動の基本周期を所定の分割数で分割した時間をサンプリング周期として、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタを用いて前記駆動信号を生成するようになっているとともに、前記分割数を所定の条件に従って切り換えるようになっている能動型騒音振動制御装置において、
    前記分割数を切り換える際には、その分割数の切り換えに伴う前記駆動信号の位相特性の変化を低減する位相特性変化低減処理を、前記適応ディジタルフィルタに対して実行し、その位相特性変化低減処理が実行された適応ディジタルフィルタを、前記分割数の切り換え後における前記駆動信号の生成処理に用いるようになっていることを特徴とする能動型騒音振動制御装置。
  2. 前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を要素としたベクトルに対して正方行列による変換を施す処理を含んでいる請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  3. 前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、
    前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、
    前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、
    前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、
    前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数に対して前記位相特性の変化を相殺するような補間演算を行って新たな適応ディジタルフィルタを作成し、その作成された適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなる新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理である請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  4. 前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、
    前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、
    前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、
    前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、
    前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタを作成し、そのディジタルフィルタの各フィルタ係数に対して前記位相特性の変化を相殺するような補間演算を行って新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理である請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  5. 前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、
    前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、
    前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、
    前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、
    前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を要素としたベクトルに対して、切り換え前の前記分割数と同じ次数の正方行列による変換を施し、その変換後のベクトルの各要素を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなる新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理である請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  6. 前記騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、
    前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期のインパルス列を前記基準信号として生成するようになっており、
    前記適応ディジタルフィルタは、前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、
    前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号の最新のインパルスが生成された時点から前記サンプリング周期の間隔で前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を順番に前記駆動信号とする駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、
    前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの各フィルタ係数を適宜補間する又は間引くことにより、切り換え後の前記分割数と同じ個数のフィルタ係数からなるディジタルフィルタを作成し、そのディジタルフィルタの各フィルタ係数を要素としたベクトルに対して、前記切り換え後の分割数と同じ次数の正方行列による変換を施し、その変換後のベクトルの各要素をフィルタ係数として新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理である請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  7. 前記周期的な騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、を備えるとともに、
    前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期の正弦波を前記基準信号として生成するようになっており、
    前記適応ディジタルフィルタは、二つのフィルタ係数からなるディジタルフィルタであり、
    前記制御手段は、前記サンプリング周期を設定するサンプリング周期設定手段と、前記基準信号及び前記適応ディジタルフィルタを畳み込んで前記駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記分割数を設定する分割数設定手段と、を備えており、
    前記位相特性変化低減処理は、前記適応ディジタルフィルタの二つのフィルタ係数を要素としたベクトルに対して、二次の正方行列による変換を施し、その変換後のベクトルの二つの要素をフィルタ係数として新たな前記適応ディジタルフィルタを作成する処理である請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  8. 周期的な騒音又は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源又は制御振動源と、前記周期的な騒音又は振動の発生状態を表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、前記干渉した後の残留騒音又は残留振動が低減するように前記制御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する制御手段と、を備えるとともに、
    前記基準信号生成手段は、前記騒音又は振動の基本周期と同じ周期の正弦波を前記基準信号として生成するようになっており、
    前記制御手段は、前記基準信号及び前記適応ディジタルフィルタを畳み込んで前記駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号及び前記基準信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備えており、
    前記駆動信号生成手段は、前記畳み込みに使用する前記基準信号の構成を前記騒音又は振動の基本周期に応じて切り換えるようになっている能動型騒音振動制御装置において、
    前記畳み込みに使用する前記基準信号の構成を切り換える際には、その切り換えに伴う前記駆動信号の位相特性の変化を低減する位相特性変化低減処理を、前記適応ディジタルフィルタに対して実行し、その位相特性変化低減処理が実行された適応ディジタルフィルタを、前記切り換え後における前記駆動信号の生成処理に用いるようになっていることを特徴とする能動型騒音振動制御装置。
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