JP3562303B2 - 能動型騒音振動制御装置 - Google Patents

能動型騒音振動制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP3562303B2
JP3562303B2 JP08725298A JP8725298A JP3562303B2 JP 3562303 B2 JP3562303 B2 JP 3562303B2 JP 08725298 A JP08725298 A JP 08725298A JP 8725298 A JP8725298 A JP 8725298A JP 3562303 B2 JP3562303 B2 JP 3562303B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drive signal
vibration
signal sequence
sequence
output
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP08725298A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11282504A (ja
Inventor
義晴 中路
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP08725298A priority Critical patent/JP3562303B2/ja
Publication of JPH11282504A publication Critical patent/JPH11282504A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3562303B2 publication Critical patent/JP3562303B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Vibration Prevention Devices (AREA)
  • Soundproofing, Sound Blocking, And Sound Damping (AREA)
  • Feedback Control In General (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、周期的な騒音又は振動に制御音又は制御振動を干渉させることにより騒音レベル又は振動レベルの低減を図る能動型騒音振動制御装置に関し、特に、ディジタル信号列である駆動信号によってラウドスピーカや制御振動発生装置を駆動させることにより制御音や制御振動を発生させるようになっており、しかも、騒音又は振動の一周期内に生成される駆動信号としてのディジタル信号列の要素の個数が例えば騒音又は振動の周期に応じて可変になっているものにおいて、その駆動信号としてのディジタル信号列を構成する要素の個数の変化に伴う制御特性の劣化を軽減できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の技術としては、騒音低減制御に関するものであるが、例えば特開平8−339192号公報に記載された能動型騒音制御装置がある。即ち、かかる従来の装置にあっては、エンジン回転騒音のような周期的な騒音を相殺できる制御音を、逐次更新型の適応アルゴリズムであるLMSアルゴリズムに従って生成するようになっている。そして、その一実施例では、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を、4パルス又は8パルスのいずれかにするようになっていて、そのパルス数の切り換えを、騒音周波数の200Hzを境界として行うようになっている。
【0003】
つまり、騒音の周波数が高い(周期が短い)状況で、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数が多いと、各パルスの出力に同期して実行されるフィルタ係数の更新処理や割り込み処理として実行されるD/A変換処理等に費やせる時間が短くなって、処理を実行するマイクロプロセッサの能力によっては演算が間に合わない場合があるし、逆に、騒音の周波数が低い(周期が長い)状況で、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数が少ないと、同じパルス信号の出力時間が長くなり、実際にラウドスピーカから発せられる制御音の滑らかさが失われて騒音低減効果が低くなってしまう場合がある、という問題点がある。そこで、上記従来の装置にあっては、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を固定ではなく可変にして、上記問題点に対処することとしているのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の装置では、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を騒音周波数に応じて単に切り換える構成であるため、そのパルス数を切り換える際に騒音低減制御の悪化を招くという問題点がある。
【0005】
つまり、上記従来の装置にあっては、各パルス信号の出力間隔(サンプリング・クロック)は、常に騒音の周期Tをパルス数Dで割ったT/Dであり、そのときのパルス数が4、8のいずれであっても、騒音の一周期に同期した信号(タコパルス信号)の立ち上がり検知後直ちに第一番目のパルスの出力を開始し、それからT/D経過後に第二番目のパルスの出力を開始し、それからさらにT/D経過後に第三番目のパルスの出力を開始し…、という具合であったので、それら4パルス時と8パルス時とで同じパルス信号が存在する場合、その同じパルス信号の中間時点(パルス信号の出力を開始してから次のパルス信号の出力を開始するまでの中間の時点)を騒音の一周期に対する位置として表現すると、4パルス時と8パルス時とで異なってしまい、その分位相特性が変化して、適応演算が収束するまでの間は騒音低減制御が悪化してしまうのである。
【0006】
換言すれば、適応処理を行うようになっている上記従来の装置にあっては、騒音の一周期内に出力する制御音のパルス数を切り換える際に、その制御音となるパルス信号列の相対的な精度低下が必ず生じてしまい、適応演算によってパルス信号列の各数値が最適値に収束するまでの間、騒音レベルの悪化を余儀なくされていたのである。
【0007】
このような問題点は、適応処理を実行する形式ではなく、騒音を低減可能なディジタル信号列を予め生成し記憶しておき、そのディジタル信号列の各要素を適宜間引く或いは補間することにより所定個数の駆動信号用数列を生成し、その駆動信号用数列を順次出力するようになっている装置であっても同様に生じるものであるし、騒音ではなく振動を低減するようになっている同様の装置においてもやはり生じるものである。
【0008】
本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、駆動信号として出力されるディジタル信号列の一周期内の個数が変化しても、騒音・振動の低減効果が大きく低下することを防止できる能動型騒音振動制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置は、周期的な騒音又は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源又は制御振動源と、前記制御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記騒音又は振動の一周期内に前記駆動信号として出力される駆動信号用数列を生成する駆動信号用数列生成手段と、前記駆動信号用数列の各要素を前記騒音又は振動の一周期内に順次出力する駆動信号出力手段と、を備えるとともに、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数は可変であり、前記駆動信号出力手段は、前記駆動信号用数列の一の要素の出力を開始してからその次の要素の出力を開始するまでの中間の時点を前記騒音又は振動の一周期に対する位置として表現した場合、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数を変更しても同一の要素については前記位置が変化しないように、前記駆動信号用数列の各要素を出力するようにした。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記制御音又は制御振動を所定時間間隔で離散値化した複数個の要素からなる基本数列を記憶する記憶手段を備え、前記駆動信号用数列生成手段は、前記基本数列に基づいて前記駆動信号用数列を生成するようにした。
【0011】
そして、請求項3に係る発明は、上記請求項2に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記基本数列を構成する要素の個数をDとした場合に、前記駆動信号用数列生成手段は、正の整数kを用いて、D=D/kが成り立つ場合には、前記基本数列の各要素を第一番目からk−1個おきに抜き出して前記駆動信号用数列を生成するようにした。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明は、上記請求項2又は請求項3に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記基本数列を構成する要素の個数をDとした場合に、前記駆動信号用数列生成手段は、正の整数kを用いて、D=D/kが成り立たない場合には、前記基本数列の要素を用いた補間演算を行って前記駆動信号用数列を生成するようにした。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記駆動信号用数列生成手段は、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数が変化する場合、その変化前の要素に基づいて変化後の要素を生成するようにした。
【0014】
そして、請求項6に係る発明は、上記請求項2〜請求項5に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の周期をT、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をDとした場合に、前記駆動信号出力手段は、前記駆動信号用数列の第一番目の要素はT/D/2の時間出力し、前記駆動信号用数列の第二番目以降の要素はT/Dの周期で出力するようにした。
【0015】
これに対し、請求項7に係る発明は、上記請求項2〜請求項5に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の周期をT、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数をDとした場合に、前記駆動信号出力手段は、D=Dの場合には、前記駆動信号用数列の各要素をT/Dの周期で出力し、D<Dの場合には、最初に前記駆動信号用数列の第一番目の要素をT(D+D)/(2DD)の時間出力し、その後は前記駆動信号用数列の第二番目以降の要素をT/Dの周期で出力するようにした。
【0016】
さらに、請求項8に係る発明は、上記請求項2〜請求項5に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記騒音又は振動の周期をT、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数をDとした場合に、前記駆動信号出力手段は、D=Dの場合には、前記駆動信号用数列の各要素をT/Dの周期で出力し、D>Dの場合には、最初に前記駆動信号用数列の第D番目の要素をT(D−D)/(2DD)の時間出力し、その後は前記駆動信号用数列の第一番目以降の要素をT/Dの周期で出力するようにした。
【0017】
また、請求項9に係る発明は、上記請求項1〜請求項8に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記干渉後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号に基づき且つ適応アルゴリズムに従って前記駆動信号用数列の要素を更新する更新手段と、を備えた。
【0018】
そして、請求項10に係る発明は、上記請求項1〜請求項4又は請求項6〜請求項8に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記干渉後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号に基づき且つ適応アルゴリズムに従って前記基本数列の要素を更新する更新手段と、を備えた。
【0019】
さらに、請求項11に係る発明は、上記請求項1〜請求項10に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、前記駆動信号用数列の各要素の大きさを調整する駆動信号ゲイン調整手段を備えた。
【0020】
ここで、請求項1に係る発明にあっては、駆動信号出力手段が、例えば請求項6〜8に係る発明のように騒音又は振動の周期Tや駆動信号用数列を構成する要素の個数D、或いは個数Dの任意の基準となる個数Dに応じて駆動信号用数列の各要素の出力間隔を調整することにより、個数Dが変更しても、同一の要素については、その中間時点の騒音又は振動の一周期に対する位置(中間時点の対周期位置)が変化しないようにしているから、個数Dの変更に伴って位相特性が変化し制御音源又は制御振動源から発せられる実際の制御音又は制御振動の精度の悪化代を、大幅に小さくできるのである。
【0021】
これを詳述すると、例えば、騒音又は振動の一周期内に出力される駆動信号用数列が、余弦関数で表されるとする、つまり、個数Dを正の整数として、駆動信号用数列の各要素を仮にy(i)(i=0,1,2,…,D−1)とし、その要素y(i)が下記の(1)式で表現されるものとする。
【0022】
y(i)=cos(2iπ/D) ……(1)
この駆動信号用数列の各要素y(i)を、その中間時点が2iπ/ω/Dとなるように出力した場合、つまり角周波数がωの駆動信号用数列となるように出力した場合の、角周波数ωにおける周波数応答関数をFとする。D=24とした場合の駆動信号用数列の要素y(i)の出力の様子を示すと、図1(a)のようになる。そして、周波数応答関数Fは下記の(2)式に従って求められる。
【0023】
【数1】
Figure 0003562303
【0024】
……(2)
式の展開は省略し結果のみを示すと、周波数応答関数Fは、下記の(3)式のようになる。
【0025】
=(D/ω)sin(π/D) ……(3)
このように、周波数応答関数Fは個数Dに関わらず実部のみとなるから、位相特性が個数Dによっては変化しないことが分かる。
【0026】
また、ある角度x(rad) が十分小さいとき、その正弦関数sin(x)の値はxで近似することができる。つまり、個数Dが比較的大きいとき、上記(3)式の右辺の「D・sin(π/D)」は略πとなり、周波数応答関数Fのゲイン特性は略一定である。例えば、D=24、12、8とした場合の周波数応答関数Fの値はそれぞれ 0.997π/ω、 0.989π/ω、 0.974π/ωである。
【0027】
次に、同じ駆動信号用数列の要素y(i)を、時刻0から次々と出力した場合を考える。この場合に、D=24としたときの駆動信号用数列の要素y(i)の出力の様子を示すと図1(b)のようになる。このときの周波数応答関数をFとすると、その周波数応答関数Fは下記の(4)式に従って求められる。
【0028】
【数2】
Figure 0003562303
【0029】
……(4)
式の展開は省略し結果のみを示すと、周波数応答関数Fは、下記の(5)式のようになる。
【0030】
=(D/2ω)sin(2π/D)+j(D/2ω){cos(2π/D)−1}……(5)
なお、上記(5)式中のjは虚数である。即ち、周波数応答関数Fは複素数となり、位相特性が個数Dによって変化することが判る。例えばD=24、12、8のときの周波数応答関数Fの位相特性は、−π/24(rad) 、−π/12(rad) 、−π/8(rad) である。
【0031】
ゲイン特性については、同じ駆動信号用数列を異なるタイミングで出力しているだけなので、周波数応答関数F及びFで同じである。
このように、駆動信号用数列の要素y(i)は同じであっても、その出力タイミングを異ならせるだけで、位相特性が大きく変わってしまうのであり、これが騒音又は振動の低減効果に影響を与えるのである。よって、請求項1に係る発明であれば、その位相特性の変化を招かないで済むから、それだけ良好な騒音又は振動低減制御が可能となるのである。
【0032】
請求項2〜5に係る発明は、駆動信号用数列を生成する駆動信号用数列生成手段の具体的な構成例を示すものであり、例えば請求項2に係る発明では、記憶手段に記憶されている基本数列に基づいて、駆動信号用数列を生成する。そして、基本数列を構成する要素の個数Dと、駆動信号用数列を構成する要素の個数Dとの関係によって、適宜駆動信号用数列を生成することが可能である。
【0033】
例えば、D=Dの場合には、基本数列をそのまま駆動信号用数列とすればよい。
これに対し、D=D/kが成り立つ場合、つまり個数Dが個数Dの約数である場合には、請求項3に係る発明のように、基本数列の各要素を第一番目からk−1個おきに抜き出すだけで駆動信号用数列を生成することができる。
【0034】
しかし、D=D/kが成り立たない場合、つまり個数Dが個数Dの約数でない場合、若しくは個数Dが個数Dよりも大きい場合には、請求項3に係る発明のように基本数列を間引くだけでは駆動信号用数列を生成することはできないから、請求項4に係る発明のように補間演算を行って駆動信号用数列を生成することが望ましい。
【0035】
むしろ、常に請求項3に係る発明で十分なように、個数Dや個数D、並びに個数Dの切り換え回数Mを選定することが望ましい。例えば、基本数列を構成する要素の個数Dを、
=2
とする、或いは、個数Dの最小値が極端に小さくならないようにするために、3以上の整数Nを用いて、基本数列を構成する要素の個数Dを、
=N・2
とすれば、個数DをM段階に変化させても、いずれの個数Dの場合にも請求項3に係る発明のように基本数列を適宜間引くだけで駆動信号用数列を生成することができるから、その駆動信号用数列を生成する際の演算負荷を大幅に軽減できるのである。
【0036】
請求項6〜8に係る発明は、駆動信号出力手段の具体的な構成例を示すものであり、例えば請求項6に係る発明にあっては、駆動信号用数列の第一番目の要素の出力間隔を、本来の出力周期(T/D)の半分(T/D/2)の時間とし、第二番目以降の要素の出力間隔を、本来の出力周期(T/D)とすることにより、個数Dが変化しても、同一の要素については中間時点の位置が変化しないようにしている。
【0037】
また、請求項7又は8に係る発明では、個数Dと個数Dとの大小関係に基づいて場合分けして出力周期を適宜選定することにより、個数Dが変化しても、同一の要素については中間時点の位置が変化しないようにしている。
【0038】
そして、請求項9又は10に係る発明は、適応アルゴリズムを利用することにより、駆動信号用数列の精度がより高くなるようにしている。つまり、請求項9に係る発明では駆動信号用数列の要素を、請求項10に係る発明では基本数列の要素を、それぞれ適応アルゴリズムに従って更新するようになっているから、駆動信号として出力される駆動信号用数列の各要素の精度が確保される。
【0039】
さらに、請求項11に係る発明では、駆動信号用数列の各要素の大きさを調整する駆動信号ゲイン調整手段を備えているが、これは、上記周波数応答関数Fのゲイン特性が多少ではあるが個数Dの変更に伴って変化することに対処するためである。例えば、上記のように周波数応答関数Fの値が 0.997π/ω、 0.989π/ω、 0.974π/ωとなるのであれば、それら各値の逆数を駆動信号用数列の各要素に乗じて各要素の大きさを調整してやれば、結果としてゲイン特性が一定になったことと等価であるから、さらに駆動信号用数列の精度が向上したことになり、それだけ騒音又は振動の低減効果が向上するようになる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、駆動信号出力手段によって、駆動信号用数列の要素の中間時点を騒音又は振動の一周期に対する位置として表現した場合、駆動信号用数列を構成する要素の個数を変更しても同一の要素については前記位置が変化しないように駆動信号用数列の各要素を出力するようにしたため、騒音又は振動の一周期内に出力する駆動信号用数列の個数を変更しても、それに伴って位相特性が変化し騒音又は振動の低減効果が大幅に低下することを防止できる、という効果がある。
【0041】
特に、請求項9又は請求項10に係る発明のように、適応アルゴリズムに従って更新演算を行うようになっている装置においては、騒音又は振動の一周期内に出力する駆動信号用数列の個数を変更した直後に、更新演算が収束するまでの間騒音又は振動の低減効果が低下することを回避でき、それだけ良好な騒音又は振動の低減制御を実行できるという効果がある。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2乃至図6は本発明の第1の実施の形態を示す図であって、図2は本発明に係る能動型騒音振動制御装置の一実施形態である能動型振動制御装置を適用した車両の概略側面図である。
【0043】
先ず、構成を説明すると、エンジン30が駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等から構成される車体35に支持されている。なお、実際には、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジンマウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジンマウントも介在している。受動的なエンジンマウントとしては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常のエンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウントインシュレータ等が適用できる。
【0044】
一方、能動型エンジンマウント1は、例えば、図3に示すように構成されている。即ち、この実施の形態における能動型エンジンマウント1は、エンジン30への取付け用のボルト2aを上部に一体に備え且つ内部が空洞で下部が開口したキャップ2を有し、このキャップ2の下部外面には、軸が上下方向を向く内筒3の上端部がかしめ止めされている。
【0045】
内筒3は、下端側の方が縮径した形状となっていて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、ここに円形の開口部3aが形成されている。そして、内筒3の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上下に二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止め部分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設されている。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の側面に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0046】
さらに、内筒3の内側にはオリフィス構成体5が配設され、このオリフィス構成体5は、内筒3の内部空間に整合して略円柱形に形成されていて、その上面には円形の凹部5aが形成されている。そして、その凹部5aと底面の開口部3aに対向する部分との間が、オリフィス5bを介して連通するようになっている。オリフィス5bは、例えば、オリフィス構成体5の外周面に沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端部を凹部5aに連通させる流路と、その溝の他端部を開口部3aに連通させる流路とで構成される。
【0047】
一方、内筒3の外周面には、内周面側が若干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面は、上端側が拡径した円筒部材としての外筒7の内周面上部に加硫接着されている。
【0048】
そして、外筒7の下端部は上面が開口した円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止めされていて、そのアクチュエータケース8の下端面からは、車体35側への取付け用の取付けボルト9が突出している。取付けボルト9は、その頭部9aが、アクチュエータケース8の内底面に張り付いた状態で配設された平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されている。
【0049】
さらに、アクチュエータケース8の内側には、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10Aの中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲された部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石10Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設されている。
【0050】
また、アクチュエータケース8の上端部はフランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚みに形成されている。
【0051】
さらに、上記かしめ止め部分には、フランジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14aとが支持されている。具体的には、アクチュエータケース8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14aと、板ばね11とをこの順序で重ね合わせるとともに、その重なり合った全体を外筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0052】
力伝達部材14は、磁路部材12を包囲する短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的には、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合されている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定されている。
【0053】
ここで、本実施の形態では、支持弾性体6の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5aによって画成された部分に副流体室16が形成されていて、これら流体室15及び副流体室16間が、オリフィス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通している。なお、これら流体室15,副流体室16及びオリフィス5b内には、エチレングリコール等の流体が封入されている。
【0054】
かかるオリフィス5bの流路形状等で決まる流体マウントとしての特性は、走行中のエンジンシェイク発生時、つまり5〜15Hzで能動型エンジンマウント1が加振された場合に高動ばね定数、高減衰力を示すように調整されている。
【0055】
そして、電磁アクチュエータ10の励磁コイル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを通じて供給される電流である駆動信号Yに応じて所定の電磁力を発生するようになっている。コントローラ25は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ等を含んで構成され、エンジンシェイクよりも高周波の振動であるアイドル振動やこもり音振動・加速時振動が車体35に入力されている場合には、その振動を低減できる能動的な支持力が能動型エンジンマウント1に発生するように、能動型エンジンマウント1に対して駆動信号Yを出力するようになっている。
【0056】
ここで、アイドル振動やこもり音振動は、例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期して駆動信号Yを生成し出力すれば、車体側低減が可能となる。そこで、本実施の形態では、燃焼タイミングに同期するように、エンジン30のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号Xとして出力するパルス信号生成器26を設けていて、その基準信号Xが、エンジン30における振動の発生状態を表す信号としてコントローラ25に供給されるようになっている。
【0057】
なお、図3では、電磁アクチュエータ10のヨーク10Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力を検出する荷重センサ22を配設し、その荷重センサ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信号としてコントローラ25に供給可能にしているが、本実施の形態では、コントローラ25内で残留振動信号を用いた制御は実行されないため、荷重センサ22及びハーネス23bは省略してもよい。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0058】
そして、コントローラ25は、実際にはマイクロコンピュータやインタフェース回路等で構成されており、種々の処理プログラムを所定の割り込み間隔で実質的に並列に実行するようになっているが、本実施の形態に必要な部分の機能構成をブロック図で表すと、図4に示すようになる。
【0059】
即ち、本実施の形態のコントローラ25は、基準信号Xが供給される周期演算部40を有していて、この周期演算部40は、最新及びその直前の二つの基準信号Xの入力間隔に基づいて、エンジン30で発生している周期的な振動としてのアイドル振動やこもり音振動の周期Tを演算するようになっていて、その演算された周期Tは、個数決定部41に供給されるようになっている。個数決定部41は、周期Tに基づいて、振動の一周期内に生成する駆動信号Yの個数Dを決定するようになっていて、具体的には、周期Tの長さを所定のしきい値に基づいて三段階(長、中、短)に分類し、周期Tが長い場合にはD=24、周期Tが中程度の場合にはD=12、周期Tが短い場合にはD=8とするようになっている。
【0060】
そして、コントローラ25は、個数Dの最大値である24に対応して、図5に示すような24(=D)個の要素y(i)(i=0、1、2、…、23)からなる基本数列を記憶した基本数列記憶部42を有している。基本数列は、後述するように最終的には駆動信号Yとして出力される駆動信号用数列の元となるものであって、エンジン30から能動型エンジンマウント1を介して車体35側に伝搬される周期的な振動と干渉しこれを低減できる理想的な制御振動を発生させられる駆動信号Yを、振動の一周期分だけディジタル信号に変換して生成されるものであり、予め行ったシミュレーション等の結果に基づいて生成され、コントローラ25内のROM等の記憶装置内に記憶されているものである。
【0061】
また、基本数列を構成する各要素y(i)の全てが常に駆動信号Yになるのではなく、そのうちのD個の要素だけが駆動信号用数列として選択されるようになっている。つまり、コントローラ25は駆動信号用数列生成部43を有し、その駆動信号用数列生成部43には、個数決定部41で決定された個数Dが供給されるようになっている。
【0062】
駆動信号用数列生成部43は、個数D(=24、12又は8)に基づいて、基本数列の各要素y(i)からD個の要素を選択し、これを駆動信号用数列とするようになっている。具体的には、D=24の場合には、D=Dであるから、基本数列をそのまま駆動信号用数列とする。つまり、この場合には、駆動信号用数列は、
y(0)、y(1)、y(2)、…、y(22)、y(23)
となる。
【0063】
これに対し、D=12の場合には、k=D/D=2であるから、k−1(=1)個おきに基本数列の各要素y(i)を選択し、これを駆動信号用数列にするようになっている。つまり、この場合には、駆動信号用数列は、
y(0)、y(2)、y(4)、…、y(20)、y(22)
となる。
【0064】
そして、D=8の場合には、k=D/D=3であるから、k−1(=2)個おきに基本数列の各要素y(i)を選択し、これを駆動信号用数列にするようになっている。つまり、この場合には、駆動信号用数列は、
y(0)、y(3)、y(6)、…、y(18)、y(21)
となる。
【0065】
駆動信号用数列生成部43で生成された駆動信号用数列は、駆動信号出力部44を介して能動型エンジンマウント1の電磁アクチュエータ10に駆動信号Yとして出力されるようになっている。駆動信号出力部44には、基準信号Xと、個数Dと、周期Tとが供給されるようになっていて、駆動信出力部35は、周期Tを個数Dで割る(T/D)を演算し、これを基本的な出力周期として記憶するとともに、その基本的な出力周期をさらに半分の時間(T/D/2)を、第一番目の駆動信号Yのみに対応した出力周期として記憶するようになっている。
【0066】
そして、駆動信号出力部44は、基準信号Xの立ち上がりに同期して、第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))の出力を開始し、その出力を開始してから(T/D/2)の時間が経過したら第二番目の駆動信号Y(1)(=y(k))の出力を開始し、それ以降は出力周期(T/D)の間隔で順次駆動信号Y(=y(2k)、y(3k)、…、y(D−k))を出力するようになっている。
【0067】
さらに、駆動信号出力部44は、駆動信号用数列の最後の要素y(D−k)を駆動信号Y(D/k−1)として出力したら、その出力を開始してから(T/D)だけ経過した後に、再び第一番目の駆動信号Y(0)を出力し、その駆動信号Y(0)の出力は次の基準信号Xが入力されるまで継続されるようになっている。この場合、周期演算部40が演算する周期Tは、厳密には現時点の一周期前の振動の周期であるから、その駆動信号Y(0)の出力を開始してから次の基準信号Xが入力されるまでの時間は、周期Tが変化している際(エンジン30の回転数が変化している際)には、厳密には(T/D/2)に一致しない場合もある。しかし、エンジン回転数が変化している状況であっても、連続する二つの周期Tの差は極僅かであるから、上記駆動信号Y(0)の出力を開始してから次の基準信号Xが入力されるまでの時間は、略(T/D/2)となる。
【0068】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
即ち、エンジンシェイク発生時には、オリフィス5aの流路形状等を適宜選定している結果、この能動型エンジンマウント1は高動ばね定数,高減衰力の支持装置として機能するため、エンジン30側で発生したエンジンシェイクが能動型エンジンマウント1によって減衰され、車体35側の振動レベルが低減される。なお、エンジンシェイクに対しては、特に可動板12を積極的に変位させる必要はない。
【0069】
一方、オリフィス5a内の流体がスティック状態となり流体室15及び副流体室16間での流体の移動が不可能になるアイドル振動周波数以上の周波数の振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信号Yを出力し、能動型エンジンマウント1に振動を低減し得る能動的な支持力を発生させる。
【0070】
つまり、駆動信号Yが出力されると、励磁コイル10Bに駆動信号Yに応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、既に永久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているから、その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10Cの磁力を強める又は弱めるように作用すると考えることができる。つまり、励磁コイル10Bに駆動信号Yが供給されていない状態では、磁路部材12は、板ばね11による支持力と、永久磁石10Cの磁力との釣り合った中立の位置に変位することになる。そして、この中立の状態で励磁コイル10Bに駆動信号Yが供給されると、その駆動信号Yによって励磁コイル10Bに発生する磁力が永久磁石10Cの磁力と逆方向であれば、磁路部材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが増大する方向に変位する。逆に、励磁コイル10Bに発生する磁力が永久磁石10Cの磁力と同じ方向であれば、磁路部材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが減少する方向に変位する。
【0071】
このように磁路部材12は正逆両方向に変位可能であり、磁路部材12が変位すれば主流体室15の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6の拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウント1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのである。
【0072】
そして、本実施の形態にあっては、基準信号Xの一周期内に出力する駆動信号Yの個数Dを上記のように三段階に切り換えるようにしているが、コントローラ25内の駆動信号出力部44において駆動信号Yの出力周期を適宜設定しているため、その個数Dを切り換えても振動低減効果が大幅に低下するようなことが防止できるのである。
【0073】
図6(a)〜(c)は、基準信号Xの入力状況と駆動信号Yの出力状況とを示す波形図であって、同(a)はD=24(周期Tが長)の場合、同(b)はD=12(周期Tが中)の場合、同(c)はD=8(周期Tが短)の場合をそれぞれ示している。なお、それぞれの場合を比較できるように、周期Tを図6(a)〜(c)のいずれにおいても同じ長さで表しているが、実際には、図6(a)→図6(b)→図6(c)という順で周期Tは徐々に短くなっている。
【0074】
即ち、コントローラ25内では、先ず基準信号Xの入力間隔に基づいて周期演算部40が周期Tを演算し、その周期Tに基づいて個数決定部41が個数Dを決定する。そして、駆動信号用数列生成部43が、個数Dに基づいて基本数列記憶部42に記憶されている基本数列の各要素y(i)を適宜選択することにより、駆動信号用数列y(0)、y(k)、y(2k)、…、y(D−k)を生成する。この駆動信号用数列y(0)、y(k)、y(2k)、…、y(D−k)が、駆動信号Y(0)、Y(1)、Y(2)、…、Y(D−1)となる。
【0075】
そして、コントローラ25の駆動信号出力部44が、基準信号Xの立ち上がりに同期して、第一番目の駆動信号Y(0)を出力するが、その出力間隔は、本来の周期(T/D)ではなく、その半分の時間(T/D/2)であり、第二番目以降の駆動信号Y(1)、Y(2)、…、Y(D−1)の出力周期は、本来の周期(T/D)となる。さらに、駆動信号Y(D−1)に続いて、駆動信号Y(0)が、次の基準信号Xが入力されるまでの間出力されるが、次の基準信号Xが入力されると、再び駆動信号出力部44は、第一番目の駆動信号Y(0)を出力するが、その出力は次の基準信号Xが入力されるまでの間であり、その時間は略(T/D/2)である。よって、図6(a)〜(c)のそれぞれに示すように、連続的には、駆動信号Y(D−1)に続いて駆動信号Y(0)が本来の周期(T/D)に略等しい時間出力される。
【0076】
すると、D=24、12、8のいずれの場合にも駆動信号用数列に含まれる基本数列の要素y(0)に着目し、その要素y(0)の中間時点を基準信号Xの一周期の位置として表現してみると、いずれの場合にも基準信号Xの立ち上がり時点にあることが判る。また、D=12の場合の駆動信号用数列の全ての要素は、D=24の場合の駆動信号用数列に含まれるが、そのD=12の場合の駆動信号用数列の全ての要素y(0)、y(2)、…、y(22)の中間時点を基準信号Xの一周期の位置として表現してみても、D=24の場合の駆動信号用数列の一つおきの要素y(0)、y(2)、…、y(22)の中間時点を基準信号Xの一周期の位置として表現したものに一致する。
【0077】
同様に、D=8の場合の駆動信号用数列の全ての要素は、D=24の場合の駆動信号用数列に含まれるが、そのD=8の場合の駆動信号用数列の全ての要素y(0)、y(3)、…、y(21)の中間時点を基準信号Xの一周期の位置として表現してみても、D=24の場合の駆動信号用数列の二つおきの要素y(0)、y(3)、…、y(21)の中間時点を基準信号Xの一周期の位置として表現したものに一致する。
【0078】
このため、上記(1)〜(5)式を伴って説明したように、基準信号Xの一周期内に出力する駆動信号Yの個数Dを変化させても、位相特性の変化を招かずに済むから、それだけ良好な振動低減制御が実行されるのである。
【0079】
本実施の形態による効果を具体的な数値で示す。即ち、余弦関数cos(x)の自乗を、0から2π(rad) まで積分したものと、cos(x)に大きさと位相がわずかに異なるA・cos(x+φ)を重ねあわせたもの、
cos(x)−A・cos(x+φ) ……(6)
の自乗を同じく0から2π(rad) まで積分したものを比べる。前者の積分結果はπである。後者の積分結果はπ(1−2A・cos(φ)+A)となる。これを誤差積分値と称する。
【0080】
本実施の形態で、D=24のときに誤差積分値が0になるように大きさを調整したとすると、D=12のときには、
A=0.989/0.997=0.991・・・φ=0であるから、誤差積分値は0.0000732πとなる。D=8のときには、
A=0.989/0.974=0.977・・・φ=0であるから、誤差積分値は0.000516πとなる。
【0081】
これに対し、駆動信号出力部44において基準信号Xの立ち上がり検出後、第一番目の駆動信号Yから全て周期(T/D)で出力した場合、同様にD=24で誤差積分値が0になるようにしたとすると、D=12の場合には、
A=0.991・・・
φ=π/24
となり、誤差積分値は0.0170πとなる。D=8の場合には、
A=0.977・・・
φ=π/12
となり、誤差積分値は0.0671πとなる。
【0082】
誤差積分値を比較すれば、本実施の形態の方が良好な振動低減制御が実行できること明らかである。
ここで、本実施の形態では、能動型エンジンマウント1が制御振動源に対応し、コントローラ25が制御手段に対応し、駆動信号用数列生成部43が駆動信号用数列生成手段に対応し、駆動信号出力部44が駆動信号出力手段に対応し、基本数列記憶部42が記憶手段に対応する。
【0083】
図7は本発明の第2の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態の図4と同様にコントローラ25の機能構成を示すブロック図である。なお、全体的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略するとともに、上記第1の実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0084】
即ち、本実施の形態にあっては、駆動信号用数列生成部43と駆動信号出力部44との間にゲイン調整部45を設けていて、駆動信号用数列生成部43から駆動信号出力部44に供給される駆動信号用数列の各要素y(i)の大きさを任意の率で調整するようになっている。そして、ゲイン調整部45には、個数決定部41で決定された個数Dが供給されるようになっていて、ゲイン調整部45はその個数Dに基づいて増幅率を決定するようになっている。
【0085】
そして、上記第1の実施の形態の最後に説明したように、D=24のときに誤差積分値を0にしても、駆動信号Yの出力間隔を上述のようにすればD=12、8となっても位相特性には影響がないのであるが、ゲイン特性には、D=12のときには、A=0.989/0.997という誤差があり、D=8のときには、A=0.989/0.974という誤差がある。
【0086】
そこで、本実施の形態では、ゲイン特性の誤差が個数Dに応じて決まることから、その誤差の逆数(1/A)を駆動信号用数列の各要素y(i)に乗じることにより、さらに高精度の駆動信号Yを出力できて良好な振動低減制御が実行できるようにしているのである。
【0087】
ここで、本実施の形態では、ゲイン調整部45によってゲイン調整手段が構成される。
図8は本発明の第3の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態の図6と同様に個数D=24、12、8のそれぞれの場合における駆動信号Yの出力状態を示す波形図である。なお、全体的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0088】
即ち、本実施の形態にあっては、コントローラ25の駆動信号出力部44で実行される駆動信号Yの出力周期が上記第1の実施の形態と異なっている。具体的には、本実施の形態では、駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数Dを、基本数列の要素の個数D(=24)に設定しており、駆動信号出力部44は、D=24(=D)の場合には、図8(a)に示すように、基準信号Xの立ち上がり直後に第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期(T/D)の間隔で第二番目、第三番目、…の駆動信号Yを出力するようになっている。
【0089】
これに対し、D=12の場合には、基準信号Xの立ち上がり直後に第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))の出力を開始し、その出力を開始してからT/16の時間経過した後に第二番目の駆動信号Y(=y(2))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期(T/D)の間隔で第三番目、第四番目、…の駆動信号Yを出力するようになっている。
【0090】
また、D=8の場合には、基準信号Xの立ち上がり直後に第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))の出力を開始し、その出力を開始してからT/12の時間経過した後に第二番目の駆動信号Y(=y(3))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期(T/D)の間隔で第三番目、第四番目、…の駆動信号Yを出力するようになっている。
【0091】
つまり、D=Dの場合には、特に出力周期を調整することなく、全ての駆動信号Yを本来の出力周期(T/D)で出力するようになっている。そして、D<Dの場合には、第一番目の駆動信号YはT(D+D)/(2DD)の時間出力し、第二番目以降の駆動信号Yは本来の出力周期(T/D)で出力するようになっている。
【0092】
このような制御を実行しても、上記第1の実施の形態と同様に、各駆動信号Yの中間時点を基準信号Xの一周期に対する位置として表現した場合、その位置は個数Dが変化しても同一の駆動信号Yに関しては同一の位置になる。よって、本実施の形態にあっても、上記第1の実施の形態と同様の作用効果が得られるのである。
【0093】
図9は本発明の第4の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態の図6と同様に個数D=24、12、8のそれぞれの場合における駆動信号Yの出力状態を示す波形図である。なお、全体的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0094】
即ち、本実施の形態にあっては、コントローラ25の基本数列記憶部42に記憶されている基本数列を、要素の個数Dが12個の数列としていて、駆動信号用数列生成手段は、D=12の場合にはその基本数列の要素y(i)(i=0、1、2、…11)の全てをそのまま駆動信号用数列の要素とするが、D=24又は8の場合には、基本数列の各要素y(i)に基づいて適宜補間演算を行って駆動信号用数列の各要素を生成するようになっている。
【0095】
具体的には、D=24の場合であれば、第一番目の駆動信号Y(0)には基本数列の第一番目の要素y(0)を代入し、第二番目の駆動信号Y(1)には第一番の要素y(0)と第二番目の要素y(1)とを用いた補間演算により得られる値を代入し、第三番目の駆動信号Y(2)には第二番目の要素y(1)を代入し、…という具合に、基本数列の要素y(i)を駆動信号Y(i/2)に代入する処理と、二つの要素y(i)及びy(i+1)(但し、i+1=Dの場合には、二つ目の要素y(i+1)はy(0)とする。)を用いた補間演算により駆動信号Y(2i+1)を生成する処理と、を交互に行うことにより、駆動信号Yを生成するようになっている。
【0096】
なお、要素y(i)及びy(i+1)を用いた補間演算は、それら各要素の単純平均を求める演算でもよいが、本実施の形態のように駆動信号Yが単一周期的の正弦波である場合には要素y(i)及びy(i+1)の和に0.5/cos(π/12)を乗じるようにすれば、より正確な補間演算が行える。
【0097】
また、D=8の場合には、第一番目の駆動信号Y(0)には基本数列の第一番目の要素y(0)を代入し、第二番目の駆動信号Y(1)には第二番の要素y(1)と第三番目の要素y(2)とを用いた補間演算により得られる値を代入し、第三番目の駆動信号Y(2)には第四番目の要素y(3)を代入し、…という具合に、基本数列の要素y(i)を駆動信号Y(2i/3)に代入する処理と、二つの要素y(i)(i=1、4、7、10)及びy(i+1)を用いた補間演算により駆動信号Y((2i+1)/3)を生成する処理と、を交互に行うことにより、駆動信号Yを生成するようになっている。補間演算については、D=24の場合と同様に、単純平均でもよいし、より正確な補間演算でもよい。
【0098】
そして、本実施の形態にあっては、コントローラ25の駆動信号出力部44で実行される駆動信号Yの出力周期も上記第1の実施の形態と異なっている。
具体的には、本実施の形態では、駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数Dを、基本数列の要素の個数D(=8)に設定しており、駆動信号出力部44は、D=8(=D)の場合には、図9(b)に示すように、基準信号Xの立ち上がり直後に第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期(T/D)の間隔で第二番目、第三番目、…の駆動信号Yを出力するようになっている。
【0099】
これに対し、D=24の場合には、基準信号Xの立ち上がり直後に第二四番目の駆動信号Y(23)(=y(11/0);但し、y(m/n )は、基本数列の二つの要素y(m)とy(n)とを用いた補間演算により得られる値であることを表している。)の出力を開始し、その出力を開始してからT/48の時間経過した後に第一番目の駆動信号Y(=y(0))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期(T/D)の間隔で第二番目、第三番目、…の駆動信号Yを出力するようになっている。
【0100】
また、D=8の場合には、基準信号Xの立ち上がり直後に第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))の出力を開始し、その出力を開始してから5T/48の時間経過した後に第二番目の駆動信号Y(=y(1/2 ))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期(T/D)の間隔で第三番目、第四番目、…の駆動信号Yを出力するようになっている。
【0101】
つまり、D=Dの場合には、特に出力周期を調整することなく、全ての駆動信号Yを本来の出力周期(T/D)で出力するようになっている。そして、D>Dの場合には、基準信号Xの立ち上がりに同期してD番目の駆動信号Y(D−1)をT(D−D)/(2DD)の時間出力し、その後、第一番目以降の駆動信号Y(0)、(1)、…を本来の出力周期(T/D)で出力するようになっている。なお、D<Dの場合には、上記第3の実施の形態と同様に、第一番目の駆動信号YはT(D+D)/(2DD)の時間出力し、第二番目以降の駆動信号Yは本来の出力周期(T/D)で出力するようになっている。
【0102】
このような制御を実行しても、上記第1の実施の形態と同様に、各駆動信号Yの中間時点を基準信号Xの一周期に対する位置として表現した場合、その位置は個数Dが変化しても同一の駆動信号Yに関しては同一の位置になる。よって、本実施の形態にあっても、上記第1の実施の形態と同様の作用効果が得られるのである。
【0103】
図10は本発明の第5の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態の図6と同様に個数D=24、12、8のそれぞれの場合における駆動信号Yの出力状態を示す波形図である。なお、全体的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0104】
即ち、本実施の形態は、基本的には上記第1の実施の形態と同様であるが、異なるのは、基本数列に基づいてD=12及び8の場合の駆動信号用数列を生成する際に、上記第1の実施の形態では基本数列の第一番目の要素y(0)を必ず選択していたのに対し、本実施の形態では第二番目の要素y(1)を選択し、第一番目の要素y(0)は選択しないようになっている点である。
【0105】
つまり、D=12の場合であれば、駆動信号用数列は、上記第1の実施の形態では、y(0)、y(2)、y(4)、…、y(22)であったが、本実施の形態では、y(1)、y(3)、y(5)、…、y(23)となる。同様に、D=8の場合、駆動信号用数列は、上記第1の実施の形態では、y(0)、y(3)、y(6)、…、y(21)であったが、本実施の形態では、y(1)、y(4)、y(7)、…、y(22)となる。
【0106】
そして、駆動信号出力部44は、駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数Dと現時点の個数Dとに基づき、D=D(=24)の場合には、図10(a)に示すように、基準信号Xの立ち上がりに同期して第一番目の駆動信号Y(0)(=y(0))を出力し、それから本来の出力周期T/D経過した後に第二番目の駆動信号Y(1)を出力し、それ以降も出力周期T/Dの間隔で第三番目以降の駆動信号Y(2)、Y(3)、…、Y(23)を出力する。
【0107】
これに対し、D<Dの場合には、駆動信号出力部44は、例えば図10(b)にD=12の場合を示すように、基準信号Xの立ち上がりに同期して、先ずは最後の駆動信号Y(D−1)(=Y(11)=y(23))を出力し、その出力を開始してからT(3D−D)/(2DD)時間経過後に、第一番目の駆動信号Y(0)(=y(1))の出力を開始し、それ以降は本来の出力周期T/Dの間隔で第二番目以降の駆動信号Y(1)、Y(2)、…を出力する。
【0108】
なお、本実施の形態では、D=8において
T(3D−D)/(2DD)=0
となるから、その場合には、図10(c)に示すように、基準信号Xの立ち上がりに同期して第一番目の駆動信号Y(0)(=y(1))を出力し、それから本来の出力周期T/D経過した後に第二番目の駆動信号Y(2)(=y(4))を出力し、それ以降も出力周期T/Dの間隔で第三番目以降の駆動信号Y(2)、Y(3)、…、Y(7)を出力する。
【0109】
このような構成であっても、上記第1の実施の形態と同様に、各駆動信号Yの中間時点を基準信号Xの一周期に対する位置として表現した場合、その位置は個数Dが変化しても同一の駆動信号Yに関しては同一の位置になる。よって、本実施の形態にあっても、上記第1の実施の形態と同様の作用効果が得られるのである。
【0110】
図11乃至図13は本発明の第6の実施の形態を示す図であって、この実施の形態は、本発明に係る能動型騒音振動制御装置を、車両の車室50内のこもり音を低減する能動型騒音制御装置に適用したものである。なお、上記各実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0111】
即ち、本実施の形態にあっても、コントローラ25にはパルス信号生成器26から基準信号Xが入力されるようになっている。さらに、車室50内の前部座席及び後部座席の直上部にはマイクロフォン51,52が配設されていて、各マイクロフォン52が測定した音圧信号でなる残留騒音信号e,eもコントローラ25に供給されるようになっている。そして、前部座席の足元位置にはラウドスピーカ53が配設されていて、そのラウドスピーカ53がコントローラ25から供給される駆動信号Yによって駆動して車室50内に制御音を発生可能となっている。
【0112】
本実施の形態のコントローラ25は、適応アルゴリズムとしての同期式Filtered−X LMSアルゴリズム(SFXアルゴリズム)を変形したアルゴリズムに基づいてラウドスピーカ53を駆動するための駆動信号Yを生成するようになっている。そして、コントローラ25は、上記他の実施の形態と同様にマイクロコンピュータや必要なインタフェース回路等から構成され、その機能構成は図12に示すようになっていて、基準信号Xに基づいて周期Tを演算する周期演算部40と、周期Tに基づいて個数Dを決定する個数決定部41と、を備えている。
【0113】
周期演算部40は、二つの基準信号Xの立ち上がり時点間を図示しないCPU動作クロックでカウントすることにより、周期Tを演算するようになっている。例えば、エンジン回転速度が1500rpm、CUP動作クロックが1マイクロ秒とすると、周期Tはエンジン回転2次成分の周期20ミリ秒を1マイクロ秒でカウントした20000となる。
【0114】
基準信号X及び周期Tは、サンプリング・クロック生成部55にも供給されていて、サンプリング・クロック生成部55は、基準信号Xの立ち上がりを検出後直ちにサンプリング・クロックSCの第一番目のパルスを生成し、それから本来の周期の半分の時間(T/D/2)の時間経過後のサンプリング・クロックSCの第二番目のパルスを生成し、それ以降は、本来の周期(T/D)の間隔でサンプリング・クロックのパルスを順次生成するようになっている。
【0115】
サンプリング・クロックSCは、駆動信号出力部44に供給されるようになっており、駆動信号出力部44は、サンプリング・クロックSCの各パルスに同期して駆動信号用数列の各要素を、順番に駆動信号Yとして出力するようになっている。
また、周期Tは、位相テーブル56及び収束係数テーブル57にも供給され、位相テーブル56は周期Tに応じて位相情報θ、θを生成し、収束係数テーブル57は周期Tに応じて収束係数αを生成するようになっている。
【0116】
位相情報θは、ラウドスピーカ53とマイクロフォン51との間の伝達関数の位相特性を表し、位相情報θは、ラウドスピーカ53とマイクロフォン52との間の伝達関数の位相特性を表すものであって、いずれも0から2D−1の間の整数値をとる。例えば、θ=0であれば、そのときのエンジン回転2次成分相当の周波数におけるラウドスピーカ53及びマイクロフォン51間の伝達関数の位相特性は0(rad )であり、θ=Dであれば、ラウドスピーカ53及びマイクロフォン51間の伝達関数の位相特性はπ(rad )である。因みに、0から2D−1の間の整数をdとすれば、θ=dのときのラウドスピーカ53及びマイクロフォン51間の伝達関数の位相特性は、dπ/D(rad )を中心とした幅π/D(rad )の領域にある。
【0117】
収束係数αは、Filtered−X LMSアルゴリズムにおいて適応ディジタルフィルタの更新量に乗じられてそフィルタ係数の収束速度を調整するための係数であって、基本数列更新部58に供給されるようになっている。
【0118】
そして、基本数列更新部58には、収束係数α、残留騒音信号e、e及び後述する正弦波テーブル60から信号列R、Rが供給されるようになっていて、基本数列更新部58は、それら供給される各値に基づき、上述したアルゴリズムに従って基本数列記憶部61に記憶されている基本数列Wの各要素w(0)〜w(D−1)を逐次更新するようになっている。
【0119】
一方、基準信号X及びサンプリング・クロックSCは、位相カウンタ59にも供給され、位相カウンタ59は、それら基準信号X及びサンプリング・クロックSCに基づいて、現在の位相値φを生成するようになっている。位相値φは、周期Tを2D当分したときに、現時点がどの位置にあるかを表すものであって、0から2D−1の間の整数値をとる。但し、位相値φ=0の時点は、第一番目の駆動信号Y(0)(=w(0))の出力を開始するタイミングであり、基準信号Xの立ち上がりを検出してから(T/D/2)の時間が経過して第二番目の駆動信号Y(1)が出力されるタイミングでφ=2となる。D=24の場合の基準信号X、サンプリング・クロックSC、位相値φ、駆動信号Y(i)の番号iの関係を示すと、図13のようになる。
【0120】
そして、位相値φは、駆動信号出力部44に供給され、駆動信号出力部44は位相値φに基づいてこれから出力する駆動信号Y(i)を選択するようになっている。
【0121】
さらに、コントローラ25は、Filtered−X LMSアルゴリズムにおけるリファレンス信号に相当する更新演算用の信号列R、Rを生成するための正弦波テーブル60を備えていて、この正弦波テーブル60には、位相情報θ、θ、個数D及び位相値φが供給され、正弦波テーブル60は、それら各値に基づいて信号列R、Rを生成するようになっている。
【0122】
信号列R、Rは、下記式に従って求められる。
=[RBASE(φ+θ),RBASE(φ+θ−2k),RBASE(φ+θ−4k),…,RBASE(φ+θ−2(D−1)k)]……(7)
=[RBASE(φ+θ),RBASE(φ+θ−2k),RBASE(φ+θ−4k),…,RBASE(φ+θ−2(D−1)k)]……(8)
但し、
BASE(i)=cos(iπ/D);i=0、1、2、…、2D−1
であり、kは、
D=D/2 ……(9)
を満足する整数である。
【0123】
即ち、信号列Rの最初の要素RBASE(φ+θ)は、基準信号Xの立ち上がりに同期して周期Tの余弦関数を位相θπ/Dから出力したときの現時点における値である。信号列Rの第二番目の要素RBASE(φ+θ−2k)は、基準信号Xの立ち上がりに同期して周期Tの余弦関数を位相θπ/Dから出力したときの一つ前のサンプリングタイミングにおける値である。これらは、Filtered−X LMSアルゴリズムにおけるFiltered−X信号(いわゆるリファレンス信号)から周期Tの正弦波成分のみを取り出し、時刻をさかのぼったものに相当する。信号列Rについても同様である。
【0124】
なお、位相情報θにはkの情報が含まれているため、所定の補正演算が必要である。つまり、上記第1の実施の形態において説明したように、サンプリング周波数が変化すると実質的な位相遅れがサンプリング・クロックSCの幅に比例して増大するので、個数DがDのときの位相情報θに対して、個数Dが上記(9)式のように表されるときの位相情報θは、
θ=θ−2+1 ……(10)
として補正されなければならない。位相情報θについても同様である。
【0125】
また、RBASE(i)は、i=0、1、2、…、2D−1の範囲でのみ定義された値(テーブル)であるから、上記(10)式による補正も含めて上記(7)式や(8)式でその範囲を逸脱しないように、2Dの整数倍を適宜加減する必要がある。
【0126】
そして、基本数列更新部58は、収束係数α、残留騒音信号e、e及び信号列R、Rに基づき、基本数列Wの各要素w(0)〜w(D−1)を下記式に従って更新するようになっている。
【0127】
w(i)=w(i)−α{e(i)+e(i)};i=0、2、2・2、3・2、…、(D−1)2……(11)
但し、0からD−1までの間の整数をjとすれば、R(j)は、上記(7)式に示す数列Rのj番目の要素である。
【0128】
なお、基本数列更新部58における残留騒音信号e、eは、サンプリング・クロックSCの各パルスに同期して読み込まれるが、基準信号Xの立ち上がり直後のサンプリング・クロックSCのパルス生成時には残留騒音信号e、eの読み込みは不要である。
【0129】
ここで、駆動信号用数列生成部43は、基本数列記憶部61に記憶されている基本数列WのD個の要素w(i)から、そのときの個数Dに応じてD個の要素を選択して、駆動信号用数列Y(0)〜Y(D−1)を生成するようになっている。そして、本実施の形態では、個数D、Dを上記(9)式のような関係としているため、例えばD=24であれば、周期Tが短くなるに従って(つまり、エンジン回転数が高くなるに従って)、個数Dは、24→12→6→3という具合に変化することになる。
【0130】
駆動信号用数列生成部43は、D=Dの場合には、駆動信号用数列の各要素Y(0)〜Y(D−1)は、そのときの基本数列Wの各要素w(0)〜w(D−1)をそのまま代入したものとし、D<Dの場合には、下記式に従って駆動信号用数列の要素Y(i)を生成するようになっている。
【0131】
Y(i)=w(2i) ……(12)
つまり、基本数列Wの各要素w(0)〜w(D−1)からk−1個おきに駆動信号用数列の要素Y(i)に代入されるのである。
【0132】
そして、駆動信号出力部44は、サンプリング・クロックSCに同期して、位相カウンタ59から供給される位相値φに基づいて選択される駆動信号Y(i)をラウドスピーカ53に出力する。
【0133】
すると、ラウドスピーカ53からその駆動信号Y(i)に応じた制御音が発生しこれが車室50内を伝搬するが、駆動信号Y(i)の元になっている基本数列Wが、上記のようにSFXアルゴリズムを変形したアルゴリズムに従って適宜更新されるため、マイクロフォン51、52の配設位置においてこもり音の低減が図られるのである。つまり、SFXアルゴリズムにあっては、基準信号Xがこもり音の基本周期に同期したパルス列であると考えれば、基準信号Xと基本数列W(適応ディジタルフィルタW)との畳込みの結果は、その基本数列Wの各要素w(i)そのものであるので、個数D=Dのときには全ての要素w(i)を、個数D=D/2のときにはk−1個おきに要素w(i)を駆動信号Yとして出力することにより、基準信号Xに同期して発生する周期騒音としてのこもり音を低減することができるのである。
【0134】
そして、本実施の形態にあっては、サンプリング・クロック生成部55が生成したサンプリング・クロックSCに同期して駆動信号出力部44が駆動信号Y(i)を出力するのであるが、図13にD=24の場合を示すように、サンプリング・クロックSCの周期は、基準信号Xの立ち上がり検出直後は本来の周期の半分の時間(T/48)であり、それ以降は本来の周期(T/24)となる。さらに、駆動信号出力部44は、最後の駆動信号Y(23)を出力した後には、再び第一番目の駆動信号Y(0)を出力し、次の基準信号Xの立ち上がりが検出されるまでの間はその駆動信Y(0)を出力し続けるが、次の基準信号Xの立ち上がりが検出された直後にも第一番目の駆動信号Y(0)を出力する。
【0135】
よって、上記第1の実施の形態と同様に、駆動信号Y(0)の中間時点を基準信号Xの一周期に対する位置として表現した場合、その位置は、基準信号Xの立ち上がり時点となる。そして、個数D=24、12、6、3のいずれの場合においても、その駆動信号Y(0)の中間時点の基準信号Xの一周期に対する位置は常に基準信号Xの立ち上がり時点となるし、例えばD=12の場合の各駆動信号となる基本数列w(0)、w(2)、…、w(2i)、…、w(22)の中間時点の基準信号Xの一周期に対する位置も、D=24の場合の偶数番号の駆動信号となる基本数列w(0)、w(2)、…、w(2i)、…、w(22)の中間時点の基準信号Xの一周期に対する位置に一致する。その他の個数Dについても同様である。
【0136】
このため、上記第1の実施の形態と同様に、例えば個数D=24の場合に誤差積分値が0になるようにした場合、個数D=12、6、3に変化しても位相特性がずれることがなく、個数Dが変化した直後に駆動信号Y(i)の位相特性のずれに伴ってその駆動信号Y(i)の精度が低下して車室50内騒音レベルが悪化することを防止できるのである。
【0137】
つまり、本実施の形態のような適応処理を実行する構成であれば、仮に駆動信号Y(i)の位相特性がずれたとしても、それを補うように基本数列Wの各要素w(i)が更新され、ある程度の時間が経過すれば騒音レベルの悪化は解消されるのから、騒音レベルの悪化現象は個数Dが変化した直後に発生する現象であって、さほど長い時間に渡って騒音レベルを悪化させるものではないが、乗員の感覚ではときたま生じる騒音悪化現象であっても不快感を増大させるものであり、従って、本実施の形態のように駆動信号Y(i)の出力タイミングを適宜制御して個数Dが変化した直後の騒音レベルの悪化現象をも解消することは、乗員に与える不快感低減にとって極めて有益なのである。
【0138】
ここで、本実施の形態にあっては、エンジン30が騒音源に対応し、ラウドスピーカ53が制御音源に対応し、マイクロフォン51、52が残留騒音検出手段に対応し、位相テーブル56、収束係数テーブル57、正弦波テーブル60及び基本数列更新部58によって更新手段が構成され、基本数列記憶部61が記憶手段に対応する。
【0139】
なお、上記第6の実施の形態にあっては、上記(11)式に示したように、駆動信号Yとして出力されることが予定されている番号iの要素w(i)、つまり駆動信号用数列を構成する要素のみが更新されるようになっているが、エンジン回転速度が下がりつつあり、個数Dが大きい方に切り替わりそうなときには、切り替わった後に駆動信号用数列となる要素w(i)も更新演算の対象とすることが望ましい。
【0140】
つまり、現在の個数Dでは駆動信号Yとして出力されない要素w(i)も、上記(11)式に従って更新するのであるが、周期Tが短いときに更新演算に費やせる時間も限られているから、駆動信号Yとして出力される要素w(i)の更新演算を優先的に行い、残った時間内で他の要素w(i)の更新演算を行うようにすればよい。その際、各要素w(i)に対する更新演算の頻度に大きな差がないように、例えば、駆動信号Yとして出力されない要素w(i)の更新を行った場合にはその番号iを記憶し、次に駆動信号Yとして出力されない要素w(i)の更新を行う場合には記憶されていない番号の要素w(i)の更新演算を行うようにすればよい。
【0141】
また、上記第6の実施の形態では、常に基本数列Wの要素w(i)に基づいて駆動信号用数列を生成するようにしているが、例えば、個数Dが増加方向に変化する場合には、新たな駆動信号用数列を、その時点の駆動信号用数列に基づいて補間演算を行って生成するようにしてもよい。その補間演算も、上記実施の形態のようにエンジン回転2次成分のみを制御対象としている場合には1次補間で十分である。例えば、D=12からD=24に変化する場合であれば、D=12における駆動信号Y(0)(=w(0))と駆動信号Y(1)=(w(2))とに基づいて、D=24における駆動信号Y(1)(=w(1))を生成するのであって、具体的には、
w(1)={w(0)+w(2)}/cos(π/D)2
とすればよい。一般的に、現在の個数Dと整数kに基づき、
w(2i+2k−1 )={w(2i)+w(2i+2)}/cos(π/2D)2……(13)
とすればよい。このような補間演算を行って新たな駆動信号用数列を生成するようにすれば、駆動信号Yとして出力されない要素w(i)の更新演算が行えない場合における駆動信号用数列の精度低下を抑えることができる。
【0142】
さらに、上記第6の実施の形態では、エンジン回転2次成分だけを騒音低減処理の対象としているが、エンジン回転4次成分やエンジン回転6次成分等の高調波成分も周期的な騒音であるから、それら高調波成分をも低減可能な制御を実行できる構成としてもよい。
【0143】
具体的には、図12に示した構成において、位相テーブル56及び収束係数テーブル57を、エンジン回転2次成分の位相情報θ20、θ21(図12及び上記説明の位相情報θ、θ)、収束係数α(図12及び上記説明の収束係数α)だけではなく、エンジン回転4次成分のθ40、θ41、収束係数αや、エンジン回転6次成分のθ60、θ61、収束係数αをも生成可能にするとともに、正弦波テーブル60が生成する信号列Rも、エンジン回転次数成分ごとに生成するように構成する。
【0144】
ここで、エンジン回転2次成分用の信号列R、RをR20、R21、エンジン回転4次成分用の信号列R、RをR40、R41、エンジン回転6次成分用の信号列R、RをR60、R61とすれば、各信号列は下記式により求められる。
【0145】
20=[R2BASE (φ+θ20),R2BASE (φ+θ20−2k),R2BASE (φ+θ20−4k),…,R2BASE (φ+θ20−2(D−1)k)]……(14)
21=[R2BASE (φ+θ21),R2BASE (φ+θ21−2k),R2BASE (φ+θ21−4k),…,R2BASE (φ+θ21−2(D−1)k)]……(15)
40=[R4BASE (φ+θ40),R4BASE (φ+θ40−2k),R4BASE (φ+θ40−4k),…,R4BASE (φ+θ40−2(D−1)k)]……(16)
41=[R4BASE (φ+θ41),R4BASE (φ+θ41−2k),R4BASE (φ+θ41−4k),…,R4BASE (φ+θ41−2(D−1)k)]……(17)
60=[R6BASE (φ+θ60),R6BASE (φ+θ60−2k),R6BASE (φ+θ60−4k),…,R6BASE (φ+θ60−2(D−1)k)]……(18)
61=[R6BASE (φ+θ61),R6BASE (φ+θ61−2k),R6BASE (φ+θ61−4k),…,R6BASE (φ+θ61−2(D−1)k)]……(19)
但し、
2BASE (i)=cos(iπ/D);i=0、1、2、…、2D−1
4BASE (i)=cos(2iπ/D);i=0、1、2、…、2D−1
6BASE (i)=cos(3iπ/D);i=0、1、2、…、2D−1
である。
【0146】
そして、基本数列Wも、エンジン回転2次成分用の基本数列Wと、エンジン回転4次成分用の基本数列Wと、エンジン回転6次成分用の基本数列Wと、を備え、各基本数列の要素w(i)、w(i)、w(i)の更新式は、下記のようになる。
【0147】
(i)=w(i)−α{e20(i)+e21(i)};i=0、2、2・2、3・2、…、(D−1)2……(20)
(i)=w(i)−α{e40(i)+e41(i)};i=0、2、2・2、3・2、…、(D−1)2……(21)
(i)=w(i)−α{e60(i)+e61(i)};i=0、2、2・2、3・2、…、(D−1)2……(22)
そして、駆動信号用数列のi番目の要素Y(i)は、上記基本数列の要素w(i)、w(i)、w(i)から、下記式により求められる。
【0148】
Y(i)=w(2i)+w(2i)+w(2i)……(23)
個数Dが増加方向に変化したときに、上記(20)〜(22)式で示す更新演算を行って余った時間内で他の要素をも更新する方が望ましいことや、上記(13)式に示すような補間演算によって個数D変更後の新たな駆動信号用数列を生成するのが望ましいことは上記第6の実施の形態と同様である。ただしエンジン回転4次成分、同6次成分に対応する補間係数は、同2次成分用の補間係数とは異なるので、2次成分の式も含めて表すと、以下のようになる。
【0149】
(2i+2k−1 )={w(2i)+w(2i+2)}/cos(π/2D)2……(24)
(2i+2k−1 )={w(2i)+w(2i+2)}/cos(π/D)2……(25)
(2i+2k−1 )={w(2i)+w(2i+2)}/cos(3π/2D)2……(26)
なお、上記のようにエンジン回転次数成分毎に基本数列Wを設定するのではなく、上記(11)式を用いて駆動信号用数列の各要素Y(i)を生成し、しかも更新式を下記式のようにすることにより、駆動信号Yとして出力しない要素を高次の補間により求めるようにしてもよい。
【0150】
w(i)=w(i)−e{α20(i)+α40(i)+α60(i)}−e{α21(i)+α41(i)+α61(i)}……(27)
さらに、上記第6の実施の形態にあっては、サンプリング・クロック生成部55が生成するサンプリング・クロックSCの間隔を、基準信号Xの立ち上がりを検出した直後には本来の半分の長さとし、それ以降は本来の長さとすることにより、駆動信号Yの出力間隔に関しては上記第1の実施の形態と同様の作用が得られるようにし、もって駆動信号Yの個数Dが変化しても位相ずれが生じないようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、上記第3の実施の形態と同様の作用が得られるようにサンプリング・クロックSCを生成してもよいし、或いは、上記第4の実施の形態と同様の作用が得られるようにサンプリング・クロックを生成してもよい。即ち、図14は、D=24、D=28、24、20とした場合における基準信号X、サンプリング・クロックSC、位相値φ、駆動信号Y(i)の番号iの関係を示す波形図であり、個数D=24(=D)の場合には、基準信号Xの立ち上がりに検出後直ちに第一番目のサンプリング・クロックSCのパルスを生成し、それから本来の周期T/D毎にサンプリング・クロックSCのパルスを生成する。個数D=20(<D)の場合には、基準信号Xの立ち上がりに検出後直ちに第一番目のサンプリング・クロックSCのパルスを生成し、それから本来の周期よりも短いT(D+D)/(2DD)時間経過後に、第二番目のサンプリング・クロックSCのパルスを生成し、それ以降は本来の周期T/の間隔でサンプリング・クロックSCのパルスを生成する。そして、個数D=28(>D)の場合には、基準信号Xの立ち上がりに検出後直ちに第一番目のサンプリング・クロックSCのパルスを生成するとともに、それを受けた駆動信号出力部44からは最後の駆動信号Y(D−1)を出力し、それから本来の周期よりも短いT(D−D)/(2DD)時間経過後に、第二番目のサンプリング・クロックSCのパルスを生成し、それ以降は本来の周期T/の間隔でサンプリング・クロックSCのパルスを生成する。なお、現在の位相値φについては、そのタイミングで出力される駆動信号Y(i)の番号iに対して、iD/Dを四捨五入して整数化したものとする。また、更新式は上記(11)式と同様であるが、上記(10)式に示すような位相情報θに対する補正は、個数DとDとの比がほぼ1:1なので省略する。
【0151】
また、上記第6の実施の形態では、サンプリング・クロックSCの第二番目以降のパルスに同期してT/Dの間隔で残留騒音信号e、eを読み込み、これをそのサンプリング・クロックSCのパルスに同期した更新演算に用いるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、基準信号Xの立ち上がり検出後のサンプリング・クロックSCの第一番目のパルスに同期して残留騒音信号e、eを読み込み、それ以降もT/Dの間隔つまりサンプリング・クロックSCの第二番目以降のパルス同士の中間時点において残留騒音信号e、eを読み込み、各残留騒音信号e、eは、それを読み込んだ次のサンプリング・クロックSCに同期して実行される更新演算に用いるようにしてもよい。
【0152】
つまり、サンプリング・クロックSCとして、駆動信号Yの出力に用いられる出力用サンプリング・クロックと、その出力用サンプリング・クロックに対して180度ずれた入力用(残留騒音信号読み込み用の)サンプリング・クロックを生成し、それら各サンプリング・クロックに同期して駆動信号Yの出力処理や残留騒音信号e、eの読み込み処理を実行するようにしてもよいのである。
【0153】
因みに、出力用サンプリング・クロック及び入力用サンプリング・クロックの両方を利用する場合における、基準信号Xの立ち上がり検出直後の処理の概要は次のようになる。
【0154】
即ち、基準信号Xの立ち上がりが検出されると、先ず、周期測定用タイマのカウント値を周期Tとして記憶し、その周期測定用タイマをゼロリセットする。次いで、周期Tに従って記憶テーブルを参照して、個数Dを読み出す。そして、基本数列Wの各要素wのうち駆動信号Yとして最初に出力される要素を、駆動信号出力用のバッファに書き込み、次いで、第一番目の出力サンプリング・クロックを生成し、その出力サンプリング・クロックに同期して、バッファに書き込まれていた駆動信号Yを出力する。そして、出力サンプリング・クロック発生用タイマのクロック発生カウント設定値をT/D/2に設定し、その出力サンプリング・クロック発生用タイマをゼロリセットするとともに、入力サンプリング・クロック発生用タイマのクロック発生カウント設定値をT/D/2に設定し、その入力サンプリング・クロック発生用タイマをゼロリセットする。なお、入力サンプリング・クロックと出力サンプリング・クロックとを上述のように180度ずらす場合には、ここで入力サンプリング・クロック発生用タイマの設定値をT/Dに設定すればよい。次いで、位相値φをゼロに設定し、周期Tに従って記憶テーブルを参照して位相情報θを読み出し、周期Tに従って記憶テーブルを参照して収束係数αを読み出す。これで、基準信号Xの立ち上がり検出直後の処理は終了する。
【0155】
そして、次の出力サンプリング・クロックが生成され、第二番目の駆動信号Yが出力されたら、出力サンプリング・クロック発生用タイマのクロック発生カウント設定値をT/Dに設定し、その出力サンプリング・クロック発生用タイマをゼロリセットするとともに、入力サンプリング・クロック発生用タイマのクロック発生カウント設定値をT/Dに設定し、その入力サンプリング・クロック発生用タイマをゼロリセットする。但し、入力サンプリング・クロックと出力サンプリング・クロックとを上述のように180度ずらす場合には、入力サンプリング・クロック発生用タイマの設定値は当初からT/Dであるから、ここで特に設定値を変更する必要はない。
【0156】
また、上記各実施の形態では、個数Dを周期Tに基づいて設定、つまり周期Tが短くなると個数Dが少なくなる傾向で設定するようにしているが、例えば、コントローラ25が振動・騒音低減制御以外の制御、例えばエンジンの点火時期制御や駆動力制御等を実行するようになっている場合には、それら振動・騒音低減制御以外の制御の演算負荷の軽重変化に応じて、個数Dを設定するようにしてもよい。つまり、振動・騒音低減制御よりも優先度の高い制御の演算負荷が大きくなると、振動・騒音低減制御用の演算時間を割いてでもその優先度の高い制御に演算時間を割り当てる方が車両全体として望ましい場合があるからである。
【0157】
また、上記第1〜5の実施の形態のように、予め生成された基本数列を読み出して駆動信号を生成する構成であれば、その基本数列等の更新演算は不要であるから、周期Tが短くなっても個数Dを減少させる必要がないのではという見解もあるかも知れない。しかし、現実には、ディジタル信号を出力する場合に必要なD/A変換処理は、通常は主力タイミングを正確にするために割り込み処理として実行されるため、コントローラ25内のマイクロプロセッサは、それまで実行していた処理を一旦中断してD/A変換処理を行い、その後、中断していた処理を再開する。その再開の際、処理を速やかに継続できるように、マイクロプロセッサは、中断直前の状態を保存する必要があるため、D/A変換処理の頻度が高くなると、本来不要な演算量が増えることになる。よって、上記第1〜5の実施の形態のように、予め生成された基本数列を読み出して駆動信号を生成する構成であっても、個数Dを可変とすることは極めて有益なのである。
【0158】
さらに、上記のように振動・騒音低減制御以外の制御の演算負荷の軽重変化に応じて個数Dを設定するように構成した場合には、望ましくは、エンジン回転数を複数の段階に(例えば、10rpmピッチで)分け、それら各段階ごとに基本数列を生成し、駆動信号用数列を生成する際には、エンジン回転数毎に読み出す基本数列を異ならせるようにすることが望ましい。すると、記憶する基本数列は各段階ごとに必要となるが、上記第1〜5の実施の形態であれば、個数Dに応じて駆動信号の出力タイミングを適宜調整することにより位相ズレが防止しているから、その段階と同じ数の基本数列を記憶するだけで済む。これが、個数Dに応じて駆動信号の出力タイミングを適宜調整するのではなく、位相ズレをも考慮して、エンジン回転数毎に且つ個数D毎に駆動信号用数列を記憶するような構成としてしまうと、その駆動信号用数列の記憶のために記憶容量が数倍になってしまい、極めて不経済なのである。
【0159】
また、上記第4の実施の形態のように補間演算によって駆動信号用数列を生成する場合、或いは、上記第5の実施の形態において個数Dが変化する場合にはその変化前の駆動信号用数列を補間して変化後の駆動信号用数列を生成するような場合、各個数Dを共通の約数を有するように選定すれば、補間演算を一部省略できるという利点がある。例えば、D=24、20を選定した場合、24=4×6であり、20=4×5であるから、共通の約数4があり、D=20における駆動信号Y(5)やY(10)は、D=20における駆動信号Y(6)やY(12)に等しい。よって、個数Dが24から20に変化する場合、又はその逆に20から24に変化する場合、補間演算の一部が単なる代入で行えるようになるから、それだけ演算負荷を軽減できるのである。
【0160】
そして、上記第2の実施の形態のような駆動信号Yの大きさを調整するゲイン調整部45を設ける構成は、上記第3〜6の実施の形態であっても適用可能である。
【0161】
そして、上記第1〜5の実施の形態では、エンジン30から車体35に伝達される振動を低減する車両用の能動型振動制御装置に適用した場合について説明したが、かかる発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば第6の実施の形態のような騒音を低減する装置であってもよい。逆に、上記第6の実施の形態では、本発明に係る能動型騒音振動制御装置のうち、更新演算を実行するようになっている発明を、エンジン30から車室50内に伝搬されるこもり音を低減する車両用の能動型騒音制御装置に適用した場合について説明したが、かかる発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば第1〜5の実施の形態のような振動を低減する装置であってもよい。
【0162】
さらに、本発明の適用対象は車両に限定されるものではなく、エンジン30以外で発生する周期的な振動や騒音を低減するための能動型振動制御装置,能動型騒音制御装置であっても本発明は適用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態と同等の作用効果を奏することができる。例えば、工作機械からフロアや室内に伝達される振動や騒音を低減する装置等であっても、本発明は適用可能である。
【0163】
また、上記各実施の形態では、適応アルゴリズムとして同期式Filtered−X LMSアルゴリズムを適用した場合について説明したが、適用可能な適応アルゴリズムはこれに限定されるものではなく、例えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリズム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的な考え方を示す波形図である。
【図2】第1の実施の形態を示す車両の概略側面図である。
【図3】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図である。
【図4】コントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図5】基本数列の一例を示す波形図である。
【図6】第1の実施の形態の動作を説明する駆動信号の波形図である。
【図7】第2の実施の形態のコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図8】第3の実施の形態の動作を説明する駆動信号の波形図である。
【図9】第4の実施の形態の動作を説明する駆動信号の波形図である。
【図10】第5の実施の形態の動作を説明する駆動信号の波形図である。
【図11】第6の実施の形態を示す車両の概略側面図である。
【図12】第6の実施の形態のコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図13】第6の実施の形態の動作を説明する波形図である。
【図14】第6の実施の形態の変形例の動作を説明する波形図である。
【符号の説明】
1 能動型エンジンマウント(制御振動源)
25 コントローラ
30 エンジン(振動源、騒音源)
40 周期演算部
41 個数決定部
42 基本数列記憶部(記憶手段)
43 駆動信号用数列生成部(駆動信号用数列生成手段)
44 駆動信号出力部(駆動信号出力手段)
45 ゲイン調整部(駆動信号ゲイン調整手段)
51、52 マイクロフォン(残留騒音検出手段)
53 ラウドスピーカ(制御音源)
55 サンプリング・クロック生成部
56 位相テーブル
57 収束係数テーブル
58 基本数列更新部
59 位相カウンタ
60 正弦波テーブル
61 基本数列記憶部(記憶手段)

Claims (11)

  1. 周期的な騒音又は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源又は制御振動源と、前記制御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記騒音又は振動の一周期内に前記駆動信号として出力される駆動信号用数列を生成する駆動信号用数列生成手段と、前記駆動信号用数列の各要素を前記騒音又は振動の一周期内に順次出力する駆動信号出力手段と、を備えるとともに、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数は可変であり、
    前記駆動信号出力手段は、前記駆動信号用数列の一の要素の出力を開始してからその次の要素の出力を開始するまでの中間の時点を前記騒音又は振動の一周期に対する位置として表現した場合、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数を変更しても同一の要素については前記位置が変化しないように、前記駆動信号用数列の各要素を出力するようになっていることを特徴とする能動型騒音振動制御装置。
  2. 前記制御音又は制御振動を所定時間間隔で離散値化した複数個の要素からなる基本数列を記憶する記憶手段を備え、前記駆動信号用数列生成手段は、前記基本数列に基づいて前記駆動信号用数列を生成するようになっている請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  3. 前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記基本数列を構成する要素の個数をDとした場合に、
    前記駆動信号用数列生成手段は、正の整数kを用いて、D=D/kが成り立つ場合には、前記基本数列の各要素を第一番目からk−1個おきに抜き出して前記駆動信号用数列を生成するようになっている請求項2記載の能動型騒音振動制御装置。
  4. 前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記基本数列を構成する要素の個数をDとした場合に、
    前記駆動信号用数列生成手段は、正の整数kを用いて、D=D/kが成り立たない場合には、前記基本数列の要素を用いた補間演算を行って前記駆動信号用数列を生成するようになっている請求項2又は請求項3記載の能動型騒音振動制御装置。
  5. 前記駆動信号用数列生成手段は、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数が変化する場合、その変化前の要素に基づいて変化後の要素を生成するようになっている請求項1記載の能動型騒音振動制御装置。
  6. 前記騒音又は振動の周期をT、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をDとした場合に、
    前記駆動信号出力手段は、前記駆動信号用数列の第一番目の要素はT/D/2の時間出力し、前記駆動信号用数列の第二番目以降の要素はT/Dの周期で出力するようになっている請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の能動型騒音振動制御装置。
  7. 前記騒音又は振動の周期をT、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数をDとした場合に、
    前記駆動信号出力手段は、D=Dの場合には、前記駆動信号用数列の各要素をT/Dの周期で出力し、D<Dの場合には、最初に前記駆動信号用数列の第一番目の要素をT(D+D)/(2DD)の時間出力し、その後は前記駆動信号用数列の第二番目以降の要素をT/Dの周期で出力するようになっている請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の能動型騒音振動制御装置。
  8. 前記騒音又は振動の周期をT、前記駆動信号用数列を構成する要素の個数をD、前記駆動信号用数列を構成する要素の基準となる個数をDとした場合に、
    前記駆動信号出力手段は、D=Dの場合には、前記駆動信号用数列の各要素をT/Dの周期で出力し、D>Dの場合には、最初に前記駆動信号用数列の第D番目の要素をT(D−D)/(2DD)の時間出力し、その後は前記駆動信号用数列の第一番目以降の要素をT/Dの周期で出力するようになっている請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の能動型騒音振動制御装置。
  9. 前記干渉後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号に基づき且つ適応アルゴリズムに従って前記駆動信号用数列の要素を更新する更新手段と、を備える請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の能動型騒音振動制御装置。
  10. 前記干渉後の残留騒音又は残留振動を検出し残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出手段又は残留振動検出手段と、前記残留騒音信号又は残留振動信号に基づき且つ適応アルゴリズムに従って前記基本数列の要素を更新する更新手段と、を備える請求項2乃至請求項4又は請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の能動型騒音振動制御装置。
  11. 前記駆動信号用数列の各要素の大きさを調整する駆動信号ゲイン調整手段を備える請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の能動型騒音振動制御装置。
JP08725298A 1998-03-31 1998-03-31 能動型騒音振動制御装置 Expired - Fee Related JP3562303B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP08725298A JP3562303B2 (ja) 1998-03-31 1998-03-31 能動型騒音振動制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP08725298A JP3562303B2 (ja) 1998-03-31 1998-03-31 能動型騒音振動制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11282504A JPH11282504A (ja) 1999-10-15
JP3562303B2 true JP3562303B2 (ja) 2004-09-08

Family

ID=13909615

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP08725298A Expired - Fee Related JP3562303B2 (ja) 1998-03-31 1998-03-31 能動型騒音振動制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3562303B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11282504A (ja) 1999-10-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3228153B2 (ja) 能動型振動制御装置
JP3451891B2 (ja) 能動型振動制御装置
JPH09303477A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3336781B2 (ja) 防振支持装置
JP3562303B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP5098796B2 (ja) 制振装置及び車両
JP3695058B2 (ja) 能動型振動制御装置
JP3593866B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3572953B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3541613B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3695052B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP5098795B2 (ja) 制振装置及び車両
JPH1011071A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JPH07223444A (ja) 振動制御装置及び能動型振動制御装置
JP3228224B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3419231B2 (ja) 能動型振動制御装置
JPH10318326A (ja) 能動型振動制御装置
JP3747619B2 (ja) 能動型振動制御装置
JP3829408B2 (ja) 車両用能動型振動制御装置
JPH0869289A (ja) 能動型振動制御装置及び能動型騒音制御装置
JP3743165B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JPH11338553A (ja) 能動型振動制御装置及び能動型騒音制御装置
JPH11133983A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JPH10320059A (ja) 能動型振動制御装置
JPH11166576A (ja) 防振支持装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040325

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040511

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040524

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080611

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090611

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090611

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100611

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110611

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120611

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120611

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130611

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140611

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees