JP3572783B2 - エンジンの排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排気管に設けた三元触媒の早期暖機を行うため燃料噴射量を所定期間毎(たとえば燃焼毎)に増減させる(つまり排気空燃比を理論空燃比に対してリッチ側とリーン側に交互に振る)操作によりリッチ燃焼とリーン燃焼を繰り返し、リッチ燃焼により一酸化炭素COと未燃炭化水素HCを、リーン燃焼により酸素O2を多く生じさせ、両者の酸化反応により発生する熱で排気温度を上昇させるとともに、同じ点火時期ではリッチ気筒(空燃比がリッチ化される気筒)とリーン気筒(空燃比がリーン化される気筒)とで発生するトルクに差が生じるため、リッチ気筒の点火時期を、リッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同一となるようにリーン気筒より遅角させるようにした装置が提案されている(特開平4−308311号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、多気筒エンジンにおいて触媒が一部活性状態でかつアイドル時に三元触媒の早期暖機を行うため点火順序で1つおきの気筒をリッチ気筒、残りの気筒をリーン気筒として、排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振らすとともに、燃費向上の観点よりリーン気筒の点火時期をMBT(最大トルクの得られる最小の点火進角値のこと)付近に、さらに回転変動の防止の観点よりリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同じになるようにリッチ気筒の点火時期をリーン気筒よりも遅角させてそれぞれ設定した場合に、補機負荷の変動に伴うリッチ気筒とリーン気筒の間のトルク差によると思われる回転変動が生じた。これは発明者の実験によって初めて明らかになったことであり、その原因を解析してみたところ、図7に示すように補機負荷の加わらない状態でのアイドル負荷(基本設定点での基本噴射パルス幅Tp)に対してリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同一になるようにリッチ気筒の点火時期を設定していても、補機負荷の作動でアイドル回転数のフィードバック制御(アイドル回転数が補機負荷の作動状態に応じた目標値と一致するようにスロットルバルブをバイパスする補助空気量がフィードバック制御される)が働いて吸入空気量(つまり基本噴射パルス幅Tp)が増し、これによってリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒よりも相対的に大きくなるためであることがわかった。
【0004】
これをさらに図8を参照して詳述すると、リッチ気筒の点火時期は最も燃焼のよくなるMBTである位置Cからの差が大きい位置Aにあるので、補機負荷の作動で吸入空気量が増加したときガス流動が強化されてMBTが位置Cから位置Dへと遅角側にずれ、MBTとの点火時期差がACからBDへと縮小する。つまりMBTから離れた位置では、吸入空気量の増大により燃焼状態が大きく改善されるためトルクの増加代B−Aが大きくなる。これに対してリーン気筒の点火時期はMBTに近い位置Eにあり、MBT付近では点火時期を変化させた場合のトルク感度が小さい(MBT付近はもともと燃焼がよいので吸入空気量が増えても燃焼自体が大きく改善されることはない)ため、トルクの増加代F−Eは小さい。この結果、同じ吸入空気量の増加に対してリーン気筒のトルク増加代F−Eのほうがリッチ気筒のトルク増加代B−Aより相対的に小さくなるのである。
【0005】
なお、アイドル時は補機負荷の変動に伴うリッチ気筒とリーン気筒のトルク差が特に顕著に現れる運転条件であるが、排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作をアイドル時以外の負荷領域にまで拡大して行うときにも、リッチ気筒とリーン気筒の間に負荷変動に伴うトルク差が生じる。
【0006】
そこで本発明は、排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う際にその空燃比振れ幅をエンジンの負荷に依存させることなく定める一方で、エンジンの基準負荷に対してリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同じになるようにリッチ気筒の点火時期をリーン気筒の設定空燃比に応じて設定するとともに、エンジン負荷が基準負荷と相違するときにはエンジン負荷に応じてリッチ気筒とリーン気筒の間に生じるトルク差をなくす向きにリッチ気筒の点火時期を補正することにより、空燃比振れ幅を固定した状態においてエンジン負荷が変化したときにも、エンジンの安定性を確保しつつ触媒の暖機を促進することを目的とする。
【0007】
なお、従来例(特開平4−308311号公報)においては、空燃比の振れ幅を定める補正量TDitを
リーン気筒:TDit=1−KDIT×KPM …(11)
リッチ気筒:TDit=1+KDIT×KPM …(12)
ただし、KDIT:冷却水温に応じた空燃比補正量
KPM:吸気管圧力PMに応じた補正量
の式により求めるとともに、リッチ気筒の点火時期遅角量ARETを、
ARET=KRET×KRPM …(13)
ただし、KRET:冷却水温に応じた遅角量
KRPM:吸気管圧力PMに応じた補正量
の式により求めており、(13)式のKRPMにだけ着目すれば確かにエンジン負荷(吸気管圧力PM)に応じてリッチ気筒の点火時期を補正しているので、本発明の技術思想と同じようにみえる。
【0008】
しかしながら、吸気管圧力PMが最小のときに2つの補正量KPM、KRPMとも0とし、吸気管圧力PMが最大となる付近で2つの補正量KPM、KRPMとも1に設定していることからもわかるように、従来例は、エンジン負荷が変化したときにはこれに応じて空燃比の振れ幅を変化させるものを前提として、その変化した空燃比振れ幅に対応させて点火時期を変化させているに過ぎず、空燃比振れ幅が同一の条件においてエンジン負荷が変化することによりリッチ気筒とリーン気筒の間にトルク差が生じる点については開示されていない。
【0009】
これに対し本発明では、排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う際にその空燃比振れ幅をエンジン負荷により変化させることは基本的になく、空燃比振れ幅を固定した状態においても、エンジン負荷の変化でリッチ気筒とリーン気筒の発生するトルクに差が生じることを防止することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明では、図9に示すように、排気通路に触媒を設ける一方で、リッチ気筒の空燃比制御量(たとえば目標燃空比相当量TFBYAR)をエンジン負荷に依存させることなく設定する手段21と、リーン気筒の空燃比制御量(たとえば目標燃空比相当量TFBYAL)をエンジン負荷に依存させることなく設定する手段22と、これらの空燃比制御量を用いて各気筒の空燃比を制御する手段23と、前記リーン気筒の点火時期ADVLをMBT付近に設定する手段24と、エンジンの基準負荷に対して前記リッチ気筒の発生するトルクが前記リーン気筒と同じになるように前記リッチ気筒の点火時期ADVRを前記リーン気筒の空燃比制御量TFBYALに応じて設定する手段25と、エンジン負荷が前記基準負荷と相違するときエンジン負荷に応じて前記リッチ気筒とリーン気筒の間に生じるトルク差をなくす向きに前記リッチ気筒の点火時期ADVRを補正(エンジン負荷が基準負荷より増加したときはその負荷増加分だけ遅角側に補正、この逆にエンジン負荷が基準負荷より減少したときはその負荷減少分だけ進角側に補正)する手段26と、この補正されたリッチ気筒の点火時期と前記リーン気筒の点火時期ADVLを用いて各気筒の点火を行う手段27とを設けた。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において前記各気筒の空燃比制御量と点火時期の設定を所定の運転条件でだけ行う。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において前記所定の運転条件が、前記触媒が一部活性化したときである。
【0013】
第4の発明では、第3の発明において前記触媒が一部活性化したかどうかをエンジンの冷却水温または前記触媒の温度に基づいて判定する。
【0014】
第5の発明では、第2から第4までのいずれか一つの発明において前記所定の運転条件がアイドル時である。
【0015】
第6の発明では、第1から第5までのいずれか一つの発明において前記リッチ気筒の点火時期の補正量が、前記エンジン負荷が前記基準負荷より大きいとき遅角側の、また前記エンジン負荷が前記基準負荷より小さいとき進角側の値である。
【0016】
第7の発明では、第1から第6までのいずれか一つの発明において前記リーン気筒の空燃比制御量がリーン限界相当である。
【0017】
第8の発明では、第7の発明において前記リーン限界相当の空燃比制御量がエンジンの冷却水温に応じた値である。
【0018】
第9の発明では、第7または第8の発明において前記リーン気筒の点火時期が前記リーン限界相当の空燃比制御量に対するMBTである。
【0019】
第10の発明では、第1から第9までのいずれか一つの発明において前記リッチ気筒の点火時期が前記リーン気筒の空燃比制御量に応じた値(リーン気筒の空燃比制御量がリッチ側になるほど進角する値)である。
【0020】
第11の発明では、第1から第10までのいずれか一つの発明において前記リッチ気筒の空燃比制御量が固定値である。
【0021】
第12の発明では、第1から第11までのいずれか一つの発明において前記空燃比制御手段23が、図10に示すように、ほぼ理論空燃比の得られる基本噴射量を運転条件に応じて算出する手段31と、この基本噴射量を前記リッチ気筒について増加し、前記リーン気筒について減少する手段32と、この増加される噴射量の燃料を前記リッチ気筒の吸気管に、また減少される噴射量の燃料を前記リーン気筒の吸気管に供給する手段33とからなる。
【0022】
【作用】
第1の発明では、排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う際に、エンジン負荷により燃焼自体は影響を受けるものの、冷却水温の影響に比べれば小さいため、リッチ気筒とリーン気筒の各空燃比制御量をエンジン負荷に依存させていない。この場合に、リーン気筒ではMBT付近の設定点火時期で、またリッチ気筒ではリーン気筒の空燃比制御量に応じた点火時期でそれぞれ点火が行われると、エンジンの基準負荷に対してはリッチ気筒とリーン気筒でトルク差を生じることがなく、触媒内での酸化反応熱の増加により触媒の暖機が促進される。
【0023】
しかしながら、この状態で負荷変動が生じ、エンジン負荷が基準負荷より大きくなったときには、リッチ気筒とリーン気筒の各空燃比制御量が変わらない(したがって排気空燃比の振れ幅も変わらない)のに、負荷増加分だけリッチ気筒の発生トルクがリーン気筒より相対的に大きくなり(リーン気筒の発生トルクとの間に差が生じ)、エンジンの安定度が悪化する。
【0024】
このとき第1の発明では、負荷増加分だけリッチ気筒の点火時期が遅角側に補正(リッチ気筒の発生トルクが抑制)されることから、リーン気筒とのトルク差がなくされ、エンジン回転が安定する。また、エンジン負荷が基準負荷より小さくなったときには、リッチ気筒とリーン気筒の各空燃比制御量が変わらないのに、負荷減少分だけリッチ気筒の発生トルクがリーン気筒より相対的に小さくなるが、このとき第1の発明では、負荷減少分だけリッチ気筒の点火時期が進角側に補正(リッチ気筒の発生トルクが増加)されることから、リーン気筒とのトルク差がなくされ、エンジン回転が安定する。つまり、基準負荷からの負荷変動が生じても、排気空燃比の振れ幅を変えることなく、アイドル安定度を確保しつつ触媒の暖機を促進することが可能となる。
【0025】
第5の発明では、各気筒の空燃比制御量と点火時期の設定を行う所定の運転条件がアイドル時であるので、補機負荷が加わっていないときのアイドル負荷を基準負荷として設定しておけば、補機負荷の作動によりエンジン負荷が基準負荷より大きくなると、その負荷増大分だけリッチ気筒の点火時期が遅角補正されることから、アイドル時に補機負荷の変動が生じるときにも、排気空燃比の振れ幅を変えることなく、アイドル安定度を確保しつつ触媒の暖機を促進することが可能となる。
【0026】
第7の発明では、リーン気筒の空燃比制御量がリーン限界相当であるので、燃費が向上する。
【0027】
第8の発明では、リーン限界相当の空燃比制御量が冷却水温に応じた値であるので、冷却水温が相違してもリーン気筒の空燃比がリーン限界から外れることがなく、これによって冷却水温が相違しても最小の燃費でリーン気筒を運転することができる。
【0028】
第9の発明では、リーン気筒の空燃比制御量がリーン限界相当であるのに合わせて、リーン気筒の点火時期がリーン限界相当の空燃比制御量に対するMBTであるので、燃費が一段と向上する。
【0029】
リーン気筒の発生するトルクはリーン気筒の空燃比制御量に応じて変化するのであるが、第10の発明では、リッチ気筒の点火時期がリーン気筒の空燃比制御量に応じた値(リーン気筒の空燃比制御量がリッチ側になるほど進角する値)であるので、リーン気筒の空燃比制御量が変化する場合でもリッチ気筒とリーン気筒のトルク差を無くすことができる。
【0030】
リッチ気筒の空燃比制御量によりリッチ側への排気空燃比の振れ幅(CO濃度)が定まり、リッチ気筒の空燃比制御量がリッチ側になるほどCO濃度が高くなるのであるが、所定の値以上のCO濃度を確保すれば触媒の温度上昇を促進できることが実験により明らかになったことから、第11の発明によりリッチ気筒の空燃比制御量を固定値とすることで、リッチ気筒の空燃比制御量を与えるに際して冷却水温などをパラメータとするテーブル検索を行う必要がなく、マッチングの工数を減らすことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1において、1はエンジン本体で、その吸気通路8にはスロットルバルブ5の下流に位置して燃料噴射弁7が設けられ、コントロールユニット(図ではC/Uで略記)2からの噴射信号により吸気中に燃料を噴射供給する。エンジンに供給される燃料流量は体積流量管理であり、噴射弁の開弁時間によってその流量を調整している。
【0032】
一方、シリンダヘッドには燃焼室に臨んで点火プラグ13の電極が設けられ、コントロールユニット2からの点火信号により所定のタイミングで点火コイルの一次電流が遮断されると、点火プラグ13の電極に火花が飛んで、シリンダー内の混合気に着火される。この着火により燃焼したガスは、排気通路9に設けた触媒(三元触媒)10によって浄化される。
【0033】
コントロールユニット2にはクランク角センサ4からのRef信号(4気筒では180°ごと、6気筒では120°ごとに発生)と1°信号、エアフローメータ6からの吸入空気量信号、排気通路9の三元触媒10の上流側に設置したO2センサ3からの空燃比(酸素濃度)信号、水温センサー11からのエンジン冷却水温信号等が入力され、これらに基づいてコントロールユニット2では燃料噴射量(空燃比)の制御を行う。
【0034】
また、スロットルバルブ5をバイパスする通路15にデューティ制御可能な補助空気弁16が設けられ、コントロールユニット2により補助空気弁16の開度が制御される。コントロールユニット2では、アイドル回転数フィードバック制御域で、冷却水温、始動後の経過時間、バッテリ電圧、パワステアリングスイッチ、エアコンスイッチなどからアイドル時に最適な目標回転数を定めており、実際の回転数がこの目標値から所定回転数(たとえば25rpm)以上離れたときには目標値に近づくように補助空気弁16の開度を調整することで、アイドル回転数のフィードバック制御を行う。
【0035】
さて、多気筒エンジンにおいて触媒が一部活性状態でかつアイドル時に三元触媒10の早期暖機を行うため点火順序で1つおきの気筒をリッチ気筒、残りの気筒をリーン気筒として、エンジン負荷に依存させることなく排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振らす操作を行うとともに、燃費向上の観点よりリーン気筒の点火時期をMBT付近に、さらに回転変動の防止の観点よりエンジンの基準負荷に対してリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同じになるようにリッチ気筒の点火時期をリーン気筒よりも遅角させてそれぞれ設定した場合に、空燃比の振れ幅が同一の条件において補機負荷の作動によりエンジン負荷が基準負荷と異なることになったとき、リッチ気筒とリーン気筒の間のトルク差による回転変動が生じることが、発明者の実験によって初めて明らかになった。
【0036】
これに対処するため本発明では、空燃比振れ幅をエンジンの負荷に依存させることなく定める一方で、エンジンの基準負荷に対してリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同じになるようにリッチ気筒の点火時期をリーン気筒の設定空燃比に応じて設定するとともに、エンジン負荷が基準負荷と相違するときにはエンジン負荷に応じてリッチ気筒とリーン気筒の間に生じるトルク差をなくす向きにリッチ気筒の点火時期を補正する。
【0037】
コントロールユニットで実行されるこの制御の内容を、以下のフローチャートにしたがって説明する。
【0038】
図2のフローチャートは、各気筒の燃料噴射弁7に与える燃料噴射パルス幅と各気筒の点火時期とを算出するためのもので、Ref信号に同期して実行する。
【0039】
まずステップ1で冷却水温Tw、スロットルバルブ開度TVO、クランク角センサ4により検出されるエンジン回転数Ne、エアフローメータ6からの吸入空気量Qaを読み込み、ステップ2では
Tp=(Qa/Ne)×K …(1)
ただし、K:定数
の式によりほぼ理論空燃比の混合気が得られる基本噴射パルス幅Tpを計算する。
【0040】
ステップ3、4は排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う条件の判定を行う部分で、その条件の判定はステップ3、4の内容を一つずつチェックすることにより行い、2つとも満たされたときに条件の成立時と判断し、ひとつでも反するときは条件の非成立時と判断する。すなわち、
ステップ3:触媒10が一部活性化している、
ステップ4:アイドル時である
ときに、条件の成立時であると判断してステップ9に進み、そうでなければステップ5に移行する。
【0041】
ここで、触媒10が一部活性化しているかどうかは、冷却水温(あるいは触媒10温度)などから判断する。始動時の冷却水温より所定値(たとえば10℃)以上高くなったときや始動からの経過時間が所定値(たとえば20秒)以上になったとき触媒が一部活性化したと判断させることもできる。実験では常温(20〜30℃)での始動を想定していたので、冷却水温Twが所定の範囲(40℃<Tw<60℃)にあるとき触媒10が一部活性化していると判断させた。
【0042】
なお、触媒10が未活性の状態では排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行ったとしても、リッチ気筒からのCO、HCとリーン気筒からのO2とが触媒10内で酸化反応することなくそのまま排出される(発熱しない)ので、冷間始動直後で触媒が未活性状態のときには排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作は行わない。
【0043】
アイドル時であるかどうかはスロットルバルブ開度TVO(あるいはアイドルスイッチ)から判断する。ここで、アイドル状態であることを条件としたのは、アイドル時は排気量が少なく触媒10の温度上昇にとって特に不利な条件であるので、排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作により触媒10の暖機を促進するためである。
【0044】
条件の判定結果より、触媒10が未活性状態(Tw≦40℃)にあるときや触媒10の活性化が終了(Tw≧60℃)したとき、さらに触媒10が一部活性化状態であるがアイドル時にないときにはステップ5以降に進んで空燃比と点火時期の各制御を従来と同様に行う。空燃比制御については、ステップ5で目標燃空比相当量TFBYAを
TFBYA=KAS+KTW+KMR …(2)
ただし、KAS:始動後増量補正係数
KTW:水温増量補正係数
KMR:混合比補正係数
の式により算出する。
【0045】
(2)式の各補正係数はいずれも公知で、KASは冷却水温Twに応じた値を初期値として始動後時間とともに一定の割合で減少し最終的に0となる値、KTWは冷却水温Twに応じた値である。KMRは高負荷時に空燃比をリッチ側にするため1.0を超える値(それ以外では1.0)となる。
【0046】
このようにして計算した目標燃空比相当量TFBYAを用いてステップ6で
Ti(n)=Tp×TFBYA×2+Ts …(3)
ただし、Ts:バッテリ電圧に応じた無効噴射パルス幅
の式により気筒別の燃料噴射パルス幅Ti(n)(ただしnは気筒番号)を算出し、これをステップ8において燃料噴射制御用の出力レジスタに転送する。
【0047】
ここで、燃料噴射はシーケンシャル噴射方式(エンジン2回転ごとに1回、各気筒とも排気行程を噴射タイミングとする方式)であるため、4気筒エンジン(点火順序を#1−#3−#4−#2とする)を例にとると、今回のRef信号の入力で1番気筒の排気行程においてTi(1)の燃料が供給されたとすれば、次回(つまり1回後)のRef信号の入力で3番気筒の排気行程において、2回後のRef信号の入力で4番気筒の排気行程において、3回後のRef信号の入力で2番気筒の排気行程においてそれぞれTi(3)、Ti(4)、Ti(2)の燃料が供給されるわけである。こうしたシーケンシャル噴射方式は、エンジンの始動時を含むすべての運転域で行われる。
【0048】
また、ステップ7では回転数Neと基本噴射パルス幅Tpとから所定のマップを検索して点火進角値MADVを求めこれを気筒別の点火進角値ADV(n)(ただしnは気筒番号)に入れたあと、この点火進角値ADV(n)をステップ8において点火時期制御用の出力レジスタに転送する。MADVは燃費向上のためMBTに設定している。
【0049】
ここで、気筒別の点火進角値ADV(n)は圧縮上死点前のクランク角であり、ADV(n)が出力レジスタに転送されたあと入出力インターフェースでは、Ref信号(たとえば圧縮上死点前の70°で立ち上がる)より1°信号をカウントし、そのカウント数が70−ADV(n)と一致したときn番気筒の点火コイルの一次電流を遮断する。
【0050】
一方、触媒10が一部活性化した状態にありかつアイドル時であればステップ9以降に進み、点火順序で一つ置きの気筒(たとえば1番気筒と4番気筒)の空燃比をリッチ化するとともに、その間の気筒(3番気筒と2番気筒)をリーン化することにより排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行い、さらにこのときのリッチ気筒とリーン気筒の各設定空燃比に合わせて点火時期を気筒別に設定する。
【0051】
リーン気筒のときにはステップ9よりステップ10に進み、図3を内容とするテーブルを検索してリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALを求め、このTFBYALを用いステップ11において
Ti(n)=Tp×TFBYAL×2+Ts …(4)
の式によりリーン気筒の燃料噴射パルス幅を算出する。(4)式のTFBYALは1.0より小さい値であり、リーン気筒ではTFBYALによりTpを減量することによって排気空燃比をリーン側へ振れさせるのである(1.0−TFBYALの値によりリーン側への排気空燃比の振れ幅が定まる)。
【0052】
さらに、TFBYALは燃焼可能な空燃比範囲のうちのリーン限界相当の値を設定している。リーン限界となる空燃比(後述するようにリーン限界時のMBTも)は冷却水温Twに応じて変化する(冷却水温が高くなるほどリーン側にずれる)ので、これに合わせてTFBYALの値を図3に示したように冷却水温Twが高くなるほど小さくしている。冷却水温によってリーン限界が変化する主な理由は、温度により燃料の気化状態が大きく変化し、低温時は燃料が気化しにくく燃焼が困難となるからである。
【0053】
なお、負荷によっても燃焼自体は影響を受けるが、これは冷却水温の影響に比べれば小さい。また、燃焼が改善される高負荷時にはもともと発生トルクが大きく、かつ燃焼変動幅も大きくなるので、リーン限界は実質的にあまり変化しない。これらの結果より、エンジン負荷に応じてリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALを変化させる必要はない。なお、高負荷時に燃焼改善してもリーン限界が変化しない理由を詳述すると、リーン限界は安定度(Piの変動幅)によって決まるが、これは燃焼のバラツキ率とそのときの図示平均有効圧Piの大きさによって決まるものである。イメージとしては、
σPi=(係数)×(燃焼のバラツキ率)×Pi
ただし、σPi:Piの変動幅
であり、この式において燃焼改善により燃焼のバラツキ率は小さくなるが、高負荷時はPiが大きくなるので、結果としてσPiはあまり変化しないのである。
【0054】
ステップ12では冷却水温Twから図4を内容とするテーブルを検索してリーン気筒の点火進角値ADVLを求め、これをリーン気筒の点火進角値ADV(n)に入れる。
【0055】
ここで、リーン気筒の設定空燃比(つまりTFBYAL)はリーン限界であるため、これに合わせてリーン気筒の点火時期(つまりADVL)をリーン限界の空燃比に対するMBTで設定している。前述のようにTFBYALが冷却水温Twに応じて変化するので、図4に示すように、ADVLの値は冷却水温Twが低いほど進角側の値になる。
【0056】
次に、リッチ気筒のときにはステップ9よりステップ13に進み、所定値Dをリッチ気筒の目標燃空比相当量TFBYARに入れ、このTFBYARを用いステップ14において
Ti(n)=Tp×TFBYAR×2+Ts …(5)
の式によりリッチ気筒の燃料噴射パルス幅を算出する。Dの値は1.0より大きな値であり、リッチ気筒ではTFBYARによりTpを増量することによって排気空燃比をリッチ側へ振れさせるのである。
【0057】
ここで、D−1.0の値によりリッチ側への排気空燃比の振れ幅(CO濃度)が定まり、Dの値を大きくするほどCO濃度が高くなるのであるが、所定の値(触媒10入口でたとえば1%程度)以上のCO濃度を確保すれば触媒10の温度上昇を促進できることが実験により明らかになったので、冷却水温Twやエンジン負荷に関係なくDの値を固定値としている。なお、Dの値はエンジン機種と触媒容量に依存するため、エンジン機種や触媒容量が相違するときにはDの値が異なってくることはいうまでもない。
【0058】
ステップ15ではリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALから図5を内容とするテーブルを検索してリッチ気筒の点火進角値ADVRを求める。
【0059】
ここで、点火時期が同じであればリッチ気筒のほうがリーン気筒より大きなトルクが発生し、そのトルク段差により回転変動が生じるので、リッチ気筒とリーン気筒のトルク差を解消するためにはリーン気筒の発生するトルクと同じトルクがリッチ気筒においても発生するようにリッチ気筒の点火時期を設定しなければならない。この場合に、リーン気筒の発生するトルクはリーン気筒の設定空燃比(つまりTFBYAL)に応じて変化するため、このTFBYALに応じてリッチ気筒の点火進角値ADVRを設定することで、TFBYALが変化する場合でもリッチ気筒とリーン気筒のトルク差を無くすことができるのである。実際には、図5に示すようにリーン気筒の設定空燃比がリーン側になるほど(TFBYALが小さいほど)、ADVRの値が遅角側になる。
【0060】
ステップ16では基本噴射パルス幅(負荷相当量)Tpから図6を内容とするテーブルを検索して点火時期の補正量ADVRHを求め、この補正量ADVRHを上記のADVRに加算した値をステップ17においてリッチ気筒の点火進角値ADV(n)に入れることにより、リッチ気筒の点火進角値を補正する。
【0061】
ここで、点火時期補正量ADVRHは、リッチ気筒とリーン気筒の各設定空燃比(したがって排気空燃比の振れ幅)が同一の条件において、補機負荷(たとえばエアコン、パワステアリング、電気負荷等)の作動により作動後のTpが基本設定点でのTp(補機負荷が加わってない状態でのアイドル時のTp)と異なったときにリッチ気筒とリーン気筒の間にトルク差が生じてしまうので、そうならないようにしたものである。
【0062】
具体的にはADVRHの値は、図6のように基本設定点でのTp(補機負荷が加わってない状態でのアイドル時のTp)のとき0であり、Tpが基本設定点でのTpより大きい領域で負の値となり(ADVRが遅角側に補正される)、また、Tpが基本設定点でのTpより小さい領域で正の値となる(ADVRが進角側に補正される)。たとえば、エアコン負荷がエンジンに加わることにより図7において基本設定点でのTpより所定値ΔTpだけTpが大きくなり、これに伴ってΔTのトルク差が生じるものとすれば、図6において基本設定点でのTpにΔTpを加えた値のときのADVRHの値(つまりADVRH1)でリッチ気筒の発生するトルクが基本設定点でのTpに対するときよりΔTだけ少なくなるように、ADVRH1の値をマッチングするのである。
【0063】
次に、排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う条件の成立時にも、ステップ8での操作により、リーン気筒では(4)式のTi(n)でリッチ気筒の排気行程において燃料噴射弁7が開かれ、点火進角値ADVLを用いて点火が行われる。リッチ気筒では(5)式のTi(n)でリーン気筒の排気行程において燃料噴射弁7が開かれ、点火進角値ADVR+ADVRHを用いて点火が行われる。
【0064】
ここで本発明の実施形態の作用を説明する。
【0065】
本発明の実施形態では、触媒10が一部活性化状態にありかつアイドル時に排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う際に、冷却水温に依存するリーン限界にリーン気筒の設定空燃比を設定しているが、エンジン負荷に依存させてはいない。負荷によっても燃焼自体は影響を受けるものの、冷却水温の影響に比べれば小さく、また、燃焼が改善される高負荷時にはもともと発生トルクが大きく、かつ燃焼変動幅も大きくなるので、リーン限界が実質的にあまり変化しない。これらの結果より、エンジン負荷に応じてリーン気筒の設定空燃比(つまりTFBYAL)を変化させる必要がないからである。
【0066】
この場合に、リーン気筒ではMBT付近で、またリッチ気筒ではリーン気筒の設定空燃比(つまりTFBYAL)に応じた点火時期(つまりADVR)でそれぞれ点火が行われると、基本設定点での負荷に対してはリッチ気筒とリーン気筒でトルク差を生じることがなく、触媒10内での酸化反応熱の増加により触媒10の暖機が促進される。
【0067】
しかしながら、この状態でエアコン負荷やパワステアリング負荷がエンジンに加わったときには、リッチ気筒とリーン気筒の各設定空燃比が変わらない(したがって排気空燃比の振れ幅も変わらない)のに、アイドル回転数のフィードバック制御により補助空気弁16が一定量だけ大きく開かれて吸入空気量(つまりTp)が増加し、これによってリッチ気筒の発生トルクがリーン気筒より相対的に大きくなり(リーン気筒の発生トルクとの間に差が生じ)、エンジンの安定度が悪化する。
【0068】
このとき、本発明の実施形態ではエアコン負荷やパワステアリング負荷が加わったことにより、Tpが基本設定点から増加して点火時期補正量ADVRHが負で求められ、この点火時期補正量ADVRHにより基本設定点からのTpの増加分だけリッチ気筒の点火時期が遅角側に補正(リッチ気筒の発生トルクが抑制)されることから、リーン気筒とのトルク差がなくされ、エンジン回転が安定する。つまり、アイドル時に補機負荷が加わることにより負荷変動が生じてもエンジンの安定度の悪化なしに同じ排気空燃比の振れ幅で排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を継続することが可能となる。
【0069】
なお、この状態でエアコン負荷やパワステアリング負荷がエンジンから切り離されたときには、補助空気弁16の開度がエアコン負荷やパワステアリング負荷が加わる前の状態に戻り(つまり基本設定点でのTpに戻る)、再びリッチ気筒とリーン気筒の発生するトルクが一致する。このときには、点火時期補正量ADVRHが基本設定点でのTpに対する値(つまり0)となるので、リッチ気筒の発生するトルクを抑制することはない。
【0070】
このようにして、本発明の実施形態では触媒10が一部活性化した状態かつアイドル時に排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振る操作を行う際に、リッチ気筒とリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYAR、TFBYALをエンジン負荷に依存させることなく設定する一方で、リーン気筒の点火進角値ADVLをMBT付近に、また基本設定点でのTpに対してリッチ気筒の発生するトルクがリーン気筒と同じになるようにリッチ気筒の点火進角値ADVRをリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALに応じてそれぞれ設定し、補機負荷の作動によりTpが基本設定点でのTpより大きくなるときにはその大きくなったTpの分だけリッチ気筒の点火進角値ADVRを遅角補正するようにしたので、排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振らせている場合に、補機負荷が加わることによる負荷変動が生じるときにも、排気空燃比の振れ幅を変えることなく、アイドル安定度を確保しつつ触媒10の暖機を促進することが可能となる。
【0071】
また、リーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALをリーン限界相当の値に設定するので、燃費が向上する。また、リーン限界相当の値を冷却水温に応じて設定するため、冷却水温が相違してもリーン限界から外れることがなく、これによって冷却水温が相違しても最小の燃費でリーン気筒を運転することができる。さらに、リーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALをリーン限界相当の値に設定したのに合わせて、リーン気筒の点火進角値ADVLをリーン限界の空燃比に対するMBTで設定しているので、燃費が一段と向上する。
【0072】
また、リーン気筒の発生するトルクはリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALに応じて変化するため、このリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALに応じてリッチ気筒の点火進角値ADVRを設定することで、リーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALが変化する場合でもリッチ気筒とリーン気筒のトルク差を無くすことができる。
【0073】
また、リッチ気筒の目標燃空比相当量TFBYARによりリッチ側への排気空燃比の振れ幅(CO濃度)が定まり、リッチ気筒の目標燃空比相当量TFBYARをリッチ側に大きく設定するほどCO濃度が高くなるのであるが、所定の値(触媒10入口でたとえば1%程度)以上のCO濃度を確保すれば触媒10の温度上昇を促進できることが実験により明らかになったことから、本発明の実施形態ではリッチ気筒の目標燃空比相当量TFBYARを固定値Dに設定しており、これによってTFBYARを与えるに際して冷却水温などをパラメータとするテーブル検索を行う必要がなく、マッチングの工数を減らすことができる。
【0074】
実施形態では、アイドル時に限って排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振る操作を行ったが、本発明はアイドル時以外の負荷領域にも拡大することができる。このときには、アイドル時でない所定の負荷条件でのTpを基本設定点でのTpとして設定し、外乱(たとえば低速での歩道の段差乗り越え時の外部からの負荷入力などがある)などの影響でエンジン負荷がこの基本設定点でのTpから増大したときには、その負荷増大分だけリッチ気筒の点火時期を遅角補正(この逆にエンジン負荷が基準設定点での負荷より減少したときにはその負荷減少分だけ点火時期を進角補正)することで、エンジン負荷に依存させることなく排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振らせている場合に、エンジン負荷が基本設定点での負荷より変化したときにも、排気空燃比の振れ幅を変えることなく、エンジンの安定度を確保しつつ触媒10の暖機を促進することが可能となる。
【0075】
実施形態では、排気空燃比をリッチ側とリーン側とに交互に振る操作を行うに際して、4気筒のうち2気筒をリッチ気筒に、残りの2気筒をリーン気筒にする場合で説明したが、O2濃度を高くするため1気筒のみをリッチ気筒、残り3気筒をリーン気筒としてもよい。さらに、4つの気筒のそれぞれに、点火順序に合わせてリッチ気筒、ストイキ気筒(リーンでもリッチでもない気筒のこと)、リーン気筒、通常気筒と割り振っておくこともできる。
【0076】
実施形態では、触媒10の一部活性化したかどうかを冷却水温や触媒温度に基づいて判定する場合で説明したが、これに限られるものでなく、公知の各種の活性化判定方法を用いることができる。
【0077】
【発明の効果】
エンジン負荷に依存させることなく排気空燃比をリッチ側とリーン側に交互に振る操作を行う一方、リーン気筒でMBT付近の設定点火時期により、またリッチ気筒でリーン気筒の空燃比制御量に応じた点火時期により点火を行う場合に、負荷変動が生じ、エンジン負荷が基準負荷と異なったときには、リッチ気筒とリーン気筒の各空燃比制御量が変わらない(したがって排気空燃比の振れ幅も変わらない)のに、基準負荷との相違分だけリッチ気筒とリーン気筒の間にトルク差が生じてエンジンの安定度が悪化するのであるが、このとき第1の発明では、基準負荷との相違分だけリッチ気筒の点火時期が補正されることから、リーン気筒とのトルク差がなくされ、エンジン回転が安定するのであり、これによって、基準負荷からの負荷変動が生じても、排気空燃比の振れ幅を変えることなく、アイドル安定度を確保しつつ触媒の暖機を促進することができる。
【0078】
第5の発明では、各気筒の空燃比制御量と点火時期の設定を行う所定の運転条件がアイドル時であるので、補機負荷が加わっていないときのアイドル負荷を基準負荷として設定しておけば、補機負荷の作動によりエンジン負荷が基準負荷より大きくなると、その負荷増大分だけリッチ気筒の点火時期が遅角補正されることから、アイドル時に補機負荷の変動が生じるときにも、排気空燃比の振れ幅を変えることなく、アイドル安定度を確保しつつ触媒の暖機を促進することができる。
【0079】
第7の発明では、リーン気筒の空燃比制御量がリーン限界相当であるので、燃費が向上する。
【0080】
第8の発明では、リーン限界相当の空燃比制御量が冷却水温に応じた値であるので、冷却水温が相違してもリーン気筒の空燃比がリーン限界から外れることがなく、これによって冷却水温が相違しても最小の燃費でリーン気筒を運転することができる。
【0081】
第9の発明では、リーン気筒の空燃比制御量がリーン限界相当であるのに合わせて、リーン気筒の点火時期がリーン限界相当の空燃比制御量に対するMBTであるので、燃費が一段と向上する。
【0082】
リーン気筒の発生するトルクはリーン気筒の空燃比制御量に応じて変化するのであるが、第10の発明ではリッチ気筒の点火時期がリーン気筒の空燃比制御量に応じた値であるので、リーン気筒の空燃比制御量が変化する場合でもリッチ気筒とリーン気筒のトルク差を無くすことができる。
【0083】
リッチ気筒の空燃比制御量によりリッチ側への排気空燃比の振れ幅が定まり、リッチ気筒の空燃比制御量がリッチ側になるほどCO濃度が高くなるのであるが、所定の値以上のCO濃度を確保すれば触媒の温度上昇を促進できることが実験により明らかになったことから、第11の発明によりリッチ気筒の空燃比制御量を固定値とすることで、リッチ気筒の空燃比制御量を与えるに際して冷却水温などをパラメータとするテーブル検索を行う必要がなく、マッチングの工数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の制御システム図である。
【図2】燃料噴射弁に与える燃料噴射パルス幅の気筒別算出と点火進角値の気筒別算出を説明するためのフローチャートである。
【図3】冷却水温Twに対するリーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALの特性図である。
【図4】冷却水温Twに対するリーン気筒の点火進角値ADVLの特性図である。
【図5】リーン気筒の目標燃空比相当量TFBYALに対するリッチ気筒の点火進角値ADVRの特性図である。
【図6】基本噴射パルス幅Tpに対する点火時期補正量ADVRHの特性図である。
【図7】従来例の負荷に対するリッチ気筒とリーン気筒の各発生トルクの特性図である。
【図8】吸入空気量の増加前後でのリッチ気筒とリーン気筒の各トルク変化を示す特性図である。
【図9】第1の発明のクレーム対応図である。
【図10】第12の発明のクレーム対応図である。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2 コントロールユニット
4 クランク角センサ
6 エアフローメータ
7 燃料噴射弁
10 三元触媒
13 点火プラグ
16 補助空気弁
Claims (12)
- 排気通路に触媒を設ける一方で、
リッチ気筒の空燃比制御量をエンジン負荷に依存させることなく設定する手段と、
リーン気筒の空燃比制御量をエンジン負荷に依存させることなく設定する手段と、
これらの空燃比制御量を用いて各気筒の空燃比を制御する手段と、
前記リーン気筒の点火時期をMBT付近に設定する手段と、
エンジンの基準負荷に対して前記リッチ気筒の発生するトルクが前記リーン気筒と同じになるように前記リッチ気筒の点火時期を前記リーン気筒の空燃比制御量に応じて設定する手段と、
エンジン負荷が前記基準負荷と相違するときエンジン負荷に応じて前記リッチ気筒とリーン気筒の間に生じるトルク差をなくす向きに前記リッチ気筒の点火時期を補正する手段と、
この補正されたリッチ気筒の点火時期と前記リーン気筒の点火時期を用いて各気筒の点火を行う手段と
を設けたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。 - 前記各気筒の空燃比制御量と点火時期の設定を所定の運転条件でだけ行うことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記所定の運転条件は前記触媒が一部活性化したときであることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記触媒が一部活性化したかどうかをエンジンの冷却水温または前記触媒の温度に基づいて判定することを特徴とする請求項3に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記所定の運転条件はアイドル時であることを特徴とする請求項2から4までのいずれか一つに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記リッチ気筒の点火時期の補正量は、前記エンジン負荷が前記基準負荷より大きいとき遅角側の、また前記エンジン負荷が前記基準負荷より小さいとき進角側の値であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記リーン気筒の空燃比制御量はリーン限界相当であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記リーン限界相当の空燃比制御量はエンジンの冷却水温に応じた値であることを特徴とする請求項7に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記リーン気筒の点火時期は前記リーン限界相当の空燃比制御量に対するMBTであることを特徴とする請求項7または8に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記リッチ気筒の点火時期は前記リーン気筒の空燃比制御量に応じた値であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記リッチ気筒の空燃比制御量は固定値であることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記空燃比制御手段は、ほぼ理論空燃比の得られる基本噴射量を運転条件に応じて算出する手段と、この基本噴射量を前記リッチ気筒について増加し、前記リーン気筒について減少する手段と、この増加される噴射量の燃料を前記リッチ気筒の吸気管に、また減少される噴射量の燃料を前記リーン気筒の吸気管に供給する手段とからなることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載のエンジンの排気浄化装置。
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