JP3571417B2 - 床振動制御装置 - Google Patents
床振動制御装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3571417B2 JP3571417B2 JP17740395A JP17740395A JP3571417B2 JP 3571417 B2 JP3571417 B2 JP 3571417B2 JP 17740395 A JP17740395 A JP 17740395A JP 17740395 A JP17740395 A JP 17740395A JP 3571417 B2 JP3571417 B2 JP 3571417B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- floor
- vibration
- movable
- control
- displacement
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Buildings Adapted To Withstand Abnormal External Influences (AREA)
- Floor Finish (AREA)
- Vibration Prevention Devices (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、床構造を二重構造にし、高層建造物の上層階の床の振動を能動的制御によって低減する床振動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、床構造を二重構造にして床の振動を低減するものとして、例えば免震床工法がある。免震床工法では、例えば、美術品展示室やコンピュータ室の免震床全体を建物構造床から浮かせ、免震床及び構造床間に免震装置を設置している。免震装置は、通常床面積8〜16平方メートルに1台の割合で構造床に固定されたすべり板の上に配置されており、免震装置の水平及び鉛直両方向とも柔らかいバネ構造を有して免震床を弾性支持する。そして、免震装置のバネによって免震床の振動周期は長周期に設定されるため、短周期を主成分とする地震の振動が免震床に伝達されることは低減される。また、設定値以上の地震力が免震装置に加わったときには、水平方向では免震装置はすべり板上をすべり、鉛直方向では免震装置の平常時固定装置が解除され鉛直方向の弾性作用が働き、地震力の免震床への伝達を低減させる。
【0003】
また、免震床が地震時に建物の壁や柱に衝突することを避けるために、免震床の周囲と壁等の間に隙間を設け、隙間は例えば硬質ゴムで塞がれ、地震時には硬質ゴムが外れるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、免震床が振動周期の長い超高層ビルの上層階に設置された場合には、地震時に、建物の構造床の揺れ幅は大きくなり、一方、免震床の加速度応答は免震装置によって小さくなるように保たれているので、構造床と免震床には大きな相対変位が生じる。相対変位が大きくなっても免震床と壁や柱とが衝突しなようにするためには、隙間を大きく取る必要がある。この場合、建物の外形寸法は決められているので、免震床の床面積が小さくなり、有効床面積が減少してしまい配置できる計算機等が制限されてしまうという問題が生じる。また、大地震時の地震力を考慮した場合には、隙間を1mぐらいに設定しなければならず、免震床を用いたときの有効床面積の減少は大きな問題となる。
【0005】
また、相対変位を小さくするには、免震床と構造床とを同調させればよいが、この場合には、免震床に作用する加速度を低減させることができず、美術品やコンピュータの倒壊や損傷を招き、初期の目的を達成することができない。
そこで、本発明においては、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、振動周期の長い超高層建物の上層階でも、設置品の倒壊や損傷を防止しながら床と構造床との相対変位を小さくすることができると共に、床に加わる加速度を小さく保持することができる床振動制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る床振動制御装置は、長周期振動特性を有する建造物の所定の上層階の構造床に支持部材を介して水平方向に移動可能に設置された可動床と、少なくとも前記構造床の水平方向の振動を検出する振動検出手段と、前記可動床と建造物との間に設置され前記可動床を水平方向に駆動する駆動手段と、前記振動検出手段で検出された振動に基づいて、前記可動床に生じる加速度を所定の低レベル内に保持しながら当該可動床を前記構造床の移動方向に移動させて前記可動床と前記構造床との相対変位を低減するように前記駆動手段を制御する変位制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る床振動制御装置は、前記変位制御手段が、建造物の1次固有周期に応じて前記可動床を前記構造床の移動方向に移動させることを特徴とする。
そして、請求項3に係る床振動制御装置は、前記振動検出手段が、前記可動床及び前記構造床の水平方向の振動を検出し、前記変位制御手段は、振動の入力によって生じる前記可動床及び前記構造床のそれぞれの応答速度及び応答変位に所定の制御ゲインを乗じて制御力を算出し、算出した制御力に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項4に係る床振動制御装置は、前記変位制御手段が、前記振動検出手段の出力信号の中から演算処理を行って建造物の1次固有周期成分を抽出し、抽出した1次固有周期成分を用いて制御力を算出することを特徴とする。
また、請求項5に係る床振動制御装置は、前記振動検出手段及び前記変位制御手段間にフィルタを介挿し、当該フィルタは、前記振動検出手段の出力信号における建造物の1次固有周期近傍の成分のみを通過させる特性を有することを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明者等は種々の実験を行った結果、高層階での美術品やコンピュータの倒壊や損傷の要因としては、地震力によって美術品等の設置床に作用する加速度の影響が最も大きいことを知見し、この加速度を低減することにより設置品の倒壊や損傷を防止することができることに着目して本発明を提案するに至ったものである。すなわち、請求項1に係る床振動制御装置によれば、振動検出手段で、少なくとも上層階の建造物構造床の水平方向の振動を検出し、変位制御手段で、検出された例えば加速度等に基づいて、可動床に生じる加速度を所定の低レベル内に保持しながら可動床を構造床の移動方向に移動させて、可動床と構造床との相対変位を低減している。
【0010】
本発明による床振動制御装置は、床の振動を低減する免震構成や、床の揺れを抑制して床を制止状態に保持する制振構成とは異なり、可動床を許容される所定の加速度範囲で構造床と同じ方向に揺らすように制御して、加速度の低減と、可動床と構造床との相対変位の低減を達成している。例えば、美術品が展示された部屋では、大きな加速度が入力されると美術品が展示台から落下する恐れがあるが、長周期で且つ許容範囲の低加速度で床を揺らしている場合にはその恐れは回避されるので、本発明は地震の振動対策として有効な手法となる。
【0011】
また、請求項2に係る床振動制御装置によれば、変位制御手段は、可動床を構造床の移動方向に移動させるときに、建造物の有している1次固有周期に応じて移動制御を行っている。長周期振動特性を有する建造物において、地震波に対する応答変位スペクトル特性によれば、1次固有周期の応答変位レベルは高次固有周期より大きく、また、応答加速度スペクトル特性によれば、1次固有周期の応答加速度レベルは高次固有周期より小さい。即ち、1次固有周期は変位が大きい割には加速度が小さいといえる。したがって、可動床を建造物の1次固有周期に応じて移動することにより、加速度を小さくして、且つ建物との相対変位を小さく抑えることが可能となる。
【0012】
そして、請求項3に係る床振動制御装置によれば、振動検出手段で、可動床及び構造床の水平方向の振動を検出して、クローズループ制御回路を構成する。そして、変位制御手段は、振動検出手段で検出された振動により、可動床及び構造床のそれぞれの応答速度及び応答変位を求め、この応答速度及び応答変位に所定の制御ゲインを乗じて制御力を算出し、算出した制御力に基づいて駆動手段を制御する。
【0013】
さらに、請求項4に係る床振動制御装置によれば、変位制御手段は、建造物の1次固有周期成分を振動検出手段の出力信号の中から例えばフーリエ変換処理やモーダルフィルタ処理を行って抽出し、これに基づいて制御力を算出する。
また、請求項5に係る床振動制御装置によれば、1次固有周期近傍の成分のみを通過させる特性を有するフィルタを振動検出手段及び変位制御手段間に介挿して、フィルタで振動検出手段の出力信号の中から1次固有周期近傍の成分を抽出し、これを変位制御手段に入力する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、建物最上階に移動制御可能な可動床を配置したときの概略構成図である。図中、1は、長周期振動特性を有する超高層(例えば55階建て)の建物であり、建物1の最上階における構造床2s とアクティブコントロールされる可動床3との間に、構造床2s に対して可動床3を水平方向へ移動可能に支持する弾性部材例えば積層ゴムからなる支承4が介挿されている。そして、可動床3には、可動床3を水平の一方向に移動させる駆動手段としての駆動装置5が接続され、この駆動装置5は建物1の所定の部位に固定される。
【0015】
また、建物1の最上階及び1階の各構造床2s 及び2g、更に最上階の可動床3には、振動によって生じた例えば各床の加速度を検知する振動検出手段としての振動センサ6がそれぞれ設置されている。振動センサ6は例えば加速度センサで構成され、各振動センサ6から出力された加速度出力信号は、可動床3に設置されている変位制御手段としての制御装置7に入力される。
【0016】
制御装置7は、図2のブロック図に示すように、振動センサ6のセンサ出力信号が入力されるアンプ7aと、アンプ7aの出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換器7bと、A/D変換器7bの出力信号に基づいて可動床3を駆動制御するための制御力Uを算出し、制御力Uに対応した指令値US を出力する演算処理装置7cと、演算処理装置7cの指令値US をアナログ信号の駆動制御電圧VD に変換するD/A変換器7dとを有する。そして、D/A変換器7dから出力される駆動制御電圧VD は駆動装置5に入力され、駆動装置5は、駆動制御電圧VD に対応した制御力を発生して可動床3を駆動する。
【0017】
駆動装置5は、図3の概略構成図に示すように、構造床2s に設けたブラケット2aに支承されるシリンダチューブ5aと、可動床3の下部に形成されたブラケット3aに一端が接続され、他端はシリンダチューブ5a内に圧力室5b及び5cを画成するピストン5dに連結されたピストンロッド5eと、シリンダチューブ5aの圧力室5b及び5cにそれぞれ接続されたポートA及びBを有し、入力された制御電圧VC に基づいて、圧力室5b及び5cに作用する流体の供給・排出を切換ると共にスプールの移動によって流量を制御する電気油圧式制御弁5fと、電気油圧式制御弁5fのポートTに接続され、常時流体を蓄えるタンクTと、電気油圧式制御弁5fのポートPに接続され、タンクTに蓄えられた流体を制御弁5fを介してシリンダ5dに供給するポンプPと、ポンプP及びタンクT間に接続される圧力制御弁Rと、地震等の振動検知時に所定の制御装置によって起動されポンプPを作動する電動モータMと、入力された駆動制御電圧VD の正負に応じて経路を切り換え、且つ、正電圧の駆動制御電圧VD は正電圧のままで、負電圧の駆動制御電圧VD は正電圧に反転して、増幅した正電圧の制御電圧VC を電気油圧式制御弁5fの駆動コイルに出力するドライバ5gとを有する。
【0018】
ここで、電気油圧式制御弁5fは、平時には中立を保ち圧力室5b及び5cへの流体の供給及び排出を行わず、地震時に駆動制御電圧VD に対応した制御電圧VC に基づいて切換えを行う。そして、例えば、負電圧の駆動制御電圧VD が駆動装置5に入力されたときには、制御弁5fの一の駆動コイルに制御電圧VC が入力されてポートP及びB間が連通し、図示右側の圧力室5bに流体が供給されて制御電圧VC の電圧レベルに応じてピストンロッド5eは後退する。また、正電圧の駆動制御電圧VD が入力されたときには、制御弁5fの他の駆動コイルに制御電圧VC が入力されてポートP及びA間が連通し、図示左側の圧力室5cに流体が供給されて入力電圧レベルに応じてピストンロッド5eは前進する。
【0019】
また、演算処理装置7cでは、最上階の構造床2s 、1階の構造床2g、及び可動床3の各振動センサ6で検出されたそれぞれの加速度GS ,GG ,GF が入力され、加速度の1回積分及び2回積分の処理を行って、それぞれ応答速度VS ,VG ,VF 及び応答変位XS ,XG ,XF を算出する。そして、これらの応答速度VS 〜VF 及び応答変位XS 〜XF を用いて、次式(1)で示す演算処理を行って、可動床3を移動制御する制御力Uを算出する。
【0020】
U=kSDXS +kGDXG +kFDXF +kSVVS +kGVVG +kFVVF …(1)
ここで、kSD〜kFVはゲイン係数を表し、ゲイン係数kSD〜kFVの設定は、図4に示した加速度応答スペクトル、及び図5に示した応答変位スペクトルの1次固有周期成分を考慮して行う。
図4及び図5は、長周期振動特性を有する建物1の1階に地震波を入力したときに、上層階で生じる揺れの、地震波の各周期成分に対する応答加速度及び応答変位のシミュレーションをそれぞれ表しており、建物1の1次固有周期成分が5.5秒に現れ、2次及び3次の各固有周期成分がそれぞれ1.9秒及び1.1秒に現れている。両図から明らかなように、1次固有周期の応答加速度レベルは高次固有周期より小さく、また、1次固有周期の応答変位レベルは高次固有周期より大きい。また、建物自体が有する振動の減衰性能により応答加速度及び応答変位が変化し、減衰値hZ が高いと1次固有周期成分における応答加速度及び応答変位が大きく低下する。
【0021】
このように、1次固有周期の応答加速度は小さいが、応答変位は大きいので、例えば、一定の力を加えて床を揺らしたときには、高次固有周期より1次固有周期のときが床を大きく揺らすことができる。したがって、1次固有周期に同期させて可動床3を最上階の構造床2s と同じ方向に動かすように可動床に所定の力を加えることにより、可動床3と構造床2s の相対変位を低減させ、且つ、可動床3に生じる加速度を小さく抑えることが可能となる。しかも、図5に示すように、最上階の構造床2s が揺れているときには、応答変位の高いレベルは1次固有周期成分近傍に分布しているので、特に1次固有周期に同期させて可動床3を動かさなくても、許容される所定の加速度範囲内で、構造床2s の動きに合わせて可動床3を移動させるように、式(1)のゲイン係数を所定の値に設定することにより、可動床3の低加速度の保持、及び構造床2s と可動床3との相対変位の低減を両立できる。
【0022】
このときのゲイン係数の設定に際しては、図4及び図5で示された特性を考慮して、建物の減衰値hZ が大きいときには各ゲイン係数を小さく設定する。そして、応答加速度のみに注目して単純に応答加速度を低減させると相対変位の低減効果が減少し、また、単純に相対変位を低減させると応答加速度の低減効果が低下するため、各ゲイン計数は応答加速度と相対変位のトレードオフを図りながら最適値を設定する必要がある。なお、建物1の揺れかたは、建物1の高さや重量や建築工法等の条件によって微妙に変化するので、各ゲイン係数kSD〜kFVの設定にはこれらの諸条件も考慮して最終的な最適値が決定される。
【0023】
次に、実施形態の動作を図6〜図9を参照して説明する。
図6〜図9の波形図は、式(1)のゲイン係数kSD〜kFVが、kSD=0.331tonf/cm、kGD=−0.903tonf/cm、kFD=0.572tonf/cm、kSV=0.568tonf・sec /cm、kGV=−0.807tonf・sec /cm、kFV=0.239tonf・sec /cm、にそれぞれ設定されているときの特性を表している。
【0024】
建物1の地表面に図6に示す地震波が入力されると、建物1の最上階の55階に地震波が伝達されて、55階の構造床2s には揺れが発生する。この55階の構造床2s では、このとき、図7の波形図において破線で示す負の応答加速度、及び、図8の波形図において同じく破線で示す正の応答変位が生じ、構造床2S は、例えば右方向に揺れたとする。
【0025】
演算処理装置7cでは、最上階及び1階の各構造床2s ,2gに設置されている各振動センサ6によって検出された加速度GS ,GG が入力され、応答速度VS ,VG 及び応答変位XS ,XG が算出される。なお、可動床3は弾性部材で支持されているので、この時点ではまだ可動床3に加速度は生じていない。そして、応答速度VS ,VG 及び応答変位XS ,XG に基づいて、算出式(1)により制御力Uが算出され指令値US が出力される。指令値US はD/A変換器7dで駆動制御電圧VD に変換され、更に、駆動制御電圧VD は駆動装置5に入力される。初期時に、55階の構造床2s に、負の応答加速度及び正の応答変位が生じて、構造床2s が右方向に揺れたときには、演算処理の結果、図9に示す制御力Uの値に対応した負の指令値US が得られ、負の駆動制御電圧VD が出力される。これにより、図示右側の圧力室5bに流体が供給されてピストンロッド5eは後退するが、図9の制御力の波形図に示すように、可動床3を完全には制止させない微小な負の制御力が発生して、可動床は、構造床2s と同じく図示右方向へ僅かに移動する。
【0026】
可動床3の移動によって、可動床3に設置されている振動センサ6から加速度GF が検出される。初期時には可動床3の右方向の移動によって負の加速度GF が検出される。演算処理装置7cでは、加速度GS ,GG ,GF より、それぞれ応答速度VS ,VG ,VF 及び応答変位XS ,XG ,XF を算出する。そして、式(1)により制御力Uが算出され、A/D変換された駆動制御電圧VD に基づいて駆動装置5は駆動される。当初は、加速度GS ,GG ,GF は共に負の値を示すため、負の制御力Uが得られ、可動床3は自身の加速度が許容値を越えないように制御されながら右方向へ移動される。
【0027】
そして、約5秒経過時に、図8に破線で示すように、55階の構造床2s の揺れ方向が右から左へと変化し、構造床2s の応答変位が負の値になる。このとき、図9の制御力に示すように、正の値の制御力Uが算出され、正電圧の駆動制御電圧VD によってピストンロッド5eは前進されるが、構造床2s の左への変化速度よりピストンロッド5eの前進速度が小さくなるように制御される。この結果、図8に示すように、構造床2s と可動床3との応答変位方向が一致するようになる。
【0028】
この後更に、構造床2s ,2g及び可動床3の各加速度GS ,GG ,GF に応じた制御力が可動床3に印加され、制御が継続される。この結果、図8に示すように、構造床2s 及び可動床3の各応答変位の正負の符号は一致し、例えば、構造床2s が右に揺れたときには可動床3も右に揺れる。また、図7に示すように、可動床3の応答加速度の値は、構造床2s の応答加速度より小さな値に保持されながら制御される。
【0029】
このように、本実施形態においては、許容できる加速度の範囲内で可動床3に制御力を加えて、可動床3を最上階の構造床2s と同じ方向に移動している。このため、可動床3の加速度を小さく抑えながら、可動床3と構造床2s との相対変位を小さく保つことができる。この結果、可動床3が建物の壁や柱に衝突することを回避するために可動床3と構造床2s の隙間を大きく設定しておかなくてもよいため、有効床面積が広くなる。
【0030】
また、長周期振動特性を有する建物の応答変位成分は1次固有周期が大きな割合を占めているので、この1次固有周期に応じて可動床3を構造床2s の移動方向に移動させることにより、加速度を抑制しながら大きな応答変位を容易に得ることができる。
そして、本実施形態においては、可動床3及び構造床2s の振動によって発生した各床の応答速度及び応答変位を用いて制御力Uを算出しているので、構造床2s の変動に対する可動床3の移動制御を容易に且つ確実に実行することができる。
【0031】
なお、演算処理装置7cで制御力Uを算出するときに、1次固有周期近傍の周期成分を例えばフーリエ変換やモーダルフィルタ処理を行って抽出し、これに基づいて制御力Uの演算処理を行ってもよい。この場合には、揺れの主成分のみに対応して正確な制御を実行することができ、確実に相対変位を小さくすることが可能となる。
また、1次固有周期近傍の周期成分を抽出するときに、演算処理装置7cで演算処理を行う代わりに、A/D変換器7b及び演算処理装置7c間に例えば帯域通過フィルタを介挿して、1次固有周期成分を抽出してもよい。この場合には、制御力Uを算出するための演算処理時間は増加しないため、正確な制御を高速に実行することができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、式(1)で、1階に設置した振動センサ6から求められた応答速度VF 及び応答変位XF を制御力Uの算出に使用して可動床3の移動制御を行っているが、この1階の振動センサ6は、地表面に対する構造床2s 及び可動床3の夫々の相対変位及び相対速度を算出し、制御に用いるために設けているので、最上階の構造床2s 及び可動床3に設置した2か所の振動センサ6のみでも可動床3の移動制御を行うことはできる。また、オープンループ制御を行うときには、最上階の構造床2s に設置した1か所の振動センサ6のみでも可動床3の移動制御を行うことはできる。また、上記実施形態においては、加速度を検知する振動センサを用いているが、これに限定されるものではなく、速度や変位を検知する振動センサを用いてもよい。
【0033】
また、上記実施形態においては、制御力を式(1)で算出しているが、これに限定されるものではなく、例えば、可動床を振動に対して制止させる制振力を算出する制振演算式と、可動床を構造床の移動方向へ移動させる駆動力を算出する駆動演算式とを別個の式で表し、これらの式を合わせて制御力を算出してもよい。これにより、制振力と駆動力がどの程度作用しているか容易に判別することができるようになり、建物ごとの制御力の設定が容易になる。
【0034】
また、上記実施形態においては、一方向の加速度に基づいて可動床の変位量を制御しているが、これに限定されるものではない。例えばXY軸の直交する水平方向のそれぞれの加速度を検知し、2つの油圧シリンダで直交する方向にそれぞれ制御力を発生させ、可動床のブラッケト及びピストンロッド間にリンク機構を設け、ピストンロッドの作動による可動床の水平方向の移動を自在にして、可動床の移動量を制御するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、駆動装置に油圧シリンダを用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、空気圧シリンダを用いてもよい。また、シリンダ方式の代わりに電磁力で可動床を駆動してもよい。例えば、制御力に応じて電磁コイルに流れる電流の向き及び電流量を変えて、制御力の発生方向及び量を制御するようにしてもよい。また、駆動装置にACサーボモータを用い、例えばカム機構を用いて回転運動を直線運動に変換して可動床を駆動してもよい。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る床振動制御装置においては、少なくとも構造床の水平方向の振動を検出する振動検出手段と、可動床を駆動する駆動手段と、可動床の加速度を低レベルに保持しながら可動床と構造床との相対変位を低減するように駆動装置を制御する変位制御手段とを備えている。このため、設置品の倒壊や損傷を防止できると共に、可動床が建物の壁や柱に衝突しないようにするために可動床と構造床の隙間を大きく設定しておかなくてもよいので、有効床面積を広くすることができるという効果を有する。
【0037】
また、請求項2に係る床振動制御装置においては、変位制御手段で、建造物の1次固有周期に応じて可動床を構造床の移動方向に移動させている。長周期振動特性を有する建造物の応答変位成分は1次固有周期が大きな割合を占めているため、1次固有周期に応じて可動床を移動させることにより、加速度を抑制しながら、建物との相対変位を小さくすることが可能となる。
【0038】
そして、請求項3に係る床振動制御装置においては、応答速度及び応答変位を用いて制御力を算出しているので、構造床の変動に対する可動床の移動制御を容易に且つ確実に行うことができる。
さらに、請求項4に係る床振動制御装置においては、演算処理を行って1次固有周期成分を抽出し、この抽出した1次固有周期成分を用いて制御力を算出している。このため、揺れの主成分のみに対応して正確な制御を実行することができ、確実に相対変位を小さくすることが可能となる。
【0039】
また、請求項5に係る床振動制御装置においては、フィルタで1次固有周期成分を抽出している。このため、揺れの主成分のみに対応した正確な制御を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係る演算処理装置のブロック図である。
【図3】実施形態に係る駆動装置の概略構成図である。
【図4】加速度応答スペクトルを示すグラフである。
【図5】変位応答スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施形態に係る地表面の入力加速度を示す波形図である。
【図7】実施形態に係る可動床及び55階の各応答加速度を示す波形図である。
【図8】実施形態に係る可動床及び55階の各応答変位、及び可動床の相対変位を示す波形図である。
【図9】実施形態に係る可動床に加わる制御力を示す波形図である。
【符号の説明】
1 建物
2s 最上階の構造床
2g 一階の構造床
3 可動床
4 支承
5 駆動装置
6 振動センサ
7 制御装置
Claims (5)
- 長周期振動特性を有する建造物の所定の上層階の構造床に支持部材を介して水平方向に移動可能に設置された可動床と、少なくとも前記構造床の水平方向の振動を検出する振動検出手段と、前記可動床と建造物との間に設置され前記可動床を水平方向に駆動する駆動手段と、前記振動検出手段で検出された振動に基づいて、前記可動床に生じる加速度を所定の低レベル内に保持しながら当該可動床を前記構造床の移動方向に移動させて前記可動床と前記構造床との相対変位を低減するように前記駆動手段を制御する変位制御手段とを備えたことを特徴とする床振動制御装置。
- 前記変位制御手段は、建造物の1次固有周期に応じて前記可動床を前記構造床の移動方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の床振動制御装置。
- 前記振動検出手段は、前記可動床及び前記構造床の水平方向の振動を検出し、前記変位制御手段は、振動の入力によって生じる前記可動床及び前記構造床のそれぞれの応答速度及び応答変位に所定の制御ゲインを乗じて制御力を算出し、算出した制御力に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の床振動制御装置。
- 前記変位制御手段は、前記振動検出手段の出力信号の中から演算処理を行って建造物の1次固有周期成分を抽出し、抽出した1次固有周期成分を用いて制御力を算出することを特徴とする請求項3に記載の床振動制御装置。
- 前記振動検出手段及び前記変位制御手段間にフィルタを介挿し、当該フィルタは、前記振動検出手段の出力信号における建造物の1次固有周期近傍の成分のみを通過させる特性を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の床振動制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17740395A JP3571417B2 (ja) | 1995-07-13 | 1995-07-13 | 床振動制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17740395A JP3571417B2 (ja) | 1995-07-13 | 1995-07-13 | 床振動制御装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0925707A JPH0925707A (ja) | 1997-01-28 |
JP3571417B2 true JP3571417B2 (ja) | 2004-09-29 |
Family
ID=16030330
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17740395A Expired - Fee Related JP3571417B2 (ja) | 1995-07-13 | 1995-07-13 | 床振動制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3571417B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018079673A1 (ja) * | 2016-10-27 | 2018-05-03 | 三菱電機株式会社 | 免震装置、昇降装置および免震ユニット |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3448449B2 (ja) * | 1997-02-21 | 2003-09-22 | 積水化学工業株式会社 | 床材及びこれを使用したマンション |
JP4057134B2 (ja) * | 1998-03-12 | 2008-03-05 | 株式会社フジタ | アクティブ型除振装置 |
JP4587011B2 (ja) * | 2000-11-24 | 2010-11-24 | 清水建設株式会社 | アクティブ免震の制御方法及び制御装置 |
JP4724190B2 (ja) * | 2008-02-07 | 2011-07-13 | 三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 | 制振装置 |
JP7340832B2 (ja) * | 2018-11-30 | 2023-09-08 | 国立大学法人東京農工大学 | 振動抑制装置 |
-
1995
- 1995-07-13 JP JP17740395A patent/JP3571417B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018079673A1 (ja) * | 2016-10-27 | 2018-05-03 | 三菱電機株式会社 | 免震装置、昇降装置および免震ユニット |
JP6437177B2 (ja) * | 2016-10-27 | 2018-12-12 | 三菱電機株式会社 | 免震装置、昇降装置および免震ユニット |
JPWO2018079673A1 (ja) * | 2016-10-27 | 2019-02-28 | 三菱電機株式会社 | 免震装置、昇降装置および免震ユニット |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0925707A (ja) | 1997-01-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3571417B2 (ja) | 床振動制御装置 | |
JP3359976B2 (ja) | 制振装置 | |
JPH09195581A (ja) | 構造物の制振装置 | |
JPH05231038A (ja) | 制振装置 | |
JP2002139096A (ja) | セミアクティブ免震システム | |
JP2513297B2 (ja) | 可変減衰機構を有する可変剛性構造物用能動型制震システム | |
JP2900831B2 (ja) | 減衰係数自動調整型制震装置 | |
JPH05231039A (ja) | 制振装置 | |
JP2862470B2 (ja) | ブームの制振装置 | |
JP4556384B2 (ja) | 免震制御方法、免震制御装置および免震構造物 | |
JP3035455B2 (ja) | 制振装置用油圧アクチュエータ | |
KR101057096B1 (ko) | 가상모드를 이용한 입력성형 제어장치 및 그 방법 | |
JP2513296B2 (ja) | 可変剛性・可変減衰機構を有する能動型制震システム | |
JPH0369431B2 (ja) | ||
JPH05231036A (ja) | 制振装置 | |
JPH0238668A (ja) | 建築築構造体の制震構造 | |
JPH05231040A (ja) | 制振装置 | |
JP3601849B2 (ja) | 制振装置 | |
JP3267472B2 (ja) | 制振装置における油圧制御方法 | |
JPS63226466A (ja) | 制振装置の制御方法 | |
JP2900843B2 (ja) | 減衰係数自動調整型制震装置 | |
JP2549436B2 (ja) | 制振装置 | |
JPH083758B2 (ja) | 多関節構造機械の制御装置 | |
JP2000130497A (ja) | 制振装置 | |
JPH05231037A (ja) | 制振装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040608 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040624 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080702 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090702 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100702 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110702 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110702 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120702 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130702 Year of fee payment: 9 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |