JP4556384B2 - 免震制御方法、免震制御装置および免震構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、免震構造物に作用する広い範囲の様々な振動に対して有効に免震性能を発揮し得る免震制御方法およびこれを用いた免震制御装置並びに免震構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、地震に対して構造物の安全性を確保するために、当該構造物の基礎部分や中間階の柱等に免震装置を介装することにより、地震等によって地盤から構造物に伝播しようとする振動を緩和させて、構造物の躯体に生じる応力や変形を少なくする様々な構造の免震構造が開発され、実用に供されている。
このような免震構造物に使用される免震装置としては、大別して積層ゴム等を用いた弾性支承系のものと、滑り支承系または転がり支承系のものとが知られている。
【0003】
ちなみに、上記積層ゴムを用いた弾性支承による免震装置は、鋼板とゴムシートとを交互に多層に重ねあわせることにより、大きな荷重支持能力と水平変位能力とを有する支承部材であり、地震時に発生する水平方向の相対変位を上記ゴムの弾性によって吸収し、構造物の固有周期を長周期化させることにより地震力の影響を低減化させるものである。
【0004】
他方、すべり支承系または転がり支承系の免震装置は、構造物と基礎との間に介装されたすべり部材や転がり部材によって、地震時に構造物と基礎との間の相対変位を許容することにより、地震力が直接建物に作用することを抑制するものである。
そして、上記滑り支承系の免震装置によれば、摩擦力によって上記振動を減衰させることができ、さらに当該振動を積極的に減衰させる場合には、通常上記免震装置に加えて粘性ダンパ等の減衰装置が併設されている。
【0005】
ところで、このような免震装置および減衰装置を介装した免震構造物や免震床は、一般に短周期成分が卓越する地震動に対しては、上部構造や床を長周期化することにより加速度応答を大幅に低減することができ、よって高い免震性能を発揮しうることが知られている。
しかしながら、上記免震構造物や免震床に対して、長周期成分が卓越した速度レベルの大きな地震動が作用した場合には、上記免震装置の応答振幅が過大となり、この結果周囲の構造物と干渉するおそれがあるという問題点を有している。
【0006】
そこで、近年、減衰力を変化させることができる可変減衰機構を備えた減衰装置を用いるとともに、地震動の加速度や地震動によって構造物や床に生じる相対的な変位を計測し、これによって地震動の加速度や相対的な変位が一定値以下の場合は、構造物の加速度、速度、変位が最小になるように減衰装置の減衰力を制御して免震効果を発揮させ、それ以外の場合や,長周期成分が卓越する地震動と判断された場合には、速やかに上記減衰装置の減衰力を大きくすることにより、上記免震装置における過大な応答変形を抑制する免震制御方法およびこれを用いた免震構造物や免震床が提案されつつある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1は、この種の従来の免震システムを示すもので、構築物と地盤との間を水平方向のみ弾性支持する支承と、減衰力を任意に可変の減衰装置を、構築物と地盤との間に設置して、地盤と構築物の加速度を検知するセンサと、地盤と構築物の相対変位を検知するセンサからの信号に応じて前記減衰装置の減衰力を切り替える制御装置を備え、前記構築物と前記減衰装置の特性を表現する方程式から双線形最適制御理論に基づく最適な制御力を求め、該制御力を前記減衰装置の最適な可変減衰力として選定することを特徴とするものである。
【0008】
しかしながら、上記従来の免震システムは、制御装置が複雑化するとともに、本来的に、地震による揺れと強風などによる揺れとを峻別して最適な免震制御を行おうとするものであり、このため上記減衰力を、上記構築物が線形であることを前提とする双線形最適制御理論によって決めている。したがって、上記免震システムにあっては、上述したような構造物が塑性変形(非線形化)するような長周期成分が卓越する大地震に対しては、しかるべき免震性能を保証することができないという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−12106号公報
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、制御が簡易で、かつ大地震のような構造物が非線形化する振動に対しても、当該構造物の応答変位が過大になることを確実に防止することが可能となる高性能の免震制御方法およびこれを用いた免震制御装置並びに免震構造物を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、構造物の上下部構造間に介装された減衰力が可変な減衰装置を有する免震手段の上記減衰力を制御するための免震制御方法であって、予め上記上下部構造間における基準振幅値を設定するとともに、上記構造物に振動が作用した際の上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を測定し、これら振幅値および速度から上記振動の一定時間後の予測振幅値を算出し、上記予測振幅値が上記基準振幅値よりも大きい場合に上記減衰力を増加させ、上記予測振幅値が上記基準振幅値よりも小さい場合に上記減衰力を減少させることを特徴とするものである。
【0012】
この際に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記予測振幅値と上記基準振幅値との相異量に比例した量だけ上記減衰力を増減することを特徴とするものである。
【0013】
次いで、請求項3に記載の本発明は、上下部構造間に介装された免震装置と、上記上部構造に生じる振動を減衰させるとともにその減衰力が可変な減衰装置とを有する免震構造物の上記減衰力を制御する免震制御装置であって、上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて、上記減衰装置の上記減衰力を制御するための制御手段とを備えてなり、かつ上記制御手段は、上記検出信号に基づいて、請求項1または2に記載の免震制御方法によって、上記減衰装置の減衰力を制御するようになっていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4に記載の本発明に係る免震構造物は、上下部構造と、これら上下部構造間に介装された免震装置と、上記上部構造に生じる振動を減衰させるとともにその減衰力が可変な減衰装置と、上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて、上記減衰装置の上記減衰力を制御するための制御手段とを有してなり、かつ上記制御手段は、上記検出信号に基づいて、請求項1または2に記載の免震制御方法によって、上記減衰装置の減衰力を制御するようになっていることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、請求項3または4に記載の発明において、上記免震装置としては、滑り支承および積層ゴムを組み合わせたものが好適であり、さらに上記減衰装置としては、制御の容易さの観点から上記上下部構造間に介装された可変減衰式の粘性ダンパを用いることが好ましい。ちなみに、上記粘性ダンパとしては、オイルダンパ、磁気粘性流体を用いたMRダンパ、ERダンパ等の各種の粘性体の粘度によって減衰力を発生させるダンパが適用可能である。
なお、上記免震構造物とは、上下部構造間に免震装置が介装された建物等の構造物の他、免震床等も包括的に含むものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、本発明の免震制御装置および免震構造物の一実施形態並びにその他の実施形態を示すものである。
すなわち、図1(a)は、建物(上部構造)1とその基礎部分(下部構造)2との間に免震装置3を介装するとともに、これらの間に可変減衰式の粘性ダンパ(減衰装置)4を設置したものである。他方、図1(b)は、嫌振機器類5を設置する床(上部構造)6と、この床6を支承する建物の躯体(下部構造)7との間に、免震装置3を介装するとともに、これらの間に可変減衰式の粘性ダンパ4を設置したものである。そして、これらの免震構造物においては、それぞれ粘性ダンパ4に取り付けられて上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を検出する図示されないセンサ(検出手段)と、このセンサからの検出信号に基づいて、粘性ダンパ4の減衰力を制御するための制御手段とが設けられている。
【0017】
ここで、上記免震装置3としては、滑り支承と積層ゴムとを上下方向に直列に、あるいは水平方向に並列的に組み合わせたものが好適である。このような免震装置3によれば、微小振動に対しては上記積層ゴムによる弾性変形のみで当該振動を吸収し、所定以上の振幅の振動が作用した際に滑り支承に滑りが生じることにより、その摩擦力によって当該振動を吸収することができる。また、粘性ダンパ4としては、上述したようにオイルダンパ、磁気粘性流体を用いたMRダンパ、あるいはERダンパ等の各種の粘性体の粘度によって減衰力を発生させるダンパを使用することができる。
【0018】
図2〜図4は、それぞれ上記粘性ダンパ4の具体例およびその可変減衰機構を示すものであり、図2および図3はユニフロータイプのオイルダンパ4a、図4はMRダンパ4bである。
図2(a)および図3(a)に示すオイルダンパ4aは、各々内部に粘性体である作動油10が充填されたシリンダ11内に、ピストン12が移動自在に設けられるとともに、このピストン12に、図中右方のシリンダ室11aから図中左方のシリンダ室11bへのみ一定流量の作動油10の流れを許容する流路13が形成されたものである。そして、シリンダ11の外部には、シリンダ室11bからシリンダ室11aを戻すリターンライン14が配管されており、このリターンライン14に調圧用のオリフィス14aが介装されている。
【0019】
以上の構成からなるオイルダンパ4aは、シリンダ11およびピストン12のロッド15の一方が上記上下部構造の一方に固定され、当該シリンダ11およびロッド15の他方が上記上下部構造の他方に固定されることにより減衰装置を構成している。
そして、図2(a)に示すオイルダンパ4aには、リターンライン14に、可変減衰機構としてオリフィス14aと並列的に比例電磁リリーフ弁16aを介装したバイパスライン16が配管されており、この比例電磁リリーフ弁16aに加える電圧を変化させることによって、作動油10が比例電磁リリーフ弁16aを通過する圧力を変えて、図2(b)に上下方向矢印で示すように、減衰力を可変とするようになっている。
【0020】
また、図3(a)に示すオイルダンパ4aにおいては、上記オリフィス14aが並列的に設けられており、各々のオリフィス14aのラインに、可変減衰機構として電磁弁17が介装されている。そして、電磁弁17の開閉によって、作動油が流れるオリフィス14aの数(この場合は、0、1または2)を変化させることにより、リターンライン14を流れる作動油の量を制御して、図3(b)に示すように、減衰力を多段階(図では3段階)に切り替えるようにしたものである。なお、図中符号18は、リリーフ弁である。
【0021】
さらに、図4(a)に示すMRダンパ4bは、内部に磁性流体20が充填されたシリンダ21内に、ピストン22が移動自在に設けられるとともに、このピストン22の移動方向前後のシリンダ室21a、21b間を連通されるバイパス23が形成され、このバイパス23の内壁部に、可変減衰機構として複数列の電磁石24が組み込まれたものである。そして、このMRダンパ4bも、シリンダ21およびピストン22のロッド25の一方が上記上下部構造の一方に固定され、当該シリンダ21およびロッド25の他方が上記上下部構造の他方に固定されることにより減衰装置を構成している。また、上記MRダンパ4bにあっては、電磁石24に加える電圧を変化させて、磁性流体20の粘性を変化させることにより、図4(b)に上下方向矢印で示すように、減衰力を可変とするようになっている。
【0022】
次に、図5に基づいて、以上の構成からなる免震制御装置または免震構造物を用いた本発明の免震制御方法の一実施形態について説明する。
すなわち、この免震制御方法においては、オイルダンパ4aのロッド15またはMRダンパ4bのロッド25に設けられて上下部構造間の相対的な振幅値および速度を検出するセンサからの検出信号に基づき、上記制御装置が図5に示す制御フローによって、図2(a)に示すオイルダンパ4aの比例電磁リリーフ弁16a、図3(a)に示すオイルダンパ4aの電磁弁17、あるいは図4(a)に示すMRダンパ4bの電磁石24を制御することにより、粘性ダンパ4(本実施の形態においてはオイルダンパ4aまたはMRダンパ4b)の減衰力を変化させる。
【0023】
この際に、粘性ダンパ4の減衰力Fは、減衰係数C×ロッド15,25の速度Vで表される。そして、各々の粘性ダンパ4は、可変減衰機構によって極力減衰係数を小さくした場合においても、作動油10または磁性流体20の粘性や流路抵抗などによって、上記減衰係数Cを一定値以下にすることができない。また、逆に上記減衰係数を大きくしようとする場合においても、ケーシング10,20等の機械的強度により一定の限度がある。そこで、予め上記制御装置に、粘性ダンパ4における減衰係数の下限値Cvminおよび上限値Cvmaxを設定しておく。
【0024】
そして先ず、ステップ1において、i=0として減衰係数に初期値Cinitを設定し、次いでステップ2において、i=i+1として、現時点における粘性ダンパ4の振幅値Xaiと速度Vaiとを上記センサによって計測する。そして、得られた振幅値Xaiおよび速度Vaiの検出信号に基づき、ステップ3において、ΔT秒後の線形予測振幅Xai´を下式に基づいて計算する。
Xai´=Xai+ΔT・Vai
この際に、上記ΔTとしては、卓越周期の1/4波長に対応する時間(秒数)に設定すれば、確実に当該振幅におけるピーク値を予測することができるために好適である。
【0025】
他方、上記制御装置には、予め免震構造物に適応した基準振幅値XaTを設定しておく。ちなみに、この基準振幅値XaTは、各々の免震構造物において、地震が発生した際に当該免震構造物に許容される応答振幅に基づいて設定する。
そして、ステップ4において、上記基準振幅値XaTとステップ3において得られた線形予測振幅Xai´との相対誤差βi を、下式によって評価する。
βi =(|Xai´|/XaT)−1
【0026】
次いで、ステップ5において、下式により上記βi が正の場合には、粘性ダンパ4の減衰係数Ci が増加され、他方上記βi が負の場合には、粘性ダンパ4の減衰係数式Ci が減少される。
Ci =Ci-1 +ΔC・βi
ここで、ΔCは、上記センサによる一回の測定値に基づいて制御する際の減衰係数の増分または減分する値である。
【0027】
このようにして、ステップ5において減衰係数Ci が設定されると、ステップ6において、上記減衰係数Ci が上述した粘性ダンパ4における下限値Cvminおよび上限値Cvmaxの範囲であるか否かが判定され、当該範囲内である場合には、その減衰係数Ci が採用される。これに対して、上記計算によって得られた減衰係数Ci が下限値Cvmin以下になってしまう場合には、当該下限値Cvminが、逆に上限値Cvmax以上になってしまう場合には、当該上限値Cvmaxが適正な減衰係数として採用される。
【0028】
以上により、免震構造物に作用する振動の周期に応じて、適正な減衰装置における減衰係数Ci が設定されるが、本実施形態においては、さらにステップ7において、安全上上記減衰係数Ci によって生じる減衰力が、粘性ダンパ4における機械的な限界荷重Ucを超えないことを判定する。
すなわち、上記減衰係数Ci ×速度Vaiにより、減衰力Ui を計算し、この減衰力Ui と上記限界荷重Ucとを対比して、安全性を担保した上で、当該減衰係数Ci を制御すべき値として制御装置の出力とする。
【0029】
そして、以上の制御がセンサの一定時間毎の検出値に対して実行されることにより、地震発生から経時的に連続した粘性ダンパ4の制御が行われ、特に長周期が卓越する大地震が発生した際においても、上記免震構造物の応答変位が過大になることを確実に防止することができる。
【0030】
また、図6は、上述した構成の免震構造物を用いた本発明の免震制御方法の他の実施形態における制御フローを示すものである。
この制御方法は、いわゆる減衰係数の2段階切り換え型の制御方法であって、ステップ1からステップ5までは、図5に示した制御方法と同一である。
そして、この制御方法においては、予め減衰係数の基準値CVTを設定しておき、ステップ6において、上記ステップ5で得られた減衰係数Ci と基準値CVTが対比され、減衰係数Ci が上記基準値CVTを僅かでも超えた際に、即、減衰係数Ci を粘性ダンパ4における最大減衰係数Cvmaxに設定し、減衰力Ci が基準値CVT以下となった際に、再び減衰力Ci を粘性ダンパ4における最小減衰係数Cvminに設定する。
【0031】
次いで、この制御方法においても、図5に示したものと同様に、ステップ7において、上記減衰係数Ci によって生じる減衰力が、粘性ダンパ4における機械的な限界荷重Ucを超えないことを判定したうえで、当該減衰係数Ci を制御すべき値として制御装置の出力とする。
このような2段階切り換え型の制御方法によれば、粘性ダンパ4の可変減衰機構や制御装置が一層簡易になるという利点がある。加えて、上記減衰係数の基準値CVTとして、当該粘性ダンパ4における最小減衰係数Cvminを選択しておけば、ステップ5において得られた減衰係数Ci が僅かでも最小減衰係数Cvminを超えた際に、減衰係数Ci を粘性ダンパ4における最大減衰係数Cvmaxに設定することにより、確実に所望の安全性を得ることが可能となる。
【0032】
【実施例】
図6に示した減衰係数の2段階切り換え型の制御方法における作用効果を確認するために、以下のシミュレーション解析を行った。
先ず、図7に示すように、解析の対象となる免震構造物として、積層ゴムと弾性滑り支承で支持された9階建ての鉄筋コンクリート構造物に、可変減衰式のオイルダンパを設置した可変減衰式免震構造物を想定した。この免震構造物の各階の質量、剛性および免震装置における支持加重は、それぞれ図中に示すとおりである。また、上部構造および免震装置の条件は、図8(a)、(b)に示すとおりである。また、上記オイルダンパは、減衰係数が0.1tonf/kineと2.5tonf/kineとの2段切り換え型で、最大減衰力が80tonfのものを15台使用した。
【0033】
そして、上記免震構造物に対して、1999年の台湾地震時に観測された地震波記録を作用させた場合について解析を行った。
この地震波記録について説明すると、図9(a)は断層破壊の伝搬方向前方に位置していた石岡における加速度波形を示すものであり、図9(b)は断層破壊の伝搬方向後方に位置していた新街における加速度波形を示すものである。そして、図10(a)、(b)は、各々上記加速度波形を積分解析することによって得られた石岡、新街における速度波形を示すものである。
これらの図から、石岡における地震動は、長周期成分が卓越するものであり、他方新街における地震動は、短周期成分が卓越するものであることが判る。
【0034】
そして、図11(a)は、上記免震構造物に対して、長周期成分が卓越する上記石岡における地震動が作用した際の、可変減衰装置における減衰係数が最小の場合、上記減衰係数が最大の場合、および免震を行わない非免震の場合のそれぞれの上記加速度を示すものであり、図11(b)は、同じく3種類の場合の変位を示すものである。
同図によれば、減衰係数最小の場合、弾性滑り支承と積層ゴムのみを用いた通常の免震構造物と同等の免震性能を発揮する。すなわち、この場合には、最大応答加速度は、非免震の場合に比べて半減しているが、最大応答変形は、免震層において約140cmに達しており、過大な変形が生じていることが判る。一方、減衰係数最大の場合、最大加速度は減衰係数最小の場合とあまり変わらないのに対して、免震層における最大応答変形は、約50cm程度と大幅に低減されている。
【0035】
また、図12(a)は、上記免震構造物に対して、短周期成分が卓越する上記新街における地震動が作用した際の、可変減衰装置における減衰係数が最小の場合、上記減衰係数が最大の場合、および免震を行わない非免震の場合のそれぞれの上記加速度を示すものであり、図12(b)は、同じく3種類の場合の変位を示すものである。
同図によれば、減衰係数最小の場合、最大応答加速度は、非免震の場合に比べて大幅に低減しており、最大応答変形も、免震層において25cm程度に納まっている。一方、減衰係数最大の場合、免震層における最大応答変形は、約10cm程度と半減しているものの、最大加速度は減衰係数最小の場合と比較して、約2倍に増幅している。
【0036】
以上のシミュレーション解析結果により、免震層における最大応答変形の予測振幅値がある基準値を下回る場合は、減衰係数を最小に設定し、ある基準値を上回る場合は、減衰係数を最大に設定する、上述した減衰係数の2段階切り換え型の制御方法の有用性が判る。
すなわち、減衰係数の切替の応答変形基準値を30cm程度に設定しておけば、新街における地震動のような短周期成分が卓越する地震動に対しては、上記減衰係数の切り換えが行われに最小値に設定され、通常の免震構造物と同様の最大加速度応答低減効果を発揮し、石岡における地震動のような長周期成分が卓越する地震動に対しては、減衰係数が最大となるように設定されることにより、最大応答変形を抑制しつつ、かつ加速度応答の増大も抑制することが可能なる。
【0037】
なお、上記実施の形態においては、減衰装置としてオイルダンパやMRダンパ等の粘性ダンパを使用した場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、上部構造間に介装されて地震時に生じる相対変位を積極的に低減し得るものであれば、各種形態のものを適用することが可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1または2に記載の免震制御方法およびこれを用いた請求項3に記載の免震制御装置並びに請求項4に記載の免震構造物によれば、構造物に振動が作用した際の上下部構造間の相対的な振幅値および速度を測定し、これらから上記振動の一定時間後の予測振幅値を算出して、得られた予測振幅値と上記基準振幅値との相異に基づいて上記減衰力を制御しているので、例えば当該予測振幅値が予め設定した基準振幅値よりも大きい場合に上記減衰力を増加させ、および/または上記予測振幅値が上記基準振幅値よりも小さい場合に上記減衰力を減少させる等の制御を行うことにより、簡易な制御装置によって、大地震のような構造物が非線形化する振動に対しても、当該構造物の応答変位が過大になることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の免震構造物の一実施形態および他の実施形態を示す概略構成図で、(a)は基礎免震の建物、(b)は床免震である。
【図2】オイルダンパおよびその可変減衰機構を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)は、速度−減衰力の変化を示すグラフである。
【図3】図2の他の実施形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は、速度−減衰力の変化を示すグラフである。
【図4】MRダンパおよびその可変減衰機構を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)は、速度−減衰力の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の免震制御方法の一実施形態を示す制御フロー図である。
【図6】本発明の免震制御方法の他の実施形態を示す制御フロー図である。
【図7】実施例の解析対象となる免震構造物の諸元を示す図である。
【図8】図7の免震構造物の(a)上部構造、および(b)免震装置の条件を示す図である。
【図9】(a)は解析に使用した石岡における地震動の加速度波形を示すグラフであり、(b)は同じく新街おける地震動の加速度波形を示すグラフである。
【図10】(a)は石岡における地震動の速度波形を示すグラフであり、(b)は同じく新街おける地震動の速度を示すグラフである。
【図11】図7の免震構造物に対して石岡における地震動が作用した際の解析結果を示すグラフで、(a)は最大応答加速度、(b)は最大応答変形である。
【図12】図7の免震構造物に対して新街における地震動が作用した際の解析結果を示すグラフで、(a)は最大応答加速度、(b)は最大応答変形である。
【符号の説明】
1 建物(上部構造)
2 基礎部分(下部構造)
3 免震装置
4 粘性ダンパ(減衰装置)
4a オイルダンパ(粘性ダンパ)
4b MRダンパ(粘性ダンパ)
6 床(上部構造)
7 建物の躯体(下部構造)
16a 比例電磁リリーフ弁(可変減衰機構)
17 電磁弁(可変減衰機構)
24 電磁石(可変減衰機構)
Claims (4)
- 構造物の上下部構造間に介装された減衰力が可変な減衰装置を有する免震手段の上記減衰力を制御するための免震制御方法であって、
予め上記上下部構造間における基準振幅値を設定するとともに、上記構造物に振動が作用した際の上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を測定し、これら振幅値および速度から上記振動の一定時間後の予測振幅値を算出し、上記予測振幅値が上記基準振幅値よりも大きい場合に上記減衰力を増加させ、上記予測振幅値が上記基準振幅値よりも小さい場合に上記減衰力を減少させることを特徴とする免震制御方法。 - 上記予測振幅値と上記基準振幅値との相異量に比例した量だけ上記減衰力を増減することを特徴とする請求項1に記載の免震制御方法。
- 上下部構造間に介装された免震装置と、上記上部構造に生じる振動を減衰させるとともにその減衰力が可変な減衰装置とを有する免震構造物の上記減衰力を制御する免震制御装置であって、
上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて、上記減衰装置の上記減衰力を制御するための制御手段とを備えてなり、かつ上記制御手段は、上記検出信号に基づいて、請求項1または2に記載の免震制御方法によって、上記減衰装置の減衰力を制御するようになっていることを特徴とする免震制御装置。 - 上下部構造と、これら上下部構造間に介装された免震装置と、上記上部構造に生じる振動を減衰させるとともにその減衰力が可変な減衰装置と、上記上下部構造間の相対的な振幅値および速度を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて、上記減衰装置の上記減衰力を制御するための制御手段とを有してなり、かつ上記制御手段は、上記検出信号に基づいて、請求項1または2に記載の免震制御方法によって、上記減衰装置の減衰力を制御するようになっていることを特徴とする免震構造物。
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