JP3570660B2 - グロメット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はグロメットの屈曲性、防水性、防音性、及び復元性に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来のグロメットを示すものである。
車両内のエンジンルームから室内へ配索されたワイヤハーネスを保護すると共に、エンジンルームから室内への騒音の透過を防止するために、図のようなグロメットが提案されている。
【0003】
図7において、このグロメット40は、円筒状のグロメット本体41の一側に周壁47を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒43を連成し、グロメット本体41の外周に環状溝44を形成するものである。挿通筒43の復元性を向上させるために、挿通筒43の周壁47側に蛇腹部43aが形成されている。なお、45は車両等のパネル壁であり、46はパネル壁に形成されたパネル孔をそれぞれ示す。
【0004】
グロメット40を成形する場合、蛇腹部43aの伸縮方向がワイヤハーネス挿通方向と平行であるから、図8に示すように、成形金型50を三つに分割する必要がある。即ち、グロメット本体41の貫通部分を形成するために、図のように、雌型の成形金型51および雄型の成形金型52とは別方向へ中子の成形金型53を移動する必要がある。すると、一度で成形できるグロメット40の個数が少ないという問題点があった。なお、54は雌型の成形金型51と雄型の成形金型52との分割面を示す。
【0005】
そこで、使用する成形金型50の個数を減らし、かつ一度で成形できるグロメット40の個数を増加させるために、図9に示すようなグロメット40′が提案されている。
このグロメット40′は、グロメット本体41の一側に周壁47を介して挿通筒43を連成し、グロメット本体41の外周に環状溝44を形成するものである。挿通筒43の復元性を向上させるために、周壁47にはワイヤハーネス挿通方向と直交する方向へ伸縮する蛇腹部47aが形成されている。
【0006】
しかしながら、ワイヤハーネス42を挿通したグロメット40′が、図10ような方向へ引っ張られると、蛇腹部47aが伸縮自在な方向と異なる方向へ伸ばされるため、周壁47の復元性が低下して周壁47が伸びっ放しの状態になるという欠点があった。そして、周壁47が伸びっ放しの状態になると、設計上の配置場所に確実にグロメット40′が配置できず、また配置したとしても、グロメット40′の見栄えが悪かった。
【0007】
なお、図11のように、周壁47の蛇腹部47bが挿通筒43の中心軸からθ=45°の位置に形成されているグロメット(実開昭61−172277号公報)40″の場合には、グロメット40″の成形が簡単になる反面、周壁47の復元性が弱い。
【0008】
そして、従来、図12のようなグロメット60も提案されている(特開平4−249817号公報)。
このグロメット60は、グロメット本体61の環状溝62内に突条63を周設して第一周溝64と第二周溝65とを区画形成するものである。第一周溝64及び第二周溝65を有するから、パネル壁45に形成されたパネル孔46の形状に対応することができる。
【0009】
しかしながら、ワイヤハーネス(図示せず)を挿通した後に、グロメット60の挿通筒65が屈曲されると、周壁66が引っ張られるために、パネル孔46と第一周溝64または第二周溝65との間に隙間(図示せず)が生じ、防水性が低下するという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した点に鑑み、グロメット本体の周壁の復元力、およびグロメット本体の環状溝とパネル壁のパネル孔と間の嵌着力を確実に向上させることをグロメットを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、パネル孔に嵌着される環状溝と内部に貫通孔とを有するグロメット本体の一端に、周壁を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒を連成して成るグロメットにおいて、前記周壁に蛇腹部を周設すると共に、該蛇腹部の凹部の凹み方向および凸部の突出方向をワイヤハーネス挿通方向と平行に配置し、該凹部内または該凸部内に少なくとも一つの補強リブを設けたことを特徴とする(請求項1)。
パネル孔に嵌着される環状溝と内部に貫通孔とを有するグロメット本体の一端に、周壁を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒を連成して成るグロメットにおいて、前記周壁に蛇腹部を周設すると共に、該蛇腹部の凹部の凹み方向および凸部の突出方向をワイヤハーネス挿通方向と平行に配置し、該周壁の内壁面で前記挿通筒と該蛇腹部との間に前記ワイヤハーネス挿通方向へ内筒を設け、前記貫通孔の内壁面で前記グロメット本体の他端側から該挿通筒方向へ押え片を突設すると共に、該押え片の自由端部で該内筒の外面を付勢し、該押え片で該周壁の屈曲を抑制することを特徴とする(請求項2)。
前記補強リブの位置が前記挿通孔を中心として放射状かつ対称であることを特徴とする(請求項3)。
前記蛇腹部が二周以上周設されていることを特徴とする(請求項4)。
前記蛇腹部、前記内筒、及び前記押え片によってノイズ遮断空間を区画形成し、該ノイズ遮断空間内に空気を閉じ込めることによって車内へのエンジン音の透過を防止することを特徴とする(請求項)。
【0012】
請求項1によれば、グロメット本体の一端と挿通筒との間に形成された周壁が蛇腹部を周設し、かつ蛇腹部の凹部の凹み方向および凸部の突出方向がワイヤハーネス挿通方向と平行であるから、周壁が蛇腹部の凹凸方向へ屈曲し易くなる。これにより、挿通筒が屈曲されると、それに追従して周壁も屈曲する。また、補強リブが蛇腹部の凹部内又は凸部内に少なくとも一つ位置するから、補強リブを配置した部分が、補強リブを配置していない部分より厚肉になる。これにより、補強リブを配置した部分の復元力が強化される。
請求項2によれば、内筒が周壁の内面で挿通筒と蛇腹部との間の位置から、ワイヤハーネス挿通方向へ延びている。押え片がグロメット本体の貫通孔の内壁面でグロメット本体の他端側から挿通筒方向へ突出している。それと共に、押え片の自由端部で内筒の外面を付勢している。これにより、周壁が屈曲されると、押え片の自由端部が内筒の外面に強く当接して、周壁の屈曲を抑制する。
【0013】
請求項3及び4によれば、補強リブが挿通筒を中心として放射状であると共に対称であるから、補強リブが周壁の片面に挿通筒から一直線上に並ぶ。これによって、補強リブを配置して厚肉になった部分が周壁の片面に一列ずつになる。
【0014】
請求項によれば、ノイズ遮断空間が蛇腹部、内筒、及び押え片によって区画形成されるから、空気がノイズ遮断空間内に閉じ込められる。これにより、エンジン音がノイズ遮断空間内に進入すると、エンジン音が空気内に閉じ込められて周壁を透過しない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。
図1〜図4は本発明に係るグロメットの第一実施例を示すものである。なお、従来と同一構成部材には同一名称を付けて詳細な説明を省略する。
図1において、このグロメット1は、円筒状のグロメット本体2の一側2aに周壁5を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒4を連成し、グロメット本体2の外周に環状溝3を周設し、周壁5に蛇腹部5aを形成し、蛇腹部5aの凹部7に補強リブ6を配置するものである。環状溝3は車両等のパネル壁45に形成されたパネル孔46に嵌着される。
【0016】
蛇腹部5aが周壁5の挿通筒4側からグロメット本体2側へ形成されると共に、蛇腹部5aの凹部7の凹み方向、および凸部8の突出方向がワイヤハーネス挿通方向(P方向)と平行に配置されている。凹部7の凹み方向、および凸部8の突出方向がP方向と平行であるから、周壁5が従来よりも屈曲し易くなる。これにより、グロメット1をパネル孔31に嵌着する作業がスムーズに行われる。なお、凹部7および凸部8を周壁5に二周以上に渡って周設することも可能である。
【0017】
図1及び図2に示すように、補強リブ6は凹部7内に二つ配置されると共に、挿通筒4の中心軸4aから放射状かつ対称である。そして凹部7内の補強リブ6は凹部7の底から凸部8の頂点と同一の高さに至るまで形成されている。なお、本実施例では二つの補強リブ6,6を配置しているが、補強リブ6の個数を二つに限定する必要はなく、少なくとも一つの補強リブ6を配置すれば良い。また、補強リブ6を凹部7内の代わりに凸部8内に設けることも可能である。要するに、周壁5の片面に補強リブ6を形成させれば良い。
【0018】
本実施例では蛇腹部5aの凹部7または凸部8が周壁5に一周ずつ周設されているが、図3のように、凹部7,7′または凹部8,8′が周壁5に二周形成されている場合でも、同様にして、補強リブ6を設けることができる。従って、三周以上の場合も同様である。
補強リブ6が蛇腹部5aの凹部7内に配置されている場合を説明する。なお、補強リブ6が凸部8内に設ける場合も同様である。
【0019】
凹部7内に補強リブ6が配置されると、図2のように、蛇腹部5aには厚肉部10と薄肉部11とが共存するから、厚肉部10が薄肉部11より復元力が強く、薄肉部11が厚肉部10より屈曲性に富んでいる。これにより、例えば、図4に示す如くに、ワイヤハーネス12を挿通したグロメット1を屈曲する場合、周壁5の薄肉部11で簡単に屈曲するが、周壁5を元の状態に復帰させようとして厚肉部10に復元力が生じる。即ち、従来と比較して、周壁5の復元性が向上される。
【0020】
また、補強リブ6が挿通筒4の中心軸4aから放射状かつ対称に配置されているから、周壁5の屈曲時に、厚肉部10によって生じる復元力が厚肉部10の周囲に略均等に作用する。これにより、屈曲されたグロメット1の見栄えが従来よりも向上される。
【0021】
図5及び図6は、本発明に係るグロメットの第二実施例を示すものである。なお、第一実施例と同一構成部材には同一名称を付けて詳細な説明を省略する。
図5において、このグロメット20は、グロメット本体22の一側22aに周壁25を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒24を連成し、グロメット本体22の外周に環状溝23を周設し、周壁25に蛇腹部25aを形成し、周壁25の内壁面25bに内筒26を周設し、グロメット本体22の貫通孔29の内壁面29aから内筒26へ付勢する押え片30を突設するものである。
【0022】
内筒26は、周壁25の内壁面25bで蛇腹部25aの挿通筒24側からワイヤハーネス挿通方向(P方向)と平行に延びてグロメット本体22の他端22bまで達する。
押え片30はグロメット本体22の貫通孔29の内壁面29aでグロメット本体22の他端22b側から突設されている。貫通孔29の内壁面29aに突設された押え片30は、挿通筒24方向へ傾斜した状態で自由端部30aを内筒26の外面26aに当接するように付勢されている。なお、周壁25に補強リブ6(図1参照)を配置することも可能である。
【0023】
内筒26、押え片30、および周壁25の蛇腹部25aにより、グロメット本体22の内部にはノイズ遮断空間31が区画形成される。ノイズ遮断空間31内には空気が閉じ込められるから、エンジンルーム音がノイズ遮断空間31内の空気中で閉じ込められ、エンジン音の振動が車内へ伝われない。これにより、防音性が維持される。
【0024】
また、ワイヤハーネス32を挿通したグロメット20をパネル孔46に嵌着した後に、例えば、図6の如くに、周壁25が左側に屈曲されると、図のように、周壁25の右側の蛇腹部25a′が延び、そして左側の蛇腹部25aが縮む。右側の押え片30′は起立状態、および左側の押え片30は僅かに横倒し状態へそれぞれ移行するから、押え片30(30′)の自由端部30a(30a′)が内筒26の外面26aに常に当接する。
【0025】
これにより、屈曲された周壁25を元の状態に復帰させようとして、左右側の押え片30,30′が内筒26の外面26aを押圧する。従って、グロメット本体22の環状溝23とパネル孔46との間の嵌着力が低下しない。即ち、挿通筒24およびワイヤハーネス32が屈曲されてもグロメット20とパネル壁45との防水性が低下しない。
【0026】
【発明の効果】
以上の如くに、請求項1によれば、蛇腹部がグロメット本体の一端と挿通筒との間の周壁に形成されると共に、蛇腹部の凹部の凹み方向および凸部の突出方向がワイヤハーネス挿通方向と平行であるから、周壁が蛇腹部の凹凸方向(グロメット本体の半径方向)へ屈曲し易くなる。これにより、挿通筒が屈曲されると、それに追従して周壁も屈曲する。従って、グロメットをパネル孔に嵌着する作業が、従来に比較して、よりスムーズになる。
また、蛇腹部の凹部内または凸部内に少なくとも一つの補強リブを配置した部分が、補強リブを配置していない部分より厚肉になるから、補強リブを配置した部分の復元力が、補強リブを配置していない部分より強力になる。これにより、補強リブを配置した部分が復元力を強力にすることができる。従って、グロメットをパネル孔に嵌着することが容易になると共に、嵌着後、環状溝とパネル孔との嵌着力が低下しない。
【0027】
請求項2によれば、周壁の内面で挿通筒と蛇腹部との間にワイヤハーネス方向へ設けられた内筒の外面へ付勢するように、貫通孔の内壁面でグロメット本体の他端側から挿通筒方向へ押え片が突設されているから、例えば、周壁が屈曲している場合でも、押え片が変位して自由端部が常に内筒の外面に当接する。これにより、押え片の自由端部が、屈曲している周壁を元の状態に復帰させようとして周壁の屈曲を抑制する。従って、グロメットをパネル孔に嵌着した後に、グロメット本体の環状溝とパネル孔との間の嵌着力が低下せず、着実に環状溝とパネル孔との防水性が維持される。
【0028】
請求項3及び4によれば、挿通筒を中心として放射状かつ対称に配置された補強リブが、周壁の片面に挿通筒から一直線上に並べられるから、補強リブを配置して厚肉になった部分が周壁の片面に一列ずつ配列される。これにより、グロメットが屈曲された場合に、厚肉になった部分が周壁に及ぼす復元力が周壁に略均等に作用し、周壁が伸びっ放しにならない。従って、屈曲時におけるグロメットの見栄えが従来より良くなると共に、グロメットを配置する設置場所の問題が解決される。
【0030】
請求項によれば、グロメット内の蛇腹部、内筒、及び押え片によって区画形成されたノイズ遮断空間が、内部に空気を閉じ込めるから、エンジン音がノイズ遮断空間内に進入すると、空気内にエンジン音が閉じ込められて周壁を透過することができない。即ち、車内が防音される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るグロメットの第一実施例を示す側面図である。
【図2】図1のワイヤハーネスを省略した正面図である。
【図3】本発明に係るグロメットの蛇腹部の他の例を示す断面図である。
【図4】図1においてグロメットが傾斜した状態で固定される場合を示す断面図である。
【図5】本発明に係るグロメットの第二実施例を示す断面図である。
【図6】図5において、グロメットが屈曲した状態を示す断面図である。
【図7】従来例であり、平行型の伸縮部を有するグロメットを示す側面図である。
【図8】グロメットを成形する成形金型を示す図である。
【図9】他の従来例であり、垂直型の伸縮部を有するグロメットを示す側面図である。
【図10】図7のハーネスが引っ張られた状態を示す側面図である。
【図11】別の従来例であり、傾斜した伸縮部を有するグロメットを示す断面図である。
【図12】更に別の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,20 グロメット
2, グロメット本体
5,25 周壁
5a,25a 蛇腹部
6 補強リブ
7 凹部
8 凸部
26 内筒
30 押え片
31 ノイズ遮断空間
46 パネル孔

Claims (5)

  1. パネル孔に嵌着される環状溝と内部に貫通孔とを有するグロメット本体の一端に、周壁を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒を連成して成るグロメットにおいて、
    前記周壁に蛇腹部を周設すると共に、該蛇腹部の凹部の凹み方向および凸部の突出方向をワイヤハーネス挿通方向と平行に配置し、該凹部内または該凸部内に少なくとも一つの補強リブを設けたことを特徴とするグロメット。
  2. パネル孔に嵌着される環状溝と内部に貫通孔とを有するグロメット本体の一端に、周壁を介してワイヤハーネス挿通用の挿通筒を連成して成るグロメットにおいて、
    前記周壁に蛇腹部を周設すると共に、該蛇腹部の凹部の凹み方向および凸部の突出方向をワイヤハーネス挿通方向と平行に配置し、該周壁の内壁面で前記挿通筒と該蛇腹部との間に前記ワイヤハーネス挿通方向へ内筒を設け、前記貫通孔の内壁面で前記グロメット本体の他端側から該挿通筒方向へ押え片を突設すると共に、該押え片の自由端部で該内筒の外面を付勢し、該押え片で該周壁の屈曲を抑制することを特徴とするグロメット。
  3. 前記補強リブの位置が前記挿通孔を中心として放射状かつ対称であることを特徴とする請求項記載のグロメット。
  4. 前記蛇腹部が二周以上周設されていることを特徴とする請求項1又は3記載のグロメット。
  5. 前記蛇腹部、前記内筒、及び前記押え片によってノイズ遮断空間を区画形成し、該ノイズ遮断空間内に空気を閉じ込めることによって車内へのエンジン音の透過を防止することを特徴とする請求項記載のグロメット。
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