JP3570140B2 - 電子写真感光体及びその製造方法、画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真画像形成装置に関し、複写機、プリンタ、ファクシミリなど広い分野に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真技術は、高速、かつ高印字品質が得られるため、複写機、レーザービームプリンター及びファクシミリ等の分野において、広く採用されている。これらの電子写真技術で用いる電子写真感光体は、従来からセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム等の無機光導電材料を用いたものが広く知られている。
【0003】
一方、これらの無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性、廃棄性の点で優れている有機光導電材料を用いた電子写真感光体の研究も活発化している。中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型の有機積層型感光体は、感度、帯電性、帯電繰り返し安定性等の電子写真特性が優れており、種々の提案がなされて実用化されている。
【0004】
有機感光体は、上記の電子写真特性に関しては十分な性能を持つものが開発されているが、有機材料で構成されているため、機械的外力に対する耐久性が劣り、例えば、トナー、現像剤、用紙、クリーニング部材、最近では感光体に直接接触して帯電させるロール等から、物理的負荷を受けて感光体表面層が摩耗したり、傷が付いたりして、画質欠陥を生ずる原因となっている。また、コロナ放電により発生するオゾン、窒素酸化物等により、表面層が化学的に変質して、感光体の表面抵抗が低下したり、画像流れを引き起こすという問題も生じており、これらの問題が感光体寿命を大幅に短縮化している。
【0005】
これらの感光体表面層の問題を解決するために、電荷輸送層の上にオルガノポリシロキサン等の架橋硬化型樹脂を主成分とする表面保護層を形成して、機械的外力に対する耐久性を向上させることが提案された(特開昭54−148537号公報等)。
また、耐久性に合わせ、硬化型樹脂に酸化防止剤を含有させた表面保護層を形成して、コロナ放電により発生するオゾン、窒素酸化物等に対する表面層の化学的耐久性を高めることが提案された(特開昭63−18354号公報等)。
【0006】
しかし、表面保護層を架橋硬化型樹脂のみで構成すると、表面保護層は絶縁層になるため、感光体としての光電特性が犠牲になる。具体的には、露光時の明部電位が上昇することにより、現像電位マージンが狭くなり、かつ、除電後の残留電位が上昇し、特に長期の繰り返し印刷を行なうときに、画像濃度が低下するという問題があった。
【0007】
この光電特性上の問題を改善するために、導電性金属酸化物微粉末を抵抗の制御剤として表面保護層中に分散する方法が提案された(特開昭57−128344号公報)。この方法は、感光体の光電特性の低下を抑制し、上記の問題を大幅に改善できるが、一般に導電性微粉末として用いる金属酸化物の抵抗値は、環境の湿度に大きく依存するため、特に高温高湿下において感光体表面抵抗が低下し、静電潜像がぼやけ、画像品位を大きく低下させるという感光体の本質的な問題があった。
【0008】
光電特性を改良する他の方法として、バインダー樹脂中に電荷輸送物質を分散させ、その後バインダー樹脂を硬化させて表面保護層を形成する方法が提案された(特開平4−15659号公報)。この方法は感光体の表面抵抗の湿度依存性を抑制することができ、画像品位の問題はなかった。しかし、電荷輸送物質という低分子量成分の添加は、硬化反応を阻害し、表面保護層の機械的強度の低下をもたらす。即ち、機械的強度の高い架橋硬化型樹脂を用いても、光電特性の改良に必須の電荷輸送物質という低分子成分を添加すると、表面保護層の機械強度は大きく低下してしまう。
【0009】
そこで、官能基を有する電荷輸送物質を用いて、これを熱可塑性バインダー樹脂と結合又は反応させることにより、表面層の機械的強度を向上させることが提案された(特開平6−202354号公報、特開平5−323630号公報)。
【0010】
この方法は、感光体の光電特性を低下させずに、十分な機械的強度を初期的には有することはできる。しかし、これらの表面層構成では、接触帯電又はコロナ帯電条件下で長期間使用されると、接触帯電における交流電圧印加により、表面保護層を形成する熱可塑性樹脂の結合が切断され、また、コロナ帯電で発生するオゾン、窒素酸化物等により電荷輸送物質が酸化分解されて、分子量の低下が容易に生じ、それに伴って機械的強度が急激に低下する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記の問題点を解消し、感光体の光電特性及び画像品位を低下させず、十分な機械的強度を有するとともに、さらにコロナ帯電により発生するオゾン、窒素酸化物等による劣化に対する化学的耐久性を有し、また、接触帯電等における強い外的ストレス下の長期使用においても高い耐久性を示す表面保護層を備えた電子写真感光体、及びその製造方法、該感光体を用いる画像形成方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面保護層中に架橋硬化型結合材料による三次元網目構造をもたせると同時に、その網目構造の中に電荷輸送物質を共有結合により直接結合させ、さらに表面保護層中に特定の酸化防止剤を含有させることによって前記課題の解決に成功した。本発明の構成は以下のとおりである。
【0013】
(1) 導電性支持体上に感光層と表面保護層を有する電子写真感光体において、前記表面保護層が、ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質、及び、官能基数が3以上のイソシアネート化合物の少なくとも2種類の化合物を三次元的に架橋重合させたもので構成され、かつ、ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物及びヒンダードアミン構造単位を有する化合物のうち少なくとも1種類含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【0014】
(2) 前記のヒドロキシ基を有する電荷輸送物質の少なくとも1つが、下記構造式(A)〜(C)のいずれか1つで表されるものであることを特徴とする上記 (1) 記載の電子写真用感光体。
【0015】
【化6】
【0016】
(式中、R1 、R2 、R3 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基、又は、炭素数1〜2の範囲のアルキル基で置換されたアミノ基を表し、Tは脂肪族部分の炭素数1〜10の枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表し、nは0又は1である。)
【0017】
【化7】
【0018】
(式中、R4 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基、炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基、フェニル基、又は、置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基を表し、Tは脂肪族部分の炭素数1〜10の枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表し、nは0又は1を表す。)
【0019】
【化8】
【0020】
(式中、R5は水素、又は、炭素数1〜5の範囲のアルキル基を表し、Xは水素、炭素数1〜5の範囲のアルキル基、フェニル基、又は、置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜5の範囲のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は炭素数1〜5の範囲のアルコキシ基で置換されたフェニル基を表し、Tは脂肪族部分の炭素数1〜10の枝分かれしてもよい2価の炭化水素基を表し、Ar1、Ar2、Ar3はフェニル基、ナフチル基、又は、アントラセン基であり、複数個のハロゲン基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルキル基、炭素数1〜5の範囲の複数個のアルコキシ基で置換されていてもよい。nは0又は1を表す。)
【0021】
(3) 前記イソシアネート化合物の少なくとも一つが、官能基数が3以上のポリオールにイソシアネートを付加したアダクト変性体、ウレア結合を有する化合物をイソシアネートで変性したビューレット変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したアロファネート変性体及びイソシアヌレート変性体、並びに、カルボイミド変性体の群から選択された1つ以上のものを含むことを特徴とする上記 (1) 記載の電子写真用感光体。
【0022】
(4) 前記イソシアネート化合物の少なくとも一つが、下記構造式(D)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体、又は、下記構造式(E)で表されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含むことを特徴とする上記(3) 記載の電子写真用感光体。
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
(5) 前記表面保護層に、グリコール化合物、又はビスフェノール化合物を添加したことを特徴とする上記(1) 〜(4) のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(6) 前記表面保護層に、電子受容性物質を添加したことを特徴とする上記(1) 〜(5) のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【0026】
(7) 導電性支持体上に感光層と表面保護層を順次形成する電子写真感光体の製造方法において、ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質、官能基数が3以上のイソシアネート化合物、及び、ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物又はヒンダードアミン構造単位を有する化合物を含有する塗工液を調製し、前記感光層の上に該塗工液を塗布した後、加熱して前記電荷輸送物質と前記イソシアネート化合物を三次元的に架橋重合させて、表面保護層を形成することを特徴とする電子写真用感光体の製造方法。
【0027】
(8) 電子写真感光体表面を一様に帯電した後、露光して潜像を形成し、現像してトナー像を形成し、次いで、転写紙にトナー像を転写する画像形成方法において、前記帯電手段として、コロナ帯電方式を採用し、かつ、前記電子写真感光体として、上記(1) 〜(6) のいずれか1つに記載の感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
【0028】
(9) 電子写真感光体表面を一様に帯電した後、露光して潜像を形成し、現像してトナー像を形成し、次いで、転写紙にトナー像を転写する画像形成方法において、前記帯電手段として、接触帯電方式を採用し、かつ、前記電子写真感光体として、上記(1) 〜(6) のいずれか1つに記載の感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
(10)前記接触帯電に用いる印加電圧が、交流成分を有するものであることを特徴とする上記(9) 記載の画像形成方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は、末端にヒドロキシ基を複数個有する電荷輸送物質と、3個以上のイソシアネート基を有する化合物とを混合し、ヒドロキシ基とイソシアネート基を互いに付加重合反応させて三次元的に架橋した表面保護層を形成し、かつヒンダードフェノール構造単位を有する化合物、又はヒンダードアミン構造単位を有する化合物を前記表面保護層中に含有させることにより、感光体の光電特性を維持しつつ、機械的強度及びオゾン、窒素酸化物等に対する化学的耐久性を備え、長期耐久性に優れた電子写真感光体の提供を可能にした。
【0030】
特に、電荷輸送物質として上記の構造式(A)〜(C)で表されるヒドロキシ基を有する化合物を用いた場合、優れた光電特性、画像品位、耐摩耗性、耐傷性、及び化学的耐久性を有することを見出した。
ヒドロキシ基を複数個有する電荷輸送物質は、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物と付加重合反応させることにより、高い架橋密度で三次元網目構造を容易に形成することができる。表面保護層がこのような高密度の架橋構造を有しているため、接触帯電における交流電圧印加や、コロナ帯電で発生するオゾン、窒素酸化物等の強い外的ストレスの下で、結合が部分的に切断されたとしても、表面保護層全体の機械的強度が急激に低下することはないと考えられる。
【0031】
また、上記の構造式(A)〜(C)で表される電荷輸送物質は、多くのイソシアネート化合物との相溶性に優れているため、網目構造の中に電荷輸送物質を均一に導入することができ、良好な光電特性をもたらすことができる。
一般に電荷輸送層と呼ばれているものは、バインダ樹脂中に低分子電荷輸送物質を相溶して形成するため、高い機械的強度を維持しようとするときに、あまり多くの電荷輸送物質を添加することができなかった。本発明の表面保護層では、電荷輸送分質が結合という形で三次元構造にとり込まれるため、通常の電荷輸送層より多くの電荷輸送物質を導入でき、感光体の光電特性を長期的に維持することが可能になった。
【0032】
また、ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物又はヒンダードアミン構造単位を有する化合物は、コロナ帯電で発生するオゾン、窒素酸化物等による表面層の劣化防止に効果があり、しかもヒドロキシ基を有し、アミン構造を持つ上記の構造式(A)〜(C)で表される電荷輸送物質との相溶性に優れているため、網目構造の中に電荷輸送物質を均一に導入することができ、これらを特定割合で含有させて表面層とした場合には、二次障害を伴わずに良好な画像品質を長期的に維持することができる。
【0033】
このように三次元的に架橋した高分子化合物は、一般にいかなる溶剤に対しても不溶であるため、従来のような溶剤に溶解した溶液を塗布し、乾燥して成膜することはできない。しかし、架橋させる前の化合物を混合するか、溶剤に溶解して塗布、成膜し、その後、加熱等により架橋重合反応を起こして表面保護層を形成することができる。なお、架橋密度の低い高分子電荷輸送剤などは溶剤に溶解して塗布、成膜することもできるが、これらは架橋密度が低いため、機械的強度が弱く、十分な耐摩耗性を得ることができない。特に、接触帯電法を用いた電子写真画像形成装置では摩耗が大きいため、耐摩耗性を十分に備えていないと寿命が著しく短くなる。
【0034】
本発明の感光体は、導電性支持体上に感光層、及び表面保護層を形成したものである。
導電性支持体と感光層の間には、電荷注入阻止、密着性向上、干渉縞防止などの目的で下引層を設けることができる。
【0035】
本発明の感光層は、いわゆる単層型感光体、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体のいずれを採用することができる。また、積層型感光体における電荷発生層と電荷輸送層との積層順序はどちらでも良いが、本発明の表面保護層は主として正孔の輸送性を持つものであるため、電荷発生層、電荷輸送層、表面保護層の順に積層された負帯電型積層感光体の場合に最も優れた特性を示す。
【0036】
本発明の表面保護層に用いるヒドロキシ基を有する電荷輸送物質として、上記の構造式(A)〜(C)で表されるものが、特に良好な光電特性と耐摩耗性を示す。
上記の構造式(A)の具体例を表1〜2に示す。なお、構造式(A)中の2価の結合部Tの具体例を表3に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
上記の構造式(B)の具体例を表4に示す。なお、構造式(B)中の2価の結合部Tは構造式(A)のものと同じである。
【0041】
【表4】
【0042】
上記の構造式(C)の具体例は表5に示す。構造式(C)中のAr1 の具体例を表6に、Ar2 及びAr3 の具体例を表7に示す。なお、Ar1 の結合の方向はT,Nのいずれでもよい。
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
本発明の表面保護層において、可撓性、成膜性、湿度依存性、表面付着性などの特性を改良する目的で、必要に応じて、グリコール化合物、ビスフェノール化合物等のヒドロキシ基を2個以上有する化合物を、表面保護層の構成成分として加えることができる。これらの化合物は、上記の構造式(A)〜(C)の化合物の一部を置き換える形で架橋構造を形成する。
【0047】
これらのヒドロキシ基を有する化合物としては、分子内に2個以上のヒドロキシ基を有し、イソシアネートと付加重合可能なもののなかから自由に選択でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、及びビスフェノール化合物などを挙げることができる。これらの2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の具体例を表8に示す。ヒドロキシ基を有する他の例として、アクリルポリオール及びそのオリゴマ、ポリエステルポリオール及びそのオリゴマなど、反応性ヒドロキシ基を有する各種ポリマー及びオリゴマを用いることができる。
【0048】
【表8】
【0049】
架橋して三次元網目状構造を形成するためには、イソシアネート化合物として3官能以上、即ち、反応可能なイソシアネート基を3個以上有するものを用いることが必要である。これにより表面保護層は高密度の架橋構造をとることができる。
【0050】
3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、イソシアネート単量体から得られる誘導体やプレポリマなどのポリイソシアネート変性体を用いることがより望ましい。具体例としては、官能基数が3以上のポリオールにイソシアネートを付加したアダクト変性体、ウレア結合を有する化合物をイソシアネート化合物で変成したビューレット変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したアロファネート変性体、イソシアヌレート変性体などが特に好ましく、他にもカルボジイミド変性体などが用いられる。上記の構造式(D)(E)以外の変性体の具体例を示すと下記のとおりである。
【0051】
【化11】
【0052】
特に、上記の構造式(D)、(E)で表されるものに代表される、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を用いて形成した表面保護層は、機械的強度、電気特性の面で特に優れた特性を示す。
【0053】
また、上記イソシアネートと共に補助的に用いることができるイソシアネート化合物として、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソソアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−イイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどの一般的なイソシアネート単量体を挙げることができる。
【0054】
前記ポリイソシアネート変性体に含まれるが、イソシアネート基の活性を一時的にマスクするためのブロッキング剤を反応させたブロックイソシアネートも好ましく用いることができる。これは、塗布液のポットライフを延長させる点からも好ましいものである。
【0055】
本発明で用いるヒンダードフェノール構造単位を有する化合物(F−1) 〜(F−25)の具体例を表9〜11に、また、ヒンダードアミン構造単位を有する化合物(G−1) 〜(G−9) の具体例を表12〜13に示す。
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
本発明の表面保護層を形成するには、上記の構造式(A)〜(C)で表されるヒドロキシ基を有する電荷輸送物質、3個以上のイソシアネート基を有する化合物、及び、ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物又はヒンダードアミン構造単位を有する化合物、さらに必要に応じて他のヒドロキシ基を有する化合物、添加剤、溶剤等を加えたものを混合して塗布液を作成し、これを感光層の上に塗工した後、架橋重合させることにより成膜して表面保護層とする。
【0062】
これらの混合比は、(全ヒドロキシ基数):(全イソシアネート基数)の比が2:1〜1:2の範囲、好ましくは1.5:1〜1:1.5の範囲、より好ましくは1.2:1〜1:1.2の範囲となるように調合することが望ましい。混合比(2:1)を上回って過剰のヒドロキシ基が残ると、保護層表面の親水性が増し、高温高湿下での画像特性が低下する。また、混合比(1:2)を下回ると、三次元網目構造の架橋密度が小さくなり、機械的強度の不足が生ずるので、反応条件等も含めて注意する必要がある。
また、イソシアネート化合物は、空気中の水分等で失活し、反応可能なイソシアネート基数が減少する場合があるので注意を要する。その場合、イソシアネート基が若干過剰になるように調合するとよい。
【0063】
保護層における電荷輸送物質の含有率は、ヒドロキシ基含有化合物の分子量、ヒドロキシ基含有率、イソシアネート化合物の分子量、イソシアネート基含有率によって決まる。感光体の光電特性を維持しつつ機械強度も持たせるためには、表面保護層全体における電荷輸送物質部分の含有量を5〜90重量%の範囲、好ましくは25〜75重量%の範囲が望ましい。本発明の表面保護層は、電荷輸送物質を三次元架橋構造の中に共有結合で取り込んでいるため、通常の電荷輸送層よりも多くの電荷輸送物質を、保護層の耐久性を低下させることなく導入することができる。
【0064】
本発明の表面保護層において、ヒンダードフェノール構造を有する化合物、又はヒンダードアミン構造を有する化合物の配合比は、三次元架橋構造を形成するヒドロキシ基を有する化合物とイソシアネート化合物の合計100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が適当であり、0.1〜10重量部の範囲が特に好ましい。ヒンダードフェノール構造を有する化合物、及びヒンダードアミン構造を有する化合物はそれぞれ単独で用いることができるが、混合して用いても効果的である。
【0065】
また、これらの化合物の他に、酸化防止剤として、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン 及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等を添加することができる。さらに、光安定剤として、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体を添加剤として用いることができる。
【0066】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、1種以上の電子受容性物質を含有させることができる。本発明の感光体に使用可能な電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl、CN、NO2 等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0067】
本発明の表面保護層を架橋重合するためには、感光体上に塗工した後、加熱すればよい。ヒドロキシ基とイソシアネート基の付加反応は、用いる化合物間の反応性にもよるが、一般的に触媒等は必要なく、加熱するだけでよい。塗工時に溶剤を用いている場合には、乾燥工程と同時、あるいはそれに引き続いて加熱処理を行なうことが望ましい。
【0068】
架橋反応を促進したい場合には、ジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物類、無機金属化合物類、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類などの触媒を、常法に準じて添加してもよい。
【0069】
本発明の感光体に用いる導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及び、アルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルムなど、又は、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙又はプラスチックフィルム等を挙げることができる。これらの導電性支持体は、ドラム状、シート状、プレート状など適宜の形状のものとして使用されるが、これらに限定されるものではない。さらに必要に応じて、導電性支持体の表面は、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。例えば、表面の酸化処理、薬品処理、着色処理等や、砂目立てなどの乱反射処理等を行うことができる。
【0070】
導電性支持体と感光層の間に下引層を設けてもよい。この下引層は積層構造からなる感光層の帯電時において導電性支持体から感光層への電荷の注入を阻止するとともに、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持させる接着層として作用し、場合によっては導電性支持体の光の反射防止作用をする。
【0071】
この下引層に用いる結着樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができ、これらの材料は単独又は2種以上を混合して用いることができる。さらに、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、シリコーン樹脂等の微粒子と混合して用いることができる。
【0072】
下引層の厚みは0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2μmの範囲が適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0073】
本発明の積層型感光体における電荷発生層は、電荷発生材料及びバインダ樹脂を含有する。電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物、及びセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料及び染料が用いられる。
【0074】
その中でも、フタロシアニン系化合物が好ましく、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンなども好適である。
【0075】
電荷発生層の結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等を挙げることができるが、こららに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
電荷発生材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。また、本発明で用いる電荷発生層の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2μmの範囲が適当である。
電荷発生層の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0077】
さらに、電荷発生層を設けるときに用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム等の通常の有機溶剤を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
本発明の積層型感光体における電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送材料とバインダ樹脂を含有して形成される。電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子吸引性物質、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などを用いることができる。これらの電荷輸送材料は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0079】
結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの公知の樹脂を用いることができる。
【0080】
さらに、電荷輸送層には、表面保護層で説明した酸化防止剤を添加してもよい。電荷輸送層は最表層ではないので酸化性ガスに直接触れることはないが、これら酸化性ガスが表面保護層を透過して電荷輸送層まで浸入するこがあり、これによる酸化劣化を防止するためのものである。酸化防止剤の例としては前記のものと同じものが用いられ、添加量は電荷輸送層を構成する材料固形分に対して0.01〜30重量%の範囲が適当であり、望ましくは0.1〜10重量%の範囲がよい。
【0081】
電荷輸送層を塗布するのに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等の環状又は直鎖状のエーテル類などの通常の有機溶剤を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0082】
電荷輸送層の塗布方法は、電荷発生層の場合と同様の方法を用いることができる。電荷輸送層の膜厚は5〜50μmの範囲が、好ましくは10〜40μmの範囲が適当である。
【0083】
単層型感光層を形成する場合は、前記の電荷発生物質とバインダ樹脂を含有して形成される。バインダ樹脂としては、前記電荷発生層及び電荷輸送層に用いるバインダ樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生物質の含有量は10〜85重量%の範囲、好ましくは20〜50重量%の範囲である。
【0084】
単層型感光層には、必要に応じて電荷輸送層の場合と同様の理由から酸化防止剤を添加してもよい。添加量は感光層を構成する材料固形分に対して0.01〜30重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲が適当である。
【0085】
本発明の電子写真感光体は、コロナ帯電等の非接触帯電方式の画像形成方法に適用するときには、優れた光電特性と耐久性、特に耐オゾン性、耐窒素酸化物性を示す。他方、帯電手段として帯電ロール等の接触帯電方式を用いた画像形成方法に適用するときには、接触帯電で顕著に現れる感光体摩耗に対して非常に強い耐久性を示す。
【0086】
図1は本発明の帯電ロールを用いた画像形成方法を実施する装置の構成図である。電子写真感光体1、帯電手段として帯電ロールによる接触帯電器3、帯電器用の電源2、レーザー露光光学系からなる画像入力装置4、磁性一成分トナーを用いた現像器5、転写用コロトロン6、除電用LED(図示せず)、クリーニングブレード7、定着ロール9を有している。
【0087】
接触帯電を行う導電性部材の形状は、ブラシ状、ブレード状、ピン電極状、及びローラー状等何れでもよいが、特にローラー状部材が好ましい。通常、ローラー状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0088】
芯材の材質としては、導電性を有するもので、通常は鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、その他、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることもできる。
【0089】
弾性層の材質としては、導電性又は半導電性を有するもので、通常、ゴム材に導電性粒子又は半導電性粒子を分散したものが用いられる。
ゴム材としては、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0090】
導電性粒子又は半導電性粒子としては、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウムなどの金属、ZnO−Al2 O3 、SnO2 −Sb2 O3 、In2 O3 −SnO2 、ZnO−TiO2 、MgO− Al2 O3 、FeO−TiO2 、TiO2 、SnO2 、Sb2 O3 、In2 O3 、ZnO、MgO等の金属酸化物を用いることができ、これらの材料は単独又は2種以上を混合して用いてもよく、2種以上の場合は一方が微粒子状でもよく、微粒子はフッ素系樹脂の微粒子を用いることができる。
【0091】
抵抗層及び保護層は結着樹脂に導電性粒子又は半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御する。その抵抗率は103 〜1014Ωcm、好ましくは105 〜1012Ωcm、さらに好ましくは107 〜1012Ωcmの範囲がよい。
また膜厚としては0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜500μm、さらに好ましくは0.5〜100μmがよい。
【0092】
結着樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が用いられる。導電性粒子又は半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。
【0093】
また、必要に応じて、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。
これらの層を形成する手段としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、真空蒸着法、プラズマコーティング法等を用いることができる。
【0094】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる方法としては、導電性部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。交流電圧の重畳により感光体に対して均一な帯電をすることが可能になる。
帯電器の電圧は、直流電圧が正又は負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが一層好ましい。重畳する交流電圧はピーク間電圧が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、さらに好ましくは1200〜1600Vが適当である。交流電圧の周波数は、50〜20000Hz、好ましくは100〜2000Hzの範囲である。
【0095】
【実施例】
以下に実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における「部」は重量部を意味する。
【0096】
〔実施例1〕
ジルコニウム化合物(マツモト製薬社製、オルガチックスZC540)10部、シラン化合物(日本ユニカー社製、A1110)1部、i−プロパノール40部、及びブタノール20部からなる塗布溶液を調製し、アルミニウム基体上に浸漬コーティング法で塗布し、150℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.1μmの下引層を形成した。
【0097】
X型無金属フタロシアニン結晶1部、及び、ポリビニルブチラール(積水化学社製、エスレックBM−S)1部をシクロヘキサノン100部と混合し、ガラスビーズとともにサンドミルで1時間分散して分散液を調製し、前記下引層上にディップコートし、100℃で10分間加熱して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0098】
下記構造式(a)のベンジジン化合物を2部、及び、下記構造式(b)で示される高分子化合物(粘度平均分子量=39000)3部をクロロベンゼン20部に溶解して塗布液を調製し、前記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、115℃で60分間加熱して膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0099】
【化12】
【0100】
【化13】
【0101】
ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質として、表1記載の例示化合物(A−1)3部、上記構造式(D)で表されるビューレット変性ポリイソシアネート溶液 (固形分67重量%)4部、及びヒンダードフェノール構造を有する化合物として表8記載の例示化合物(F−4)0.3部をシクロヘキサノン15部に溶解して塗布液を調製し、前記電荷輸送層の上にスプレーコート法で塗布し、常温で 10分間乾燥させた後、150℃で60分加熱することにより、膜厚4μmの表面保護層を形成して、感光体を得た。
【0102】
〔比較例1〕
実施例1において、電荷輸送層の膜厚を24μmと厚くし、表面保護層を省略したこと以外は実施例1と全く同様にして感光体を得た。
【0103】
〔比較例2〕
実施例1と同様にして、アルミニウム基体上に下引層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。そして、表面保護層は、実施例1の例示化合物(A−1)に代えて表7に記載のビスフェノール化合物(H−1)3部、上記構造式(D)で表されるビューレット変性ポリイソシアネート溶液(固形分67重量%)9部とをシクロヘキサノン25部に溶解して塗布液を調製し、前記電荷輸送層の上にスプレーコート法で塗布して常温で10分間乾燥させた後、150℃で60分間加熱して膜厚4μmの表面保護層を形成して感光体を得た。このようにして得た表面保護層は三次元架橋構造は有するが、電荷輸送物質は含んでいない。
【0104】
〔比較例3〕
実施例1と同様にして、アルミニウム基体上に下引層、電荷発生層、電荷輸送層を形成した。そして、表面保護層は、ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質として例示化合物(A−1)3部、イソシアネート基を有する化合物として官能基数が2個の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート2部とをシクロヘキサノン10部に溶解して塗布液を調製し、前記電荷輸送層上にスプレーコート法で塗布し、常温で10分間乾燥させた後、150℃で60分加熱することにより、膜厚4μmの表面保護層を形成して感光体を得た。
【0105】
〔比較例4〕
実施例1において、例示化合物(F−4)を省略した以外は実施例1と全く同様にして表面保護層を形成して電子写真感光体を得た。
【0106】
(評価)
実施例1及び比較例1〜4の電子写真感光体を試験装置(富士ゼロックス社製、XP−11の改造機)に装着し、以下の実験を行い、その結果を表13に示した。なお、この試験装置は、図1に示すような、帯電ロールによる接触帯電器、レーザー露光光学系、磁性一成分トナーを用いる現像器、転写用コロトロン、除電用LED、クリーニングブレード、及び定着ロールを有する電子写真プリンターである。
【0107】
この装置を用いてコピー画像を作製し、画像上の欠陥発生状態を目視観察により評価した。次に、10万枚の連続コピー試験を行った後、再びコピー画像を作製し、画像欠陥及び初期画像からの画像濃度の変化を目視観察により評価した。また、渦電流式膜厚測定装置を用いて、連続試験前後の感光層膜厚を測定し、その変化量から、感光体の摩耗量を評価した。なお、帯電は、帯電ロールに直流−550Vと交流1.5kVp−p(800Hz)を重畳した帯電電圧を印加して行った。
【0108】
【表14】
【0109】
実施例1の感光体では、10万枚コピー後の感光体の摩耗量は0.65μmと少なく、かつ10万枚コピー後の画像においても欠陥、濃度変化はともに認められず、初期画像と同等の画像状態を維持していた。10万枚印刷後に良好な画像特性を維持しているのは、本発明の表面保護層が機械的強度に優れ、摩耗量が小さく、同時に表面に傷がつき難いことによるものであり、また表面保護層における三次元架橋構造中に電荷輸送物質が均一に導入されているため、感光体の光電特性が良好であり、かつ連続印刷による特性の劣化が少ないものと考えられる。
【0110】
比較例1では、5万枚印刷後の感光体の摩耗量が14.5μmと大きいため光電特性が変化し、表面電位が十分下がらず、画像濃度の低下が観察された。また、現像剤、転写紙などの接触によると思われる筋状の傷が感光体表面に多発し、画像欠陥となって表れた。なお、摩耗量が大きいため、5万枚印刷で試験を終了した。
【0111】
比較例2では、感光体の摩耗量は0.45μmと小さいものの、1万枚印刷したあたりから画像濃度が低下し、10万枚印刷時にはほとんど画像が得られなくなった。これは、表面保護層が電荷輸送性を持たないため、明部電位が上昇し、光電特性が低下したことが原因している。
【0112】
比較例3では、10万枚印刷試験後において、感光体の摩耗量が6.5μmと大きく、さらに、感光体表面に筋状の傷が多発し、これが画像欠陥となって表れた。比較例3は官能基数が2個のイソシアネート化合物を用いたので、表面保護層の架橋密度を高くすることができず、接触帯電における交流電圧印加に対する耐久性が十分に向上させることができなかった。
【0113】
比較例4では、10万枚印刷試験後において、感光体の摩耗量が0.58μmと小さいものの、7万枚印刷したあたりから画像濃度が低下し、画像流れが多発した。
【0114】
〔実施例2、3〕
実施例1において、表面保護層に用いるヒドロキシ基を有する電荷輸送物質として、実施例2では表3記載の例示化合物(B−1)を用い、実施例3では表4記載の例示化合物(C−1)を用いた以外は実施例1と全く同様にして感光体を作製し、同じ評価を行なった。
【0115】
〔実施例4〕
実施例1において、表面保護層に用いるイソシアネート化合物として、上記構造式(D)で表されるビューレット変性ポリイソシアネート溶液(固形分67重量%)の代わりに、上記構造式(E)で表されるイソシアヌレート変性ポリイソシアネート溶液(固形分75重量%)を用いた以外は実施例1と全く同様にして感光体を作製し、同じ評価を行なった。
【0116】
〔実施例5〕
実施例1において、例示化合物(A−1)3部に代えて、(A−1)1部と表8記載の例示化合物(H−1)で表されるビスフェノール化合物1部を用いた以外は実施例1と全く同様にして感光体を作製し、同じ評価を行なった。
【0117】
〔実施例6〕
実施例5において、例示化合物(H−1)1部の代わりに、表8記載の例示化合物(H−15)で表されるグリコール化合物2部を用いた以外は実施例5と全く同様にして感光体を作製し、同じ評価を行なった。
【0118】
〔実施例7、8〕
実施例1において、表面保護層に用いるヒンダードフェノール構造単位を有する化合物又はヒンダードアミン構造単位を有する化合物として、例示化合物(F−4)の代わりに、実施例7では表8記載の例示化合物(F−1)を用い、実施例8では表10記載の例示化合物(G−1)を用いた以外は実施例1と全く同様にして感光体を作製し、同じ評価を行なった。
【0119】
(評価)
実施例2〜8の感光体について、同じ方法で評価を行なった結果を表14に示す。これらの感光体は実施例1と同様に、10万枚印刷後の画質が良好で、摩耗量も0.53〜0.88μmと少ない値であった。
【0120】
【表15】
【0121】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成を採用することにより、良好な光電特性と優れた耐摩耗性、及び交流電圧印加、コロナ帯電生成ガスといった外的ストレスに対する高い耐久性を有し、コロナ帯電方式や接触帯電方式を採用した電子写真画像形成方法において、多数枚の印刷後にも良好な画質の維持を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を実施する装置の1例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム、 2 電源、 3 帯電器、 4 画像入力装置、 5 現像器、 6 静電転写器、 7 クリーニング装置、 8 転写用紙、 9 定着装置。
Claims (8)
- 導電性支持体上に感光層と表面保護層を有する電子写真感光体において、前記表面保護層が、ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質、及び、官能基数が3以上のイソシアネート化合物の少なくとも2種類の化合物を三次元的に架橋重合させたもので構成され、かつ、ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物及びヒンダードアミン構造単位を有する化合物のうち少なくとも1種類含有することを特徴とする電子写真用感光体。
- 前記のヒドロキシ基を有する電荷輸送物質の少なくとも1つが、下記構造式(A)〜(C)のいずれか1つで表されるものであることを特徴とする請求項1記載の電子写真用感光体。
- 前記イソシアネート化合物の少なくとも一つが、官能基数が3以上のポリオールにイソシアネートを付加したアダクト変性体、ウレア結合を有する化合物をイソシアネートで変性したビューレット変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したアロファネート変性体及びイソシアヌレート変性体、並びに、カルボイミド変性体の群から選択された1つ以上のものを含むことを特徴とする請求項1記載の電子写真用感光体。
- 導電性支持体上に感光層と表面保護層を順次形成する電子写真感光体の製造方法において、ヒドロキシ基を有する電荷輸送物質、官能基数が3以上のイソシアネート化合物、及び、ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物又はヒンダードアミン構造単位を有する化合物を含有する塗工液を調製し、前記感光層の上に該塗工液を塗布した後、加熱して前記電荷輸送物質と前記イソシアネート化合物を三次元的に架橋重合させて、表面保護層を形成することを特徴とする電子写真用感光体の製造方法。
- 電子写真感光体表面を一様に帯電した後、露光して潜像を形成し、現像してトナー像を形成し、次いで、転写紙にトナー像を転写する画像形成方法において、前記帯電手段として、コロナ帯電方式を採用し、かつ、前記電子写真感光体として、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
- 電子写真感光体表面を一様に帯電した後、露光して潜像を形成し、現像してトナー像を形成し、次いで、転写紙にトナー像を転写する画像形成方法において、前記帯電手段として、接触帯電方式を採用し、かつ、前記電子写真感光体として、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
- 前記接触帯電の印加電圧が、交流成分を有することを特徴とする請求項7記載の画像形成方法。
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