以下、本発明の静電潜像担持体等について、実施の形態により説明する。
(静電潜像担持体)
本発明において、静電潜像担持体は、支持体と、この支持体上に少なくとも感光層を有してなり、保護層、中間層、さらに必要に応じてその他の層を有している。また、該静電潜像担持体では、前記静電潜像担持体の最表面層が、少なくとも2つ以上の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂、及び導電性微粒子を含有し、該イソシアネート化合物の少なくとも1種類が、芳香環を有している。
静電潜像担持体の第1の実施形態は、支持体上に単層型感光層を設けてなり、さらに必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有している。また、静電潜像担持体の第2の実施形態としては、支持体と、この支持体上に電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層を設け、さらに必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有している。なお、第2の実施形態では、電荷発生層、及び電荷輸送層は逆に積層しても構わない。第1の実施形態である単層型感光層のタイプでは、最表面層は、感光層、又は感光層上に形成された保護層がこれに該当し、第2の実施形態である積層型感光層のタイプでは、最表面層は、電荷輸送層、またはこの電荷輸送層上に形成された保護層がこれに該当する。
ここで、図1は、本発明の実施形態の静電潜像担持体の模式断面図であり、支持体201上に感光層202を設けた構成のものである。また、図2〜図5は、各々、本発明の静電潜像担持体の層構成例を示すものであり、図2は、感光層202が、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)203と、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)204とから構成される機能分離型タイプのものである。図3は、支持体201と、機能分離型タイプの感光層の電荷発生層(CGL)203との間に下引き層205が間挿されたタイプのものである。図4は、電荷輸送層204の上に保護層206を積層したタイプのものである。図5は、下引き層205と電荷発生層203との間に中間層207を設けたタイプのものである。なお、本実施形態の静電潜像担持体は、支持体201上に感光層202を少なくとも有していればよく、上記のその他の層(下引き層、中間層等)、及び感光層のタイプ(単層型感光層のタイプ、積層型感光層のタイプ)は任意に組み合わされていても構わない。
<最表面層(最外層)>
最表面層は、少なくとも2つの水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂、及び導電性微粒子を含有し、このイソシアネート化合物の少なくとも1種類は、芳香環を有している。また、前記イソシアネート化合物として、芳香環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基が2以上、好ましくは3以上有することも本発明の好適な態様である。
前記2以上の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂は、ウレタン結合を形成したポリウレタン樹脂の一種である。ポリウレタン樹脂は、多官能のイソシアネート化合物とポリオール化合物とが架橋して三次元網目構造を形成するため、耐摩耗性が高いバインダ樹脂として好適に用いられる。この際に、ポリオール化合物として反応性電荷輸送物質を用いる場合、少なくともそれに対するイソシアネート化合物が相当量必要となるため、イソシアネート化合物の特徴が静電潜像担持体の電子写真特性に大きく影響を与えることになる。
本願発明者の検討の結果、イソシアネート化合物がHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)に代表される芳香環を持たないイソシアネート化合物(脂肪族系イソシアネート)を用いた場合、低速若しくは短期的な電子写真特性は実用上問題の無いものであるが、高速かつ長期にわたって連続的に電子写真プロセス(帯電、露光、現像、転写、除電を繰り返すプロセス)を行うと、露光部電位が上昇し、やがて画像濃度低下等の異常画像を発生させてしまうことが、ドラム形状の静電潜像担持体単体試験装置による連続静電疲労付加評価で明らかになった。脂肪族系イソシアネート化合物を用いて形成された静電潜像担持体は、所定の条件で静電疲労付加を120分与えた直後の露光部残留電位が著しく上昇してしまうので、高速機への展開は困難である。
一方、本実施形態の静電潜像担持体は、芳香環を有するイソシアネート化合物(芳香族系イソシアネート)を用いて得られるので、このような静電疲労付加直後の露光部残留電位の上昇を大幅に低減することができることが確認された。この理由は、明確にはわかっていないが、以下のような点にあるのではないかと考えられる。
ポリウレタン樹脂は、理論上、水酸基とイソシアネート基が同数存在することで、過不足なく架橋する。したがって、水酸基を有する反応性電荷輸送性物質を用いる場合、少なくとも、その水酸基の数と同等のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が必要になる。ここで例えば、反応性電荷輸送性物質を樹脂全体の25wt%含有させるとした場合、この反応性電荷輸送性物質のOH当量(分子量を分子内の水酸基数で除した値)とイソシアネート化合物のNCO当量とが、同量程度のイソシアネート化合物25wt%含まれることになる。このとき、脂肪族系イソシアネート化合物を用いた場合、保護層中に占めるイソシアネート化合物は、π電子はほとんど存在せず、電荷輸送に寄与することはほとんどないだろうから、バルクとしての電荷輸送能は低いため、電子写真プロセスを繰り返す静電疲労付加が連続的に印加されると、上記電荷輸送能の低さによって電荷移動が阻害され、その結果、残留電位として蓄積されると考えられる。
これに対して、本実施形態で使用する芳香族系イソシアネート化合物は、イソシアネート化合物が芳香環を有しているので、π電子を多数有する。π電子は電荷輸送性化合物がその広がりによって電荷輸送能を発揮していることから、電荷輸送性に大きく影響すると考えられる。したがって、芳香族系イソシアネート化合物によって得られた樹脂を有する本実施形態の最表層は、樹脂膜中のπ電子密度が非常に多くなっており、このπ電子密度が高いことが膜中の電荷輸送性を高め、残留電位の蓄積を抑制していると考えられる。
本実施形態に使用される芳香族系イソシアネート化合物として、イソシアネート基を1つしか有しない化合物を用いる場合、このイソシアネート化合物はポリオールに対してペンダント型に末端に結合した部位となる。ポリウレタン樹脂として網目構造となるには、多官能(イソシネート基が2以上)のポリイソシアネート化合物を含有させる必要があるが、多官能ポリイソシアネート化合物が脂肪族系イソシアネートであると、得られる樹脂膜中のπ電子密度が低下してしまい、電荷輸送能が低下してしまう。したがって、本発明では、芳香環を有するイソシアネート化合物は、分子中に2以上のイソシアネート基を有していることが好ましい。また、本発明では3以上のイソシアネート基を有する化合物を用いると、三次元網目構造を形成するため、耐摩耗性の高いバインダ樹脂ともなり、より好適に用いられる。
また、芳香環を有するイソシアネート化合物の有するイソシアネート基が、アルキル基を介して芳香環に結合していることも本発明の好適な態様である。さらに、芳香環を有するイソシアネート化合物が、ジイソシアネート化合物とポリオールとのアダクト型であることも本発明の好適な態様である。
芳香環は共役二重結合を有し、ほぼ平面の立体構造を有しており、分子のコンフォメーションの自由度が小さいため、イソシアネート基がそのままこのような芳香環に直結しているような化合物では、三次元網目構造を形成する際に、水酸基に対して架橋反応が可能な距離に接近する動きが制限されると考えられる。その結果、水酸基とイソシアネート基が架橋できないまま残存する可能性が高く、架橋密度の低下、未反応官能基に起因する静電的副作用等によって、感光体の耐摩耗性、静電特性が低下してしまうと考えられる。それに対して、芳香環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基が有機基(例えば、アルキル基(アルキレン基))を介して芳香環に結合した構造をしている化合物であると、芳香環に結合しているアルキル部位(アルキレン部位)は、σ結合で自由に回転できることから、分子のコンフォメーションの自由度が高くなるため、よって、水酸基と反応して架橋構造を形成しやすいと考えられる。また、ジイソシアネート化合物とポリオールとのアダクト型である化合物を用いる場合にも同様に、ポリオール部分での分子のコンフォメーションの自由度が高いため、架橋構造を形成しやすく、耐摩耗性、静電特性に優れた感光体となると考えられる。
なお、一般的に芳香族イソシアネート化合物は、芳香環にイソシアネート基が結合している化合物の総称として使われるが、本実施形態における芳香族系イソシアネート化合物は、分子中に芳香環を有していればよく、前述のように芳香環とイソシアネート基(NCO−)との間に、アルキレン基を有する化合物も含まれる。
本実施形態の芳香族系イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びその重合体であるポリメリック(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等があり、また、TDI、MDI及びXDIと、トリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクトが挙げられる。このような芳香族系イソシアネートとしては市販品を用いることができる。例えば、三井武田ケミカル社製のコスモネートTシリーズ、コスモネートMシリーズ、コスモネートND、タケネート500及びそのアダクト型であるタケネートD−110N、トリレンジイソシアネートのアダクト型である大日本インキ化学工業社製のバーノックD750、日本ポリウレタン工業社製のコロネートL等が挙げられる。これらの中でも、キシレンジイソシアネートやキシレンジイソシアネートのアダクト型は、芳香環とイソシアネート基がメチレン基で結合した下記構造を有していることから、前述のような理由で架橋構造を形成しやすく、好ましく用いられる。
また、前記芳香環を有するイソシアネート化合物のNCO%(重量%)が3〜50であることも本発明の好適な態様であり、より好ましくは10%〜40重量%である。NCO%が3より小さいと、水酸基/イソシアネート基を当量とした場合のポリオールに対するイソシアネート化合物の含有量が相対的に大きくなってしまい、架橋密度が低下し、耐摩耗性が不十分となってしまう可能性がある。また、NCO%(NCO重量%)が50より大きい場合、イソシアネート化合物の反応性が高くなりすぎて、塗工液中で反応が進んでしまうなどして塗工液の寿命が短くなり、製造工程でのハンドリングの悪化や有機廃液の増加といった環境負荷を招くおそれがある。ただし、場合によってはNCO%が大きいほど形成される架橋点が多くなり、耐摩耗性が向上することが考えられる。
さらに、本実施形態において、芳香族系イソシアネート化合物と併用して、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用いてもよい。脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の鎖状イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物、イソシアヌレート化合物類、前記ポリイソシアネート化合物をフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたブロックイソシアネート化合物、あるいはイソシアネート化合物のトリマー体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー等)等が挙げられる。
さらに、トリメチロールプロパンと、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等)又は脂環式ポリイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート等)とのアダクト等も好ましく用いられる。例えばアダクトとして、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとからなるアダクトの例を下記構造式(II)に示す。
このような芳香族系ポリイソシアネートと併用する脂肪族系ポリイソシアネートとして、市販品を用いることができる。例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートからなるアダクトとしてスミジュールHT(住化バイエルン社製)が挙げられる。また、ポリイソシアネートとして、電荷発生性分子骨格を有するポリイソシアネート化合物あるいは電荷輸送性分子骨格を有するポリイソシアネート化合物等も用いられる。
次に、本実施形態の静電潜像担持体に用いられる導電性微粒子について説明する。本実施形態の静電潜像担持体に用いられる導電性微粒子は、最表層の抵抗調整のためにだけではなく、反応性電荷輸送物質による電荷輸送を補助する目的でも含有させるものである。したがって、その種類、含有量は、反応性電荷輸送物質の種類や含有量と密接に関係しており、保護層の体積抵抗値のみで測ることは難しく、反応性電荷輸送物質のガス暴露に対する許容量とそのときの残留電位上昇度、それに対する導電性微粒子の含有量はその都度最適な設計をしなければならない。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられるが、特に次式(I)
MxSbyOz ・・・(I)
(ただし、式(I)中、Mは、金属元素を表し、x、y及びzは、原子比を表す。)で表される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような式(I)で表される導電性粒子の金属元素Mとしては、Zn、In、Sn、Ti、Zr等が挙げられ、Zn、Inが特に好ましい。
前記x、y、及びzは、各元素の原子比を表す。前記導電性微粒子がZnxSbyOzの場合には、x:y:zの比は原子比で、1:1.6〜2.4:5〜7である。前記導電性微粒子がInxSbyOzの場合には、1:0.02〜1.25:1.55〜4.63である。また、導電性粒子に使用される金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、またはこれらの金属を樹脂粒子の表面に蒸着等して導電性としたもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウム等の超微粒子を用いることができる。
前記式(I):MxSbyOzで表される導電性微粒子としては、例えば、特許第3221132号公報に開示されているアンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6)、特許第3198494号公報に開示されているアンチモン酸インジウム(InSbO4)等が挙げられる。前記アンチモン酸亜鉛としては、例えば、導電性ゾル(セルナックスシリーズ、日産化学工業社製)として上市されており、コロイド状に溶媒に分散された状態で容易に入手可能である。また、粉体として入手される導電性微粒子を分散する方法としては、既存の分散方法を用いることができるが、例えば、マイクロフルイダイザー(MFI社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)等の高速液衝突分散方法が好適である。
静電潜像担持体の最表面層に導電性微粒子を含有させると、一般には最表面層のバルク抵抗が小さくなり、表面の静電荷保持に対しては不利に働き、その結果、酸化性ガスによる画像ボケにも不利に働くおそれがある。そのため導電性微粒子は、一般的には残留電位を低減しつつ、画像ボケを引き起こさないために、含有できる量は限られていた。本実施形態では、前記式(I)MxSbyOzで表される微粒子を用いると、露光部の残留電位低減効果を発現しつつ、画像ボケを抑制するという効果が得られるため、含有量の許容幅が非常に大きくなり、残留電位を低減するために非常に好ましい。このような前記式(I)MxSbyOzで表される微粒子を用いると、残留電位低減効果を発現しつつ、画像ボケを抑制する効果を発揮する。その理由は明確ではないが、この導電性微粒子は、イオン伝導のメカニズムではなく、電子伝導のメカニズムによって電荷移動が行われる物質であるために、酸化性ガスの影響を受けにくいと考えられる。また、含有量当たりの残留電位低減効果が高いために、わずかな含有量でも大きな露光部電位低減効果が得られるため、最表面層のバルク抵抗をあまり下げずに所望の露光部電位に到達できること等が非常に効果的に作用していると考えられる。
これらの導電性微粒子は、単独で用いることも、2種以上を組み合せて用いることもできる。このような導電性微粒子の体積平均粒径としては、0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。体積平均粒径が0.01μm未満であると、最表面層中に含まれる導電性微粒子の粒子間距離が小さくなり、表面の静電荷保持に対して不利になることがある。また、塗工液中で凝集して、粒径の不均一な二次粒子を形成しやすくなり、結果として、より大きな粒子として層中に局在化し、非露光部の帯電電位低下による異常画像、すなわち露光部現像方式(いわゆるネガポジ方式)では、粒状地肌汚れとなり、非露光部現像方式(いわゆるポジポジ方式)では、白斑点の異常画像となってしまうことがある。一方、前記導電性微粒子の体積平均粒径が1μmを超えると、塗膜に対する導電性微粒子が大きすぎて、表面のレベリングが不十分となってしまうことがあり、電子写真感光体の表面粗さが大きくなり、例えば、ブレードクリーニング方式でのブレードの電子写真感光体表面への追従性が低下し、トナーのすり抜けによるクリーニング不良が発生してしまうおそれがある。特に、ブレードクリーニング性が比較的困難な球形トナーに対して不利になり、また、大きな粒子の保護層中での在化に起因する異常画像を引き起こす可能性がある。なお、導電性粒子は必要に応じて公知の材料や手段により表面処理を行うことができる。
静電潜像担持体の最表面層における導電性微粒子の含有量は、0.5〜65重量%が好ましく、5〜45重量%がより好ましい。最表面層における含有量が0.5重量%未満であると、残留電位低減効果が不十分になったり、耐摩耗性向上の効果が十分に発現しないことがあり、65重量%を超えると、最表面層のバルク抵抗が低くなりすぎて、画像ボケが発生してしまったり、塗膜が脆くなり、耐摩耗性が低下してしまうことがある。静電潜像担持体の最表面層には、前記式(I)のMxSbyOzで表される導電性微粒子以外の微粒子を含有してもよい。このような微粒子としては、例えば、フッ素樹脂微粒子(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、シリコ−ン樹脂微粒子、グアナミンホルムアルデヒド樹脂微粒子等の有機樹脂微粒子;銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをド−プした酸化錫、錫をド−プした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素等の無機微粒子;等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズは、電子写真感光体の電気特性への影響が少なく、耐摩耗性を著しく向上させることができるため、特に好ましい。微粒子を併用する場合、前記式(I)のMxSbyOzで表される導電性微粒子の最表面層における含有量は、微粒子全量に対し10〜100重量%が好ましい。前記導電性微粒子の含有量が10重量%より少ないと、導電性微粒子による残留電位低減効果、画像ボケ抑制効果が不十分となってしまう場合がある。
次に、本実施形態に好適に用いられる水酸基を有する反応性電荷輸送物質について説明する。静電潜像担持体の最表面層は、少なくとも2つ以上の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質と芳香環を有するイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂を含有し、この反応性電荷輸送物質が下記一般式(1)で表される分子構造を有してなることは本発明の好適な態様である。
前記式(1)中、nは、1〜4の整数を表し、nが1のときYは少なくとも2つの水酸基を有する炭素数1〜6の有機基であり、nが2以上のとき、Yは水酸基であるか、または炭素数1〜50までの有機基(ただし、式(1)で表される化合物[Y]n−Xの[Y]n−には、少なくとも2個の水酸基を有する。)であり、Xは電荷輸送性化合物基を表す。また、前記反応性電荷輸送物質(1)において、電荷輸送性化合物基Xが下記一般式(2)〜(4)で表される分子構造を有することが本発明の好適な態様である。
前記した反応性電荷輸送物質の一般式(1)において、電荷輸送性化合物基Xがジアリールアミノ基(−NAr1Ar2)を有することが好ましい。ただし、ジアリールアミノ基:−NAr1Ar2において、Ar1〜Ar2は、それぞれ独立して、置換又は無置換の芳香族基を表す。
前記電荷輸送性化合物基Xが下記一般式(2)で表されるジアリールアミノ基(−NAr1Ar2)の分子構造を有することが好ましい本発明の態様の1つである。
上記式(2)中、Ar1〜Ar2は前記同様の基であり、Ar3は、Ar1〜Ar2と同様の置換又は無置換の芳香族基を表し、Ar1〜Ar3の少なくとも1つは前記Y基と結合する手を有する。
また、前記電荷輸送性化合物基Xが下記一般式(3)で表されるジアリールアミノ基(−NAr1Ar2)の分子構造を有することが好ましい本発明の態様の1つである。
前記式(3)中、Ar1〜Ar2は前記同様の基であり、Ar3はAr1〜Ar2と同様の基であり、Ar1〜Ar3はそれぞれ独立して、置換又は無置換の芳香族基を表し、Arは置換又は無置換のアリーレン基を表し、R1は水素原子又はAr4を表し、これらは同一でも異なってもよい。Ar 4 は置換または無置換の芳香族基を表す。また、Ar1〜Ar3及びR(Rが水素原子である場合を除く)の少なくともいずれか1つが、前記一般式(1)中の置換基Yを有する。
また、前記電荷輸送性化合物基Xが下記一般式(4)で表されるジアリールアミノ基(−NAr1Ar2)の分子構造を有することが好ましい本発明の態様の1つである。
前記式(4)中、Ar1〜Ar2は前記同様の基であり、Ar5及びAr6はそれぞれ前記Ar3又はAr4と同様の基であるか又はアルキル基を表し、これらは同一でも異なってもよく、Arは置換又は無置換のアリーレン基を表し、また、Ar1〜Ar2又はAr5〜Ar6の少なくともいずれか1つ(ただし、Ar 5 〜Ar 6 がアルキル基の場合は除く)が、前記一般式(1)中の置換基Yと結合する手を有する。
また、前記反応性電荷輸送物質(1)が、少なくとも隣接する2つの炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した構造を有することも本発明の好適な態様の一つである。特に、前記反応性電荷輸送物質(1)は、下記一般式(5)で表される分子構造を有していることが好ましい。
前記式(5)中、Rは炭素数1〜50の2価の有機基を表し、nは1〜4の整数を表す。また式中Xは前記したとおりである。
また、前記反応性電荷輸送物質(1)が、下記一般式(6)で表される分子構造を有することが好ましい。
前記式(6)中、Zは単結合または炭素数1〜50の有機基を表し、nは2〜4の整数を表す。
前述した少なくとも2以上の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂は、ウレタン結合を形成したポリウレタン樹脂である。このポリウレタン樹脂は、多官能のイソシアネート化合物とポリオール化合物とが架橋反応して三次元網目構造を形成するため、耐摩耗性が高いバインダ樹脂として好適に用いられる。このようなポリオール化合物として反応性電荷輸送物質を用いる場合、その構造によって三次元網目構造の形成に不利な場合が発生する可能性がある。例えば、本実施形態で使用される反応性電荷輸送性物質以外の構造を有する電荷輸送物質を用いた場合について考えると、電荷輸送化合物基が樹脂骨格の末端にぶら下がるペンダント構造となる。このような構造は、電荷輸送化合物基内等にポリオール成分がなければ末端分子となり、高分子構造を形成できず、樹脂層を形成することは不可能である。このため、このようなペンダント型構造は三次元網目構造を形成できず、ポリウレタンの三次元網目構造形成が阻害され、その結果、耐摩耗性は大幅に劣化してしまう。その対策として反応性電荷輸送物質含有量を低減し、ポリウレタン樹脂成分を増加すると、最表層の電荷移動性が低下し、光感度の低下、残留電位の上昇等の不具合が発生する可能性が大となる。すなわち、最表層の耐摩耗性と電気特性がトレードオフの関係になってしまう。
次に、本実施形態で好ましく使用される反応性電荷輸送性物質である、少なくとも2個の水酸基を有する電荷輸送性物質について説明する。本実施形態で使用される電荷輸送性物質は、前記した一般式(1):[Y]n−Xで表される。このような一般式(1)で表される化合物のうち、Y基は、少なくとも隣接する炭素原子に2つの水酸基を有しているか、または直接乃至炭素数1〜50の有機基を介してX基と結合している電荷輸送性物質である。Y基が、少なくとも隣接する炭素原子に2つの水酸基を有している場合のより好ましい電荷輸送性物質としては、前記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。また、直接あるいは炭素数1〜50の有機基を介して一般式(1)中のX基と結合している好ましい電荷輸送性物質としては、前記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。特にこれら一般式(5)及び(6)中のX基は、一般式(2)〜(4)で示されるX基であることが好ましい。
また、本実施形態ではこのようなX基を有する電荷輸送性物質は、少なくとも2個の水酸基を有しており、この水酸基は以下の2種類のいずれかであることが好ましい。第1のものとしては、隣接する2つの炭素原子に水酸基を有するものを挙げることができる。特に前記第1のものとして、前記一般式(1)において、Y基が、前記一般式(6)で表される基を挙げることができる。そして、第2のものとしては、前記一般式(1)において、Y基が、前記一般式(6)で表される基を挙げることができる。これらの組み合わせにおいて、前記式(2)〜(4)において、Ar1〜Ar4は、それぞれ独立して、置換又は無置換の芳香族基を表す。ただし、Ar1〜Ar4がY基と結合している場合には、これら置換又は無置換の芳香族基は2価の芳香族基が挙げられる。
具体的には、無置換の芳香族基としては、フェニル基、フェノキシフェニル基(o−、mまたはp−フェノキシフェニル基)、ビフェニル基、フェニルアルキレンフェニル基((アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基(シクロペンテン基)、ヘキシレン基(シクロヘキシレン基)等)例えば、フェニルエチルフェニル基(−φ(CH2)2−φ−:φはC6H4基)フェニルシクロヘキシレンフェニル基)、フェニルアルコキシレンフェニル基((アルコキシレン基としてはメトキシレン基(−CH2O−)、エトキシレン基(−(CH2)2O−)、プロポキシレン基(−CH2CH(CH3)O−)、ブトキシレン基等)例えばフェニルエトキシフェニル基)、ターフェニル基、ナフタレン基、ピレン基等を挙げることができる。
また、置換芳香族基の置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC1〜C10程度のアルキル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等のC1〜C10程度のアルコキシ基)、アルコキシアルキル基、ハロゲン(フッ素基、塩素基、臭素基、沃素基等)基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられ、これら置換基から選択される1置換〜4置換のフェニル基、フェノキシフェニル基、ビフェニル基等を置換芳香族基として挙げることができる。
また、前記式(3)のR1基は、前記Ar1〜Ar4と同様であるかまたは水素基である。ただし、R1基が水素基である場合には、当然であるが、Y基と結合する手は有さない。また、前記式(3)〜(4)中のArは、前記したAr1〜Ar4において、前記Y基と結合する場合と同様の基である、2価の置換又は無置換の芳香族基である。
これら前記(2)〜(4)式で表されるX基には、前記式(1)で示されるY基をn個有している。このようなY基は、隣接する2つの炭素原子に水酸基を有している基であるか、または前記式(6)で示される基である。前記隣接する2つの炭素原子に水酸基を有している基は、前記式(5)で示される基である。
前記式(5)において、Rは炭素数1〜50の2価の有機基であり、nは1〜4の整数である。このような炭素数1〜50の2価の有機基としては、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキシレン基等の炭素数1〜50のアルキレン基、メトキシレン基、エトキシレン基、プロポキシレン基、ブトキシレン基、ペントキシレン基、ヘキソキシレン基等の炭素数1〜50の2価のアルコキシレン基、炭素数1〜50の2価のアルキレンカルボニルオキシ基等を挙げることができる。これらは、1種単独(例えばメチレンオキシ基)で、または1種類で複数あるいは2種以上の複数種から、適宜選択することができる。また、1種類で複数の例としては、メチレンオキシプロポキシレン基等、2種以上の複数種の例としては、2価のアルコキシアルキレン基(例えばメトキシエチレン基)、アルコキシアルキレンカルボニルオキシ基(メトキシペンテンカルボニルオキシ基等)等を挙げることができる。
このような前記式(2)〜(4)から選択されるX基と、前記式(5)〜(6)から選択されるY基とからなる前記式(1)で表される電荷輸送性物質として、より具体的には、表1〜表6に表される基を有する化合物を挙げることができる。
表1は、前記式(1)において、X基が前記式(2)で表され、Y基が前記式(5)で表され、X基を1つ有する化合物の例を示している。表2は、前記式(1)において、X基が前記式(2)で表され、Y基が前記式(5)で表され、X基を複数有する化合物の例を示している。表3は、記式(1)において、X基が前記式(2)で表され、Y基が前記式(6)で表され、このY基はX基と単結合(X−(OH)n:Xは前記式(1)で表されるX基であり、nは2以上4以下の整数である。基Xと基OHとは、他の基を介さずに(すなわち単結合)結合している。)で結合しているOH基である化合物の例を示している。表4は、前記式(1)において、X基が前記式(2)で表され、Y基が前記式(6)で表されるOH基が炭素数1〜40の有機基を介して基Xと結合している化合物の例を示している。表5は、前記式(1)において、X基が前記式(3)で表され、Y基が前記式(5)で表され、前記式(3)においてR1が水素原子である化合物の例を示している。表6は、前記式(1)において、X基が前記式(3)で表され、Y基が前記式(6)で表され、前記式(3)においてR1がAr4である化合物の例を示している。表7は、前記式(1)において、X基が前記式(3)で表され、Y基が前記式(6)で表され、前記式(3)においてR1が水素原子である化合物の例を示している。表8は、前記式(1)において、X基が前記式(3)で表され、Y基が前記式(6)で表され、前記式(3)においてR1がAr4で表される化合物の例を示している。表9は、前記式(1)において、X基が前記式(4)で表され、Y基が前記式(5)で表される化合物の例を示している。表10は、前記式(1)において、X基が前記式(4)で表され、Y基が前記式(6)で表される化合物の例を示している。
表1〜10において、「No.」の欄は、ハイフン(−)で区切られた番号(以下、「ハイフン付番号」という)と括弧書きNo.「(No.・・・)」の2種類表記となっている。このうちハイフン付番号の第1番目の数字と第2番目の数字は、それぞれ、前記一般式(2)〜(4)、及び(5)〜(6)の番号と同一である場合には、その番号と同一の式の化合物あるいは基に分類される化合物であることを意味している。例えば、ハイフン付番号の第1と第2の数字がそれぞれ、2と5である場合には、前記式(1)において、X基が一般式(2)で表され、Y基が一般式(5)で表される化合物に分類されることを意味していることになる。なお、表1は[表1]〜[表41]に、表2は[表42]〜[表44]に、表3は[表45]〜[表47]に、表4は[表48]〜[表55]に、表5は[表56]及び[表57]に記載している。また、表6は[表58]及び[表59]に、表7は[表60]〜[表62]に、表8は[表63]〜[表66]に、表9は[表67]及び[表68]に、表1は[表69]〜[表71]に記載している。
本実施形態では、前記式(1)で表される水酸基を2個以上有する化合物と、イソシアネート化合物(ポリイソシアネート化合物)とが反応して得られる化合物を用いることを1つの特徴としているが、このような水酸基を2個以上有する化合物のうち好ましい化合物として、前記した表1〜表10に記載した化合物、すなわち、No.の欄のもう1つの表記の「(No.・・・)」の表記で言う、No.1〜No.216の全ての化合物が好ましい。別の観点からいえば、化合物No.1〜No.52の化合物を除く化合物であるか、前記表1〜表10の「No.」の欄のNo.53〜No.134に示す化合物(2以上の水酸基が端部のC−C(炭素−炭素)に有する化合物)、またはNo.135〜No.216が好ましい。
これらの反応性電荷輸送物質は、多官能のイソシアネート化合物との反応によって網目構造を形成するため、水酸基が1つしか存在しない反応性電荷輸送物質を用いたポリウレタン樹脂膜よりも大幅に耐摩耗性が向上する。これらの反応性電荷輸送性物質を用いた場合には、電荷輸送化合物基はポリウレタン鎖の主鎖として組み込まれてしまうことになる。
本実施形態では、特定の反応性電荷輸送物質を用いると、上記不具合の発生が少なく、かつ高い耐摩耗性を達成することができる。これは、以下のような理由と考えられる。すなわち、本実施形態で使用される反応性電荷輸送物質(1)は、少なくとも水酸基を2個有するアルキレン基又は2価のアルコキシ基と電荷輸送化合物基が結合した構造を有しており、ポリウレタン鎖に2個以上の架橋点を有しながらペンダント型に結合すると考えられる。したがって、ポリウレタン鎖の二次構造の影響を受けにくく、電荷輸送性化合物基に立体的なひずみが生じにくい構造になっているため、電荷移動が低下しにくく、感度低下や残留電位上昇を抑え、かつ高い耐摩耗性を達成していると考えられる。
また、本実施形態では好ましい反応性電荷輸送物質として、前記表1〜表6の「No.」の欄のうちのNo.162〜No.216を挙げることができる。
本実施形態では、上記した反応性電荷輸送性物質を用いると、上記したような不具合の発生が少なく、かつ高い耐摩耗性を達成できる。これは、以下の理由が挙げられる。すなわち、本実施形態では、反応性電荷輸送性物質(5)は、少なくとも水酸基を有する炭素数2〜6のアルキル基又はアルコキシ基が2以上電荷輸送性化合物基と結合した構造を有しており、ポリウレタン鎖に2以上の架橋点を有しながら主鎖に組み込まれる。ここで、水酸基は炭素数2〜6のアルキレン基又は(2価の)アルコキシ基を介して電荷輸送性化合物基と結合しているため電荷輸送化合物基とウレタン結合との間に炭素数2〜6のアルキレン基又は(2価の)アルコキシ基が存在する構造となる。炭素数2〜6のアルキレン基又は(2価の)アルコキシ基は、炭素鎖のコンフォメーションの自由度が非常に高いため、主鎖に組み込まれても、得られたポリウレタン鎖の二次構造の影響を受けにくく、電荷輸送化合物基に立体的なひずみが生じにくいため、電荷移動性の低下が生じにくく、感度低下や残留電位上昇を抑え、かつ高い耐摩耗性を達成していると考えられる。
本実施形態では、前記反応性電荷輸送物質(1)、(5)において、電荷輸送性化合物基Xが下記一般式(2)、(3)で表される分子構造を有することによって、よりいっそう残留電位の抑制が達成される。これは、本実施形態において、ウレタン結合形成時の立体的なひずみが生じにくいために、電荷輸送性化合物構造由来の電荷輸送性が発揮できることによる。例えば、一般式(2)のスチルベン系、一般式(3)のαフェニルスチルベン系化合物基は、水酸基を有していない非反応性電荷輸送物質として非常に良好な電荷輸送能を有しているため、水酸基を2つ有するアルキル基、アルコキシ基を導入した反応性電荷輸送物質の構造となっても、同様に非常に良好な電荷輸送能を発揮するものと考えられる。
また、本実施形態において好適に用いられる隣接した2つの炭素原子にそれぞれ水酸基を有する反応性電荷輸送物質は、より耐摩耗性が向上することがわかった。これについては、以下のような理由が考えられる。すなわち、2つの水酸基が隣接した炭素原子と結合していることから、それらがともにイソシアネートと架橋すると、2つのポリウレタン結合が炭素−炭素結合でつながった構造となる。そこに電荷輸送化合物基がペンダント型にぶら下がった構造を形成するので、反応性電荷輸送物質に対する立体ひずみはほとんど起こらず、また、ポリウレタン鎖の主鎖に含まれる炭素数が最も少ない構成となり、網目構造がより密に形成され、耐摩耗性が向上するために、電荷輸送能の低下はほとんど起こらずに、良好な電子写真特性を保持しつつ、耐摩耗性の向上を達成することができると考えられる。
さらに、本実施形態において好適に用いられる、下記構造式(5)の電荷輸送物質は、さらに良好な耐摩耗性を発揮するが、その理由として以下のように考えられる。下記構造式(5)の電荷輸送物質は、水酸基が結合している隣接した炭素原子が分子末端に位置している。すなわち、これら2つの水酸基にとっては、立体障害の最も少ないコンフォメーションで存在することができるため、両水酸基とも非常に反応しやすい状態であるといえる。したがって、架橋反応後に未反応のまま残存する水酸基は非常に少なくなると考えられ、このことから、架橋密度の高い塗膜を形成しやすく、残留官能基による電子写真特性への悪影響も非常に小さくなり、耐摩耗性が高く電子写真特性の良好な静電潜像担時体を得ることができると思われる。
本実施形態の静電潜像担持体の最表層は、必要に応じてポリオール化合物を用いて得ることができる。このようなポリオールとしては、官能基(ここではOH基)数が2以上であればよく、ジオールや3価以上のポリオールが用いられる。下記にポリオールを例示するが、本発明に適用されるポリオールはこれに限定されない。
ジオールとしては、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等);アルキレンエーテルグリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);脂環式ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物等が挙げられる。
3価以上のポリオールとしては、多価脂肪族アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等);3価以上のフェノール類(例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。好ましく用いられるものとして、トリメチロールプロパン、あるいは、ヒドロキシエチル基が導入されたスチレン−アクリル共重合体下記構造式(I)で示されるポリオールが挙げられる(例えば、式中、l=28、m=42、n=30(数平均分子量1000以上、重量平均分子量約31000))。このようなポリオールの例として、例えば、スチレン−アクリル共重合体LZR−170(藤倉化成社製)が挙げられる(スチレン/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリート(これらの3ユニットの順番は任意であり、ブロックでもランダムでもよい。))。
また、ポリエーテル骨格を有するポリオール、ポリエステル骨格を有するポリオール、アクリル骨格を有するポリオール、エポキシ骨格を有するポリオール、ポリカーボネート、骨格を有するポリオール、電荷発生性分子骨格を有するポリオールあるいは電荷輸送性分子骨格を有するポリオール等も用いられる。
本実施形態においては、各種ポリオールを一種単独で、または2種以上組み合せて用いることができる。この場合、複数のポリオールの少なくとも1種類は、水酸基数に対する分子量の割合(分子量/水酸基数=OH当量)が30以上150未満であることが好ましく、40以上120未満であることがさらに好ましい。OH当量が30以上150未満のポリオールを組み合せることにより、耐摩耗性の高い最表面層を形成することができる。すなわち、OH当量の小さいポリオールの含有量を大きくすると、架橋密度が増加して、よりきめの細かい三次元網目構造を形成して耐摩耗性が向上すると考えられる。
ここで、上記OH当量が30以上150未満であるポリオールの含有量は、複数のポリオール全量に対して重量比で10〜90%であることが好ましい。30以上150未満であるポリオールの含有量が10%(10wt%)より小さいと、耐摩耗性向上効果があまり発揮されない。また、90%(90wt%)よりも大きいと、架橋密度が高くなるために、保護層の耐摩耗性は高くなるが、官能基数が多くなるために反応性も高くなり、塗工液とした場合の貯蔵安定性が低下して寿命が短くなってしまう。そのため、製造工程での不具合が発生しやすく、大量の有機廃液を発生させてしまうおそれがある。また、架橋点が多くなることから、架橋時の体積収縮が大きくなり、塗膜の割れやハジキによる欠陥が発生してしまう場合がある。
また、前記複数のポリオールの少なくとも1種類が、OH当量が150以上1500未満のポリオールであることが好ましい。ポリオール成分に、OH当量が150以上1500未満のポリオールを用いると、成膜性が良好でかつ形成された最表面層は高い耐摩耗性を有し、しかも最表面層形成用塗工液とした場合の貯蔵安定性が高くなり非常に良好な保存性を示す。これは、このようなOH当量を有するポリオールを用いると、分子量が比較的大きいため、塗工液に適度な粘性を持たせ、OH当量の小さいポリオールやポリイソシアネート、本実施形態に用いられる反応性電荷輸送物質の均一な混合状態を保持し、ウェット状態の塗膜のレベリング性、均一性が向上するためと考えられる。
また、最表層中における反応性電荷輸送性物質の含有量は5〜45wt%であることが好ましく、10〜35wt%であることがより好ましい。5wt%より少ないと、導電性微粒子を含有した本実施形態においても、電荷輸送能が不十分となり、残留電位が上昇してしまうことがあり、他方で45wt%より多い場合は、酸化性ガスに暴露されると、画像濃度の低下が著しく、不具合が発生する場合があった。例えば、コロトロンやスコロトロン帯電方式を用いた画像形成装置や、ブルーヒータを使用している室内に設置された画像形成装置のように、装置内の酸化性ガス濃度が高くなりやすい場合、正常な画像を形成できなくなるおそれがある。
また、最表層には、さらに必要に応じて、平滑性、化学的安定性を向上させる目的で、種々の添加剤を加えてもよい。当該最表層は、例えば、浸漬塗工、スプレー塗工、ブレード塗工、ナイフ塗工等の常法の塗工方法を用いて前記感光層上に形成される。これらの中でも、量産性、塗膜品質等の面から浸漬塗工、スプレー塗工が特に好ましい。
本実施形態における静電潜像担持体の最表層の厚みは、0.5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜40μmであり、さらに好ましくは2〜20μmの範囲である。0.5μmより薄いと、摩耗による消失や傷等に対する余裕度が小さすぎて、十分な耐久性を確保できないおそれがある。一方、50μmより厚いと、残留電位の上昇等の不具合を発生させてしまうおそれがある。したがって、摩耗や傷に対する余裕度の確保と残留電位の発生が少なくなるよう、好適な膜厚で最表層を形成する必要がある。
次に、本発明の静電潜像担持体を構成する複層型感光層および単層型感光層について説明する。
<複層型感光層>
複層型感光層は、支持体上に電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)が、通常、この順に積層されて形成される。
〔電荷発生層〕
電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含有し、バインダ樹脂やさらに必要に応じてその他の成分を含んでいる。電荷発生物質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機系材料と有機系材料の少なくとも1つを用いることができる。無機系材料としては限定されないが、例えば、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物等が挙げられる。また、有機系材料としては限定されないが、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタンまたはトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノンまたはナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、無機系材料の2種以上の併用、有機系材料の2種以上の併用あるいは無機系材料と有機系材料の2種以上の併用であってもよい。
電荷発生層のバインダ樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、また、2種以上、併用してもよい。なお、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダ樹脂として、上述のバインダ樹脂の他に、高分子電荷輸送物質を添加することもできる。
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と、溶液分散系からのキャスティング法とを挙げることができる。前者の方法である真空薄膜作製法としては、グロー放電重合法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、加速イオンインジェクション法等が挙げられる。この真空薄膜作製法は、上述した無機系材料または有機系材料を良好に形成することができる。また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、電荷発生層形成用塗工液を用いて、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法等の慣用されている方法を用いて行うことができる。この電荷発生層形成用塗工液に用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、沸点が40℃〜80℃のテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、メタノール、エタノールは、塗工後の乾燥が容易であることから特に好適である。
電荷発生層形成用塗工液は、上記有機溶媒中に前記電荷発生物質と、バインダ樹脂とを分散、溶解して作成することができる。有機顔料を有機溶媒に分散する方法として、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、振動ミル等の分散メディアを用いた分散方法や、高速液衝突分散方法等が挙げられる。電荷発生層の厚みに応じて、電子写真特性、特に光感度が変化し、一般的に厚みが厚いほど光感度が高くなる。したがって、前記電荷発生層の厚みは、要求される画像形成装置の仕様に応じて好適な範囲に設定することが好ましく、電子写真方式の感光体として要求される感度を得るためには、通常、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
〔電荷輸送層〕
本実施形態の静電潜像担持体において、静電潜像担持体の最表面層が少なくとも2個の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂と、導電性微粒子とを含有している。最表面層として、電荷輸送層上に形成される保護層の場合、電荷輸送層の耐摩耗性は低くてもよい。電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させる層であるため、電気抵抗が高いことが要求され、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得るために、誘電率が小さく、かつ電荷移動性が良いことが要求される。
正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。一方、高分子電荷輸送物質として、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
また、高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂等が挙げられる。当該高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報、等に記載の化合物が挙げられる。
また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、さらには例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体等を用いることもできる。
電荷輸送層のバインダ樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂等が用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダ樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
電荷輸送層は、上記電荷輸送物質及びバインダ樹脂を適当な溶剤に溶解または分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成することができる。電荷輸送層には、さらに必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダ樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等の添加剤を適量添加することもできる。
また、電荷輸送層の厚みは、5〜100μmが好ましく、近年の高画質化の要求から、電荷輸送層を薄膜化することが図られており、1,200dpi以上の高画質化を達成するためには、5〜30μmがより好ましい。
<単層型感光層>
次に、単層型感光層について説明する。単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダ樹脂、さらに必要に応じてその他の成分を含む。キャスティング法により単層感光層を設ける場合、例えば、少なくとも、電荷発生物質と、熱硬化性バインダ樹脂と、架橋性官能基を有する電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解、分散した溶液または分散液を塗布、乾燥することにより形成することができる。また、このような溶液または分散液には、必要により可塑剤を添加することもできる。形成された単層型感光層の厚みとしては、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。単層型感光層の膜厚が5μm未満であると帯電性が低下することがあり、100μmを超えると感度の低下をもたらすことがある。
[支持体]
本実施形態の静電潜像担持体は、前記した多層型感光層あるいは単層型感光層を支持体上に有しているが、この支持体としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このような支持体としては、導電体または導電処理をした絶縁体が好適であり、例えば、Al、Ni、Fe、Cu、Au等の金属、またはそれらの合金;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属、あるいはIn2O3、SnO2等の導電材料の薄膜を形成したもの;樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、Al、Cu、Ni等の金属粉、導電性ガラス粉等を均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理した紙等を支持体として使用することが可能である。
支持体の形状、大きさとしては特に制約はなく、板状、ドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できる。ベルト状の支持体を用いると、内部に駆動ローラ、従動ローラを設ける必要がある等、装置が複雑化、大型化するが、レイアウトの自由度が増すといったメリットがある。ただし、保護層を形成する場合は、保護層の可撓性が不足して、表面にクラックとよばれる亀裂が入ったり、粒状の地肌汚れが発生したりするのを防止するために、支持体として、剛性の高いドラム状のものを選択することが好ましい。
支持体と感光層との間に、必要に応じて下引き層を設けてもよい。下引き層は、接着性の向上、モアレ等の防止、上層の塗工性改良、残留電位の低減等を目的として設けられる。このような下引き層としては、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に溶剤にて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ポリアミド、メトキシメチル化ポリアミド等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。下引き層はこれら樹脂に、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物等の微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒を用いて慣用される塗工法によって形成することができる。なお、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層、Al2O3を陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法により設けたもの等を用いることもできる。下引き層の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、たとえば0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
本実施形態の静電潜像担持体である感光体は、必要に応じて前記支持体上に、接着性、電荷ブロッキング性を向上させるために中間層を設けてもよい。中間層は、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に溶剤を含む溶液を用いて感光層を塗布形成するので、感光層の形成に使用する溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。中間層の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ポリアミド、メトキシメチル化ポリアミド等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
(画像形成装置及び画像形成方法)
次に、本発明の実施形態における画像形成装置と画像形成方法について説明する。本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを用いて静電潜像を可視像とする現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有し、静電潜像担持体は、支持体と、この支持体上に少なくとも感光層を有し、最表面層が、少なくとも2個の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂と、導電性微粒子とを含有し、該イソシアネート化合物の少なくとも1種類が、芳香環を有することを特徴とする。また、本実施形態の画像形成装置は、先の述べた静電潜像担持体を具備する。本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、その他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有することができる。クリーニング手段としては、例えば、静電潜像担持体の表面に残留するトナーを除去するように静電潜像担持体表面に当接して構成したものが好ましく用いられる。
本発明の実施形態における画像形成方法は、上記したような画像形成装置を用いて行う方法であり、静電潜像形成工程は前記した静電潜像形成手段により静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、現像工程はこの静電潜像形成工程により形成された静電潜像を、現像手段を用いて現像する工程であり、転写工程は現像工程で得られた現像を転写手段により転写する工程であり、定着工程は転写された現像を紙などの記録媒体に定着手段により定着する工程であり、その他の工程はその他の手段により行うことができる。さらに必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含むことができる。以下、各工程と手段について詳しく説明する。
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
静電潜像形成工程は、帯電された静電潜像担持体上に露光により静電潜像を形成する工程であり、静電潜像担持体として、前述した静電潜像担持体が用いられる。静電潜像形成手段は、帯電器と露光器とを有する。帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。用いられる帯電器としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、導電性または半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた接触式帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触式帯電器、ローラ端部にギャップテープ等のギャップを付与する手段を介して静電潜像担持体に非接触式に近接配置された帯電器等が挙げられる。
帯電部材としてローラ形状であってもよく、その他、磁気ブラシ、ファーブラシ等のどのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態に合わせて選択可能である。磁気ブラシの場合には、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成して帯電部材とする。あるいは、ブラシの場合には、例えば、ファーブラシの材質として、カーボン、硫化銅、金属または金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることにより帯電部材とする。
帯電器としては、接触式の帯電器、あるいはギャップを付与する手段を介して非接触に近接配置される帯電器を用いると、帯電器からのオゾン発生を低減できる点から好ましい。特に、帯電器が静電潜像担持体に接触または非接触状態で配置され、直流と交流電圧の重畳印加により静電潜像担持体表面を帯電するように構成された帯電器が好ましい。例えば、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであれば、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することができ、帯電ムラが低減され、帯電ローラの汚れに起因する帯電不良等に対する防止の余裕度が大きく、メンテナンスフリーで用いることができるメリットがあるので、特に好ましい。
静電潜像担持体の担持面を上記帯電手段(帯電器)により一様に帯電後、露光手段により潜像を形成するが、この露光は、例えば、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光手段(露光器)としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、露光器として、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の少なくとも1つを含む各種露光器が挙げられる。なお、本実施形態においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
<現像工程及び現像手段>
現像工程は、露光により形成された静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程である。なお、ここでいう「トナー」は、後述するトナー及び現像剤を含む。本実施形態の画像形成方法に含まれる現像工程では、可視像の形成は現像手段により行われ、静電潜像をトナーあるいは現像剤を用いて現像することにより行うことができる。現像手段としては、トナーあるいは現像剤を用いて現像することができる限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナーあるいは現像剤を収容し、静電潜像に該トナーあるいは現像剤を接触または非接触で付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
現像器は、乾式現像方式あるいは湿式現像方式のいずれの現像器でもよく、また、単色用現像器あるいは多色用現像器のいずれであってもよい。例えば、トナーあるいは現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有するもの等が好適に挙げられる。現像器内では、例えば、後述するトナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持されて磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて感光体の表面にトナーによる可視像が形成される。なお、現像器に収容させる現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、上記したようなトナーとキャリアとからなるような二成分現像剤であってもよい。
<転写工程及び転写手段>
転写工程は、前記した現像工程により形成された可視像を紙等の記録媒体に転写する工程である。転写工程としては、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして2色以上、好ましくはフルカラートナー(黄色、シアン、マゼンタ、黒等、例えば4色)を用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
このような転写は、例えば、可視像を転写帯電器により静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行われ、これは転写手段により行うことができる。この転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、得られた複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。すなわち、現像手段において、複数の静電潜像担持体上にそれぞれ単色複数色のカラートナー画像を形成し、転写手段において形成されたカラートナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせて一次転写を行い、得られた一次転写画像を記録媒体上に一括して二次転写する構成とするのが好ましい。
なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば中間転写体として転写ベルト等が好適に挙げられる。このような中間転写体の静止摩擦係数は、0.1〜0.6が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。また、中間転写体の体積抵抗は数Ωcm以上103Ωcm以下であることが好ましい。体積抵抗を数Ωcm以上103Ωcm以下とすることにより、中間転写体自身の帯電を防ぐとともに、電荷付与手段により付与された電荷が中間転写体上に残留しにくいので、二次転写時の転写ムラを防止でき、また、二次転写時の転写バイアス印加を容易とすることができる。
中間転写体の材質は特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、以下のようなものが例示される。
(1)ヤング率(引張弾性率)の高い材料を単層ベルトとして用いたもの:ヤング率の高い材料としては、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PAT(ポリアルキレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料、ETFE(エチレンテトラフロロエチレン共重合体)/PCのブレンド材料、ETFE/PATのブレンド材料、PC/PATのブレンド材料、カーボンブラック分散の熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。これらヤング率の高い単層ベルトは画像形成時の応力に対する変形量が少なく、特にカラー画像形成時にレジズレ(色ずれなど)を生じにくいとの利点を有している。
(2)上記ヤング率の高いベルトを基層とし、その外周上に表面層または中間層を付与した2〜3層構成のベルト:2〜3層構成のベルトは単層ベルトの硬さに起因し発生するライン画像の中抜けを防止し得る性能を有している。
(3)ゴム及びエラストマーを用いたヤング率の比較的低いベルト:これらのベルトは、その柔らかさによりライン画像の中抜けが殆ど生じない利点を有している。また、ベルトの幅を駆動ロール及び張架ロールより大きくし、ロールより突出したベルト耳部の弾力性を利用して蛇行を防止するので、リブや蛇行防止装置を必要とせず低コストを実現できる。
中間転写ベルトは、従来から弗素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等が使用されてきていたが、近年ベルトの全層やベルトの一部を弾性部材にした弾性ベルトが使用されてきている。樹脂ベルトを用いたカラー画像の転写の場合、以下の課題がある。カラー画像は通常4色の着色トナーで形成され、1枚のカラー画像には、1層から4層までのトナー層が形成されており、トナー層は1次転写(感光体から中間転写ベルトへの転写)や、二次転写(中間転写ベルトからシートへの転写)を通過することで圧力を受けてトナー同士の凝集力が高くなるため、文字の中抜けやベタ部画像のエッジ抜けの現象が発生しやすくなる。樹脂ベルトは、硬度が高くトナー層に応じて変形しないため、トナー層を圧縮させやすく文字の中抜け現象が発生しやすい。一方、最近、フルカラー画像を様々な用紙、例えば和紙や意図的に凹凸を付けたり用紙に画像を形成したい要求も高まってきている。このような平滑性の悪い用紙を用いると転写時にトナーと空隙が発生しやすく、転写抜けが発生しやすくなる。密着性を高めるために二次転写部の転写圧を高めると、トナー層の凝縮力を高めることになり、上述したような文字の中抜けを発生させる虞が高くなる。
中間転写ベルトとしての弾性ベルトに用いられる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE、PVDF、PTFE、PTFE−PFA等)、ポリスチレン樹脂、クロロポリスチレン樹脂、ポリ−α−メチルスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。これらは、1種類あるいは2種類以上、併用することができる。
弾性ベルトの弾性材として、弾性材ゴム、エラストマーとしては、例えば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)、等が挙げられる。これらは、1種類あるいは2種類以上、併用することができる。
中間転写体の体積抵抗値を調節するため、導電剤を使用でき、このような導電剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられる。導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。なお、導電剤は、これらに限定されるものではない。
中間転写ベルトの表面層に用いられる材料(表層材料)としては、弾性材料による感光体への汚染防止と、転写ベルト表面の表面摩擦抵抗を低減させてトナーの付着力を小さくし、クリーニング性、二次転写性を高めるものが要求される。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を用い、これに、表面エネルギーを小さくするとともに潤滑性を高める材料(例えば、フッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等)の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上、または粒径が異なるものを組み合せて分散して使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
中間転写ベルトの製造方法は限定されるものではなく、例えば、回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法、液体塗料を噴霧し膜を形成させるスプレー塗工法、円筒形の型を材料の溶液の中に浸けて引き上げるディッピング法、内型,外型の中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付け,加硫研磨を行う方法等が挙げられ、複数の製法を組み合せてベルトを製造することが一般的である。なお、中間転写ベルトとしての弾性ベルトの伸びを防止する方法として、伸びの少ない芯体樹脂層にゴム層を形成する方法、芯体層に伸びを防止する材料を入れる方法等があるが、特定の製法に限定されるものではない。
伸びを防止する芯体層を構成する材料は、例えば、綿、絹、等の天然繊維;ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維:超延伸繊維を含む)、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリテトラフロロエチレン繊維、フェノール繊維等の合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;鉄繊維、銅繊維等の金属繊維等が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上併用され、織布状または糸状としたものも用いられる。糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり当然導電処理を施すこともできる。
芯体層の製造方法は特に限定されない、例えば、筒状に織った織布を金型等に被せ、その上に被覆層を設ける方法、筒状に織った織布を液状ゴム等に浸漬して芯体層の片面あるいは両面に被覆層を設ける方法、糸を金型等に任意のピッチで螺旋状に巻き付け、その上に被覆層を設ける方法等を挙げることができる。弾性層の厚さは、弾性層の硬度にもよるが、厚すぎると表面の伸縮が大きくなり表層に亀裂の発生しやすくなる。また、伸縮量が大きくなることから画像に伸び縮みが大きくなること等から厚すぎる(およそ1mm以上)ことは好ましくない。
本実施形態の画像形成装置または方法において用いる前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。転写器として、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
<定着工程及び定着手段>
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置により定着させる工程であり、例えば、転写された可視像がカラーである場合には、各色のトナーに対し記録媒体に転写するごとに行ってもよく、また、各色のトナー画像を積層した状態で一括して記録媒体の転写を同時に行ってもよい。定着装置としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の加熱加圧手段を用いることが好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとを組み合せたもの、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとを組み合せたもの等が挙げられる。加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本実施形態では、目的に応じて前記定着工程及び定着手段とともに、あるいはこれらに代えて、公知の光定着器を用いてもよい。
適宜選択されて設けられる除電工程は、静電潜像担持体に対して除電バイアスを印加し、除電を行う工程であり、この工程は除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては特に制限はなく、静電潜像担持体に対し、除電バイアスを印加できればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができる。好適な除電手段として、例えば、除電ランプ等が挙げられる。
また、適宜選択されて設けられるクリーニング工程は、形成した画像転写後の静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、この工程はクリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段としては特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。好適なクリーニング手段としては、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が挙げられる。
また、本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体表面に潤滑性付与剤を塗布する潤滑性付与剤塗布手段を有することができる。
また、本実施形態の画像形成方法に適宜選択されて設けられるリサイクル工程は、クリーニング工程により除去されたトナー(例えば、カラートナー)を現像手段にリサイクルさせる工程であり、この工程はリサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
さらに、適宜選択されて設けられる制御手段は、前記した帯電工程などの各工程を行う各手段を制御する手段であり、これは制御手段により好適に行うことができる。このような制御手段としては、前記各手段の動作を制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。制御手段としては、例えば、シークエンサ、コンピュータ等が挙げられる。
本実施形態の画像形成装置について、図を参照してさらに説明する。図6は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図6の画像形成装置は、先の述べた実施形態の静電潜像担持体(感光体)10を搭載した画像形成装置であり、本実施形態の画像形成装置は、例えばドラム状の感光体10と、この感光体10の周囲に設けられる、除電ランプ2、帯電チャージャ3、イレーサ4、画像露光部(露光手段)5、現像ユニット(現像手段)6、転写前チャージャ7、レジストローラ8、転写チャージャ110、分離チャージャ111、分離爪112、クリーニング前チャージャ113、クリーニングブラシ114、クリーニングブレード115等から構成されている。なお、感光体10の形状は、図6に示すドラム状の形状に限定されるものではなく、例えば、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。また、各種チャージャとしては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド ステート チャージャ)、接触配置、またはギャップテープや端部に段差を設ける等のギャップ付与手段によって静電潜像担持体との間にギャップを有して近接配置される帯電ローラを始めとする公知の手段を用いることができる。
例えば帯電手段としての近接配置される帯電ローラは、接触配置される帯電ローラと比較して、帯電ムラが低減されたり、帯電ローラの汚れに起因する帯電不良等に対する余裕度が大きく、メンテナンスフリーで用いることができたりするという大きなメリットがあるが、印加電圧を高くする必要がある。その結果、感光体表面に対してのハザード(負荷)が高くなり、高分子バインダを最表面層(電荷輸送層または保護層)とした構成の感光体10を採用した場合の摩耗が著しくなり、感光体10の寿命が短くなり、コストアップやメンテナンス頻度の増加等の不具合を発生する傾向があった。また本実施形態では、近接配置される帯電ローラは、直流電圧に交流電圧を重畳印加する望ましい形態とすることにより、直流電圧の印加だけの放電不安定を防止し、画像濃度ムラ等を未然に防止している。
本実施形態における静電潜像担持体(感光体)10は、近接配置される帯電手段を採用した形態においても、ほとんど摩耗することがなく、安定して帯電が行われ、露光部の残留電位低減、画像ボケ抑制等の要求特性も達成され、長期間の繰り返し使用においても、安定して良好な画像を出力することができる。このような静電潜像担持体を有する画像形成装置に使用される転写手段として、図6に示すような転写チャージャ110と分離チャージャ111とを併用したものが効果的である。
また、本実施形態の画像形成装置では、画像露光部5、除電ランプ2等の光源に、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物の少なくともいずれかを用いることができる。さらに、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルタ、バンドパスフィルタ、近赤外カットフィルタ、ダイクロイックフィルタ、干渉フィルタ、色温度変換フィルタ等の各種フィルタを用いることもできる。これら光源等は、図6に示す各手段を用いて行う工程の他に、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光等の工程において、感光体10に光を照射して適宜、除電等を行うことができる。
現像ユニット6により感光体10上にトナーにより現像された画像は、記録媒体(転写紙)9に転写されるが、感光体上のトナー全部が転写されるわけではなく、感光体10上にトナーが残存する。このような残存トナーがクリーニングされずに、次の複写プロセスが行われると、帯電不良や露光による潜像形成時に不具合が発生するため、一般的に、クリーニング手段を用いて残留トナーを除去する。このようなクリーニング手段としては、クリーニングブラシ114またはクリーニングブレード115を単独または組み合せて行われ、クリーニングブラシとして、ファーブラシ、マグファーブラシ等の公知のものが用いられる。
また、クリーニングブレード115としては、摩擦係数の低い弾性体が用いられ、弾性体として例えば、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー、フッ素エラストマー等が挙げられる。特に、熱硬化性のウレタン樹脂からなるウレタンエラストマーが、耐摩耗性、耐オゾン性、耐汚染性の点で優れているので好ましい。なお、エラストマーにはゴムも含まれる。クリーニングブレード115は、硬度(JIS−Aによる硬度)が65〜85度の範囲が好ましい。またクリーニングブレード115の厚さが0.8〜3.0mmで、突き出し量が3〜15mmの範囲にあることが好ましい。その他クリーニングブレード115の当接圧、当接角度、食い込み量等を適宜決定することができる。
静電潜像担持体(感光体)10に当接するクリーニング手段は、トナー除去性能は高いが、感光体に対して機械的ハザード(機械的な応力の印加による損傷)を与え、感光体表面層の摩耗を引き起こすが、本実施形態における感光体は、保護層の耐摩耗性が著しく高いため、表面に当接するクリーニング手段を有する画像形成装置であっても、安定して良好な画像を出力することができる。
図6では省略しているが、図7に示すように本実施形態の画像形成装置のクリーニング手段として、感光体表面に潤滑性付与剤116を塗布する機構114を備えることが好ましい。特に、近年の電子写真の高画質化に有利なブレードクリーニングが困難である球形トナーを用いる場合、球形トナーのクリーニングのため、クリーニングブレードの当接圧を強めたり、硬度の高いウレタンゴムブレードを用いたりする対策が講じられている。
本実施形態における静電潜像担持体(感光体)10は、耐摩耗性が非常に高いが、摩擦係数が高いクリーニングブレードによる応力の印加に起因するブレード鳴き、ブレードエッジの摩耗等に対し、感光体表面に潤滑性付与剤塗布手段により潤滑性付与剤を塗布することができる。これによって、クリーニングブレードに対する電子写真感光体表面の摩擦係数を長期間にわたって低減することができ、ブレード鳴き等の上記問題を回避することができる。
このような潤滑性付与剤を塗布する手段を備えたクリーニングユニットの要部を図7に示す。本実施形態の画像形成装置では、図7に示すように、潤滑性付与剤116を棒状にした固形物をクリーニングブラシ114に押圧すると、クリーニングブラシ114が回転する際に潤滑性付与剤を掻き取り、クリーニングブラシ114に付着した潤滑性付与剤が感光体表面に塗布される仕組みとなっている。
図7に示す例では潤滑性付与剤は固形であるが、この潤滑性付与剤は固形でなくてもよく、液体や粉体、半練り状でも、感光体表面に塗布することができ、電子写真特性を満たすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。潤滑性付与剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;カルナウバ、ラノリン、木ろう等のワックス類;シリコーンオイル等の潤滑性オイル等が挙げられる。これらの中でも、棒状に加工することが比較的容易で、潤滑性付与効果が高い点から、金属石鹸が好適であり、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩が特に好ましい。
図7に示す潤滑性付与剤塗布手段をクリーニングユニット117に備えることで、感光体ドラム周りのレイアウト設計が容易になったり、装置を簡略化することができる等のメリットがあり、クリーニングされたトナーに潤滑性付与剤が多量に混入するため、使用量が多すぎるとトナーリサイクルが難しくなったり、ブラシのクリーニング効率が低下する等のおそれもある。また、図7に示していないが、潤滑性付与剤塗布手段を有した塗布ユニットをクリーニングユニットと別に設ける構成を採用することで、上記デメリットを解消することもできる。その場合、塗布ユニットは、クリーニングユニットの下流に設けることが好ましい。さらに、塗布ユニットを複数箇所に設け、それらを同時、または順次働かせることで潤滑性付与剤の塗布効率を高めたり、消費量をコントロールしたりする等の効果を持たせることができる。
図8は、本実施形態における画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。図8に示すように、本実施形態の画像形成装置を用いた画像形成プロセスでは、感光体122として、先述した静電潜像担持体を用いる。図8に示す例では、感光体122は駆動ローラ123により駆動され、帯電チャージャ220による帯電、像露光光源121による像露光、現像(図示せず)、転写チャージャ帯電器125を用いる転写、クリーニングブラシ126によるクリーニング、除電光源127による除電が繰返し行われる。
また、図9は、本実施形態の電子写真感光体156を適用したフルカラー画像形成装置の概略構成図である。図9において、感光体156は先に述べた静電潜像担持体である。感光体156は図9に示すように、反時計回りに回転駆動されながら、その表面がコロトロンやスコロトロン等を用いる帯電チャージャ153によって一様帯電された後、図示しないレーザ光学装置から発せられるレーザ光Lの走査されて静電潜像を担持する。この走査はフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報に基づいてなされるため、感光体ドラム156上にイエロー、マゼンタ、シアンまたはブラックという単色用の静電潜像がそれぞれの感光体上に形成される。
ドラム状の感光体156の図中左側には、リボルバ現像ユニット250が配設されている。リボルバ現像ユニット250は、回転するドラム状の筺体の中にイエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器、ブラック現像器を有しており、回転によって各現像器を感光体ドラム156に対向する現像位置に順次移動させる。なお、イエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器、ブラック現像器は、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを付着させて静電潜像を現像するものである。感光体ドラム156上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の静電潜像が順次形成され、これらはリボルバ現像ユニット250の各現像器によって順次現像されてイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像となる。
前述した現像位置よりも感光体156の回転下流側には中間転写ユニットが配設されている。これは、張架ローラ159a、転写手段の中間転写バイアスローラ157、二次転写バックアップローラ159b、ベルト駆動ローラ159cによって張架されている中間転写ベルト158を、ベルト駆動ローラ159cの回転駆動によって図9中、時計回りに無端移動される。感光体ドラム156上で現像されたイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像は、感光体ドラム156と中間転写ベルト158とが接触する中間転写ニップに進入する。そして、中間転写バイアスローラ157からのバイアスの影響を受けながら、中間転写ベルト158上に重ね合わせて中間転写されて、4色の重ね合わせトナー像となる。現像手段で静電潜像担持体上に各単色のカラートナー画像を形成し、転写手段で得られたカラートナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせて一次転写し、得られた一次転写画像を記録媒体上に一括して二次転写する中間転写ベルトを用いてトナー像を重ね合わせる中間転写方式は、電子写真感光体と中間転写体との相対的な位置決めが比較的容易でかつ正確に行える。このため、色ずれに対して有利であり、高画質なフルカラー画像が得られる。
回転により中間転写ニップを通過した感光体156の表面は、ドラムクリーニングユニット155によって転写残トナーがクリーニングされる。図9に示すクリーニングユニット155は、クリーニングバイアスを印加するクリーニングローラによって転写残トナーをクリーニングする例を示すが、クリーニング手段として、ファーブラシ、マグファーブラシ等からなるクリーニングブラシや、クリーニングブレードなどを用いるものであってもよい。転写残トナーがクリーニングされた感光体156の表面は、除電ランプ154によって除電される。除電ランプ154は、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が用いられる。これら光源には、画像露光部と同様に、シャープカットフィルタ、バンドパスフィルタ、近赤外カットフィルタ、ダイクロイックフィルタ、干渉フィルタ、色温度変換フィルタ等の各種フィルタを用い、所望の波長域だけを用いるようにしてもよい。
図9において中間転写ユニットの下側に、転写ベルト158と転写バイアスローラ157、駆動ローラ159c等各種ローラからなる転写ユニットが配設されており、この図9中左側には、搬送ベルト164、定着ユニット165が配設されている。転写ユニットは、無端移動する転写ベルト158は、図示しない移動手段によって、図9中、時計回りの上下方向に移動するようになっており、少なくとも、中間転写ベルト158上の1色トナー像(イエロートナー像)や、2色または3色重ね合わせトナー像が紙転写バイアスローラ163との対向位置を記録媒体が通過する際に、中間転写ベルト158に接触しない位置まで待避移動する。そして、中間転写ベルト158上の4色重ね合わせトナー像の先端が紙転写バイアスローラ163との対向位置に進入してくる前に、中間転写ベルト158との接触位置まで移動して二次転写ニップを形成する。
一方、図示しない給紙カセットから送られてきた記録媒体160を2つのローラ間に挟み込んでいるレジストローラ対161は、記録媒体160を中間転写ベルト158上の4色重ね合わせトナー像に重ね合わせ得るタイミングで上記二次転写ニップに向けて送り込む。中間転写ベルト158上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写ニップ内で紙転写バイアスローラ163からの二次転写バイアスの影響を受けて記録媒体160上に一括して(重畳された画像が)二次転写される。この二次転写により、記録媒体160上にフルカラー画像が形成される。
フルカラー画像が形成された記録媒体160は、転写ベルト162によって紙搬送ベルト164に送られる。搬送ベルト164は、転写ユニットから受け取った記録媒体160を定着装置165内に送り込む。定着装置165は、送り込まれた記録媒体160を、加熱ローラとバックアップローラとの当接によって形成された定着ニップに挟み込みながら搬送する。記録媒体160上のフルカラー画像は、加熱ローラからの加熱と、定着ニップ内での印加圧力により、記録媒体160上に定着される。なお、図示していないが、転写ベルト162や搬送ベルト164には、記録媒体160に画像を吸着させるためのバイアスが印加されている。また、記録媒体160を除電する紙除電チャージャや、各ベルト(中間転写ベルト158、転写ベルト162、搬送ベルト164)を除電する3つのベルト除電チャージャが配設されている。また、中間転写ユニットは、ドラムクリーニングユニット155と同様の構成のベルトクリーニングユニットも備え、これによって中間転写ベルト158上の転写残トナーをクリーニングする。
本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段及び定着手段からなる画像形成要素を複数備えタンデム型構成とすることができる。図10にこのようなタンデム型構成からなる画像形成装置の一例概略図を示す。
図10において、複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図10中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するため、中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4つの画像形成手段18がそれぞれ並置され、これら各画像形成手段18と並置された各タンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍に、露光装置21が配置されている。中間転写体50に対し、タンデム型現像器120が配置された側の反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22は、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架され、二次転写ベルト24上を搬送される記録媒体と中間転写体50と互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。なお、タンデム型画像形成装置の複写装置本体150では、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、記録媒体の両面に画像形成を行うため、記録媒体を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。まず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときには、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へ移動した後に、またコンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されるとともに原稿面からの反射光が第2走行体34上のミラーにより反射され、この反射光が結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報に分離される。そして、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120の各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、これら各色の画像情報はそれぞれ対応してブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各トナー画像を形成するために使用される。
図11の一部拡大概略図に示すように、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、それぞれ、感光体10(ブラック用感光体10K、イエロー用感光体10Y、マゼンタ用感光体10M及びシアン用感光体10C)と、この各色ごとの感光体を一様に帯電させる帯電器60と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像に対応した画像を形成するために前記各色毎の感光体を露光(図11中、L)し、各感光体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光器と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像器61と、トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、感光体クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像)を形成する。こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用感光体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上にこれら各色毎のブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像が重ね合わされ、合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
カラー画像を現像する各色のカラートナーは、キャリアと混合した状態で現像器中にあり、攪拌スクリュー68によって攪拌され、その際の摩擦によって帯電する。帯電したキャリアとトナーは、回転するマグネットローラ72に穂立ち状態で保持されて磁気ブラシ65が形成される。この磁気ブラシ65を構成するトナーの一部が、電気的な吸引力によって静電潜像担時体10の表面に移動し、その結果、静電潜像担時体10の表面にトナーによる可視像が形成される。
感光体10において、転写手段の下流には転写残トナーをクリーニングするクリーニングユニット63が設けられている。図11には、ブラシクリーナ76とクリーニングブレード75が搭載されており、クリーニングブレード75は、潜像担時体表面の進行方向に対してカウンター方向に設置され、これらによって潜像担時体表面の転写残トナーを回収する。回収されたトナーは、リサイクル手段によって再度現像器内に導くこともできる。図11では、クリーニングユニットによって回収されたトナーを、搬送スクリュー79及びリサイクル経路80によって現像器61に導くことでリサイクルを達成している。
一方、図10に示すように、給紙テーブル200では、給紙ローラ142の1つが選択されて回転し、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて給紙を止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ51上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて給紙を止める。なお、レジストローラ49は、一般に接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されていてもよい。
止められた記録媒体は、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により合成カラー画像(カラー転写像)をシート(記録紙)上に転写(二次転写)してシート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
カラー画像が転写され形成されたシート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。なお、定着装置25は定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えられて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
タンデム方式の画像形成装置では、各色の潜像形成や現像を並行して行うことができるため、リボルバ式よりも画像形成速度を遙かに高速化させることができる。さらに、図9に示す複写機は中間転写方式も採用しており、先述した電子写真感光体を搭載することで、色ずれの少ない高品質なフルカラー画像を非常に高速に、長期間繰返し、安定して出力することができる。
(プロセスカートリッジ)
次に、別の実施形態としてプロセスカートリッジについて説明する。本発明では、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段と、前述した静電潜像担持体とを有するプロセスカートリッジとし、このプロセスカートリッジは、さらに必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してもよい。現像手段としては、先述したトナーまたは現像剤を収容する現像剤収納容器と、現像剤収納容器内に収容されたトナーまたは現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを少なくとも有し、さらに担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。例えば、このようなプロセスカートリッジを、図12に示す。図12に示すように、プロセスカートリッジは、前述の感光体101を内蔵し、帯電器102、露光器103、現像手段104、クリーニング手段107を含み、さらに必要に応じてその他の手段を有することができる。図12中、105は紙等の記録媒体であり、108は搬送ローラである。感光体101は、本発明の静電潜像担持体を用いる。また、露光器103は、高解像度で書き込みできる光源が用いられ、帯電器102は、任意の帯電部材が用いられる。
先述の画像形成装置は、先の実施形態の静電潜像担持体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジのユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電器、像露光器、現像器、転写または分離器、及びクリーニング器の少なくとも一つを静電潜像担持体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。このようにプロセスカートリッジとすると、静電潜像担持体やその他プロセス部材の交換を短時間に、しかも容易に行うことができるので、メンテナンスに要する時間が短縮できコストダウンとなる。また、プロセス部材と静電潜像担持体が一体となっているので、相対的な位置の精度向上あるいはこれら帯電器等のセットする手間を省力できるといった利点も有する。
<トナー>
次に、本発明に適用されるトナーについて詳しく説明する。前述の画像形成装置で用いるトナーとして、材料、製法等について特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、粉砕分級法、水系媒体中で油相を乳化、懸濁または凝集させトナー母体粒子を形成させる、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法等が挙げられる。
粉砕分級法としては、例えば、トナー材料(例えば結着樹脂と、着色剤と、離型剤等を含んで構成される)を溶融乃至混練し、粉砕、分級等することにより、トナーの母体粒子を得る方法である。なお、粉砕法の場合、トナーの平均円形度を0.97〜1.0の範囲に調整する目的で、得られたトナーの母体粒子に対して機械的衝撃力を与え形状を制御することができる。この場合、機械的衝撃力としては、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョン等の装置を用いてトナーの母体粒子に印加することができる。このような粉砕後または粉砕中に篩等を用いて分級する。この分級に、サイクロン等を用いた遠心力による分級あるいは重力による分級等を用いることもできる。
懸濁重合法としては、油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤等を分散し、界面活性剤、その他固体分散剤等が含まれる水系媒体中で後に述べる乳化法によって乳化分散した後、重合反応してトナー粒子化した後、粒子表面に無機微粒子を付着させる湿式処理を行う。この湿式処理は、余剰の界面活性剤等を洗浄除去した粒子表面に処理を施す。
重合反応に使用される重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸等の酸類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有するアクリレートまたはメタクリレート等を一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入することができる。また、使用する分散剤として酸基や塩基性基を有するものを選ぶことによって粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
乳化重合法としては、水溶性重合開始剤、上述した重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤等を水系媒体中に分散した分散体を用意し、これらの混合の後にトナーサイズまで凝集させ、加熱融着させてトナー粒子を得る。その後、後述する無機微粒子の湿式処理を行えばよい。ラテックスとして懸濁重合法に使用することのできる重合性単量体と同様なものを用いてトナー粒子表面に官能基を導入できる。
本発明においては、各種製法の中でも樹脂の選択性が高く、造粒性に優れ、粒径、粒度分布、形状の制御が容易で、低温定着性の優れたトナーが得られることから、トナー材料(原料)を溶解若しくは分散した溶解液あるいは分散液を水系媒体中に乳化あるいは分散させて造粒して得られるトナーが好ましい。なお、溶解液はトナー材料を溶媒中に溶解させたものであり、分散液はトナー材料を溶媒中に分散させたものである。
水系媒体中で乳化あるいは分散させて造粒されて得られるトナーのトナー材料として、活性水素基含有化合物と、この活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて得られる接着性基材と、離型剤と、着色剤等を少なくとも含み、さらに公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂を含んでいてもよい。また、必要に応じて樹脂微粒子、帯電制御剤などのその他の成分を含むことができる。なお、本発明において用いられるトナーは、トナー材料として活性水素基含有化合物及び活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含まない場合には、少なくとも結着樹脂を含有する。本明細書中では便宜上、活性水素基含有化合物を(AC)、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を(PC)と略すことがある。トナーとしては、少なくとも活性水素基含有化合物(AC)及びこの(AC)と反応可能な重合体である(PC)を含むトナー原料を有機溶媒中で調整した油相を水相中で乳化または分散し、(AC)と(PC)の反応後に脱溶剤して造粒したものが好ましく用いられる。
[接着性基材]
接着性基材は、紙等の記録媒体に対し接着性を示し、活性水素基含有化合物及びこの活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を水系媒体中で反応させて得られる接着性ポリマーを少なくとも含み、さらに公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂を含んでいてもよい。接着性基材の重量平均分子量は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1,000以上が好ましく、2,000〜10,000,000がより好ましく、3,000〜1,000,000が特に好ましい。前記重量平均分子量が1,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。また、接着性基材の貯蔵弾性率としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、測定周波数20Hzにおいて10,000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上であり、110〜200℃が好ましい。TG’が100℃未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。接着性基材の粘性は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、測定周波数20Hzにおいて1,000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下であり、90〜160℃が好ましい。Tηが180℃を超えると、低温定着性が悪化することがある。接着性基材の耐ホットオフセット性と低温定着性との両立を図る観点から、TG’はTηよりも高いことが好ましい。すなわち、TG’とTηとの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。TG’とTηとの差は大きければ大きいほどよい。また、低温定着性と耐熱保存性との両立を図る観点からは、前記(TG’−Tη)は0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましく、20〜80℃がさらに好ましい。
接着性基材の具体例としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂等が特に好適なものとして挙げられる。ポリエステル系樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂などが特に好適な例として挙げられる。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、前記活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを前記水系媒体中で反応させて得られる。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかにウレタン結合を含んでいてもよく、この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。前記ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
ウレア変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、下記(1)〜(10)等が好適な例として挙げられる。
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
[活性水素基含有化合物]
活性水素基含有化合物(AC)は、水系媒体中で活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(PC)が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。活性水素基含有化合物(AC)としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体がイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、前記アミン類(B)が好適である。
活性水素基としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水酸基(アルコール性水酸基またはフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
アミン類(B)としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物が特に好ましい。
ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、前記(B1)から(B5)のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
アミン類(B)と、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、前記アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であるのが好ましく、1/2〜2/1であるのがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であるのが特に好ましい。混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、前記ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
[活性水素基含有化合物と反応可能な重合体]
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)としては、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができる。例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点でポリエステル樹脂が特に好ましい。
プレポリマーにおける活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基等が挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)であるのが特に好ましい。
ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基等が挙げられる。ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)におけるウレア結合生成基がイソシアネート基である場合、ポリエステル樹脂(RMPE)としては、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適に挙げられる。イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ前記活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの等が挙げられる。ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジオール(DIO)単独、または前記ジオール(DIO)と少量の前記3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が好ましい。
ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。前記アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上のものが好ましい。例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合物における、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合重量比(DIO:TO)は、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物等が例として挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、またはDICと少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。ジカルボン酸としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。3価以上のポリカルボン酸(TO)としては、3〜8価またはそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸等が例示される。芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、及びジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物から選択されるいずれかの酸無水物または低級アルキルエステル物を用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物におけるジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合重量比(DIC:TC)としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混合重量比(DIC:TC)は、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、前記ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
ポリオール(PO)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜40重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、2〜20重量%が特に好ましい。含有量が、0.5重量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40重量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの等が例として挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。前記イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。
これらは、1種単独でも使用することができ、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート(PIC)と、活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、該ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と、該水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1であるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。前記イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがある。
ポリイソシアネート(PIC)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜40重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、2〜20重量%がさらに好ましい。含有量が、0.5重量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40重量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がより好ましい。イソシアネート基の平均数が、1未満であると、前記ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。該重量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。なお、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。このような反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、またはこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)等が挙げられる。
前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6重量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl注入して測定する。前記試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。前記検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.または東洋ソーダ工業株式会社製の分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、及び4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、前記検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
[結着樹脂]
結着樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂等が例として挙げられる。特に、未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)が好ましい。未変性ポリエステル樹脂を前記トナー中に含有させると、低温定着性及び光沢性を向上させることができる。
未変性ポリエステル樹脂としては、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂と同様のもの、すなわち、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物等が挙げられる。未変性ポリエステル樹脂は、その一部が前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と相溶していること、すなわち、互いに相溶可能な類似の構造であるのが、低温定着性、耐ホットオフセット性の点で好ましい。
未変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。重量平均分子量(Mw)が1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあるので、上述したように前記重量平均分子量(Mw)が1,000未満である成分の含有量は、8〜28重量%であることが必要である。一方、前記重量平均分子量(Mw)が30,000を超えると低温定着性が悪化することがある。
未変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、通常30〜70℃であり、35〜70℃がより好ましく、35〜50℃がさらに好ましく、35〜45℃が特に好ましい。ガラス転移温度が、30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が不十分となることがある。
未変性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5mgKOH/gが以上が好ましく、10〜120mgKOH/gがより好ましく、20〜80mgKOH/gがさらに好ましい。水酸基価が、5mgKOH/g未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがある。未変性ポリエステル樹脂の酸価としては、1.0〜50.0mgKOH/gが好ましく、1.0〜45.0mgKOH/gがより好ましく、15.0〜45.0mgKOH/gがさらに好ましい。一般に前記トナーに酸価をもたせることによって負帯電性となり易くなる。
未変性ポリエステル樹脂を前記トナー材料に含有させる場合、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂)と、該未変性ポリエステル樹脂との混合重量比(重合体/未変性ポリエステル樹脂)が、5/95〜80/20が好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。未変性ポリエステル樹脂(PE)の混合重量比が95を超えると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがあり、20未満であると、光沢性が悪化することがある。
結着樹脂における未変性ポリエステル樹脂の含有量としては、例えば、50〜100重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、80〜90重量%がさらに好ましい。該含有量が50重量%未満であると、低温定着性や画像の光沢性が悪化することがある。
[着色剤]
トナー材料(原料)として用いられる着色剤としては、特に制限はなく公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができる。着色剤を例示すれば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤のトナーにおける含有量は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましい。含有量が、1重量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15重量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起り、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。用いられる樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレンまたはその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記スチレンまたはその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と前記着色剤とを高せん断力をかけて混合または混練することにより製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、フラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合または混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。前記混合または混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
[トナー材料として用いられるその他の成分]
トナー材料に用いられるその他の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。例えば、離型剤、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料等がその他の成分として挙げられる。
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。ワックス類としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが好ましい。カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン等が挙げられる。ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。前記ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。前記ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミド等が挙げられる。前記ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。前記ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。ポリオレフィンワッックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワッックス、サゾールワックス等が挙げられる。
離型剤の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、40〜160℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。融点が40℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起し易いことがある。離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1,000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。溶融粘度が5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。含有量が40重量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
帯電制御剤としては、特に制限はなく公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色または白色に近い材料が好ましい。例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体またはその化合物、タングステンの単体またはその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が例として挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。帯電制御剤は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
また、帯電制御剤は、マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解または分散させてもよく、あるいはトナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解または分散させる際に添加してもよい。また、トナー粒子製造後にトナー表面に固定させてもよい。帯電制御剤のトナーにおける含有量としては、結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なるため一概に規定することはできないが、例えば、結着樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。含有量が、0.1重量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10重量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなり過ぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
[樹脂微粒子]
樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。このような樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂であってもよいし熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらの中でもビニル系樹脂が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細な球状の樹脂樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。なお、上記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合または共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。また、樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業株式会社製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレート等が例として挙げられる。
樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば以下の方法が好適に挙げられる。
(1)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法。
(2)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、または硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法。
(3)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、または予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱または減圧等によって溶剤を除去する方法。
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
本発明において用いられるトナーとしては、例えば、公知の懸濁重合法、乳化凝集法、乳化分散法等により製造されるトナーが挙げられるが、前述のように活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを含む前記トナー材料を有機溶剤に溶解させてトナー溶液を調製した後、トナー溶液(油相)を水系媒体(水相)中に分散させて乳化液または分散液を調製し、水系媒体(水相)中で、活性水素基含有化合物と、この活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を粒子状に生成させ、前記有機溶剤を除去して得られるトナーが好適に挙げられる。
[トナー溶液]
トナー溶液の調製は、前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解させることにより行われる。用いられる有機溶剤としては、トナー材料を溶解あるいは分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。有機溶剤は、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー材料100重量部に対し、40〜300重量部が好ましく、60〜140重量部がより好ましく、80〜120重量部がさらに好ましい。
[分散液]
分散液の調製は、前記トナー溶液を水系媒体中に分散させることにより行うことができる。トナー溶液を水系媒体中に分散させると、水系媒体中にトナー溶液からなる分散体(油滴)が形成される。
[水系媒体]
水系媒体としては、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、これらの混合物等が挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類等が挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
トナー溶液は、前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。分散の方法としては特に制限はなく、公知の分散機等を用いて適宜選択することができる。分散機としては、例えば、低速せん断式分散機、高速剪断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられる。これらの中でも、前記分散体(油滴)の粒径を2〜20μmに制御することができる点で、高速剪断式分散機が好ましい。高速剪断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、回転数としては、1,000〜30,000rpmが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましく、分散時間としては、バッチ方式の場合は、0.1〜5分が好ましく、分散温度としては、加圧下において0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、分散温度は高温である方が一般に分散が容易である。
トナーの製造方法の一例として、前記接着性基材を粒子状に生成させてトナーを得る方法を以下に示す。接着性基材を粒子状に生成させてトナーを造粒する方法においては、例えば、水系媒体相の調製、前記トナー溶液の調製、前記分散液の調製、前記水系媒体の添加、その他(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)の合成、前記活性水素基含有化合物の合成等)を行う。水系媒体相の調製は、例えば、前記樹脂微粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂微粒子の水系媒体中の添加量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜10重量%が好ましい。トナー溶液の調製は、前記有機溶剤中に、前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を、溶解または分散させることにより行うことができる。また、トナー表面から1μm以内に無機酸化物粒子含有層を形成するため、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子を添加する。なお、トナー材料の中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、水系媒体相調製において、樹脂微粒子を水系媒体に分散させる際に水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、トナー溶液を水系媒体相に添加する際に、トナー溶液と共に水系媒体相に添加してもよい。
分散液の調製は、先に調製したトナー溶液を、先に調製した水系媒体相中に乳化若しくは分散させることにより行うことができる。そして、乳化乃至分散の際、活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを伸長反応乃至架橋反応させると、接着性基材が生成する。
接着性基材(例えば、前記ウレア変性ポリエステル樹脂)は、例えば、(1)活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含むトナー溶液を、活性水素基含有化合物(例えば、前記アミン類(B))と共に、水系媒体相中に乳化または分散させ、分散体を形成し、該水系媒体相中で両者を伸長反応または架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)トナー溶液を、予め活性水素基含有化合物を添加した水系媒体中に乳化若しくは分散させて分散体を形成し、該水系媒体相中で両者を伸長反応または架橋反応させることにより生成させてもよく、あるいは(3)トナー溶液を、水系媒体中に添加混合させた後で、活性水素基含有化合物を添加して分散体を形成し、該水系媒体相中で粒子界面から両者を伸長反応または架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、前記(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子において濃度勾配を設けることもできる。
乳化または分散により、接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができ、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましく、反応温度としては、0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。水系媒体相中において、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む分散体を安定に形成する方法としては、例えば、前記水系媒体相中に、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等の前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解または分散させて調製した前記トナー溶液を添加し、剪断力により分散させる方法等が挙げられる。なお、前記分散の方法の詳細は上述した通りである。分散液の調製においては、必要に応じて分散体(前記トナー溶液からなる油滴)を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が例として挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。該フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子株式会社製);フローラドFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M株式会社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業株式会社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。前記四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。該陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級または三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。該カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フローラドFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物またはこれらのメチロール化合物、クローライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類等が挙げられる。
上記酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
前記ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
前記アミド化合物またはこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、またはこれらのメチロール化合物等が挙げられる。前記クローライド類としては、例えば、アクリル酸クローライド、メタクリル酸クローライド等が挙げられる。前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマーまたは共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。前記セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。分散液の調製においては、前記伸長反応あるいは前記架橋反応の触媒を用いることができる。該触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート等が挙げられる。
得られた分散液(乳化スラリー)から、有機溶剤を除去する。この有機溶剤の除去の方法としては、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、前記油滴中の前記有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法等が挙げられる。有機溶剤の除去が行われるとトナー粒子が形成される。形成されたトナー粒子に対し、洗浄、乾燥等の処理が施され、さらにその後、所望により分級等が行われる。分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンタ、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができ、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
このようにして得られたトナー粒子を、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の粒子とともに混合したり、さらに機械的衝撃力を印加したりすることにより、トナー粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。このような方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
トナーは、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)、平均円形度、形状係数SF−1、SF−2、などを有していることが好ましい。トナーの体積平均粒径(Dv)としては、3〜8μmが好ましく、4〜7μmがより好ましく、5〜6μmがさらに好ましい。ここで、体積平均粒径Dvは、Dv=〔(Σ(nD3)/Σn)1/3(式中、nは粒子個数、Dは粒子径である)と定義される。これは本発明で使用される導電性微粒子における体積平均粒径の定義と等しい。体積平均粒径が3μm未満であると、二成分現像剤では現像器における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、例えば、1.25以下が好ましく、1.00〜1.20がより好ましく、1.10〜1.20がさらに好ましい。体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.25以下であると、トナーの粒度分布が比較的シャープであり、定着性が向上するが、1.00未満であると、二成分現像剤では現像器における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させたりすることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、1.20を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。体積平均粒径、及び体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
本発明で好ましく用いられるトナーの平均円形度は、0.930〜1.000が好ましく、0.940〜0.99がより好ましい。なお、平均円形度は、トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値である。平均円形度が0.930未満であると、球形から離れた不定形の形状のトナーとなり、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、一方、0.98を超えると、ブレードクリーニング等を採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルト等のクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生したり、あるいは感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。平均円形度は、例えば、トナーを含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法などにより計測することができ、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)等を用いて計測することができる。
トナーにおける略球形状は、下記数式1で表されるトナーの球形(丸み)の程度を表す形状係数SF−1で表され、該形状係数SF−1は、トナーを二次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの2乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
(ただし、前記数式1中、MXLNGは、トナーを二次元平面に投影してできる形状の最大長を表し、AREAは、トナーを二次元平面に投影してできる図形の面積を表す。)
形状係数SF−1は、100〜180が好ましく、105〜140がより好ましい。SF−1が100の場合にはトナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。前記SF−1の値が180を超えるとクリーニング性は向上するが、球形形状が大きく外れるために、帯電量分布が広くなって地かぶりが多くなり、画像品位が低下する。また、移動における空気の抵抗で、電界による現像及び転写が電気力線に忠実でなくなるために、細線間にトナーが現像され画像均一性が低下し、画像品位が低下することがある。
トナーの凹凸の程度は下記数式2で表される形状係数SF−2で表される。形状係数SF−2は、トナーを二次元平面に投影してできる図形の周長PERIの2乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
(ただし、前記数式2中、PERIは、トナーを二次元平面に投影してできる図形の周長を表し、AREAは、トナーを二次元平面に投影してできる図形の面積を表す。)
SF−2は100〜180が好ましく、105〜140がより好ましい。SF−2が100の場合にはトナー表面に凹凸が存在しないことを意味し、SF−2が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
ここで、前記形状係数SF−1及びSF−2は、例えば、走査型電子顕微鏡(S−800、日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3、ニレコ社製)に導入し、解析して上記数式1及び数式2から計算により求めることができる。
また、トナーは、以下の形状規定によって表すことができる。略球形状のトナーの長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする)で規定するとき、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲であることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満であると、真球形状から離れるため、ドット再現性および転写効率が劣り、高品位な画像が得られなくなってしまう場合がある。一方、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなってしまうことが考えられる。特に、(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。
トナーの着色としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。着色としては、例えば、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであるのが好ましい。
〈現像剤〉
現像剤は、前記トナーを少なくとも含有してなり、現像方式や仕様に合うように調整(キャリア等の選択などを含む)するためにその他の成分を含有してなるものである。現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
トナーを用いた一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像器の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像器における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
前記キャリアとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。芯材の材料としては特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。 このような材料としては、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。芯材の粒径としては、平均粒径(体積平均粒径(DSO))で、10〜200μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。平均粒径(体積平均粒径(DSO))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
樹脂層の材料としては特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。このような材料としては、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等が挙げられる。前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると電気抵抗の制御が困難になることがある。樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製し、この塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法などが挙げられる。塗布溶液に使用される溶剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテート等が挙げられる。焼付としては特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法等が挙げられる。樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01〜5.0重量%が好ましい。樹脂層の量が、0.01重量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0重量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
現像剤が二成分現像剤である場合、キャリアの二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90〜98重量%が好ましく、93〜97重量%がより好ましい。二成分系現像剤のトナーとキャリアの混合割合は、一般にキャリア100重量部に対しトナー1〜10.0重量部である。
以下、本発明の実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は下記実施例に限定されるものではない。また、特に断わらない限り、比、%等は重量(質量)基準で表す値(重量比または重量%)である。後述する実施例及び比較例の静電潜像担持体の評価において用いるトナーを下記により製造した。
なお、以下の実施例1乃至3、実施例7乃至11、実施例15乃至19、実施例21乃至29は参考例である。
[製造例1]
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724重量部、イソフタル酸276重量部、及びジブチルチンオキサイド2重量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下に5時間反応させた後、160℃まで冷却した。これに32重量部の無水フタル酸を加えて2時間反応させた。次いで、80℃まで冷却し、酢酸エチル中でイソホロンジイソシアネート188重量部と2時間反応を行いイソシアネート含有プレポリマー(1)を得た。
得られたプレポリマー(1)267重量部と、イソホロンジアミン14重量部とを50℃で2時間反応させ、重量平均分子量64,000のウレア変性ポリエステル樹脂(1)を得た。
次いで、上記と同様にしてビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724重量部、及びテレフタル酸276重量部を常圧下、230℃で8時間反応した。次に、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させてピーク分子量5000の変性されていないポリエステル樹脂(a)を得た。
上記ウレア変性ポリエステル樹脂(1)200重量部と変性されていないポリエステル樹脂(a)800重量部を酢酸エチル/MEK(メチルエチルケトン)(1/1(重量比))混合溶剤2,000重量部に溶解、混合し、トナーバインダー樹脂(1)の酢酸エチル/MEK溶液を得た。この一部を減圧乾燥し、トナーバインダー樹脂(1)を単離した。ガラス転移温度(Tg)は62℃、酸価は10であった。
次に、ビーカー内に上記トナーバインダー樹脂(1)の酢酸エチル/MEK溶液240重量部、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点81℃、溶融粘度25cps)20重量部、及びカーボンブラック10重量部を入れ、60℃でTK式ホモミキサーを用いて12,000rpmに攪拌し均一に溶解、分散させた。これをトナー材料溶液とした。 一方、水相として、ビーカー内にイオン交換水706部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を入れ均一に溶解した。ついで60℃に昇温させ、TK式ホモミキサーで12,000rpmに攪拌しながら上記トナー材料溶液を投入し、10分間攪拌した。次いで、この混合液を、攪拌棒及び温度計付のコルベンに移し、98℃まで昇温して一部溶剤を除去し、室温に戻してからTK式ホモミキサーを用いて12,000rpmで攪拌を行い、トナーの形状を球形から変形させて溶剤を完全に除去した。その後、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、母体トナー粒子を得た。得られた母体トナー粒子100重量部に疎水性シリカ0.5重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、製造例1のトナーを作製した。得られたトナーについて、以下のようにして平均円形度を測定したところ0.948であった。
<平均円形度の測定方法>
電解水溶液として、1級塩化ナトリウムを用いて1重量%NaCl水溶液を調製し、この電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分分散処理を行う。別のビーカーに電解水溶液100〜200mlを入れ、その中に前記サンプル分散液粒子を所定の濃度になるように加えて懸濁液を作製した。得られた粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し解析する光学的検知帯の手法を用いた。この値はフロー式粒子像分析装置(FPIA−1000、東亜医用電子社製)により平均円形度を測定した。
[製造例2]
製造例1において製造したウレア変性ポリエステル樹脂(1)850重量部と、変性されていないポリエステル樹脂(a)150重量部とを酢酸エチル/MEK(1/1)混合溶剤2,000重量部に溶解して混合させてトナーバインダー樹脂(2)の酢酸エチル/MEK(1/1)溶液を得た。この一部を減圧乾燥してトナーバインダー樹脂(2)を単離した。製造例1において用いたトナーバインダー樹脂(1)に代えてトナーバインダー樹脂(2)を用いた以外は製造例1と同様にして製造例2のトナーを製造した。得られたトナーについて、製造例1と同様にして平均円形度を測定したところ0.987であった。
[製造例3]
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物343重量部、イソフタル酸166重量部及び触媒のジブチルチンオキサイド2重量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応した。次いで、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応した後80℃まで冷却し、トルエン中にトルエンジイソシアネート14重量部を入れ110℃で5時間反応を行った。この反応後に脱溶剤し、重量平均分子量98,000のウレタン変性ポリエステル樹脂を得た。一方、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物363重量部、イソフタル酸166重量部を製造例1と同様に重縮合し、変性されていないポリエステル樹脂を得た。上記ウレタン変性ポリエステル樹脂350重量部と変性されていないポリエステル樹脂650重量部をトルエンに溶解、混合後、脱溶剤し、トナーバインダー樹脂(3)を合成した。
得られたトナーバインダー樹脂(3)100重量部、及びカーボンブラック8重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、連続式混練機で混練した。次いで、ジェット粉砕機で粉砕した後、気流分級機で分級してトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100重量部に疎水性シリカ1.0重量部と、疎水性酸化チタン0.5重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合して製造例3のトナーを製造した。得られたトナーについて、製造例1と同様にして平均円形度を測定したところ0.934であった。
−反応性電荷輸送物質の調製例−
次に、後述する本発明の実施形態における静電潜像担持体の作製において保護層を形成するために用いる電荷輸送性ポリオール(反応性電荷輸送物質)は、たとえば、特許公報第3540056号等に開示された合成法によって得ることができる。合成法を以下に記載する。
[電荷輸送性ポリオール(CTP−2)の合成例]
〔4−メトキシベンジルホスホン酸ジエチルの合成〕
4−メトキシベンジルクロリドと亜リン酸トリエチルを150℃で5時間反応させた。その後、減圧蒸留により、過剰な亜リン酸トリエチルと副生物のエチルクロリドを留去し、4−メトキシベンジルホスホン酸ジエチルを得た。
〔4−メトキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンの合成〕
等モルの4−メトキシベンジルホスホン酸ジエチルと4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンズアルデヒドをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、水冷下撹拌しながらtert−ブトキシカリウムを少しずつ添加した。室温で5時間撹拌後、水を添加し、酸性にして析出した目的物の粗収物を得た。さらに、シリカゲルによるカラムクロマトグラフにより精製して目的物の4−メトキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンを得た。
〔4−ヒドロキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンの合成〕
得られた4−メトキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベンと二倍当量のナトリウムエタンチオラートとをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、130℃で5時間反応させた。その後、冷却して水に開け、塩酸で中和し、酢酸エチルで目的物を抽出した。抽出液を水洗、乾燥、溶媒留去して粗収物を得た。さらに、シリカゲルによるカラムクロマトグラフにより精製して目的物の4−ヒドロキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン(CTP−1)を得た。
〔1、2−ジヒドロキシ−3−[4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン−4−イルオキシ]プロパンの合成〕
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下漏斗を付けた反応容器に、4−ヒドロキシ−4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン11.75g、グリシジルメタクリレート4.35g、トルエン8mlを入れ、90℃に昇温させた後、トリエチルアミン0.16gを加え、95℃で8時間加熱撹拌した。その後、トルエン16ml、10%水酸化ナトリウム水溶液20mlを加え、さらに95℃で8時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、酸洗浄後水洗してから溶媒を留去して粗収物19gを得た。さらに、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフ(溶媒:酢酸エチル)により、下記構造式(CTP−2:No.117(表5(続)))の目的物1、2−ジヒドロキシ−3−[4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン−4−イルオキシ]プロパン(OH当量232.80)を得た(収量9.85g、黄色結晶、融点127〜128.7℃)(N0.117)。
得られた(CTP−2)のIR測定データを図13に示す。上記のように、メトキシ基を有するトリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体を合成し、その後、前記同様の反応経路を経て他の1,2−ジヒドロキシプロピルオキシ基を有する電荷輸送性ポリオールについても合成することができる。
(前記式中、ArI、ArII及びArIIIは、芳香族基であり、Xは塩素、臭素沃素などのハロゲン基を表す。)
上記反応経路において、水酸基を有する電荷輸送物質とグリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有する化合物を反応させた後、アルカリ加水分解を経て、1,2−ジヒドロキシプロピルオキシ基等の末端を導入することができるので、電荷輸送性と耐摩耗性のバランスを図りながら水酸基数を任意に決定することができる。なお、水酸基を有する電荷輸送物質の水酸基数は分子構造の設計により任意に増やすことが可能である。
[電荷輸送性ポリオール(CTP−4)の合成例]
目的化合物の構造に必要な誘導体を用い、上記の合成例と同様の反応経路により、下記構造式(CTP−3:No.25(表8(続の1)))のヒドロキシαフェニルスチルベン誘導体({4−[2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ビニル]−フェニル}−ジ−p−トルイル-アミン)を合成する。
上記アミン33.9gと炭酸カリウム35gを撹拌装置の付いた反応容器に入れ、DMAc120mlとニトロベンゼン3mlを加えて溶解させた。次いで、2−ブロモエタノール70.5gを滴下注入し100℃で18時間反応させた。その後、室温まで冷却し、不溶物を除き、トルエンで希釈した。その後、トルエン溶液を食塩水及び水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。その後、濾過してトルエンを留去し、目的物の粗収物39.6gを得た。その後、シリカゲルを充填したカラムを用いジクロロメタン/酢酸エチル(20/1〜3/1)の混合溶媒を展開溶媒としたカラムクロマトにより精製し、さらにトルエン/シクロヘキサン(2/1)の混合溶媒で二回再結晶精製し、下記構造式(CTP−4:No.212(表8(続の4)))の目的物(2−(4−{2−[4−(ジ−p−トルイル−アミノ)フェニル−]−1−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−フェニル]−ビニル}−フェノキシ)−エタノール)(OH当量:285.86)を得た(収量22.3g、黄色結晶、融点は178.5〜179.0℃)。
上記のように、水酸基を有する電荷輸送物質と2−ブロモエタノールを反応させることで、2ヒドロキシエトキシ基を導入することができる。上記反応に置いて、2−ブロモエタノール等のブロモアルコールの炭素数を制御することで、任意の炭素数のヒドロキシアルコキシ基を導入することができ、電荷輸送性と耐摩耗性のバランスを図りながら水酸基数を任意に決定することができる。
(実施例1)
〔静電潜像担持体1の作製〕
以下の手順で静電潜像担持体1を作製した。
<下引き層の形成>
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50、大日本インキ化学工業社製)15重量部、及びメラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)10重量部を、メチルエチルケトン150重量部に溶解した。これに酸化チタン粉末(タイペールCR−EL、石原産業社製)90重量部を加え、ボールミルで12時間分散し、下引層用塗工液を作製した。次に、得られた下引層用塗工液を直径30mmの円筒状アルミニウム基体に浸漬塗工法により塗工し、130℃20分間乾燥して、厚み3.5μmの下引き層を形成した。
<電荷発生層の形成>
次に、ポリビニルブチラール樹脂(XYHL、UCC社製)4重量部をシクロヘキサノン150重量部に溶解した。これに下記構造式(A)で表されるビスアゾ顔料10重量部を加え、ボールミルで48時間分散した後、シクロヘキサノン210重量部を加えて3時間分散を行った。これを容器に取り出し固形分が1.5重量%となるようにシクロヘキサノンで稀釈し、電荷発生層用塗工液を調製した。
得られた電荷発生層用塗工液を前記下引き層上に塗工し、130℃で20分間乾燥して、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
<電荷輸送層の形成>
次に、テトラヒドロフラン100重量部に、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂10重量部、シリコーンオイル(KF−50、信越化学工業社製)0.002重量部、及び下記構造式(B)で表される電荷輸送物質7重量部を加えて溶解し、電荷輸送層用塗工液を調製した。
得られた電荷輸送層用塗工液を前記電荷発生層上に浸漬塗工法により塗工し、110℃20分間乾燥し、厚み22μmの電荷輸送層を形成した。
<保護層の形成>
テトラヒドロフラン100重量部に、アンチモン酸亜鉛ゾル(商品名;セルナックスCX−Z210、日産化学工業社製、固形分20重量%、体積平均粒径0.04μm)25重量部を添加し、10分間の超音波照射を実施して分散処理し、分散液Iを調製した。次に、ポリオール[スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートからなるスチレン−アクリル共重合体LZR−170(OH当量約367)、(固形分41重量%):藤倉化成社製]25重量部、{4−[2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ビニル]−フェニル}−ジ−p−トルイル−アミン(CTP−3)14重量部をシクロヘキサノン90重量部、及びテトラヒドロフラン200重量部に溶解し、さらにトリレンジイソシアネートのポリオールアダクト体[コロネートL:NCO%=13%、固形分75%;日本ポリウレタン工業社製]27重量部を溶解し、さきほどの分散液Iに加え
、保護層形成用塗工液を作製した。得られた保護層形成用塗工液を、前記電荷輸送層上にスプレー塗工法により塗布し、150℃30分間加熱して膜厚8μmの保護層を形成した。以上ようにして、アルミニウム基体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順に形成した静電潜像担持体1を作製した。
(実施例2)
〔静電潜像担持体2の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を28重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を26重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体2を作製した。
(実施例3)
〔静電潜像担持体3の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を28重量部、CTP−3の代わりに下記構造式の電荷輸送物質(CTP−5:No.213(表8(続の4)))を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を25重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体3を作製した。
(実施例4)
〔静電潜像担持体4の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を28重量部、CTP−3の代わりに下記構造式の電荷輸送物質(CTP−6:No.159(表6(続の1))を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を25重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体4を作製した。
(実施例5)
〔静電潜像担持体5の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を24重量部、CTP−3の代わりに1、2−ジヒドロキシ−3−[4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン−4−イルオキシ]プロパン(CTP−2)を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を28重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体5を作製した。
(実施例6)
〔静電潜像担持体6の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を23重量部、CTP−3の代わりに下記構造式の電荷輸送物質(CTP−7No.88(表1(続の5)))を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を29重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体6を作製した。
(実施例7)
〔静電潜像担持体7の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を27重量部、CTP−3の代わりに下記構造式の電荷輸送物質(CTP−8:No.14’(表10))を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を27重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体7を作製した。
(実施例8)
〔静電潜像担持体8の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を29重量部、CTP−3の代わりに下記構造式の電荷輸送物質(CTP−9:No.172’(表10(続)))を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を25重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体8を作製した。
(実施例9)
〔静電潜像担持体9の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を17重量部、CTP−3の代わりに下記構造式の電荷輸送物質(CTP−10:No.202(表7(続の1)))を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を32重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体9を作製した。
(実施例10)
〔静電潜像担持体10の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルを125重量部、ポリオール(LZR−170)を20重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を6重量部、イソシアネート(コロネートL)を14重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体10を作製した。
(実施例11)
〔静電潜像担持体11の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルを167重量部、ポリオール(LZR−170)を20重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を1.5重量部、イソシアネート(コロネートL)を9重量部とした以外は実施例2と同様にして、静電潜像担持体11を作製した。
(実施例12)
〔静電潜像担持体12の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルを13重量部、ポリオール(LZR−170)を17重量部、CTP−3の代わりにCTP−2を18重量部、イソシアネート(コロネートL)を31重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体12を作製した。
(実施例13)
〔静電潜像担持体13の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルを1重量部、ポリオール(LZR−170)を10重量部、CTP−3の代わりにCTP−2を21重量部、イソシアネート(コロネートL)を33重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体13を作製した。
(実施例14)
〔静電潜像担持体14の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルを7.5重量部、ポリオール(LZR−170)を6重量部、CTP−3の代わりにCTP−6を17.5重量部、イソシアネート(コロネートL)を38重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体14を作製した。
(実施例15)
〔静電潜像担持体15の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を51重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)の代わりに、キシレンジイソシアネート[タケネート500:NCO%=45%;三井武田ケミカル社製]を13重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体15を作製した。
(実施例16)
〔静電潜像担持体16の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を53重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)の代わりに、トリレンジイソシアネート[コスモネートT−80:NCO%=48%;三井武田ケミカル社製]を12.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体16を作製した。
(実施例17)
〔静電潜像担持体17の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を49重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)の代わりに、ナフタレンジイソシアネート[コスモネートND:NCO%=40%;三井武田ケミカル社製]を14.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体17を作製した。
(実施例18)
〔静電潜像担持体18の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を43.5重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)の代わりに、ポリメリックMDI[コスモネートM−100:NCO%=30%;三井武田ケミカル社製]を17.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体16を作製した。
(実施例19)
〔静電潜像担持体19の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を7重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を34重量部とし、さらにトリメチロールプロパン(OH当量 45)を2.2重量部加えた以外は実施例5と同様にして、静電潜像担持体19を作製した。
(実施例20)
〔静電潜像担持体20の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を8重量部、CTP−3の代わりに1、2−ジヒドロキシ−3−[4’−(ジ−p−トリルアミノ)スチルベン−4−イルオキシ]プロパン(CTP−2)を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を36重量部とし、さらにトリメチロールプロパン(OH当量 45)を2重量部加えた以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体20を作製した。
(実施例21)
〔静電潜像担持体21の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルの代わりに、酸化スズコロイド(商品名;サンコロイドHIT301M1、日産化学工業社製、固形分30重量%、体積平均粒径0.01μm)を33重量部、ポリオール(LZR−170)を21重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を23重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体21を作製した。
(実施例22)
〔静電潜像担持体22の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、アンチモン酸亜鉛ゾルの代わりに、導電性酸化チタン微粒子(商品名;ET−500W、石原産業社製、体積平均粒径0.25μm)を17重量部とし、ポリオール(LZR−170)を28重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を23重量部、イソシアネート(コロネートL)を26重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体21を作製した。
(実施例23)
〔静電潜像担持体23の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、分散液I中にシリカ微粒子(商品名;KMPX−100、信越シリコーン社製)5重量部を添加した後、超音波を印加して分散処理して分散液Iを調製した。次に、ポリオール(LZR−170)を21重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を23重量部、さらにシリカ微粒子(商品名;KMPX−100、信越シリコーン社製)5重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体23を作製した。
(実施例24)
〔静電潜像担持体24の作製〕
実施例23において、シリカ微粒子のかわりにアルミナ微粒子(商品名;スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)5重量部を添加した以外は実施例23と同様にして、静電潜像担持体24を作製した。
(実施例25)
〔静電潜像担持体25の作製〕
実施例23において、シリカ微粒子のかわりに酸化チタン微粒子(商品名;タイペークCR−EL、石原産業社製)5重量部を添加した以外は実施例23と同様にして、静電潜像担持体25を作製した。
(実施例26)
〔静電潜像担持体26の作製〕
実施例23において、シリカ微粒子のかわりに酸化スズ微粒子(三菱マテリアル社製)5重量部を添加した以外は実施例23と同様にして、静電潜像担持体25を作製した。
(実施例27)
〔静電潜像担持体27の作製〕
実施例1の〈保護層の形成〉において、ポリオール(LZR−170)を28重量部、CTP−3の代わりにCTP−4を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を26重量部とし、分散液Iの超音波照射を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体27を作製した。なお、超音波照射を実施しなかった分散液Iのアンチモン酸亜鉛ゾルの体積平均粒径を遠心式粒度分布測定装置(CAPA−700、堀場製作所製)で測定したところ、0.7μmであった。
(実施例28)
〔静電潜像担持体28の作製〕
実施例2において、アンチモン酸亜鉛ゾルを常温常湿環境下で溶媒を揮発させ、残留固形物を乳鉢と乳棒で砕き、粉末状にし、得られたアンチモン酸亜鉛粉末をアンチモン酸亜鉛ゾルの代わりに加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで分散し、分散液IIを作製して分散液Iの代わりに用いた以外は、実施例2と同様にして、静電潜像担持体28を作製した。なお、分散液IIのアンチモン酸亜鉛微粒子の体積平均粒径を実施例27と同様の条件で測定したところ、1.2μmであった。
(実施例29)
〔静電潜像担持体29の作製〕
実施例2において、アンチモン酸亜鉛ゾルのかわりに特開平7−144917号公報の実施例2に開示されている方法に基づき、アンチモン酸インジウムのメタノールゾル(固形分18重量%、体積平均粒径 0.026μm)を作製し、アンチモン酸亜鉛ゾルの代わりに添加した以外は、実施例2と同様にして、静電潜像担持体29を作製した。
(比較例1)
〔静電潜像担持体30の作製〕
実施例1において、電荷輸送層の膜厚を30μmとし、保護層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、静電潜像担持体30を作製した。
(比較例2)
〔静電潜像担持体31の作製〕
実施例2において、芳香族系イソシアネート(コロネートL)のかわりに、脂肪族系イソシアネート(HDIアダクト型[スミジュールHT(固形分75重量%):住化バイエルン社製])を用い、ポリオール(LZR−170)を28重量部、イソシアネート(スミジュールHT)を26重量部とした以外は実施例2と同様にして、静電潜像担持体31を作製した。
(比較例3)
〔静電潜像担持体32の作製〕
実施例2において、ポリオール(LZR−170)を35.5重量部、イソシアネート(コロネートL)を28.5重量部とし、アンチモン酸亜鉛を加えなかった以外は実施例2と同様にして、静電潜像担持体32を作製した。
(比較例4)
〔静電潜像担持体33の作製〕
実施例2において、ポリオール(LZR−170)を35.5重量部、イソシアネート(コロネートL)を28.5重量部、CTP−4を23重量部とし、アンチモン酸亜鉛を加えなかった以外は実施例2と同様にして、静電潜像担持体33を作製した。
(比較例5)
〔静電潜像担持体34の作製〕
実施例2において、ポリオール(LZR−170)を32重量部、イソシアネート(コロネートL)を24重量部、CTP−4のかわりに、下記構造式の電荷輸送物質(CTP−11)を14重量部とした以外は実施例2と同様にして、静電潜像担持体34を作製した。
(比較例6)
〔静電潜像担持体35の作製〕
実施例1において、ポリオール(LZR−170)を33重量部、CTP−3の代わりに、下記構造式の電荷輸送物質(CTP−12)を14重量部、イソシアネート(コロネートL)を23.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、静電潜像担持体35を作製した。
<耐摩耗性の評価>
上述した実施例及び比較例で得られた各静電潜像担持体及び製造例1のトナーを、フルカラープリンタ(IPSiO CX8200:株式会社リコー製)の改造機[(1)クリーニングブレード当接圧を3倍にして感光体の摩耗に対して負荷を加えた。]に搭載した。上記フルカラープリンタの改造機を用いて、非露光部電位(VD)が−700Vになるように帯電器の電圧を調節した後、波長660nmのレーザ露光によって、600dpi相当、A4サイズ、画像面積率6%となるテスト画像を出力するランニング試験を5万枚行い、該ランニング試験前後の感光層の厚みを渦電流式膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)を用いて測定し、両者の差から摩耗量を測定した。
<劣化加速試験及び劣化加速試験後の露光部電位の評価>
各静電潜像担持体を、特開2002−139958公報に開示されている感光体劣化加速試験装置を用いて、表面電位−800V、ドラム通過電流−35μA、試験時間3時間の劣化加速試験を施した後、現像スリーブ部に表面電位計(トレック社製 モデル344)のプローブが設置されるように改造した現像ユニットを搭載した上記フルカラープリンタの改造機に搭載し、さらに、非露光部電位(VD)が−600Vになるように帯電器の電圧を調節した後、1,200dpi全面ベタ画像相当の書込みを行った時の現像スリーブ部での表面電位を測定して、露光部電位の残留電位を評価した。
<耐ガス性の評価>
50ppmの窒素酸化物ガス濃度に調整されたデシケータ中に上記したようにして得られた各静電潜像担持体を4日間放置し、前後における画像の解像度を比較することで評価を行った。結果を表11に示す(表11は[表72]に記載している)。
以上の結果から、本実施形態の構成とされた実施例1〜29の静電潜像担持体は、耐摩耗性に優れるとともに、劣化加速試験後の露光部の残留電位も著しく低減していることがわかる。また、ガス暴露後の画像の解像度も高く画像ボケが抑えられていることがわかる。本実施形態の構成によらない比較例1は耐摩耗性が非常に悪く、比較例5〜6も保護層の耐摩耗性が十分ではない。また、比較例2〜3は劣化加速試験後の露光部の残留電位が高く、画像への影響が多いに懸念される。また、比較例4は残留電位、耐摩耗性が良好であるが、酸化性ガスによる画像ボケが見られ、暴露後の解像度が著しく低下していることがわかる。
(他の実施例)
上記した実施例は製造例1のトナーを用いた場合のものであるが、前記製造例2のトナー及び製造例3のトナーを使用し、それぞれ実施例1〜29と同様に作製した静電潜像担持体を用いて、感光体の摩耗量の測定、劣化加速試験後の感光体表面電位(VL)、画像品質の測定を実施し、評価を行った。それらの結果も上記実施例と同様に良好であった。さらに、本実施形態の画像形成装置において、ステアリン酸亜鉛を溶融、固化したマルスバーをクリーニングブラシにバネで押し当てるように当接させ、クリーニングブラシを介して感光体表面にステアリン酸亜鉛を塗布する機構を設けたプロセスカートリッジに、実施例1〜29の静電潜像担持体を搭載し、ランニング試験を実施したところ、ほぼすべての感光体で摩耗量が大幅に低減した。また、ステアリン酸亜鉛の代わりに、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムを用いたマルスバーや、カルナウバワックスを溶融固化したワックスバーを用いたランニング試験の結果、上記実施例と同様に良好であった。
このように、本実施形態の静電潜像担持体は、耐摩耗性、及び電子写真特性に非常に優れている。したがって、静電潜像担持体を用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ並びにそれらを用いた画像形成方法は長期間に亘って安定した画像形成を行うことができる。
上記実施形態の静電潜像担持体は、支持体と、該支持体上に少なくとも感光層を有する静電潜像担持体において、前記静電潜像担持体の最表面層が、少なくとも2つ以上の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋して形成される架橋樹脂、及び導電性微粒子を含有し、該イソシアネート化合物の少なくとも1種類が、芳香環を有してなる。少なくとも2つ以上の水酸基を有する反応性電荷輸送性物質とイソシアネート化合物とを架橋してなる架橋樹脂を最表層に有する静電潜像担持体は、前述の通り、オゾンやNOxといった酸化性ガスに暴露されると、画像濃度が低下する。また、反応性電荷輸送性物質の含有量が多いほど、画像濃度低下の度合いは大きいため、例えば、コロトロンやスコロトロン帯電方式を用いた画像形成装置のように、装置内の酸化性ガス濃度が高くなりやすい場合、反応性電荷輸送性物質の含有量を低減しなければならない。そのため、残留電位の上昇を引き起こすことが懸念される。しかしながら、上記実施形態の静電潜像担持体は、導電性微粒子を好適な量含有させることで、電荷輸送性を向上し、残留電位の上昇を抑えることが出来、その結果、高い耐摩耗性と良好な電子写真特性、耐ガス性を有し、長期間にわたって安定した画像形成を行うことができる高耐久な静電潜像担時体が提供される。
また、上記実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有してなり、前記静電潜像担持体が、本発明の前記静電潜像担持体である。その結果、長期間にわたって良好な画像を安定に形成することができる。
また、上記実施形態の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含んでなり、前記静電潜像担持体が、本発明の前記静電潜像担持体である。その結果、長期間にわたって良好な画像を安定に形成することができる。
また、上記実施形態のプロセスカートリッジは、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、本発明の前記静電潜像担持体とを具備してなる。その結果、利便性に優れ、長期間にわたって良好な画像を安定に形成することができる。
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。