JP3570001B2 - 溶融粘度低下剤及びそれを含む樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、溶融粘度低下剤に関し、更に詳しくは、特定の酸価、水酸基価、かつ特定の揮発減量、特定形態を示す低分子ポリエステルからなる主にポリエステル樹脂の分子量の低下を(固有粘度低下)することなく、粘度低下効果に優れる溶融粘度低下剤及びそれを含むポリエステル樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレートは、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れ、繊維、工業製品等として多くの製品に使用されている。しかしながら、繊維用途においては、着色、防臭、防菌等の機能性付与の目的で各種添加剤が配合されると溶融粘度の上昇がおこり、紡糸性が低下する問題がある。また、工業製品用途では、通常強化材としてガラス繊維等の無機添加剤が多量に配合されているが、添加剤配合による溶融粘度上昇がおこり、射出成形性が低下する問題がある。
【0003】
溶融粘度を低下させるには、溶融温度を高くすることも一つの方法であるが、樹脂の分解も促進されるため、分子量が低下して好ましくない。従来よりこのような欠点を補うために滑剤や可塑剤の添加が考えられた。例えばステアリン酸のような高級脂肪酸または低分子量のモノエステルやジエステルは、高温加熱成形条件下でポリエステル樹脂の分子切断をおこしやすいという欠点がある。
【0004】
ポリエステル樹脂用の可塑剤としては、脂肪族多塩基酸と芳香族多塩基酸との混合物と脂肪族多価アルコールとを使用したポリエステル系可塑剤が知られている(特開平7−18167号公報)。しかし、このものは、粘稠液体で、粘度が数万cpsと高く、ポリエステル樹脂との予備混合後押出機に投入する際ホッパー上でブリッジングし押し出し機への供給が困難であり、溶融粘度低下効果の小さいものであった。
【0005】
又、ポリエステル樹脂は、一般に溶融成形温度が250℃〜300℃と高く、押出機で上記添加剤を混練して成形する時に加水分解やエステル交換反応により分子量低下や変色をきたしやすい。押出機内での添加剤によるポリエステル樹脂の劣化を防止するために押出機のシリンダー途中から液状添加する方法が広く採用されてきている。ところが分子量の高い高粘度のものは、流動性が悪く、液状添加には極めて生産効率が悪い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を改良するポリエステル樹脂の分子量を低下させずに、その溶融粘度を低下させ得る低分子ポリエステルからなる溶融粘度低下剤を見いだすことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の従来法の欠点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル樹脂に対し、特定の酸価、水酸基価、かつ特定の揮発減量、特定の形態を示す低分子ポリエステル化合物を溶融粘度低下剤として添加することにより、上記の目的を達成することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、(1)酸成分とアルコール成分とから得られるポリエステル化合物であり、その酸価が1.0以下、水酸基価が5.0以下、揮発減量(300℃)が3重量%以下で、かつ低粘度(25℃)の液状もしくは高融点の固体であることを特徴とする溶融粘度低下剤、(2)好ましくは酸成分のカルボン酸基が3個以上の芳香族多塩基酸からなること。(3)好ましくは酸成分とアルコール成分とから得られるエステル化合物が、(a)炭素数2〜25の二価アルコール、(b)炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸 、(c)炭素数4〜18の一価アルコールからなること、(4)好ましくは酸成分とアルコール成分とから得られるエステル化合物が、(a)炭素数2〜25の二価アルコール、(b)炭素数8〜18の芳香族二塩基酸、(c)炭素数4〜18の一価アルコールからなること、(5)好ましくは粘度が25℃で500〜3000cpsの液状であること、(6)融点が100〜250℃の固形であること、(7)ポリエステル樹脂用であること、(8)さらに溶融粘度低下剤を含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物、(9)その用途が繊維もしくはフィラメント等の溶融紡糸用途であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
本発明を詳しく説明する。
【0010】
(構成)
本発明は、酸成分とアルコール成分とから得られる低分子ポリエステル化合物からなり、酸価が1.0以下で、水酸基価が5.0以下、好ましくは3.5以下で、揮発減量(300℃)3重量%以下の低粘度(25℃)の液体もしくは高融点の固体の形態のものである。この範囲をはずれると樹脂の分子量を低下することなく溶融粘度を低下させることができない。特にポリエステル樹脂で顕著である。
【0011】
この低分子ポリエステル化合物からなる溶融粘度低下剤の分子量は、好ましくは数平均分子量で500〜3000である。特に好ましくは700〜2500である。500より小さい場合、揮発減量がひどく、又3000を越える場合、ポリエステル樹脂中での分散性に劣る為にポリエステル樹脂の分子量を低下することなく溶融粘度を低下させることができない。
【0012】
溶融粘度低下剤のポリエステル化合物は、低粘度の液体の形態の場合の粘度(25℃)とは、500〜3000cpsが好ましい。3000cpsを越えると取扱いが困難で短時間で十分にポリエステル樹脂と混合することがむずかしい。500cpsに満たない場合は、実質的に分子量が低く揮発減量がひどく問題がある。したがって、この範囲をはずれるとポリエステル樹脂の分子量を低下することなく溶融粘度を低下させることができない。また、高融点の固体の形態の場合の融点は、100〜250℃が好ましい。250℃を越えるとポリエステル樹脂との混合時溶融粘度低下剤が十分に溶融混合されない。100℃より低いと押出し機のホッパー上で溶融粘度低下剤が融けてブリッジングし、作業性が悪いといった問題がある。
【0013】
本発明の溶融粘度低下剤を構成するために使用されるアルコール成分としては、好ましくは炭素数2〜25の二価アルコール(a)で、より好ましくは炭素数2〜23の二価アルコールで、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオールなどの脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールおよび水添ビスフェノールA、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼンなどの環状または芳香環含有二価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0014】
本発明の溶融粘度低下剤に使用される酸成分としては、好ましくはカルボン酸基が3個以上の多塩基酸、もしくは炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸及び/又は炭素数8〜18の芳香族二塩基酸(b)である。
【0015】
カルボン酸基が3個以上の芳香族多塩基酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸などの3価またはそれ以上の多塩基酸が挙げられる。又、炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
又、炭素数8〜18の芳香族二塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、α,β−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式多塩基酸も使用できる。勿論、これらの多塩基酸は1種または2種以上の混合物で使用しても良い。
【0017】
本発明の溶融粘度低下剤を構成するために使用される一価アルコール(c)成分としては、好ましくは炭素数4〜18の1価アルコールであり、例えば、ブタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、2−メチルオクタノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどの脂肪族アルコール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、1−フェニルエタノール、2−フェノキシエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−ヒドロキシエチルベンジルエーテルなどの芳香族アルコールが挙げられ1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0018】
この様に溶融粘度低下剤を構成する成分として使用される各原料およびその使用量は、最終的に得られる製品の性能に応じて選択される。
【0019】
また、かかる溶融粘度低下剤は、公知の種々のエステル化方法で製造することができる。例えば、前記溶融粘度低下剤構成成分を一括もしくは二種ないし三種を反応させて後、ついで残りの成分を反応させて目標とするエステルを得ることができる。
【0020】
本発明のエステル化反応は、触媒が用いられ、例えばパラトルエンスルホン酸、リン酸などの酸触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、塩化亜鉛などの金属触媒により促進されるので通常、これらの触媒の存在下、反応させるのが望ましい。また、通常その反応は100〜250℃、好ましくは130〜250℃に加熱して得られる。
【0021】
本発明の溶融粘度低下剤は、熱可塑性樹脂例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等に添加することで、その溶融時の固有粘度低下をさせることなく粘度低下をすることができる。好ましくはポリエステル樹脂用である。
【0022】
本発明におけるポリエステル樹脂とは、好ましくは芳香環を連鎖単位に有する芳香族系ポリエステル樹脂で、芳香族ジカルボン酸あるいはそのエステル誘導体とジオールあるいはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0023】
本発明におけるポリエステル樹脂とは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート 、ポリブチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。
【0024】
ここでいう芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、α,β−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸あるいはこれらのエステル誘導体等が挙げられる。なお酸成分として10モル%以下の範囲であれば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体等の芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸で置換しても良い。
【0025】
また、ジオールとしては、好ましくは炭素数2〜10の脂肪族ジオールで、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、少量であれば数平均分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を共重合せしめたものでもよい。
【0026】
本発明の溶融粘度低下剤は、あらかじめポリエステル樹脂にヘンシェルミキサー等を用いて混合した後に押出機に供給しても良いし、液体用フィーダーを用いて押出機内の溶融状態のポリエステル樹脂に供給しても良い。更にポリエステル樹脂に吸油性の多孔質または微粉無機充填剤、例えばゼオライト、シリカ、ハイドロタルサイトなどに含浸させて供給することができる。
【0027】
本発明の溶融粘度低下剤をポリエステル樹脂に配合する場合の使用量は、通常ポリエステル樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.5 〜10重量部が適する。この範囲を外れるとポリエステル樹脂の分子量低下を阻止し、溶融粘度低下を防止することができない。
【0028】
かくすることにより、特定の酸価、水酸基価、揮発減量及び特定の形態を有するポリエステル化合物により、分子量を低下させずにその溶融粘度を低下させ得る溶融粘度低下剤を提供することができる。特に、ポリエステル樹脂の加水分解やエステル交換反応による、高温溶融時の分子量低下を抑えることができるため、室温での流動性を高めたポリエステル樹脂組成物を提供することができるので、繊維・フィラメント等の溶融紡糸するポリエステル樹脂の用途である繊維分野や工業製品用途等に利用できる。
【0029】
【実施例】
次に、本発明を実施例、比較例により詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において部および%は特に断りのないかぎりすべて重量基準であるものとする。
【0030】
(実施例1)<溶融粘度低下剤の合成>
1リットル4ツ口フラスコに無水トリメリット酸192g、1,6−ヘキサンジオール312g、2−エチルヘキサノール325gを仕込み、窒素ガス気流中130℃に昇温後、オクチル錫オキサイド0.05g添加した後、6時間で220℃まで昇温して水を留出した。更に過剰アルコールを5mmHg減圧下で除去し、本発明のエステル化合物▲1▼440gを得た。
【0031】
(実施例2)<溶融粘度低下剤の合成>
実施例1の1,6−ヘキサンジオールのかわりにネオペンチルグリコール41.6gを用いる以外は実施例1と全く同様にして本発明エステル化合物▲2▼435gを得た。
【0032】
(実施例3)<溶融粘度低下剤の合成>
実施例1の無水トリメリット酸のかわりに無水ピロメリット酸219g、2−エチルヘキサノールのかわりにn−オクチルアルコール468gを用いる以外は実施例1と全く同様にして本発明エステル化合物▲3▼530gを得た。
【0033】
(実施例4)<溶融粘度低下剤の合成>
アジピン酸314g、プロピレングリコール220g、ラウリン酸181gを用い実施例1と同様にして本発明エステル化合物▲4▼583gを得た。
【0034】
(実施例5)<溶融粘度低下剤の合成>
1リットル4ツ口フラスコにジメチルテレフタレート194g、1,4−ブタンジオール81g、2−エチルヘキサノール91gを仕込み、窒素ガス気流中130℃に昇温後、オクチル錫オキサイド0.05g添加した後、4時間で220℃まで昇温してメタノールを留出した。更に4時間ホールド後、過剰アルコールを5mmHg減圧下で除去し、本発明のエステル化合物▲5▼248gを得た。
【0035】
(実施例6)<溶融粘度低下剤の合成>
実施例5の1,4−ブタンジオールのかわりに1,6−ヘキサンジオール53.1g及び1,4−シクロヘキサンジメタノール64.8gを用いる以外は実施例5と全く同様にして本発明エステル化合物▲6▼272gを得た。
【0036】
(実施例7)<溶融粘度低下剤の合成>
実施例5のジメチルテレフタレートのかわりにジメチルテレフタレート135.8g及びジメチルイソフタレート58.2gを用いる以外は実施例5と全く同様にして本発明エステル化合物▲7▼530gを得た。
【0037】
(実施例8)<溶融粘度低下剤の合成>
実施例5のジメチルテレフタレートのかわりにジメチルテレフタレート135.8g及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸51.6gを用いる以外は実施例5と全く同様にして脱メタノール脱水反応により本発明エステル化合物▲8▼235gを得た。
【0038】
(比較例1)
市販のDOA(ジオクチルアジペート)を比較化合物▲1▼として用いた。
【0039】
(比較例2)
アジピン酸175g、フタル酸118g,プロピレングリコール137g,2ーエチルヘキシルサノール 130gを仕込み、実施例1と同様に合成して、過剰のアルコール成分を減圧下除去して得たポリエステル化合物を比較化合物▲2▼として用いた。
【0040】
(比較例3)
アジピン酸146g、1,4−ブタンジオール85.5g,2−エチルヘキシルサノール 44.2gを仕込み、実施例1と同様に合成して、過剰のアルコール成分を減圧下除去して得たポリエステル化合物を比較化合物▲3▼として用いた。
【0041】
(比較例4)
アジピン酸219g、イソフタル酸83g,1,3−ブタンジオール194g,2−エチルヘキシルサノール 89gを仕込み、実施例1と同様に合成して、過剰のアルコール成分を減圧下除去して得たポリエステル化合物を比較化合物▲4▼として用いた。
【0042】
上記実施例の本発明化合物の溶融粘度低下剤及び比較エステル化合物の酸価、水酸基価、揮発減量率、粘度の測定結果を表1、2に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
[測定方法および条件]
揮発減量:熱重量分析(TGA)、昇温スピード10℃/min(air中)300℃での重量減量を測定。
粘度:25℃、デジタル回転粘度計
融点:示差熱分析(DSC)、昇温スピード5℃/min(窒素中)
【0045】
<溶融粘度低下剤配合ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造>
(実施例1〜6、比較例1〜5)
ブラベンダー社(ドイツ)製20mm二軸押出機をバレル温度280℃(但しフィーダー部220℃)、ダイス温度230℃に設定した。150℃で15時間乾燥させた粉末状のポリエチレンテレフタレート(固有粘度、30℃フェノール/四塩化エタン、重量比1:1中、0.66)100部に表1記載の各種サンプルを配合し、150℃に設定されたヘンシェルミキサー中で混合した。得られたブレンド物を押出機に供給し30rpmにて溶融混練して、ペレタイザーを通してペレットを得た。
【0046】
各種の物性を評価した結果を表2に示した。また、比較例5としてポリエチレンテレフタレート単独の評価も行った。
【0047】
物性評価の測定法は、次のとおりである。
固有粘度:配合ポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットの固有粘度を30℃フェノール/四塩化エタン重量比1:1溶液で粘度管により測定。
溶融粘度:キャピラリーレオメーターにより内径1mm,長さ10mmのダイを使用して、300℃でせん断速度12.2、60.8、243.2sec−1の3点で測定した。
【0048】
【表2】
【0049】
<溶融粘度低下剤配合ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造>
(実施例7〜12、比較例6〜9)
ブラベンダー社(ドイツ)製20mm二軸押出機をバレル温度280℃(但しフィーダー部220℃)、ダイス温度230℃に設定した。150℃で15時間乾燥させた粉末状のポリエチレンテレフタレート(固有粘度、30℃フェノール/四塩化エタン、重量比1:1中、0.66)100部に表1記載の各種サンプルを配合し、150℃に設定されたヘンシェルミキサー中で混合した。得られたブレンド物を押出機に供給し30rpmにて溶融混練して、ペレタイザーを通してペレットを得た。
【0050】
各種の物性を評価した結果を表3に示した。また、比較例9としてポリエチレンテレフタレート単独の評価も行った。
【0051】
物性評価の測定法は、次のとおりである。
固有粘度:配合ポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットの固有粘度を30℃フェノール/四塩化エタン重量比1:1溶液で粘度管により測定。
溶融粘度:フローテスターにより内径1mm,長さ10mmのダイを使用して、荷重10Kg、270℃で測定した。
【0052】
【表3】
【0053】
【発明の効果】
本発明の溶融粘度低下剤は、特定の酸価、水酸基価、揮発減量及び特定の形態を有するポリエステル化合物により、分子量を低下させずにその溶融粘度を低下させ得る溶融粘度低下剤を提供することができる。特に、ポリエステル樹脂の加水分解やエステル交換反応による、高温溶融時の分子量低下を抑えることができるため、室温での流動性を高めたポリエステル樹脂組成物を提供することができるので、繊維・フィラメント等の溶融紡糸するポリエステル樹脂の用途である繊維分野や工業製品用途等に利用できる。
Claims (7)
- 酸成分とアルコール成分とから得られるポリエステル化合物であり、その酸価が1.0以下、水酸基価が5.0以下、揮発減量(300℃)が3重量%以下で、かつ粘度(25℃)が500〜3000cpsである液状又は融点が100〜250℃である固体であることを特徴とする溶融粘度低下剤。
- 酸成分のカルボン酸基が、3個以上の芳香族多塩基酸からなることを特徴とする請求項1記載の溶融粘度低下剤。
- 酸成分とアルコール成分とが(a)炭素数2〜25の二価アルコール(b)炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸(c)炭素数4〜18の一価アルコールとからなることを特徴とする請求項1記載の溶融粘度低下剤。
- 酸成分とアルコール成分とが、(a)炭素数2〜25の二価アルコール(b)炭素数8〜18の芳香族二塩基酸(c)炭素数4〜18の一価アルコールとからなることを特徴とする請求項1記載の溶融粘度低下剤。
- ポリエステル樹脂用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶融粘度低下剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の溶融粘度低下剤を含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
- 繊維もしくはフィラメント等の溶融紡糸用途であることを特徴とする請求項6記載のポリエステル樹脂組成物。
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