JP3569453B2 - 複層すべり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼や銅合金などの裏金上に、異質の樹脂繊維を経糸と緯糸にして織成又は編成された交織布を被着した複層すべり軸受であって、特に高荷重での使用に対して長期に渡って無給脂で低摩擦を実現する複層すべり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のすべり軸受には、例えばポリアセタール樹脂,固体潤滑剤埋め込み型銅合金,鉄系含油軸受などを使用しているが、ポリアセタール樹脂の場合は、機械的強度が比較的良好で耐油性も大きいので、通常の軸受部材としては支障なく使用できるが、高荷重での使用では耐圧強度や摩擦特性等の点で充分ではなく、スティックスリップを起こして異音を発生する恐れがあった。
【0003】
また、固体潤滑剤埋め込み型銅合金の場合は、強度上軸受の厚みを厚く形成する必要があるので、設計上で制約を受けたりコストアップする恐れがあり、鉄系含油軸受の場合は、コストが高く摺動抵抗も大きいこと等、高荷重での使用に対して長期に渡って無給脂で低摩擦を実現するのには問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題点を改善する手段の1つとして、摺動面を構成する材料に自己潤滑性の優れたフッ素樹脂(PTFE)繊維を他の繊維との交織布の状態で使用するものも各種提案されているが、繊維の組合せや配列或いは接着剤との組合せなどに問題があり、実用的には必ずしも充分なものではなかった。
【0005】
そこで本発明では、これら従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その主な目的は、特に高荷重での使用に対して長期に渡って無給脂で低摩擦を実現する複層すべり軸受を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の複層すべり軸受は、裏金上に多孔質の金属粉末焼結層を設け、この金属粉末焼結層の上層部には接着樹脂材であるフェノール樹脂を介して、樹脂繊維製の交織布による摺動面層を結合させ、前記摺動面層は摩擦係数の小さい潤滑性樹脂繊維であるフッ素樹脂繊維と、強度が高い強化樹脂繊維であるポリアミド繊維を、フッ素樹脂繊維が摺動方向に沿って延在する態様で綾織り又は朱子織りして織成又は編成され、摺動面に露出するポリアミド繊維は摺動方向及び軸方向に対して所望の傾斜角度線上に沿って点在して配列すると共に、当該摺動面に露出するポリアミド繊維の面積比率を25〜35%とし、摺動面の全域にポリアミド繊維を均等に分散配置させた構成を有する。
【0007】
上記した構成による本発明の複層すべり軸受では、裏金上に多孔質の金属粉末焼結層を設けると共に、フッ素樹脂繊維と交織布を構成する強化樹脂繊維としてポリアミド繊維を用い、この裏金と交織布を結合する接着樹脂材としてポリアミド繊維との馴染み性及び濡れ性がきわめて良好で且つ金属粉末焼結層にも浸透が容易なフェノール樹脂を用いて接着したことにより、裏金に対して摺動面となる交織布が強い接着強度で結合されるので、特に高荷重での使用に対して長期に渡って無給脂で低摩擦を実現することができる。
【0008】
また、フッ素樹脂繊維が摺動方向に沿って延在する態様で綾織り又は朱子織りして織成又は編成された交織布は、摺動面に露出するポリアミド繊維の面積比率を25〜35%にして、摺動面の全域にポリアミド繊維を均等に分散配置させすることにより、フッ素樹脂繊維が有する自己潤滑性とポリアミド繊維が有する耐摩耗性の双方が有効に発揮されるので、特に高荷重での使用に対して長期に渡って無給脂で低摩擦を実現することができる。
【0009】
更に、摺動面に露出するポリアミド繊維は摺動方向及び軸方向に対して所望の傾斜角度線上に沿って点在して配列させ、摺動面の全域にポリアミド繊維を均等に分散配置させることにより、使用条件が変動しても摺動面には軸方向と摺動方向にそれぞれフッ素樹脂繊維とポリアミド繊維が、所定の面積比率で配列されてスティックスリップを回避することが可能となり、特に高荷重での使用に対して長期に渡って無給脂で低摩擦を実現することができる。
【0010】
本発明における前記フェノール樹脂は、前記金属粉末焼結層と前記交織布の間に介在させて加熱硬化処理により、前記金属粉末焼結層の空隙中に含浸させると共に、ポリアミド繊維の表面を溶解して内部に浸透させた状態で、前記摺動面層を前記裏金に結合している構成を採ることができる。
【0011】
この場合におけるフェノール樹脂は、フェノール樹脂中のフリーフェノールが交織布を構成するポリアミド繊維の表面を溶解し、濃度が連続的に傾斜した状態で内部に浸透して強い接合強度が得られると共に、ポリアミド繊維に対する浸透性が良いので製造する際には、金属粉末焼結層上へ所定の厚さで板状に塗布してその上に交織布を配置し、プリプレグや加圧を行うことなく加熱硬化処理によって強固な接合を行うことができるので、製造がきわめて容易で且つコストの低減にも寄与する。
【0012】
本発明における前記金属粉末焼結層は、裏金に対する投影面積を28〜65%とした構成を採ることができる。
【0013】
この金属粉末焼結層は、上記投影面積にするとフェノール樹脂の含浸を容易にする空隙が確保され且つ、当該フェノール樹脂の絡みつきを良好にするの適正な各粒子間の粗密状態に分散されるので、地金に対して摺動面層を強い接着強度で結合できることが実験でも確認されており、しかも接着強度を向上させるだけではなく、予め予備コーティング処理(プライマー処理)を施す必要が無くなるので、製造が容易で且つ製造コストの低減にも寄与することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による複層すべり軸受の好適な実施形態について、添付の図面を参照して詳しく説明するが、図1は摺動面を構成する交織布の繊維組織図を、図2は要部の縦断面図を、図3は摺動面におけるポリアミド繊維の割合と摩擦係数との相関関係を表す特性曲線図を、図4は摺動面におけるポリアミド繊維の割合と摩耗量との相関関係を表す特性曲線図を、それぞれ示す。
【0015】
この複層すべり軸受は、圧延鋼板などの鋼板その他公知の裏金材料を使用した裏金1と、裏金1上に金属粉末を焼結させた多孔質の金属粉末焼結層2と、金属粉末焼結層2上で交織布を形成する潤滑性樹脂繊維であるフッ素樹脂繊維3及び強化樹脂繊維であるポリアミド繊維4による摺動面層5と、摺動面層5の接着樹脂材であるフェノール樹脂6とを主要な構成部材としている。
【0016】
裏金1としては、一般的には軟鋼板などが多く使用されているが、この複層すべり軸受では特に高荷重に適合するS20C,S30C,SK5等のように強度の高い鋼板の使用が望ましく、この裏金1上へ直接に摺動面層5となる交織布を接着すると、充分な結合強度が得られずに剥離を生ずる恐れがあり、当該裏金1の表面には接着による結合強度を高めるための処理を施す必要がある。
【0017】
裏金1に対する表面処理手段としては、従来よりショツトブラストやペーパー仕上げなどによって粗面加工したり、青銅などの金属粉末を溶射して凹凸面にすること等も実施されているが、後述する表1の実験結果でも明らかなように接着強度が充分ではなく、少なくとも高荷重での使用には適合することがでない。
【0018】
また青銅などの金属粉末を焼結させることも提案されてはいるが、組み合わせて使用する強化樹脂繊維や接着樹脂材との相性(適合性)の良否によって大きく左右され、例えば後述する表1のフッ素樹脂繊維とポリエステル繊維を交織布とした場合の実験結果でも明らかなように、焼結金属層を設けたことのみでは必ずしも充分な接着強度が得られるものではない。
【0019】
本発明の実施形態によるすべり軸受では、焼結材料として所望の粒径による青銅や錫の金属粉末を裏金1の表面に散布し、これを焼結して所望の投影面積と厚さによる多孔質の金属粉末焼結層2を形成させ、こ焼結層中に接着樹脂材であるフェノール樹脂6を浸透させて強固に結合すると共に、当該フェノール樹脂6が他方で強化繊維であるポリアミド繊維4に浸透して強固に結合するようにしているが、後述するように金属粉末焼結層2とポリアミド繊維4及びフェノール樹脂6の組合せが充分な接着強度を得る上で重要である。
【0020】
金属粉末は、一般的に使用される粒径が43〜150μの青銅粉末と、粒径が150〜250μの錫粉末を見掛け密度2.1g/cm3 の状態で、裏金に対する投影面積が28〜65%に成るように散布して焼結させ、厚さが0.05〜0.3mmの金属粉末焼結層2を設けることが、接着強度と加工性並びに経済性の点から望ましく、金属粉末粒の形状は不定形であることがより望ましい。
【0021】
金属粉末焼結層2は、裏金に対する投影面積が過大すぎると、各粒子間が密になってフェノール樹脂6が空隙に含浸され難くなり、裏金に対する投影面積が過小すぎると、各粒子間が粗になってフェノール樹脂6の絡みつきが少なくなり、何れの場合にも接着強度が低下することになるが、上記した投影面積の範囲内では後述する試験結果でも良好な接着強度が得られることが確認されており、金属粉末粒は球状などの均一な定形より表面に凹凸のある不定形のものの方が、フェノール樹脂6との接触面積が多くなって絡みつきが強くなる。
【0022】
上記した金属粉末焼結層2を設けると、地金1に対する摺動面層5の接着強度を向上させるだけではなく、予め予備コーティング処理(プライマー処理)を施す必要が無くなるので、製造が容易で且つ製造コストの低減にも寄与する。
【0023】
摺動面層5は、摩擦係数の小さい潤滑性樹脂繊維と強度が高い強化樹脂繊維とを織成又は編成した樹脂繊維製の交織布であるが、潤滑性樹脂繊維には高荷重及び低速摺動条件下では非常に低い摩擦係数を有するフッ素樹脂(PTFE)繊維3を使用し、当該フッ素樹脂繊維3の表面強度が弱く摩耗が大きい欠点を補う強化樹脂繊維には、強度が強くて摩耗が少なく且つ接着樹脂材として用いるフェノール樹脂に対する濡れ性が良いポリアミド繊維4を使用する。
【0024】
交織布は、フッ素樹脂繊維3とポリアミド繊維4の何れか一方を経糸に他方を緯糸とし、これを綾織り又は朱子織りした織物又は編み物の形態を採るが、フッ素樹脂繊維3には例えば400デニール−60(6.7デニールのフッ素繊維フィラメントを60本合わせた)フッ素繊維糸を用い、ポリアミド繊維4には例えば3デニールのナイロン短繊維を数百本撚り合わせた22番糸を更に2本撚り合わせて11番にしたナイロン糸を用いることができるが、フッ素樹脂は繊維化して使用することによって強度が約25倍に増強される。
【0025】
交織布の繊維組織は、図1で示すように▲1▼フッ素樹脂繊維3が摺動方向Yに沿って延在する態様で使用され、▲2▼摺動面に露出するポリアミド繊維4は摺動方向Y及び軸方向Xに対して所望の傾斜角度線上に沿って点在して配列すると共に、▲3▼当該摺動面に露出するポリアミド繊維4の面積比率を25〜35%として、摺動面の全域にポリアミド繊維4を均等に分散配置させる。
【0026】
交織布の繊維組織に関して▲1▼を採る理由としては、フッ素樹脂繊維3を摺動方向Yに沿って延在させた方が摩擦力をより低減できること、またポリアミド繊維4は強度に優れて引っ張られても切れにくく且つ摩擦や折り曲げに対しても強くすり切れにくいので、軸方向Xに沿って延在する態様で使用されても問題はないが、表面強度が弱く摩耗が大きいフッ素樹脂繊維3の場合には不適当である。
【0027】
また▲2▼を採る理由としては、摺動方向Yに対する傾斜角度αは、ブッシュなどの軸受製品にして軸と組合せ使用する際に、組付公差内でブッシュに対して軸が軸方向へ揺動しても、所望のポリアミド繊維4の面積比率を維持して良好な摺動特性が確保できる範囲を規制し、軸方向Xに対する傾斜角度βは、高荷重によってブッシュなどの軸受製品が偏摩耗して軸が傾いても、所望のポリアミド繊維4の面積比率を維持して良好な摺動特性が確保できる範囲を規制するためである。
【0028】
摺動方向Yに対する傾斜角度αに付いては、傾斜角度αの設定値が小さすぎる場合には、組付公差内でブッシュに対して軸が軸方向Xへ揺動した際に、本来は摺動面で傾斜状に点在させるポリアミド繊維4群が摺動方向に沿って配列された(図1を時計方向へ45度回転させた)状態になって、摺動面の摺動方向Yにはフッ素樹脂繊維3のみによる摺動領域と、ポリアミド繊維4のみによる摺動領域とが列設される恐れがある。
【0029】
この状態に近づくと、摺動方向Yにポリアミド繊維4群が列設された部分は、フッ素樹脂繊維3の潤滑作用が及ばないので摩擦が大きくなり、スティックスリップを生じて摩耗も増大するので、これを回避するために予め揺動し得る範囲を見越して、例えば傾斜角度αを30度以上に設定することが望ましい。
【0030】
軸方向Xに対する傾斜角度βに付いては、傾斜角度βの設定値が小さすぎる場合には、ブッシュが偏摩耗して軸が傾いた際に、本来は摺動面で傾斜状に点在させるポリアミド繊維4群が軸方向に沿って配列された(図1を半時計方向へ45度回転させた)状態になって、摺動面の軸方向にはフッ素樹脂繊維3のみによる摺動領域と、ポリアミド繊維4のみによる摺動領域とが列設される恐れがある。
【0031】
この状態に近づくと、軸が軸受と線接触する位置によってフッ素樹脂繊維3のみ又はポリアミド繊維4のみの部分を摺動することになり、摩擦係数の大幅な変動に伴ってスティックスリップを生ずるので、これを回避するために予め揺動し得る範囲を見越して、例えば傾斜角度βを10度以上に設定することが望ましい。
【0032】
このために、強化繊維であるポリアミド繊維4群の摺動面側における配列を、摺動方向Yに対する傾斜角度αが30度以上で、軸方向Xに対する傾斜角度βが10度以上になる範囲内に設定しておくと、使用条件が変動しても軸方向Xと摺動方向Yにはそれぞれフッ素樹脂繊維3とポリアミド繊維4が配列されるので、るスティックスリップを回避することが可能となり、図1では望ましい実施形態の一つとして傾斜角度αと傾斜角度βを共に45度に設定している。
【0033】
また▲3▼を採る理由としては、摺動面におけるポリアミド繊維4の面積比率を大きくすると、摩擦係数は順次上昇して強化された摺動面によって摩耗量は減少するが、過大にポリアミド繊維4の面積比率を大きくすると、フッ素樹脂繊維3の減少に伴って自己潤滑性の効果が損なわれて逆に摩耗量は増大するので、摩擦係数と摩耗量の双方が減少する範囲に設定する必要がある。
【0034】
図3及び4で示すテストピースによる試験結果によると、摺動面におけるポリアミド繊維4の面積比率は概ね25〜35%範囲が望ましいことが判明したが、図1で示す実施形態ではポリアミド繊維4の面積比率を約1/3としており、摺動面の反対側すなわち焼結金属層2側ではポリアミド繊維4の面積比率が65〜75%範囲になるので、フェノール樹脂を介して行われる裏金1との接着が良好になる。
【0035】
この試験では、鋼板の裏金上にフッ素樹脂繊維3とポリアミド繊維4との交織布を設け、裏金と交織布の間をフェノール樹脂で接合すると共に、当該交織布にもフェノール樹脂を含浸させたテストピースを用い、このテストピースにおける交織布の摺動面に占めるポリアミド繊維4の割合を種々に変化させながら、以下の試験条件によって摩擦係数と摩耗量の測定を行った。
【0036】
試験条件は、試験機:リングオンプレート式摩擦摩耗スラスト試験機 、荷重:9.8MPa、速度:14.4m/min、時間:4時間、滑り距離:3,456m、相手材:SCM420H(CHRC55〜60,表面荒さ2〜3μm)であり、その試験結果を示す図3及び図4の特性曲線によって、摺動面におけるポリアミド繊維4の面積比率は概ね25〜35%が望ましいことを裏付けている。
【0037】
交織布の接着樹脂材は、繊維組織を構成するフッ素樹脂繊維3及びポリアミド繊維4に対する接着性を良くするためには、良く馴染み(馴染み性が良い)且つ濡れるような状態(濡れ性が良い)になることが必要であるが、ここで用いたフェノール樹脂6は、エポキシ樹脂やメラミン樹脂などの他の熱硬化性樹脂に比べて、特にポリアミド繊維4に対する馴染み性及び濡れ性が良いので、ポリアミド繊維4との組合せて使用すると効果的である。
【0038】
即ち、フェノール樹脂6はフェノール樹脂中のフリーフェノールがポリアミド繊維4の表面を溶解させ、濃度が連続的に傾斜した接合状態となって高い接合強度を得ることができるので(実験によるとフリーフェノールの割合が10%で良好な結果が得られた)、他の熱硬化性樹脂との組合せに比べて両者の組合せは最適であり、また摺動性を向上する目的で潤滑性材料粉末(例えばPTFE樹脂、PPS樹脂、MO S2 、黒鉛)を30%(wt)を上限として含有させることができる。
【0039】
このために、フェノール樹脂6は交織布中で約10%の面積率を有する繊維組織の間及び多孔質の金属粉末焼結層2中は勿論、ポリアミド繊維4を構成する短繊維の相互の隙間にも浸透して接着されると共に、ポリアミド繊維4を介して濡れ性に難点のあるフッ素樹脂繊維3を繋ぎ止めるので、充分な接着強度と耐摩耗性が得られものであり、例えばフッ素樹脂繊維の強化繊維としてポリエステル繊維や綿繊維を用いた交織布をエポキシ樹脂を用いて接着する場合のように、接着剤が浸透し難い組合せのものに比べてきわめて有利である。
【0040】
【実施例】
厚さ2.43mmの鋼板を裏金として、その片側表面に粒径150〜250μの錫9%と粒径150〜43μのアトマイズ青銅(見掛け密度2.1g/cm3 形状はイレギュラー)の金属粉末を、裏金に対する投影面積が35%に成るよう散布し、880°Cで30分間に渡ってRX雰囲気ガス中で焼結して厚さ0.1mmの焼結層を設け、この焼結層上にはポリアミド繊維とフッ素樹脂繊維を織物にした交織布を配置させ、フェノール樹脂を用いて180°Cで1時間掛けて加熱硬化処理を行って接着し、内径が60mmで外径を66mmにした長さ30mmの巻ブッシュを製作した。
【0041】
この巻ブッシュにおける交織布は、フッ素樹脂繊維を摺動方向に沿って配列すると共に、摺動面に露出するポリアミド繊維の割合は30%で摺動方向に対して35度傾斜した角度線上に点在して配列させ、フェノール樹脂は接着面のみでなく交織布中特にポリアミド繊維内にも浸透させた状態で強度及び耐摩耗性の向上を図るようにしたが、この巻ブッシュにおける交織布の接着強度は表1のとおりである。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の試験結果によると、青銅粉末焼結を行った裏金にフッ素樹脂繊維とポリアミド繊維の交織布をフェノール樹脂で接着した本発明の構想によるすべり軸受が、他の組合せによる従来のすべり軸受に比べて、接着強度の点で優れていることが裏付けられる。
【0044】
また、上記した巻ブッシュにシャフトを装着したテストピースを用いて揺動試験を行った結果を表2に示すが、この揺動試験条件を、シャフト:ψ60(SS400+電着塗装)、面圧P:98MP、速度V:0.6m/min、揺動角度θ:110°、サイクルC:11sec/回とし、外側をガラスファイバー入りのエポキシ樹脂で補強したフッ素樹脂繊維を用いた複層軸受を比較例1とし、フッ素樹脂繊維とポリアミド繊維の平織り交織布(面積比が各50%)した複層軸受を比較例2とした。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の試験結果によると、本発明の構想によるすべり軸受が、比較例に比べて耐久性に優れて長期使用に適合することが裏付けられ、更に付記すると、テストピースにおけるブッシュの最大摩耗量は0.35mmでシャフトの摩耗量は0.004mmであり、ブッシュには割れや変形及びへたり現象は一切見られなかったのに対し、比較例1では発熱を伴って11800サイクルで破損し、比較例2では4700サイクルでスティックスリップによる異音が大きくなって使用不能であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複層すべり軸受の摺動面を構成する交織布の繊維組織図を示す。
【図2】本発明による複層すべり軸受の要部の縦断面図を示す。
【図3】摺動面におけるポリアミド繊維の割合と摩擦係数との相関関係を表す特性曲線図を示す。
【図4】摺動面におけるポリアミド繊維の割合と摩耗量との相関関係を表す特性曲線図を示す。
【符号の説明】
1 裏金
2 焼結金属層
3 フッ素樹脂繊維(潤滑性樹脂繊維)
4 ポリアミド繊維(強化樹脂繊維)
5 摺動面層(交織布)
6 フェノール樹脂(接着樹脂材)
Claims (3)
- 裏金上に多孔質の金属粉末焼結層を設け、この金属粉末焼結層の上層部には接着樹脂材であるフェノール樹脂を介して、樹脂繊維製の交織布による摺動面層を結合させ、前記摺動面層は摩擦係数の小さい潤滑性樹脂繊維であるフッ素樹脂繊維と、強度が高い強化樹脂繊維であるポリアミド繊維を、フッ素樹脂繊維が摺動方向に沿って延在する態様で綾織り又は朱子織りして織成又は編成され、摺動面に露出するポリアミド繊維は摺動方向及び軸方向に対して所望の傾斜角度線上に沿って点在して配列され、前記フェノール樹脂は、前記金属粉末焼結層と前記交織布の間に介在させて加圧しない加熱硬化処理により、金属粉末焼結層の空隙中に含浸させると共に、ポリアミド繊維の表面を溶解して内部に浸透させた状態で、前記摺動面層を前記裏金に結合したことを特徴とする複層すべり軸受。
- 前記フェノール樹脂は、摺動面に露出するポリアミド繊維の面積比率を25〜35%とし、摺動面の全域にポリアミド繊維を均等に分散配置させた請求項1に記載した複層すべり軸受。
- 前記金属粉末焼結層は、粒径が43〜150μの青銅粉末と粒径が150〜250μの錫粉末による形状が不定形の金属粉末粒を、裏金に対する投影面積が28〜65%に散布して焼結させた請求項1又は2に記載した複層すべり軸受。
(以上)
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JP2000154824A (ja) | 2000-06-06 |
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