JP3568914B2 - D−アスパラギン誘導体の新規製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、式I
【0002】
【化6】
【0003】
〔式中、R1はアミノ保護基であり、R2はアルキル、置換されたアルキル又は式A
R3(OCH2CH2)n− A
〔式中、R3は水素又は低級アルキル基であり、nは1、2又は3である〕
の基である〕
のD−アスパラギン誘導体の調製のための新規な方法に関する。
【0004】
式Iの化合物は既知である。化合物N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステルは、J. Liq. Chrom. (1994), 17(13), 2759に記載されている。この化合物の化学合成は、Tetrahedron (1997), 53(6), 2075に記載されており、その中で、それは、既にキラルの(S)−アスパラギンを出発原料とした2段階反応により達成されている。同様に、Tetrahedron Asymmetry (1992), 3(19) 1239に記載のように、N−保護された(S)−アスパラギンメチルエステルは、既にキラルの(S)−アスパラギンを出発原料とした2段階反応において調製されている。J. Chem. Soc. Perkin Trans 1(1983), 2287には、やはりキラルの反応体を出発原料とした前記化合物の合成が記載されている。
【0005】
EP0950706及びEP0896057には、それぞれ、セベキア(Sebekia)属又はアミコラトプシス(Amycolatopsis)属に属する微生物由来の新規なD−アミノアシラーゼの作製及び精製が記載されている。これらの酵素は、ラセミのN−アセチル−D,L−アミノ酸を出発原料としたキラルD−アミノ酸の工業的製造に有用である。D−アミノアシラーゼ(セベキア属)は、N−アセチル−D−メチオニン(100%)と比較して1.4%のN−アセチル−D−アスパラギンに対する活性を有する。D−アミノアシラーゼ(アミコラトプシス属)は、N−アセチル−D−メチオニン(100%)と比較して19%のN−アセチル−D−アスパラギンに対する特異的活性を有する。
【0006】
Agric. Biol. Chem. (1987), 51 (3), 721 及びDE2825245には、D,L−5−置換ヒダントインから出発するD−アミノ酸の酵素的調製が記載されている。D−アスパラギンの合成は、2段階反応(第1段階:D−ヒダントインヒドロラーゼによるD,L−5−置換ヒダントインのD−N−カルバミルアミノ酸への開環、続いて第2段階のシュードモナス(Pseudomonas)属AJ−1122を使用したN−カルバミル−D−アミノ酸ヒドロラーゼによるN−カルバミル−D−アミノ酸のD−アミノ酸への切断)、又はそれぞれシュードモナス属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、マラキセラ(Maraxella)属、パラコッカス(Paracoccus)属又はアルスロバクタ(Arthrobacter)属を使用した1段階反応において達成されている。
【0007】
アスパラギンエステル誘導体の調製のための技術的な酵素反応は、文献に記載されていない。これは、ヒドロラーゼ反応に使用される一般的な反応pH値(7〜8.5)における、アスパラギン誘導体のラセミ化及び分解の容易さのためであるかもしれない。より高い、より技術的に適切な基質濃度を使用した場合には、酵素の急速な不活化が観察された。
【0008】
驚くべきことに、有機共溶媒を利用することにより、この不活化が克服されうることが、本発明において見出された(反応が停止した後に溶媒を添加した場合、反応は再開しないため、溶媒の効果は、「基質可溶化剤」の効果ではない)。式Iの化合物は、式I
【0009】
【化7】
【0010】
〔式中、R1はアミノ保護基であり、R2はアルキル、置換されたアルキル又は式A
R3(OCH2CH2)n− A
〔式中、R3は水素又は低級アルキル基であり、nは1、2又は3である〕
の基である〕
のD−アスパラギン誘導体の調製のための新規な方法を提供する本発明の方法〔該方法は、有機共溶媒と組み合わされたpH6.0〜7.5の水性系において、式II
【0011】
【化8】
【0012】
〔式中、R1及びR2は前記定義と同様である〕
の化合物をプロテアーゼと反応させ、続いて式Iの鏡像異性体的に純粋な(enantiometric pure)生成物を抽出することを含む〕により、改良された様式で製造されうる。
【0013】
本明細書において表される構造式において、くさび形の結合
【0014】
【化9】
【0015】
は、置換基が紙面よりも上にあることを示す。
【0016】
本明細書において表される構造式において、点線の結合
【0017】
【化10】
【0018】
は、置換基が紙面よりも下にあることを示す。
【0019】
「アミノ保護基」という用語は、本明細書において使用されるように、アシルオキシカルボニル基(ALLOC)、低級アルコキシカルボニル基(例えば、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC))、置換された低級アルコキシカルボニル基(例えば、トリクロロエトキシカルボニル)、場合により置換されていてもよいアリルオキシカルボニル基(例えば、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Z)又はフェニルオキシカルボニル)、アリルアルキル基(例えば、トリフェニルメチル(トリチル)、ベンズヒドリル又はベンジル)、アルカノイル基(例えば、ホルミル、アセチル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)、ハロゲン−アルカノイル基(例えば、トリフルオロアセチル)又はシリル保護基(例えば、tert−ブチルジメチルシリル)のような、Green T. Protective Groups in Organic Synthesis, Chapter 5, John Wiley and Sons, Inc. (1981), 218−287頁に記載のような、ペプチド化学において利用される基のような基をさす。
【0020】
好ましいアミノ保護基は、ベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルであり、特に好ましいアミノ保護基はベンジルオキシカルボニル又はベンゾイルである。
【0021】
「アルキル」という用語は、本明細書において使用されるように、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル(それらの異なる異性体を含む)のような、1個から8個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状の炭化水素残基をさす。好ましくは、「アルキル」という用語は、1個から5個の炭素原子を含有する、場合により置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭化水素残基をさす。
【0022】
R2におけるアルキルは、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−sec−ブチル、イソブチル又はペンチルであり、より好ましくはメチル又はエチルである。
【0023】
「低級アルキル」という用語は、本明細書において使用されるように、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−sec−ブチル、イソブチル又はtert−ブチルのような、1個から4個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状の炭化水素残基をさす。
【0024】
「置換されたアルキル」という用語は、本明細書において使用されるように、一つ又は複数の水素原子が、一つ又は複数のヒドロキシ基、低級アルコキシ基、シクロアルキル基、アリル基により、又は一つ又は複数のハロゲン原子により置換されている、1個から8個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状の炭化水素残基をさす。例は、3−ヒドロキシブチル、4−メトキシブチル、3−エトキシプロピル、3−シクロヘキシルプロピル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フルオロメチル、2−クロロエチル、2,2−ジクロロエチル、3−ブロモプロピル又は2,2,2−トリフルオロエチル等である。
【0025】
R2における置換されたアルキルは、好ましくは、ベンジルである。
【0026】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書において使用されるように、3〜6員の飽和炭素環部分、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル、好ましくはシクロヘキシルをさす。
【0027】
「低級アルコキシ」という用語は、本明細書において使用されるように、直鎖状又は分岐状の低級アルキル−オキシ基(ここで、「低級アルキル」部分は前記定義と同様である)をさす。例は、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソ−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシ又はtert−ブチルオキシである。本発明に含まれる、より好ましい低級アルコキシ基は、メトキシ又はエトキシである。
【0028】
「アリール」という用語は、本明細書において使用されるように、一つ又は複数のアリール水素原子が、一つ又は複数のフェニル基、アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン化アルキル基により置換されていてもよい、場合により置換されたフェニル基をさす。置換されたフェニル基の例は、ビフェニル、o−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メチルフェニル、o−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、o−フルオロメチルフェニル、m−フルオロメチルフェニル、p−フルオロメチルフェニル、o−クロロメチルフェニル、m−クロロメチルフェニル、p−クロロメチルフェニル、o−ブロモメチルフェニル、m−ブロモメチルフェニル又はp−ブロモメチルフェニルである。
【0029】
「アリールオキシ」という用語は、酸素原子を介して結合された前記定義のようなアリール基を意味する。例は、フェニルオキシ、ベンジルオキシ等である。
【0030】
「低級アルコキシカルボニル」という用語は、カルボニル基(>C=O)に付着した低級アルコキシ残基をさす。例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等である。好ましい低級アルコキシカルボニルは、tert−ブトキシカルボニルである。
【0031】
「アリールオキシカルボニル」という用語は、カルボニル基(>C=O)に付着したアリールオキシ残基をさす。例は、ニトロベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Z)又はフェニルオキシカルボニルである。
【0032】
R1におけるアリールオキシカルボニルは、ニトロベンジルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Z)又はフェニルオキシカルボニルであり、より好ましくはベンジルオキシカルボニル(Z)である。
【0033】
「アリールアルキル」という用語は、本明細書において使用されるように、一つ又は複数のアルキル水素原子が、トリチル、ベンズヒドリル又はベンジルのようなアリール基により置換されている、炭化水素基をさす。
【0034】
ハロゲンという用語は、フッ素、塩素又は臭素を表す。
【0035】
式IIの化合物は、有機化学に関する参考書、例えば、J. March (1992), ”Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure”、第4版、John Wiley and Sons)からの既知の方法に従い調製されうる。例えば、N−保護されたD,L−アスパラギン誘導体が、塩化チオニルの存在下で、対応するアルコール(例えばメタノール)によりエステル化される。
【0036】
本発明に従い、式Iの化合物は、有機共溶媒と組み合わせられたpH6.0〜7.5の水性系における、式II〔ここで、R1及びR2は前記定義と同様であり、好ましくは、R1はベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルであり、R2はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル又はベンジルである〕の化合物のプロテアーゼとの反応により調製される。L−アスパラギン誘導体の酵素的加水分解の後、鏡像異性体的に純粋な式IのD−アスパラギン誘導体が、抽出により分離される。
【0037】
反応の触媒として適当な酵素は、プロテアーゼ、好ましくは安価な大量の微生物由来プロテアーゼであり、より好ましくはバチルス・プロテアーゼ(ノボノルディスク(Novo Nordisk)のサビナーゼ(Savinase)等)又はズブチリシン、例えばノボノルディスク(アルカラーゼ(Alkalase))又はソルベイ(Solvay)(プロテアーゼ(Protease)−L)のズブチリシン・カールスバーグ(Carlsberg)である。
【0038】
別法として、酵素を、固定化された形態で使用してもよい。
【0039】
本発明に従い、反応は、水と混和性の溶媒(最大25%、好ましくは10〜25%(v/v)の最終濃度)又は水と非混和性の有機共溶媒(任意の比率)を利用した水性−有機系で実施される。
【0040】
水相に関して、例えば、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムのような、生化学的変換のため使用されることが既知の一般的な緩衝溶液が、最大1M、好ましくは約5mMと約50mMの間の濃度で使用される。そのような緩衝溶液は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、LiSCN、Na2SO4のような通常の塩のうちの一つ、又は多価アルコール、例えば糖を、最大1M、好ましくは0.1Mの濃度で、さらに含有していてもよい。反応pHは、6.0から7.5までの範囲であり、好ましくは、反応pHは6.0から7.0までの範囲である。特に好ましい反応pHは、6.4から6.6までの範囲である。
【0041】
適当な共溶媒は、技術的に一般的な溶媒である。例は、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン又はtert−ブチルメチルエーテル(TBME))、低級アルコール、エステル(例えば、酢酸エチル)、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はアセトン)である。好ましいのは、水と混和性の共溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、低級アルコール、酢酸エチル又はアセトン)である。
【0042】
「低級アルコール」という用語は、本明細書において使用されるように、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール又はオクタノール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールのような、1つのヒドロキシ基を有する、1個から8個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状のアルキル残基をさし、より好ましいアルコールは、メタノール又はエタノールである。最も好ましいアルコールは、エタノールである。
【0043】
基質は、好適には、懸濁液として、5〜15%の全体濃度(w/w)で適用される。より好ましい全体濃度は、8〜12%である。
【0044】
酵素の添加後、激しく攪拌しながら、塩基の調節された添加により、反応混合物のpHが選択されたpH値に維持される。好ましい塩基は、水性のNaOH溶液又はKOH溶液である。
【0045】
反応の終了後、一般的には、適当な有機溶媒による反応混合物の抽出により、鏡像異性体的に純粋な式Iの生成物がワークアップ(work up)される。好ましい有機溶媒は、ジクロロメタンである。
【0046】
場合により、対応するN−保護されたL−アスパラギンを得るため、残存する水層をワークアップしてもよい。これは、一般的には、保持された水相の酸性化、及び形成された沈殿物の濾過による除去、又は適当な有機溶媒によるその抽出により達成される。
【0047】
従って、式III
【0048】
【化11】
【0049】
〔式中、R1は前記定義と同様であり、好ましくは、R1はベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルである〕
のN−保護されたL−アスパラギンの調製のための方法〔該方法は、
a)有機共溶媒、より好ましくはテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、低級アルコール、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド又はアセトン、最も好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、低級アルコール、酢酸エチル又はアセトンと組み合わされたpH6.0〜7.5、好ましくはpH6.0〜7.0、最も好ましくはpH6.4〜6.6の水性系において、式II
【0050】
【化12】
【0051】
〔式中、R1及びR2は前記定義と同様であり、好ましくは、R1はベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルであり、R2はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−sec−ブチル、イソブチル、ペンチル又はベンジルである〕
の化合物を、プロテアーゼ、好ましくは微生物プロテアーゼ、より好ましくはズブチリシン又はバチルス・プロテアーゼと反応させ、続いて式Iの鏡像異性体的に純粋な生成物を抽出すること;及び
b)対応する式IIIのN−保護されたL−アスパラギンを得るため、残存する水層をワークアップすることを含む〕も、本発明の一部である。
【0052】
場合により、式I又はIIIの生成物の高い化学的純度を得るため、式I又はIIIの生成物が安定性のため実質的に不溶性である適当な有機溶媒の存在下で、それを練ることができる。
【0053】
該方法は、好ましくは、N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステルの調製のため実施され、TBMEの存在下で練られる。
【0054】
本発明の方法に従い調製される式Iの化合物は、式IV
【0055】
【化13】
【0056】
〔式中、R1はアミノ保護基であり、Rは水素、C1〜C12−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、C3〜C12−アルケニル、フェニル、トリル、ナフチル、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン又はベンジルであり、好ましくは、R1はベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルであり、Rは水素、C1〜C8−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル、C3〜C8−アルケニル、フェニル、トリル、ナフチル、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン又はベンジルであり、最も好ましくは、R1はベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルであり、Rはベンジルである〕
の光学活性を有する3−アミノピロリジン誘導体の調製のため使用されうる。
【0057】
式IVの光学活性を有する3−アミノピロリジン誘導体の調製のための反応は、EP−A0928787に記載のようにして実施されうる。
【0058】
式IVの光学活性を有する3−アミノピロリジン誘導体は、化学工業、農芸工業、及び医薬品工業における有用な生成物の作製のための重要な素材である。特に、それらは、WO99/65920、EP−A0620225又はEP−A0849269に記載のような、例えばビニルピロリジノン−セファロスポリン誘導体のような抗菌物質の作製に有用である。
【0059】
以下の実施例において、使用された略語は、以下の意味を有する。
ISP−MS イオンスプレー陽性質量分析(ion spray positive mass spectroscopy)
ISN−MS イオンスプレー陰性質量分析(ion spray negative mass spectroscopy)
EI−MS 電子衝撃質量分析
SFC 超臨界流体クロマトグラフィ
NMR 核磁気共鳴分析
IR 赤外分析
HV 高度の真空(high vacuum)
min 分(単数又は複数)
【0060】
実施例1(反応体の調製)
N−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンメチルエステル
18.85g(70.8mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギン〔ベイケム(Bachem)〕を、230mlのメタノールに溶解/懸濁させ、次いで該溶液/懸濁液を0℃に冷却した。16.0mlの塩化チオニルを滴下により添加し、温度が10℃未満に維持されるようにした。完了時に、透明な溶液が形成され、それを15分間攪拌した。反応混合物を550mlのトルエンと共に蒸発させた(約150mlの容量に達した後、100mlのメタノールを添加し、蒸発を続行した;40℃浴槽温度)。得られた白色の結晶状の残渣を200mlのtert−ブチルメチルエーテル中で一夜粉砕/消化した。残渣を濾過にて除去し、HVで乾燥させたところ、18.7gのN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンメチルエステルが、白色の結晶状の粉末として得られた(収率:92%)。ISP−MS:303.2(M+Na+)、381.2(M+H+)、237.2(M−CO2)。SFC:97.7%面積。
【0061】
実施例2(生成物の大規模製造)
N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステル
18.5g(65.7mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンメチルエステル(99.5%)を、190mlの0.1M塩化ナトリウム溶液、40mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)及び25mlのTHFに、激しく攪拌しながら懸濁させた。1.0mlのアルカラーゼ2.4L〔ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ〕を添加し、激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。32.0mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費後(16.3h;8h後に49%変換)、反応混合物を350mlのジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を500mlの20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で簡単に洗浄し、硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させた(25℃浴槽温度)。残渣を200mlのtert−ブチルメチルエーテル中で一夜粉砕した。懸濁液を濾過し、濾過ケークをHVで乾燥させたところ、8.2gのN−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステルが、白色の結晶状の粉末として得られた(収率:46%)。エナンチオマー過剰率:>99.5%(キラセル(Chiracel)ODH、15cm×300μm、85%n−ヘキサン+15%イソプロパノール、6μl/min、0.5MPa、30℃、210nm)。EI−MS:280.2(M)、221.1(M−CO2Me)。SFC:98.8%面積。IR(Nujol):3349、1741、1665、1550、733、698cm−1。1H−NMR(CDCl3):2.76(dd、J1=4Hz、J2=16Hz、1H、−CHCH−)、2.98(dd、J1=4Hz、J2=16Hz、1H、−CHCH−)、3.76(s、3H、OCH3)、4.60(m、1H、−CHCOO−)、5.13(s、2H、−CH2O)、5.42及び5.53(2×bs、2H、CONH2)、6.00(bd、<1H、OCONH)、7.29〜7.37(スタック(stack)、5H、Ph)。
【0062】
実施例3(異なるプロテアーゼを用いた生成物の小規模調製)
N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンエチルエステル
0.5g(1.7mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンエチルエステル(実施例1と同様にして調製)を、激しく攪拌しながら、23mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び2mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、4mlのテトラヒドロフラン(THF)の存在下又は非存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、プロテアーゼ(名称、起源、及び量については、下記表を参照)の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。不完全な変換(下記表を参照)を示すTHFなしの実験は、ワークアップせず、THFを用いた実験は以下のように処理した。およそ50%の変換後(0.85mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費に相当)、反応混合物を25mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた(35℃浴槽温度)。保持されたエステルを含有する残渣を、ee測定に付した(キラセルODH、15cm×2.1mm、87%n−ヘプタン+13%イソプロパノール+0.1%TFA、0.1ml/min、r.t.、220nm)。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例4(N−ベンジルオキシカルボニル−L−アスパラギンも得るための後続ワークアップを含む、生成物の大規模製造)
N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンエチルエステル
10.0g(34.0mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンエチルエステル(実施例1と同様にして調製)を、激しく攪拌しながら、460mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び40mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、80mlのテトラヒドロフランの存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、1.0mlのサビナーゼ16L〔ノボノルディスクのバチルス・プロテアーゼ〕の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。16.45mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費後(48.2%変換;17時間後)、反応混合物を500mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させ(35℃浴槽温度)、残渣をHVで乾燥させたところ、5.02gのN−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンエチルエステルが、白色の結晶として得られた(収率:50%)。エナンチオマー過剰率:98.9%(キラセルODH、15cm×2.1mm、87%n−ヘプタン+13%イソプロパノール+0.1%TFA、100μl/min、r.t.、220nm)。〔α〕D=+12.2゜(c=1.0;EtOH)。ISP−MS:317.2(M+Na+)、295.3(M+H+)。HPLC:>99%面積。1H−NMR(DMSO):1.16(t、3H、CH3)、2.42〜2.58(スタック、〜2H、−CH2−)、4.07(m、2H、−CH2O−)、4.39(m、1H、−CH−)、5.03(m、2H、−CH2O−)、6.93(bs、1H、CONH2)、7.31〜7.37(スタック、6H、Ph及びCONH2)、7.60(d、1H、−CONH−)。
【0065】
N−ベンジルオキシカルボニル−L−アスパラギン
水相を、25%塩酸でpH2に酸性化し、500mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させ、残渣をHVで乾燥させたところ、3.13gのN−ベンジルオキシカルボニル−L−アスパラギンが、白色の結晶として得られた(収率:34%)。エナンチオマー過剰率:>99%(キラセルODH、15cm×2.1mm、87%n−ヘプタン+13%イソプロパノール+0.1%TFA、100μl/min、r.t.、220nm)。〔α〕D=−6.7゜(c=1.1;DMSO)。ISP−MS:289.2(M+Na+)、267.0(M+H+)。HPLC:>99%面積。1H−NMR(DMSO):2.41〜2.58(スタック、2H、−CH2−)、4.34(m、1H、−CH−)、5.03(s、2H、−OCH2−)、6.92(bs、1H、CONH2)、7.35(bs、6H、Ph及びCONH2)、7.45(d、1H、−CONH−)、12.6(s、1H、COOH)。
【0066】
実施例5(異なるプロテアーゼを用いた生成物の小規模調製)
Nα−ベンゾイル−D−アスパラギンエチルエステル
0.5g(1.89mmol)のNα−ベンゾイル−(D,L)−アスパラギンエチルエステル(一般的な方法により調製:Zhang et al. (1997), J. Org. Chem. 62, 2466と同様のN−保護;実施例1と同様のエステル化)を、激しく攪拌しながら、23mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び2mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、4mlのテトラヒドロフラン(THF)の存在下又は非存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、プロテアーゼ(名称、起源、及び量については、下記表を参照)の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。不完全な変換(下記表を参照)を示すTHFなしの実験は、ワークアップせず、THFを用いた実験は以下のように処理した。およそ50%の変換後(約0.95mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費に相当)、反応混合物を25mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させた(35℃浴槽温度)。保持されたエステルを含有する残渣を、ee測定にかけた(BGB−176−SEキャピラリーカラム(15m×0.25mm、BGB−アナリティック(Analytik)AG, Anwil, Switzerland);H2;100kPa;1#/minで140〜200℃;inj. 210℃、det. 220℃)。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例6(Nα−ベンゾイル−L−アスパラギンも得るための後続ワークアップを含む、生成物の大規模製造)
Nα−ベンゾイル−D−アスパラギンエチルエステル
3.5g(13.2mmol)のNα−ベンゾイル−(D,L)−アスパラギンエチルエステル(一般的な方法により調製:Zhang et al. (1997), J. Org. Chem. 62, 2466と同様のN−保護;実施例1と同様のエステル化)を、激しく攪拌しながら、55mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び5mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、8mlのテトラヒドロフランの存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、350μlのアルカラーゼ2.4L〔ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ〕の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。6.44mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費後(49%変換;23時間後)、反応混合物を50mlのジクロロメタンで3回、50mlの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させ(35℃浴槽温度)、残渣をHVで乾燥させたところ、1.63gのNα−ベンゾイル−D−アスパラギンエチルエステルが、白色の固体として得られた(収率:47%)。エナンチオマー過剰率:98.2%(キラルパック(Chiralpak)−AD、25cm×4.6mm、75%n−ヘプタン+25%EtOH+0.2%TFA、1ml/min、r.t.、220nm)。〔α〕D=+12.0゜(c=1.1;DMSO)。ISP−MS:287.1(M+Na+)、265.3(M+H+)。HPLC:>99%面積。1H−NMR(DMSO):1.17(t、3H、CH3)、2.57〜2.72(スタック、2H、−CH2−)、4.19(q、2H、−CH2O−)、4.75(m、1H、−CH−)、6.95(bs、1H、CONH2)、7.40(bs、1H、CONH2)、7.46〜7.85(スタック、5H、Ph)、8.75(d、1H、−CONH−)。
【0069】
Nα−ベンゾイル−L−アスパラギン
水相を、1.0N塩酸でpH2に酸性化した。形成された白色の沈殿物を濾過にて除去し、50mlの10mM塩酸で洗浄した。濾過ケークを25mlのTBMEで洗浄し、HVで乾燥させたところ、1.28gのNα−ベンゾイル−L−アスパラギンが、白色の粉末として得られた(収率:41%)。エナンチオマー過剰率:>99%(キラルパック−AD、25cm×4.6mm、85%n−ヘプタン+15%EtOH+0.12%TFA、0.7ml/min、r.t.、220nm)。ISN−MS:235.2(M−H−)。HPLC:>99%面積。1H−NMR(DMSO):2.57〜2.72(スタック、2H、−CH2−)、4.72(m、1H、−CH−)、6.94(bs、1H、CONH2)、7.39(bs、1H、CONH2)、7.46〜7.85(スタック、5H、Ph)、8.64(d、1H、−CONH−)、12.6(s、1H、COOH)。
【0070】
実施例7(生成物の小規模調製)
Nα−ベンゾイル−D−アスパラギンベンジルエステル
0.5g(1.53mmol)のNα−ベンゾイル−(D,L)−アスパラギンベンジルエステル(一般的な方法により調製:Zhang et al. (1997), J. Org. Chem. 62, 2466と同様のN−保護;酸塩化物を介したエステル化)を、激しく攪拌しながら、23mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び2mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、4mlのアセトンの存在下又は非存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、50μlのアルカラーゼ2.4L(ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ)の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。およそ50%の変換後、反応混合物を25mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させ(35℃浴槽温度)。保持されたエステルを含有する残渣を、ee測定に付した(キラセルODH、15cm×2.1mm、87%n−ヘプタン+13%イソプロパノール+0.1%TFA、0.1ml/min、r.t.、220nm)。
【0071】
【表3】
【0072】
実施例8(Nα−ベンゾイル−L−アスパラギンも得るための後続ワークアップを含む、生成物の大規模製造)
Nα−ベンゾイル−D−アスパラギンベンジルエステル
2.50g(7.66mmol)のNα−ベンゾイル−(D,L)−アスパラギンベンジルエステル(実施例10のような一般的な方法により調製)を、激しく攪拌しながら、115mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び10mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、20mlのアセトンの存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、250μlのアルカラーゼ2.4L〔ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ〕の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。3.479mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費後(46%変換;17.9時間後)、反応混合物を125mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させ(35℃浴槽温度)、残渣を20mlのTBME中で一夜粉砕した。固体を濾過にて除去し、HVで乾燥させたところ、1.10gのNα−ベンゾイル−D−アスパラギンベンジルエステルが、白色の固体として得られた(収率:44%)。エナンチオマー過剰率>99%(キラセル−ODH、15cm×2.1mm、87%n−ヘプタン+13%iPrOH+0.1%TFA、0.1ml/min、r.t.、220nm)。〔α〕D=+13.2゜(c=1.2;DMSO)。HPLC:>99%面積。ISP−MS:349.5(M+Na+)、327.3(M+H+)。1H−NMR(DMSO):2.61〜2.78(スタック、2H、−CH2−)、4.84(m、1H、−CH−)、5.14(s、2H、−OCH2−)、6.97(bs、1H、CONH2)、7.32〜7.84(スタック、11H、2×Ph及びCONH2)、8.83(d、1H、−CONH−)。
【0073】
Nα−ベンゾイル−L−アスパラギン
水相を、25%塩酸でpH2に酸性化した。形成された沈殿物を1℃で一夜攪拌し、濾過にて除去した。濾過ケークを10mlの10mM塩酸で洗浄し、HVで乾燥させたところ、0.77gのNα−ベンゾイル−L−アスパラギンが、白色の粉末として得られた(収率:43%)。エナンチオマー過剰率:>99%(キラルパック−AD、25cm×4.6mm、85%n−ヘプタン+15%EtOH+0.12%TFA、0.7ml/min、r.t.、220nm)。〔α〕D=−16.5゜(c=1.0;DMSO)。HPLC:>99%面積。ISN−MS:235.2(M−H−)。1H−NMR(DMSO):2.57〜2.72(スタック、2H、−CH2−)、4.72(m、1H、−CH−)、6.94(bs、1H、CONH2)、7.39(bs、1H、CONH2)、7.46〜7.85(スタック、5H、Ph)、8.64(d、1H、−CONH−)、12.6(s、1H、COOH)。
【0074】
実施例9(異なる溶媒を用いた生成物の調製)
N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステル
2.0g(7.0mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンメチルエステル(98.4%)を、激しく攪拌しながら、28mlの0.1M塩化ナトリウム溶液、4mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)及び8mlの有機溶媒(下記表を参照;有機溶媒の非存在下での参照実験においては、高い粘度のため、28mlではなく46mlの塩化ナトリウム溶液を使用した)に懸濁させた。pHを6.5に調整し、100μlのアルカラーゼ2.4L〔ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ〕を添加することにより反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。およそ3.5mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費の後(約50%変換;表を参照)、反応混合物を30mlのジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させた(35℃浴槽温度)。残渣を、50mlのtertブチルメチルエーテル中で一夜粉砕した。懸濁液を濾過し、濾過ケークをHVで乾燥させたところ、0.84〜0.89gのN−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステルが、白色の結晶状の粉末として得られた(表を参照)。分析:下記表を参照(cf.実施例2)。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例10(異なるプロテアーゼを用いた生成物の調製)
N−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンメチルエステル
有機溶媒としてTHFを用いた実験を、100μlのアルカラーゼ2.4Lの代わりに100μlのサビナーゼ16L〔ノボノルディスクのアルカリ・バチルス・プロテアーゼ〕を使用したこと、及び反応をTHFの非存在下又は存在下で実施したことを除けば、実施例9と全く同様にして実施した。
【0077】
【表5】
【0078】
実施例11((L)−アスパラギン誘導体の大規模製造)
N−ベンジルオキシカルボニル−(L)−アスパラギン
実施例2と同様にして、10.0g(35.1mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンメチルエステル(98%)を、140mlの0.1M塩化ナトリウム溶液、20mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)及び40mlのTHFに、激しく攪拌しながら懸濁させた。0.5mlのアルカラーゼ2.4Lを添加し、激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。2.1時間後の16.42mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費後(47%変換に相当)、反応混合物を200mlのジクロロメタンで3回抽出し、切断されていないメチルエステルを除去した。200mlのトルエンをエントレイナー(entrainer)として使用して、水相をおよそ50mlの容量に濃縮した。pHを25%塩酸で3.5に調整した。形成された沈殿物を濾過にて除去し、300mlの脱イオン水中で一夜粉砕した。懸濁液を濾過し、濾過ケークをHVで乾燥させたところ、4.07gのN−ベンジルオキシカルボニル−L−アスパラギンが、白色の結晶として得られた(収率:44%)。エナンチオマー過剰率:>99%(キラセルODH、25cm×4.6mm、85%n−ヘプタン+15%イソプロパノール、0.8ml/min、r.t.、220nm)。〔α〕D=+5.4゜(c=2.0;AcOH)。ISN−MS:265.3(M−H−)。HPLC:>99%面積。IR(Nujol):3337、1697、1643、1536、1268、737、695cm−1。1H−NMR(DMSO):2.41〜2.58(スタック、2H、−CH2−)、4.34(m、1H、−CH−)、5.03(s、2H、−CH2O−)、6.92(bs、1H、CONH2)、7.26〜7.40(スタック、6H、Ph及び−CONH2)、7.44(bd、1H、−OCONH−)、12.67(bs、1H、−COOH)。
【0079】
実施例12(生成物の小規模調製)
N−ベンジルオキシカルボニル−(D)−アスパラギンn−ブチルエステル
0.5g(1.55mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンn−ブチルエステル(実施例1と同様にして調製)を、激しく攪拌しながら、23mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び2mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、4mlのジオキサンの存在下又は非存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、50μlのアルカラーゼ2.4L〔ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ〕の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。およそ50%変換後、反応混合物を25mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させた(35℃浴槽温度)。保持されたエステルを含有する残渣を、ee測定にかけた(キラセルODH、15cm×0.3mm、90%n−ヘプタン+10%イソプロパノール、5μl/min、30℃、210nm)。
【0080】
【表6】
【0081】
実施例13(生成物の大規模製造)
N−ベンジルオキシカルボニル−(D)−アスパラギンn−ブチルエステル
4.0g(12.41mmol)のN−ベンジルオキシカルボニル−(D,L)−アスパラギンn−ブチルエステル(実施例1と同様にして調製)を、激しく攪拌しながら、180mlの0.1M塩化ナトリウム溶液及び16mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に、30mlのジオキサンの存在下で懸濁させた。pHを1.0N塩酸で6.5に調整し、400μlのアルカラーゼ2.4L〔ノボノルディスクのズブチリシン・カールスバーグ〕の添加により反応を開始させた。激しく攪拌しながら、1.0N水酸化ナトリウム溶液の調節された添加(pH−スタット)により、pHを6.5に維持した。およそ66時間後及び87時間後に、さらに200μlのアルカラーゼ溶液を、ほぼ停止しつつある反応へ添加した。5.73mlの1.0N水酸化ナトリウム溶液の消費後(46%変換、全部で91時間後)、反応混合物を200mlのジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム無水物上で乾燥させ、蒸発させ(35℃浴槽温度)、残さを50mlのTBME中で一夜粉砕した。固体を濾過にて除去し、濾過ケークをTBMEで洗浄し、HVで乾燥させたところ、1.61gのN−ベンジルオキシカルボニル−D−アスパラギンブチルエステルが、白色の固体として得られた(収率:40%)。HPLC:>99%(面積)。エナンチオマー過剰率:95%(キラセルODH、15cm×0.3mm、90%n−ヘプタン+10%イソプロパノール、5μl/min、30℃、210nm)。〔α〕D=+19.9゜(c=1.0;DMSO)。ISP−MS:345.3(M+Na+)、323.3(M+H+)。1H−NMR(DMSO):0.87(t、3H、CH3)、1.31(m、2H、−CH2−)、1.52(m、2H、−CH2−)、2.43〜2.59(スタック、〜2H、−CH2−)、4.03(m、2H、−CH2O−)、4.40(m、1H、−CH−)、5.03(m、2H、−CH2O−)、6.93(bs、1H、CONH2)、7.29〜7.39(スタック、6H、Ph及びCONH2)、7.60(d、1H、−CONH−)。
Claims (10)
- R1がベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はベンゾイルであり、R2がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−sec−ブチル、イソブチル、ペンチル又はベンジルである、請求項1に記載の方法。
- プロテアーゼが、微生物のプロテアーゼである、請求項1又は2に記載の方法。
- プロテアーゼがバチルス・プロテアーゼ又はズブチリシンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 有機共溶媒が25%までの濃度で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 反応がpH6.0〜7.0で実施される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 反応がpH6.4〜6.6で実施される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 有機共溶媒がテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、低級アルコール、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド又はアセトンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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