JP3567573B2 - クラッチ断続装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチ断続装置に係り、特に車両のクラッチの自動化を図り得るクラッチ断続装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、バスやトラック等の大型車両においても変速自動化の要請が高まっている。これらの車両は一般に車重や積載量が大きく、クラッチ形式として乗用車に採用されるような流体式トルクコンバータを用いると損失大となり燃費の面で不利であるため、このような大型車両においては、特に摩擦クラッチを自動操作により断続し、その出力を変速機に送り、この変速機をやはり自動操作するようにして、変速自動化の達成を図っている。このクラッチの自動操作を行うクラッチ断続装置としては、空圧の給排により摩擦クラッチの断続操作を行う倍力装置(クラッチブースタ)を備えたものが一般的である。
【0003】
一方、車両発進時等においてはクラッチの操作がデリケートとなり、その操作を自動制御で行おうとすると装置が複雑、高価となってしまうため、この場合にのみクラッチペダルを用いたマニュアル(手動)操作を行えるようにして、装置のシンプル化、低価格化を狙ったものがある(所謂セミオートクラッチシステム)。この場合、クラッチペダルの操作によりマスタシリンダから油圧を給排し、この油圧の給排により上記倍力装置への空圧の給排を行うようにしている。
【0004】
ところで、発進時を除く自動変速時、倍力装置にはクラッチペダルを操作せずとも空圧が給排される。また倍力装置は、空圧が供給されると内部のパワーピストンを押動させてクラッチを分断方向に操作するようになっている。
【0005】
そして、従来の構成において、マスタシリンダからの油圧を送る通路は、上記パワーピストンの移動に応じて容積変化する倍力装置の油圧シリンダに連通しており、クラッチの自動分断制御時、即ちクラッチペダルを操作しないでパワーピストンによりクラッチ分断制御を行う場合、パワーピストンの押動により油圧ピストン(ハイドロリックピストン)が移動すると、油圧通路内に負圧が発生して気泡が混入し、クラッチの正確な操作が困難となる虞がある。
【0006】
このような負圧発生を防止するため、実公平4−8023号公報等においては、倍力装置の油圧出力部にマニュアル操作と自動操作とのキャンセル機構を設け、自動操作時における油圧通路内の容積変化を防止している。しかし、このような倍力装置の構造変更は、シール等の完全を期すためにも小スペースで複雑な構造を採用せざるを得ず、これによってコストアップを招き、信頼性、耐久性にも問題が生じる。
【0007】
そこで、本出願人は、倍力装置の構造変更は行わず、マスタシリンダをクラッチペダルだけでなく別の駆動手段(空圧又は油圧)によっても作動させるようにし、上記問題点を解決することができるクラッチ断続装置の提案を先に行った。
【0008】
その一例として、特願平7−205859号で提案したものを述べれば、クラッチの自動分断時にマスタシリンダに空圧を供給し、その分断操作に連動して空圧でピストンを押すことによって、マスタシリンダから油圧を発生させ、油圧通路内の負圧化を防止している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特願平7−205859号においては、クラッチの自動接続時に、倍力装置及びマスタシリンダからの空圧排出を個々に独立に行うようにしている。
【0010】
そして、油圧通路内の負圧化を防止するためには、それら空圧の排出速度を調整し、マスタシリンダからの空圧排出を倍力装置からの空圧排出より常に遅らせなければならない。即ち、これが逆であると、マスタシリンダのピストンが早く戻り過ぎて負圧が発生すると共に、リザーバタンクより作動油が吸引されてしまうからである。
【0011】
また、排出される空気量が、倍力装置側よりもマスタシリンダ側の方が遥かに少ないため、排出速度の調整は、倍力装置側をマスタシリンダ側に合わせなければならない。
【0012】
そこで具体的には、マスタシリンダ側の空圧の排出通路に小径の絞りを設け、排出速度が緩慢になるよう調整することになる。
【0013】
そして先ず、リザーバタンクからの作動油吸引を防止するためには、絞り径を0.5mm 以下の小径としなければならない。
【0014】
しかし、絞り径を0.5mm としても、マスタシリンダのピストンの戻り速度は十分に低速とならず、0.5mm 以下の値で最適な排出速度に調整するには、絞り径の選定幅、排出速度の調整幅が非常に狭く、調整が極めて困難であった。そして、結果的にクラッチの接続速度を満足に調整することができず、且つ接続速度を十分に低速にすることができなかった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るクラッチ断続装置は、空圧の供給・排出によりクラッチを分断・接続する倍力装置と、コントローラからの制御信号に基づき、前記倍力装置への空圧の供給・排出を制御して前記クラッチの自動断続を実行する第1電磁弁と、クラッチペダル操作と連動するマスタシリンダからの信号油圧に基づき、前記倍力装置への空圧の供給・排出を制御して前記クラッチのマニュアル断続を実行する油圧作動弁と、前記コントローラからの制御信号に基づき、前記クラッチの自動分断時に前記マスタシリンダに空圧を供給し、自動接続時にその空圧を排出する第2電磁弁と、前記クラッチの自動接続時に、前記マスタシリンダから排出される空圧を、前記倍力装置から排出される空圧に合流させるための空圧合流路とを備えたものである。
【0016】
この構成によれば、クラッチの自動接続時に、マスタシリンダから排出される空圧が、空圧合流路を通じて倍力装置から排出される空圧に合流される。これにより、互いの空圧が同等となり、排出速度合わせが不要となって個々の排出速度の調整が必要なくなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、本発明に係るクラッチ断続装置を示す全体構成図で、クラッチ断続装置1は空圧を供給するための空圧供給手段2を有する。空圧供給手段2は、エンジン(図示せず)に駆動されて空圧(空気圧)を発生するコンプレッサ3と、コンプレッサ3からの空気を乾燥させるエアドライヤ4と、エアドライヤ4から送られてきた空気を貯留するエアタンク5と、エアタンク5の入口側に設けられた逆止弁6とから主に構成される。この空圧供給手段2からの空圧は倍力装置(クラッチブースタ)7に送られ、倍力装置7はその空圧の供給により摩擦クラッチ8を分断側(右側)Aに操作するようになっている。また倍力装置7は、詳しくは後述するが、マスタシリンダ10から油圧も供給されるようになっている。
【0019】
図2は倍力装置7の詳細を示す縦断面図である。なおこの倍力装置7は従来同様に構成される。図示するように、倍力装置7は、そのボディ11に接続されたシリンダシェル12を有し、このシリンダシェル12内にピストンプレート(パワーピストン、倍力ピストン)13が、リターンスプリング14により空圧導入側(図中左側)に付勢されて設けられている。シリンダシェル12の一端には空圧ニップル15が取り付けられ、この空圧ニップル15が空圧導入口を形成してエアタンク5からの空圧を空圧配管35(図1)から導入する。空圧が導入されるとピストンプレート13が右側に押動され、こうなるとピストンプレート13はピストンロッド16、ハイドロリックピストン17、さらにはプッシュロッド18を押動してクラッチレバー8a(図1)を分断側Aに押し、クラッチ8を分断する。
【0020】
一方、ボディ11内部には油圧路20が形成され、油圧路20の油圧導入口は油圧ニップル19によって形成されている。油圧ニップル19には油圧配管54の一端が接続される。油圧路20は、ボディフランジ部11aの一端(下端)側に形成された孔21、ハイドロリックピストン17を収容するハイドロリックシリンダ(油圧シリンダ)22(ボディシリンダ部11bに形成される)、及びハイドロリックシリンダ22に小孔23aを介して連通する他端(上端)側の制御孔23によって主に形成される。油圧ニップル19から油圧が導入されると、その油圧は上記通路を通って制御孔23に到達し、制御ピストン24を制御シリンダ25に沿って右側に押動する。このようにボディフランジ部11aの上端側には、詳しくは後述するが、倍力装置7への空圧供給を制御するための制御バルブ部7a(油圧作動弁)が形成される。
【0021】
制御バルブ部7aは右側に突出する制御ボディ部26によって区画される。制御ボディ部26には、前述の制御シリンダ25に同軸に連通するコントロール室27及び空圧ポート28が形成される。コントロール室27には制御ピストン24のコントロール部29が、空圧ポート28にはポペットバルブ30がそれぞれ摺動可能に収容される。空圧ポート28にはニップル31が取り付けられ、このニップル31には空圧配管67(図1)が接続されて空圧が常に供給されている。
【0022】
通常、ポペットバルブ30は、空圧とポペットスプリング32とにより左側に付勢されていて、コントロール室27及び空圧ポート28を連通する連通ポート33を閉じている。よってニップル31からの空圧はポペットバルブ30の位置で遮断される。しかしながら、油圧配管54から油圧が供給されると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を右側に押動して連通ポート33を開く。こうなると、連通ポート33からコントロール室27に侵入した空圧は、詳しくは後述するが、コントロール室27に連通する空圧配管34,35(図1)を通じて前述のシリンダシェル12に入り、ピストンプレート13の左側の空圧作用面13aに作用してこれを右側に押動し、クラッチ8を分断側に操作する。
【0023】
ここで、倍力装置7は、供給された油圧の大きさに応じてクラッチ8を所定ストロークだけ操作することができる。即ち、例えば比較的小さい値だけ油圧が増加された場合、前述の空圧作用によりピストンプレート13が右側に押動され、これに連動してハイドロリックピストン17が所定ストロークだけ右側に押動される。すると、油圧路20の容積が増し制御孔23内の油圧が下がり、こうなると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を押し付けつつ、ポペットバルブ30が連通ポート33を閉鎖するバランス状態が生じ、これによりコントロール室27、空圧配管34,35、及びピストンプレート13の空圧作用面13a側となる空圧導入室12bにて所定の空圧が保持され、ピストンプレート13を所定ストローク位置に保持し、クラッチ8を所定の半クラッチ位置に保持する。
【0024】
また、油圧が完全に抜かれると、制御孔23内の油圧がさらに下がって、図示の如く制御ピストン24が最も左側の原位置に戻される。こうなると、コントロール部29がポペットバルブ30から離れ、コントロール部29の内部に設けられた開放ポート36がコントロール室27等と連通するようになる。すると、保持されていた空圧は、大部分が開放ポート36から大気圧ポート39を通じ空圧導入室12bと反対側の大気室12aに導入され、これによりピストンプレート13を右側に押していた空圧が、今度はリターンスプリング14と協同してそれを反対側の左側に押し、クラッチ8を接続側(左側)Bに操作する。そして残りの空圧は、ブリーザ37を通じ大気開放される。
【0025】
なお、倍力装置7において、38はシリンダ室12aとハイドロリックシリンダ22とを油密に仕切るシール部材、40は大気圧ポート、41は緩められたときに作動油のエア抜きを行えるブリーダである。
【0026】
このように、制御バルブ部7aは、クラッチペダル9の操作と連動するマスタシリンダ10からの信号油圧に基づき、倍力装置7への空圧の供給・排出を制御し、クラッチ8のマニュアル断続を実行する。
【0027】
図3はマスタシリンダ10の詳細を示す縦断面図である。図示するように、マスタシリンダ10は、長手方向に延出されたシリンダボディ45を有する。シリンダボディ45はその内部に所定径のシリンダボア46を有し、シリンダボア46には特に二つのピストン47,48が独立して摺動可能に装入される。シリンダボア46の一端(左端)開口部には、クラッチペダル9の踏み込み或いは戻し操作に合わせて挿抜するプッシュロッド49の先端部が挿入され、さらにその開口部はダストブーツ50で閉止される。シリンダボア46内の他端側(右側)には、第1及び第2ピストン47,48をピストンカップ51を介して一端側に付勢するリターンスプリング52が設けられる。シリンダボア46の他端は、シリンダボディ45に形成された油圧供給ポート53に連通され、この油圧供給ポート53には図1に示す油圧配管54が接続される。53aはチェックバルブである。
【0028】
図示状態にあっては、クラッチペダル9の踏み込みがなされておらず第1及び第2ピストン47,48は一端側の原位置に位置されている。特にこのときのピストン47,48間に位置されて、シリンダボディ45には空圧導入ポート55が設けられている。このマスタシリンダ10においては、クラッチペダル9によるマニュアル操作のときは両方のピストン47,48が押動されて油圧を供給する。一方、自動操作による場合は、詳しくは後述するが、空圧導入ポート55から空圧が供給されて第2ピストン48のみが適宜押動されるようになっている。なおこのとき第1ピストン47の移動はスナップリング56によって規制される。またこのとき、第1ピストン47が移動しないのでクラッチペダル9は移動しない。57は、作動油のリザーバタンク58(図1)からの給油配管59に接続する給油ニップル、60及び61は、ピストンカップ51の右側及び第2ピストン48の位置にそれぞれ給油を行う小径及び大径ポートを示す。
【0029】
図1に示すように、マスタシリンダ10の空圧導入ポート55とエアタンク5とは空圧配管62で接続され、この空圧配管62には2つの分岐63,65,が設けられる。分岐63には空圧配管67が接続され、空圧配管67の他端は倍力装置7のニップル31に接続される。分岐65には空圧配管68が接続され、この空圧配管68の他端は、空圧配管34及び35に電磁切替弁79(第1電磁弁)を介して接続される。
【0030】
電磁切替弁79は、コンピュータ内蔵のコントローラ72からのON/OFF信号(制御信号)に基づいて切替制御され、ONのときには空圧配管68及び35を接続して配管34を閉とし、OFF のときには、空圧配管34及び35を接続して配管68を閉とする。このように、電磁切替弁79は三方弁の如く機能する。
【0031】
一方、空圧配管34の途中にも、コントローラ72からのON/OFF信号により切替制御される電磁切替弁78が設けられる。この電磁切替弁78は前記と異なり、単純にONのときには空圧配管34を閉、OFF のときにはそれを開とするのみである。そしてまた、空圧配管34には、電磁切替弁78をバイパスする空圧配管64が設けられ、この空圧配管64には流路を絞るための絞り部66が形成される。
【0032】
ここで、詳しくは後述するが、エアタンク5から分岐65、電磁切替弁79、及び倍力装置7の空圧ニップル15を順に結ぶ空圧配管62,68,35は、クラッチ8の自動分断操作時に、倍力装置7に空圧供給を行うための第1の空圧供給路aを形成する。
【0033】
またエアタンク5から分岐63、制御バルブ部7a、電磁切替弁79、及び倍力装置7の空圧ニップル15までを順に結ぶ空圧配管62,67,34(64を含む),35は、クラッチ8のマニュアル分断操作時に、倍力装置7に空圧供給を行うための第2の空圧供給路bを形成する。
【0034】
そして、空圧ニップル15、電磁切替弁79、及び制御バルブ部7aを順に結ぶ空圧配管35,34(64を含む)は、クラッチ8の自動及びマニュアル接続操作時に、倍力装置7の空圧導入室12bから排出される空圧を反対側の大気室12aに導くための空圧排出路cを形成する。
【0035】
一方、エアタンク5とマスタシリンダ10とを結ぶ空圧配管62は、マスタシリンダ10の第2ピストン48の背面側に空圧を供給するための空圧供給路dを形成する。この配管62にも電磁切替弁81が設けられ、電磁切替弁81は、コントローラ72からのON/OFF信号により切替制御され、ONのときにはエアタンク5からの空圧をマスタシリンダ10に供給し、OFF のときには空圧供給を停止する一方、マスタシリンダ10から空圧を排出させて空圧配管42(空圧合流路)に送るようになっている。
【0036】
ここで空圧配管42は、空圧配管34の電磁切替弁79,78間の位置で且つ空圧配管64の分岐位置より電磁切替弁79側(上流側)の位置に接続され、詳しくは後述するが、クラッチ8の自動接続操作時に、マスタシリンダ10から排出される空圧(以下マスタシリンダ排圧という)を、倍力装置7から排出される空圧(以下倍力装置排圧という)に合流させるようになっている。
【0037】
そして、空圧配管42の途中にはチェック弁43が設けられ、チェック弁43は、内部の弁体をスプリングで電磁切替弁81側に付勢する構成となっている。これにより、チェック弁43は、マスタシリンダ排圧が倍力装置排圧より大きいときにのみ開放し、マスタシリンダ10側から倍力装置7側への空圧の移動を許容する。逆に言えば、マスタシリンダ排圧が、倍力装置排圧以下のときには常に閉止して空圧の移動を規制する。
【0038】
かかるクラッチ断続装置1は、これとは別に設けられた変速機71と連動されるようになっている。変速機71は自動変速を行う構成がなされており、即ち、手動シフトレバーで変速ポジションが選択されると、電気スイッチによる変速信号がコントローラ72に送られ、図示しないアクチュエータが動作されて、運転手の操作に代わって実質的な変速操作を行うようになっている。
【0039】
また、コントローラ72には、アクセルペダル75に設けられたストロークセンサ82及びアイドルスイッチ83、変速機71のシフトレバー付近に設けられた非常スイッチ84、変速機71の出力軸付近に設けられた車速センサ85、エアタンク5に設けられた圧力スイッチ86、クラッチペダル9に設けられたペダルスイッチ87及びクラッチペダルストロークセンサ89、及びクラッチ8に設けられたクラッチストロークセンサ88等が接続される。
【0040】
次に、上記装置の動作説明を行う。
【0041】
先ず、自動変速の概要に含めてクラッチ8の自動断続操作について説明する。運転手がシフト操作を行うと、変速信号がコントローラ72に入力され、これに伴ってコントローラ72は電磁切替弁79をONとする。このとき電磁切替弁78はOFF のままである。こうなると、第1の空圧供給路aを通じて、倍力装置7の空圧導入室12bには比較的速い速度で(短時間で)空圧が供給され、これによりクラッチ8は分断操作される。この後、図示しないアクチュエータにより変速機71の変速操作を完了し、詳しくは後述するが、電磁切替弁79をOFF 、電磁切替弁78をON又はOFF として、空圧導入室12bの空圧を大気室12aに導入してクラッチ8の接続操作を行い、変速を完了する。
【0042】
ここで図2を参照して、特にクラッチ8の自動分断操作時、ハイドロリックピストン17が右側に移動することで、作動油が充填されているハイドロリックシリンダ22の容積が増し、これにより油圧路20及び油圧配管54内等(合わせて油圧通路内という)に負圧が生じて、作動油に気泡が混入する虞がある。
【0043】
そこで本装置1では、クラッチ8の自動分断操作時に、電磁切替弁81をONとしてマスタシリンダ10に空圧を供給し、第2ピストン48を適宜押動することで油圧通路内を適当に加圧するようにしている。こうすると、油圧通路内の負圧化を未然に防止することができる。
【0044】
他方、クラッチ8の自動接続操作時には、電磁切替弁79がOFF とされ、電磁切替弁78が例えばOFF のままとされる。こうなると、倍力装置7の空圧導入室12bからは空圧が排出されるようになり、その空圧は、空圧配管35から空圧配管34に至り、大部分がその空圧配管34を通じ、少量が空圧配管64を通じるようになる。そしてその後、制御バルブ部7aのコントロール室27、開放ポート36、大気圧ポート39を通じて大気室12aに導入される。これによってピストンプレート13は、リターンスプリング14及びクラッチ8のリターンスプリング(図示せず)の付勢力に加え、空圧の作用で比較的早い速度で元の位置に復帰し、クラッチ8を比較的高速で接続操作するようになる。
【0045】
一方このとき、電磁切替弁78をONとした場合は、その位置で空圧配管34が閉じられるため空圧は全量が絞り部66を通ずるようになる。こうなると、空圧の移動は比較的低速となって、クラッチ8の接続速度も低速となる。このように、電磁切替弁78のON/OFFを車両の運転状態等に応じて切替えることによって、クラッチ8の接続速度を最適に選び、クラッチ接続ショックの低減等を図ることができる。
【0046】
ところで、クラッチ8の自動接続操作時には、倍力装置7のハイドロリックピストン17の復帰移動に伴い、油圧通路内は順次増圧されるから、その復帰移動に合わせてマスタシリンダ10から空圧を排出する必要がある。一方、この排出の過程においても油圧通路内を加圧する必要があるから、結局、倍力装置7からの空圧の排出速度と、マスタシリンダ10からの空圧の排出速度とを合わせる必要がある。
【0047】
そこで、本装置1においては、空圧配管42で、マスタシリンダ排圧を倍力装置排圧に合流させ、それらの圧力を同等にし、空圧の排出速度(降下速度)を同等にするようにしている。これにより、互いの排出速度合わせ(バランス取り)が不要となり、単純に合流後の通路に適当な絞りを与えれば、クラッチ8の接続速度を高速側から低速側まで幅広く調整することができる。なおこの絞りを与えるのが、空圧配管64に設けられた絞り部66である。
【0048】
加えて、本装置1においてはチェック弁43があるため、マスタシリンダ排圧を倍力装置排圧より常に高い値に保持でき、マスタシリンダ10側の排出速度を倍力装置7側の排出速度より常に遅くできる。これによってマスタシリンダ10の第2ピストン48をクラッチ接続中常に加圧状態にできて、油圧通路内の負圧化及びリザーバタンク58からの作動油吸引を完全に防止できる。
【0049】
次に、クラッチ8のマニュアル分断操作は以下のようにして行われる。クラッチペダル9を踏み込むと、マスタシリンダ10からは油圧が供給され、この油圧は、前述したように、制御バルブ部7aを作動させて空圧配管67及び34を接続ないし連通させる。ここでコントローラ72は、ペダルスイッチ87からの信号入力によりマニュアル操作であることを判断し、電磁切替弁79,78をいずれもOFF とする。こうなると、制御バルブ部7aからの空圧は大部分が配管34を通じて配管35に至り、倍力装置7の空圧導入室12bに移動する。そして、ピストンプレート13を押動し、クラッチ8を分断させる。このとき空圧は絞り部66を殆ど経由せず、クラッチ8はクラッチペダル9の操作に応じて適宜分断されることになる。なお、このときにはマスタシリンダ10から油圧が積極的に供給されているため、マスタシリンダ10に空圧を供給する必要はなく、電磁切替弁81はOFF のままである。
【0050】
他方、クラッチ8のマニュアル接続操作時、クラッチペダル9の戻し操作により油圧が抜かれると、前述の制御バルブ部7aの作動により空圧配管34と大気圧ポート39とが連通されるようになる。そしてコントローラ72は、マニュアル操作であるため電磁切替弁79,78をいずれもOFF のままとする。こうなれば前記同様、空圧導入室12bの空圧が大気室12aに導入されてクラッチ8の接続が達成される。
【0051】
なお、ここで分かるように、制御バルブ部7aは、マスタシリンダ10からの油圧信号(パイロット油圧)を受けて、空圧配管34を空圧配管67或いは大気圧ポート39のいずれか一方に切替える三方弁の如く機能する。またここで、クラッチ8の接続速度をクラッチペダル9の戻し操作で直接コントロールできるように、電磁切替弁78はOFF となっている。そして前記同様の理由で、電磁切替弁81はOFF のままである。
【0052】
次に、本発明に係る別の形態について説明する。なお、前記形態と同一の構成については図中同一符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図4に示すように、この形態にあっては、空圧配管34がブリーザ37に接続され、代わって制御バルブ部7aのコントロール室27には空圧配管44が接続される。空圧配管35,44は機械式三方弁たるシャトル弁69に接続され、シャトル弁69と倍力装置7の空圧ニップル15とは空圧配管70で接続されている。シャトル弁69は、空圧配管35,44の圧力差を利用して内部の弁体を移動させ、そのうち高圧となる一方の配管35又は44のみを配管70に接続する。
【0054】
従って、クラッチ8の自動分断操作時には、配管35,70が接続されて空圧供給がなされ、マニュアル分断操作時には、配管44,70が接続されて空圧供給がなされることになる。
【0055】
また、クラッチ8の自動及びマニュアル接続操作時、空圧配管34を通じ送られてきた排出空気は、ブリーザ37から一部大気開放されるものの、その排気口が小さいため大部分は倍力装置7の大気室12aに送られることになる。
【0056】
そしてここでも、空圧配管42及びチェック弁43があるため、排出された空圧の合流とマスタシリンダ排圧の遅れにより前記同様の作用効果が生じる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は他の形態を採ることも当然可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0059】
(1) クラッチの自動接続時、マスタシリンダ及び倍力装置からの空圧排出速度を同等にバランスさせることができ、その速度合わせが不要となる。
【0060】
(2) クラッチの接続速度の調整幅を拡大することができる。
【0061】
(3) マスタシリンダからの空圧排出を倍力装置より常に遅らせることができ、油圧通路内の負圧化を完全に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクラッチ断続装置を示す全体構成図である。
【図2】倍力装置を示す縦断面図である。
【図3】マスタシリンダを示す縦断面図である。
【図4】本発明に係るクラッチ断続装置の別の形態を示す全体構成図である。
【符号の説明】
1 クラッチ断続装置
7 倍力装置
7a 制御バルブ部(油圧作動弁)
8 クラッチ
10 マスタシリンダ
42 空圧配管(空圧合流路)
43 チェック弁
72 コントローラ
79 電磁切替弁(第1電磁弁)
81 電磁切替弁(第2電磁弁)
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチ断続装置に係り、特に車両のクラッチの自動化を図り得るクラッチ断続装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、バスやトラック等の大型車両においても変速自動化の要請が高まっている。これらの車両は一般に車重や積載量が大きく、クラッチ形式として乗用車に採用されるような流体式トルクコンバータを用いると損失大となり燃費の面で不利であるため、このような大型車両においては、特に摩擦クラッチを自動操作により断続し、その出力を変速機に送り、この変速機をやはり自動操作するようにして、変速自動化の達成を図っている。このクラッチの自動操作を行うクラッチ断続装置としては、空圧の給排により摩擦クラッチの断続操作を行う倍力装置(クラッチブースタ)を備えたものが一般的である。
【0003】
一方、車両発進時等においてはクラッチの操作がデリケートとなり、その操作を自動制御で行おうとすると装置が複雑、高価となってしまうため、この場合にのみクラッチペダルを用いたマニュアル(手動)操作を行えるようにして、装置のシンプル化、低価格化を狙ったものがある(所謂セミオートクラッチシステム)。この場合、クラッチペダルの操作によりマスタシリンダから油圧を給排し、この油圧の給排により上記倍力装置への空圧の給排を行うようにしている。
【0004】
ところで、発進時を除く自動変速時、倍力装置にはクラッチペダルを操作せずとも空圧が給排される。また倍力装置は、空圧が供給されると内部のパワーピストンを押動させてクラッチを分断方向に操作するようになっている。
【0005】
そして、従来の構成において、マスタシリンダからの油圧を送る通路は、上記パワーピストンの移動に応じて容積変化する倍力装置の油圧シリンダに連通しており、クラッチの自動分断制御時、即ちクラッチペダルを操作しないでパワーピストンによりクラッチ分断制御を行う場合、パワーピストンの押動により油圧ピストン(ハイドロリックピストン)が移動すると、油圧通路内に負圧が発生して気泡が混入し、クラッチの正確な操作が困難となる虞がある。
【0006】
このような負圧発生を防止するため、実公平4−8023号公報等においては、倍力装置の油圧出力部にマニュアル操作と自動操作とのキャンセル機構を設け、自動操作時における油圧通路内の容積変化を防止している。しかし、このような倍力装置の構造変更は、シール等の完全を期すためにも小スペースで複雑な構造を採用せざるを得ず、これによってコストアップを招き、信頼性、耐久性にも問題が生じる。
【0007】
そこで、本出願人は、倍力装置の構造変更は行わず、マスタシリンダをクラッチペダルだけでなく別の駆動手段(空圧又は油圧)によっても作動させるようにし、上記問題点を解決することができるクラッチ断続装置の提案を先に行った。
【0008】
その一例として、特願平7−205859号で提案したものを述べれば、クラッチの自動分断時にマスタシリンダに空圧を供給し、その分断操作に連動して空圧でピストンを押すことによって、マスタシリンダから油圧を発生させ、油圧通路内の負圧化を防止している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特願平7−205859号においては、クラッチの自動接続時に、倍力装置及びマスタシリンダからの空圧排出を個々に独立に行うようにしている。
【0010】
そして、油圧通路内の負圧化を防止するためには、それら空圧の排出速度を調整し、マスタシリンダからの空圧排出を倍力装置からの空圧排出より常に遅らせなければならない。即ち、これが逆であると、マスタシリンダのピストンが早く戻り過ぎて負圧が発生すると共に、リザーバタンクより作動油が吸引されてしまうからである。
【0011】
また、排出される空気量が、倍力装置側よりもマスタシリンダ側の方が遥かに少ないため、排出速度の調整は、倍力装置側をマスタシリンダ側に合わせなければならない。
【0012】
そこで具体的には、マスタシリンダ側の空圧の排出通路に小径の絞りを設け、排出速度が緩慢になるよう調整することになる。
【0013】
そして先ず、リザーバタンクからの作動油吸引を防止するためには、絞り径を0.5mm 以下の小径としなければならない。
【0014】
しかし、絞り径を0.5mm としても、マスタシリンダのピストンの戻り速度は十分に低速とならず、0.5mm 以下の値で最適な排出速度に調整するには、絞り径の選定幅、排出速度の調整幅が非常に狭く、調整が極めて困難であった。そして、結果的にクラッチの接続速度を満足に調整することができず、且つ接続速度を十分に低速にすることができなかった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るクラッチ断続装置は、空圧の供給・排出によりクラッチを分断・接続する倍力装置と、コントローラからの制御信号に基づき、前記倍力装置への空圧の供給・排出を制御して前記クラッチの自動断続を実行する第1電磁弁と、クラッチペダル操作と連動するマスタシリンダからの信号油圧に基づき、前記倍力装置への空圧の供給・排出を制御して前記クラッチのマニュアル断続を実行する油圧作動弁と、前記コントローラからの制御信号に基づき、前記クラッチの自動分断時に前記マスタシリンダに空圧を供給し、自動接続時にその空圧を排出する第2電磁弁と、前記クラッチの自動接続時に、前記マスタシリンダから排出される空圧を、前記倍力装置から排出される空圧に合流させるための空圧合流路とを備えたものである。
【0016】
この構成によれば、クラッチの自動接続時に、マスタシリンダから排出される空圧が、空圧合流路を通じて倍力装置から排出される空圧に合流される。これにより、互いの空圧が同等となり、排出速度合わせが不要となって個々の排出速度の調整が必要なくなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、本発明に係るクラッチ断続装置を示す全体構成図で、クラッチ断続装置1は空圧を供給するための空圧供給手段2を有する。空圧供給手段2は、エンジン(図示せず)に駆動されて空圧(空気圧)を発生するコンプレッサ3と、コンプレッサ3からの空気を乾燥させるエアドライヤ4と、エアドライヤ4から送られてきた空気を貯留するエアタンク5と、エアタンク5の入口側に設けられた逆止弁6とから主に構成される。この空圧供給手段2からの空圧は倍力装置(クラッチブースタ)7に送られ、倍力装置7はその空圧の供給により摩擦クラッチ8を分断側(右側)Aに操作するようになっている。また倍力装置7は、詳しくは後述するが、マスタシリンダ10から油圧も供給されるようになっている。
【0019】
図2は倍力装置7の詳細を示す縦断面図である。なおこの倍力装置7は従来同様に構成される。図示するように、倍力装置7は、そのボディ11に接続されたシリンダシェル12を有し、このシリンダシェル12内にピストンプレート(パワーピストン、倍力ピストン)13が、リターンスプリング14により空圧導入側(図中左側)に付勢されて設けられている。シリンダシェル12の一端には空圧ニップル15が取り付けられ、この空圧ニップル15が空圧導入口を形成してエアタンク5からの空圧を空圧配管35(図1)から導入する。空圧が導入されるとピストンプレート13が右側に押動され、こうなるとピストンプレート13はピストンロッド16、ハイドロリックピストン17、さらにはプッシュロッド18を押動してクラッチレバー8a(図1)を分断側Aに押し、クラッチ8を分断する。
【0020】
一方、ボディ11内部には油圧路20が形成され、油圧路20の油圧導入口は油圧ニップル19によって形成されている。油圧ニップル19には油圧配管54の一端が接続される。油圧路20は、ボディフランジ部11aの一端(下端)側に形成された孔21、ハイドロリックピストン17を収容するハイドロリックシリンダ(油圧シリンダ)22(ボディシリンダ部11bに形成される)、及びハイドロリックシリンダ22に小孔23aを介して連通する他端(上端)側の制御孔23によって主に形成される。油圧ニップル19から油圧が導入されると、その油圧は上記通路を通って制御孔23に到達し、制御ピストン24を制御シリンダ25に沿って右側に押動する。このようにボディフランジ部11aの上端側には、詳しくは後述するが、倍力装置7への空圧供給を制御するための制御バルブ部7a(油圧作動弁)が形成される。
【0021】
制御バルブ部7aは右側に突出する制御ボディ部26によって区画される。制御ボディ部26には、前述の制御シリンダ25に同軸に連通するコントロール室27及び空圧ポート28が形成される。コントロール室27には制御ピストン24のコントロール部29が、空圧ポート28にはポペットバルブ30がそれぞれ摺動可能に収容される。空圧ポート28にはニップル31が取り付けられ、このニップル31には空圧配管67(図1)が接続されて空圧が常に供給されている。
【0022】
通常、ポペットバルブ30は、空圧とポペットスプリング32とにより左側に付勢されていて、コントロール室27及び空圧ポート28を連通する連通ポート33を閉じている。よってニップル31からの空圧はポペットバルブ30の位置で遮断される。しかしながら、油圧配管54から油圧が供給されると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を右側に押動して連通ポート33を開く。こうなると、連通ポート33からコントロール室27に侵入した空圧は、詳しくは後述するが、コントロール室27に連通する空圧配管34,35(図1)を通じて前述のシリンダシェル12に入り、ピストンプレート13の左側の空圧作用面13aに作用してこれを右側に押動し、クラッチ8を分断側に操作する。
【0023】
ここで、倍力装置7は、供給された油圧の大きさに応じてクラッチ8を所定ストロークだけ操作することができる。即ち、例えば比較的小さい値だけ油圧が増加された場合、前述の空圧作用によりピストンプレート13が右側に押動され、これに連動してハイドロリックピストン17が所定ストロークだけ右側に押動される。すると、油圧路20の容積が増し制御孔23内の油圧が下がり、こうなると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を押し付けつつ、ポペットバルブ30が連通ポート33を閉鎖するバランス状態が生じ、これによりコントロール室27、空圧配管34,35、及びピストンプレート13の空圧作用面13a側となる空圧導入室12bにて所定の空圧が保持され、ピストンプレート13を所定ストローク位置に保持し、クラッチ8を所定の半クラッチ位置に保持する。
【0024】
また、油圧が完全に抜かれると、制御孔23内の油圧がさらに下がって、図示の如く制御ピストン24が最も左側の原位置に戻される。こうなると、コントロール部29がポペットバルブ30から離れ、コントロール部29の内部に設けられた開放ポート36がコントロール室27等と連通するようになる。すると、保持されていた空圧は、大部分が開放ポート36から大気圧ポート39を通じ空圧導入室12bと反対側の大気室12aに導入され、これによりピストンプレート13を右側に押していた空圧が、今度はリターンスプリング14と協同してそれを反対側の左側に押し、クラッチ8を接続側(左側)Bに操作する。そして残りの空圧は、ブリーザ37を通じ大気開放される。
【0025】
なお、倍力装置7において、38はシリンダ室12aとハイドロリックシリンダ22とを油密に仕切るシール部材、40は大気圧ポート、41は緩められたときに作動油のエア抜きを行えるブリーダである。
【0026】
このように、制御バルブ部7aは、クラッチペダル9の操作と連動するマスタシリンダ10からの信号油圧に基づき、倍力装置7への空圧の供給・排出を制御し、クラッチ8のマニュアル断続を実行する。
【0027】
図3はマスタシリンダ10の詳細を示す縦断面図である。図示するように、マスタシリンダ10は、長手方向に延出されたシリンダボディ45を有する。シリンダボディ45はその内部に所定径のシリンダボア46を有し、シリンダボア46には特に二つのピストン47,48が独立して摺動可能に装入される。シリンダボア46の一端(左端)開口部には、クラッチペダル9の踏み込み或いは戻し操作に合わせて挿抜するプッシュロッド49の先端部が挿入され、さらにその開口部はダストブーツ50で閉止される。シリンダボア46内の他端側(右側)には、第1及び第2ピストン47,48をピストンカップ51を介して一端側に付勢するリターンスプリング52が設けられる。シリンダボア46の他端は、シリンダボディ45に形成された油圧供給ポート53に連通され、この油圧供給ポート53には図1に示す油圧配管54が接続される。53aはチェックバルブである。
【0028】
図示状態にあっては、クラッチペダル9の踏み込みがなされておらず第1及び第2ピストン47,48は一端側の原位置に位置されている。特にこのときのピストン47,48間に位置されて、シリンダボディ45には空圧導入ポート55が設けられている。このマスタシリンダ10においては、クラッチペダル9によるマニュアル操作のときは両方のピストン47,48が押動されて油圧を供給する。一方、自動操作による場合は、詳しくは後述するが、空圧導入ポート55から空圧が供給されて第2ピストン48のみが適宜押動されるようになっている。なおこのとき第1ピストン47の移動はスナップリング56によって規制される。またこのとき、第1ピストン47が移動しないのでクラッチペダル9は移動しない。57は、作動油のリザーバタンク58(図1)からの給油配管59に接続する給油ニップル、60及び61は、ピストンカップ51の右側及び第2ピストン48の位置にそれぞれ給油を行う小径及び大径ポートを示す。
【0029】
図1に示すように、マスタシリンダ10の空圧導入ポート55とエアタンク5とは空圧配管62で接続され、この空圧配管62には2つの分岐63,65,が設けられる。分岐63には空圧配管67が接続され、空圧配管67の他端は倍力装置7のニップル31に接続される。分岐65には空圧配管68が接続され、この空圧配管68の他端は、空圧配管34及び35に電磁切替弁79(第1電磁弁)を介して接続される。
【0030】
電磁切替弁79は、コンピュータ内蔵のコントローラ72からのON/OFF信号(制御信号)に基づいて切替制御され、ONのときには空圧配管68及び35を接続して配管34を閉とし、OFF のときには、空圧配管34及び35を接続して配管68を閉とする。このように、電磁切替弁79は三方弁の如く機能する。
【0031】
一方、空圧配管34の途中にも、コントローラ72からのON/OFF信号により切替制御される電磁切替弁78が設けられる。この電磁切替弁78は前記と異なり、単純にONのときには空圧配管34を閉、OFF のときにはそれを開とするのみである。そしてまた、空圧配管34には、電磁切替弁78をバイパスする空圧配管64が設けられ、この空圧配管64には流路を絞るための絞り部66が形成される。
【0032】
ここで、詳しくは後述するが、エアタンク5から分岐65、電磁切替弁79、及び倍力装置7の空圧ニップル15を順に結ぶ空圧配管62,68,35は、クラッチ8の自動分断操作時に、倍力装置7に空圧供給を行うための第1の空圧供給路aを形成する。
【0033】
またエアタンク5から分岐63、制御バルブ部7a、電磁切替弁79、及び倍力装置7の空圧ニップル15までを順に結ぶ空圧配管62,67,34(64を含む),35は、クラッチ8のマニュアル分断操作時に、倍力装置7に空圧供給を行うための第2の空圧供給路bを形成する。
【0034】
そして、空圧ニップル15、電磁切替弁79、及び制御バルブ部7aを順に結ぶ空圧配管35,34(64を含む)は、クラッチ8の自動及びマニュアル接続操作時に、倍力装置7の空圧導入室12bから排出される空圧を反対側の大気室12aに導くための空圧排出路cを形成する。
【0035】
一方、エアタンク5とマスタシリンダ10とを結ぶ空圧配管62は、マスタシリンダ10の第2ピストン48の背面側に空圧を供給するための空圧供給路dを形成する。この配管62にも電磁切替弁81が設けられ、電磁切替弁81は、コントローラ72からのON/OFF信号により切替制御され、ONのときにはエアタンク5からの空圧をマスタシリンダ10に供給し、OFF のときには空圧供給を停止する一方、マスタシリンダ10から空圧を排出させて空圧配管42(空圧合流路)に送るようになっている。
【0036】
ここで空圧配管42は、空圧配管34の電磁切替弁79,78間の位置で且つ空圧配管64の分岐位置より電磁切替弁79側(上流側)の位置に接続され、詳しくは後述するが、クラッチ8の自動接続操作時に、マスタシリンダ10から排出される空圧(以下マスタシリンダ排圧という)を、倍力装置7から排出される空圧(以下倍力装置排圧という)に合流させるようになっている。
【0037】
そして、空圧配管42の途中にはチェック弁43が設けられ、チェック弁43は、内部の弁体をスプリングで電磁切替弁81側に付勢する構成となっている。これにより、チェック弁43は、マスタシリンダ排圧が倍力装置排圧より大きいときにのみ開放し、マスタシリンダ10側から倍力装置7側への空圧の移動を許容する。逆に言えば、マスタシリンダ排圧が、倍力装置排圧以下のときには常に閉止して空圧の移動を規制する。
【0038】
かかるクラッチ断続装置1は、これとは別に設けられた変速機71と連動されるようになっている。変速機71は自動変速を行う構成がなされており、即ち、手動シフトレバーで変速ポジションが選択されると、電気スイッチによる変速信号がコントローラ72に送られ、図示しないアクチュエータが動作されて、運転手の操作に代わって実質的な変速操作を行うようになっている。
【0039】
また、コントローラ72には、アクセルペダル75に設けられたストロークセンサ82及びアイドルスイッチ83、変速機71のシフトレバー付近に設けられた非常スイッチ84、変速機71の出力軸付近に設けられた車速センサ85、エアタンク5に設けられた圧力スイッチ86、クラッチペダル9に設けられたペダルスイッチ87及びクラッチペダルストロークセンサ89、及びクラッチ8に設けられたクラッチストロークセンサ88等が接続される。
【0040】
次に、上記装置の動作説明を行う。
【0041】
先ず、自動変速の概要に含めてクラッチ8の自動断続操作について説明する。運転手がシフト操作を行うと、変速信号がコントローラ72に入力され、これに伴ってコントローラ72は電磁切替弁79をONとする。このとき電磁切替弁78はOFF のままである。こうなると、第1の空圧供給路aを通じて、倍力装置7の空圧導入室12bには比較的速い速度で(短時間で)空圧が供給され、これによりクラッチ8は分断操作される。この後、図示しないアクチュエータにより変速機71の変速操作を完了し、詳しくは後述するが、電磁切替弁79をOFF 、電磁切替弁78をON又はOFF として、空圧導入室12bの空圧を大気室12aに導入してクラッチ8の接続操作を行い、変速を完了する。
【0042】
ここで図2を参照して、特にクラッチ8の自動分断操作時、ハイドロリックピストン17が右側に移動することで、作動油が充填されているハイドロリックシリンダ22の容積が増し、これにより油圧路20及び油圧配管54内等(合わせて油圧通路内という)に負圧が生じて、作動油に気泡が混入する虞がある。
【0043】
そこで本装置1では、クラッチ8の自動分断操作時に、電磁切替弁81をONとしてマスタシリンダ10に空圧を供給し、第2ピストン48を適宜押動することで油圧通路内を適当に加圧するようにしている。こうすると、油圧通路内の負圧化を未然に防止することができる。
【0044】
他方、クラッチ8の自動接続操作時には、電磁切替弁79がOFF とされ、電磁切替弁78が例えばOFF のままとされる。こうなると、倍力装置7の空圧導入室12bからは空圧が排出されるようになり、その空圧は、空圧配管35から空圧配管34に至り、大部分がその空圧配管34を通じ、少量が空圧配管64を通じるようになる。そしてその後、制御バルブ部7aのコントロール室27、開放ポート36、大気圧ポート39を通じて大気室12aに導入される。これによってピストンプレート13は、リターンスプリング14及びクラッチ8のリターンスプリング(図示せず)の付勢力に加え、空圧の作用で比較的早い速度で元の位置に復帰し、クラッチ8を比較的高速で接続操作するようになる。
【0045】
一方このとき、電磁切替弁78をONとした場合は、その位置で空圧配管34が閉じられるため空圧は全量が絞り部66を通ずるようになる。こうなると、空圧の移動は比較的低速となって、クラッチ8の接続速度も低速となる。このように、電磁切替弁78のON/OFFを車両の運転状態等に応じて切替えることによって、クラッチ8の接続速度を最適に選び、クラッチ接続ショックの低減等を図ることができる。
【0046】
ところで、クラッチ8の自動接続操作時には、倍力装置7のハイドロリックピストン17の復帰移動に伴い、油圧通路内は順次増圧されるから、その復帰移動に合わせてマスタシリンダ10から空圧を排出する必要がある。一方、この排出の過程においても油圧通路内を加圧する必要があるから、結局、倍力装置7からの空圧の排出速度と、マスタシリンダ10からの空圧の排出速度とを合わせる必要がある。
【0047】
そこで、本装置1においては、空圧配管42で、マスタシリンダ排圧を倍力装置排圧に合流させ、それらの圧力を同等にし、空圧の排出速度(降下速度)を同等にするようにしている。これにより、互いの排出速度合わせ(バランス取り)が不要となり、単純に合流後の通路に適当な絞りを与えれば、クラッチ8の接続速度を高速側から低速側まで幅広く調整することができる。なおこの絞りを与えるのが、空圧配管64に設けられた絞り部66である。
【0048】
加えて、本装置1においてはチェック弁43があるため、マスタシリンダ排圧を倍力装置排圧より常に高い値に保持でき、マスタシリンダ10側の排出速度を倍力装置7側の排出速度より常に遅くできる。これによってマスタシリンダ10の第2ピストン48をクラッチ接続中常に加圧状態にできて、油圧通路内の負圧化及びリザーバタンク58からの作動油吸引を完全に防止できる。
【0049】
次に、クラッチ8のマニュアル分断操作は以下のようにして行われる。クラッチペダル9を踏み込むと、マスタシリンダ10からは油圧が供給され、この油圧は、前述したように、制御バルブ部7aを作動させて空圧配管67及び34を接続ないし連通させる。ここでコントローラ72は、ペダルスイッチ87からの信号入力によりマニュアル操作であることを判断し、電磁切替弁79,78をいずれもOFF とする。こうなると、制御バルブ部7aからの空圧は大部分が配管34を通じて配管35に至り、倍力装置7の空圧導入室12bに移動する。そして、ピストンプレート13を押動し、クラッチ8を分断させる。このとき空圧は絞り部66を殆ど経由せず、クラッチ8はクラッチペダル9の操作に応じて適宜分断されることになる。なお、このときにはマスタシリンダ10から油圧が積極的に供給されているため、マスタシリンダ10に空圧を供給する必要はなく、電磁切替弁81はOFF のままである。
【0050】
他方、クラッチ8のマニュアル接続操作時、クラッチペダル9の戻し操作により油圧が抜かれると、前述の制御バルブ部7aの作動により空圧配管34と大気圧ポート39とが連通されるようになる。そしてコントローラ72は、マニュアル操作であるため電磁切替弁79,78をいずれもOFF のままとする。こうなれば前記同様、空圧導入室12bの空圧が大気室12aに導入されてクラッチ8の接続が達成される。
【0051】
なお、ここで分かるように、制御バルブ部7aは、マスタシリンダ10からの油圧信号(パイロット油圧)を受けて、空圧配管34を空圧配管67或いは大気圧ポート39のいずれか一方に切替える三方弁の如く機能する。またここで、クラッチ8の接続速度をクラッチペダル9の戻し操作で直接コントロールできるように、電磁切替弁78はOFF となっている。そして前記同様の理由で、電磁切替弁81はOFF のままである。
【0052】
次に、本発明に係る別の形態について説明する。なお、前記形態と同一の構成については図中同一符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図4に示すように、この形態にあっては、空圧配管34がブリーザ37に接続され、代わって制御バルブ部7aのコントロール室27には空圧配管44が接続される。空圧配管35,44は機械式三方弁たるシャトル弁69に接続され、シャトル弁69と倍力装置7の空圧ニップル15とは空圧配管70で接続されている。シャトル弁69は、空圧配管35,44の圧力差を利用して内部の弁体を移動させ、そのうち高圧となる一方の配管35又は44のみを配管70に接続する。
【0054】
従って、クラッチ8の自動分断操作時には、配管35,70が接続されて空圧供給がなされ、マニュアル分断操作時には、配管44,70が接続されて空圧供給がなされることになる。
【0055】
また、クラッチ8の自動及びマニュアル接続操作時、空圧配管34を通じ送られてきた排出空気は、ブリーザ37から一部大気開放されるものの、その排気口が小さいため大部分は倍力装置7の大気室12aに送られることになる。
【0056】
そしてここでも、空圧配管42及びチェック弁43があるため、排出された空圧の合流とマスタシリンダ排圧の遅れにより前記同様の作用効果が生じる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は他の形態を採ることも当然可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0059】
(1) クラッチの自動接続時、マスタシリンダ及び倍力装置からの空圧排出速度を同等にバランスさせることができ、その速度合わせが不要となる。
【0060】
(2) クラッチの接続速度の調整幅を拡大することができる。
【0061】
(3) マスタシリンダからの空圧排出を倍力装置より常に遅らせることができ、油圧通路内の負圧化を完全に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクラッチ断続装置を示す全体構成図である。
【図2】倍力装置を示す縦断面図である。
【図3】マスタシリンダを示す縦断面図である。
【図4】本発明に係るクラッチ断続装置の別の形態を示す全体構成図である。
【符号の説明】
1 クラッチ断続装置
7 倍力装置
7a 制御バルブ部(油圧作動弁)
8 クラッチ
10 マスタシリンダ
42 空圧配管(空圧合流路)
43 チェック弁
72 コントローラ
79 電磁切替弁(第1電磁弁)
81 電磁切替弁(第2電磁弁)
Claims (2)
- 空圧の供給・排出によりクラッチを分断・接続する倍力装置と、コントローラからの制御信号に基づき、前記倍力装置への空圧の供給・排出を制御して前記クラッチの自動断続を実行する第1電磁弁と、クラッチペダル操作と連動するマスタシリンダからの信号油圧に基づき、前記倍力装置への空圧の供給・排出を制御して前記クラッチのマニュアル断続を実行する油圧作動弁と、前記コントローラからの制御信号に基づき、前記クラッチの自動分断時に前記マスタシリンダに空圧を供給し、自動接続時にその空圧を排出する第2電磁弁と、前記クラッチの自動接続時に、前記マスタシリンダから排出される空圧を、前記倍力装置から排出される空圧に合流させるための空圧合流路とを備えたことを特徴とするクラッチ断続装置。
- 前記空圧合流路に、前記マスタシリンダから排出される空圧が前記倍力装置から排出される空圧より大きいときに開放するチェック弁が設けられた請求項1記載のクラッチ断続装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP33702395A JP3567573B2 (ja) | 1995-12-25 | 1995-12-25 | クラッチ断続装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP33702395A JP3567573B2 (ja) | 1995-12-25 | 1995-12-25 | クラッチ断続装置 |
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JPH09177831A JPH09177831A (ja) | 1997-07-11 |
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Family Applications (1)
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JP33702395A Expired - Fee Related JP3567573B2 (ja) | 1995-12-25 | 1995-12-25 | クラッチ断続装置 |
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JP (1) | JP3567573B2 (ja) |
-
1995
- 1995-12-25 JP JP33702395A patent/JP3567573B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09177831A (ja) | 1997-07-11 |
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