JP3567554B2 - クラッチ断続装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチ断続装置に係り、特に車両のクラッチの自動化を図り得るクラッチ断続装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、バスやトラック等の大型車両においても変速自動化の要請が高まっている。これらの車両は一般に車重や積載量が大きく、クラッチ形式として乗用車に採用されるような流体式トルクコンバータを用いると損失大となり燃費の面で不利であるため、このような大型車両においては、特に摩擦クラッチを自動操作により断続し、その出力を変速機に送り、この変速機をやはり自動操作するようにして、変速自動化の達成を図っている。このクラッチの自動操作を行うクラッチ断続装置としては、空圧の給排により摩擦クラッチの断続操作を行う倍力装置(クラッチブースタ)を備えたものが一般的である。
【0003】
一方、車両発進時等においてはクラッチの操作がデリケートとなり、その操作を自動制御で行おうとすると装置が複雑、高価となってしまうため、この場合にのみクラッチペダルを用いたマニュアル(手動)操作を行えるようにして、装置のシンプル化、低価格化を狙ったものがある(所謂セミオートクラッチシステム)。この場合、クラッチペダルの操作によりマスタシリンダから油圧を給排し、この油圧の給排により上記倍力装置への空圧の給排を行うようにしている。
【0004】
ところで、発進時を除く自動変速時、倍力装置にはクラッチペダルを操作せずとも空圧が給排される。また倍力装置は、空圧が供給されると内部のパワーピストンを押動させてクラッチを分断方向に操作するようになっている。
【0005】
そして、従来の構成において、マスタシリンダからの油圧を送る通路は、上記パワーピストンの移動に応じて容積変化する倍力装置の油圧シリンダに連通しており、クラッチの自動分断制御時、即ちクラッチペダルを操作しないでパワーピストンによりクラッチ分断制御を行う場合、パワーピストンの押動により油圧ピストン(ハイドロリックピストン)が移動すると、油圧通路内に負圧が発生して気泡が混入し、クラッチの正確な操作が困難となる虞がある。
【0006】
このような負圧発生を防止するため、実公平4−8023号公報等においては、倍力装置の油圧出力部にマニュアル操作と自動操作とのキャンセル機構を設け、自動操作時における油圧通路内の容積変化を防止している。しかし、このような倍力装置の構造変更は、シール等の完全を期すためにも小スペースで複雑な構造を採用せざるを得ず、これによってコストアップを招き、信頼性、耐久性にも問題が生じる。
【0007】
そこで、本出願人は、倍力装置の構造変更は行わず、マスタシリンダをクラッチペダルだけでなく別の駆動手段(空圧又は油圧)によっても作動させるようにし、上記問題点を解決することができるクラッチ断続装置の提案を先に行った。(特願平7−176353号等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記問題点を解決するため、クラッチペダルに連動する通常のマスタシリンダとは別に、空圧の導入により油圧供給を行うエアマスタシリンダを設け、このエアマスタシリンダへの空圧導入を制御することにより、クラッチの自動断続制御を行うことも考えられる。
【0009】
そして、マスタシリンダ及びエアマスタシリンダからの油圧供給路の切替えに実公平4−8023号公報等にあるような機械式三方弁を用いれば、簡単な構成で自動切替えを達成することができる。
【0010】
しかし、このような構成によると、両マスタシリンダが相互干渉するような場合、即ち、エアマスタシリンダによるクラッチの自動分断時に、クラッチペダルを踏み込んでマスタシリンダを作動させ、マニュアル操作に移行するような場合、三方弁手前の油圧供給路内の加圧分及び三方弁の弁体の移動分のみクラッチペダルの踏み込みは許容されるが、それが通常の踏み込みストロークより小さいため、運転手に違和感を与える問題がある。また、この少ない踏み込み量でもクラッチは分断されているが、逆にその少ない戻し操作でクラッチを接続するため、これによっても違和感が生じる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、空圧の供給によりクラッチを分断操作する倍力装置と、この倍力装置への空圧供給路を開閉する油圧作動弁と、クラッチペダル操作に連動して前記油圧作動弁に油圧を供給するマスタシリンダと、コントローラによる空圧供給制御にて空圧を導入し、前記油圧作動弁に油圧を供給するエアマスタシリンダと、前記マスタシリンダ及び前記エアマスタシリンダからの油圧差に基づいて弁体を移動させ、前記マスタシリンダから前記油圧作動弁に至る第1の油圧供給路及び前記エアマスタシリンダから前記油圧作動弁に至る第2の油圧供給路を切り替える三方弁と、前記マスタシリンダから前記油圧作動弁に至る前記第1の油圧供給路に設けられ、前記油圧作動弁を開動させる油圧を越える油圧で開放し、前記第1の油圧供給路から作動油を排出するリリーフ弁とを備えたものである。
【0012】
エアマスタシリンダによるクラッチの自動分断時にマニュアル操作に移行する場合、エアマスタシリンダ側の第2の油圧供給路内が既に高圧となっているため、クラッチペダルを踏んだとしてもその踏み込みは途中で規制される。一方、その踏み込みと同時にエアマスタシリンダをOFF 制御して、空圧を排出させ、油圧供給を停止させる。こうすると三方弁が油圧供給路を切り替え、これによってマスタシリンダからの油圧が高圧を保持して、マニュアル分断への移行が達成される。このとき、油圧に抗じてクラッチペダルを若干強く踏み込むことで、マスタシリンダからより高圧の油圧が発生し、これによってリリーフ弁が開き作動油が排出されて、通常のクラッチペダルストロークを確保することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1は、本発明に係るクラッチ断続装置を示す全体構成図で、クラッチ断続装置1は空圧を供給するための空圧供給手段2を有する。空圧供給手段2は、エンジン(図示せず)に駆動されて空圧(空気圧)を発生するコンプレッサ3と、コンプレッサ3からの空気を乾燥させるエアドライヤ4と、エアドライヤ4から送られてきた空気を貯留するエアタンク5と、エアタンク5の入口側に設けられた逆止弁6とから主に構成される。この空圧供給手段2からの空圧は倍力装置(クラッチブースタ)7に送られ、倍力装置7はその空圧の供給により摩擦クラッチ8を分断側(右側)Aに操作するようになっている。また倍力装置7は、詳しくは後述するが、マスタシリンダ10或いはエアマスタシリンダ42から油圧も供給されるようになっている。
【0015】
図2は倍力装置7の詳細を示す縦断面図である。なおこの倍力装置7は従来同様に構成される。図示するように、倍力装置7は、そのボディ11に接続されたシリンダシェル12を有し、このシリンダシェル12内にピストンプレート(パワーピストン、倍力ピストン)13が、リターンスプリング14により空圧導入側(図中左側)に付勢されて設けられている。シリンダシェル12の一端には空圧ニップル15が取り付けられ、この空圧ニップル15が空圧導入口を形成してエアタンク5からの空圧を空圧配管34(図1)から導入する。空圧が導入されるとピストンプレート13が右側に押動され、こうなるとピストンプレート13はピストンロッド16、ハイドロリックピストン17、さらにはプッシュロッド18を押動してクラッチレバー8a(図1)を分断側Aに押し、クラッチ8を分断する。
【0016】
一方、ボディ11内部には油圧路20が形成され、油圧路20の油圧導入口は油圧ニップル19によって形成されている。油圧ニップル19には油圧配管54の一端が接続される。油圧路20は、ボディフランジ部11aの一端(下端)側に形成された孔21、ハイドロリックピストン17を収容するハイドロリックシリンダ(油圧シリンダ)22(ボディシリンダ部11bに形成される)、及びハイドロリックシリンダ22に小孔23aを介して連通する他端(上端)側の制御孔23によって主に形成される。油圧ニップル19から油圧が導入されると、その油圧は上記通路を通って制御孔23に到達し、制御ピストン24を制御シリンダ25に沿って右側に押動する。このようにボディフランジ部11aの上端側には、詳しくは後述するが、倍力装置7への空圧供給を制御するための制御バルブ部7a(油圧作動弁)が形成される。
【0017】
制御バルブ部7aは右側に突出する制御ボディ部26によって区画される。制御ボディ部26には、前述の制御シリンダ25に同軸に連通するコントロール室27及び空圧ポート28が形成される。コントロール室27には制御ピストン24のコントロール部29が、空圧ポート28にはポペットバルブ30がそれぞれ摺動可能に収容される。空圧ポート28にはニップル31が取り付けられ、このニップル31には空圧配管67(図1)が接続されて空圧が常に供給されている。
【0018】
通常、ポペットバルブ30は、空圧とポペットスプリング32とにより左側に付勢されていて、コントロール室27及び空圧ポート28を連通する連通ポート33を閉じている。よってニップル31からの空圧はポペットバルブ30の位置で遮断される。しかしながら、油圧配管54から油圧が供給されると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を右側に押動して連通ポート33を開く(つまり制御バルブ部7aが開動される)。こうなると、連通ポート33からコントロール室27に侵入した空圧は、コントロール室27に連通する空圧配管34(仮想線で示す)を通じて前述のシリンダシェル12に入り、ピストンプレート13の左側の空圧作用面13aに作用してこれを右側に押動し、クラッチ8を分断側に操作する。
【0019】
ここで、倍力装置7は、供給された油圧の大きさに応じてクラッチ8を所定ストロークだけ操作することができる。即ち、例えば比較的小さい値だけ油圧が増加された場合、前述の空圧作用によりピストンプレート13が右側に押動され、これに連動してハイドロリックピストン17が所定ストロークだけ右側に押動される。すると、油圧路20の容積が増し制御孔23内の油圧が下がり、こうなると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を押し付けつつ、ポペットバルブ30が連通ポート33を閉鎖するバランス状態が生じ、これによりコントロール室27、空圧配管34、及びピストンプレート13の空圧作用面13a側となる空圧導入室12bにて所定の空圧が保持され、ピストンプレート13を所定ストローク位置に保持し、クラッチ8を所定の半クラッチ位置に保持する。
【0020】
また、油圧が完全に抜かれると、制御孔23内の油圧がさらに下がって、図示の如く制御ピストン24が最も左側の原位置に戻される。こうなると、ポペットバルブ30も左側に移動して連通ポート33を閉じ(つまり制御バルブ部7aが閉動され)、コントロール部29がポペットバルブ30から離れ、コントロール部29の内部に設けられた開放ポート36がコントロール室27等と連通するようになる。すると、保持されていた空圧は、大部分が開放ポート36から大気圧ポート39を通じ空圧導入室12bと反対側の大気室12aに導入され、これによりピストンプレート13を右側に押していた空圧が、今度はリターンスプリング14と協同してそれを反対側の左側に押し、クラッチ8を接続側(左側)Bに操作する。そして残りの空圧は、ブリーザ37を通じ大気開放される。
【0021】
なお、倍力装置7において、38はシリンダ室12aとハイドロリックシリンダ22とを油密に仕切るシール部材、40は大気圧ポート、41は緩められたときに作動油のエア抜きを行えるブリーダである。
【0022】
図1に示すように、油圧配管54は、三方弁たるシャトル弁或いはダブルチェックバルブ(以下D.C.V という)69に接続され、D.C.V 69からはさらに二本の油圧配管43,44が延出されて、一方43がマスタシリンダ10に、他方44がエアマスタシリンダ42に接続される。特にマスタシリンダ10と倍力装置7とを結ぶ油圧配管43,54は第1の油圧供給路を構成し、エアマスタシリンダ42と倍力装置7とを結ぶ油圧配管44,54は第2の油圧供給路を構成する。そしてこれら油圧供給路は、D.C.V 69によって適宜切替えられることになる。
【0023】
マスタシリンダ10は通常の構造のもので、即ち、運転手がクラッチペダル9を操作すると、プッシュロッド49を介して内部のピストンが移動し、これにより油圧を油圧供給部53から給排するものである。
【0024】
図3は、エアマスタシリンダ42の構成を示す縦断面図である。これは先の倍力装置7と同様に、空圧配管62から送られてきた空圧で内部の空圧ピストン45を押動させる。そして、これによりロッド48を介して油圧ピストン46を押動し、油圧室50の作動油を圧縮して油圧を油圧配管44に供給する。空圧ピストン45は油圧ピストン46より大径のため、これにより倍力効果が働く。空圧ピストン45はリターンスプリング47で戻り側に付勢され、空圧ピストン45の押動側(右側)室内はエキゾーストポート51により外部と呼吸される。
【0025】
ロッド48と油圧ピストン46との間にはチェック弁機構部55が設けられ、油圧ピストン46の背面側(左側)は、通常圧力(大気圧程度)の作動油が貯留される油室56となっている。油室56は油路60を介して給油口をなす給油ニップル57に接続されている。チェック弁機構部55は、油圧ピストン40が図示の如く左側の原位置に位置されるときなど、油圧室50が通常圧力のとき油室56と油圧室50とを連通し、油室56と油圧室50間での作動油の給排を許容する。一方、油圧ピストン46が右側に押動されたとき、油室56と油圧室50とを遮断し、油圧室50の作動油の加圧を許容する。
【0026】
そして、給油ニップル57は、給油配管59bに接続されて、この配管59bを通じて図1に示すリザーバタンク58の作動油を油路60及び油室56に供給乃至補給する。油圧ピストン46の移動により油室56の容積は変化するが、この容積変化に応じて給油ニップル57においては作動油の給排が適宜行われる。
【0027】
そして給油ニップル57には加圧機構71が設けられ、加圧機構71は油圧ピストン46が原位置にあるときのみ、油路60及び油室56の作動油を適度に加圧する。ロッド48はシール部材61に摺動自在に挿通され、シール部材61は圧入固定されて油室56と空圧ピストン45押動側室内とをシールする。
【0028】
図1に示すように、リザーバタンク58は、別の給油配管59aを介してマスタシリンダ10の給油ニップル10aにも接続されている。これにより、リザーバタンク58は、マスタシリンダ10とエアマスタシリンダ42との両方に接続され、これら両方に作動油を適宜補給する。
【0029】
D.C.V 69は、マスタシリンダ10及びエアマスタシリンダ42からの油圧の圧力差を利用して、油圧供給路の切替えを自動的且つ機械的に行うものである。その構成は図4に示す通りである。D.C.V 69は、そのバルブボディ64内部にスプール形の弁体65を摺動可能に有している。バルブボディ64は分割構成とされ、即ち中央ボディ64cの対向端に第1及び第2端部ボディ64a,64bが螺合して取り付けられる。
【0030】
なおここで、「第1」及び「a」は図中右側のマスタシリンダ10側の部材を、「第2」及び「b」は図中左側のエアマスタシリンダ42側の部材を、「第3」及び「c」はそれら間の中央の部材を示すものとする。
【0031】
第1端部ボディ64aには第1油圧ポート68aが、第2端部ボディ64bには第2油圧ポート68bがそれぞれ同軸的に形成されている。そして第1油圧ポート68aにはマスタシリンダ10に至る油圧配管43が、第2油圧ポート68bにはエアマスタシリンダ42に至る油圧配管44がそれぞれ接続される。中央ボディ64cの内部には、第1及び第2油圧ポート68a,68bと連通する弁体収容室70、及びこの弁体収容室70に直交して連通する第3油圧ポート68cが区画形成される。第3油圧ポート68cには倍力装置7に至る油圧配管54が接続される。弁体収容室70は、第3油圧ポート68cに接続する中央の膨出部70cと、この膨出部70cの両側にて第1及び第2端部ボディ64a,64bまで同軸に延びる第1及び第2ボア部70a,70bとから構成される。
【0032】
特に、第1ボア部70aと第2ボア部70bとは同径に形成され、これらに摺動する弁体65も一定径に形成されている。
【0033】
弁体65の内部にはそれぞれ独立した第1及び第2油路74a,74bが区画形成される。そしてこれら油路74a,74bは、対向側から中心側に向けて穿設された中心穴75a,75bと、径方向に貫通する径穴76a,76bとによって構成される。
【0034】
このD.C.V 69にあっては、以下のようにして油圧供給路の切替えを行う。図示状態はマスタシリンダ10から油圧が送られた場合であり、このときには油圧で弁体65が左側に移動されて第2端部ボディ64bに当接される。こうなると、第1油圧ポート68aが第1ボア部70a、第1油路74a、膨出部70c及び第3油圧ポート68cに連通し、これによって油圧配管43,54同士が接続され、マスタシリンダ10からの油圧は倍力装置7を分断側Aに作動させる。一方このとき、第2油路74bの径穴76bが第2ボア部70bで閉鎖されるため、第2及び第3油圧ポート68b,68c間は遮断されて油圧の移動もなくなる。
【0035】
他方、エアマスタシリンダ42から油圧が送られれば、こんどは反対に弁体65が右側に移動されて第1端部ボディ64aに当接される。これによって第2及び第3油圧ポート68b,68cが接続され、第1油圧ポート68aは遮断され、油圧配管44,54が接続されて、こんどはエアマスタシリンダ42からの油圧が倍力装置7に送られる。
【0036】
そして、クラッチペダル9を操作してマスタシリンダ10を作動させればクラッチ8のマニュアル断続が達成され、一方、エアマスタシリンダ42への空圧供給を制御すれば、クラッチ8の自動断続が達成される訳である。
【0037】
この空圧供給制御は、空圧配管62に設けられた電磁切替弁78をコンピュータ内蔵のコントローラ72でON/OFF制御することで達成される。切替弁78は、ONのときには上流側(エアタンク5側)と下流側(エアマスタシリンダ42側)とを連通して空圧供給を許容し、OFF のときには上流側を遮断して下流側を大気開放し、エアマスタシリンダ42の空圧を外部に排出するようになっている。従って、切替弁78をONとすればエアマスタシリンダ42から油圧が供給されてクラッチ8が分断され、切替弁78をOFF とすればエアマスタシリンダ42に油圧が戻されてクラッチ8が接続される。
【0038】
このように、マスタシリンダ10、油圧配管43,54、D.C.V 69、倍力装置7、空圧供給手段2、及び空圧配管62,67,34は、クラッチペダル9の操作により、クラッチ8のマニュアル断続を行わせるマニュアル断続手段を構成する。
【0039】
一方、空圧供給手段2、空圧配管62,67,34、エアマスタシリンダ42、油圧配管44,54、D.C.V 69、倍力装置7、切替弁78、及びコントローラ72は、クラッチ8の自動断続を行わせる自動断続手段を構成する。
【0040】
なお、空圧配管67は、エアタンク5とエアマスタシリンダ42とを結ぶ空圧配管62のエアタンク75及び切替弁78間の分岐63にて分岐される。そしてエアタンク75から分岐63、制御バルブ部7a、空圧ニップル15を順に結ぶ空圧配管62,67,34は、倍力装置7に至る空圧供給路を構成する。
【0041】
ここで特に、油圧配管54の途中にはリリーフ弁77が設けられる。リリーフ弁77はその内部に弁体79を有し、通常この弁体79は弁ばね80からの付勢力で、油圧配管54から分岐された排油管81を閉じている。しかし、油圧配管54内の作動油が加圧され、その圧力(油圧値)が所定圧力、即ち制御バルブ部7aを開動させる圧力(油圧値)を所定圧力だけ越えたとき、その油圧で弁ばね80の付勢力に抗じて排油管81を開き、油圧配管54内の作動油を排出して、戻り管82を介して給油配管59bに戻すようになっている。このように、排油管81及び戻り管82は、油圧配管54の作動油を給油配管59bに排出するための排油通路を形成する。
【0042】
ここでコントローラ72には、クラッチペダル9付近に設けられたペダルスイッチ87が接続されている。ペダルスイッチ87は、クラッチペダル9が完全戻り位置にある場合は OFFとなっており、クラッチペダル9が少しでも踏み込まれた場合はONとなって、そのON信号をコントローラ72に送出する。
【0043】
他、コントローラ72には、クラッチ8に設けられたクラッチストロークセンサ88、及び制御トラブル時に制御を中止するための非常スイッチ73等が接続される。
【0044】
かかるクラッチ断続装置1は、これとは別に設けられた変速機(図示せず)と連動されるようになっている。変速機は自動変速を行う構成がなされており、即ち、手動シフトレバーで変速ポジションが選択されると、電気スイッチによる変速信号がコントローラ72に送られ、図示しないアクチュエータが動作されて、運転手の操作に代わって実質的な変速操作を行うようになっている。
【0045】
次に、上記装置の動作説明を行う。
【0046】
先ず、自動変速の概要に含めてクラッチ8の自動断続操作について説明する。運転手がシフト操作を行うと、変速信号がコントローラ72に入力され、これに伴ってコントローラ72は切替弁78をONとする。すると、空圧配管62を通じてエアマスタシリンダ42に空圧が供給され、これにより前述したようにクラッチ8は分断操作される。この後、アクチュエータにより変速機の変速操作を完了し、切替弁78をOFF として、エアマスタシリンダ42の空圧を大気開放してクラッチ8の接続操作を行い、変速を完了する。
【0047】
特にここで、上記構成にあっては、クラッチ8の自動分断を、マスタシリンダ10とは別のエアマスタシリンダ42を作動させることにより行い、これによって油圧通路内の負圧発生を防止している。
【0048】
即ち、図2を参照して、従来はエアマスタシリンダ42がなく、別の空圧配管が倍力装置7の空圧ニップル15に接続されており、この空圧配管からの空圧供給制御により、マスタシリンダ10を動作させずピストンプレート13を押動させるようにしていた。しかしこれだと、ピストンプレート13に連動してハイドロリックピストン17が右側に移動することで、作動油が充填されているハイドロリックシリンダ22の容積が増し、これにより油圧路20及び油圧配管54内等(合わせて油圧通路内という)に負圧が生じて、作動油に気泡が混入し、クラッチ8の正確なマニュアル操作が困難となる問題が生じる。
【0049】
そこで本装置1では、クラッチ8の自動分断操作時に、エアマスタシリンダ42を作動させて油圧通路内を加圧しつつ倍力装置7への空圧供給を行うようにしている。これによって、油圧通路内の負圧化を防止でき、トラブルを未然に防止することができる。
【0050】
次に、クラッチ8のマニュアル断続操作は、クラッチペダル9の踏み込み或いは戻し操作によりマスタシリンダ10から油圧を給排させ、前述のように倍力装置7を作動させることにより行う。ここではクラッチペダル9の踏み込みと同時に、前述のペダルスイッチ87からON信号が出力され、これにより切替弁78はOFF とされ、エアマスタシリンダ42は作動されない。またこのときにも、油圧通路内を加圧しているため負圧化は生じない。
【0051】
このようにしてクラッチ8の自動及びマニュアル断続が達成される訳であるが、この構成にあっては、上述した従来の問題点を以下のように解決している。
【0052】
即ち、かかるセミオートクラッチシステムにおいては、フェールセーフ等を考慮して、マニュアル操作と自動操作とが相互干渉した際に、マニュアル操作を優先させるのが好ましい。そしてかかる構成では、これを以下のように行うこととしている。
【0053】
クラッチ8の自動分断時は、エアマスタシリンダ42から油圧が供給され、この油圧は制御バルブ部7aを開として倍力装置7に空圧を供給し、クラッチ8を分断させている。
【0054】
この状態で、マニュアル操作に移行すべくクラッチペダル9を踏み込むと、まず、クラッチペダル9の遊び分だけ踏み込みがなされた瞬間、切替弁78が OFFとされ、エアマスタシリンダ42から空圧が排出される。こうなると、エアマスタシリンダ42からの油圧が抜け、D.C.V 69の弁体65の反対側への移動ないし切替えが許容される。
【0055】
そして、クラッチペダル9のさらなる踏み込みは、マスタシリンダ10から油圧を発生させ、D.C.V 69手前の油圧配管43内を加圧し、D.C.V 69の弁体65を反対側に移動させ、既に高圧となっているD.C.V 69より後流側の油圧配管54内をその高圧に保持する。これによってクラッチ8の分断状態を維持しつつも、マニュアル分断への移行が達成されることとなる。
【0056】
しかしこのとき、作動油の圧縮量が通常より少ないために、即ち油圧配管43内の加圧分と、D.C.V 69の弁体65の移動分しかマスタシリンダ10を作動させないために、仮にリリーフ弁77がないとした場合、クラッチペダル9の踏み込みは油圧反力で途中で規制され、そのストロークは通常より短くなり、即ち完全には踏み込んでいなくてもクラッチ8は完全に分断されているという不自然な状態が生じ、これによって運転手は違和感を感じることとなる。
【0057】
そして、その途中の踏み込み位置から戻し操作を行ってクラッチ8を接続させる場合にあっても、その戻しストロークが少なく違和感があるのは勿論のこと、特に油圧配管54内相当の油圧の戻り速度が、マスタシリンダ10内部の給油ポートを通じたリザーバタンク58への戻り流量によって決定されてしまい、その給油ポートが一般に小径なため、半クラッチからのクラッチ接続速度が緩慢となる可能性がある。
【0058】
そこでかかる構成においては、油圧配管54にリリーフ弁77を設け、その油圧配管54から作動油を排出することで、クラッチペダル9のさらなる踏み込みを許容し、違和感を排除するようにしている。
【0059】
即ち、これがない場合、クラッチペダル9の踏み込みは、前記の如く油圧配管43,54(第1の油圧供給路)内の油圧が、制御バルブ部7aを開とする油圧となった時点で規制されるが、リリーフ弁77があると、さらに若干踏力を強めて(強力に踏み込んで)油圧を高めることで、リリーフ弁77を開とし、作動油の排出を行わせ、これにより完全なる踏み込みを達成できる。この強制的な踏み込みを行うときには、その操作フィーリングは通常より若干重くなるが、それでも通常のクラッチペダルストロークを確保できることで、操作フィーリングは確実に高まる。
【0060】
そして、完全に踏み込んだ後のクラッチ接続も、通常のマニュアル接続と同じように行うことができ、これによって操作フィーリングを高められクラッチ接続が容易となると同時に、前述のクラッチ接続速度の問題も解消することができる。
【0061】
なお、制御バルブ部7aを開とする油圧即ち開弁圧は、主にポペットバルブ30を閉とする空圧及びポペットスプリング32圧の和に基づいて決定される。また、リリーフ弁77の開弁圧は、その制御バルブ部7aの開弁圧を越え且つできる限り近い値を採ると、操作フィーリングの段付き感を低減することができる。加えて本装置1では、排出された作動油を、エアマスタシリンダ42への給油通路である給油配管59bに戻し、エアマスタシリンダ42側の作動油バランスの確保を図っている。
【0062】
即ち、自動分断からマニュアル分断に移行する際、クラッチペダル9の踏み込みと同時に、エアマスタシリンダ42から空圧が排出されても、D.C.V 69が切替えられるために、エアマスタシリンダ42の油圧室50には供給分の作動油が油圧配管44からは戻ってこない。言い換えれば、作動油の供給量に対してその戻り量は少なく、それらがバランスされないのは好ましくない。そこで本装置1では、排油管81及び戻り管82で油圧配管54と給油配管59bとを接続し、これにリリーフ弁77を設けることによって、排出された作動油を特にエアマスタシリンダ42側の給油配管59bに戻すようにし、エアマスタシリンダ42に作動油を給油側から補給するようにして、作動油量のバランスを即座に確保するようにしている。なおこの構成は、各マスタシリンダ10,42に対し個別にリザーバタンクを設けた場合にも有効である。また、排出された作動油を直接リザーバタンク58に戻すようにしてもよい。
【0063】
また、リリーフ弁77は油圧配管43に設けることもできるが、特に本装置1では次の理由から油圧配管54に設けることとしている。
【0064】
即ち、エアマスタシリンダ42による自動分断中、クラッチペダル9の踏み込みが短時間で急速になされると、エアマスタシリンダ42のクラッチ戻し側の作動ないしは油圧の抜けに時間遅れが生じる。そして仮にリリーフ弁77が油圧配管43に設けられたとして、マスタシリンダ10側の油圧でD.C.V 69が切り替わり油圧配管43を開とする前に、即ちその遅れ時間中に油圧配管43内の油圧が開弁圧以上に達すると、マスタシリンダ10側の作動油がリリーフ弁77から排出されることになる。一方、クラッチペダル9の踏み込み過程において、やがてはエアマスタシリンダ42側の油圧が抜け、D.C.V 69が切替わってマスタシリンダ10によるマニュアル分断操作に移行する。しかし、作動油が既に所定量排出されてしまっており、その排出分だけ作動油が不足しているため、クラッチペダル9を完全に踏み込んだとしても、クラッチ8を完全分断するほど十分には油圧が上がらず、結果的にクラッチ8は半接続状態となり、完全分断がなされない。
【0065】
そこで、リリーフ弁77を油圧配管54に設けるとこの問題は一挙に解決される。即ち、上記の如き時間遅れが生じた場合でも、その遅れ時間中においては、例えばエアマスタシリンダ42からの油圧でD.C.V 69が油圧配管43を閉とし続けるため、クラッチペダル9の踏み込みが規制されるだけで作動油の排出はない。或いは、クラッチペダル9の強制的な踏み込みにより、D.C.V 69が切り替わって油圧配管43を開とし且つ油圧が開弁圧以上になった場合でも、前述のような通常通りの作動油排出がなされるのみで、自動分断からマニュアル分断への移行がなされるのみである。このようにして、作動油の初期量を確保することができ、クラッチペダル9の完全踏み込みによるクラッチ8の完全分断が可能となる。そして上記不具合は確実に解決されることとなる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は上記形態の他にも様々な形態が可能である。
【0067】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0068】
(1) クラッチの自動分断時にマニュアル操作に移行する際、通常通りのクラッチペダルストロークを確保でき、操作の違和感を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクラッチ断続装置を示す構成図である。
【図2】倍力装置を示す縦断面図である。
【図3】エアマスタシリンダを示す縦断面図である。
【図4】三方弁を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 クラッチ断続装置
7 倍力装置
7a 制御バルブ部(油圧作動弁)
8 クラッチ
9 クラッチペダル
10 マスタシリンダ
34,62,67 空圧配管(空圧供給路)
42 エアマスタシリンダ
43,44,54 油圧配管(第1及び第2の油圧供給路)
65 弁体
69 ダブルチェックバルブ(三方弁)
72 コントローラ
77 リリーフ弁
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチ断続装置に係り、特に車両のクラッチの自動化を図り得るクラッチ断続装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、バスやトラック等の大型車両においても変速自動化の要請が高まっている。これらの車両は一般に車重や積載量が大きく、クラッチ形式として乗用車に採用されるような流体式トルクコンバータを用いると損失大となり燃費の面で不利であるため、このような大型車両においては、特に摩擦クラッチを自動操作により断続し、その出力を変速機に送り、この変速機をやはり自動操作するようにして、変速自動化の達成を図っている。このクラッチの自動操作を行うクラッチ断続装置としては、空圧の給排により摩擦クラッチの断続操作を行う倍力装置(クラッチブースタ)を備えたものが一般的である。
【0003】
一方、車両発進時等においてはクラッチの操作がデリケートとなり、その操作を自動制御で行おうとすると装置が複雑、高価となってしまうため、この場合にのみクラッチペダルを用いたマニュアル(手動)操作を行えるようにして、装置のシンプル化、低価格化を狙ったものがある(所謂セミオートクラッチシステム)。この場合、クラッチペダルの操作によりマスタシリンダから油圧を給排し、この油圧の給排により上記倍力装置への空圧の給排を行うようにしている。
【0004】
ところで、発進時を除く自動変速時、倍力装置にはクラッチペダルを操作せずとも空圧が給排される。また倍力装置は、空圧が供給されると内部のパワーピストンを押動させてクラッチを分断方向に操作するようになっている。
【0005】
そして、従来の構成において、マスタシリンダからの油圧を送る通路は、上記パワーピストンの移動に応じて容積変化する倍力装置の油圧シリンダに連通しており、クラッチの自動分断制御時、即ちクラッチペダルを操作しないでパワーピストンによりクラッチ分断制御を行う場合、パワーピストンの押動により油圧ピストン(ハイドロリックピストン)が移動すると、油圧通路内に負圧が発生して気泡が混入し、クラッチの正確な操作が困難となる虞がある。
【0006】
このような負圧発生を防止するため、実公平4−8023号公報等においては、倍力装置の油圧出力部にマニュアル操作と自動操作とのキャンセル機構を設け、自動操作時における油圧通路内の容積変化を防止している。しかし、このような倍力装置の構造変更は、シール等の完全を期すためにも小スペースで複雑な構造を採用せざるを得ず、これによってコストアップを招き、信頼性、耐久性にも問題が生じる。
【0007】
そこで、本出願人は、倍力装置の構造変更は行わず、マスタシリンダをクラッチペダルだけでなく別の駆動手段(空圧又は油圧)によっても作動させるようにし、上記問題点を解決することができるクラッチ断続装置の提案を先に行った。(特願平7−176353号等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記問題点を解決するため、クラッチペダルに連動する通常のマスタシリンダとは別に、空圧の導入により油圧供給を行うエアマスタシリンダを設け、このエアマスタシリンダへの空圧導入を制御することにより、クラッチの自動断続制御を行うことも考えられる。
【0009】
そして、マスタシリンダ及びエアマスタシリンダからの油圧供給路の切替えに実公平4−8023号公報等にあるような機械式三方弁を用いれば、簡単な構成で自動切替えを達成することができる。
【0010】
しかし、このような構成によると、両マスタシリンダが相互干渉するような場合、即ち、エアマスタシリンダによるクラッチの自動分断時に、クラッチペダルを踏み込んでマスタシリンダを作動させ、マニュアル操作に移行するような場合、三方弁手前の油圧供給路内の加圧分及び三方弁の弁体の移動分のみクラッチペダルの踏み込みは許容されるが、それが通常の踏み込みストロークより小さいため、運転手に違和感を与える問題がある。また、この少ない踏み込み量でもクラッチは分断されているが、逆にその少ない戻し操作でクラッチを接続するため、これによっても違和感が生じる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、空圧の供給によりクラッチを分断操作する倍力装置と、この倍力装置への空圧供給路を開閉する油圧作動弁と、クラッチペダル操作に連動して前記油圧作動弁に油圧を供給するマスタシリンダと、コントローラによる空圧供給制御にて空圧を導入し、前記油圧作動弁に油圧を供給するエアマスタシリンダと、前記マスタシリンダ及び前記エアマスタシリンダからの油圧差に基づいて弁体を移動させ、前記マスタシリンダから前記油圧作動弁に至る第1の油圧供給路及び前記エアマスタシリンダから前記油圧作動弁に至る第2の油圧供給路を切り替える三方弁と、前記マスタシリンダから前記油圧作動弁に至る前記第1の油圧供給路に設けられ、前記油圧作動弁を開動させる油圧を越える油圧で開放し、前記第1の油圧供給路から作動油を排出するリリーフ弁とを備えたものである。
【0012】
エアマスタシリンダによるクラッチの自動分断時にマニュアル操作に移行する場合、エアマスタシリンダ側の第2の油圧供給路内が既に高圧となっているため、クラッチペダルを踏んだとしてもその踏み込みは途中で規制される。一方、その踏み込みと同時にエアマスタシリンダをOFF 制御して、空圧を排出させ、油圧供給を停止させる。こうすると三方弁が油圧供給路を切り替え、これによってマスタシリンダからの油圧が高圧を保持して、マニュアル分断への移行が達成される。このとき、油圧に抗じてクラッチペダルを若干強く踏み込むことで、マスタシリンダからより高圧の油圧が発生し、これによってリリーフ弁が開き作動油が排出されて、通常のクラッチペダルストロークを確保することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1は、本発明に係るクラッチ断続装置を示す全体構成図で、クラッチ断続装置1は空圧を供給するための空圧供給手段2を有する。空圧供給手段2は、エンジン(図示せず)に駆動されて空圧(空気圧)を発生するコンプレッサ3と、コンプレッサ3からの空気を乾燥させるエアドライヤ4と、エアドライヤ4から送られてきた空気を貯留するエアタンク5と、エアタンク5の入口側に設けられた逆止弁6とから主に構成される。この空圧供給手段2からの空圧は倍力装置(クラッチブースタ)7に送られ、倍力装置7はその空圧の供給により摩擦クラッチ8を分断側(右側)Aに操作するようになっている。また倍力装置7は、詳しくは後述するが、マスタシリンダ10或いはエアマスタシリンダ42から油圧も供給されるようになっている。
【0015】
図2は倍力装置7の詳細を示す縦断面図である。なおこの倍力装置7は従来同様に構成される。図示するように、倍力装置7は、そのボディ11に接続されたシリンダシェル12を有し、このシリンダシェル12内にピストンプレート(パワーピストン、倍力ピストン)13が、リターンスプリング14により空圧導入側(図中左側)に付勢されて設けられている。シリンダシェル12の一端には空圧ニップル15が取り付けられ、この空圧ニップル15が空圧導入口を形成してエアタンク5からの空圧を空圧配管34(図1)から導入する。空圧が導入されるとピストンプレート13が右側に押動され、こうなるとピストンプレート13はピストンロッド16、ハイドロリックピストン17、さらにはプッシュロッド18を押動してクラッチレバー8a(図1)を分断側Aに押し、クラッチ8を分断する。
【0016】
一方、ボディ11内部には油圧路20が形成され、油圧路20の油圧導入口は油圧ニップル19によって形成されている。油圧ニップル19には油圧配管54の一端が接続される。油圧路20は、ボディフランジ部11aの一端(下端)側に形成された孔21、ハイドロリックピストン17を収容するハイドロリックシリンダ(油圧シリンダ)22(ボディシリンダ部11bに形成される)、及びハイドロリックシリンダ22に小孔23aを介して連通する他端(上端)側の制御孔23によって主に形成される。油圧ニップル19から油圧が導入されると、その油圧は上記通路を通って制御孔23に到達し、制御ピストン24を制御シリンダ25に沿って右側に押動する。このようにボディフランジ部11aの上端側には、詳しくは後述するが、倍力装置7への空圧供給を制御するための制御バルブ部7a(油圧作動弁)が形成される。
【0017】
制御バルブ部7aは右側に突出する制御ボディ部26によって区画される。制御ボディ部26には、前述の制御シリンダ25に同軸に連通するコントロール室27及び空圧ポート28が形成される。コントロール室27には制御ピストン24のコントロール部29が、空圧ポート28にはポペットバルブ30がそれぞれ摺動可能に収容される。空圧ポート28にはニップル31が取り付けられ、このニップル31には空圧配管67(図1)が接続されて空圧が常に供給されている。
【0018】
通常、ポペットバルブ30は、空圧とポペットスプリング32とにより左側に付勢されていて、コントロール室27及び空圧ポート28を連通する連通ポート33を閉じている。よってニップル31からの空圧はポペットバルブ30の位置で遮断される。しかしながら、油圧配管54から油圧が供給されると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を右側に押動して連通ポート33を開く(つまり制御バルブ部7aが開動される)。こうなると、連通ポート33からコントロール室27に侵入した空圧は、コントロール室27に連通する空圧配管34(仮想線で示す)を通じて前述のシリンダシェル12に入り、ピストンプレート13の左側の空圧作用面13aに作用してこれを右側に押動し、クラッチ8を分断側に操作する。
【0019】
ここで、倍力装置7は、供給された油圧の大きさに応じてクラッチ8を所定ストロークだけ操作することができる。即ち、例えば比較的小さい値だけ油圧が増加された場合、前述の空圧作用によりピストンプレート13が右側に押動され、これに連動してハイドロリックピストン17が所定ストロークだけ右側に押動される。すると、油圧路20の容積が増し制御孔23内の油圧が下がり、こうなると、制御ピストン24のコントロール部29がポペットバルブ30を押し付けつつ、ポペットバルブ30が連通ポート33を閉鎖するバランス状態が生じ、これによりコントロール室27、空圧配管34、及びピストンプレート13の空圧作用面13a側となる空圧導入室12bにて所定の空圧が保持され、ピストンプレート13を所定ストローク位置に保持し、クラッチ8を所定の半クラッチ位置に保持する。
【0020】
また、油圧が完全に抜かれると、制御孔23内の油圧がさらに下がって、図示の如く制御ピストン24が最も左側の原位置に戻される。こうなると、ポペットバルブ30も左側に移動して連通ポート33を閉じ(つまり制御バルブ部7aが閉動され)、コントロール部29がポペットバルブ30から離れ、コントロール部29の内部に設けられた開放ポート36がコントロール室27等と連通するようになる。すると、保持されていた空圧は、大部分が開放ポート36から大気圧ポート39を通じ空圧導入室12bと反対側の大気室12aに導入され、これによりピストンプレート13を右側に押していた空圧が、今度はリターンスプリング14と協同してそれを反対側の左側に押し、クラッチ8を接続側(左側)Bに操作する。そして残りの空圧は、ブリーザ37を通じ大気開放される。
【0021】
なお、倍力装置7において、38はシリンダ室12aとハイドロリックシリンダ22とを油密に仕切るシール部材、40は大気圧ポート、41は緩められたときに作動油のエア抜きを行えるブリーダである。
【0022】
図1に示すように、油圧配管54は、三方弁たるシャトル弁或いはダブルチェックバルブ(以下D.C.V という)69に接続され、D.C.V 69からはさらに二本の油圧配管43,44が延出されて、一方43がマスタシリンダ10に、他方44がエアマスタシリンダ42に接続される。特にマスタシリンダ10と倍力装置7とを結ぶ油圧配管43,54は第1の油圧供給路を構成し、エアマスタシリンダ42と倍力装置7とを結ぶ油圧配管44,54は第2の油圧供給路を構成する。そしてこれら油圧供給路は、D.C.V 69によって適宜切替えられることになる。
【0023】
マスタシリンダ10は通常の構造のもので、即ち、運転手がクラッチペダル9を操作すると、プッシュロッド49を介して内部のピストンが移動し、これにより油圧を油圧供給部53から給排するものである。
【0024】
図3は、エアマスタシリンダ42の構成を示す縦断面図である。これは先の倍力装置7と同様に、空圧配管62から送られてきた空圧で内部の空圧ピストン45を押動させる。そして、これによりロッド48を介して油圧ピストン46を押動し、油圧室50の作動油を圧縮して油圧を油圧配管44に供給する。空圧ピストン45は油圧ピストン46より大径のため、これにより倍力効果が働く。空圧ピストン45はリターンスプリング47で戻り側に付勢され、空圧ピストン45の押動側(右側)室内はエキゾーストポート51により外部と呼吸される。
【0025】
ロッド48と油圧ピストン46との間にはチェック弁機構部55が設けられ、油圧ピストン46の背面側(左側)は、通常圧力(大気圧程度)の作動油が貯留される油室56となっている。油室56は油路60を介して給油口をなす給油ニップル57に接続されている。チェック弁機構部55は、油圧ピストン40が図示の如く左側の原位置に位置されるときなど、油圧室50が通常圧力のとき油室56と油圧室50とを連通し、油室56と油圧室50間での作動油の給排を許容する。一方、油圧ピストン46が右側に押動されたとき、油室56と油圧室50とを遮断し、油圧室50の作動油の加圧を許容する。
【0026】
そして、給油ニップル57は、給油配管59bに接続されて、この配管59bを通じて図1に示すリザーバタンク58の作動油を油路60及び油室56に供給乃至補給する。油圧ピストン46の移動により油室56の容積は変化するが、この容積変化に応じて給油ニップル57においては作動油の給排が適宜行われる。
【0027】
そして給油ニップル57には加圧機構71が設けられ、加圧機構71は油圧ピストン46が原位置にあるときのみ、油路60及び油室56の作動油を適度に加圧する。ロッド48はシール部材61に摺動自在に挿通され、シール部材61は圧入固定されて油室56と空圧ピストン45押動側室内とをシールする。
【0028】
図1に示すように、リザーバタンク58は、別の給油配管59aを介してマスタシリンダ10の給油ニップル10aにも接続されている。これにより、リザーバタンク58は、マスタシリンダ10とエアマスタシリンダ42との両方に接続され、これら両方に作動油を適宜補給する。
【0029】
D.C.V 69は、マスタシリンダ10及びエアマスタシリンダ42からの油圧の圧力差を利用して、油圧供給路の切替えを自動的且つ機械的に行うものである。その構成は図4に示す通りである。D.C.V 69は、そのバルブボディ64内部にスプール形の弁体65を摺動可能に有している。バルブボディ64は分割構成とされ、即ち中央ボディ64cの対向端に第1及び第2端部ボディ64a,64bが螺合して取り付けられる。
【0030】
なおここで、「第1」及び「a」は図中右側のマスタシリンダ10側の部材を、「第2」及び「b」は図中左側のエアマスタシリンダ42側の部材を、「第3」及び「c」はそれら間の中央の部材を示すものとする。
【0031】
第1端部ボディ64aには第1油圧ポート68aが、第2端部ボディ64bには第2油圧ポート68bがそれぞれ同軸的に形成されている。そして第1油圧ポート68aにはマスタシリンダ10に至る油圧配管43が、第2油圧ポート68bにはエアマスタシリンダ42に至る油圧配管44がそれぞれ接続される。中央ボディ64cの内部には、第1及び第2油圧ポート68a,68bと連通する弁体収容室70、及びこの弁体収容室70に直交して連通する第3油圧ポート68cが区画形成される。第3油圧ポート68cには倍力装置7に至る油圧配管54が接続される。弁体収容室70は、第3油圧ポート68cに接続する中央の膨出部70cと、この膨出部70cの両側にて第1及び第2端部ボディ64a,64bまで同軸に延びる第1及び第2ボア部70a,70bとから構成される。
【0032】
特に、第1ボア部70aと第2ボア部70bとは同径に形成され、これらに摺動する弁体65も一定径に形成されている。
【0033】
弁体65の内部にはそれぞれ独立した第1及び第2油路74a,74bが区画形成される。そしてこれら油路74a,74bは、対向側から中心側に向けて穿設された中心穴75a,75bと、径方向に貫通する径穴76a,76bとによって構成される。
【0034】
このD.C.V 69にあっては、以下のようにして油圧供給路の切替えを行う。図示状態はマスタシリンダ10から油圧が送られた場合であり、このときには油圧で弁体65が左側に移動されて第2端部ボディ64bに当接される。こうなると、第1油圧ポート68aが第1ボア部70a、第1油路74a、膨出部70c及び第3油圧ポート68cに連通し、これによって油圧配管43,54同士が接続され、マスタシリンダ10からの油圧は倍力装置7を分断側Aに作動させる。一方このとき、第2油路74bの径穴76bが第2ボア部70bで閉鎖されるため、第2及び第3油圧ポート68b,68c間は遮断されて油圧の移動もなくなる。
【0035】
他方、エアマスタシリンダ42から油圧が送られれば、こんどは反対に弁体65が右側に移動されて第1端部ボディ64aに当接される。これによって第2及び第3油圧ポート68b,68cが接続され、第1油圧ポート68aは遮断され、油圧配管44,54が接続されて、こんどはエアマスタシリンダ42からの油圧が倍力装置7に送られる。
【0036】
そして、クラッチペダル9を操作してマスタシリンダ10を作動させればクラッチ8のマニュアル断続が達成され、一方、エアマスタシリンダ42への空圧供給を制御すれば、クラッチ8の自動断続が達成される訳である。
【0037】
この空圧供給制御は、空圧配管62に設けられた電磁切替弁78をコンピュータ内蔵のコントローラ72でON/OFF制御することで達成される。切替弁78は、ONのときには上流側(エアタンク5側)と下流側(エアマスタシリンダ42側)とを連通して空圧供給を許容し、OFF のときには上流側を遮断して下流側を大気開放し、エアマスタシリンダ42の空圧を外部に排出するようになっている。従って、切替弁78をONとすればエアマスタシリンダ42から油圧が供給されてクラッチ8が分断され、切替弁78をOFF とすればエアマスタシリンダ42に油圧が戻されてクラッチ8が接続される。
【0038】
このように、マスタシリンダ10、油圧配管43,54、D.C.V 69、倍力装置7、空圧供給手段2、及び空圧配管62,67,34は、クラッチペダル9の操作により、クラッチ8のマニュアル断続を行わせるマニュアル断続手段を構成する。
【0039】
一方、空圧供給手段2、空圧配管62,67,34、エアマスタシリンダ42、油圧配管44,54、D.C.V 69、倍力装置7、切替弁78、及びコントローラ72は、クラッチ8の自動断続を行わせる自動断続手段を構成する。
【0040】
なお、空圧配管67は、エアタンク5とエアマスタシリンダ42とを結ぶ空圧配管62のエアタンク75及び切替弁78間の分岐63にて分岐される。そしてエアタンク75から分岐63、制御バルブ部7a、空圧ニップル15を順に結ぶ空圧配管62,67,34は、倍力装置7に至る空圧供給路を構成する。
【0041】
ここで特に、油圧配管54の途中にはリリーフ弁77が設けられる。リリーフ弁77はその内部に弁体79を有し、通常この弁体79は弁ばね80からの付勢力で、油圧配管54から分岐された排油管81を閉じている。しかし、油圧配管54内の作動油が加圧され、その圧力(油圧値)が所定圧力、即ち制御バルブ部7aを開動させる圧力(油圧値)を所定圧力だけ越えたとき、その油圧で弁ばね80の付勢力に抗じて排油管81を開き、油圧配管54内の作動油を排出して、戻り管82を介して給油配管59bに戻すようになっている。このように、排油管81及び戻り管82は、油圧配管54の作動油を給油配管59bに排出するための排油通路を形成する。
【0042】
ここでコントローラ72には、クラッチペダル9付近に設けられたペダルスイッチ87が接続されている。ペダルスイッチ87は、クラッチペダル9が完全戻り位置にある場合は OFFとなっており、クラッチペダル9が少しでも踏み込まれた場合はONとなって、そのON信号をコントローラ72に送出する。
【0043】
他、コントローラ72には、クラッチ8に設けられたクラッチストロークセンサ88、及び制御トラブル時に制御を中止するための非常スイッチ73等が接続される。
【0044】
かかるクラッチ断続装置1は、これとは別に設けられた変速機(図示せず)と連動されるようになっている。変速機は自動変速を行う構成がなされており、即ち、手動シフトレバーで変速ポジションが選択されると、電気スイッチによる変速信号がコントローラ72に送られ、図示しないアクチュエータが動作されて、運転手の操作に代わって実質的な変速操作を行うようになっている。
【0045】
次に、上記装置の動作説明を行う。
【0046】
先ず、自動変速の概要に含めてクラッチ8の自動断続操作について説明する。運転手がシフト操作を行うと、変速信号がコントローラ72に入力され、これに伴ってコントローラ72は切替弁78をONとする。すると、空圧配管62を通じてエアマスタシリンダ42に空圧が供給され、これにより前述したようにクラッチ8は分断操作される。この後、アクチュエータにより変速機の変速操作を完了し、切替弁78をOFF として、エアマスタシリンダ42の空圧を大気開放してクラッチ8の接続操作を行い、変速を完了する。
【0047】
特にここで、上記構成にあっては、クラッチ8の自動分断を、マスタシリンダ10とは別のエアマスタシリンダ42を作動させることにより行い、これによって油圧通路内の負圧発生を防止している。
【0048】
即ち、図2を参照して、従来はエアマスタシリンダ42がなく、別の空圧配管が倍力装置7の空圧ニップル15に接続されており、この空圧配管からの空圧供給制御により、マスタシリンダ10を動作させずピストンプレート13を押動させるようにしていた。しかしこれだと、ピストンプレート13に連動してハイドロリックピストン17が右側に移動することで、作動油が充填されているハイドロリックシリンダ22の容積が増し、これにより油圧路20及び油圧配管54内等(合わせて油圧通路内という)に負圧が生じて、作動油に気泡が混入し、クラッチ8の正確なマニュアル操作が困難となる問題が生じる。
【0049】
そこで本装置1では、クラッチ8の自動分断操作時に、エアマスタシリンダ42を作動させて油圧通路内を加圧しつつ倍力装置7への空圧供給を行うようにしている。これによって、油圧通路内の負圧化を防止でき、トラブルを未然に防止することができる。
【0050】
次に、クラッチ8のマニュアル断続操作は、クラッチペダル9の踏み込み或いは戻し操作によりマスタシリンダ10から油圧を給排させ、前述のように倍力装置7を作動させることにより行う。ここではクラッチペダル9の踏み込みと同時に、前述のペダルスイッチ87からON信号が出力され、これにより切替弁78はOFF とされ、エアマスタシリンダ42は作動されない。またこのときにも、油圧通路内を加圧しているため負圧化は生じない。
【0051】
このようにしてクラッチ8の自動及びマニュアル断続が達成される訳であるが、この構成にあっては、上述した従来の問題点を以下のように解決している。
【0052】
即ち、かかるセミオートクラッチシステムにおいては、フェールセーフ等を考慮して、マニュアル操作と自動操作とが相互干渉した際に、マニュアル操作を優先させるのが好ましい。そしてかかる構成では、これを以下のように行うこととしている。
【0053】
クラッチ8の自動分断時は、エアマスタシリンダ42から油圧が供給され、この油圧は制御バルブ部7aを開として倍力装置7に空圧を供給し、クラッチ8を分断させている。
【0054】
この状態で、マニュアル操作に移行すべくクラッチペダル9を踏み込むと、まず、クラッチペダル9の遊び分だけ踏み込みがなされた瞬間、切替弁78が OFFとされ、エアマスタシリンダ42から空圧が排出される。こうなると、エアマスタシリンダ42からの油圧が抜け、D.C.V 69の弁体65の反対側への移動ないし切替えが許容される。
【0055】
そして、クラッチペダル9のさらなる踏み込みは、マスタシリンダ10から油圧を発生させ、D.C.V 69手前の油圧配管43内を加圧し、D.C.V 69の弁体65を反対側に移動させ、既に高圧となっているD.C.V 69より後流側の油圧配管54内をその高圧に保持する。これによってクラッチ8の分断状態を維持しつつも、マニュアル分断への移行が達成されることとなる。
【0056】
しかしこのとき、作動油の圧縮量が通常より少ないために、即ち油圧配管43内の加圧分と、D.C.V 69の弁体65の移動分しかマスタシリンダ10を作動させないために、仮にリリーフ弁77がないとした場合、クラッチペダル9の踏み込みは油圧反力で途中で規制され、そのストロークは通常より短くなり、即ち完全には踏み込んでいなくてもクラッチ8は完全に分断されているという不自然な状態が生じ、これによって運転手は違和感を感じることとなる。
【0057】
そして、その途中の踏み込み位置から戻し操作を行ってクラッチ8を接続させる場合にあっても、その戻しストロークが少なく違和感があるのは勿論のこと、特に油圧配管54内相当の油圧の戻り速度が、マスタシリンダ10内部の給油ポートを通じたリザーバタンク58への戻り流量によって決定されてしまい、その給油ポートが一般に小径なため、半クラッチからのクラッチ接続速度が緩慢となる可能性がある。
【0058】
そこでかかる構成においては、油圧配管54にリリーフ弁77を設け、その油圧配管54から作動油を排出することで、クラッチペダル9のさらなる踏み込みを許容し、違和感を排除するようにしている。
【0059】
即ち、これがない場合、クラッチペダル9の踏み込みは、前記の如く油圧配管43,54(第1の油圧供給路)内の油圧が、制御バルブ部7aを開とする油圧となった時点で規制されるが、リリーフ弁77があると、さらに若干踏力を強めて(強力に踏み込んで)油圧を高めることで、リリーフ弁77を開とし、作動油の排出を行わせ、これにより完全なる踏み込みを達成できる。この強制的な踏み込みを行うときには、その操作フィーリングは通常より若干重くなるが、それでも通常のクラッチペダルストロークを確保できることで、操作フィーリングは確実に高まる。
【0060】
そして、完全に踏み込んだ後のクラッチ接続も、通常のマニュアル接続と同じように行うことができ、これによって操作フィーリングを高められクラッチ接続が容易となると同時に、前述のクラッチ接続速度の問題も解消することができる。
【0061】
なお、制御バルブ部7aを開とする油圧即ち開弁圧は、主にポペットバルブ30を閉とする空圧及びポペットスプリング32圧の和に基づいて決定される。また、リリーフ弁77の開弁圧は、その制御バルブ部7aの開弁圧を越え且つできる限り近い値を採ると、操作フィーリングの段付き感を低減することができる。加えて本装置1では、排出された作動油を、エアマスタシリンダ42への給油通路である給油配管59bに戻し、エアマスタシリンダ42側の作動油バランスの確保を図っている。
【0062】
即ち、自動分断からマニュアル分断に移行する際、クラッチペダル9の踏み込みと同時に、エアマスタシリンダ42から空圧が排出されても、D.C.V 69が切替えられるために、エアマスタシリンダ42の油圧室50には供給分の作動油が油圧配管44からは戻ってこない。言い換えれば、作動油の供給量に対してその戻り量は少なく、それらがバランスされないのは好ましくない。そこで本装置1では、排油管81及び戻り管82で油圧配管54と給油配管59bとを接続し、これにリリーフ弁77を設けることによって、排出された作動油を特にエアマスタシリンダ42側の給油配管59bに戻すようにし、エアマスタシリンダ42に作動油を給油側から補給するようにして、作動油量のバランスを即座に確保するようにしている。なおこの構成は、各マスタシリンダ10,42に対し個別にリザーバタンクを設けた場合にも有効である。また、排出された作動油を直接リザーバタンク58に戻すようにしてもよい。
【0063】
また、リリーフ弁77は油圧配管43に設けることもできるが、特に本装置1では次の理由から油圧配管54に設けることとしている。
【0064】
即ち、エアマスタシリンダ42による自動分断中、クラッチペダル9の踏み込みが短時間で急速になされると、エアマスタシリンダ42のクラッチ戻し側の作動ないしは油圧の抜けに時間遅れが生じる。そして仮にリリーフ弁77が油圧配管43に設けられたとして、マスタシリンダ10側の油圧でD.C.V 69が切り替わり油圧配管43を開とする前に、即ちその遅れ時間中に油圧配管43内の油圧が開弁圧以上に達すると、マスタシリンダ10側の作動油がリリーフ弁77から排出されることになる。一方、クラッチペダル9の踏み込み過程において、やがてはエアマスタシリンダ42側の油圧が抜け、D.C.V 69が切替わってマスタシリンダ10によるマニュアル分断操作に移行する。しかし、作動油が既に所定量排出されてしまっており、その排出分だけ作動油が不足しているため、クラッチペダル9を完全に踏み込んだとしても、クラッチ8を完全分断するほど十分には油圧が上がらず、結果的にクラッチ8は半接続状態となり、完全分断がなされない。
【0065】
そこで、リリーフ弁77を油圧配管54に設けるとこの問題は一挙に解決される。即ち、上記の如き時間遅れが生じた場合でも、その遅れ時間中においては、例えばエアマスタシリンダ42からの油圧でD.C.V 69が油圧配管43を閉とし続けるため、クラッチペダル9の踏み込みが規制されるだけで作動油の排出はない。或いは、クラッチペダル9の強制的な踏み込みにより、D.C.V 69が切り替わって油圧配管43を開とし且つ油圧が開弁圧以上になった場合でも、前述のような通常通りの作動油排出がなされるのみで、自動分断からマニュアル分断への移行がなされるのみである。このようにして、作動油の初期量を確保することができ、クラッチペダル9の完全踏み込みによるクラッチ8の完全分断が可能となる。そして上記不具合は確実に解決されることとなる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は上記形態の他にも様々な形態が可能である。
【0067】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0068】
(1) クラッチの自動分断時にマニュアル操作に移行する際、通常通りのクラッチペダルストロークを確保でき、操作の違和感を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクラッチ断続装置を示す構成図である。
【図2】倍力装置を示す縦断面図である。
【図3】エアマスタシリンダを示す縦断面図である。
【図4】三方弁を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 クラッチ断続装置
7 倍力装置
7a 制御バルブ部(油圧作動弁)
8 クラッチ
9 クラッチペダル
10 マスタシリンダ
34,62,67 空圧配管(空圧供給路)
42 エアマスタシリンダ
43,44,54 油圧配管(第1及び第2の油圧供給路)
65 弁体
69 ダブルチェックバルブ(三方弁)
72 コントローラ
77 リリーフ弁
Claims (3)
- 空圧の供給によりクラッチを分断操作する倍力装置と、該倍力装置への空圧供給路を開閉する油圧作動弁と、クラッチペダル操作に連動して前記油圧作動弁に油圧を供給するマスタシリンダと、コントローラによる空圧供給制御にて空圧を導入し、前記油圧作動弁に油圧を供給するエアマスタシリンダと、前記マスタシリンダ及び前記エアマスタシリンダからの油圧差に基づいて弁体を移動させ、前記マスタシリンダから前記油圧作動弁に至る第1の油圧供給路及び前記エアマスタシリンダから前記油圧作動弁に至る第2の油圧供給路を切り替える三方弁と、前記マスタシリンダから前記油圧作動弁に至る前記第1の油圧供給路に設けられ、前記油圧作動弁を開動させる油圧を越える油圧で開放し、前記第1の油圧供給路から作動油を排出するリリーフ弁とを備えたことを特徴とするクラッチ断続装置。
- 前記リリーフ弁が、前記エアマスタシリンダへの給油通路に接続された排油通路を有する請求項1記載のクラッチ断続装置。
- 前記リリーフ弁が、前記第1の油圧供給路の前記三方弁から前記油圧作動弁に至る部分に設けられた請求項1又は2記載のクラッチ断続装置。
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