JP3566996B2 - ハロゲンガスの精製方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はハロゲンガスの精製方法に関し、さらに詳細には、ハロゲンガス中に不純物として含まれる塩化水素、臭化水素およびフッ化水素などのハロゲン化水素ならびに水分を極低濃度まで除去し、ハロゲンまたはハロゲン含有高純度ガスを得るためのハロゲンガスの精製方法に関する。
【0002】
塩素、フッ素などのハロゲンガスは半導体製造プロセスにおける単結晶シリコン膜、アルミまたはアルミ合金膜のエッチングなどに比較的多量に使用されているが、昨今の半導体製造技術の著しい進歩に伴い、これらのハロゲンガスについても不純物の極めて少ないものが要求されている。
【0003】
【従来の技術】
半導体製造プロセスなどで使用されるハロゲンガスは、一般的にはガスボンベなどの容器に充填された形態で供給されるが、これらの原料ハロゲンガスには通常、5ppm程度またはそれ以上のハロゲン化水素および水分などが不純物として含有されている場合が多く、ガス供給配管など製造装置の腐食によるトラブルや半導体薄膜の食刻などによる不良製品発生の原因ともなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では、半導体製造の主原料であるシラン、アルシン、ホスフィンなどの水素化物ガスについてはその不純物である酸素を0.01ppm以下まで除去することが可能となっている(特開平3−12303号公報など)。このため同様の環境下で使用されるハロゲンガスについても上記の腐食や不良品発生防止の目的と合わせて不純物である塩化水素および水分を同様な低濃度になるまで除去することが望まれている。
【0005】
また、これらの原料ガスには半導体装置への供給過程において、ボンベの交換時や配管の切替え時などにも空気中の水分などの不純物が混入する場合も考えられるため、製造装置に入る直前で不純物を最終的に除去することが望ましいとされている。
しかしながら、塩素、フッ素などのハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分を同時に、効率よく除去する方法についての技術はほとんど知られていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意研究を続けた結果、酸化鉄を有効成分とする組成物を用いることにより、ハロゲンガス中に含まれるハロゲン化水素および水分が効率よく除去されることを見い出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、ハロゲンガスを酸化鉄を主成分とする組成物を成型してなる精製剤と接触させて、該ハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分を除去することを特徴とするハロゲンガスの精製方法である。
【0007】
本発明は塩素、フッ素、臭素などハロゲンガス単独、あるいは、これらのガスが窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈されたハロゲンガス(以下総称して単にハロゲンガスと記す)中に含有される不純物である塩化水素、臭化水素、フッ化水素のようなハロゲン化水素および水分を同時に効率よく除去するためのハロゲンガスの精製に適用される。
【0008】
本発明における酸化鉄としては、四三酸化鉄「酸化鉄(III)鉄(II)」〔Fe3 O4 〕、酸化鉄(II)〔FeO〕、その1水化物である水酸化鉄(II)〔FeO・H2 O〕、酸化鉄(III)〔Fe2 O3 〕、水酸化鉄(III)〔FeO(OH)〕などが挙げられる。
【0009】
上記の酸化鉄は、例えば、下記のようにして得ることができる。
四三酸化鉄は、硫酸鉄(II)にアンモニアを吹き込むことによって生じた水酸化鉄(II)を苛性ソーダと硝酸で酸化することによって製造することができるが、純度95%以上のものが鉄黒として市販されているので、通常はこれらの市販品を用いることができる。
また、酸化鉄(II)は、例えば酸化鉄(III)の水素還元、鉄の低酸素分圧下での加熱、しゅう酸鉄(II)を空気を絶って加熱、あるいは水酸化鉄(II)を不活性ガス雰囲気下で加熱乾燥することによって得ることができる。
水酸化鉄(II)は、例えば硫酸鉄(II)あるいは塩化鉄(II)と水酸化ナトリウムと反応などによって得ることができ、また、酸化鉄(III)、水酸化鉄(III)などは市販品が使用できる。
中でも酸化鉄(II)および水酸化鉄(II)は、一般的に不安定な化合物であり、純度の高いものを得るのは困難であるが必ずしもその必要はなく、その他の酸化鉄が混ざっていても特に支障はない。そして、通常は空気との接触を極力避けて保存され、また、取扱に際してはグローブボックスなどを用いて不活性ガス雰囲気下でおこなうことが好ましい。
【0010】
これらの酸化鉄は、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上が混合された状態で用いてもよいが、一般的には、四三酸化鉄、酸化鉄(II)、水酸化鉄(II)の含有量の多いものが望ましく、中でも四三酸化鉄を60重量%以上含むものが好ましく、さらには、80重量%以上含むものが特に好ましい。
【0011】
精製剤を得るには酸化鉄からなる組成物をそのまま成型してもよく、また、酸化鉄にアルミナ、シリカ、シリカアルミナ、アルミノシリケート、けいそう土などの担体物質を加えた組成物を成型してしてもよく、あるいは、あらかじめ成型体とされた担体物質上に酸化鉄を担持させて精製剤としてもよい。これらのうちでも酸化鉄からなる組成物をそのまま、または、担体物質と混合してから押し出し成型、打錠成型などによって成型体としたものが好ましく、中でも酸化鉄の割合が多いもの程好ましい。
【0012】
成型に際しては、成型性および成型強度を高めるなどの目的で精製剤の組成物に、粘結剤としてポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびメチルセルロースの1種または2種以上を添加することが好ましく、中でもポリビニルアルコールが特に好ましい。
粘結剤の添加量は組成物の成分の割合、成型条件などによって定められるが、精製剤用の組成物100重量部に対し、通常は0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0013】
精製剤を調製するには種々な方法があるが、例えば ▲1▼酸化鉄またはこれに担体物質などを混合したものに粘結剤を溶解した水溶液を加えてかき混ぜて得られたスラリーまたはケーキを押し出し成型し、適当な長さに切断して得られたペレットを乾燥機中で80〜150℃程度で加熱しながら乾燥して精製剤とする方法、または、 ▲2▼上記のようなスラリーまたはケーキを加熱乾燥した後粉砕し、打錠成型して精製剤とする方法、あるいは、 ▲3▼スラリーまたはケーキを造粒機などを用いて粒状に成型した後、加熱しながら乾燥させて精製剤とする方法などがある。これらのうち加工性および形状、大きさの選択の容易さなどから押し出し成型によりペレット状とし、加熱乾燥によって精製剤とする▲1▼の方法が一般的に好ましい。
【0014】
成型体の大きさおよび形状には特に制限はないが、球形、円柱状、円筒形および粒状などが代表例として挙げられる。その大きさは球状であれば直径0.5〜10mm、ペレット、タブレットなど円柱状であれば直径0.5〜10mm、高さ2〜20mm程度であり、粒状など不定形のものであれば、ふるいの目の開きで0.84〜5.66mm程度のものである。精製剤を浄化筒に充填した場合の充填密度は通常は0.6〜1.5g/ml程度のものである。
【0015】
本発明において精製剤は、通常は固定床として用いられる。精製剤は精製筒内に充填され、原料ハロゲンガスをこの精製筒内に流し、精製剤と接触させることにより不純物であるハロゲン化水素および水分が除去される。
精製筒に充填される精製剤の充填長は、実用上通常は、50〜1500mmとされる。充填長が50mmよりも短くなると精製能力が低下する恐れがあり、また、1500mmよりも長くなると圧力損失が大きくなり過ぎる恐れがある。
精製時のハロゲンガスの空筒線速度(LV)は、供給されるハロゲンガス中に含まれる不純物の濃度および各操作条件などによって異なり一概に特定はできないが、通常は、100cm/sec以下、好ましくは30cm/sec以下とされる。
【0016】
ハロゲンガスと精製剤との接触温度は一般的には200℃以下であるが、通常は常温でよく、特に加熱や冷却は必要としない。
圧力にも特に制限はなく常圧、減圧、加圧のいずれでも処理が可能であるが、通常は20kg/cm2 abs以下、好ましくは0.1〜10kg/cm2 absである。
【0017】
本発明において、不純物であるハロゲン化水素、水分の含有量が比較的多いハロゲンガスを精製するような場合には、精製剤によるハロゲン化水素および水分の除去工程に、さらに、脱湿剤による水分の除去工程を適宜組み合わせることが好ましい。
脱湿剤を組み合わせる方法としては、精製筒内の前段に精製剤、後段に脱湿剤を充填する方法、精製剤と脱湿剤とを混合した状態で精製筒内に充填し、精製、脱湿を同時におこなう方法、あるいは、精製剤のみが充填された精製筒の出口側に別途に脱湿剤を充填した脱湿筒を直列に接続する方法などが用いられる。
【0018】
脱湿剤はハロゲンガスの純度などに悪影響を与える恐れがなく、ガス中に含まれる水分を効率よく除去しうるものであればその種類には特に制限はないが、一般的には合成ゼオライトなどが好ましく、例えば、モレキュラーシーブ3Aおよび5Aなどが好適である。
このように脱湿剤を組み合わせることによってハロゲンガス中の水分は確実に除去され、極めて高純度の精製ガスを得ることができる。
【0019】
【実施例】
実施例1
(精製剤の調製)
四三酸化鉄(関東化学(株)製、鹿1級、純度95%以上)108gにポリビニルアルコール(PVA、信越化学(株)製、PA−05)4gを24gの水に溶かした溶液を加えてかき混ぜた。得られたケーキを押し出し成型機(フジパウダル社製)によって1.6mmφのノズル板より押し出した成型物を切断して長さ3〜5mm程度のペレットとし、乾燥機中120℃で加熱しながら約12時間乾燥することによって104gの精製剤Aを得た。このものの充填密度は0.72g/mlであった。結果を表1に示す。
【0020】
(塩素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ400mmのステンレス製の精製筒に、精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)充填した。
この精製筒に市販の塩素ガスボンベの塩素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0021】
(腐食試験)
ハロゲンガス中に含まれる比較的微量のハロゲン化水素および水分を測定する方法は未だ確立されていないため、精製ハロゲンガスの評価は次のようにしておこなった。精製筒から出る精製塩素ガスを内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡(島津製作所)によって観察した。その結果、腐食は全く認められなかった。結果を表2に示す。
【0022】
実施例2〜6
(各精製剤の調製)
精製剤B
粘結剤としてポリビニルアルコール(PVA)を用いる代わりにポリエチレングリコール(PEG、関東化学(株)製)4gを24gの水に溶かしたものを用いた他は、実施例1におけると同様にして調製し、精製剤Bを得た。その収量は98gで、充填密度は0.68g/mlであった。
【0023】
精製剤C
アルゴン雰囲気としたグローブボックス内で市販の硫酸鉄(II)7水塩(関東化学(株)製)1Kg(3.6モル)を10Lの水に溶解し、これに化学量論量の水酸化ナトリウム20%水溶液を加えて攪拌し、水酸化鉄(II)を沈澱させた。上澄み液をデカンテーションによって除き、残った沈澱物を水洗した後、アルゴン雰囲気とした乾燥機中120℃で5時間加熱乾燥して約232gの酸化鉄(II)を得た。
アルゴン雰囲気としたグローブボックス内で上記の酸化鉄(II)100gにポリビニルアルコール4gを24g水に溶かしたものを用いた他は、実施例1における精製剤Aと同様にして調製し、精製剤Cを得た。収量は90gで、充填密度は0.68g/mlであった。
【0024】
精製剤D
四三酸化鉄60gと酸化鉄(III)(関東化学(株)製、鹿1級、純度95%以上)40gにポリビニルアルコール4gを24gの水に溶かした溶液を加えてかき混ぜた。得られたケーキを押し出し成型機(フジパウダル社製)によって1.6mmφのノズル板より押し出した成型物を切断して長さ3〜5mm程度のペレットとし、乾燥機中120℃で加熱しながら約12時間乾燥することによって86gの精製剤Dを調製した。このものの充填密度は0.71g/mlであった。
【0025】
精製剤E
四三酸化鉄108gにシリカゾル(アエロジル130)10gと水20gを加えてかき混ぜた。得られたケーキを押し出し成型機(フジパウダル社製)によって1.6mmφのノズル板より押し出した成型物を切断して長さ3〜5mm程度のペレットとし、乾燥機中120℃で加熱しながら約12時間乾燥することによって106gの精製剤Eを調製した。このものの充填密度は0.73g/mlであった。
精製剤B〜Eの成分などを表1に示す。
【0026】
実施例2〜5
精製剤B〜Eのそれぞれについて、実施例1におけると同様にして塩素ガスの精製および配管の腐食性試験をおこなった。
(塩素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ400mmのステンレス製の精製筒に、精製剤B、C、DまたはEを63.1ml(充填長300mm)充填した。
この精製筒に市販の塩素ガスボンベの塩素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0027】
(腐食試験)
各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、実施例1におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった。
すなわち、各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、それぞれの配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、いずれの場合にも腐食は全く認められなかった。これらの結果を表2に示す。
【0028】
実施例6
(フッ素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ400mmのステンレス製の精製筒に実施例1で調製した精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)充填した。
この精製筒に市販のフッ素ガスボンベのフッ素ガスを、0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0029】
(腐食試験)
精製筒から出る精製フッ素ガスを内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡観察した。
その結果、腐食は全く認められなかった。結果を表2に示す。
【0030】
比較例1
ボンベからの塩素ガスを精製筒を通さずに、直接に3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に0.633L/min(LV=5cm/sec)で16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、僅かではあるが明らかな腐食の発生が認められた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
実施例7
(塩素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ600mmのステンレス製の精製筒の前段に、精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)、後段にモレキュラーシーブ3Aを31.6ml(充填長150mm)充填した。
この精製筒に、ボンベからの塩素ガスに対し、不純物として塩化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するようにそれぞれをマスフローコントローラーを用いて添加した塩素ガスを、0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0034】
(腐食試験)
精製筒から出る精製塩素ガスについて実施例1におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった。
すなわち、精製塩素ガスを内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、その配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、腐食は全く認められなかった。その結果を表3に示す。
【0035】
実施例8〜11
内径16.4mmφ、長さ600mmのステンレス製の各精製筒の前段に精製剤B、C、DまたはEを63.1ml(充填長300mm)、それぞれの後段にモレキュラーシーブ3Aを31.6ml(充填長150mm)充填した。
(塩素ガスの精製)それぞれの精製筒に、ボンベからの塩素ガスに対し、不純物として塩化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するようにそれぞれマスフローコントローラーを用いて添加した塩素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0036】
(腐食試験)
各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、実施例7におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった。
すなわち、各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、それぞれの配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、いずれの場合にも腐食は全く認められなかった。これらの結果を表3に示す。
【0037】
実施例12
(フッ素ガスの精製)内径16.4mmφ、長さが600mmのステンレス製の精製筒の前段に精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)、後段にモレキュラーシーブ3Aを31.6ml(充填長150mm)充填した。この精製筒に、ボンベからのフッ素ガスに対し、不純物としてフッ化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するようにそれぞれをマスフローコントローラーを用いて添加したフッ素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0038】
(腐食試験)
精製筒から出る精製フッ素ガスについて実施例7におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった結果、腐食は全く認められなかった。結果を表3に示す。
【0039】
比較例2
実施例7におけると同様にボンベからの塩素ガスにマスフローコントローラーを用い、不純物として塩化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するように添加した塩素ガスを、精製筒を通さずに、直接に3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に0.633L/min(LV=5cm/sec)で16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を観察した。
その結果、顕微鏡で見るまでもなく、肉眼でも著しい腐食が生じていることが認められた。
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】
本発明は、四三酸化鉄などの酸化鉄を主成分とする精製剤を用いることによって従来除去が困難であったハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分などを効率よく除去することができ、高純度の精製ガスを得ることができる。また、水分など不純物の含有量が多いような場合には、精製剤に合成ゼオライトなどの脱湿剤を組み合わせることにより、さらに完全に精製することが可能となった。
従って、半導体製造装置のガス供給配管などの腐食によるトラブルやドライエッチングによるアフターコロージョン、アルミニウムラインパターンの食刻などによる不良品の発生を確実に防止することができるようになった。
【産業上の利用分野】
本発明はハロゲンガスの精製方法に関し、さらに詳細には、ハロゲンガス中に不純物として含まれる塩化水素、臭化水素およびフッ化水素などのハロゲン化水素ならびに水分を極低濃度まで除去し、ハロゲンまたはハロゲン含有高純度ガスを得るためのハロゲンガスの精製方法に関する。
【0002】
塩素、フッ素などのハロゲンガスは半導体製造プロセスにおける単結晶シリコン膜、アルミまたはアルミ合金膜のエッチングなどに比較的多量に使用されているが、昨今の半導体製造技術の著しい進歩に伴い、これらのハロゲンガスについても不純物の極めて少ないものが要求されている。
【0003】
【従来の技術】
半導体製造プロセスなどで使用されるハロゲンガスは、一般的にはガスボンベなどの容器に充填された形態で供給されるが、これらの原料ハロゲンガスには通常、5ppm程度またはそれ以上のハロゲン化水素および水分などが不純物として含有されている場合が多く、ガス供給配管など製造装置の腐食によるトラブルや半導体薄膜の食刻などによる不良製品発生の原因ともなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では、半導体製造の主原料であるシラン、アルシン、ホスフィンなどの水素化物ガスについてはその不純物である酸素を0.01ppm以下まで除去することが可能となっている(特開平3−12303号公報など)。このため同様の環境下で使用されるハロゲンガスについても上記の腐食や不良品発生防止の目的と合わせて不純物である塩化水素および水分を同様な低濃度になるまで除去することが望まれている。
【0005】
また、これらの原料ガスには半導体装置への供給過程において、ボンベの交換時や配管の切替え時などにも空気中の水分などの不純物が混入する場合も考えられるため、製造装置に入る直前で不純物を最終的に除去することが望ましいとされている。
しかしながら、塩素、フッ素などのハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分を同時に、効率よく除去する方法についての技術はほとんど知られていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意研究を続けた結果、酸化鉄を有効成分とする組成物を用いることにより、ハロゲンガス中に含まれるハロゲン化水素および水分が効率よく除去されることを見い出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、ハロゲンガスを酸化鉄を主成分とする組成物を成型してなる精製剤と接触させて、該ハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分を除去することを特徴とするハロゲンガスの精製方法である。
【0007】
本発明は塩素、フッ素、臭素などハロゲンガス単独、あるいは、これらのガスが窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈されたハロゲンガス(以下総称して単にハロゲンガスと記す)中に含有される不純物である塩化水素、臭化水素、フッ化水素のようなハロゲン化水素および水分を同時に効率よく除去するためのハロゲンガスの精製に適用される。
【0008】
本発明における酸化鉄としては、四三酸化鉄「酸化鉄(III)鉄(II)」〔Fe3 O4 〕、酸化鉄(II)〔FeO〕、その1水化物である水酸化鉄(II)〔FeO・H2 O〕、酸化鉄(III)〔Fe2 O3 〕、水酸化鉄(III)〔FeO(OH)〕などが挙げられる。
【0009】
上記の酸化鉄は、例えば、下記のようにして得ることができる。
四三酸化鉄は、硫酸鉄(II)にアンモニアを吹き込むことによって生じた水酸化鉄(II)を苛性ソーダと硝酸で酸化することによって製造することができるが、純度95%以上のものが鉄黒として市販されているので、通常はこれらの市販品を用いることができる。
また、酸化鉄(II)は、例えば酸化鉄(III)の水素還元、鉄の低酸素分圧下での加熱、しゅう酸鉄(II)を空気を絶って加熱、あるいは水酸化鉄(II)を不活性ガス雰囲気下で加熱乾燥することによって得ることができる。
水酸化鉄(II)は、例えば硫酸鉄(II)あるいは塩化鉄(II)と水酸化ナトリウムと反応などによって得ることができ、また、酸化鉄(III)、水酸化鉄(III)などは市販品が使用できる。
中でも酸化鉄(II)および水酸化鉄(II)は、一般的に不安定な化合物であり、純度の高いものを得るのは困難であるが必ずしもその必要はなく、その他の酸化鉄が混ざっていても特に支障はない。そして、通常は空気との接触を極力避けて保存され、また、取扱に際してはグローブボックスなどを用いて不活性ガス雰囲気下でおこなうことが好ましい。
【0010】
これらの酸化鉄は、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上が混合された状態で用いてもよいが、一般的には、四三酸化鉄、酸化鉄(II)、水酸化鉄(II)の含有量の多いものが望ましく、中でも四三酸化鉄を60重量%以上含むものが好ましく、さらには、80重量%以上含むものが特に好ましい。
【0011】
精製剤を得るには酸化鉄からなる組成物をそのまま成型してもよく、また、酸化鉄にアルミナ、シリカ、シリカアルミナ、アルミノシリケート、けいそう土などの担体物質を加えた組成物を成型してしてもよく、あるいは、あらかじめ成型体とされた担体物質上に酸化鉄を担持させて精製剤としてもよい。これらのうちでも酸化鉄からなる組成物をそのまま、または、担体物質と混合してから押し出し成型、打錠成型などによって成型体としたものが好ましく、中でも酸化鉄の割合が多いもの程好ましい。
【0012】
成型に際しては、成型性および成型強度を高めるなどの目的で精製剤の組成物に、粘結剤としてポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびメチルセルロースの1種または2種以上を添加することが好ましく、中でもポリビニルアルコールが特に好ましい。
粘結剤の添加量は組成物の成分の割合、成型条件などによって定められるが、精製剤用の組成物100重量部に対し、通常は0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0013】
精製剤を調製するには種々な方法があるが、例えば ▲1▼酸化鉄またはこれに担体物質などを混合したものに粘結剤を溶解した水溶液を加えてかき混ぜて得られたスラリーまたはケーキを押し出し成型し、適当な長さに切断して得られたペレットを乾燥機中で80〜150℃程度で加熱しながら乾燥して精製剤とする方法、または、 ▲2▼上記のようなスラリーまたはケーキを加熱乾燥した後粉砕し、打錠成型して精製剤とする方法、あるいは、 ▲3▼スラリーまたはケーキを造粒機などを用いて粒状に成型した後、加熱しながら乾燥させて精製剤とする方法などがある。これらのうち加工性および形状、大きさの選択の容易さなどから押し出し成型によりペレット状とし、加熱乾燥によって精製剤とする▲1▼の方法が一般的に好ましい。
【0014】
成型体の大きさおよび形状には特に制限はないが、球形、円柱状、円筒形および粒状などが代表例として挙げられる。その大きさは球状であれば直径0.5〜10mm、ペレット、タブレットなど円柱状であれば直径0.5〜10mm、高さ2〜20mm程度であり、粒状など不定形のものであれば、ふるいの目の開きで0.84〜5.66mm程度のものである。精製剤を浄化筒に充填した場合の充填密度は通常は0.6〜1.5g/ml程度のものである。
【0015】
本発明において精製剤は、通常は固定床として用いられる。精製剤は精製筒内に充填され、原料ハロゲンガスをこの精製筒内に流し、精製剤と接触させることにより不純物であるハロゲン化水素および水分が除去される。
精製筒に充填される精製剤の充填長は、実用上通常は、50〜1500mmとされる。充填長が50mmよりも短くなると精製能力が低下する恐れがあり、また、1500mmよりも長くなると圧力損失が大きくなり過ぎる恐れがある。
精製時のハロゲンガスの空筒線速度(LV)は、供給されるハロゲンガス中に含まれる不純物の濃度および各操作条件などによって異なり一概に特定はできないが、通常は、100cm/sec以下、好ましくは30cm/sec以下とされる。
【0016】
ハロゲンガスと精製剤との接触温度は一般的には200℃以下であるが、通常は常温でよく、特に加熱や冷却は必要としない。
圧力にも特に制限はなく常圧、減圧、加圧のいずれでも処理が可能であるが、通常は20kg/cm2 abs以下、好ましくは0.1〜10kg/cm2 absである。
【0017】
本発明において、不純物であるハロゲン化水素、水分の含有量が比較的多いハロゲンガスを精製するような場合には、精製剤によるハロゲン化水素および水分の除去工程に、さらに、脱湿剤による水分の除去工程を適宜組み合わせることが好ましい。
脱湿剤を組み合わせる方法としては、精製筒内の前段に精製剤、後段に脱湿剤を充填する方法、精製剤と脱湿剤とを混合した状態で精製筒内に充填し、精製、脱湿を同時におこなう方法、あるいは、精製剤のみが充填された精製筒の出口側に別途に脱湿剤を充填した脱湿筒を直列に接続する方法などが用いられる。
【0018】
脱湿剤はハロゲンガスの純度などに悪影響を与える恐れがなく、ガス中に含まれる水分を効率よく除去しうるものであればその種類には特に制限はないが、一般的には合成ゼオライトなどが好ましく、例えば、モレキュラーシーブ3Aおよび5Aなどが好適である。
このように脱湿剤を組み合わせることによってハロゲンガス中の水分は確実に除去され、極めて高純度の精製ガスを得ることができる。
【0019】
【実施例】
実施例1
(精製剤の調製)
四三酸化鉄(関東化学(株)製、鹿1級、純度95%以上)108gにポリビニルアルコール(PVA、信越化学(株)製、PA−05)4gを24gの水に溶かした溶液を加えてかき混ぜた。得られたケーキを押し出し成型機(フジパウダル社製)によって1.6mmφのノズル板より押し出した成型物を切断して長さ3〜5mm程度のペレットとし、乾燥機中120℃で加熱しながら約12時間乾燥することによって104gの精製剤Aを得た。このものの充填密度は0.72g/mlであった。結果を表1に示す。
【0020】
(塩素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ400mmのステンレス製の精製筒に、精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)充填した。
この精製筒に市販の塩素ガスボンベの塩素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0021】
(腐食試験)
ハロゲンガス中に含まれる比較的微量のハロゲン化水素および水分を測定する方法は未だ確立されていないため、精製ハロゲンガスの評価は次のようにしておこなった。精製筒から出る精製塩素ガスを内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡(島津製作所)によって観察した。その結果、腐食は全く認められなかった。結果を表2に示す。
【0022】
実施例2〜6
(各精製剤の調製)
精製剤B
粘結剤としてポリビニルアルコール(PVA)を用いる代わりにポリエチレングリコール(PEG、関東化学(株)製)4gを24gの水に溶かしたものを用いた他は、実施例1におけると同様にして調製し、精製剤Bを得た。その収量は98gで、充填密度は0.68g/mlであった。
【0023】
精製剤C
アルゴン雰囲気としたグローブボックス内で市販の硫酸鉄(II)7水塩(関東化学(株)製)1Kg(3.6モル)を10Lの水に溶解し、これに化学量論量の水酸化ナトリウム20%水溶液を加えて攪拌し、水酸化鉄(II)を沈澱させた。上澄み液をデカンテーションによって除き、残った沈澱物を水洗した後、アルゴン雰囲気とした乾燥機中120℃で5時間加熱乾燥して約232gの酸化鉄(II)を得た。
アルゴン雰囲気としたグローブボックス内で上記の酸化鉄(II)100gにポリビニルアルコール4gを24g水に溶かしたものを用いた他は、実施例1における精製剤Aと同様にして調製し、精製剤Cを得た。収量は90gで、充填密度は0.68g/mlであった。
【0024】
精製剤D
四三酸化鉄60gと酸化鉄(III)(関東化学(株)製、鹿1級、純度95%以上)40gにポリビニルアルコール4gを24gの水に溶かした溶液を加えてかき混ぜた。得られたケーキを押し出し成型機(フジパウダル社製)によって1.6mmφのノズル板より押し出した成型物を切断して長さ3〜5mm程度のペレットとし、乾燥機中120℃で加熱しながら約12時間乾燥することによって86gの精製剤Dを調製した。このものの充填密度は0.71g/mlであった。
【0025】
精製剤E
四三酸化鉄108gにシリカゾル(アエロジル130)10gと水20gを加えてかき混ぜた。得られたケーキを押し出し成型機(フジパウダル社製)によって1.6mmφのノズル板より押し出した成型物を切断して長さ3〜5mm程度のペレットとし、乾燥機中120℃で加熱しながら約12時間乾燥することによって106gの精製剤Eを調製した。このものの充填密度は0.73g/mlであった。
精製剤B〜Eの成分などを表1に示す。
【0026】
実施例2〜5
精製剤B〜Eのそれぞれについて、実施例1におけると同様にして塩素ガスの精製および配管の腐食性試験をおこなった。
(塩素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ400mmのステンレス製の精製筒に、精製剤B、C、DまたはEを63.1ml(充填長300mm)充填した。
この精製筒に市販の塩素ガスボンベの塩素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0027】
(腐食試験)
各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、実施例1におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった。
すなわち、各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、それぞれの配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、いずれの場合にも腐食は全く認められなかった。これらの結果を表2に示す。
【0028】
実施例6
(フッ素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ400mmのステンレス製の精製筒に実施例1で調製した精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)充填した。
この精製筒に市販のフッ素ガスボンベのフッ素ガスを、0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0029】
(腐食試験)
精製筒から出る精製フッ素ガスを内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡観察した。
その結果、腐食は全く認められなかった。結果を表2に示す。
【0030】
比較例1
ボンベからの塩素ガスを精製筒を通さずに、直接に3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に0.633L/min(LV=5cm/sec)で16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、僅かではあるが明らかな腐食の発生が認められた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
実施例7
(塩素ガスの精製)
内径16.4mmφ、長さ600mmのステンレス製の精製筒の前段に、精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)、後段にモレキュラーシーブ3Aを31.6ml(充填長150mm)充填した。
この精製筒に、ボンベからの塩素ガスに対し、不純物として塩化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するようにそれぞれをマスフローコントローラーを用いて添加した塩素ガスを、0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0034】
(腐食試験)
精製筒から出る精製塩素ガスについて実施例1におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった。
すなわち、精製塩素ガスを内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、その配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、腐食は全く認められなかった。その結果を表3に示す。
【0035】
実施例8〜11
内径16.4mmφ、長さ600mmのステンレス製の各精製筒の前段に精製剤B、C、DまたはEを63.1ml(充填長300mm)、それぞれの後段にモレキュラーシーブ3Aを31.6ml(充填長150mm)充填した。
(塩素ガスの精製)それぞれの精製筒に、ボンベからの塩素ガスに対し、不純物として塩化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するようにそれぞれマスフローコントローラーを用いて添加した塩素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0036】
(腐食試験)
各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、実施例7におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった。
すなわち、各精製筒から出る精製塩素ガスのそれぞれについて、内面が電解研磨された3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に16時間連続的に流した後、それぞれの配管を縦割りに切断し、その内面を走査電子顕微鏡によって観察した。
その結果、いずれの場合にも腐食は全く認められなかった。これらの結果を表3に示す。
【0037】
実施例12
(フッ素ガスの精製)内径16.4mmφ、長さが600mmのステンレス製の精製筒の前段に精製剤Aを63.1ml(充填長300mm)、後段にモレキュラーシーブ3Aを31.6ml(充填長150mm)充填した。この精製筒に、ボンベからのフッ素ガスに対し、不純物としてフッ化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するようにそれぞれをマスフローコントローラーを用いて添加したフッ素ガスを0.633L/min(LV=5cm/sec)で流しながら精製をおこなった。
【0038】
(腐食試験)
精製筒から出る精製フッ素ガスについて実施例7におけると同様にして配管の腐食試験をおこなった結果、腐食は全く認められなかった。結果を表3に示す。
【0039】
比較例2
実施例7におけると同様にボンベからの塩素ガスにマスフローコントローラーを用い、不純物として塩化水素が50ppm、水分が200ppmづつ増加するように添加した塩素ガスを、精製筒を通さずに、直接に3/8インチのSUS316L−EP(長さ400mm)配管に0.633L/min(LV=5cm/sec)で16時間連続的に流した後、この配管を縦割りに切断し、その内面を観察した。
その結果、顕微鏡で見るまでもなく、肉眼でも著しい腐食が生じていることが認められた。
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】
本発明は、四三酸化鉄などの酸化鉄を主成分とする精製剤を用いることによって従来除去が困難であったハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分などを効率よく除去することができ、高純度の精製ガスを得ることができる。また、水分など不純物の含有量が多いような場合には、精製剤に合成ゼオライトなどの脱湿剤を組み合わせることにより、さらに完全に精製することが可能となった。
従って、半導体製造装置のガス供給配管などの腐食によるトラブルやドライエッチングによるアフターコロージョン、アルミニウムラインパターンの食刻などによる不良品の発生を確実に防止することができるようになった。
Claims (8)
- ハロゲンガスを酸化鉄を主成分とする組成物を成型してなる精製剤と接触させて、該ハロゲンガス中に含まれる不純物であるハロゲン化水素および水分を除去することを特徴とするハロゲンガスの精製方法。
- ハロゲンガスが塩素、フッ素、臭素、または、これらが不活性ガスで希釈されたガスである請求項1に記載の精製方法。
- ハロゲン化水素が塩化水素、ふっ化水素および臭化水素の少なくとも1種である請求項1に記載の精製方法。
- 酸化鉄が四三酸化鉄、酸化鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(III)および水酸化鉄(III)から選ばれる1種または2種以上である請求項1に記載の精製方法。
- 酸化鉄中の四三酸化鉄の含有量が60重量%以上である請求項4に記載の精製方法。
- 組成物の成型に際し、粘結剤としてポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびメチルセルロースから選ばれる1種または2種以上が添加される請求項1に記載の精製方法。
- ハロゲンガスと精製剤との接触工程に、脱湿剤との接触工程が組み合わせられた請求項1に記載の精製方法。
- 脱湿剤が合成ゼオライトである請求項7に記載の精製方法。
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