JP3566981B2 - メラニン生成阻害剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、色白効果の優れた化粧料、シミ、ソバカス等の防止効果に優れた外用医薬部外品、食肉等生鮮食料品の褐変防止剤、養殖魚体表の黒化防止剤等として有用なメラニン生成阻害剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メラニンはチロシンやジヒドロキシフェニルアラニン(ドーパ)等のフェノール性化合物を基質とし、チロシナーゼと称する酸化酵素の作用により合成される黒色から褐色を呈する高分子物質であり、微生物、植物及び動物など自然界に幅広く分布し、さまざまな悪影響から身を守る重要な役割を担っている。
【0003】
しかし、このチロシナーゼの作用により引き起こされる局所的なメラニンの異常な生成は、人ではシミ・ソバカスの原因となることが知られている。そこでこれまでに数々のメラニン生成阻害剤が開発され、化粧料に配合されている。例えば、アスコルビン酸類やハイドロキノンなどである。しかし、これらの化合物は熱、空気に対して極めて不安定であり、分解、着色等の変性を生じやすく、また安全性上問題がある物質を含むなど十分な効果が得られていないのが現状である。したがって、より安全性の高い化合物の開発が望まれている。
【0004】
また食肉、魚介類等の生鮮食料品の褐変もメラニンの形成に由来するものであり、いったん生成するとその商品的価値を著しく低下させる。したがってそれらの防止剤に対するニーズは非常に高いと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたもので、新規なメラニン生成阻害剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規なメラニン生成阻害剤を開発する目的で数々の物質をスクリーニングした結果、ピオケリンが極めて優れたメラニン生成阻害効果を有することを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次式(I):
【0007】
【化2】
【0008】
で示されるピオケリンを有効成分として含有することを特徴とするメラニン生成阻害剤である。
以下、本発明を詳細に説明する。
ピオケリンは、公知物質であり(Proceeding of National Academy Science USA, 78, 4256−4260 (1981)) 、種々の方法で合成することができる (Journal ofBacteriorogy, 170, 5344−5351(1988))。例えば、オルトシアノフェノールとL−システイン・塩酸塩をエタノール中重炭酸ナトリウムとともに還流後、ピベリジンを加えさらに還流させ、 2−(o−hydroxyphenyl)−2−thiazoline−4−carboxylicacid を得る。この化合物にテキシルボランを作用させアルデヒド体にした後、酢酸カリウム存在下、L−N−メチルシステインと反応させピオケリンを得ることができる。また、微生物培養液を精製することによっても得ることができる(Journalof Bacteriology, 137, 357−364 (1979))。例えば、シユードモナス・アエルギノサATCC15692 を0.25%のカザミノ酸と0.2mM の塩化マグネシウムを含むpH 7.5の液体培地中37℃で30時間培養した後、培養上清から溶媒抽出し、各種カラムクロマトグラフィーを行うことにより得ることができるが、特に制限されるものではない。
【0009】
本発明のメラニン生成阻害剤は、ピオケリンを有効成分とするが、本発明の範囲には、ピオケリンのみならず、ピオケリンの塩を有効成分とするメラニン生成阻害剤も含まれる。このようなピオケリンの塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。
ピオケリンはメラニン生合成過程ではたらくチロシナーゼ又はチロシナーゼ様酵素等の作用を阻害することによりメラニンの生成を抑制する。ここでチロシナーゼ様酵素とは、メラニンの生合成に関与し、チロシン等を基質とし茶褐色から黒褐色の色素への反応を触媒するチロシナーゼに類する酵素をいい、このような酵素を産生する微生物としては、例えば、メラニン形成能を有するビブリオ細菌、放線菌等を挙げることができる。メラニン生合成を有効に阻害するためのピオケリンの濃度は、阻害対象とするチロシナーゼ等の濃度により異なるが、例えば、チロシナーゼ濃度が 2000U/ml であれば、1〜2000μg/ml、好ましくは10〜500μg/ml程度である。
【0010】
本発明のメラニン生成阻害剤は、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデションその他の剤型を有する化粧料、軟膏剤、ローション剤などの外用医薬部外品、食品添加物または養殖魚の飼料などに混合して用いることができるが、これらに限定されてるものではない。配合量としては、特に制限されるものではないが、例えば、ローション剤としての化粧料ではピオケリンの含有量が0.01〜10重量%、好ましくは 0.1〜5重量%、軟膏剤としての外用医薬部外品では0.01〜20重量%、好ましくは 0.1〜10重量%の範囲とするのが適当である。また、食品添加物として使用する場合であれば、食品中のピオケリンの含有量が0.01〜10重量%、好ましくは 0.1〜5重量%の範囲になるように添加し、養殖魚用飼料に混合する場合であれば、飼料中のピオケリン含有量が0.01〜5重量%、好ましくは 0.1〜3重量%の範囲になるように混合するのが適当である。
【0011】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
メラニン生成阻害活性を以下のようにして測定した。まず、0.1 M リン酸緩衝液 (pH 6.5) (2.4 ml)に、0.05 Mリン酸緩衝液 (pH 6.5) に溶解したマッシュルーム由来チロシナーゼ (2000 U/ml 、0.1 ml) 及び阻害剤を加えない溶液(コントロール) (0.1 ml) を加え、さらに 0.05 M リン酸緩衝液 (pH 6.5) に溶解した1.5 mM L−チロシン溶液 (0.4 ml) を加え反応を開始し、25℃で10分間、475 nmの吸光度(OD)を紫外可視分光光度計により経時的に測定した。10分後のODから反応開始時のODを差し引いたものをコントロールODとした。次に、同様の方法により阻害剤を加えた溶液(サンプル)を測定し、同様にサンプルODを算出した。阻害活性は以下の式により算出した。
チロシナーゼに対するピオケリンの阻害作用を図1に示す。図中、(A)は反応液中にピオケリンを加えないとき、(B)はピオケリンを100 μg/ml加えたとき、(C)はピオケリンを25μg/ml加えたときのものである。なお、475nm における吸光度は、チロシナーゼの作用によりチロシンが酸化されることにより得られるドーパクロムの生成量に対応する。
【0012】
また、各濃度でのチロシナーゼ阻害活性を表1に示す。
これらの結果から、本発明のピオケリンはチロシナーゼに対して阻害活性を有することが判る。
【0013】
〔実施例2〕
メラニン形成能があるVibrio属細菌をL−チロシンを含む寒天培地上に植菌した後、各濃度のピオケリン溶液を加え乾燥させたペーパーディスク(直径8 mm)を寒天プレート上に置いた。そのプレートを30℃で20時間培養し、メラニン形成阻害剤により得られた阻止円(mm i.d. )をプレートの底側から測定した。その結果を表2に示す。
これらの結果からも同様に、Vibrio属細菌が産生するチロシナーゼ様酵素を阻害し、メラニンの形成を抑制していることが判明した。
【0014】
〔実施例3〕
本発明のメラニン生成阻害剤の配合例を以下に示す。なお、以下の配合例において、配合量は重量%を示す。
配合例1 (ローション)
ピオケリン 5.0
プロピレングリコール 15.0
エタノール 20.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
香料 0.5
精製水 59.0
配合例2 (軟膏)
ピオケリン 5.0
白色ワセリン 95.0
【0015】
【発明の効果】
本発明のメラニン生成阻害剤は、メラニン生成阻害効果を有し、シミ、ソバカスの改善・防止、食肉、魚介類の褐変防止、養殖魚体表の黒化防止にきわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】チロシナーゼの作用によりL−チロシンが酸化されることにより得られるドーパクロムの生成量を経時的に示したものである。
【産業上の利用分野】
本発明は、色白効果の優れた化粧料、シミ、ソバカス等の防止効果に優れた外用医薬部外品、食肉等生鮮食料品の褐変防止剤、養殖魚体表の黒化防止剤等として有用なメラニン生成阻害剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メラニンはチロシンやジヒドロキシフェニルアラニン(ドーパ)等のフェノール性化合物を基質とし、チロシナーゼと称する酸化酵素の作用により合成される黒色から褐色を呈する高分子物質であり、微生物、植物及び動物など自然界に幅広く分布し、さまざまな悪影響から身を守る重要な役割を担っている。
【0003】
しかし、このチロシナーゼの作用により引き起こされる局所的なメラニンの異常な生成は、人ではシミ・ソバカスの原因となることが知られている。そこでこれまでに数々のメラニン生成阻害剤が開発され、化粧料に配合されている。例えば、アスコルビン酸類やハイドロキノンなどである。しかし、これらの化合物は熱、空気に対して極めて不安定であり、分解、着色等の変性を生じやすく、また安全性上問題がある物質を含むなど十分な効果が得られていないのが現状である。したがって、より安全性の高い化合物の開発が望まれている。
【0004】
また食肉、魚介類等の生鮮食料品の褐変もメラニンの形成に由来するものであり、いったん生成するとその商品的価値を著しく低下させる。したがってそれらの防止剤に対するニーズは非常に高いと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたもので、新規なメラニン生成阻害剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規なメラニン生成阻害剤を開発する目的で数々の物質をスクリーニングした結果、ピオケリンが極めて優れたメラニン生成阻害効果を有することを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次式(I):
【0007】
【化2】
【0008】
で示されるピオケリンを有効成分として含有することを特徴とするメラニン生成阻害剤である。
以下、本発明を詳細に説明する。
ピオケリンは、公知物質であり(Proceeding of National Academy Science USA, 78, 4256−4260 (1981)) 、種々の方法で合成することができる (Journal ofBacteriorogy, 170, 5344−5351(1988))。例えば、オルトシアノフェノールとL−システイン・塩酸塩をエタノール中重炭酸ナトリウムとともに還流後、ピベリジンを加えさらに還流させ、 2−(o−hydroxyphenyl)−2−thiazoline−4−carboxylicacid を得る。この化合物にテキシルボランを作用させアルデヒド体にした後、酢酸カリウム存在下、L−N−メチルシステインと反応させピオケリンを得ることができる。また、微生物培養液を精製することによっても得ることができる(Journalof Bacteriology, 137, 357−364 (1979))。例えば、シユードモナス・アエルギノサATCC15692 を0.25%のカザミノ酸と0.2mM の塩化マグネシウムを含むpH 7.5の液体培地中37℃で30時間培養した後、培養上清から溶媒抽出し、各種カラムクロマトグラフィーを行うことにより得ることができるが、特に制限されるものではない。
【0009】
本発明のメラニン生成阻害剤は、ピオケリンを有効成分とするが、本発明の範囲には、ピオケリンのみならず、ピオケリンの塩を有効成分とするメラニン生成阻害剤も含まれる。このようなピオケリンの塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。
ピオケリンはメラニン生合成過程ではたらくチロシナーゼ又はチロシナーゼ様酵素等の作用を阻害することによりメラニンの生成を抑制する。ここでチロシナーゼ様酵素とは、メラニンの生合成に関与し、チロシン等を基質とし茶褐色から黒褐色の色素への反応を触媒するチロシナーゼに類する酵素をいい、このような酵素を産生する微生物としては、例えば、メラニン形成能を有するビブリオ細菌、放線菌等を挙げることができる。メラニン生合成を有効に阻害するためのピオケリンの濃度は、阻害対象とするチロシナーゼ等の濃度により異なるが、例えば、チロシナーゼ濃度が 2000U/ml であれば、1〜2000μg/ml、好ましくは10〜500μg/ml程度である。
【0010】
本発明のメラニン生成阻害剤は、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデションその他の剤型を有する化粧料、軟膏剤、ローション剤などの外用医薬部外品、食品添加物または養殖魚の飼料などに混合して用いることができるが、これらに限定されてるものではない。配合量としては、特に制限されるものではないが、例えば、ローション剤としての化粧料ではピオケリンの含有量が0.01〜10重量%、好ましくは 0.1〜5重量%、軟膏剤としての外用医薬部外品では0.01〜20重量%、好ましくは 0.1〜10重量%の範囲とするのが適当である。また、食品添加物として使用する場合であれば、食品中のピオケリンの含有量が0.01〜10重量%、好ましくは 0.1〜5重量%の範囲になるように添加し、養殖魚用飼料に混合する場合であれば、飼料中のピオケリン含有量が0.01〜5重量%、好ましくは 0.1〜3重量%の範囲になるように混合するのが適当である。
【0011】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
メラニン生成阻害活性を以下のようにして測定した。まず、0.1 M リン酸緩衝液 (pH 6.5) (2.4 ml)に、0.05 Mリン酸緩衝液 (pH 6.5) に溶解したマッシュルーム由来チロシナーゼ (2000 U/ml 、0.1 ml) 及び阻害剤を加えない溶液(コントロール) (0.1 ml) を加え、さらに 0.05 M リン酸緩衝液 (pH 6.5) に溶解した1.5 mM L−チロシン溶液 (0.4 ml) を加え反応を開始し、25℃で10分間、475 nmの吸光度(OD)を紫外可視分光光度計により経時的に測定した。10分後のODから反応開始時のODを差し引いたものをコントロールODとした。次に、同様の方法により阻害剤を加えた溶液(サンプル)を測定し、同様にサンプルODを算出した。阻害活性は以下の式により算出した。
チロシナーゼに対するピオケリンの阻害作用を図1に示す。図中、(A)は反応液中にピオケリンを加えないとき、(B)はピオケリンを100 μg/ml加えたとき、(C)はピオケリンを25μg/ml加えたときのものである。なお、475nm における吸光度は、チロシナーゼの作用によりチロシンが酸化されることにより得られるドーパクロムの生成量に対応する。
【0012】
また、各濃度でのチロシナーゼ阻害活性を表1に示す。
これらの結果から、本発明のピオケリンはチロシナーゼに対して阻害活性を有することが判る。
【0013】
〔実施例2〕
メラニン形成能があるVibrio属細菌をL−チロシンを含む寒天培地上に植菌した後、各濃度のピオケリン溶液を加え乾燥させたペーパーディスク(直径8 mm)を寒天プレート上に置いた。そのプレートを30℃で20時間培養し、メラニン形成阻害剤により得られた阻止円(mm i.d. )をプレートの底側から測定した。その結果を表2に示す。
これらの結果からも同様に、Vibrio属細菌が産生するチロシナーゼ様酵素を阻害し、メラニンの形成を抑制していることが判明した。
【0014】
〔実施例3〕
本発明のメラニン生成阻害剤の配合例を以下に示す。なお、以下の配合例において、配合量は重量%を示す。
配合例1 (ローション)
ピオケリン 5.0
プロピレングリコール 15.0
エタノール 20.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
香料 0.5
精製水 59.0
配合例2 (軟膏)
ピオケリン 5.0
白色ワセリン 95.0
【0015】
【発明の効果】
本発明のメラニン生成阻害剤は、メラニン生成阻害効果を有し、シミ、ソバカスの改善・防止、食肉、魚介類の褐変防止、養殖魚体表の黒化防止にきわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】チロシナーゼの作用によりL−チロシンが酸化されることにより得られるドーパクロムの生成量を経時的に示したものである。
Claims (1)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05746094A JP3566981B2 (ja) | 1994-03-28 | 1994-03-28 | メラニン生成阻害剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05746094A JP3566981B2 (ja) | 1994-03-28 | 1994-03-28 | メラニン生成阻害剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07258024A JPH07258024A (ja) | 1995-10-09 |
JP3566981B2 true JP3566981B2 (ja) | 2004-09-15 |
Family
ID=13056297
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP05746094A Expired - Fee Related JP3566981B2 (ja) | 1994-03-28 | 1994-03-28 | メラニン生成阻害剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3566981B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20030088742A (ko) * | 2002-05-14 | 2003-11-20 | 주식회사 비봉파인 | 시스테인 및 그 유도체 또는 에르도스테인을 함유하는미백용 조성물 |
-
1994
- 1994-03-28 JP JP05746094A patent/JP3566981B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07258024A (ja) | 1995-10-09 |
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