JP3566212B2 - 冷凍機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高電圧微弱電流印加装置を搭載した冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷蔵庫として、特開平9−138055号公報に開示されるものが知られている。この冷蔵庫は、0℃〜−5℃に温度調節される低温室の一部または全部を電場処理室として、この電場処理室内に対向する高圧電極と平板対極とを備え、高圧電極に所定周波数のパルス電圧を印加するものである。この冷蔵庫では、水分の配列変換を起こさせてイオン水和物化現象を利用して食品の含有水分の非凍結化を図り、上記した温度域で保存される生鮮食肉や水産魚類などの食品の凍結による貯蔵劣化の防止を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の冷蔵庫では、高電圧をパルス放電させるものであるため、細菌などの微生物の細胞膜を破壊させることは可能であるが、上記した冷蔵庫では、水分の配列変換を行って上記温度範囲(0℃〜−5℃)で水分が凍結して結晶化するのを防止することが目的であるため、当然ながら冷凍室には電場処理室がないものであった。さらに、業務用緩慢冷凍機は、冷却エネルギー不足のため、電源の2次側に高出力が必要となり、食品中の水分が氷になり結晶を大きくする最大氷結晶生成帯の−1℃〜−7℃を急速に通過することが困難であった。また、上記した従来の冷蔵庫では、冷凍室に電場処理室がないものであった。このため、冷凍エネルギーは、庫内の環境温度を利用するが、冷凍品の芯部まで環境温度と同一になるまでに時間がかかるという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。そこで、本発明の目的は、業務用汎用冷凍機にて効率的な冷凍が行えると共に、急速冷凍機並の高品質の冷凍品製造を可能にする冷凍機を提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の目的は、食品の急速冷凍を可能にして食品の氷結晶の成長による弊害が回避できると共に、冷凍状態における食品の保水性を向上できる冷凍機を提供することにある。
【0006】
さらに、本発明の他の目的は、食品に付着するバクテリア、細菌などの細胞膜の可逆破壊を促進させて食品の黴抵抗性、防腐性を向上できる冷凍機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、冷凍室が形成された冷凍機本体と、該冷凍機本体に開閉自在に設けられた扉とを備えた冷凍機であって、前記冷凍室内に、高電圧が印加される電極板と、該電極板に略平行をなすように対向配置され、且つ接地されるアース板と、少なくとも、前記電極板と前記アース板との間の領域を取り囲む、絶縁性材料でなる電界遮断層とを備え、前記電極板は、導電性金属でなる導電板の表面全体が絶縁材料層で被覆され、且つその絶縁材料層が前記導電板の表面に形成された絶縁層と、該絶縁層を覆って真空ラップされた絶縁シートからなり、この電極板には冷却気還流孔が形成されており、前記電極板と前記アース板との間の領域内に食品が配置され、前記電極板への高電圧印加により当該電極板と前記アース板との間に高電圧の微弱電流が発生することを特徴とする。
【0008】
このような構成の請求項1記載の発明では、対向する電極板とアース板との間に高電圧が連続印加されるため、保管される食品に含まれる細菌などの微生物の細胞膜を可逆破壊することができる。このため、食品を長期間、安全に冷凍・保管することが可能となる。また、この発明では、高電圧を連続印加することにより、冷凍速度を速くすることができ、食品に含まれる水分が氷結晶成長する温度域を速く通過することができ、食品の微細な組織構造が破壊されるのを防止できる。この他、生魚、生肉を水と一緒に特殊容器に収容して冷凍した場合、生身は生で周囲の水のみを凍らせることができる。
また、この発明では、電極板が絶縁材料層で被覆され、その絶縁材料層を、導電板の表面を蒸着して絶縁層で密に覆い、さらにこの絶縁層を覆って絶縁シートを真空ラップした構造であるので、確実に導電板を絶縁保護して安全性を高めることができると共に、電極板に結露が起こるのを抑制でき、これにより導電板の腐食を防止することができる。また、この発明では、冷却気還流孔が電極板に形成されているため、冷気の還流を阻害することがなく、冷却効率を高めることができる
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載された冷凍機であって、前記アース板が、格子状もしくは線状であることを特徴とする。
【0016】
したがって、請求項2記載の発明では、請求項1に記載された発明における作用に加えて、アース板が格子状もしくは線状とすることにより、食品から滴下する水分をアース板から下方へ排除することができ、アース板上に霜や氷が付着するのを抑制することができる。また、請求項2記載の発明では、アース板が格子状もしくは線状であるため、冷気の還流に支障がなく、均一な冷却作用がある。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載された冷凍機であって、前記電極板は、該アース板の下方部に絶縁連結器具にて上下動可能に吊り下げられ、該アース板と該電極板との連結体を物品載置棚又は冷凍室仕切り棚板として使用する仕切り用棚板で前記冷凍室を画成することを特徴とする。
【0022】
したがって、請求項3記載の発明では、冷凍機の冷凍室を棚板で空間の縦幅を自由に調整して仕切ることができ、収納物品の高さに合わせて空間を有効利用することが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、この実施の形態に係る冷凍機の正面説明図であり、図2は冷凍機の前後方向に切断した状態を示す要部縦断面図であり、図3は、冷凍機の本体を左右方向に切断した状態を示す要部横断面図である。
【0025】
図1および図2に示すように、冷凍機1は、本体2と、本体2の全面の開口部両側にヒンジ部12で開閉自在に支持された1対の扉3、3と、本体2に内蔵される図示しない冷却機構とを備えて大略構成されている。本体2は、上下方向に3つの冷凍室6、7、8を有している。
【0026】
本体2内には、冷凍室6、7を上下に区画する隔壁9と、冷凍室7、8を上下に区画する隔壁10とが設けられている。また、本体2の開口部下部には、扉3、3の開閉に伴って、オン・オフされる1対の開閉確認スイッチ11が設けられている。また、図1に示すように、本体2の前端両側には、それぞれの扉3、3を回動自在に支持するヒンジ部12が設けられている。
【0027】
それぞれの冷凍室6、7、8内の上下左右の側壁および背面には、例えばフッ素樹脂でなる電界遮断層13が貼り付けられている。また、図2に示すように、扉3、3の内側面におけるそれぞれの冷凍室6、7、8に対応する位置には、例えばフッ素樹脂でなる電界遮断層14が貼り付けられている。つまり、冷凍室6、7、8の空間を取り囲むようにして電界遮断層13、14が形成されている。
【0028】
そして、各冷凍室6、7、8内には、高電圧微弱電流が流れるように設定された、対をなし互いに対向する電極板15とアース板16とが設置されている。これら電極板15とアース板16は、冷凍室6、7、8を上下方向に貫通するように立設されたパイプ状の複数(本実施形態では4本)の絶縁枠17で保持されている。なお、図3に示すように、電極板15には、絶縁被覆された電線18が接続されており、電線18は絶縁枠17内を通って本体2の下部に設けられた変圧器19に接続されている。また、アース板16は、絶縁被覆されたアース線20に接続され、絶縁枠17内を通って本体2の下部から導出されて接地されるようになっている。
【0029】
電極板15は、図4に示すように、ステンレス、銅などの導電性金属で形成された導電板21の表面全体は例えばフッ素樹脂でなる2層の絶縁被覆層22、23が被覆されてなる。内側の絶縁被覆層22は、導電板21の表面全体に蒸着されて形成されている。また、外側の絶縁被覆層23は、下地層の上に真空ラップにて被覆されている。さらに、電極板15には、上記したように、耐熱絶縁材で被覆された電線18が接続されている。この電線18には、図3に示すように、変圧器19をから高電圧が印加されるようになっている。
【0030】
アース板16は、図4に示すように、電極板15と略同程度の大きさ、且つ略同形状の導電性金属板で形成されている。また、上記したようにアース板16には、絶縁樹脂で被覆されたアース線20が接続されている。
【0031】
電界遮断層13は、これら電極板15とアース板16とで挟まれる空間を取り囲んでいる。また、扉3、3の内側面に貼り付けられている電界遮断層14は、扉3、3が閉められたときに、それぞれの冷凍室6、7、8における電極板15とアース板16とで挟まれる空間を電界遮断層13とともに取り囲むようになっている。
【0032】
なお、アース板16の下方には、図1及び図2に示すように、水滴などを受ける受け皿24が配置されている。また、図3に示すように、本体2の下部には、冷却器25が設けられており、この冷却器25および図示しない冷却機構により各冷凍室6、7、8に冷気が送出されるようになっている。
【0033】
このような構成の冷凍機1においては、図5に示すような制御系26を備えている。この制御系26は、CPUやメモリなどを備える制御部27に、2次側出力が定格になるように設定された電源28、各開閉確認スイッチ11、印加電圧を調節するスライダックス29、冷却器25、出力電圧を連続印加する変圧器19、温度センサ30、運転指示部31、アース回路入切装置33などが接続されている。
【0034】
本実施形態に係る冷凍機1では、3種類の異なる冷凍品の製造が可能となっている。第1の実施形態は図5の運転指示部31の詳細である図6(a)に示す。
図6(a)の氷結運転を入力すると冷却器25が駆動を行い、アース回路は接続されたままの状態で変圧器19へも運転指示が出され、電極板15に高電圧を連続印加する。そして、温度センサー30の温度検出が開始される。温度センサーが−3℃を検出すると、冷凍機25は停止し温度センサー30が0℃を検出すると再駆動するようになっている。そして、変圧器19は氷結運転停止を入力する迄連続運転を行うようになっている。本実施形態の目的は、業務用汎用緩慢冷凍機を用いて特殊容器に生身の魚介類、精肉類を収容し容器内を水で満たし、アース板16に接して特殊容器を設置し、特殊容器内の生身の魚類、精肉類は生身のまま非凍結で、満たした水のみを凍結させる冷凍食品を製造することである。
【0035】
なお、本実施形態においては、図10に示す変形例のように、上下方向に立設した支柱に部材35、36に取り付け、電極板15、アース板16の上下位置を適宜変更するようにしてもよい。
【0036】
第2の実施形態は図5の運転指示部31の詳細である図6(b)に示す。図6(b)の冷凍速度を入力すると冷却器25が連続運転駆動を行い、アース回路は接続されたままの状態で変圧器19へも運転指示が出され、電極板15に高電圧を印加する。そして温度センサー30の温度検出が開始される。上述した第1の実施形態と異なる点は、冷却器25と変圧器19は冷凍速度停止を入力する迄連続運転を行うようになっている事と、温度センサー30による冷却器25に対する制御は全く無い事である。本実施形態の目的は、アース板16に接して設置した特殊容器に収容した食品に対して伝熱効率、伝熱量差を影響させ、業務用汎用緩慢冷凍機を用いて、氷結晶成長温度域0℃〜−7℃を短時間で通過して、食品の微細組織が氷結晶の成長により破壊される事がなく、良好な冷凍食品の製造と保存を行う事である。
【0037】
第3の実施形態は図5の運転指示部31の詳細である図7に示す。図7の高品質冷凍を入力すると冷却器25が連続運転駆動を行い、高品質冷凍停止の入力がある迄運転する。変圧器19も同様に作動する。又アース回路入切装置33へ出力されアース回路が切断される。温度センサー30も温度検出を開始する。温度センサー30が−10℃に到達すると、アース回路の入切装置が作動してアースが接続される。即ち、アース板16に接して設置した特殊容器に収容した食品は−10℃迄はアース機能を切断して水分改質を完了させ、−10℃を越えた温度帯からアース機能を接続して、伝熱効率、伝熱量差を影響させ本冷凍に移行する。本実施形態の目的は緩慢冷凍機を用いて急速冷凍機に優る高品質の冷凍食品を製造することである。
【0038】
本実施形態では、電極板15に高電圧を連続印加することにより、アース板16上の食品は、高電圧電界により微生物の細胞膜を可逆破壊(電気穿孔現象による)して、防黴性・防腐性を向上することができる。また、通常の保管の効果に加えて、食品に含まれる水分の改質を行って自由水を結合化し、食品の保水性を向上させることができる。このため、食品の保存期間を長くすることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、図4に示すように、アース板16の上に載置する容器32に食品を入れるようになっている。この容器32は、アース板16と導通して収容された食品をアース板16に導通させるようになっている。このため、食品に高電圧微弱電流が流れるようになっており、高電圧電界の影響を効率よく受け得るようにしている。
【0040】
このような構成の冷凍機1では、電極板15とアース板16との間に形成される高電圧電界は、電界遮断層13、14で取り囲まれるため、外部に電界が漏れることがなく、電極板15とアース板16との間の電界強度を高めると共に均一にする作用がある。このため、食品は、高電圧微弱電流の影響を確実に受けるが、例えば水分や栄養分などが喪失することなく保持されると共に、被食品の衛生状態を向上することができる。このため、冷凍・保管する食品の歩留まりを向上させ食品の利用目的に添った冷凍品製造が可能となる。
【0041】
第4の実施形態は、図8に示すように、電極板15をアース板16の下方において、絶縁連結上下可変器具33にて吊下げ、図8に示す絶縁枠34に絶縁枠支え金具35にて絶縁連結上下可変器具33を保持して隔壁9、10の代替とする。このような構成の冷凍機1では収納物品の高さに応じて収納空間の高さを調節することが可能となる。なお、図9は、電界遮断層13に対するアース板16の取付構造を示している。このように固定されたアース板16に対して吊下げられた電極板15は、絶縁連結上下可変器具33を調節することにより上下動して位置移動することができる。
【0042】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、ここでは記載していない様々な実施の形態を含むことは勿論である。
【0043】
例えば、上記した実施形態では、電極板15が上側でアース板16が下側に位置するように配置したが、アース板16を上側、電極板15を下側に配置する構成としても勿論よい。また、アース板16を平板状としたが、導電性金属でなる網目状としてもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の発明によれば、食品を長期間、安全に保管することが可能となる。また、食品を冷凍する際に、食品に含まれる水分が氷結晶成長する温度域を速く通過することができ、食品の微細構造を破壊することを防止できる。このため、食品の組織破壊を防止して、味、鮮度などの低下のない冷凍が行えるという効果がある。
また、本発明では、電極板を被覆した絶縁材料層を、導電板の表面を蒸着して絶縁層で密に覆い、さらにこの絶縁層を覆って絶縁シートを真空ラップした構造であるので、確実に導電板を絶縁保護することができ、安全性を高めることができる。また、電極板に結露が起こるのを抑制でき、これにより導電板の腐食を防止することができる。さらに、この発明では、冷却気還流孔が電極板に形成されているため、冷気の還流を阻害することがなく、冷却効率を高めることができる
【0048】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載された発明における効果に加えて、アース板が格子状もしくは線状とすることにより、食品から滴下する水分をアース板から下方へ排除することができる。また、アース板が格子状もしくは線状であるため、冷気の還流に支障が生じないという利点がある。
【0051】
請求項3記載の発明によれば、冷凍室の収納空間の高さを収納物品の高さに対応して自由に仕切り用棚板を移動できるため、収納物品の高さ制約を大幅に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る冷凍機の実施形態を示す正面説明図である。
【図2】実施形態に係る冷凍機を前後方向で切断した状態を示す要部縦断面図である。
【図3】実施形態に係る冷凍機を左右方向で切断した状態を示す要部横断面図である。
【図4】実施形態に係る電極板とアース板との対向構造を示す説明図である。
【図5】実施形態に係る冷凍機の制御系を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係る冷凍機の容器内の生身を生で凍結させるモードを示す指令系統を示す図である。
【図7】実施形態に係る冷凍機の高品質冷凍品製造モードを示す指令系統を示す図である。
【図8】実施形態に係る冷凍機における電極板の昇降手段を示す要部正面図である。
【図9】実施形態に係る冷凍機におけるアース板の保持構造を示す要部側断面図である。
【図10】実施形態に係る冷凍機における電極板、アース板の上下位置を適宜変更可能とした例を示す要部横断面図である。
【符号の説明】
1 冷凍機
2 本体(冷凍機本体)
3 扉
6、7、8 冷凍室
13、14 電界遮断層
15 電極板
16 アース板
21 導電板
22、23 絶縁被覆層
26 制御系
27 制御部
31 運転指示部
33 アース回路入切装置

Claims (3)

  1. 冷凍室が形成された冷凍機本体と、該冷凍機本体に開閉自在に設けられた扉とを備えた冷凍機であって、
    前記冷凍室内に、高電圧が印加される電極板と、該電極板に略平行をなすように対向配置され、且つ接地されるアース板と、少なくとも、前記電極板と前記アース板との間の領域を取り囲む、絶縁性材料でなる電界遮断層とを備え、
    前記電極板は、導電性金属でなる導電板の表面全体が絶縁材料層で被覆され、且つその絶縁材料層が前記導電板の表面に形成された絶縁層と、該絶縁層を覆って真空ラップされた絶縁シートからなり、この電極板には冷却気還流孔が形成されており
    前記電極板と前記アース板との間の領域内に食品が配置され、前記電極板への高電圧印加により当該電極板と前記アース板との間に高電圧の微弱電流が発生することを特徴とする冷凍機。
  2. 前記アース板は、格子状もしくは線状であることを特徴とする請求項に記載された冷凍機。
  3. 前記電極板は、該アース板の下方部に絶縁連結器具にて上下動可能に吊り下げられ、該アース板と該電極板との連結体を物品載置棚又は冷凍室仕切り棚板として使用する仕切り用棚板で前記冷凍室を画成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された冷凍機。
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