JP3566167B2 - 分子導線と金属電極の接続方法および基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は分子導線と金属電極の接続方法および基板に関し、特に、分子スケールのデバイス製造において必要不可欠な分子導線と金属電極の接続方法、およびそれらの接続構造を含んだ基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイス製造における微細加工は限界に近づきつつある。これに代わる新規な半導体デバイスとして、近年、回路部品に分子を用いたデバイスである分子素子の研究開発が活発化している。分子素子とは、単一分子を機能の最小単位に利用したメモリ、論理回路等の情報処理用デバイスを指す。分子素子においては、分子のもつ機能性の利用と分子の持つスケールメリットの活用によって、現在の大規模集積回路を凌駕する高機能化デバイスおよび高集積化デバイスの実現が期待されている。
【0003】
分子素子実現のためには、所望の機能を発現する機能性分子の開発とともに、これら機能性分子外部に電気信号を取り出すための電極を当該機能性分子と電気的に結合させる微小導線、すなわち分子導線の開発が必要不可欠である。このような分子導線の持つべき性質としては、(1)導電性、(2)剛直性、および(3)接続性が挙げられる。本出願は、(3)の接続性向上を図ったものである。
【0004】
現在、分子導線としての利用が有望な材料として、カーボンナノチューブがある。カーボンナノチューブは、高導電性を有するのみならず、高剛直性をも有する。また、チューブの巻き性の違いによる電子物性の変化といった、カーボンナノチューブ単体の持つ機能性を利用することも可能であり(S.J.Tans他、ネイチャ(Nature)第386巻、第474頁(1998))、カーボンナノチューブの使用について精力的な研究が展開されている。
【0005】
これらのナノスケールの分子導線を用いて電気信号を外部出力として得るためには、分子導線と外部電極との間に電気的接触をとる必要がある。カーボンナノチューブを使用する場合、その長さは数μmであり、この片端あるいは両端に電極を形成することは、スケール的には現時点の技術水準により容易に実現可能である。例えば、1μm程度の距離が空いた金属電極対を予め基板上に形成しておき、その電極間をカーボンナノチューブで橋渡しするように設置し、カーボンナノチューブの電子物性を計測することができる。
【0006】
上述の方法の欠点として、金属電極とカーボンナノチューブの間に生じる接触抵抗を無視できないことが挙げられる。学術的な意義でカーボンナノチューブ単一分子固有の電子物性を測定するためには、四端子法を用いた測定によって接触抵抗を相殺することができる(S.J.Tans他、ネイチャ(Nature)第393巻、第49頁(1998))。しかしながら、分子導線配線技術の実用化に向けては、接触抵抗を無視できるほど良好な電気的接触を実現することのできる分子導線と電極の接続方法の開発が求められる。
【0007】
分子導線と金属電極の間で確実に接触をとる一つの手段として、次の手法がある。すなわち、まずカーボンナノチューブを基板上に分散してその所在位置を特定する。次に、当該所在位置に蒸着法により金属電極を形成する。この手法による電極形成法は、実際にEbbesen等によって報告されている(Ebbesen他、ネイチャ(Nature)第382巻、第54頁(1996))。
【0008】
しかしながら、Ebbesen等がこの報告中で指摘しているように、当該電極形成法では、細心の注意を払ってもカーボンナノチューブの破損を避けることができない。高強度の分子導線材料であると一般に認識されているカーボンナノチューブのような材料ですら破損を避け得ないのであるから、半導体高分子のようなより低強度の分子導線材料に対しては当該電極形成法の適用は不可能である。
【0009】
このように、分子導線配線技術の実用化に向けては、確実に分子導線と金属電極の電気的接触がとれるだけではなく、且つ、カーボンナノチューブと比較して格段に低強度の分子導線を用いても破損させることのない電極形成法が求められる。
【0010】
さらに、使用する電極材料の金属の種類が限定されない電極形成法が好ましい。分子導線は制限された電子状態を利用するものである。すなわち、単一分子あるいは複数個の分子の集合体が持つ離散的なエネルギ状態に応じて、これに接続する電極の電子状態(金属電極であれば仕事関数)も選択されるべき性質のものである。このような分子導線に対して電極を形成する場合、分子導線の電子状態と金属電極の仕事関数との関係によって最適組み合わせが存在する。あるいは、組み合わせの違いによる異なる機能の発現を期待できる。したがって、分子導線への電極形成法として、電極材料である金属の種類を制限しない方法が有利である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、分子導線と金属電極の電気的な接触を確実にとる既存の方法は極めて少ない。現実には、限定された材料に対して、高度な技術を用いることによってのみ達成し得る手法が知られているだけである。しかしながら、分子素子実現の目標に向けた要素技術として、多様な分子導線に対して多様な金属を適用可能な分子導線−金属電極接続法が求められている。
【0012】
そこで本発明は、分子スケールのデバイス製造において必要不可欠な、多様な分子導線に対して適用可能な分子導線と電極との間に十分な電気的接触をとることのできる分子導線と電極の非破壊的な接続方法であって、電極の金属種類の選択に制限のない簡便な分子導線と金属電極の接続方法、およびそれらの接続構造を含んだ基板を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、所定位置に金属電極を形成する第1工程と、単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線を前記金属電極近傍に配置する第2工程と、前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を導電性物質により接続する第3工程とを含んだ分子導線と金属電極の接続方法であって、前記第3工程は、無電解メッキにより金属を形成して前記金属電極と前記分子導線の電気的接触をとることを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法を提供する。
【0014】
また、請求項2の発明は、所定位置に金属電極を形成する第1工程と、単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線を前記金属電極近傍に配置する第2工程と、前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を導電性物質により接続する第3工程とを含んだ分子導線と金属電極の接続方法であって、前記第3工程は、電解メッキにより金属を形成して前記金属電極と前記分子導線の電気的接触をとることを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法を提供する。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の接続方法において、前記第1工程において前記金属電極を複数形成し、前記第3工程において、前記金属電極のいずれかに所定の金属により前記電解メッキを行い、さらに、前記金属電極の別の電極に別の金属により前記電解メッキを行うことを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法を提供する。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の接続方法において、前記第2工程は、前記分子導線を化学結合によって固定して配置することを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法を提供する。
【0017】
また、請求項5の発明は、所定位置に配置された金属電極と、前記金属電極近傍に配置された単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線と、前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を接続するように配置された導電性物質とを備えた基板であって、前記導電性物質は、無電解メッキにより形成された金属からなることを特徴とする基板を提供する。
【0018】
また、請求項6の発明は、所定位置に配置された金属電極と、前記金属電極近傍に配置された単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線と、前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を接続するように配置された導電性物質とを備えた基板であって、前記導電性物質は、電解メッキにより形成された金属からなることを特徴とする基板を提供する。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項5または6に記載の基板において、前記金属電極は複数配置され、前記導電性物質は、前記金属電極のいずれかに接続するように配置される所定の金属と、前記金属電極の別の電極に接続するように配置される別の金属を含むことを特徴とする基板を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法の実施形態、およびそれらの接続構造を含んだ半導体基板の実施形態について詳述する。
【0021】
本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法の一実施形態は、図1に図式的に示した通り、概略すると以下に示す工程を具えている。また当該工程を実施することにより、これらの接続構造を含んだ本発明に係る半導体基板の一実施形態を製造することができる。
【0022】
当該工程は、[1]初期電極の形成(図1(a))、[2]分子導線の配置(図1(b))、[3]電極に金属メッキを施すことによる分子導線と金属電極の結合の形成(図1(c))を具えている。図1(a)〜(c)はそれぞれ二面図であり、平面図と断面図を表す。また、図式上、一つの分子導線の両端が金属電極と結合する場合を示したが、分子導線の結合部位はこれに限定されない。
【0023】
図1において1は基板を表し、初期電極として二端子の電極2,3を形成する場合を例示してある。ここで、電極2,3の形成については、半導体微細加工技術で通常行われる周知の手法を用いて、所望の電極を形成することができる。
【0024】
例えば、ポジ型レジストを塗布した基板1表面にフォトマスクを通して露光を行った後、レジストを現像し、所望の金属を蒸着し、さらにレジストをリフトオフする工程によって、電極2,3を初期電極として形成することができる。
【0025】
このとき、基板1としては石英やサファイヤ等の絶縁体、シリコンウエハ等の半導体、金や銅等の金属等、様々な材料を使用することができる。また、このとき蒸着する金属を選択することによって、電極2,3として使用する金属を選択することができる。また、フォトマスクを用いて露光する代わりに電子ビーム露光を使用すれば、さらに微細な電極を形成することもできる。
【0026】
なお、初期電極の形状は特に限定されることがなく、図1に示した二端子電極の他に、例えば四端子電極、櫛形電極等を形成することができる。また、これらの形態以外の電極を用いてもよい。
【0027】
基板1表面に初期電極を形成すると続いて、図1(b)のように例えばカーボンナノチューブからなる分子導線4を配置する。分子導線4としては、カーボンナノチューブ、DNAに限らず、ポリアセチレンやポリアニリン等の伝導性高分子、ポリシラン等の半導体高分子、その他の有機/無機高分子を使用することができる。
【0028】
分子導線4は図示の如く電極2,3に跨って配置することが好ましいが、後述の通り、この配置形態に限定されるものではない。
【0029】
分子導線4の配置は、例えば分子分散状態にしたカーボンナノチューブ希薄溶液をキャストして、基板1上に散布することで実施できる。この方法ではカーボンナノチューブ分子導線の配置位置の制御は困難であるが、一定確率で電極2,3間に分子導線4を配置することができる。
【0030】
これらの分子導線4を電極2,3間に跨って配置する方法として他に、基板1表面上に物理吸着や化学結合を介して固定する方法を用いることもできる。この固定方法は電極と末端基の吸着を利用して実施することができる。例えば、金とS−Hとは化学結合を形成することが知られている。そこで電極2,3を金電極として、分子導線4の一部あるいは末端にS−H基を導入し、この分子導線4を金電極2,3に直接結合させて固定することも可能である。
【0031】
これらの分子導線は、金属電極と対向する部分を当該電極面と完全に接触させて配置することは困難であり、接触する部分と、接触しない空隙部分とが存在する。しかしながら、分子導線は金属電極とこのように不完全に接触していても、また金属電極にほとんど接触していなくてもよく、平面的に見てオーバーラップして配置すればよい。
【0032】
散布による上記配置方法では、例えば図2(a),図3(a),図4(a)に示すような配置形態となる場合も考えられ、全くオーバーラップしない場合(図4(a))もあり得る。後述する通り、いずれの配置形態においても本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法を適用することができる。
【0033】
また、電極2,3間に分子導線4を配置する際に、次に説明するような制御性のより良好な方法を適用することもでき、この方法により、分子導線配置を有効に行うことができる。
【0034】
初期電極として、例えば酸化膜付きのシリコンウエハ上に前述の方法で金属電極を形成する。末端にハロゲンを有するシランカップリング剤である3−臭化プロピルジメチルクロロシランを用いてこの基板1を処理することにより、酸化膜上だけに3−臭化プロピルジメチルシリル基を形成することができる。ここに、主鎖がケイ素から構成されるポリシランの末端をリチオ化した構造の半導体高分子であるリチオ化ポリシランを加えて反応させて主鎖の一端を化学結合させることにより、所望の密度で電極間にポリシランを固定することができる(本出願人による特開平11−222526号公報(発明の名称「ポリシラン薄膜の製造方法」),K.Ebata他、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、第120巻、第7367頁(1998))。この化学結合強固な化学結合であり、物理吸着のように不均一な界面を持つことがない。
【0035】
基板1表面に分子導線4を配置すると続いて、図1(c)のように両電極2,3の分子導線4との接触部分に金属メッキ7,8を施して、電気的コンタクトを良好なものとする。メッキ法は、電解メッキ、無電解メッキ、どちらを用いてもよい。また、メッキ可能なものであればどの種類の金属を用いてもよい。
【0036】
ここでは、図2を参照して電解メッキによるメッキ工程について説明する。
【0037】
図5において、50は陽極金属、51は直流電圧源である。図5(a)に示す通り、まず電極2,3を短絡して陰極とし、当該両陰極および陽極金属50の各先端をメッキ浴52に浸漬する。メッキ浴52にはOリングを用いる。各先端を浸漬した状態で、直流電圧源51により両極間に所定電圧を印加する。
【0038】
なお、メッキ浴52に浸漬する際に、分子導線4が基板1から脱離することや、メッキ溶液52中に溶出することも起こり得る。しかしながら、多くの場合はメッキ溶液52が水溶液であるため、疎水性の半導体高分子やカーボンナノチューブはメッキ溶液52中に溶出することはない。また、前述したように分子導線4を化学結合により固定する方法や、分子導線4を基板上により強固に吸着させる手法を用いて配置しておけば、分子導線4の脱離や溶出を完全に防ぐことができる。
【0039】
所定時間の電圧印加によって図5(b)のように金属メッキ7,8が形成され、分子導線4と電極2,3の金属メッキ7,8による結合が実現される。当該結合形態としては、▲1▼図1(c)に示したように金属メッキ7,8で結合部位を完全に覆うもの、▲2▼分子導線4と電極2,3の間に位置する空隙部分に金属メッキ7,8が入り込んで結合を形成するもの、▲3▼▲1▼と▲2▼が混在したもののいずれであっても、分子導線4の少なくとも一部と電極2,3それぞれの少なくとも一部に電気的にコンタクトするように金属メッキ7,8を形成して結合したものであればよい。
【0040】
すなわち、図2(a)に示した配置形態に対しては図2(b)のように分子導線4と電極2,3の両結合部位をほぼ完全に覆った形態とすることができる。また、図3(a)に示した配置形態(一方のみオーバーラップ)に対しては図3(b)のように分子導線34と電極2の結合部位のみをほぼ完全に覆い、分子導線34と電極3の結合は、分子導線34の末端を金属メッキ8によって電極3とコンタクトさせた形態とすることができる。
【0041】
さらに、図4(a)に示した配置形態(オーバーラップが全くない)のように分子導線44の両末端に例えばアルキル基からなる非導体の保持部45,46を形成し、電極2,3と分子導線44の機械的接続を保持してもよい。この形態に対して金属メッキ7,8を形成すれば、保持部45,46を覆って電気結合を形成することができる。なお、保持部45,46は電極2,3に用いる金属の種類に応じ、アルキル基の末端に例えばSHを結合させて金製電極と接続可能とし、また、SCH3を結合させて白金製電極と接続可能とし、さらに、CH=CH2(2重結合)を結合させてSi製電極と接続可能とすることができる。
【0042】
なお、上記メッキ工程を電解メッキ法により複数回行うことで、個々の電極に異なる金属を使用することも可能である。
【0043】
本実施形態により得られる分子導線−金属電極結合は、金属メッキによって結合を形成することで接触抵抗を無視でき、良好な電気伝導を実現することができる。また、上記▲1▼の結合形態とすることで、良好な電気伝導に加えて、強固な結合を実現することができる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例について具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
カーボンナノチューブと金属電極の接続構造の形成
[1]初期電極の形成
直径4インチの石英基板にポジ型レジスト(V3、東京応化工業株式会社製)をスピンコートにより塗布し(回転数4000rpm,40秒)、ホットプレートを用いて90℃で90秒間ベークした。そのした。次に、コンタクトアライナ(PLA−501、株式会社キヤノン製)を用いて電極パターンを露光した。次に、レジスト現像液(東京応化工業株式会社製)で現像し、純水でリンスした。
【0046】
さらに、リンス後の石英基板をスパッタ装置(株式会社日本シード研究所製)に装着し、真空を破ることなくチタンとパラジウムを連続して堆積させた。このとき、チタンの膜厚は10nm、パラジウムの膜厚は100nmとした。そして、堆積後の石英基板をメチルエチルケトンに浸漬し、超音波洗浄装置を用いてレジストをはく離することにより、パラジウムの電極パターンを複数形成した。得られた最小電極間隔は500nmであった。
【0047】
[2]カーボンナノチューブの配置
市販のカーボンナノチューブ1mgを塩化メチレン(CH2Cl2)1ml(ミリリットル)中に加え、これに超音波を照射することによって塩化メチレン中にカーボンナノチューブを分子状態で分散させた。この溶液を[1]の工程で用意した石英基板上に毎分3000回転の速度で60秒間スピンコートして塗布することにより、カーボンナノチューブを複数電極間に配置した。
【0048】
カーボンナノチューブを配置した基板は、室温、真空中に1時間おいて乾燥させた。
【0049】
[3]無電解メッキを用いたカーボンナノチューブと電極の結合の形成
無電解メッキ液を調整し、次表1に示す組成とした。PH12.5、液温60℃としたこのメッキ液浴に、乾燥した[2]の基板を2分間浸漬した。
【0050】
【表1】
【0051】
これによって、パラジウム電極上に均一な銅メッキ層を堆積し、カーボンナノチューブとパラジウム電極間に良好な電気的接触を得た。このメッキ層は電解メッキによるものと比べてより均一なものとすることができた。
【0052】
次に、[1]の工程で用意したパラジウム電極をプローバ(株式会社日本マイクロニクス製)に装着し、カーボンナノチューブが接触した電極にOリングをのせ、金のメッキ液(田中貴金属工業株式会社製)を滴下した。次に、滴下されたメッキ液に直径1mmの金線を浸漬し、カーボンナノチューブが接触した電極と金線の間に3Vの電圧を15秒間印加してカーボンナノチューブと電極を金メッキで被覆し、これにより金メッキによる電気的結合を得た。
【0053】
なお、このメッキ工程[3]において、カーボンナノチューブは疎水性であり、メッキ溶液中で溶出することなくメッキを行って電気的結合を形成することができた。
【0054】
(実施例2)
カーボンナノチューブと金属電極の接続構造の形成
[1]初期電極の形成
直径4インチの石英基板にポジ型レジスト(V3、東京応化工業株式会社製)をスピンコートにより塗布し(回転数4000rpm,40秒)、ホットプレートを用いて90℃で90秒間ベークした。次に、コンタクトアライナ(PLA−501、株式会社キヤノン製)にて電極パターンを露光した。その後、レジスト現像液(東京応化工業株式会社製)で現像し、純水でリンスした。
【0055】
さらに、リンス後の石英基板をスパッタ装置(株式会社日本シード研究所製)に装着し、真空を破ることなくチタンと金を連続して堆積させた。このとき、チタンの膜厚は5nm、金の膜厚は50nmとした。そして、堆積後の石英基板をメチルエチルケトンに浸漬し、超音波洗浄装置を用いてレジストをはく離することにより、金の電極パターンを複数形成した。得られた最小電極間隔は500nmであった。
【0056】
[2]カーボンナノチューブの配置
市販のカーボンナノチューブ1mgを塩化メチレン(CH2Cl2)1ml中に加え、これに超音波を照射することによってカーボンナノチューブを塩化メチレン中に分子状態で分散させた。この溶液を[1]の工程で用意した基板上に毎分3000回転の速度で60秒間スピンコートして塗布することにより、カーボンナノチューブを複数電極間に配置した。
【0057】
[3]カーボンナノチューブと電極の結合の形成
[1]の工程で用意した金電極をプローバ(株式会社日本マイクロニクス製)に装着し、カーボンナノチューブが接触した電極にOリングをのせ、金のメッキ液(田中貴金属工業株式会社製)を滴下した。次に、滴下されたメッキ液に直径1mmの金線を浸漬し、カーボンナノチューブが接触した電極と金線の間に1.5Vの電圧を15秒間印加してカーボンナノチューブと電極を金メッキで被覆し、これにより金メッキによる電気的結合を得た。
【0058】
なお、このメッキ工程[3]において、カーボンナノチューブは疎水性であり、メッキ溶液中で溶出することなくメッキを行って電気的結合を形成することができた。
【0059】
(実施例3)
半導体高分子ポリシランの固定と異種金属メッキを用いた電極の接続構造の形成
[1]微小電極(初期電極)の形成
実施例1,2[1]において、石英基板の代わりに酸化膜(厚さ約1000Å)のついたシリコンウエハを用い、図6(a)〜(b)に示す形状の電極62,63を形成した。なお、図6(a)〜(b)は、電極形状の他は実際と違って図式的に描画されている。
【0060】
[2]エンドグラフト法によるポリシランの固定および配置
次に、半導体高分子であるポリシランを電極62,63間にその末端を化学結合させる前述の方法を用いて固定する。
【0061】
まず、3−臭化プロピルジメチルクロロシランBr(CH2)3Si(CH3)2Cl(1ml)をテトラヒドロフラン(20ml)との混合溶液とし、この溶液中に[1]で得られた基板を浸漬し、2時間半、加熱環流した。その後、テトラヒドロフランで洗浄し、次いでアセトンで洗浄した後、風乾した。これにより、[1]で得られた基板のケイ素酸化膜表面は3−臭化プロピルジメチルシリル化されるのに対し、金電極表面は3−臭化プロピルジメチルシリル化されない。
【0062】
なお、ポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]の電極62,63間への固定は、図7に示す反応装置を用いて行った(K.Furukawa他、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)、第75巻、第781頁(1999))。
【0063】
図7において、反応装置70は反応容器72,73を含んで構成される。74はガラス栓、75は回転可能なジョイント、76はセプタムラバー栓、77は磁気撹拌子である。
【0064】
まず反応容器72に3−臭化プロピルジメチルシリル化した基板71を置き、全体を真空にした。反応容器73にポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン](Mn=1520000,Mw=7770000,Mw/Mn=5.12、ポリスチレン標準)のイソオクタン溶液(5g/l)を2ml注入し、さらに乾燥テトラヒドロフラン(8ml)を真空トランスファにより導入した。これを室温に戻し溶解させることにより、均一な溶液にした。そして、再び凍結脱気をくり返して溶存空気を除去した後、アルゴン雰囲気とした。
【0065】
この状態で、反応容器73中の溶液にジ−t−ブチルビフェニルリチウムのテトラヒドロフラン溶液50μlを一気に加え、ポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]を切断してリチオ化したリチオ化ポリシランを調製した。反応容器73中の溶液が黄色を帯びリチオ化ポリシランの生成を確認した時点で、直ちにこれを回転可能なジョイント75を介して反応容器72に空気にさらすことなく注ぎ、リチオ化ポリシランとケイ素酸化膜表面を3−臭化プロピルジメチルシリル化した基板71の表面と反応させた。
【0066】
溶液を注ぎ終えてから3分後に、反応容器72中にn−ブタノールを1滴加え、大過剰に存在するリチオ化ポリシランを失活させ、反応性をなくすようにした。そして、ポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]に対する溶解力の非常に強いイソオクタン中に16時間以上浸漬することにより、結晶シリコン基板71の洗浄を行った。これによって、基板71の表面と化学結合していないポリシランを基板71上から完全に除去することができ、強固な固定と、当該固定による分子導線の配置を行うことができた(図6(a))。
【0067】
[3]ポリシランと電極の結合の形成
[2]のポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]がエンドグラフトされた2つの電極62,63のうち一方の電極62のみに電圧を印加して電解メッキ法により金メッキを施すことにより、当該ポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]の一端を金で覆って金メッキ67を形成し、これにより分子導線4と電極62の電気的接合を形成した(図6(b))。
【0068】
次に、メッキ液を白金メッキ液(田中貴金属工業株式会社製)に交換し、もう一方の電極63に電圧を印加して電解メッキ法により白金メッキを施すことにより、当該ポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]の他端を白金で覆って白金メッキ68を形成し、これにより分子導線4と電極63の電気的結合を形成した(図6(c))。
【0069】
本実施例によれば、ポリ[n−デシル{(S)−2−メチルブチル}シラン]の両端を、一方を金で、他方を白金で、それぞれ電気的接合をとった構造を形成することができた。
【0070】
(実施例4)
化学結合を用いたDNAと電極の接続構造の形成
[1]初期電極の形成
直径4インチの石英基板にポジ型レジスト(V3、東京応化工業株式会社製)をスピンコートにより塗布し(回転数4000rpm,40秒)、ホットプレートを用いて90℃で90秒間ベークした。次に、コンタクトアライナ(PLA−501、株式会社キヤノン製)にて電極パターンを露光した。その後、レジスト現像液(東京応化工業株式会社製)で現像し、純水でリンスした。
【0071】
さらに、リンス後の石英基板をスパッタ装置(株式会社日本シード研究所製)に装着し、真空を破ることなくチタンと金を連続して堆積させた。このとき、チタンの膜厚は5nm、金の膜厚は50nmとした。そして、堆積後の石英基板をメチルエチルケトンに浸漬し、超音波洗浄装置を用いてレジストをはく離することにより、金の電極パターンを複数形成した。得られた最小電極間隔は500nmであった。
【0072】
[2]SH基を利用したDNAの固定
両端にSH基のついた市販のDNA1mgを純水10mlに溶解させた。[1]の工程で用意した金電極をプローバ(株式会社日本マイクロニクス製)に装着した。その上にOリングをのせ、DNA溶液を滴下した。電極間に電圧を印加すると、DNAは鎖状に伸びた形で電極間にトラップされた。さらに、SH基と金は化学結合を形成するので、DNA末端のSH基と金電極の化学的結合が生成し、強固な固定と、当該固定による分子導線の配置を行うことができた。
【0073】
DNAの結合した電極は純水、エタノールで洗浄した。
【0074】
[3]DNAと電極との電気的接合の形成
上記電極をプローバに装着した状態でDNAの結合した電極にOリングをのせ、金メッキ液(田中貴金属工業株式会社製)を滴下した。次に、滴下されたメッキ液に直径1mmの金線を浸漬し、電極とDNAが接触した電極間に1.5Vの電圧を15秒間印加してDNAと電極を金メッキで被覆し、これにより金メッキによる電気的結合を得ることができた。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法、およびそれらの接続構造を含んだ基板によれば、基板の所定位置の金属電極と分子導線それぞれの少なくとも一部を無電解メッキまたは電解メッキにより形成した金属により接続して電気的に結合させる簡便な手法により、多様な分子導線に対して適用可能な分子導線と金属電極との間に接触抵抗を無視できる良好な電気的接触をとることができ、非破壊的に分子導線と金属電極を結合させることができ、かつ、金属の種類を自由に選択することができる。したがって、本発明は、分子素子製造の要素技術として、必要不可欠な技術を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法の一実施形態を図式的に示す工程説明図である。
【図2】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法を適用可能な分子導線初期配置の一例を示した平面図である。
【図3】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法を適用可能な分子導線初期配置の別の例を示した平面図である。
【図4】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法を適用可能な分子導線初期配置の別の例を示した平面図である。
【図5】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法の一実施形態におけるメッキ工程の説明図である。
【図6】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法の実施例3における分子導線と金属電極の接続方法を示した工程説明図である。
【図7】本発明に係る分子導線と金属電極の接続方法の実施例3において、結晶シリコン表面に主鎖の片末端あるいは両末端で化学結合したポリシランの合成に用いた反応装置を示す側面図である。
【符号の説明】
1,71 基板
2,3,62,63 電極
4,34,44 分子導線
7,8,67,68 金属メッキ
50 陽極金属
51 直流電圧源
52 メッキ浴
70 反応装置
Claims (7)
- 所定位置に金属電極を形成する第1工程と、
単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線を前記金属電極近傍に配置する第2工程と、
前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を導電性物質により接続する第3工程とを含んだ分子導線と金属電極の接続方法であって、
前記第3工程は、無電解メッキにより金属を形成して前記金属電極と前記分子導線の電気的接触をとることを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法。 - 所定位置に金属電極を形成する第1工程と、
単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線を前記金属電極近傍に配置する第2工程と、
前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を導電性物質により接続する第3工程とを含んだ分子導線と金属電極の接続方法であって、
前記第3工程は、電解メッキにより金属を形成して前記金属電極と前記分子導線の電気的接触をとることを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法。 - 請求項2に記載の接続方法において、
前記第1工程において前記金属電極を複数形成し、前記第3工程において、前記金属電極のいずれかに所定の金属により前記電解メッキを行い、さらに、前記金属電極の別の電極に別の金属により前記電解メッキを行うことを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法。 - 請求項1から3のいずれかに記載の接続方法において、
前記第2工程は、前記分子導線を化学結合によって固定して配置することを特徴とする分子導線と金属電極の接続方法。 - 所定位置に配置された金属電極と、
前記金属電極近傍に配置された単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線と、
前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を接続するように配置された導電性物質とを備えた基板であって、
前記導電性物質は、無電解メッキにより形成された金属からなることを特徴とする基板。 - 所定位置に配置された金属電極と、
前記金属電極近傍に配置された単一分子または複数個の分子の集合からなる分子導線と、
前記金属電極と前記分子導線それぞれの少なくとも一部を接続するように配置された導電性物質とを備えた基板であって、
前記導電性物質は、電解メッキにより形成された金属からなることを特徴とする基板。 - 請求項5または6に記載の基板において、
前記金属電極は複数配置され、前記導電性物質は、前記金属電極のいずれかに接続するように配置される所定の金属と、前記金属電極の別の電極に接続するように配置される別の金属を含むことを特徴とする基板。
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