JP3564715B2 - 熱可塑性樹脂フィルムの製法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、溶融押出し法を利用した熱可塑性樹脂フィルムの製法に関し、殊に厚み均一性に優れた熱可塑性フィルムを効率良く製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂をTダイ法によって、溶融押出ししてフィルムを製造するに当たり、溶融押出しフィルムを冷却ロールにキャストするときに、該フィルムに高圧電流の印加された電極によって電荷を与え、フィルムを冷却ロール表面に静電気的に密接させながら引取ることにより冷却効率を高める方法は公知である。また、例えば特公昭37−6142号公報には高圧電極として横方向に間隔をおいた一連の針を用いる方法が開示されている。更に特公昭59−23270号公報等には、特にポリアミド系フィルムを押出し冷却する際に、針状電極や鋸刃電極を用いストリーマコロナ状態のコロナ放電によって電荷を付与することが有効であることも明らかにされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記の様な公知の手法では、高圧電極として針状電極や鋸刃電極の如き突起を有する電極を使用し、突起部で放電を行なう手法であるから、次の様な問題がある。
【0004】
(1)異常放電が起きたとき、電極の突起先端が摩耗して十分な放電が行なわれなくなり、それに伴い静電気力も弱くなって、冷却ロールへの溶融フィルムの均一な密接ができなくなる。
(2)安定した静電密接性を確保しようとして付与電荷を増大すると、(1)で指摘した電極の先端摩耗が一層顕著になってくる。
【0005】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、溶融フィルムに電荷を与えるための電極の、前述の如き突起先端の摩耗を低減し、それにより安定した静電密接性を保障することによって厚み均一性の優れた熱可塑性フィルムを安定して効率良く製造することのできる方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の構成は、熱可塑性樹脂をフィルム状に溶融押出しし、該溶融押出しフィルムを回転式冷却ロールに静電気的に密接させることによって急冷固化させながら引き取るに際し、静電気付与の為の電極として、先端が融点1700℃以上の材質からなり、且つコロナ放電可能な1以上の突起を備えた電極を使用し、該電極に直流高電圧を印加して該溶融フィルムに電荷を付与するところに要旨を有するものである。
【0007】
【作用】
上記の様に本発明では、溶融押出しされる樹脂フィルムを回転冷却ロールに静電気的に密接させ、急冷固化させながら引き取る際に、静電気を付与するための電極として、コロナ放電の可能な1以上の突起を有し、該突起先端の材質の融点が1700℃以上の材質である電極を使用し、この電極に直流高電圧を印加し、該溶融フィルムに電荷を付与することによって回転冷却ロール表面への熱可塑性樹脂フィルムの密接を安定的に向上させるものであり、それにより電極の摩耗損傷を抑制し、厚み均一性の優れた樹脂フィルムを安定して高能率で製造することができる。
【0008】
本発明が適用される熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有するものであればその種類は一切制限されないが、代表的なものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂等が例示される。中でも、溶融状態での比抵抗が1×107 Ωcm以下である熱可塑性樹脂、とりわけ、たとえば金属塩化合物を含有したナイロン6の如く、溶融状態での比抵抗が1.5×105 Ωcm以下の熱可塑性樹脂が有効である。
【0009】
これらの熱可塑性樹脂は、通常押出機でTダイよりフィルム状に溶融押出しされ、回転冷却ロールに密接させることにより急冷固化させながら引き取られるが、この際に、回転冷却ロールへの溶融樹脂フィルムの密接性を高めて冷却効率を上げる為の手段として、ダイと冷却ロールとの間に直流高電圧を印加した電極を挿入し、溶融樹脂フィルムに静電荷を付与する方法が知られている。
【0010】
本発明ではこの電極として、例えば針状、針が並んだ多針状、鋸刃状、より線状、ねじ山状、傷のついたワイヤ状などの如く1以上のコロナ放電可能な突起を有するものが用いられる。この突起は、所望の場所でコロナ放電を行ない溶融樹脂フィルムに静電荷を付与する機能を果たすものであり、この突起は、先端の直径は2mm以下にするのがよく、より好ましくは0.5mm以下にすることが望まれる。突起先端の直径が2mmを超える鈍い先端形状の電極では樹脂フィルムに十分かつ均一な電荷を付与し難い。
【0011】
また、突起の無いタングステン線等を電極として用いた場合は、均一な放電が得られず、静電気不足により樹脂フィルムの冷却ロールに対する密接が不十分となり樹脂フィルムの厚みが不均一になる。
【0012】
針電極の材質は真鍮、鉄、ステンレスなどの金属が用いられるが、該突起先端は融点1700℃以上の高融点素材で構成することが必要である。この様な高融点素材としては、例えばタングステン、イリジウム、白金、モリブデン、あるいはそれらの合金等が挙げられるが、これらの中でも特に好ましいのはタングステンおよびその合金である。
【0013】
該突起部の材質が1700℃未満である場合は、フィルム製造中に異常放電が起こり、一時的に特定の突起に高電流が流れたときにその突起が摩耗損傷し、その後その突起では正常な放電が行なわれなくなり、樹脂フィルムが厚みむらを生じる原因になる。また熱可塑性樹脂の種類によっては、回転冷却ロールに十分密接させるのに電極に高電流を流さなければならないことがあり、この様な場合に、該突起部の材質が1700℃未満の低融点物では、フィルム製造中に突起が徐々に摩耗損傷し、正常な放電が行なわれなくなって、樹脂フィルムが厚みむらを生じる。
【0014】
該電極の配設位置は溶融樹脂フィルムが回転冷却ロールに接触する位置の近傍であり、一般的には接触する位置よりもの0〜50mm上方に設置し、この電極に直流高電圧発生装置から正または負で2〜30KVの直流高電圧を印加する。電極突起部の損傷は、正に比べ負の直流高電圧を印加したときの方が顕著であるので、本発明では、負の直流高電圧を電極に印加する際に特に有効である。
【0015】
また本発明は、特公昭59−23270号公報などに開示されている様にストリーマコロナ状態のコロナ放電を行ない、比較的高電流で樹脂フィルムに静電荷を付与する方法に対して特に有効であるが、勿論これに限定されるものではない。樹脂フィルムの引取り速度が高速になると、より多くの静電荷を付与する必要が生じ、電極へ流す電流も高電流が必要となるので、本発明の特徴は一層顕著に発揮される。
【0016】
【実施例】
実施例1
内径90mm押出機の先端に設けた300mm幅のTダイからりん酸ナトリウムを0.03重量%含有したナイロン6フィルムを溶融押出し、直径900mmの回転冷却ロール上に密接させて急冷固化させながら、厚み:180μmのフィルムを引き取った。
【0017】
このとき、先端直径が0.10mm、太さ1.0mmφ、長さ12mmのタングステン製の針を2mmピッチで真鍮の板に埋め込んだ長さ280mmの電極を回転冷却ロールに近接して配置し、この電極に直流高電圧発生装置より−5KV〜−15KVの直流高電圧を印加し、ストリーマコロナ放電状態でナイロン6フィルムに静電荷を付与することによって、アースされた回転冷却ロールに溶融したナイロン6フィルムを密接させながら冷却固化し、50m/分の速度で引取った。この間、フィルムと回転冷却ロール間の空気の巻き込みを防止するのに十分な静電密接力が得られた。
【0018】
次に、電極突起部の摩耗加速テストとして次の実験を行なった。即ち電極に上記と同じ針を1本植えこんだものを用い、ストリーマコロナ放電が1本の針に集中する状態とし、この状態を30分間続けた後、放電していた針の摩耗量を針先端の直径測定により確認したところ、先端直径は0.11mmであり、ほとんど摩耗していなかった。タングステンの融点は3370〜3665℃である。
【0019】
比較例1
電極の針の材質をステンレス(SUS304)に代えた以外は実施例1と全く同様にして、静電密接力および針先端の摩耗後の針先端直径を調べた。その結果、50m/分の引取り速度でもフィルムと回転冷却ロール間の空気の巻き込みは防止できたが、摩耗加速テスト後の針先端直径は、初期の0.10mmから0.50mmに拡大しており、目視でも先端が溶けて短かくなっていることが確認された。SUS304の融点は1370〜1450℃である。
【0020】
比較例2,3
電極の針の材質をスチール(軟鋼)または真鍮に代えた以外は実施例1と全く同様にして、静電密接力と摩耗加速テスト後の針先端直径を調べた。その結果、50m/分の引取り速度でもフィルムと回転冷却ロール間の空気の巻き込みは防止できたが、摩耗加速テスト後の軟鋼針および真鍮針の夫々の先端直径は0.55mm,0.35mmと大きくなり、目視でも先端が溶けて短かくなっていることが確認された。軟鋼および真鍮の融点は各々1470〜1500℃、890〜950℃である。
【0021】
実施例2
電極の針の材質を白金に変えた以外は実施例1と全く同様にして、静電密接力と摩耗加速テスト後の針先端直径を調べた。その結果、50m/分の引取り速度でもフィルムと回転冷却ロール間の空気の巻き込みを防止できた。また、摩耗加速テスト後の針先端直径は0.13mmであり、初期の0.10mmに比べほとんど摩耗していなかった。白金の融点は1769〜1771℃である。
【0022】
【表1】
【0023】
比較例4
実施例1で用いた針電極を、直径0.20mm、長さ280mmのタングステン線に変更した以外は実施例1と同様にして静電密着性を確認したところ、引取り速度5m/分では、フィルムと回転冷却ロール間の空気巻込みを防止するのに十分な静電密着力が得られたが、引取り速度50m/分では、一定ピッチのストリーマコロナ放電が得られないため、フィルムと冷却ロール間に空気が混入し、厚み斑の多いフィルムしか得られなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、静電気的引力で溶融樹脂フィルムを回転冷却ロールに密接させて冷却固化させながら引取る際に、電極の突起部を摩耗損傷し難くすることによって、フィルム製造時に異常放電が生じた場合でも、あるいは高電流を常時流す様な場合でも、長期に亘って安定した厚み均一性の優れた樹脂フィルムを得ることができる。
Claims (1)
- 熱可塑性樹脂をフィルム状に溶融押出しし、該溶融押出しフィルムを回転式冷却ロールに静電気的に密接させることによって急冷固化させながら引き取るに際し、静電気付与の為の電極として、針が並んだ多針状、鋸刃状、より線状、ねじ山状、傷のついたワイヤー状などの如くコロナ放電可能な突起を複数個備え、且つ、該突起先端の直径が2mm以下であり、該突起先端の素材がタングステンからなる電極を使用し、該電極に負の直流高電圧を印加して該溶融フィルムに電荷を付与することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製法。
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JP28375293A JP3564715B2 (ja) | 1993-11-12 | 1993-11-12 | 熱可塑性樹脂フィルムの製法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP28375293A JP3564715B2 (ja) | 1993-11-12 | 1993-11-12 | 熱可塑性樹脂フィルムの製法 |
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JPH07137114A JPH07137114A (ja) | 1995-05-30 |
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JP28375293A Expired - Fee Related JP3564715B2 (ja) | 1993-11-12 | 1993-11-12 | 熱可塑性樹脂フィルムの製法 |
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1993
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