JP3564504B2 - 電場発光デバイスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電場発光材料、電場発光デバイスおよびそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電場発光蛍光体、特に分散型電場発光蛍光体は、誘電物に分散させて発光体層を形成し、発光体層の両側に電極を設けるとともに、少なくとも一方の電極として透明電極を用い、これらの電極の間に交流電圧を加えることにより発光させるものである。
従来、電場発光蛍光体としては、硫化亜鉛を母体とするものがほとんどで、この硫化亜鉛を母体材料とした蛍光体は、湿気や水分の影響を受けやすいという弱点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、化学的・物理的に安定した電場発光材料を得るべく、各種の材料について研究、実験を繰り返してきたところ、アルミン酸類(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛)を母体材料とする電場発光材料が有効であることを見出した。
本発明はかかる新しい知見に基づくものであり、したがって、本発明の技術的課題は、上記アルミン酸類を利用し、化学的・物理的に安定な電場発光材料、発光デバイスおよびこれらの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の電場発光材料は、化学的・物理的に安定な化合物であるアルミン酸ストロンチウム、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウムまたはアルミン酸亜鉛からなる母体材料に、電場によって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類または遷移金属の1種類以上を発光中心として、0.001〜20wt%添加したことを特徴とするものである。
上記電場発光材料においては、母体材料として、SrAlで表される化合物を用いると共に、発光中心としてEuを0.001〜20wt%添加し、或いは、母体材料としてZnAlで表される化合物を用いると共に、発光中心としてMnを0.001〜20wt%添加するのが、長残光性をもたせるために有効である。
【0005】
また、上記課題を解決するための本発明の電場発光材料の製造方法は、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウムまたはアルミン酸亜鉛からなる母体材料に、電場によって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類または遷移金属の1種類以上を、発光中心として、0.001〜20wt%の範囲内で添加し、混合した後、還元雰囲気中で焼成することを特徴とするものである。
【0006】
更に、上記電場発光材料は、その粉末を圧電性樹脂に分散させて発光体を形成し、その両面側に電極を設けることにより、本発明の電場発光デバイスとすることができ、この場合に、圧電性樹脂としてはフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする樹脂を用いるのが有効である。
上記電場発光デバイスは、上述した電場発光材料の粉末を圧電性樹脂粉末と混合して加熱し、あるいは溶媒で溶解してペーストとし、そのペーストを板状あるいは膜状に成形し、その両面側に電極を取り付けた後、直流電圧により分極処理を施すことにより製造することができ、この方法は発光特性の向上に有効なものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は化学的・物理的安定なアルミン酸類(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛)を母体材料とした新しい電場発光体を提供すると共に、これを利用した発光デバイスおよびこれらの製造方法を提供するものである。
【0008】
まず、本発明に係る電場発光材料は、化学的・物理的に安定な化合物であるアルミン酸ストロンチウム、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウムおよびアルミン酸亜鉛の群から選ばれた1種類またはそれ以上のアルミン酸塩からなる母体材料に、電場によって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類または遷移金属の1種類以上を発光中心として、0.001〜20wt%の範囲で添加してなるものである。上記電場発光材料においては、母体材料として、SrAlで表される化合物(アルミン酸ストロンチウム)を用いると共に、発光中心としてEuを0.001〜20wt%添加し、或いは、母体材料としてZnAlで表される化合物(アルミン酸亜鉛)を用いると共に、発光中心としてMnを0.001〜20wt%添加するのが、長残光性をもたせるために有効である。
【0009】
特に、希土類を発光中心として添加した上記アルミン酸ストロンチウムは蓄光性(長残光性)に優れており、例えば、SrAl:Eu:Dyは10時間以上の残光を示している。また、遷移金属を添加したアルミン酸亜鉛ZnAl:Mnも同様に長残光を示している。
【0010】
電場によって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する上記希土類元素としては、Ce,Eu,Tb,Nd,Pr,Pm,Sm,Gdを挙げることができ、また、同遷移金属元素としては、Mn,Cu,Ag,Zn,Fe,Ni,Co,Nbを挙げることができる。
【0011】
上記の電場発光材料は、その粉末を圧電性樹脂に分散させて発光体を形成し、その両面側に電極を設けることにより電場発光デバイスとすることができるが、上記樹脂としてはPVAなどの非圧電性のものを用いることもできる。また、上記樹脂としては、透明樹脂を利用するのが望ましく、特にフッ化ビニリデン(PVDF)またはそれを主成分とする樹脂が適している。更に、上記両面側に設ける電極は、少なくとも片面側のものを透明電極とする。この透明電極にはITO電極が適し、もう1つの電極には金、アルミ、銀等を利用することができる。
【0012】
上述した電場発光材料を製造するには、所要の母体材料を形成する出発原料に、電場によって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類または遷移金属の1種類以上を発光中心として所要の範囲内で添加し、よく混合した後、還元雰囲気(例えば、5%Hを含んだAr、100ml毎分)中で焼成すればよい。
SrAlで表される化合物を母体材料とする場合には、出発原料として、SrCO,Al,SiO,MgO,BaCO,Euなどの各種酸化物を用いることができ、また、ZnAlで表される化合物を母体材料とする場合には、出発原料として、ZnO,Alなどの各種酸化物を用いることができる。なお、出発原料はこれらに限らず、最終的に酸化物になるものであれば他の化合物を使用することができる。
【0013】
また、電場発光デバイスの製造は、上記電場発光材料を粉末とし、それを圧電性樹脂粉末と混合して加熱し、あるいは溶媒で溶解してペーストとし、それを板状あるいは膜状に成形し、その成形体の両面側に電極を取り付けた後、直流電圧を印加して分極処理を施すことによって行うことができる。
【0014】
上述した電場発光材料は、蓄光性を兼ね備えていることから、エネルギー効率を大幅に高めることができる点でも有利なものであり、省エネルギー型の照明、表示板、指示板、掲示板などに有効に利用することができる。また、従来の蓄光のための紫外線の代りに電場を利用することができるので、励起光がなくても蓄光性を利用することができる点で有利である。
【0015】
【実施例】
実施例1〔SrAl:Euについて〕
出発原料として、SrCO,Al,SiO,MgO,BaCO,Euの各種酸化物を用いた。この出発原料を、Sr0.95Al:Eu0.05(SAO−E)の組成になるように秤量し、よく混合した後、120℃で乾燥し、還元雰囲気中で、1400℃で4時間焼成した。
【0016】
得られた電場発光材料粉末を樹脂粉末と混合し、加熱して溶解し、直径20mmの板状に成形し、その片面にアルミ電極を真空蒸着で作製し、他の片面にITO透明電極をスパッタリング法で取り付けた後、1〜10kV/mmの直流電圧により分極処理を施して、電場発光デバイスを作製した。
上記樹脂としては、非圧電性のPVAと圧電性樹脂のPVDFとPTFE、およびPVDF+PTFEをそれぞれ用いた。
【0017】
実施例2〔ZnAl:Mnについて〕
出発原料として、ZnO,Al,MnCOの各種酸化物を用いた。この出発原料を、Zn0.99Al:Mn0.01(ZAO−M)の組成になるように秤量し、よく混合した後、120℃で乾燥し、還元雰囲気中で、1100℃で4時間焼成した。
以下、実施例1と同様の処理により電場発光デバイスを作製した。
【0018】
表1および表2に、電場発光輝度とその安定性を示した。圧電樹脂、特にフッ化ビニリデン(PVDF)が発光輝度の向上と安定に適していることがわかった。また、分極処理が効果的であることがわかった。
図1および図2にそれぞれの電場発光スペクトルを示す。
【0019】
【表1】
Figure 0003564504
【0020】
【表2】
Figure 0003564504
【0021】
【発明の効果】
以上に述べた本発明によれば、化学的・物理的に安定な化合物であるアルミン酸類を利用し、化学的・物理的に安定な電場発光材料を提供できると共に、これを利用した発光デバイスおよびこれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のSrAl:Euの電場発光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例2のZnAl:Mnの電場発光スペクトルを示す図である。

Claims (3)

  1. SrAl で表される化合物を母体材料とし、発光中心としてEuを0.001〜20wt%添加した粉末を還元雰囲気中で焼成して得られた長残光電場発光材料、又はZnAl で表される化合物を母体材料とし、発光中心としてMnを0.001〜20wt%添加した粉末を還元雰囲気中で焼成して得られた長残光電場発光材料の粉末を、圧電性樹脂に分散させて発光体を形成し、その両面側に電極を設けた後、直流電圧により分極処理を施されたものであることを特徴とする電場発光デバイス。
  2. 圧電性樹脂がフッ化ビニリデンを主成分とする樹脂である請求項に記載の電場発光デバイス。
  3. SrAl で表される化合物を母体材料とし、発光中心としてEuを0.001〜20wt%添加した粉末を還元雰囲気中で焼成して得られた長残光電場発光材料、又はZnAl で表される化合物を母体材料とし、発光中心としてMnを0.001〜20wt%添加した粉末を還元雰囲気中で焼成して得られた長残光電場発光材料の粉末を、圧電性樹脂粉末と混合して加熱し、あるいは溶媒で溶解して得たペーストを、板状あるいは膜状に成形し、その両面側に電極を取り付けた後、直流電圧により分極処理を施すことを特徴とする電場発光デバイスの製造方法。
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