JP3563626B2 - 二酸化チタン含有ポリエステル組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は二酸化チタン含有ポリエステル組成物に関し、更に詳しくは、二酸化チタンの該組成物中での分散性が改善されたポリエステル組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリエステル樹脂に二酸化チタン等の微粒子を含有させて、得られる成形品の表面に凹凸を付与し、表面の滑り性や、反射・屈折光等を制御することが行われている。
【0003】
しかしながら、該二酸化チタン含有ポリエステル組成物を製造する際には、二酸化チタンの粗大粒子が混入する、二酸化チタンの表面活性によってポリエステル樹脂が分解し、その分子量が低下しする、といった問題が発生し、成形時のフィルター詰まり、紡糸時の単糸切れ、色相むら、不透明性むら、布帛の風合いむら等の製品としての問題が発生すると共に、製品の成形あるいは製糸工程設備の金属部が摩耗する等の工程上での問題も発生しており、その解決手段として各種の提案がなされている。
【0004】
例えば、粗大粒子を除去するための方法として、ポリエステル製造時に二酸化チタンを添加する際に、あらかじめ該二酸化チタンに対して粉砕、分級等の操作を行って粗大粒子を除去し、スラリー状あるいは液状にして添加する方法(特公平1−41170号公報、特開昭63−105059号公報等)や、製造後のレギュラーポリエステルに二酸化チタンを添加し、溶融混練する場合には、単軸あるいは二軸溶融混練押出機を用いてポリエステルポリマー及び二酸化チタンに剪断応力を加えて溶融混練を行う方法(特開平2−263867号公報、特開平3−145641号公報等)、ベント付き押出機を用いて、ポリエステルポリマーに平均粒径0.01〜5μmの範囲にある無機粒子を、水及び/又は沸点200℃以下の有機化合物のスラリーとして添加する方法(特開平3−115352号公報)、湿式又は乾式の分級処理を行って実質的に3μm以上の粒子を除去した平均粒径0.1〜0.5μmの二酸化チタンとポリエステルポリマーとを同方向回転型2軸スクリュー混練押出機にて溶融混練する方法(特開平1−173031号公報)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、予め粗大粒子を除去する方法では、粉砕・分級操作に多大な費用や作業時間が掛かり、更に、例えこれらの除去操作を行ってもポリエステル合成系に二酸化チタンを添加するとき、あるいは添加終了後にポリエステルポリマー内にて二酸化チタンが再凝集し、製品ポリエステル中での粗大粒子の生成を防止することは困難である。
【0006】
一方、単軸又は2軸の溶融混練押出機を用いて溶融混練する方法では、粉末中に存在する粗大粒子を単軸又は2軸押出し機中で完全に粉砕するあるいは完全に混練することは非常に難しく、またポリエステルポリマー内に二酸化チタンを均一に分散させるために剪断応力をかけすぎると、ポリエステルポリマーの固有粘度が著しく低下する。更に、予め粗大粒子を除去する方法と同様、ポリマーと微粒子を混練押出機に供給する場合には混練工程中に、二酸化チタンの再凝集が避けられない。その結果、製造工程中に生じた粗大粒子を除去することができず、満足する製品を得ることが出来なかった。
【0007】
また、二酸化チタンがポリエステル樹脂の分子量を低下させる問題を解決するため、二酸化チタンに表面処理を施して、二酸化チタン表面活性を封鎖することも提案されている(特開昭63−265948号公報、特開昭60−139750号公報、特開平4−33920号公報等)。該表面処理は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機処理及びポリオール系、シリコン系などの有機処理に大別される。しかしながら無機系表面処理は複雑な工程が必要であり、処理量や処理後の物性の制御が困難なため高価となるので好ましくなく、一方有機処理を施すのみでは被覆の結合力が小さく、また耐熱性に劣るので、処理効果が十分に得られないのが実状であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、上記従来技術が有していた問題を解消し、ポリエステルの耐熱性を保持しつつ、二酸化チタンの分散性に優れ、金属摩耗性が低減された二酸化チタン含有ポリエステル組成物を提供することにある。
【0009】
更に、本発明の第二の目的は、上記の二酸化チタン含有ポリエステル組成物の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点を解決するべく、使用する二酸化チタンの物性並びに処理剤及び添加剤につき鋭意検討を行い、特定の表面処理を施し、物性を制御した二酸化チタンを用いたとき、二酸化チタンの分散性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の第一の目的は、
下記(a)〜(i)の各要件を同時に満足する二酸化チタンを、ポリエステル組成物の全重量を基準として5.0〜70.0重量%含有してなる、二酸化チタン含有ポリエステル組成物により達成することができる。
(a)平均粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあること。
(b)粒子径が3μm以上の粗大粒子が15000ケ/mg以下であること。
(c)粒子径が4μm以上の粗大粒子が7500ケ/mg以下であること。
(d)P2O5を二酸化チタンの全重量を基準として、0.4〜0.6重量%の範囲で含有すること。
(e)K2Oを二酸化チタンの全重量を基準として、0.1〜0.3重量%の範囲で含有すること。
(f)強熱減量率が0.4重量%以下であること。
(g)結晶形態がルチル型である二酸化チタンの重量をアナターゼ型である二酸化チタンの重量で除した値が9×10−3以下であること。
(h)結晶子サイズが10〜150nmの範囲にあること。
(i)実質的にFeを含有しないこと。
【0012】
また、本発明の第二の目的は、
二酸化チタンの含有量が、該二酸化チタン含有ポリエステル組成物の全重量を基準として5.0〜70.0重量%の範囲にある二酸化チタン含有ポリエステル組成物を製造するに際し、
ベント式混練機へ、下記(a’)〜(i’)の各要件を同時に満足する二酸化チタンを、水及び/又は沸点のが50〜240℃の範囲にある有機化合物を分散媒とするスラリー状態で供給し、該スラリーとポリエステルとを溶融混練することを特徴とする、二酸化チタン含有ポリエステル組成物の製造方法により達成することができる。
【0013】
(a’)平均粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあること。
(b’)粒子径が3μm以上の粗大粒子が15000ケ/mg以下であること。
(c’)粒子径が4μm以上の粗大粒子が7500ケ/mg以下であること。
(d’)P2O5を二酸化チタンの全重量を基準として、0.4〜0.6重量%の範囲で含有すること。
(e’)K2Oを二酸化チタンの全重量を基準として、0.1〜0.3重量%の範囲で含有すること。
(f’)強熱減量率が0.4重量%以下であること。
(g’)結晶形態がルチル型である二酸化チタンの重量をアナターゼ型である二酸化チタンの重量で除した値が9×10−3以下であること。
(h’)結晶子サイズが10〜150nmの範囲にあること。
(i’)実質的にFeを含有しないこと。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する二酸化チタンは、その平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲にあり、且つ3μm以上の粗大粒子が15000ケ/mg以下、4μm以上の粗大粒子が7500ケ/mg以下であることが必要である。
【0015】
平均粒径が0.5μmを越えると二酸化チタンの粗大粒子が増加するうえ分散が悪化し、成形時のフィルター詰まりや紡糸時の断糸が多発する。また、平均粒径が0.1μm未満であると、二酸化チタンの比表面積が大きくなるため、二酸化チタン単位重量あたりの表面活性が高くなりすぎて、ポリマーを劣化させたり、二酸化チタン粒子同士の凝集を促進するので問題となる。
【0016】
また、3μm以上の粗大粒子が15000ケ/mgを超えるか、または4μmを超える粗大粒子が7500ケ/mgを超えると、二酸化チタン含有ポリエステル組成物中の粒子分散性が著しく劣るようになり、製糸工程におけるパック圧の上昇や製膜その他の成形工程において、フィルター寿命を著しく短くしたりするなどの問題が生じる。
【0017】
本発明に用いられる二酸化チタンはP2O5量が二酸化チタンの全重量を基準として0.4〜0.6重量%の範囲にあり、且つK2O量が二酸化チタンの全重量を基準として0.1〜0.3重量%の範囲にあることが必要である。
【0018】
即ち、P2O5量が二酸化チタンの全重量を基準として0.4重量%未満であるか、K2O量が二酸化チタンの全重量を基準として0.1重量%未満である場合には該二酸化チタンの組成物中での分散性が不十分となり、二酸化チタンによる工程の金属摩耗も発生してしまう。一方、P2O5量が二酸化チタンの全重量を基準として0.6重量%を越えるか、K2O量が二酸化チタンの全重量を基準として0.3重量%を越える場合には、ポリエステルの分子量低下、組成物の色相悪化が発生する。
【0019】
本発明において使用する二酸化チタンはその強熱減量率が0.4重量%以下であることが必要である。該強熱減量率が0.4重量%を越えると得られる二酸化チタン含有ポリエステル組成物の熱安定性が著しく低下する。即ち、該組成物を単独で溶融押出した際の固有粘度([η])の変化(以下、Δ[η]と略記することもある。)が大きくなり、配合された二酸化チタン濃度を希釈して製糸する工程には供給できない。特に、二酸化チタンの配合量が多い場合に熱安定性の低下が著しい。
【0020】
本発明において使用する二酸化チタンは、結晶形態がルチル型である二酸化チタンの重量をアナターゼ型である二酸化チタンの重量で除した値が9×10−3以下であることが必要である。該値が9×10−3を越える場合には、に酸化チタン結晶の硬さが増し、成形・製糸設備に対する金属摩耗が著しくなる。
【0021】
更に、二酸化チタンの結晶子サイズが10〜150nmの範囲にある必要がある。該結晶子サイズが10nm未満であると、解砕処理により粒子が微細化されすぎ必要となる平均粒径の維持が困難である。一方、150nmを越える場合には、解砕処理が困難で、処理に多大の時間を要する。
【0022】
また、本発明において、二酸化チタンは実質的にFeを含有しないことが必要である。該Feを含有する場合には結晶形態におけるルチル型とアナターゼ型の比の影響と同様に成形・製糸設備に対する金属摩耗が著しくなる。
【0023】
本発明においてポリエステル(以下、ポリエステル(A)と称することもある。)とは、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルであって、汎用樹脂としての物性を失わない範囲で目的に応じて他の成分が共重合されていてもよく、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体として、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、無水フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸ジメチル等を挙げることができ、特に、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを用いることが好ましい。
【0024】
また、ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメタノール、ジメチロールプロピオン酸、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を挙げることができ、特に、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールを用いることが好ましい。
【0025】
これらのジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体、並びにジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体はそれぞれ1種ずつを単独で用いても、2種以上を併用してもどちらでもよい。
【0026】
本発明におけるポリエステル(A)は、前記の例示した化合物から常法によって得ることができ、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させた後、高温減圧下で重縮合反応させるか、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体とジオールとをエステル交換反応させた後、高温減圧下で重縮合させることにより製造することができる。
【0027】
尚、本発明におけるポリエステル(A)には、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸、グリセリン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等の多価ヒドロキシ化合物を、本発明の目的を達成する範囲内であれば共重合してもよい。
【0028】
本発明の製造方法においては、上記した各要件を具備する二酸化チタンを水及び/又は沸点が50〜240℃の範囲にある有機化合物とのスラリーとしてポリエステルポリマーに添加する必要があり、その際に用いることが出来る有機化合物として、メタノール、エタノール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン等のエーテル類、その他エステル類、ケトン類、アミン類等を挙げることができるが、特に制限されるものではないが、除去の容易性から水、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、β−オキシエチルエーテル、β−オキシエチルメチルエーテルを用いることが好ましく、就中ハンドリング性、安全性、コストの観点から水が好ましい。該スラリーの分散媒は一種を単独を用いても、二種以上の混合分散媒を用いてもどちらでもよい。
【0029】
更に、二酸化チタンが均一に分散しているスラリーを得るために、本発明の目的を奏する範囲内であれば各種の添加剤を用いてもよく、該添加剤としては、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の保護剤、水酸化ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のナトリウム塩、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド等のオニウム化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0030】
二酸化チタンと水及び/又は沸点が50〜240℃の範囲にある有機化合物とのスラリーは単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよく、常法に従って調製することができる。
【0031】
即ち、粒子を水及び/又は沸点が50〜240℃の範囲にある有機化合物とのスラリーとした後、粉砕又は解砕し、更に分級処理を加えても良いし、逆に、分級処理後に粉砕又は解砕しても良い。また、乾式で粉砕又は解砕し、更に分級処理を加えるか、粉砕又は解砕単独の処理を行うか、分級処理単独の処理を行った後、水及び/又は沸点が50〜240℃の範囲にある有機化合物とのスラリーとしてもよい。あるいは、乾式と湿式とを適宜組み合わせても良く、例えば、乾式で粉砕した粒子をスラリー化した後、湿式にて分級処理を行う、乾式にて解砕及び/又は分級処理を行った後に湿式にて粉砕処理を行う等の方法を任意に採用すればよい。
【0032】
また、スラリー濃度については、特に制限されないが、最終的には溶媒を除去することから、可能な限り高濃度とすることが好ましく、スラリーの全重量を基準として、二酸化チタンの重量が10〜80重量%の範囲にあることが好ましい。該濃度が前記の範囲にあるときには、溶媒が原因となってポリエステルポリマーが分解することによる分子量低下や、ハンドリングの低下が発生しにくい。該濃度は、特に、20〜70重量%の範囲にあることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法においては、二酸化チタン含有スラリーに、更に、固有粘度が0.1〜0.5の範囲にあるポリエステル(以下、ポリエステル(B)と称することもある。)を含有させることが好ましく、特に、該ポリエステル(B)が溶解していることが好ましい。該ポリエステル(B)を二酸化チタン含有スラリー中に含有させることによって二酸化チタンのポリエステル(A)への親和性が向上し均一に分散させるという効果を得ることができる。
【0034】
該ポリエステル(B)のスラリーへの添加時期は、スラリーを混練機に添加する前であれば、スラリーを調製する際に初めから添加しても、スラリーの調製が完了した後でも、任意の段階で添加することができる。
【0035】
上記のポリエステル(B)は、多価カルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体と多価ヒドロキシ化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体から製造されるが、多価カルボン酸及びそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム等を挙げることができ、多価ヒドロキシ化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等を例示することができる。
【0036】
該ポリエステル(B)は前掲のポリエステル(A)と同様に常法に従って製造すればよく、多価カルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体ならびに多価ヒドロキシ化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体をエステル化反応及び/又はエステル交換反応させ、引き続き高温・減圧下で重縮合させればよい。
【0037】
本発明のポリエステルポリマーにはポリエステルの製造時に通常用いられるリチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、二酸化チタン等の化合物の金属化合物触媒、着色防止剤としてのリン化合物、その他ポリエステルの改質に用いられる不活性粒子や有機化合物等を本発明の目的を奏する範囲内で含んでいてもよい。
【0038】
ここで、ベント式混練機は少なくとも一つのベント孔を備えた混練機であればよく、例えば、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプのいずれも採用することが出来る。
【0039】
本発明の製造方法に用いるベント式混練機は、混練セグメントの形式がロータータイプであってもニーディングディスクタイプであってもよく、またニーダーでもよく、連続式でもバッチ式でもよい。
【0040】
本発明の製造方法においてベント式混練機は、水及び/又は沸点が50〜240℃の範囲にある有機化合物を除去するためのベント孔の少なくとも一つを減圧下に保持する必要がある。該ベント孔の減圧度は300Torr以下に保持することが好ましく、100Torr以下に保持することがより好ましく、特に、20Torr以下に保持することが好ましい。
【0041】
上述した製造方法を採用することによって、ポリエステルの合成反応時に二酸化チタンを添加する際の、該二酸化チタンの再凝集、界面活性剤の長時間の熱劣化による品質低下、色相悪化等の問題を解消し、作業性も改善することができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。尚、実施例中における各特性の測定は以下の方法により行った。
【0043】
(1)強熱減量率:
試料の二酸化チタン2gを精秤し、磁性ルツボ中に入れて、電気炉(900〜950℃)で2時間強熱した。冷却後精秤して求めた重量を全強熱減量とした。また、同一の二酸化チタン試料2gを精秤し、105〜110℃の温度で3時間乾燥させて、減少した重量分を含有水分とした。下記数式1より強熱減量を求め、下記数式2より強熱減量率を求めた。
【0044】
【数1】
(強熱減量)=(全強熱減量)−(含有水分)
【0045】
【数2】
(強熱減量率)=(強熱減量)/2 ×100
【0046】
(2)二酸化チタンの平均粒径:
島津製作所製「CP−50型Centrifugal Particle Size Analyser」を用いて測定した。次いで、この測定器によって得られる遠心沈降曲線をもとに算出した各粒径の粒子とその存在量とのcumulative曲線から、50mass percentに相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とした。(日刊工業新聞社「粒度測定技術」、1975年発行、頁242〜247参照)。
【0047】
(3)結晶子サイズ:
二酸化チタンのX線回折の2θ=24.5°〜26.0°の(101)面の回折ピークを2つのガウス関数でフィッティングし、その2つの合成関数から、ピーク位置、半値幅を求めて、Sherrerの式から結晶子のサイズを求めた。
【0048】
(4)スラリー中の粗大粒子:
コールター・エレクトロニクス社製「コールターマルチサイザーTA−II型」を用いて測定される粒子体積分布を球相当径に換算して求めた。
【0049】
(5)固有粘度([η]):
1,1,2,2−テトラクロルエタン40重量部とフェノール60重量部の混合溶媒中に試料を溶解して定法に従って35℃にて測定した。
【0050】
(6)ポリエステル組成物の濾過昇圧:
ポリエステル組成物中の二酸化チタン粗大粒子を評価するため、下記のように濾過昇圧速度を評価した。
小型1軸スクリュータイプ押出機の溶融ポリマー出側にポリマー定量供給装置を取り付け、更にその出側に内径64mmφの2400メッシュ金網フイルターを2枚重ねて装着した。
次いで、溶融ポリマーの温度を290℃一定となるようにコントロールし、ポリマー流量が33.3g/minの速度となるようにポリマーを10時間連続して濾過する。この時のフイルター入側の圧力上昇値の平均値をもって、濾過圧力上昇速度とした。尚、評価は以下の判定基準に従い、特級及び1級のみが実用に供することができる。
特級:濾過圧力上昇速度が、毎時5kg/cm2未満である。
1級:濾過圧力上昇速度が、毎時5kg/cm2以上〜10kg/cm2未満である。
2級:濾過圧力上昇速度が、毎時10kg/cm2以上20kg/cm2未満である。
3級:濾過圧力上昇速度が、毎時20kg/cm2以上である。
【0051】
(7)△[η]:
ポリエステル組成物と、ポリエステル組成物の濾過昇圧評価時の吐出物との固有粘度の差を△[η]とした。
【0052】
(8)ポリエステル組成物中の二酸化チタン分散性:
ポリマー50mgを2枚のカバーグラス間にはさんで280℃で溶融プレスし、急冷したのち、位相差顕微鏡を用いて観察し、画像解析装置「ルーゼックス500」で顕微鏡像内の最大長が5.0μm以上の粒子数をカウントした。尚、評価は下記の判定基準に従い、特級及び1級のみが実用に供される。
特級:5.0μmをこえる粒子が全く見当らない。
1級:5.0μmをこえる粒子数が5個/mm2未満である。
2級:5.0μmをこえる粒子数が5〜10個/mm2である。
3級:5.0μmをこえる粒子数が10個/mm2を超える。
【0053】
(9)金属摩耗性:
二酸化チタン含有ポリエステル組成物より調製した繊維サンプル(二酸化チタン含有率が繊維重量を基準として2.5重量%となるように希釈調製)を、直径0.25mmの銅導線に張力25g重となるように接触させつつ、500m/分の速度で走行させて銅導線が破断するまでの時間を測定し、金属摩耗性を評価した。尚、評価は下記の判定基準に従い、特級及び1級のみを実用に供することができる。
特級:銅線が破断するまでの時間が60秒以上である。
1級:銅線が破断するまでの時間が50秒以上60秒未満である。
2級:銅線が破断するまでの時間が40秒以上50秒未満である。
3級:銅線が破断するまでの時間が40秒未満である。
【0054】
(10)不透明性むら:
二酸化チタン含有ポリエステル樹脂組成物より調製した繊維サンプル(二酸化チタン含有率が繊維重量を基準として2.5重量%となるようにメルターで希釈調製)を用いてメリヤス筒編みした編物を、標準色板及び標準白色板の上に12枚重ねて置き、それぞれでの色相をミノルタ社製カラーマシン「CR−50」を用いて測定し、Hunter図の色度図法によりLab表示で色相を得た。次いで、標準色板を用いて測定したL値を、標準白色板を用いて測定値で除した値をもって不透明性とした。この値が大きいほど不透明性が高いことを示す。
【0055】
製糸サンプル75kgを用いて、7.5kgづつに10枚の筒編みを作製し、それぞれの編物に対して上記の不透明性の測定を行って、不透明性の変動係数を求めた。該変動係数が0.1未満であれば、紡糸時、メルターにおける二酸化チタン含有ポリエステル組成物とベースポリエステルとの溶融混練が十分に行われていることを示す。尚、評価は以下の判定基準に従い、特級及び1級のみが実用に供せられる。
特級:変動係数が0.05未満である。
1級:変動係数が0.05以上0.1未満である。
2級:変動係数が0.1以上0.2未満である。
3級:変動係数が0.2以上である。
【0056】
[実施例1]
ポリエステル(A)の製造:
ジメチルテレフタレート100重量部とエチレングリコール70重量部とを用い、酢酸マンガン・4水和物0.038重量部を触媒として常法に従ってエステル交換反応により生成したオリゴマーに、ポリエチレンテレフタレート単位を基準として、リン酸トミメチル0.025重量部を添加し、15分間反応させてから三酸化アンチモン0.045重量部を添加し、更に5分間反応させてから290℃まで昇温し、0.2Torr以下の高真空下にて重縮合反応を行って固有粘度0.64のポリエステルポリマー(A)ペレットを得た。
【0057】
ポリエステル(B)の製造:
テレフタル酸ジメチル99.1重量部と5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル16.8重量部とエチレングリコール45.7重量部とジエチレングリコール42.1重量部との混合物に、酢酸チタン0.0484重量部を添加し、150〜240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。得られた反応物を280℃まで昇温し0.3Torr以下の高真空下にて重縮合反応を行って固有粘度0.45のポリエステルポリマー(B)ペレットを得た。
【0058】
スラリーの調製:
水80重量部に前記のポリエステル(B)20重量部を添加し、ゆっくりと攪拌しながら70℃迄昇温し、70℃に保温しながらポリエステル(B)を完全に溶解させた。この水溶液40重量部と表1に記載した特性を有する二酸化チタン60重量部との混合物を激しく攪拌してスラリー状にした。次いで、このスラリーを平均粒径0.8mmのガラスビーズを充填した攪拌ミルに導入して、二酸化チタンの平均粒径が0.32μmとなるまで湿式粉砕を行った。その後、フィルターメディアとしてポリプロピレンを用いた多孔質フィルターによりスラリーを濾過し、不純物等を除去した。濾過後のスラリー中には、粒子径が3μm以上の粗大粒子が500ケ/mg、粒子径が4μm以上の粗大粒子が250ケ/mg含有されていた。
【0059】
ポリエステル組成物の製造:
最上流部に供給口と中間部と下流部にベント孔を有する二軸スクリュー式混練押出機の供給口に、含有水分がペレット重量を基準として0.2重量%となるように調製したポリエステル(A)ペレット100重量部を連続供給し、同時に、予め調製しておいたスラリーを55.5重量部/時となるように同時に連続供給して、供給比が重量比率でポリエステル(A):スラリー=100:55.5の一定割合となるように設定した。
【0060】
中間部のベント孔を60Torr、下流部のベント孔を15Torrへ減圧し、該混練押出機の吐出孔でのポリマー温度が290℃に保持できるように設定した。得られたポリエステル組成物のペレットの物性を表1に示す。
【0061】
[実施例2及び3並びに比較例1〜6]
実施例1において、二軸スクリュー式混錬押出機へ供給する二酸化チタンの物性を表1の通りに変更すること以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明によって得られる二酸化チタン含有ポリエステル組成物は、組成物中においても成形品や繊維等に加工しても再凝集することなく高度の分散性を保ち、ポリエステル成型設備における金属の摩耗を低減し、同時に成型や紡糸工程でのポリエステルの固有粘度の低下が抑制されるので、繊維やフィルム等の樹脂を着色する際のマスターチップとして好適に用いることができる。
また、本発明の組成物の製造方法によれば、二酸化チタンが高度に分散したポリエステル組成物を、ポリエステルの劣化も少なく極めて容易に製造することができる。
Claims (2)
- 二酸化チタンの含有量が、該二酸化チタン含有ポリエステル組成物の全重量を基準として5.0〜70.0重量%の範囲にある二酸化チタン含有ポリエステル組成物であって、
該二酸化チタンが、下記(a)〜(i)の各要件を同時に満足することを特徴とする、二酸化チタン含有ポリエステル組成物。
(a)平均粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあること。
(b)粒子径が3μm以上の粗大粒子が15000ケ/mg以下であること。
(c)粒子径が4μm以上の粗大粒子が7500ケ/mg以下であること。
(d)P2O5を二酸化チタンの全重量を基準として、0.4〜0.6重量%の範囲で含有すること。
(e)K2Oを二酸化チタンの全重量を基準として、0.1〜0.3重量%の範囲で含有すること。
(f)強熱減量率が0.4重量%以下であること。
(g)結晶形態がルチル型である二酸化チタンの重量をアナターゼ型である二酸化チタンの重量で除した値が9×10- 3以下であること。
(h)結晶子サイズが10〜150nmの範囲にあること。
(i)実質的にFeを含有しないこと。 - 二酸化チタンの含有量が、該二酸化チタン含有ポリエステル組成物の全重量を基準として5.0〜70.0重量%の範囲にある二酸化チタン含有ポリエステル組成物を製造するに際し、
ベント式混練機へ、下記(a’)〜(i’)の各要件を同時に満足する二酸化チタンを、水及び/又は沸点が50〜240℃の範囲にある有機化合物を分散媒とするスラリー状態で供給し、該スラリーとポリエステルとを溶融混練することを特徴とする、二酸化チタン含有ポリエステル組成物の製造方法。
(a’)平均粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあること。
(b’)粒子径が3μm以上の粗大粒子が15000ケ/mg以下であること。
(c’)粒子径が4μm以上の粗大粒子が7500ケ/mg以下であること。
(d’)P2O5を二酸化チタンの全重量を基準として、0.4〜0.6重量%の範囲で含有すること。
(e’)K2Oを二酸化チタンの全重量を基準として、0.1〜0.3重量%の範囲で含有すること。
(f’)強熱減量率が0.4重量%以下であること。
(g’)結晶形態がルチル型である二酸化チタンの重量をアナターゼ型である二酸化チタンの重量で除した値が9×10- 3以下であること。
(h’)結晶子サイズが10〜150nmの範囲にあること。
(i’)実質的にFeを含有しないこと。
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