JP3563374B2 - 固体高分子型燃料電池用電極構造体 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用電極構造体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられる電極構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油資源が枯渇化する一方、化石燃料の消費による地球温暖化等の環境問題が深刻化しており、二酸化炭素の発生を伴わないクリーンな電動機用電力源として燃料電池が注目されて広範に開発されると共に、一部では実用化され始めている。前記燃料電池を自動車等に搭載する場合には、高電圧と大電流とが得やすいことから、高分子電解質膜を用いる固体高分子型燃料電池が好適に用いられる。
【0003】
前記固体高分子型燃料電池に用いる電極構造体として、白金等の触媒がカーボンブラック等の触媒担体に担持されイオン導伝性高分子バインダーにより一体化されることにより形成されている一対の電極触媒層を備え、両電極触媒層の間にイオン導伝可能な高分子電解質膜を挟持すると共に、各電極触媒層の上に、拡散層を積層したものが知られている。前記電極構造体は、さらに各電極触媒層の上に、ガス通路を兼ねたセパレータを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成する。
【0004】
前記固体高分子型燃料電池では、一方の電極触媒層を燃料極として前記拡散層を介して水素、メタノール等の還元性ガスを導入すると共に、他方の電極触媒層を酸素極として前記拡散層を介して空気、酸素等の酸化性ガスを導入する。このようにすると、燃料極側では、前記電極触媒層に含まれる触媒の作用により、前記還元性ガスからプロトンが生成し、前記プロトンは前記高分子電解質膜を介して、前記酸素極側の電極触媒層に移動する。そして、前記プロトンは、前記酸素極側の電極触媒層で、前記電極触媒層に含まれる触媒の作用により、該酸素極に導入される前記酸化性ガスと反応して水を生成する。従って、前記燃料極と酸素極とを導線により接続することにより電流を取り出すことができる。
【0005】
従来、前記電極構造体では、前記電極触媒層に含まれるイオン導伝性高分子バインダーと、前記高分子電解質膜との両方に、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名))が広く利用されている。前記パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物は、スルホン化されていることにより優れたプロトン導伝性を備えると共に、フッ素樹脂としての酸化安定性とを併せ備えている。
【0006】
しかしながら、前記パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物からなる高分子電解質膜を備える電極構造体は、燃料電池を構成したときに、該燃料電池を高温で作動させるとクリープ現象を示すとの不都合がある。
【0007】
一方、前記高分子電解質膜として、米国特許第5403675号明細書には、剛直ポリフェニレンをスルホン化したものが提案されている。前記明細書記載の剛直ポリフェニレンのスルホン化物は、フェニレン連鎖を備える芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分として、該ポリマーをスルホン化したものであり、イオン導電性、高温環境下での耐クリープ性に優れている。
【0008】
しかしながら、前記剛直ポリフェニレンのスルホン化物からなる高分子電解質膜を備える電極構造体は、酸化安定性に劣るとの不都合がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、酸化安定性と高温環境下での耐クリープ性との両方に優れた固体高分子型燃料電池用電極構造体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の固体高分子型燃料電池用電極構造体は、触媒粒子を担持させた炭素粒子が分子構造中にフッ素を含むイオン導伝性高分子バインダーにより一体化されている一対の電極触媒層と、両電極触媒層に挟持された高分子電解質膜とを備える固体高分子型燃料電池用電極構造体において、前記高分子電解質膜は分子構造中にフッ素を含むイオン導伝性高分子からなり、前記電極触媒層のフッ素含有率Xに対する該高分子電解質膜のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が0.2〜2.0の範囲にあることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記電極触媒層のフッ素含有率Xとは、該電極触媒層の全量に対して、前記イオン導伝性高分子バインダーの分子構造中に含まれるフッ素の重量比である。また、前記高分子電解質膜のフッ素含有率Yとは、該高分子電解質膜を構成するイオン導伝性高分子の全量に対して、該イオン導伝性高分子の分子構造中に含まれるフッ素の重量比である。
【0012】
本発明の電極構造体は、前記Y/Xの値が0.2〜2.0の範囲にあることにより、良好な酸化安定性が得られると共に、該電極構造体を備える燃料電池を高温で作動させたときに良好な耐クリープ性を得ることができる。前記Y/Xの値が0.2未満では前記電極構造体において十分な酸化安定性が得られず、2.0を超えると前記電極構造体を備える燃料電池を高温で作動させたときに該電極構造体において十分な耐クリープ性が得られない。
【0013】
本発明の電極構造体において、前記高分子電解質膜は、一般式(1)で表される第1の繰返し単位と、一般式(2)で表される第2の繰返し単位との共重合体のスルホン化物からなり、第1の繰返し単位または第2の繰返し単位がフッ素を含有することを特徴とする。
【0014】
【化2】
Figure 0003563374
【0015】
尚、本明細書において、前記電子吸引性基とは、−CO−、−CONH−、−(CF−(pは1〜10の整数)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO−等のハメット置換基常数がフェニル基のメタ位では0.06以上、フェニル基のパラ位では0.01以上の値となる2価の基をいう。また、本明細書において、前記電子供与性基とは、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−等の2価の基をいう。
【0016】
ここで、前記スルホン化は、電子吸引性基が結合していないベンゼン環に対してのみ起きる。従って、一般式(1)で表される第1の繰返し単位と、一般式(2)で表される第2の繰返し単位との共重合体をスルホン化すると、第1の繰返し単位の主鎖となるベンゼン環と、第2の繰返し単位の各ベンゼン環にはスルホン酸基が導入されず、第1の繰返し単位の側鎖のベンゼン環にスルホン酸基が導入されることになる。そこで、前記共重合体では、第1の繰返し単位と第2の繰返し単位とのモル比を調整することにより、導入されるスルホン酸基の量を制御して、イオン導伝性に優れた高分子電解質膜を得ることができる。
【0017】
前記高分子電解質膜を構成する共重合体を得るために、第1の繰返し単位と、第2の繰返し単位とは、そのいずれか一方、または両方が分子構造中にフッ素を含有することが必要である。このような第1の繰返し単位と、第2の繰返し単位との組合せとして、例えば、次式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、次式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとの組合せ等を挙げることができる。
【0018】
【化3】
Figure 0003563374
【0019】
本発明の電極構造体は、一方の面に酸化性ガスを供給すると共に、他方の面に還元性ガスを供給することにより発電する固体高分子型燃料電池を構成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の電極構造体の構成を示す説明的断面図であり、図2はY/Xの値と電極構造体の酸化安定性との関係を示すグラフ、図3はY/Xの値と電極構造体の耐クリープ性との関係を示すグラフである。また、図4は電極構造体の発電性能の試験方法を説明するグラフである。
【0021】
本発明の第1の実施形態の電極構造体は、図1示のように、一対の電極触媒層1,1と、両電極触媒層1,1に挟持された高分子電解質膜2と、各電極触媒層1,1の上に積層された拡散層3,3とからなる。
【0022】
電極触媒層1は、触媒粒子と含フッ素イオン導伝性高分子バインダーとからなる触媒ペーストを拡散層3上に触媒含有量が所定の量(例えば、0.5mg/cm)となるようにスクリーン印刷し、乾燥させることにより形成されている。前記触媒粒子は、カーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を所定の重量比(例えば、カーボンブラック:白金=1:1)で担持させることにより作成される。また、前記触媒ペーストは、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名))等の含フッ素イオン導伝性高分子バインダー溶液に、前記触媒粒子を所定の重量比(例えば、触媒粒子:バインダー溶液=1:1)で均一に分散させることにより調製される。
【0023】
前記拡散層3は、下地層とカーボンペーパーとからなる。前記下地層は、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とを所定の重量比(例えば、カーボンブラック:PTFE粒子=4:6)で混合し、得られた混合物をエチレングリコール等の溶媒に均一に分散させたスラリーを前記カーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させることにより形成される。
【0024】
拡散層3上にスクリーン印刷された前記触媒ペーストは、例えば60℃で10分間の乾燥を行い、次いで120℃で60分間の減圧乾燥を行うことにより乾燥される。
【0025】
高分子電解質膜2は、例えば、次式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、次式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを、所定の重合比で重合させて得られる次式(5)の含フッ素共重合体のスルホン化物からなる。
【0026】
【化4】
Figure 0003563374
【0027】
前記含フッ素共重合体は、ポリマー分子量がポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万の範囲にあることが好ましい。前記ポリマー分子量が1万未満では高分子電解質膜として好適な機械的強度が得られないことがあり、100万を超えると後述のように成膜のために溶媒に溶解する際に溶解性が低くなったり、溶液の粘度が高くなり、取り扱いが難しくなる。
【0028】
前記含フッ素共重合体のスルホン化物は、前記共重合体に濃硫酸を加え、スルホン酸基を0.5〜3.0ミリグラム当量/gの範囲で含むようにスルホン化することにより得られる。前記スルホン化物は、含有するスルホン酸基の量が0.5ミリグラム当量/g未満であるときには十分なイオン導伝性を得ることができない。また、含有するスルホン酸基の量が3.0ミリグラム当量/gを超えると十分な靱性が得られず、後述の電極構造体を構成する際に取り扱いが難しくなる。
【0029】
高分子電解質膜2は、前記含フッ素共重合体のスルホン化物を、N−メチルピロリドンに溶解して高分子電解質溶液とし、該高分子電解質溶液からキャスト法により成膜し、オーブンにて乾燥することにより、例えば、乾燥膜厚50μmの膜として得られる。また、高分子電解質膜2は、前記高分子電解質溶液から成膜された膜の両面に、さらにパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名))等の含フッ素イオン導伝性高分子溶液をキャストし、例えば乾燥膜厚5μmの含フッ素イオン導伝性高分子被覆層を形成した複合膜としてもよい。
【0030】
図1示の電極構造体は、高分子電解質膜2を前記電極の電極触媒層1側で挟持し、ホットプレスを行うことにより得られる。前記ホットプレスは、例えば80℃、5MPaで2分間の一次ホットプレスを行い、次いで160℃、4MPaで1分間の二次ホットプレスを行う。
【0031】
図1示の電極構造体は、拡散層3,3の上にさらにガス通路を兼ねるセパレータを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成することができる。
【0032】
次に、本実施形態の実施例と比較例とを示す。
【0033】
【実施例1】
本実施例では、まず、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを88:12のモル比で重合させ、式(5)の含フッ素共重合体(n:m=88:12)を得た。
【0034】
次に、前記共重合体に濃硫酸を加えてスルホン化し、イオン交換容量1.9meq/gのスルホン化物を得た。次に、前記共重合体のスルホン化物を、N−メチルピロリドンに溶解して高分子電解質溶液とし、該高分子電解質溶液からキャスト法により成膜し、オーブンにて乾燥することにより、乾燥膜厚50μmの膜を作成し、高分子電解質膜2とした。高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは、10重量%となっている。
【0035】
次に、カーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を、カーボンブラック:白金=1:1の重量比で担持させ、触媒粒子を作成した。次に、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品名))の溶液を含フッ素イオン導伝性高分子バインダーとして、該バインダーに前記触媒粒子を、バインダー:カーボンブラック=1:1の重量比で均一に分散させ、触媒ペーストを調製した。
【0036】
次に、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とをカーボンブラック:PTFE粒子=4:6の重量比で混合し、得られた混合物をエチレングリコール等の溶媒に均一に分散させたスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させて下地層とし、該下地層とカーボンペーパーとからなる拡散層3を2つ作成した。
【0037】
次に、各拡散層3上に、前記触媒ペーストを、白金含有量が0.5mg/cmとなるようにスクリーン印刷し、乾燥させることにより電極触媒層1とし、電極触媒層1と拡散層3とからなる一対の電極を作成した。電極触媒層1のフッ素含有率Xは、24重量%となっている。
【0038】
次に、高分子電解質膜2を前記電極の電極触媒層1側で挟持し、ホットプレスを行って図1示の電極構造体を得た。この結果、本実施例の電極構造体では、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が0.42となっている。
【0039】
次に、本実施例の電極構造体について、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。前記酸化安定性は、H濃度3%、Fe濃度20ppm、液温40℃の水溶液(フェントン試薬)中に、前記高分子電解質膜2を10時間浸漬した後の高分子電解質膜2の重量低下率(%)として測定した。前記重量低下率は、前記高分子電解質膜2がフェントン試薬中に溶解した量を示し、数値が小さいほど酸化安定性が高いことを意味する。結果を表1に示す。また、Y/Xの値と酸化安定性との関係を図2に示す。
【0040】
前記耐クリープ性は、温度90℃、相対湿度90%の環境下、前記電極構造体に面圧5kg/cmの負荷を1000時間かけた後の該電極構造体の厚さ減少率(%)として測定した。前記厚さ減少率は、数値が小さいほど耐クリープ性が高いことを意味する。結果を表1に示す。また、Y/Xの値と耐クリープ性との関係を図3に示す。
【0041】
前記発電性能は、前記電極構造体を単セルとし、一方の拡散層3の側を酸素極として空気を供給すると共に、他方の拡散層3の側を燃料極として純水素を供給して発電を行った。発電条件は、温度90℃、燃料極側の相対湿度50%、酸素極側の相対湿度80%とした。このとき、図4に示すように電流密度が大きくなるに伴って、セル電圧は次第に低下する。そこで、電流密度0.5A/cmでのセル電圧を測定し、0.4V以上あれば、良好な発電性能を有するものと評価した。結果を表1に示す。
【0042】
【実施例2】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを74:26のモル比で重合させ、式(5)の含フッ素共重合体(n:m=74:26)を得た以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0043】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは20重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは24重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.83となっている。
【0044】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0045】
【実施例3】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを74:26のモル比で重合させ、式(5)の含フッ素共重合体(n:m=74:26)を得ると共に、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=1:2とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0046】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは20重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは15重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は1.33となっている。
【0047】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0048】
【実施例4】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを74:26のモル比で重合させ、式(5)の含フッ素共重合体(n:m=74:26)を得ると共に、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=7:4とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0049】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは20重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは35重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.57となっている。
【0050】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0051】
【実施例5】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを92:8のモル比で重合させ、式(5)の含フッ素共重合体(n:m=92:8)を得た以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0052】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは7重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは24重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.29となっている。
【0053】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0054】
【実施例6】
本実施例では、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=1:2とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0055】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは10重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは35重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.67となっている。
【0056】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0057】
【実施例7】
本実施例では、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=7:4とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0058】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは20重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは35重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.29となっている。
【0059】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0060】
【実施例8】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを88:12のモル比で重合させて得られた式(5)の含フッ素共重合体(n:m=88:12)のスルホン化物により形成された膜の両面に、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品名))の溶液をキャストし乾燥膜厚5μmの含フッ素イオン導伝性高分子被覆層を形成した複合膜を高分子電解質膜2とし、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=7:4とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0061】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは22重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは35重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.63となっている。
【0062】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0063】
【実施例9】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを74:26のモル比で重合させて得られた式(5)の含フッ素共重合体(n:m=74:26)のスルホン化物により形成された膜の両面に、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品名))の溶液をキャストし乾燥膜厚5μmの含フッ素イオン導伝性高分子被覆層を形成した複合膜を高分子電解質膜2とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0064】
本実施例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは40重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは24重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は1.67となっている。
【0065】
次に、本実施例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0066】
【比較例1】
本比較例では、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物からなる膜(デュポン社製ナフィオン112(商品名))を高分子電解質膜2とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0067】
本比較例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは73重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは24重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は3.04となっている。
【0068】
次に、本比較例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0069】
【比較例2】
本比較例では、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物からなる膜(デュポン社製ナフィオン112(商品名))を高分子電解質膜2とし、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=1:2とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0070】
本比較例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは73重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは15重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は4.87となっている。
【0071】
次に、本比較例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0072】
【比較例3】
本比較例では、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物からなる膜(デュポン社製ナフィオン112(商品名))を高分子電解質膜2とし、電極触媒層1を形成する前記触媒ペーストにおいて、イオン導伝性高分子バインダーとカーボンブラックとの重量比を、バインダー:カーボンブラック=7:4とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0073】
本比較例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは73重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは35重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は2.09となっている。
【0074】
次に、本比較例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0075】
【比較例4】
本実施例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを88:12のモル比で重合させて得られた式(5)の含フッ素共重合体(n:m=88:12)のスルホン化物により形成された膜の両面に、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品名))の溶液をキャストし乾燥膜厚15μmの含フッ素イオン導伝性高分子被覆層を形成した複合膜を高分子電解質膜2とした以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0076】
本比較例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは50重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは24重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は2.08となっている。
【0077】
次に、本比較例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0078】
【比較例5】
本比較例では、式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを97:3のモル比で重合させ、式(5)の含フッ素共重合体(n:m=97:3)を得た以外は、実施例1と全く同一にして図1示の電極構造体を作成した。
【0079】
本比較例の電極構造体では、高分子電解質膜2のフッ素含有率Yは3重量%、電極触媒層1のフッ素含有率Xは24重量%であり、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値は0.13となっている。
【0080】
次に、本比較例の電極構造体について、実施例1と同一にして、酸化安定性、耐クリープ性、発電性能を評価した。結果を表1、図2、図3に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0003563374
【0082】
表1、図2、図3の結果から明らかなように、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が0.29〜1.67の範囲にある実施例1〜9の電極構造体は、いずれも耐クリープ性と酸化安定性との両方に優れており、発電性能も良好である。
【0083】
これに対して、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が2.0を超える比較例1〜4の電極構造体は、酸化安定性には優れているものの、耐クリープ性に劣ることが明らかである。また、電極触媒層1のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜2のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が0.2未満である比較例5の電極構造体は、耐クリープ性には優れているものの、酸化安定性に劣ることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極構造体の構成を示す説明的断面図。
【図2】電極触媒層のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜のフッ素含有率Yの比Y/Xの値と、電極構造体の酸化安定性との関係を示すグラフ。
【図3】電極触媒層のフッ素含有率Xに対する高分子電解質膜のフッ素含有率Yの比Y/Xの値と、電極構造体の耐クリープ性との関係を示すグラフ。
【図4】電極構造体の発電性能の試験方法を説明するグラフ。
【符号の説明】
1…電極触媒層、 2…高分子電解質膜。

Claims (3)

  1. 触媒粒子を担持させた炭素粒子が分子構造中にフッ素を含むイオン導伝性高分子バインダーにより一体化されている一対の電極触媒層と、両電極触媒層に挟持された高分子電解質膜とを備える固体高分子型燃料電池用電極構造体において、前記高分子電解質膜は分子構造中にフッ素を含むイオン導伝性高分子からなり、前記電極触媒層のフッ素含有率Xに対する該高分子電解質膜のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が0.2〜2.0の範囲にあることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極構造体。
  2. 前記高分子電解質膜は、一般式(1)で表される第1の繰返し単位と、一般式(2)で表される第2の繰返し単位との共重合体のスルホン化物からなり、第1の繰返し単位または第2の繰返し単位がフッ素を含有することを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用電極構造体。
    Figure 0003563374
  3. 触媒粒子を担持させた炭素粒子が分子構造中にフッ素を含むイオン導伝性高分子バインダーにより一体化されている一対の電極触媒層と、両電極触媒層に挟持された高分子電解質膜とを備え、前記高分子電解質膜は分子構造中にフッ素を含むイオン導伝性高分子からなり、前記電極触媒層のフッ素含有率Xに対する該高分子電解質膜のフッ素含有率Yの比Y/Xの値が0.2〜2.0の範囲にある電極構造体を備え、一方の面に酸化性ガスを供給すると共に、他方の面に還元性ガスを供給することにより発電することを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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