JP3562714B2 - 複数個の中空物品の同時射出成形方法及び金型装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、固定型と可動型の間に設けた中間板の回動操作と型開閉操作とによって、同時に複数個の中空物品を射出成形する方法と金型装置とに関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来の射出成形による燃料タンク等の中空物品の成形方法は、固定盤側の固定型と、可動盤側の固定型との間に、コア型と二次キャビティ形成用の凸条型を有する中子型や回転金型等の中間型を出入自在に設け、その中間型内に穿設したホットランナーを固定型と可動型の両方に分岐して一対の半体を一次射出成形し、その半体を中間型除去後の固定型と可動型との直接型閉により相互に当接して、当接部周囲に生じた二次キャビティに、樹脂を二次射出充填して中空物品を完成するようにしている。
【0003】
このような成形方法では、中間型内から固定型と可動型の両方に、半体成形用の樹脂を射出充填していることから、中間型内のランナーはホットランナーとして温度維持する必要がある。また中間型は成形ごとに出入を繰返すので、このような中間型に温度維持手段を施すことは容易ではなく、樹脂のオープンパージもできないことから、熱安定性の悪い材料樹脂による中空物品の成形に適応し難いものであった。
【0004】
また中子による中間型をスライドして出入する成形方法にあっては、その中子に射出装置をノズルタッチしていることから、成形ごとにノズルタッチを繰り返さなければならず、このため樹脂の糸引きも生じ易い。しかも1台の射出装置を上下動して樹脂の一次射出と二次射出を行うので、成形操作が複雑で複数個の中空物品を同時成形できず、材料樹脂も同一材質のものに限定されるなどの課題を有する。
【0005】
これに比べて、回転金型を中間型として出入する成形方法では、回転金型を往復回動により一対の固定型と可動型との間を交互に出入できるようにして、回転金型内のホットランナーを、固定型側の両固定型に分岐したホットランナーと交互に接続し、これにより固定型側のホットランナーに常時ノズルタッチすることができるようにしているが、ホットランナーのゲートの切換を、回転金型の往復回動により交互に行って、樹脂の一次射出と二次射出とをしていることから、一対の固定型と可動型とを備えるものでも、同時に複数個の中空物品の成形が行えず、また材料樹脂も同一材質のものに限定されるなどの課題を有する。
【0006】
この発明は、上記従来の成形方法における課題を解決するために考えられたものであって、その目的は、一対の固定型と可動型との間から、中間板を回動変位により除去するとともに、ホットランナーを複数とすることにより、複数の金型における半体形成用の樹脂の一次射出と、半体相互を一体化する樹脂の二次射出とを、それぞれ同時に行えるようにして、同一又は異なった樹脂による中空物品の複数個を同時に成形可能となし、また中間板から可動型側のランナーをコールドランナーとして、中間板における温度維持手段を省略し、固定型側のホットランナーから樹脂のオープンパージをも可能となる新たな複数個の中空物品の射出成形方法及び金型装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的によるこの発明の射出成形方法は、複数のホットランナーを有するプレートを介して、固定盤に並設したキャビティを有する一対の固定型と、可動盤の固定型対向部位に並設したキャビティを有する一対の可動型との間に、前後面のキャビティ対向部位にコア型を有し、かつコア型の基端部周囲に二次キャビティ形成用の凸条型を有する中間板を回動かつ進退自在に設け、上記ホットランナーの一方を両固定型のキャビティと中間板を通して両可動型のキャビティとに分岐接続し、他方を両固定型の二次キャビティティ部位に接続して、上記一方のホットランナーからの樹脂の射出充填を、上記中間板と共に固定型と可動型とを型閉して行って、複数個の中空物品の半体を一次的に分割形成し、その両半体を型開により各キャビティ内に残存させてのち、中間板を回動して両方の固定型と可動型の間から除き、その状態で固定型と可動型とを直接型閉して半体相互を当接するとともに、当接部周囲に生じた二次キャビティに、他方のホットランナーから樹脂を射出充填して、同時に複数個の中空物品を完成するというものである。また上記複数のホットランナーからキャビティに射出充填される樹脂は、同一樹脂又は異色樹脂或いは異材質樹脂からなる、というものである。
【0008】
この発明の金型装置は、固定盤側の複数のホットランナーを有するプレートと、そのホットランナープレートに当設して、固定盤に並設したキャビティを有する一対の固定型と、可動盤の固定型対向部位に並設したキャビティを有する一対の可動型と、前後面のキャビティ対向部位にコア型を有し、かつコア型の基端部周囲に二次キャビティ形成用の凸条型を有する中間板と、その中間板を両方の固定型と可動型との間に回動かつ進退自在に保持する可動盤側の回動軸とからなり、上記ホットランナーの一方を両固定型のキャビティと中間板を通して両可動型のキャビティに分岐接続し、他方を両固定型の二次キャビティ部位に接続してなる、というものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図中1は型締装置の固定盤、2は同じく可動盤で、図では省略したが、通常のごとくタイバーに挿通して固定盤1に対し進退自在に設けてある。
【0010】
3は複数のホットランナー4,5を有するホットランナープレートで、上記固定盤1の内側面に止着してある。またホットランナー4,5の各スプルー部には、2台の射出装置のノズル6,7がそれぞれノズルタッチして、ホットランナー4,5に、同一又は異色或いは異材質の樹脂を射出することができるようにしてある。
【0011】
8,8は一対の固定型で、上記ホットランナープレート3に当設して、固定盤1の内側に並設してある。9,9は割型による一対の可動型で、上記可動盤2の固定型対向部位に並設してある。これらの固定型8及び可動型9は、開口部が拡径したキャビティ10,11を有する。
【0012】
12は、両固定型8,8と両可動型9,9との間に設けられた横長の中間板で、前後面のキャビティ対向部位にコア型13,14を有し、これらコア13,14と上記キャビティ10,11とにより、図8に示す中空物品30の両半体31,32を一次的に成形することができるようにしてある。またコア型13,14の基端部周囲には、キャビティ開口と嵌合して後に二次キャビティを形成する凸条型15,16を有する。
【0013】
この中間板12の中央部は金型間に収まる板幅からなり、その後面中心部に回動軸17が連結してある。この回動軸17の後部17aは中空で、可動盤2の中央に貫通設置した油圧シリンダ18への挿入により進退移動するピストンロッドを兼ねており、その後部内にシリンダ内の回動駆動軸19が、スプラインにより軸方向に可動自在に接続してある。
【0014】
この回動駆動軸19は、シリンダ後端に取付けた間欠回転用の電動モータ20により、回動軸17を中間板12と一緒に90°角ごとに回動又は往復回動して、中間板12を型開後に上記固定型8と可動型9の間から除き、また型閉前の金型間に戻すことができるように、上記電動モータ20の図示しない駆動軸にジョイントしてある。
【0015】
上記ホットランナー4は、上記固定型8,8のキャビティ10,10側と、上記可動型9,9のキャビティ11,11側とに接続するように、2つのランナー41,42に分岐され、その一方はキャビティ10,10に直接接続され、他方は上記中間板12に穿設した通孔41aと、可動型9,9のパーティング面に分割形成した可動型側ランナー41bとにより形成してある。
【0016】
これにより上記ノズル6からホットランナー4に射出された樹脂が、キャビティ10,10には直接に、またキャビティ11,11には中間板12を通して射出充填され、通孔41aからランナー41bに残った樹脂は、コールドランナーとして分離して離型することができるようにしてある。
【0017】
上記ホットランナー5は、両固定型8,8の二次キャビティ部位となるキャビティ10,10の開口側部に接続され、上記ノズル7からホットランナー5に射出された樹脂が、キャビティ10,10に直接に射出充填することができるようにしてある。
上記ホットランナー4,5のいずも、ゲートにはピンゲートが採用され、これにより型開時に切断が容易に行えるようにある。またランナー相互の各接続部位も、下流側の開口を縮径形成して接続部位にずれが生じないようにしてある。
【0018】
なお21は突出装置、22は突出ピン、23,23は上記可動型9の開閉シリンダで、可動盤2の内側上下に延設した型保持板24,24に取付けてある。
【0019】
図4以下は、上記構成の金型装置による複数個の中空物品の同時成形を工程順に示すものである。
先ず図1に示す型開状態において、上記油圧シリンダ19により回転軸17と共に中間板12を、両板面が可動型9,9の型面に接するところまで後退移動し、キャビティ9,9とコア型14,14との型閉を行う。
【0020】
次に可動型9,9を中間板12との型閉を維持した状態で、可動盤2の前進移動により中間板12の両板面が固定型8,8の型面に接するまで前進移動してキャビティ10,10とコア型13,13の型閉を行う。
【0021】
図4はその型閉状態を示すもので、固定型8,8と可動型9,9との間には中間板12が介在するため、キャビティ10,11は中空物品30の両半体の形態を有するキャビティに対向形成され、そのキャビティの開口縁内に上記凸条型15,16が嵌合位置するとともに、上記分岐ランナー41が中間板12の通孔41aを介して可動型側のランナー41bと連通し、ホットランナー4からキャビティ11にも樹脂の射出充填が行えるようになる。
【0022】
図4の下半部は樹脂の射出状態を示すもので、ホットランナー4からの樹脂は分岐ランナー41,42から固定側と可動側の両方のキャビティ10,11に同時に射出充填されて、2個の中空物品30の半体31,32をそれぞれ対向形成する。また開口縁内の凸条型15,16により、半体31,32の開口縁に近接した外周囲にフランジ33,34が突出形成される。
【0023】
図5は、半体31,32を射出成形した後の一次的な離型状態を示すもので、その離型は先ず、上記可動盤2を後退移動してコア型13,13を半体31,31から離型して上記キャビティ10,10に残存させる。
次に図1に示す型開位置にて、上記油圧シリンダ19により回転軸17を中間板12と共に前進移動して、コア型14,14を半体32,32から離型してキャビティ11,11に残存させたのち、上記電動モータ20により回転駆動軸19を回転軸17と共に角度90°まで回動して、図2に示すように、中間板12を固定型間に縦に回動移動し、固定型8,8と可動型9,9との間から除く。
【0024】
この離型時に固化した上記通孔41aの樹脂は、型開力により分岐ランナー41の溶融状態の樹脂と、可動側ランナー41bのコールドランナー43として固化して残った樹脂の両方から切断されて、そのまま通孔41aに残る。
また中空物品内にインサートが必要な場合には、図では省略したが、この型開後に半体31,32のいずれか一方又は両方にインサートを行う。
【0025】
図6は、固定型8,8と可動型9,9の再型閉状態を示すもので、中間板12を回動移動したのち、上記油圧シリンダ19により中間板12を回転軸17と共に後退限位置まで移動する。しかるのち、可動盤2を前進移動すると、固定型8,8と可動型9,9が対面して直接型閉し、それらのキャビティ内の半体31,32が相互に開口端を接し合うとともに、接合端周囲のフランジ33,34の間に、上記凸条型15,16の抜き後による二次キャビティ35が生じる。この二次キャビティ35の側面には上記ホットランナー5のゲートが開口している。
【0026】
図7は、再型閉後の樹脂の射出充填状態を示すもので、型閉後に上記ノズル7からホットランナー5に射出した樹脂は、ゲートから二次キャビティ35に射出充填されてフランジ33,34間を埋め、半体31,32の対面接合部を気密にシールすると共に半体31,32を不可分一体に接合して中空物品30を完成する結合帯36となる。
【0027】
図8は、中空物品30の離型状態を示すもので、成形完了後に金型相互の対面状態を保ちながら、上記可動盤2を可動型9,9と共に後退移動して、中空物品30がキャビティ10,10から離型するように型開を行う。次に型開位置にて可動型9,9の型開を行ってから、上記突出装置21を前進作動して突出ピン22により中空物品30,30を、側部のコールドランナー43と一緒に可動型9,9から同時に突き出して離型する。
また中空物品30,30の離型中に、図では省略したが、上記中空板12の通孔41aに残った樹脂の除去をバキュームなどにより除去する。
【0028】
かかる工程の後、可動型9,9の型閉を行い、上記電動モータ20により可動板12を90°回動して、コア型13,14を固定型8,8と可動型9,9との間にセットし、再び型閉工程に移行して次の射出成形を上記工程順序により行って、2個の中空物品30,30の同時に連続して成形を行う。
【0029】
上記実施形態を1例として説明するように、この発明では中間板12の回動操作と2度の型開閉操作することによって、同時に複数の中空物品が射出成形できるので、従来のものより生産性が向上する。
【0030】
また複数のホットランナー4,5の一方を半体成形用に、他方を結合用として個々にキャビティへの樹脂の射出充填を可能としたことから、そこに用いられる樹脂も、同一樹脂に限定されず、異色樹脂又は異材質樹脂とすることができ、また中間板12及び可動側のランナーをコールドランナーとしたことによって、樹脂のオープンパージが可能となり、熱安定性の悪い材料樹脂における対応も容易となって材料樹脂の利用範囲が広がる。
【0031】
さらにまた一対ごとの成形で、個々のキャビティ及びコア型が専用となるため、半体成形樹脂と結合樹脂が同一材料樹脂であるときには、形態の異なる中空成形品のファミリー取りへの展開も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係わる複数の中空物品の同時成形金型装置における型開時の略示平断面図である。
【図2】同上の中間板移動時のA−A線における固定型側の正面図である。
【図3】同じくA−A線における可動型側の正面図である。
【図4】中空物品の半体成形状態を示す略示平断面図である。
【図5】型開後の中間板回動位置を示す略示平断面図である。
【図6】再型閉による二次キャビティの形成状態を示す略示平断面図である。
【図7】中空物品完成時の樹脂の射出充填状態を示す略示平断面図である。
【図8】型開後の中空物品の離型状態を示す略示平断面図である。
【図9】中空物品の半部縦断正面図である。
【符号の説明】
1 固定盤
2 可動盤
3 ホットランナープレート
4,5 ホットランナー
41,42 分岐ランナー
41a 通孔
41b 可動型側ランナー
43 可動型側のコールドランナー
6,7 ノズル
8 固定型
9 可動型
10,11 キャビティ
12 中間板
13,14 コア型
15,16 二次キャビティ成形用の凸条型
17 回動軸
18 油圧シリンダ
19 回動駆動軸
20 電動モータ
30 中空物品
31,32 半体
33,34 フランジ
35 二次キャビティ
36 結合帯
Claims (3)
- 複数のホットランナーを有するプレートを介して、固定盤に並設したキャビティを有する一対の固定型と、可動盤の固定型対向部位に並設したキャビティを有する一対の可動型との間に、前後面のキャビティ対向部位にコア型を有し、かつコア型の基端部周囲に二次キャビティ形成用の凸条型を有する中間板を回動かつ進退自在に設け、
上記ホットランナーの一方を両固定型のキャビティと中間板を通して両可動型のキャビティとに分岐接続し、他方を両固定型の二次キャビティ部位に接続して、上記一方のホットランナーからの樹脂の射出充填を、上記中間板と共に固定型と可動型とを型閉して行って、複数個の中空物品の半体を一次的に分割形成し、その両半体を型開により各キャビティ内に残存させてのち、中間板を回動して両方の固定型と可動型の間から除き、
その状態で固定型と可動型とを直接型閉して半体相互を当接するとともに、当接部周囲に生じた二次キャビティに、他方のホットランナーから樹脂を射出充填して、同時に複数個の中空物品を完成することを特徴とする複数個の中空物品の同時射出成形方法。 - 上記複数のホットランナーからキャビティに射出充填される樹脂は、同一樹脂又は異色樹脂或いは異材質樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の複数個の中空物品の同時射出成形方法。
- 固定盤側の複数のホットランナーを有するプレートと、
そのホットランナープレートに当設して、固定盤に並設したキャビティを有する一対の固定型と、
可動盤の固定型対向部位に並設したキャビティを有する一対の可動型と、
前後面のキャビティ対向部位にコア型を有し、かつコア型の基端部周囲に二次キャビティ形成用の凸条型を有する中間板と、
その中間板を固定型と可動型との間に回動かつ進退自在に保持する可動盤側の回動軸とからなり、
上記ホットランナーの一方を両固定型のキャビティと中間板を通して両可動型のキャビティとに分岐接続し、他方を両固定型の二次キャビティ部位に接続してなることを特徴とする複数個の中空物品の同時成形金型装置。
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