JP3562196B2 - 農作業機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行速度の変速操作を制御装置で電子制御する農作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
変速レバーの操作位置をセンサで検出し、その検出結果に基づいて変速装置を作動させるアクチュエータに出力指令を出して変速操作する農作業機が開発されている。この種の走行速度の変速操作を電子制御する農作業機において、制御装置を、作業機等の各種制御部を行う主制御部と、専ら走行速度の変速制御を行う変速制御部とに分けて配設したものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記主制御部によって制御する項目としては植付部の昇降制御、ローリング制御等があるが、これらの制御の制御モードや制御感度を状況に応じて変更するために、ユーザー自らが主制御部を調整することがある。これに対し、変速制御部については、工場出荷の段階で調整したり、ユーザーの特別な要望に応じてディーラーが調整することはあるが、ユーザー自身が調整することはほとんど無い。したがって、主制御部を調整操作するための操作装置とは別に、変速制御部を調整操作するための操作装置を別途設けておくことは無駄が多いという問題点がある。本発明は、このような問題点を解決することを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成とした。すなわち、本発明にかかる農作業機は、走行速度の変速操作を制御装置で電子制御する農作業機において、前記制御装置を、作業機等の各種を行う主制御部と、専ら走行速度の変速制御を行う変速制御部とで構成し、これら主制御部及び変速制御部にそれぞれ個別に接続・非接続可能で、主制御部に接続すると当該主制御部を調整操作することのでき、かつ変速制御部に接続すると当該変速制御部を調整操作することができる操作装置を設けたことを特徴としている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面に表されている田植機に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0006】
この田植機1は、乗用走行車両2の後側に昇降リンク装置3を介して6条植の植付部4が昇降可能に装着されていると共に、各植付条の側部近傍に肥料を散布する施肥装置5が設けられており、全体で乗用施肥田植機として構成されている。
【0007】
走行車両2は、駆動輪である左右各一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両である。機体の前部に配したミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、その前輪ファイナルケース13,13の下部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にはメインフレーム15の前端部が固着され、そのメインフレーム15の後端左右中央部に後輪ローリング軸16が軸心を前後水平に向けて固定状態で嵌合させてあり、その後輪ローリング軸16にローリング自在に支持される後輪フレーム17の左右端部に後輪ギヤケース18,18が設けられ、その後輪ギヤケースから外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0008】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されている。エンジン20の左側面に突出するエンジン出力軸20aに取り出される回転動力が、第一ベルト伝動装置21を介して油圧ポンプ22の駆動軸22aに伝達され、更にその油圧ポンプ駆動軸22aから無段変速式の第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12の前部左側に突出するミッション入力軸12aに伝達される。また、エンジン20の右側面に突出する第二出力軸20bに取り出される回転動力が、第三ベルト伝動装置24によって、エンジン20の上に取り付けたオルタネータ25に伝達される。
【0009】
ミッション入力軸12aよりミッションケース12に入力された回転動力は、該ケース内のトランスミッションで変速した後、前輪駆動用動力と後輪駆動用動力と植付部駆動用動力に分けられる。前輪駆動用動力は、前輪ファイナルケース13,13に伝達され、前輪11,11を駆動する。後輪駆動用動力は、伸縮自在な後輪駆動軸26,26を介して後輪ギヤケース18,18に伝達され、後輪8,8を駆動する。また、植付部駆動用動力は、植付伝動軸27を介して植付クラッチ28に伝達され、それから植付部4の伝動ケース50と施肥装置5の肥料繰出部61,…に伝達される。
【0010】
第二ベルト伝動装置23は図4に示す構成となっている。すなわち、油圧ポンプ駆動軸22aに嵌着する駆動側割りプーリ120とミッションケース入力軸12aに主クラッチCを介して嵌着する従動側割りプーリ121とに伝動ベルト122が掛けられている。従動側割りプーリ121の一方の構成部材121aはミッションケース入力軸12aに固定、他方の構成部材121bはミッションケース入力軸12aに対して軸方向に摺動自在となっていて、その可動構成部材121bは軸受123を介して相互回転自在な変速操作カム124によって位置規制されている。変速操作カム124の外面側には円周方向に傾斜状となった突条124a,124aが形成されており、その突条124a,124aが固定カム125に設けたローラ125a,125aに当接している。そして、変速操作カム124のアーム124bに変速操作ロッド126が連結されている。この変速操作ロッド126を前後(紙面の上下方向)に移動させると、変速操作カム124が回動してローラ125a,125aへの突条124a,124aの接点が変わり、変速操作カム124とそれに位置規制されている可動構成部材121bが伝動ベルト122の張力に応じて軸方向へ移動することにより、従動側割りプーリ121の有効径が変化する。
【0011】
また、駆動側割りプーリ120の一方の構成部材120aは油圧ポンプ駆動軸22aに固定、他方の構成部材120bは油圧ポンプ駆動軸22aに対して軸方向に摺動自在となっていて、その可動構成部材120bは軸受127を介して相互回転自在な変速操作カム128によって位置規制されている。変速操作カム128の外面側には円周方向に傾斜状となった突条128aが形成されており、その突条128aにミッションケース10の外面部に設けたローラ129が当接している。そして、従動側変速操作カム124のもうひとつのアーム124cと駆動側変速操作カム128のアーム128bとが連結部材130で連結されている。これにより、従動側割りプーリ121の有効径が大きくなるときには駆動側割りプーリ120の有効径が小さくなり、従動側割りプーリ121の有効径が小さくなるときには駆動側割りプーリ120の有効径が大きくなるようになっている。
【0012】
次に、この第二ベルト伝動装置23を操作する操作機構について説明する(図5〜図7参照)。
【0013】
符号140は変速レバーで、この変速レバーは、該レバーの基部に固着の筒状体141にてレバー軸142の右(紙面では左)端部に回転自在かつ軸方向に摺動自在に嵌合している。レバー軸142は、機体フレームに固定したレバー軸支持筒143に回動自在に支承されている。変速レバー140を右方向に少しずらし、筒状体141の外周面から挿入させたセットボルト144の先端部をレバー軸142の切欠部142aに係合させると、変速レバー140とレバー軸142が一体回転するようになる。
【0014】
筒状体141には電動操作アーム146が一体に設けられている。この電動操作アーム146の回動量は、レバー軸支持筒143と一体の右プレート147に取り付けられている変速レバー位置検出用ポテンショメータPM1に検出される。右プレート147には右向きに突出する電動操作用ストッパピン148が設けられ、そのストッパピンの先端部が、電動操作アーム146に形成されているレバー軸142の軸心を中心とする円弧状の電動時レバーストローク規制用ピン穴146aに係合している。なお、セットボルト144が切欠部142に係合する位置へ変速レバー140をずらした状態では、ポテンショメータPM1の検出アームが電動操作アーム146から外れ、電動操作アーム146の回動量が検出されなくなると共に、ストッパピン148がピン穴146aから外れる。
【0015】
また、レバー軸142には電動操作アーム146と右プレート147の間に手動操作用ア一ム150が一体に設けられ、その手動操作用ア一ム150から左(紙面では右)向きに突出する手動操作用ストッパピン151の先端部が、右プレート147に形成されているレバー軸142の軸心を中心とする扇形の手動時レバーストローク規制用ピン穴147aに係合している。電動時レバーストローク規制用ピン穴146aの角度θ1よりも、手動時レバーストローク規制用ピン穴147aの角度θ2の方が大きく設定されている。
【0016】
電動操作アーム146の手動操作用ア一ム側の面には第一ブレーキライニング152が貼着されており、第一摩擦力調節ナット153の締め具合を調節することにより、電動操作アーム146と手動操作用ア一ム150との間に適度な摩擦力を持たせられるようになっている。また、右プレート147の手動操作用ア一ム側の面には第二ブレーキライニング154が貼着されており、第二摩擦力調節ナット155の締め具合を調節することにより、右プレート147と手動操作用ア一ム150との間に適度な摩擦力を持たせられるようになっている。更に、電動操作用ストッパピン148には第三摩擦力調節ナット156によって第三ブレーキライニング157が取り付けられるようになっており、第三摩擦力調節ナット156の締め具合を調節することにより、電動操作アーム146と右プレート147との間に適度な摩擦力を持たせられるようになっている。
【0017】
レバー軸142の左端部にはボス160が回転不可能に取り付けられており、そのボス160に一体成形されている回動プレート161の先端部に前記変速操作ロッド126の一端部が連結されている。この回動プレート161の回動量はレバー軸支持筒143と一体の左プレート163に取り付けた回動プレート位置検出用ポテンショメータPM2に検出される。
【0018】
また、左プレート163には、電動モータ165が取り付けられている。このモータ165の出力軸に取り付けられているピニオン166と左プレート163に設けたギヤ取付軸167に取り付けられているカウンタギヤ168とが噛み合い、更に該カウンタギヤと一体の小ギヤ169とボス160に一体成形されている扇形ギヤ170とが噛み合っている。カウンタギヤ168及び小ギヤ169はギヤ取付軸167に軸方向に摺動可能に取り付けられており、両ギヤ168,169を左プレート163側に移動させることにより、ピニオン166とカウンタギヤ168の噛み合い、及び小ギヤ169と扇形ギヤ170の噛み合いが外れる。
【0019】
第二ベルト伝動装置23の操作機構は以上の構成で、次に示す3種の操作方式のうちのいずれかを選択することができる。
【0020】
(1)電動操作方式1
変速レバー140を左寄りに位置させ、ポテンショメータPM1の検出アームを電動操作アーム146に連係させると共に、ストッパピン148が電動操作アーム146のピン穴146aに係合する状態にする。また、ピニオン166とカウンタギヤ168、及び小ギヤ169と扇形ギヤ170をそれぞれ噛み合わさせる。そして、ポテンショメータPM1によって検出される変速レバー位置とポテンショメータPM2によって検出される回動プレート位置が対応するように、変速コントローラ71による制御でモータ165を駆動してレバー軸142を回動させ、第二ベルト伝動装置23を作動する。
【0021】
この時、第二ブレーキライニング154と第三ブレーキライニング157を利かせ、第一ブレーキライニング152が利かない状態としておくと、変速レバー140とレバー軸142が互いにフリーの関係にあるので、レバー軸142の回動が変速レバー140に影響を与えず、変速レバー140の操作位置に応じた任意の変速比に第二ベルト伝動装置23が作動される。回動プレート位置検出用ポテンショメータPM2の初期値を調整することにより、「最高速」と「最低速」の設定速度を変更できる。
【0022】
(2)電動操作方式2
電動操作方式1と同様に、ポテンショメータPM1,PM2の検出結果に基づいてモータ165を駆動してレバー軸142を回動させる。この時、第一ブレーキライニング152と第二ブレーキライニング154を利かせ、第三ブレーキライニング157が利かない状態としておくと、レバー軸142の回動に伴い手動操作用ア一ム150につられて電動操作アーム146も回動するので、変速レバー140を「高速」側または「低速」側に少しでも操作すると、操作した側のレバーストローク(角度θ1)の端まで変速レバー140が自動的に回動する。したがって、変速レバー140を「高速」側に少し操作しただけで第二ベルト伝動装置23が「最高速」の状態に作動されると共に、変速レバー140を「低速」側に少し操作しただけで第二ベルト伝動装置23が「最低速」の状態に作動される。
【0023】
(3)手動操作方式
第三ブレーキライニング157を取り外した上で、変速レバー140を右側にずらし、セットボルト144にて変速レバー140とレバー軸142を直結する。また、ピニオン166とカウンタギヤ168、及び小ギヤ169と扇形ギヤ170の噛み合いを外す。第二ブレーキライニング154は利かせ、第一ブレーキライニング152は利かない状態としておく。この状態では、変速レバー140の操作力がレバー軸142へ直接伝達され、その変速レバー140の操作位置に応じた任意の変速比に第二ベルト伝動装置23が作動される。電動操作方式1または電動操作方式2と手動操作方式とではレバーストロークが異なるが、電動操作方式1または電動操作方式2における「最高速」及び「最低速」と、手動操作方式における「最高速」及び「最低速」とが一致するように設定されている。
【0024】
通常は電動操作方式1または電動操作方式2によって変速操作を行う。電気系統が故障した場合等の非常時には、手動操作方式に切り替えることにより、変速操作が可能となり、植付作業や走行を継続することができる。手動操作方式の時のレバーストローク(角度θ2)は電動操作方式1または電動操作方式2の時のレバーストローク(角度θ1)よりも大きく設定されているため、比較的小さな力でも変速レバー140を操作することができ、操作が容易である。
【0025】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前側には床面から上方に突出するフロントカバー32が配設され、そのフロントカバーの上方に操向用ハンドル33が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の周辺部には、前記変速レバー140等の各種レバー、各種ペダル等が設けられている。また、座席31の右側方には制御ボックス34が設けられている。
【0026】
走行車両2の前部左右両側には補給用の苗を載せておく予備苗載台36,36が設けられている。また、走行車両2の前部左右両側には、次行程における最外側の植付条の位置が圃場面に線引きする線引きマーカー37,37が起倒切替可能に設けられている。
【0027】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設したリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。縦リンク43には植付部4をローリング自在に連結するためのローリング軸43aが設けられている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム44の先端部との間に昇降用油圧シリンダ45が介装されており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、縦リンク43に装着した植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0028】
植付部4は公知の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、土付きのマット状苗が載置される苗載台51、該苗載台上の苗を圃場の土壌に植付ける植付条数分の植付装置52,…等を備えている。植付部4の下側にはセンターフロート53と左右一対のサイドフロート54,54が設けられ、各フロートを接地させた状態で機体を進行させると、フロートが泥面を整地しつつ滑走する。
【0029】
施肥装置5は、走行車両2の後部上側に肥料ホッパ60と肥料繰出部61,…を設け、肥料ホッパ60に貯えられている粒状の肥料を肥料繰出部61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送管62,…を通してフロート53,54,54に取り付けた施肥ガイド63,…へ移送し、その施肥ガイドの前側に設けた作溝体64,…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に肥料を落とし込む構成となっている。66は肥料移送管62,…に肥料搬送用エアを送り込むためのブロア、67は該ブロアを駆動するモータである。
【0030】
この田植機1は以上の全体構成で、前輪10,10及び後輪11,11を回転して機体を走行させつつ、各フロート53,54,54が接地する状態で植付部4と施肥装置5を駆動すると、フロートによって整地された泥面に植付装置52,…が苗を植付けると共に、その各植付条の側部近傍に施肥装置5が施肥する。植付作業時には、表土面の凹凸に応じて植付部4の対地高さを制御する昇降制御と、表土面の左右傾斜に応じて植付部4のローリング軸43a回りの姿勢を制御するローリング制御とを行い、苗の植付深さを一定に維持する。圃場の端部等で機体を旋回させる場合は、植付部4を上昇させると共に、植付クラッチ28を「切」にして、植付部4と施肥装置5の駆動を停止するように制御する。また、作業速度(走行速度)は変速レバー140の操作に基づいて制御される。
【0031】
上記各制御をする制御装置は、制御ボックス34内に設けられている主コントローラ(主制御部)70と、フロントカバー32の内部に設けられている変速コントローラ(変速制御部)71とからなり、変速制御以外の制御については主コントローラ70で行い、変速制御については変速コントローラ71で行う。図8及び図9に示すように、通常は、主コントローラ70のコネクタ70aと制御ボックス34に取り付けた操作パネル(操作装置)72のコネクタ72aとが接続されており、操作パネル72に設けたスイッチ類で主コントローラ70を操作するようになっている。
【0032】
図には操作具として、ローリング制御を手動モードに切り替えるローリング入・切スイッチ74と、手動で植付部をローリングさせるローリング手動スイッチ75と、コントローラが正常に機能しているか否かをチェックするためのチェックスイッチ76とが表示されているが、実際には上記以外に、昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤル、植付部を手動で昇降させる植付部上下スイッチ、ローリング制御の感度を調節する感度調節つまみ等が操作パネル72に設けられている。
【0033】
操作パネル72のコネクタ72aを主コントローラ70のコネクタ70aから抜き、それを変速コントローラ71のコネクタ71aにつけ替えると、変速コントローラ71の操作を行えるようになる。すなわち、操作パネル72を変速コントローラ71に接続すると、ローリング手動スイッチ75はコントローラが故障した場合に手動で変速するための非常手動スイッチとなり、該スイッチを「左」に入れると第二ベルト伝動装置23が低速側に作動する方向に前記変速用モータ165が回転し、「右」に入れると第二ベルト伝動装置23が高速側に作動する方向にモータ165が回転する。
【0034】
また、変速範囲の調整は次のようにして行う。すなわち、チェックスイッチ76をONにし、ローリング手動スイッチ75を「左」または「右」に入れると、第二ベルト伝動装置23の変速位置を検出するセンサである前記ポテンショメータPM2の値が変化し、それが所望の値となった状態でエンジンキーをONにすることにより、「最高速」或は「最低速」の状態におけるポテンショメータPM2の初期設定がなされる。
【0035】
チェックスイッチ76とローリング手動スイッチ75が操作されている状態でエンジンキーをONにすると、センサセットモードとなり、変速用モータ165を高速側に駆動するリレー回路の端子T1と低速側に駆動するリレー回路の端子T2の両方に同電圧(実施例では12ボルト)がかかるようになっているので、センサセット時にはモータ165が作動しない。これは、センサセットはエンジンをかけないで行うので、第二ベルト伝動装置23のベルトが作動していない状態でモータ165を作動させることにより、モータ165がメカロックするのを防止するためである。
【0036】
端子T3,T4は操作パネル切替認識用の端子で、操作パネルのコネクタ72aと変速コントローラのコネクタ71aを接続すると、両端子T3,T4に所定電圧(実施例では5ボルト)がかかり、それによって操作パネルのコネクタ72aが主コントローラのコネクタ70aから変速コントローラのコネクタ71aに確実に差し替えられたことをチェックするようになっている。
【0037】
また、端子T5は主コントローラ70から送信される植付クラッチの情報を入力する端子、端子T6,T7は主コントローラ70から送信されるその他の情報を入力する端子であって、これらの端子から入力される情報に基づいて自動変速制御するように構成することもできる。例えば、植付クラッチが「切」になると減速する、植付部が上昇すると減速する、機体が旋回すると減速する等のように制御するのである。
【0038】
符号77はコントローラに異常が発生した場合に点滅するチェックランプで、このチェックランプは主コントローラ70と変速コントローラ71とで共用させてある。両方のコントローラに同時に異常が発生した場合、両方のコントローラからチェックランプ77に点滅指令が出されると、チェックランプ77の点滅に乱れが生じる。そこで、これを防止するために、図10に示すように、主コントローラ70に異常が発生すると、主コントローラ70から変速コントローラ71へチェックランプ点滅中信号を送信し、主コントローラ70から点滅指令が出されている時は変速コントローラ71からは点滅指令が出されないように制御する。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる農作業機は、主変速部と該主制御部とは別設の変速制御部にそれぞれ個別に接続・非接続可能で、変速制御部に接続すると当該変速制御部を調整操作することができ、かつ主制御部に接続すると当該主制御部を調整操作することのできる操作装置を設けることにより、主制御部を調整操作する操作装置と変速制御部を調整操作する操作装置が共用させることが可能となり、操作装置を簡略化してコストダウンが図れるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】走行車体の一部を省略した平面図である。
【図4】無段変速装置の平面断面図である。
【図5】無段変速装置の操作部の正面図で、(a)は電動操作方式の状態、(b)は手動操作方式の状態を表している。
【図6】図5のS1−S1面図である。
【図7】図5のS2−S2面図である。
【図8】主コントローラと変速コントローラと操作パネルの接続図である。
【図9】変速コントローラの接続図である。
【図10】チェックランプ点滅制御のフローチャートである。
【符号の説明】
1 田植機(農作業機)
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 植付部
5 施肥装置
12 ミッションケース
20 エンジン
23 第二ベルト伝動装置(変速装置)
70 主コントローラ(制御装置の主制御部)
71 変速コントローラ(制御装置の変速制御部)
72 操作パネル(操作装置)
140 変速レバー
165 電動モータ(アクチュエータ)
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行速度の変速操作を制御装置で電子制御する農作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
変速レバーの操作位置をセンサで検出し、その検出結果に基づいて変速装置を作動させるアクチュエータに出力指令を出して変速操作する農作業機が開発されている。この種の走行速度の変速操作を電子制御する農作業機において、制御装置を、作業機等の各種制御部を行う主制御部と、専ら走行速度の変速制御を行う変速制御部とに分けて配設したものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記主制御部によって制御する項目としては植付部の昇降制御、ローリング制御等があるが、これらの制御の制御モードや制御感度を状況に応じて変更するために、ユーザー自らが主制御部を調整することがある。これに対し、変速制御部については、工場出荷の段階で調整したり、ユーザーの特別な要望に応じてディーラーが調整することはあるが、ユーザー自身が調整することはほとんど無い。したがって、主制御部を調整操作するための操作装置とは別に、変速制御部を調整操作するための操作装置を別途設けておくことは無駄が多いという問題点がある。本発明は、このような問題点を解決することを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成とした。すなわち、本発明にかかる農作業機は、走行速度の変速操作を制御装置で電子制御する農作業機において、前記制御装置を、作業機等の各種を行う主制御部と、専ら走行速度の変速制御を行う変速制御部とで構成し、これら主制御部及び変速制御部にそれぞれ個別に接続・非接続可能で、主制御部に接続すると当該主制御部を調整操作することのでき、かつ変速制御部に接続すると当該変速制御部を調整操作することができる操作装置を設けたことを特徴としている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面に表されている田植機に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0006】
この田植機1は、乗用走行車両2の後側に昇降リンク装置3を介して6条植の植付部4が昇降可能に装着されていると共に、各植付条の側部近傍に肥料を散布する施肥装置5が設けられており、全体で乗用施肥田植機として構成されている。
【0007】
走行車両2は、駆動輪である左右各一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両である。機体の前部に配したミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、その前輪ファイナルケース13,13の下部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にはメインフレーム15の前端部が固着され、そのメインフレーム15の後端左右中央部に後輪ローリング軸16が軸心を前後水平に向けて固定状態で嵌合させてあり、その後輪ローリング軸16にローリング自在に支持される後輪フレーム17の左右端部に後輪ギヤケース18,18が設けられ、その後輪ギヤケースから外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0008】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されている。エンジン20の左側面に突出するエンジン出力軸20aに取り出される回転動力が、第一ベルト伝動装置21を介して油圧ポンプ22の駆動軸22aに伝達され、更にその油圧ポンプ駆動軸22aから無段変速式の第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12の前部左側に突出するミッション入力軸12aに伝達される。また、エンジン20の右側面に突出する第二出力軸20bに取り出される回転動力が、第三ベルト伝動装置24によって、エンジン20の上に取り付けたオルタネータ25に伝達される。
【0009】
ミッション入力軸12aよりミッションケース12に入力された回転動力は、該ケース内のトランスミッションで変速した後、前輪駆動用動力と後輪駆動用動力と植付部駆動用動力に分けられる。前輪駆動用動力は、前輪ファイナルケース13,13に伝達され、前輪11,11を駆動する。後輪駆動用動力は、伸縮自在な後輪駆動軸26,26を介して後輪ギヤケース18,18に伝達され、後輪8,8を駆動する。また、植付部駆動用動力は、植付伝動軸27を介して植付クラッチ28に伝達され、それから植付部4の伝動ケース50と施肥装置5の肥料繰出部61,…に伝達される。
【0010】
第二ベルト伝動装置23は図4に示す構成となっている。すなわち、油圧ポンプ駆動軸22aに嵌着する駆動側割りプーリ120とミッションケース入力軸12aに主クラッチCを介して嵌着する従動側割りプーリ121とに伝動ベルト122が掛けられている。従動側割りプーリ121の一方の構成部材121aはミッションケース入力軸12aに固定、他方の構成部材121bはミッションケース入力軸12aに対して軸方向に摺動自在となっていて、その可動構成部材121bは軸受123を介して相互回転自在な変速操作カム124によって位置規制されている。変速操作カム124の外面側には円周方向に傾斜状となった突条124a,124aが形成されており、その突条124a,124aが固定カム125に設けたローラ125a,125aに当接している。そして、変速操作カム124のアーム124bに変速操作ロッド126が連結されている。この変速操作ロッド126を前後(紙面の上下方向)に移動させると、変速操作カム124が回動してローラ125a,125aへの突条124a,124aの接点が変わり、変速操作カム124とそれに位置規制されている可動構成部材121bが伝動ベルト122の張力に応じて軸方向へ移動することにより、従動側割りプーリ121の有効径が変化する。
【0011】
また、駆動側割りプーリ120の一方の構成部材120aは油圧ポンプ駆動軸22aに固定、他方の構成部材120bは油圧ポンプ駆動軸22aに対して軸方向に摺動自在となっていて、その可動構成部材120bは軸受127を介して相互回転自在な変速操作カム128によって位置規制されている。変速操作カム128の外面側には円周方向に傾斜状となった突条128aが形成されており、その突条128aにミッションケース10の外面部に設けたローラ129が当接している。そして、従動側変速操作カム124のもうひとつのアーム124cと駆動側変速操作カム128のアーム128bとが連結部材130で連結されている。これにより、従動側割りプーリ121の有効径が大きくなるときには駆動側割りプーリ120の有効径が小さくなり、従動側割りプーリ121の有効径が小さくなるときには駆動側割りプーリ120の有効径が大きくなるようになっている。
【0012】
次に、この第二ベルト伝動装置23を操作する操作機構について説明する(図5〜図7参照)。
【0013】
符号140は変速レバーで、この変速レバーは、該レバーの基部に固着の筒状体141にてレバー軸142の右(紙面では左)端部に回転自在かつ軸方向に摺動自在に嵌合している。レバー軸142は、機体フレームに固定したレバー軸支持筒143に回動自在に支承されている。変速レバー140を右方向に少しずらし、筒状体141の外周面から挿入させたセットボルト144の先端部をレバー軸142の切欠部142aに係合させると、変速レバー140とレバー軸142が一体回転するようになる。
【0014】
筒状体141には電動操作アーム146が一体に設けられている。この電動操作アーム146の回動量は、レバー軸支持筒143と一体の右プレート147に取り付けられている変速レバー位置検出用ポテンショメータPM1に検出される。右プレート147には右向きに突出する電動操作用ストッパピン148が設けられ、そのストッパピンの先端部が、電動操作アーム146に形成されているレバー軸142の軸心を中心とする円弧状の電動時レバーストローク規制用ピン穴146aに係合している。なお、セットボルト144が切欠部142に係合する位置へ変速レバー140をずらした状態では、ポテンショメータPM1の検出アームが電動操作アーム146から外れ、電動操作アーム146の回動量が検出されなくなると共に、ストッパピン148がピン穴146aから外れる。
【0015】
また、レバー軸142には電動操作アーム146と右プレート147の間に手動操作用ア一ム150が一体に設けられ、その手動操作用ア一ム150から左(紙面では右)向きに突出する手動操作用ストッパピン151の先端部が、右プレート147に形成されているレバー軸142の軸心を中心とする扇形の手動時レバーストローク規制用ピン穴147aに係合している。電動時レバーストローク規制用ピン穴146aの角度θ1よりも、手動時レバーストローク規制用ピン穴147aの角度θ2の方が大きく設定されている。
【0016】
電動操作アーム146の手動操作用ア一ム側の面には第一ブレーキライニング152が貼着されており、第一摩擦力調節ナット153の締め具合を調節することにより、電動操作アーム146と手動操作用ア一ム150との間に適度な摩擦力を持たせられるようになっている。また、右プレート147の手動操作用ア一ム側の面には第二ブレーキライニング154が貼着されており、第二摩擦力調節ナット155の締め具合を調節することにより、右プレート147と手動操作用ア一ム150との間に適度な摩擦力を持たせられるようになっている。更に、電動操作用ストッパピン148には第三摩擦力調節ナット156によって第三ブレーキライニング157が取り付けられるようになっており、第三摩擦力調節ナット156の締め具合を調節することにより、電動操作アーム146と右プレート147との間に適度な摩擦力を持たせられるようになっている。
【0017】
レバー軸142の左端部にはボス160が回転不可能に取り付けられており、そのボス160に一体成形されている回動プレート161の先端部に前記変速操作ロッド126の一端部が連結されている。この回動プレート161の回動量はレバー軸支持筒143と一体の左プレート163に取り付けた回動プレート位置検出用ポテンショメータPM2に検出される。
【0018】
また、左プレート163には、電動モータ165が取り付けられている。このモータ165の出力軸に取り付けられているピニオン166と左プレート163に設けたギヤ取付軸167に取り付けられているカウンタギヤ168とが噛み合い、更に該カウンタギヤと一体の小ギヤ169とボス160に一体成形されている扇形ギヤ170とが噛み合っている。カウンタギヤ168及び小ギヤ169はギヤ取付軸167に軸方向に摺動可能に取り付けられており、両ギヤ168,169を左プレート163側に移動させることにより、ピニオン166とカウンタギヤ168の噛み合い、及び小ギヤ169と扇形ギヤ170の噛み合いが外れる。
【0019】
第二ベルト伝動装置23の操作機構は以上の構成で、次に示す3種の操作方式のうちのいずれかを選択することができる。
【0020】
(1)電動操作方式1
変速レバー140を左寄りに位置させ、ポテンショメータPM1の検出アームを電動操作アーム146に連係させると共に、ストッパピン148が電動操作アーム146のピン穴146aに係合する状態にする。また、ピニオン166とカウンタギヤ168、及び小ギヤ169と扇形ギヤ170をそれぞれ噛み合わさせる。そして、ポテンショメータPM1によって検出される変速レバー位置とポテンショメータPM2によって検出される回動プレート位置が対応するように、変速コントローラ71による制御でモータ165を駆動してレバー軸142を回動させ、第二ベルト伝動装置23を作動する。
【0021】
この時、第二ブレーキライニング154と第三ブレーキライニング157を利かせ、第一ブレーキライニング152が利かない状態としておくと、変速レバー140とレバー軸142が互いにフリーの関係にあるので、レバー軸142の回動が変速レバー140に影響を与えず、変速レバー140の操作位置に応じた任意の変速比に第二ベルト伝動装置23が作動される。回動プレート位置検出用ポテンショメータPM2の初期値を調整することにより、「最高速」と「最低速」の設定速度を変更できる。
【0022】
(2)電動操作方式2
電動操作方式1と同様に、ポテンショメータPM1,PM2の検出結果に基づいてモータ165を駆動してレバー軸142を回動させる。この時、第一ブレーキライニング152と第二ブレーキライニング154を利かせ、第三ブレーキライニング157が利かない状態としておくと、レバー軸142の回動に伴い手動操作用ア一ム150につられて電動操作アーム146も回動するので、変速レバー140を「高速」側または「低速」側に少しでも操作すると、操作した側のレバーストローク(角度θ1)の端まで変速レバー140が自動的に回動する。したがって、変速レバー140を「高速」側に少し操作しただけで第二ベルト伝動装置23が「最高速」の状態に作動されると共に、変速レバー140を「低速」側に少し操作しただけで第二ベルト伝動装置23が「最低速」の状態に作動される。
【0023】
(3)手動操作方式
第三ブレーキライニング157を取り外した上で、変速レバー140を右側にずらし、セットボルト144にて変速レバー140とレバー軸142を直結する。また、ピニオン166とカウンタギヤ168、及び小ギヤ169と扇形ギヤ170の噛み合いを外す。第二ブレーキライニング154は利かせ、第一ブレーキライニング152は利かない状態としておく。この状態では、変速レバー140の操作力がレバー軸142へ直接伝達され、その変速レバー140の操作位置に応じた任意の変速比に第二ベルト伝動装置23が作動される。電動操作方式1または電動操作方式2と手動操作方式とではレバーストロークが異なるが、電動操作方式1または電動操作方式2における「最高速」及び「最低速」と、手動操作方式における「最高速」及び「最低速」とが一致するように設定されている。
【0024】
通常は電動操作方式1または電動操作方式2によって変速操作を行う。電気系統が故障した場合等の非常時には、手動操作方式に切り替えることにより、変速操作が可能となり、植付作業や走行を継続することができる。手動操作方式の時のレバーストローク(角度θ2)は電動操作方式1または電動操作方式2の時のレバーストローク(角度θ1)よりも大きく設定されているため、比較的小さな力でも変速レバー140を操作することができ、操作が容易である。
【0025】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前側には床面から上方に突出するフロントカバー32が配設され、そのフロントカバーの上方に操向用ハンドル33が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の周辺部には、前記変速レバー140等の各種レバー、各種ペダル等が設けられている。また、座席31の右側方には制御ボックス34が設けられている。
【0026】
走行車両2の前部左右両側には補給用の苗を載せておく予備苗載台36,36が設けられている。また、走行車両2の前部左右両側には、次行程における最外側の植付条の位置が圃場面に線引きする線引きマーカー37,37が起倒切替可能に設けられている。
【0027】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設したリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。縦リンク43には植付部4をローリング自在に連結するためのローリング軸43aが設けられている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム44の先端部との間に昇降用油圧シリンダ45が介装されており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、縦リンク43に装着した植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0028】
植付部4は公知の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、土付きのマット状苗が載置される苗載台51、該苗載台上の苗を圃場の土壌に植付ける植付条数分の植付装置52,…等を備えている。植付部4の下側にはセンターフロート53と左右一対のサイドフロート54,54が設けられ、各フロートを接地させた状態で機体を進行させると、フロートが泥面を整地しつつ滑走する。
【0029】
施肥装置5は、走行車両2の後部上側に肥料ホッパ60と肥料繰出部61,…を設け、肥料ホッパ60に貯えられている粒状の肥料を肥料繰出部61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送管62,…を通してフロート53,54,54に取り付けた施肥ガイド63,…へ移送し、その施肥ガイドの前側に設けた作溝体64,…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に肥料を落とし込む構成となっている。66は肥料移送管62,…に肥料搬送用エアを送り込むためのブロア、67は該ブロアを駆動するモータである。
【0030】
この田植機1は以上の全体構成で、前輪10,10及び後輪11,11を回転して機体を走行させつつ、各フロート53,54,54が接地する状態で植付部4と施肥装置5を駆動すると、フロートによって整地された泥面に植付装置52,…が苗を植付けると共に、その各植付条の側部近傍に施肥装置5が施肥する。植付作業時には、表土面の凹凸に応じて植付部4の対地高さを制御する昇降制御と、表土面の左右傾斜に応じて植付部4のローリング軸43a回りの姿勢を制御するローリング制御とを行い、苗の植付深さを一定に維持する。圃場の端部等で機体を旋回させる場合は、植付部4を上昇させると共に、植付クラッチ28を「切」にして、植付部4と施肥装置5の駆動を停止するように制御する。また、作業速度(走行速度)は変速レバー140の操作に基づいて制御される。
【0031】
上記各制御をする制御装置は、制御ボックス34内に設けられている主コントローラ(主制御部)70と、フロントカバー32の内部に設けられている変速コントローラ(変速制御部)71とからなり、変速制御以外の制御については主コントローラ70で行い、変速制御については変速コントローラ71で行う。図8及び図9に示すように、通常は、主コントローラ70のコネクタ70aと制御ボックス34に取り付けた操作パネル(操作装置)72のコネクタ72aとが接続されており、操作パネル72に設けたスイッチ類で主コントローラ70を操作するようになっている。
【0032】
図には操作具として、ローリング制御を手動モードに切り替えるローリング入・切スイッチ74と、手動で植付部をローリングさせるローリング手動スイッチ75と、コントローラが正常に機能しているか否かをチェックするためのチェックスイッチ76とが表示されているが、実際には上記以外に、昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤル、植付部を手動で昇降させる植付部上下スイッチ、ローリング制御の感度を調節する感度調節つまみ等が操作パネル72に設けられている。
【0033】
操作パネル72のコネクタ72aを主コントローラ70のコネクタ70aから抜き、それを変速コントローラ71のコネクタ71aにつけ替えると、変速コントローラ71の操作を行えるようになる。すなわち、操作パネル72を変速コントローラ71に接続すると、ローリング手動スイッチ75はコントローラが故障した場合に手動で変速するための非常手動スイッチとなり、該スイッチを「左」に入れると第二ベルト伝動装置23が低速側に作動する方向に前記変速用モータ165が回転し、「右」に入れると第二ベルト伝動装置23が高速側に作動する方向にモータ165が回転する。
【0034】
また、変速範囲の調整は次のようにして行う。すなわち、チェックスイッチ76をONにし、ローリング手動スイッチ75を「左」または「右」に入れると、第二ベルト伝動装置23の変速位置を検出するセンサである前記ポテンショメータPM2の値が変化し、それが所望の値となった状態でエンジンキーをONにすることにより、「最高速」或は「最低速」の状態におけるポテンショメータPM2の初期設定がなされる。
【0035】
チェックスイッチ76とローリング手動スイッチ75が操作されている状態でエンジンキーをONにすると、センサセットモードとなり、変速用モータ165を高速側に駆動するリレー回路の端子T1と低速側に駆動するリレー回路の端子T2の両方に同電圧(実施例では12ボルト)がかかるようになっているので、センサセット時にはモータ165が作動しない。これは、センサセットはエンジンをかけないで行うので、第二ベルト伝動装置23のベルトが作動していない状態でモータ165を作動させることにより、モータ165がメカロックするのを防止するためである。
【0036】
端子T3,T4は操作パネル切替認識用の端子で、操作パネルのコネクタ72aと変速コントローラのコネクタ71aを接続すると、両端子T3,T4に所定電圧(実施例では5ボルト)がかかり、それによって操作パネルのコネクタ72aが主コントローラのコネクタ70aから変速コントローラのコネクタ71aに確実に差し替えられたことをチェックするようになっている。
【0037】
また、端子T5は主コントローラ70から送信される植付クラッチの情報を入力する端子、端子T6,T7は主コントローラ70から送信されるその他の情報を入力する端子であって、これらの端子から入力される情報に基づいて自動変速制御するように構成することもできる。例えば、植付クラッチが「切」になると減速する、植付部が上昇すると減速する、機体が旋回すると減速する等のように制御するのである。
【0038】
符号77はコントローラに異常が発生した場合に点滅するチェックランプで、このチェックランプは主コントローラ70と変速コントローラ71とで共用させてある。両方のコントローラに同時に異常が発生した場合、両方のコントローラからチェックランプ77に点滅指令が出されると、チェックランプ77の点滅に乱れが生じる。そこで、これを防止するために、図10に示すように、主コントローラ70に異常が発生すると、主コントローラ70から変速コントローラ71へチェックランプ点滅中信号を送信し、主コントローラ70から点滅指令が出されている時は変速コントローラ71からは点滅指令が出されないように制御する。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる農作業機は、主変速部と該主制御部とは別設の変速制御部にそれぞれ個別に接続・非接続可能で、変速制御部に接続すると当該変速制御部を調整操作することができ、かつ主制御部に接続すると当該主制御部を調整操作することのできる操作装置を設けることにより、主制御部を調整操作する操作装置と変速制御部を調整操作する操作装置が共用させることが可能となり、操作装置を簡略化してコストダウンが図れるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】走行車体の一部を省略した平面図である。
【図4】無段変速装置の平面断面図である。
【図5】無段変速装置の操作部の正面図で、(a)は電動操作方式の状態、(b)は手動操作方式の状態を表している。
【図6】図5のS1−S1面図である。
【図7】図5のS2−S2面図である。
【図8】主コントローラと変速コントローラと操作パネルの接続図である。
【図9】変速コントローラの接続図である。
【図10】チェックランプ点滅制御のフローチャートである。
【符号の説明】
1 田植機(農作業機)
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 植付部
5 施肥装置
12 ミッションケース
20 エンジン
23 第二ベルト伝動装置(変速装置)
70 主コントローラ(制御装置の主制御部)
71 変速コントローラ(制御装置の変速制御部)
72 操作パネル(操作装置)
140 変速レバー
165 電動モータ(アクチュエータ)
Claims (1)
- 走行速度の変速操作を制御装置で電子制御する農作業機において、前記制御装置を、作業機等の各種を行う主制御部と、専ら走行速度の変速制御を行う変速制御部とで構成し、これら主制御部及び変速制御部にそれぞれ個別に接続・非接続可能で、主制御部に接続すると当該主制御部を調整操作することのでき、かつ変速制御部に接続すると当該変速制御部を調整操作することができる操作装置を設けたことを特徴とする農作業機。
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