JP3561280B2 - 塗装方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被塗装面に塗膜混入物を散布して塗膜構造を形成する塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗膜表面からの出射光が塗膜表面への入射方向に戻る、いわゆる再帰反射性を有する塗膜構造が知られている(特開昭63−229176号公報参照)。この塗膜構造では、被塗装面に粘着性を有するバインダ塗料を塗布してバインダ塗料層を形成した後、このバインダ塗料層の表面に微細な無数のガラスビーズを接着させ、このガラスビーズの層を透明被覆層で覆うようにしている。
【0003】
ところで、上記塗膜構造において、上記ガラスビーズを上記バインダ塗料層に適正に接着させるためにはバインダ塗料の粘度を調整する必要があるが、従来、バインダ塗料の粘度調整は、バインダ塗料の溶剤である希釈シンナーの種類を選択することによって行なっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記シンナーの種類の選択による粘度調整では、バインダ塗料の粘度の経時変化が大きいため、塗装作業に比較的長時間を要するような大型の被塗装物への塗布を行なう場合、上記塗装作業の時間経過に伴って上記バインダ塗料の粘度が変化し、バインダ塗料の塗装終了後にガラスビーズを適正に接着させることができなくなるといった問題がある。
【0005】
一方、上記特開昭63−229176号公報に示されているように、バインダ塗料として紫外線が照射されるまでは硬化しない紫外線硬化塗料を使用し、ガラスビーズを接着させるときの粘度を維持して均一塗布を可能にしたものが提案されている。
【0006】
ところが、この紫外線硬化塗料を使用するものでは、紫外線照射のための特別な設備が必要であるといった問題がある。特に大型の被塗装物に上記ガラスビーズを接着させようとすると、上記紫外線照射のための設備が大型になって設備費用がかかることになる。また、上記紫外線硬化塗料では、耐侯性等が低いといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するもので、紫外線照射等の特別な設備を必要とせず、塗装作業中(バインダ塗膜形成工程と散布工程)のバインダ塗料の粘度を適正に維持して適正に塗膜混入物(ガラスビーズ等)を接着させるとともに、塗装安定性(耐候性等)の優れた塗膜構造を形成する塗装方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記請求項1に係る発明は、被塗装面に塗膜混入物を散布して塗膜構造を形成する塗装方法であって、ガラス転移温度が−20℃〜20℃の範囲内であるバインダ塗料を被塗装面に塗布してバインダ塗膜を形成するバインダ塗膜形成工程と、このバインダ塗膜形成工程で形成されたバインダ塗膜上に塗膜混入物を散布する散布工程と、この散布工程で塗膜混入物が散布された状態で上記バインダ塗膜を焼付けるバインダ塗膜焼付け工程と、このバインダ塗膜焼付け工程で焼付けられた上記バインダ塗膜上へクリヤ塗料を塗膜混入物を覆うように塗布してクリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成工程と、このクリヤ塗膜形成工程で形成されたクリヤ塗膜を焼付けるクリヤ塗膜焼付け工程とを含み、上記散布工程で散布された塗膜混入物が上記バインダ塗膜の接着力によってバインダ塗膜に接着された状態で、上記被塗装面がバインダ塗膜焼付け工程へ移行されることを特徴とする塗装方法である。
【0009】
上記請求項2に係る発明は、上記ガラス転移温度が−10℃〜10℃の範囲内となるように設定されていることを特徴とする塗装方法である。
【0010】
上記請求項3に係る発明は、上記バインダ塗料がアクリルウレタン塗料であることを特徴とする塗装方法である。
【0011】
上記請求項4に係る発明は、上記塗膜混入物は、再帰反射用の部材であることを特徴とする塗装方法である。
【0012】
上記請求項5に係る発明は、上記散布工程で塗膜混入物が自然落下によって上記バインダ塗膜へ散布されることを特徴とする塗装方法である。
【0013】
上記請求項6に係る発明は、上記散布工程で散布された過剰の塗膜混入物を高速エアーによって除去することを特徴とする請求項5記載の塗装方法である。
【0014】
【作用】
上記請求項1記載の塗装方法によれば、バインダ塗料のガラス転移温度が−20℃以上であるため、塗膜としての熱膨張が抑えられ、塗膜混入物を覆うクリヤ塗膜との熱膨張率の差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生を防いだ塗膜構造が形成される。
【0015】
また、ガラス転移温度が20℃以下であるため、塗装作業場においてバインダ塗膜形成工程と散布工程でバインダ塗料がガラス状態へ転移して粘性が低下することが防がれる。そのため、散布工程で散布された塗膜混入物をさらにバインダ塗膜に対して押込んで埋め込む作業を必要とせずに、塗膜混入物はバインダ塗膜と強固に接着される。そして、この接着を維持して被塗装面はバインダ塗膜焼付け工程へ移行される。したがって、散布工程からバインダ塗膜焼付け工程へ被塗装面を搬送する際に、塗膜混入物が脱落してしまうといった不具合が防がれる。
【0016】
上記請求項2記載の塗装方法によれば、バインダ塗料のガラス転移温度が−10℃〜10℃の範囲内に限定されたことにより、上記熱膨張率の差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生及び塗装作業におけるバインダ塗料のガラス状態への転移による粘性低下をより確実に防止して、塗膜構造を形成することができる。
【0017】
上記請求項3記載の塗装方法によれば、上記バインダ塗料をアクリルウレタン塗料にすることによって、上記のような膨潤、剥離、割れの発生及び粘性低下を 防止するのに適した塗料を得ることができる。
【0018】
上記請求項4記載の塗装方法によれば、散布工程で被塗装面に散布される再帰反射用の部材を被塗装面に適正に接着して塗膜構造を形成することができる。
【0019】
上記請求項5記載の塗装方法によれば、自然落下によって塗膜混入物を散布することによって、容易に散布工程を行なうことができる。
【0020】
上記請求項6記載の塗装方法によれば、過剰の塗膜混入物が高速エアーによって除去されるので、容易に塗膜混入物の単層を形成することができる。
【0021】
【実施例】
図1は本発明に係る塗膜構造を示す断面図である。この塗膜構造では、塗膜混入物として再帰反射用部材のガラスビーズをバインダ塗料によって反射層に接着させている。
【0022】
すなわち、被塗装物1の表面(被塗装面)側から順に、下塗層2と中塗層3とアルミベース塗料層(反射層)4とバインダ塗膜5とが形成されている。さらに、このバインダ塗膜5は略平坦面を形成しており、その略平坦面上には例えば粒径50μmのガラスビーズ6の単層が付着形成され、このガラスビーズ6の単層を覆うようにクリヤ塗膜7が塗膜混入物間を浸透して塗膜混入物が接着されていない略平坦面範囲全域においてバインダ塗膜5と接合される。
【0023】
そして、クリヤ塗膜7の表面に入射した光線が屈折して透過し、更にガラスビーズ6に屈折して透過し、アルミベース塗料層4で反射して再びガラスビーズ6及びクリヤ塗膜7を屈折して透過することにより、上記入射光とほぼ同方向に出射するようになっている(再帰反射)。
【0024】
次に、上記塗膜構造の各層の形成方法の一実施例について説明する。
(1)下塗層2の形成
1.エポキシ樹脂系塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO U−2602」)を膜厚20μmで塗布する。
【0025】
2.温度160℃で30分間焼き付ける。
(2)中塗層3の形成
1.ポリエステルメラニン塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO 825」)を膜厚40μmで塗布する。
【0026】
2.温度140℃で30分間焼き付ける。
(3)アルミベース塗料層4の形成
1.アクリルメラニン塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO 520」)を膜厚15μmで塗布する。
【0027】
2.温度140℃で30分間焼き付ける。
(4)バインダ塗膜5及びガラスビーズ6の単層の形成
1.バインダ塗料を膜厚2μm〜3μmで塗布する(バインダ塗膜形成工程)。
【0028】
2.室温状態(15℃〜30℃)で粒径50μmのガラスビーズ6を自然落下によってバインダ塗膜5上に散布する(散布工程)。
【0029】
3.バインダ塗膜上の過剰ビーズ6を高速エアーによって吹き飛ばす。
【0030】
4.ガラスビーズ6をさらにバインダ塗膜5へ押込んで埋め込む作業を行うことなく、バインダ塗料の種類に応じた温度と時間とで焼き付ける(バインダ塗膜焼付け工程)。
(5)クリヤ塗膜7の形成
1.アクリルメラニン塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO 563」)を膜厚40μmで塗布する(クリヤ塗膜形成工程)。
【0031】
2.温度140℃で30分間焼き付ける(クリヤ塗膜焼付け工程)。
【0032】
3.上記アクリルメラニン塗料を再度、膜厚40μmで塗布する。
【0033】
4.温度140℃で30分間焼き付ける。
【0034】
以上のように形成することで、上述した再帰反射の作用を有する塗膜構造が形成される。
【0035】
次いで、上記塗膜構造のバインダ塗膜5を形成するバインダ塗料について説明する。上記バインダ塗料は、高分子樹脂等の非晶質物質からなり、そのガラス転移温度よりも外気温(バインダ塗料の温度)が高いときには粘性、弾性を有するゴム状態になってガラスビーズ6を接着させ、一方、そのガラス転移温度よりも外気温(バインダ塗料の温度)が低くなると比較的固くてもろいガラス状態へ転移する(ガラス転移)といった物性を有している。そして、このガラス状態に転移するとバインダ塗料は接着力が低下してガラスビーズ6を接着させ難くなる。
【0036】
ところで、上記ガラス転移を起こす温度(ガラス転移温度)Tgが塗装作業場の温度(15℃〜30℃)よりも高いと、塗装作業(バインダ塗膜形成工程)あるいはガラスビーズ6を散布しているとき(散布工程)にバインダ塗料がガラス状態へ次第に転移し、バインダ塗料の接着力が次第に低下してガラスビーズ6が接着し難くなる。その結果、散布工程でバインダ塗膜に散布されたガラスビーズがバインダ塗膜焼付け工程へ移行される過程で脱落してしまう恐れがある。一方、上記ガラス転移温度Tgが低いと、塗膜としての熱膨張率が大きくなり、クリヤ塗膜7の熱膨張率との差によって塗膜の膨潤、剥離、割れが生じる。
【0037】
従って、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとしては、ガラスビーズ6の散布作業(散布工程)終了までガラス転移せず、且つ、塗膜としての熱膨張率が小さくなる温度範囲内となるものを選択する必要がある。
【0038】
ここで、上記バインダ塗料のガラス転移温度Tgの温度範囲を設定するために行なった実験について図2に示す実験結果のグラフに基づいて説明する。
【0039】
なお、上述した下塗層2と中塗層3とアルミベース塗料層4とバインダ塗膜5とガラスビーズ6の層とクリヤ塗膜7とは、上述した形成方法によって形成する。また、図2において、一点鎖線Aは、バインダ塗料のガラス転移温度Tgに対するガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着状態を示し、C1〜C3は下記に示すようにガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着レベルをそれぞれ示している。
【0040】
C1;バインダ塗膜5へのガラスビーズ6の接着密度が200個/mm2
以下となるレベルであって、ガラスビーズ6が散在し、再帰反射塗装としては使用できない状態である。
【0041】
C2;上記ガラスビーズ6の接着密度が200〜250個/mm2の範囲となるレベルであって、やや密度が低いが再帰反射塗装として使用可能な状態である。
【0042】
C3;上記ガラスビーズ6の接着密度が250〜300個/mm2の範囲となるレベルであって、再帰反射塗装としては最良である。
【0043】
また、図2の実線Bは、バインダ塗料のガラス転移温度Tgに対する塗装面の割れ状態(塗装安定性)を示しており、下記1〜4の工程からなるサイクルを5回繰り返した後の塗装面状態を示している。
【0044】
1.−30℃で1時間冷却する。
【0045】
2.室温で30分放置する。
【0046】
3.80℃で1時間過熱する。
【0047】
4.室温で30分放置する。
【0048】
また、D1〜D3は下記に示すように塗装面の割れのレベルをそれぞれ示している。
【0049】
D1;塗装面全体に割れが発生しており、再帰反射塗装としては使用できない状態である。
【0050】
D2;塗装面の一部に微小な割れが発生しているが、再帰反射塗装として使用可能な状態である。
【0051】
D3;塗装面に割れの発生はなく、再帰反射塗装としては最良である。
【0052】
そして、ガラスビーズ6の接着性に関しては、図2の一点鎖線Aに示すように、ガラス転移温度Tgが30℃以上のバインダ塗料では、C1のレベルとなりガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着密度が小さく、再帰反射塗装としては使用できない。一方、ガラス転移温度Tgが20℃のバインダ塗料ではC2のレベルとなって再帰反射塗装として使用可能となる。そして、ガラス転移温度Tgが20℃以下のバインダ塗料では更にガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着密度が増え、ガラス転移温度Tgが10℃以下のバインダ塗料ではC3のレベルとなって再帰反射塗装として最適になる。
【0053】
一方、塗装安定性に関しては、図2の実線Bに示すように、ガラス転移温度Tgが−30℃以下のバインダ塗料では、D1のレベルとなり割れが多く発生して再帰反射塗装としては使用できない。一方、ガラス転移温度Tgが−20℃のバインダ塗料ではD2のレベルとなって再帰反射塗装として使用可能となる。そして、ガラス転移温度Tgが−20℃以上のバインダ塗料では更に上記塗装面の割れが減少し、ガラス転移温度Tgが−10℃以上のバインダ塗料ではD3のレベルとなって再帰反射塗装として最適になる。
【0054】
この実験結果に示すように、バインダ塗料の接着性及び塗装安定性を考慮すると、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとしては−10℃〜10℃の範囲が最適であり、使用可能な範囲としては−20℃〜20℃の範囲まで許容される。
【0055】
上記バインダ塗料としては、ガラス転移温度Tgが−10℃〜10℃の範囲内となるアクリルウレタン塗料が使用され、例えば下記2液型アクリルウレタン塗料が最適である。
【0056】
(1)日本ビーケミカル社製の商品名「R 256」
ガラス転移温度Tg、10℃
焼付温度、90℃、30分
(2)日本ビーケミカル社製の商品名「R 266」
ガラス転移温度Tg、−10℃
焼付温度、90℃、30分
(3)日本油脂社製の商品名「プライマック 8000」
ガラス転移温度Tg、5℃
焼付温度、80℃、30分
さらに、ガラス転移温度Tgが−20℃〜20℃の範囲内となる、例えば下記1液型アクリルウレタン塗料がバインダ塗料として使用することができる。
【0057】
日本油脂社製の商品名「プライマック 5500」
ガラス転移温度Tg、−20℃
焼付温度、120℃、30分
このように、バインダ塗料のガラス転移温度Tgを設定して塗装作業におけるバインダ塗料の粘度調整を行なっているので、従来のバインダ塗料の溶剤である希釈シンナーによるバインダ塗料の粘度調整に比して塗装作業中(すなわち、バインダ塗膜形成工程と散布工程)の粘度の安定性が高い。また、比較的温度の低い焼き付けによってバインダ塗料を硬化させるため、従来のような紫外線照射等の特別な設備を必要としない。
【0058】
また、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとして20℃以下の範囲となるものを使用することで、塗装作業(バインダ塗膜形成工程と散布工程)において安定した接着力を得られるため、散布工程でバインダ塗膜5に対してガラスビーズ6を押込んで埋め込む作業を必要とせずに、ガラスビーズ6は、バインダ塗膜5と強固に接着することができる。したがって、散布工程からバインダ塗膜焼付け工程へ被塗装物1を搬送する際に、ガラスビーズ6が脱落してしまうといった不具合が防がれる。
【0059】
さらに、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとして−20℃以上の範囲となるものを使用することで、バインダ塗膜5は、クリヤ塗膜7の熱膨張率との差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生を防止することができる。また、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとして−10℃〜10℃の範囲に限定すると、塗装作業(バインダ塗膜形成工程と散布工程)においてより安定した接着力を得られるとともに、塗膜の膨潤、剥離、割れの発生をより確実に防止することができる。
【0060】
なお、上記説明では、塗膜混入物としてガラスビーズ6を例示したが、塗膜混入物としてメタリック塗装等に用いられるアルミニウム等の金属の粉末をバインダ塗膜5に接着させるものであってもよい。
【0061】
【発明の効果】
本発明は、バインダ塗料のガラス転移温度を20℃以下としたので、塗装作業(バインダ塗膜形成工程と散布工程)において安定した接着力を得られる。その ため、散布工程で散布された塗膜混入物をバインダ塗膜に対して押込み埋め込む作業を必要とせずに、塗膜混入物はバインダ塗膜と強固に接着される。そして、この接着を維持して被塗装面はバインダ塗膜焼付け工程へ移行される。したがって、散布工程からバインダ塗膜焼付け工程へ被塗装面を搬送する際に、塗膜混入物が脱落してしまうといった不具合が防がれる。
【0062】
また、上記バインダ塗料のガラス転移温度を−20℃以上としたので、クリヤ塗膜の熱膨張率との差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生を防止した塗膜構造を形成することができる。
【0063】
そして、バインダ塗料のガラス転移温度を−10℃〜10℃の範囲内とすると、より安定した接着力を得られるとともに、塗膜の膨潤、剥離、割れの発生をより確実に防止した塗膜構造を形成することができる。
【0064】
さらに、本発明のバインダ塗料をアクリルウレタン塗料としてバインダ塗膜形成工程を行ない、塗膜混入物を再帰反射用の部材として自然落下による散布工程を行い、過剰の再帰反射用の部材を高速エアーによって除去した後、クリヤ塗膜形成工程、次いでクリヤ塗膜焼付け工程を行なうことによって、適正に再帰反射用の部材が付着して輝度の高い再帰反射塗装を得ることができる。
【0065】
したがって、本発明の塗装方法は、紫外線照射等の特別な設備を必要とせず、塗装作業中(バインダ塗膜形成工程と散布工程)のバインダ塗料の粘度を適正に維持して適正に塗膜混入物(ガラスビーズ等)を接着させるとともに、塗装安定性の優れた塗膜構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバインダ塗料を使用した塗膜構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】バインダ塗料のガラス転移温度と接着性及び塗装安定性との関係を示す実験結果のグラフである。
【符号の説明】
1 被塗装物
2 下塗層
3 中塗層
4 アルミベース塗料層
5 バインダ塗膜
6 ガラスビーズ
7 クリヤ塗膜
【産業上の利用分野】
本発明は、被塗装面に塗膜混入物を散布して塗膜構造を形成する塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗膜表面からの出射光が塗膜表面への入射方向に戻る、いわゆる再帰反射性を有する塗膜構造が知られている(特開昭63−229176号公報参照)。この塗膜構造では、被塗装面に粘着性を有するバインダ塗料を塗布してバインダ塗料層を形成した後、このバインダ塗料層の表面に微細な無数のガラスビーズを接着させ、このガラスビーズの層を透明被覆層で覆うようにしている。
【0003】
ところで、上記塗膜構造において、上記ガラスビーズを上記バインダ塗料層に適正に接着させるためにはバインダ塗料の粘度を調整する必要があるが、従来、バインダ塗料の粘度調整は、バインダ塗料の溶剤である希釈シンナーの種類を選択することによって行なっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記シンナーの種類の選択による粘度調整では、バインダ塗料の粘度の経時変化が大きいため、塗装作業に比較的長時間を要するような大型の被塗装物への塗布を行なう場合、上記塗装作業の時間経過に伴って上記バインダ塗料の粘度が変化し、バインダ塗料の塗装終了後にガラスビーズを適正に接着させることができなくなるといった問題がある。
【0005】
一方、上記特開昭63−229176号公報に示されているように、バインダ塗料として紫外線が照射されるまでは硬化しない紫外線硬化塗料を使用し、ガラスビーズを接着させるときの粘度を維持して均一塗布を可能にしたものが提案されている。
【0006】
ところが、この紫外線硬化塗料を使用するものでは、紫外線照射のための特別な設備が必要であるといった問題がある。特に大型の被塗装物に上記ガラスビーズを接着させようとすると、上記紫外線照射のための設備が大型になって設備費用がかかることになる。また、上記紫外線硬化塗料では、耐侯性等が低いといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するもので、紫外線照射等の特別な設備を必要とせず、塗装作業中(バインダ塗膜形成工程と散布工程)のバインダ塗料の粘度を適正に維持して適正に塗膜混入物(ガラスビーズ等)を接着させるとともに、塗装安定性(耐候性等)の優れた塗膜構造を形成する塗装方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記請求項1に係る発明は、被塗装面に塗膜混入物を散布して塗膜構造を形成する塗装方法であって、ガラス転移温度が−20℃〜20℃の範囲内であるバインダ塗料を被塗装面に塗布してバインダ塗膜を形成するバインダ塗膜形成工程と、このバインダ塗膜形成工程で形成されたバインダ塗膜上に塗膜混入物を散布する散布工程と、この散布工程で塗膜混入物が散布された状態で上記バインダ塗膜を焼付けるバインダ塗膜焼付け工程と、このバインダ塗膜焼付け工程で焼付けられた上記バインダ塗膜上へクリヤ塗料を塗膜混入物を覆うように塗布してクリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成工程と、このクリヤ塗膜形成工程で形成されたクリヤ塗膜を焼付けるクリヤ塗膜焼付け工程とを含み、上記散布工程で散布された塗膜混入物が上記バインダ塗膜の接着力によってバインダ塗膜に接着された状態で、上記被塗装面がバインダ塗膜焼付け工程へ移行されることを特徴とする塗装方法である。
【0009】
上記請求項2に係る発明は、上記ガラス転移温度が−10℃〜10℃の範囲内となるように設定されていることを特徴とする塗装方法である。
【0010】
上記請求項3に係る発明は、上記バインダ塗料がアクリルウレタン塗料であることを特徴とする塗装方法である。
【0011】
上記請求項4に係る発明は、上記塗膜混入物は、再帰反射用の部材であることを特徴とする塗装方法である。
【0012】
上記請求項5に係る発明は、上記散布工程で塗膜混入物が自然落下によって上記バインダ塗膜へ散布されることを特徴とする塗装方法である。
【0013】
上記請求項6に係る発明は、上記散布工程で散布された過剰の塗膜混入物を高速エアーによって除去することを特徴とする請求項5記載の塗装方法である。
【0014】
【作用】
上記請求項1記載の塗装方法によれば、バインダ塗料のガラス転移温度が−20℃以上であるため、塗膜としての熱膨張が抑えられ、塗膜混入物を覆うクリヤ塗膜との熱膨張率の差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生を防いだ塗膜構造が形成される。
【0015】
また、ガラス転移温度が20℃以下であるため、塗装作業場においてバインダ塗膜形成工程と散布工程でバインダ塗料がガラス状態へ転移して粘性が低下することが防がれる。そのため、散布工程で散布された塗膜混入物をさらにバインダ塗膜に対して押込んで埋め込む作業を必要とせずに、塗膜混入物はバインダ塗膜と強固に接着される。そして、この接着を維持して被塗装面はバインダ塗膜焼付け工程へ移行される。したがって、散布工程からバインダ塗膜焼付け工程へ被塗装面を搬送する際に、塗膜混入物が脱落してしまうといった不具合が防がれる。
【0016】
上記請求項2記載の塗装方法によれば、バインダ塗料のガラス転移温度が−10℃〜10℃の範囲内に限定されたことにより、上記熱膨張率の差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生及び塗装作業におけるバインダ塗料のガラス状態への転移による粘性低下をより確実に防止して、塗膜構造を形成することができる。
【0017】
上記請求項3記載の塗装方法によれば、上記バインダ塗料をアクリルウレタン塗料にすることによって、上記のような膨潤、剥離、割れの発生及び粘性低下を 防止するのに適した塗料を得ることができる。
【0018】
上記請求項4記載の塗装方法によれば、散布工程で被塗装面に散布される再帰反射用の部材を被塗装面に適正に接着して塗膜構造を形成することができる。
【0019】
上記請求項5記載の塗装方法によれば、自然落下によって塗膜混入物を散布することによって、容易に散布工程を行なうことができる。
【0020】
上記請求項6記載の塗装方法によれば、過剰の塗膜混入物が高速エアーによって除去されるので、容易に塗膜混入物の単層を形成することができる。
【0021】
【実施例】
図1は本発明に係る塗膜構造を示す断面図である。この塗膜構造では、塗膜混入物として再帰反射用部材のガラスビーズをバインダ塗料によって反射層に接着させている。
【0022】
すなわち、被塗装物1の表面(被塗装面)側から順に、下塗層2と中塗層3とアルミベース塗料層(反射層)4とバインダ塗膜5とが形成されている。さらに、このバインダ塗膜5は略平坦面を形成しており、その略平坦面上には例えば粒径50μmのガラスビーズ6の単層が付着形成され、このガラスビーズ6の単層を覆うようにクリヤ塗膜7が塗膜混入物間を浸透して塗膜混入物が接着されていない略平坦面範囲全域においてバインダ塗膜5と接合される。
【0023】
そして、クリヤ塗膜7の表面に入射した光線が屈折して透過し、更にガラスビーズ6に屈折して透過し、アルミベース塗料層4で反射して再びガラスビーズ6及びクリヤ塗膜7を屈折して透過することにより、上記入射光とほぼ同方向に出射するようになっている(再帰反射)。
【0024】
次に、上記塗膜構造の各層の形成方法の一実施例について説明する。
(1)下塗層2の形成
1.エポキシ樹脂系塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO U−2602」)を膜厚20μmで塗布する。
【0025】
2.温度160℃で30分間焼き付ける。
(2)中塗層3の形成
1.ポリエステルメラニン塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO 825」)を膜厚40μmで塗布する。
【0026】
2.温度140℃で30分間焼き付ける。
(3)アルミベース塗料層4の形成
1.アクリルメラニン塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO 520」)を膜厚15μmで塗布する。
【0027】
2.温度140℃で30分間焼き付ける。
(4)バインダ塗膜5及びガラスビーズ6の単層の形成
1.バインダ塗料を膜厚2μm〜3μmで塗布する(バインダ塗膜形成工程)。
【0028】
2.室温状態(15℃〜30℃)で粒径50μmのガラスビーズ6を自然落下によってバインダ塗膜5上に散布する(散布工程)。
【0029】
3.バインダ塗膜上の過剰ビーズ6を高速エアーによって吹き飛ばす。
【0030】
4.ガラスビーズ6をさらにバインダ塗膜5へ押込んで埋め込む作業を行うことなく、バインダ塗料の種類に応じた温度と時間とで焼き付ける(バインダ塗膜焼付け工程)。
(5)クリヤ塗膜7の形成
1.アクリルメラニン塗料(例えば日本ペイント社製の商品名「OTO 563」)を膜厚40μmで塗布する(クリヤ塗膜形成工程)。
【0031】
2.温度140℃で30分間焼き付ける(クリヤ塗膜焼付け工程)。
【0032】
3.上記アクリルメラニン塗料を再度、膜厚40μmで塗布する。
【0033】
4.温度140℃で30分間焼き付ける。
【0034】
以上のように形成することで、上述した再帰反射の作用を有する塗膜構造が形成される。
【0035】
次いで、上記塗膜構造のバインダ塗膜5を形成するバインダ塗料について説明する。上記バインダ塗料は、高分子樹脂等の非晶質物質からなり、そのガラス転移温度よりも外気温(バインダ塗料の温度)が高いときには粘性、弾性を有するゴム状態になってガラスビーズ6を接着させ、一方、そのガラス転移温度よりも外気温(バインダ塗料の温度)が低くなると比較的固くてもろいガラス状態へ転移する(ガラス転移)といった物性を有している。そして、このガラス状態に転移するとバインダ塗料は接着力が低下してガラスビーズ6を接着させ難くなる。
【0036】
ところで、上記ガラス転移を起こす温度(ガラス転移温度)Tgが塗装作業場の温度(15℃〜30℃)よりも高いと、塗装作業(バインダ塗膜形成工程)あるいはガラスビーズ6を散布しているとき(散布工程)にバインダ塗料がガラス状態へ次第に転移し、バインダ塗料の接着力が次第に低下してガラスビーズ6が接着し難くなる。その結果、散布工程でバインダ塗膜に散布されたガラスビーズがバインダ塗膜焼付け工程へ移行される過程で脱落してしまう恐れがある。一方、上記ガラス転移温度Tgが低いと、塗膜としての熱膨張率が大きくなり、クリヤ塗膜7の熱膨張率との差によって塗膜の膨潤、剥離、割れが生じる。
【0037】
従って、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとしては、ガラスビーズ6の散布作業(散布工程)終了までガラス転移せず、且つ、塗膜としての熱膨張率が小さくなる温度範囲内となるものを選択する必要がある。
【0038】
ここで、上記バインダ塗料のガラス転移温度Tgの温度範囲を設定するために行なった実験について図2に示す実験結果のグラフに基づいて説明する。
【0039】
なお、上述した下塗層2と中塗層3とアルミベース塗料層4とバインダ塗膜5とガラスビーズ6の層とクリヤ塗膜7とは、上述した形成方法によって形成する。また、図2において、一点鎖線Aは、バインダ塗料のガラス転移温度Tgに対するガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着状態を示し、C1〜C3は下記に示すようにガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着レベルをそれぞれ示している。
【0040】
C1;バインダ塗膜5へのガラスビーズ6の接着密度が200個/mm2
以下となるレベルであって、ガラスビーズ6が散在し、再帰反射塗装としては使用できない状態である。
【0041】
C2;上記ガラスビーズ6の接着密度が200〜250個/mm2の範囲となるレベルであって、やや密度が低いが再帰反射塗装として使用可能な状態である。
【0042】
C3;上記ガラスビーズ6の接着密度が250〜300個/mm2の範囲となるレベルであって、再帰反射塗装としては最良である。
【0043】
また、図2の実線Bは、バインダ塗料のガラス転移温度Tgに対する塗装面の割れ状態(塗装安定性)を示しており、下記1〜4の工程からなるサイクルを5回繰り返した後の塗装面状態を示している。
【0044】
1.−30℃で1時間冷却する。
【0045】
2.室温で30分放置する。
【0046】
3.80℃で1時間過熱する。
【0047】
4.室温で30分放置する。
【0048】
また、D1〜D3は下記に示すように塗装面の割れのレベルをそれぞれ示している。
【0049】
D1;塗装面全体に割れが発生しており、再帰反射塗装としては使用できない状態である。
【0050】
D2;塗装面の一部に微小な割れが発生しているが、再帰反射塗装として使用可能な状態である。
【0051】
D3;塗装面に割れの発生はなく、再帰反射塗装としては最良である。
【0052】
そして、ガラスビーズ6の接着性に関しては、図2の一点鎖線Aに示すように、ガラス転移温度Tgが30℃以上のバインダ塗料では、C1のレベルとなりガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着密度が小さく、再帰反射塗装としては使用できない。一方、ガラス転移温度Tgが20℃のバインダ塗料ではC2のレベルとなって再帰反射塗装として使用可能となる。そして、ガラス転移温度Tgが20℃以下のバインダ塗料では更にガラスビーズ6のバインダ塗膜5への接着密度が増え、ガラス転移温度Tgが10℃以下のバインダ塗料ではC3のレベルとなって再帰反射塗装として最適になる。
【0053】
一方、塗装安定性に関しては、図2の実線Bに示すように、ガラス転移温度Tgが−30℃以下のバインダ塗料では、D1のレベルとなり割れが多く発生して再帰反射塗装としては使用できない。一方、ガラス転移温度Tgが−20℃のバインダ塗料ではD2のレベルとなって再帰反射塗装として使用可能となる。そして、ガラス転移温度Tgが−20℃以上のバインダ塗料では更に上記塗装面の割れが減少し、ガラス転移温度Tgが−10℃以上のバインダ塗料ではD3のレベルとなって再帰反射塗装として最適になる。
【0054】
この実験結果に示すように、バインダ塗料の接着性及び塗装安定性を考慮すると、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとしては−10℃〜10℃の範囲が最適であり、使用可能な範囲としては−20℃〜20℃の範囲まで許容される。
【0055】
上記バインダ塗料としては、ガラス転移温度Tgが−10℃〜10℃の範囲内となるアクリルウレタン塗料が使用され、例えば下記2液型アクリルウレタン塗料が最適である。
【0056】
(1)日本ビーケミカル社製の商品名「R 256」
ガラス転移温度Tg、10℃
焼付温度、90℃、30分
(2)日本ビーケミカル社製の商品名「R 266」
ガラス転移温度Tg、−10℃
焼付温度、90℃、30分
(3)日本油脂社製の商品名「プライマック 8000」
ガラス転移温度Tg、5℃
焼付温度、80℃、30分
さらに、ガラス転移温度Tgが−20℃〜20℃の範囲内となる、例えば下記1液型アクリルウレタン塗料がバインダ塗料として使用することができる。
【0057】
日本油脂社製の商品名「プライマック 5500」
ガラス転移温度Tg、−20℃
焼付温度、120℃、30分
このように、バインダ塗料のガラス転移温度Tgを設定して塗装作業におけるバインダ塗料の粘度調整を行なっているので、従来のバインダ塗料の溶剤である希釈シンナーによるバインダ塗料の粘度調整に比して塗装作業中(すなわち、バインダ塗膜形成工程と散布工程)の粘度の安定性が高い。また、比較的温度の低い焼き付けによってバインダ塗料を硬化させるため、従来のような紫外線照射等の特別な設備を必要としない。
【0058】
また、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとして20℃以下の範囲となるものを使用することで、塗装作業(バインダ塗膜形成工程と散布工程)において安定した接着力を得られるため、散布工程でバインダ塗膜5に対してガラスビーズ6を押込んで埋め込む作業を必要とせずに、ガラスビーズ6は、バインダ塗膜5と強固に接着することができる。したがって、散布工程からバインダ塗膜焼付け工程へ被塗装物1を搬送する際に、ガラスビーズ6が脱落してしまうといった不具合が防がれる。
【0059】
さらに、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとして−20℃以上の範囲となるものを使用することで、バインダ塗膜5は、クリヤ塗膜7の熱膨張率との差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生を防止することができる。また、バインダ塗料のガラス転移温度Tgとして−10℃〜10℃の範囲に限定すると、塗装作業(バインダ塗膜形成工程と散布工程)においてより安定した接着力を得られるとともに、塗膜の膨潤、剥離、割れの発生をより確実に防止することができる。
【0060】
なお、上記説明では、塗膜混入物としてガラスビーズ6を例示したが、塗膜混入物としてメタリック塗装等に用いられるアルミニウム等の金属の粉末をバインダ塗膜5に接着させるものであってもよい。
【0061】
【発明の効果】
本発明は、バインダ塗料のガラス転移温度を20℃以下としたので、塗装作業(バインダ塗膜形成工程と散布工程)において安定した接着力を得られる。その ため、散布工程で散布された塗膜混入物をバインダ塗膜に対して押込み埋め込む作業を必要とせずに、塗膜混入物はバインダ塗膜と強固に接着される。そして、この接着を維持して被塗装面はバインダ塗膜焼付け工程へ移行される。したがって、散布工程からバインダ塗膜焼付け工程へ被塗装面を搬送する際に、塗膜混入物が脱落してしまうといった不具合が防がれる。
【0062】
また、上記バインダ塗料のガラス転移温度を−20℃以上としたので、クリヤ塗膜の熱膨張率との差による塗膜の膨潤、剥離、割れの発生を防止した塗膜構造を形成することができる。
【0063】
そして、バインダ塗料のガラス転移温度を−10℃〜10℃の範囲内とすると、より安定した接着力を得られるとともに、塗膜の膨潤、剥離、割れの発生をより確実に防止した塗膜構造を形成することができる。
【0064】
さらに、本発明のバインダ塗料をアクリルウレタン塗料としてバインダ塗膜形成工程を行ない、塗膜混入物を再帰反射用の部材として自然落下による散布工程を行い、過剰の再帰反射用の部材を高速エアーによって除去した後、クリヤ塗膜形成工程、次いでクリヤ塗膜焼付け工程を行なうことによって、適正に再帰反射用の部材が付着して輝度の高い再帰反射塗装を得ることができる。
【0065】
したがって、本発明の塗装方法は、紫外線照射等の特別な設備を必要とせず、塗装作業中(バインダ塗膜形成工程と散布工程)のバインダ塗料の粘度を適正に維持して適正に塗膜混入物(ガラスビーズ等)を接着させるとともに、塗装安定性の優れた塗膜構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバインダ塗料を使用した塗膜構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】バインダ塗料のガラス転移温度と接着性及び塗装安定性との関係を示す実験結果のグラフである。
【符号の説明】
1 被塗装物
2 下塗層
3 中塗層
4 アルミベース塗料層
5 バインダ塗膜
6 ガラスビーズ
7 クリヤ塗膜
Claims (6)
- 被塗装面に塗膜混入物を散布して塗膜構造を形成する塗装方法であって、ガラス転移温度が−20℃〜20℃の範囲内であるバインダ塗料を被塗装面に塗布してバインダ塗膜を形成するバインダ塗膜形成工程と、このバインダ塗膜形成工程で形成されたバインダ塗膜上に塗膜混入物を散布する散布工程と、この散布工程で塗膜混入物が散布された状態で上記バインダ塗膜を焼付けるバインダ塗膜焼付け工程と、このバインダ塗膜焼付け工程で焼付けられた上記バインダ塗膜上へクリヤ塗料を塗膜混入物を覆うように塗布してクリヤ塗膜を形成するクリヤ塗膜形成工程と、このクリヤ塗膜形成工程で形成されたクリヤ塗膜を焼付けるクリヤ塗膜焼付け工程とを含み、上記散布工程で散布された塗膜混入物が上記バインダ塗膜の接着力によってバインダ塗膜に接着された状態で、上記被塗装面がバインダ塗膜焼付け工程へ移行されることを特徴とする塗装方法。
- 上記ガラス転移温度が−10℃〜10℃の範囲内となるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
- 上記バインダ塗料がアクリルウレタン塗料であることを特徴とする請求項1又は2記載の塗装方法。
- 上記塗膜混入物は、再帰反射用の部材であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の塗装方法。
- 上記散布工程で塗膜混入物が自然落下によって上記バインダ塗膜へ散布されることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の塗装方法。
- 上記散布工程で散布された過剰の塗膜混入物を高速エアーによって除去することを特徴とする請求項5記載の塗装方法。
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