JP3560993B2 - 穀物乾燥処理施設 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は穀物乾燥処理施設に関し、特に多数の穀物用貯留槽を用いて穀物の乾燥処理および貯留を行う穀物乾燥処理施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、個々の耕作者からの穀物を集荷して乾燥貯蔵し、籾摺などの処理をしたのち必要な調整を行い出荷するようにした穀物乾燥処理施設は種々提案されている。
この穀物乾燥処理施設は、例えば特開平3−122484号公報に示されているように、多数の乾燥タンクと多数の貯蔵ビンおよび籾摺機などの処理装置を備え、前記乾燥タンクには空調装置で除湿した除湿空気を供給して前記乾燥タンクに搬入した穀物を除湿乾燥するとともに、乾燥した穀物を貯蔵ビンで貯蔵し、必要に応じて貯蔵ビンに貯蔵した穀物を取り出し、籾摺などの処理をしたのち袋詰めするなどして出荷するようにしたものである。
【0003】
以上のごとく構成する乾燥処理施設における乾燥タンクでは、乾燥中に貯留穀物の上層と下層とに水分差が生じてしまい乾燥むらができる(大型の乾燥施設では貯蔵ビンとして1ビン当たり50トン容量程度のものが用いられ、穀物の堆積高さは5m以上にもなることから特に顕著となる)。それを解決するために通常乾燥タンクとは別に入れ替えタンクを設けて乾燥タンクでの1回の除湿乾燥工程が終了したとき、乾燥タンクの1つから入れ替えタンクに穀物を入れ替え、空となった乾燥タンクに他の乾燥タンクの穀物を移し、最後に空となった乾燥タンクに入れ替えタンクの穀物を移すいわゆるローテーション作業を行い下層の良く乾燥した穀物と上層の乾きの悪い穀物とを混じり合わせ、その後に再び除湿乾燥を行うことにより、水分を均一なもとしている。この作業は複数回繰り返えされ、各乾燥タンクでの穀物の除湿乾燥に乾燥ムラが生じないようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような乾燥処理施設では、多数の乾燥タンクのほかに多数の貯蔵タンク及び入れ替えタンクを必須とし、それだけ施設費が高くなるばかりでなく、乾燥タンクの多い大型施設では、このローテーション作業が大変な作業量となっている。ローテーション能力は1ビンよりの風による排出能力に依存するが、通常の乾燥処理施設における排出能力は1時間当たり20〜30トンであり50トンビンを1つ空にするのに2〜3時間必要となる。例えば10個のビンを持つ施設の場合にはこのローテーション作業だけで1日を必要とする結果となる。
【0005】
そこで、同時作業ができるように、図18に示すように乾燥ビンA、Bを2系列化(A−1〜A−7、B−1〜B−7)し、各系例にビン投入エレベータEAおよびEBを設けると共に別途ビン排出エレベータERを設けそこにローテーション専用の計量機M1を設けるようにし、さらに、各系列A、B毎にトップコンベアTCAおよびTCBをそれぞれ1本、ボトムコンベアBCAおよびBCBをそれぞれ1本設けるようにした処理施設が利用されている。なお、図18において、(1)は穀物集荷用の荷受けホッパー、(2)は荷受け昇降機、(3)は中継ぎコンベア、(4)は粗選機、(5)は計量機であり、荷受けされた穀物は該計量機(5)により所定量(例えば300kg)毎計量された後にビン投入エレベータEAからそれぞれのトップコンベアTCAおよびTCBを介して、必要な所蔵ビン(A−1〜A−7、B−1〜B−7)に投入される。また、必要な乾燥処理を終えた穀物は、それぞれのボトムコンベアBCA、BCBから搬出され、調節タンク(6)、籾摺機(7)、揺動選別機(8)、出荷タンク(9)を備えた穀物搬出部を介して、系外に搬出される。
【0006】
この形態の施設においては、ローテーションに要する時間は短縮される一方において、施設費が高騰しかつ煩雑な運転作業と工程管理が必要となっている。
そのような不都合を解消する一つの提案として、図19に示すように多数の貯蔵ビンAと、これら貯蔵ビンAのうち穀物が搬入された貯蔵ビンから空の貯蔵ビンへ移し換えるための取出コンベア(10)、投入エレベータ(11)、投入コンベア(12)とを有する移換装置と、空の貯蔵ビンを着ビンに順次指定し、穀物が搬入された貯蔵ビンA1から空の貯蔵ビンA2に移し替えを指示するローテーション支持手段と、前記移換装置に動作指令を順次出力する出力部とを備えたローテーション制御機構とを設け、前記貯蔵ビンAで乾燥を行い、かつ、所定のローテーションで移し替えを行うようにしたものが知られている(特開平5−79759号公報参照)。なお、(13)は排出エレベータであり、その他、図18の同じ機能を果たす部材には同じ符号を付してある。
【0007】
このものは、多数設けた貯蔵ビンのうち空の貯蔵ビンを利用して、この空の貯蔵ビンを着ビンに順次指定して、空の貯蔵ビンを次々更新しながらローテーション制御して穀物を移し替えて乾燥するようにしたから、従来のもののように、乾燥タンクや特別の入れ替えタンクが不要となり、設備費が低減できると共に作業者が移し替えを行う都度に、発ビン、着ビンを指定する必要がなく簡単な操作で乾燥ムラのない処理を行うことのできる利点がある。
【0008】
しかしながら、この方式による処理施設はイニシャルコストおよびランニングコストが大きいと共に、いずれにしろ乾燥処理の過程で穀物を移動させるものであることから、搬送中に穀物が経路外にこぼれ出たり搬送経路につまったりすることを避けることができず、これを監視するためにシステムの稼働中作業者がシステム全体をウオッチングすることがどうしても必要となる。また、貯留穀物を排出して空になったビンに対する送風を中止し穀物を貯留したビンには送風を開始あるいは継続して行うようにするための何らかのシステムも必要となる。さらに、穀物を搬送路に沿って長い距離搬送する過程において穀物に損傷が生じる恐れもあり、また、ローテーションに風をとられるので、乾燥に関与する風量が結果として減少する不都合も有している。
【0009】
本発明の目的は、従来の穀物乾燥処理施設の持つ上記のような不都合を解消した新規な穀物乾燥処理施設を提供することにあり、より具体的には、多数の穀物用貯留槽を用いて穀物の乾燥処理を行う穀物乾燥処理施設において、貯留ビン間あるいは入れ替え用ビン間での穀物のローテーションを行わなくても乾燥むらのない乾燥処理を行うことができる穀物乾燥処理施設を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は完全に無人化運転を可能とし作業者の作業を軽減した穀物乾燥処理施設を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は穀物の損傷を大きく低減し、かつ乾燥も促進される穀物乾燥処理施設を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による穀物乾燥処理施設は、基本的に、穀物搬入部と、空気の供給路に接続する多数の穀物用貯留槽と、穀物搬入部からこれら穀物用貯留槽に穀物を搬送する搬入部と、空気供給路に除湿空気を送給する除湿空気送風機と、処理を終えた穀物を搬出する搬出部とを備えた穀物乾燥処理施設であって、前記穀物用貯留槽のそれぞれには槽内の穀物を少なくとも上下方向に攪拌するための攪拌装置が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明による穀物乾燥処理施設において、さらに、空気の供給路に接続する穀物用貯留槽であって、前記攪拌装置を有しない穀物用貯留槽を付設すること、また、空気の供給路に接続しない穀物用貯留槽であって、前記攪拌装置を有しない穀物用貯留槽を付設することも可能であり、処理の対象となる穀物の種類や処理穀物の乾燥度合いによって、攪拌装置を有する貯留槽から上記のような貯留槽に穀物を移転させることも可能である。
【0013】
さらに、本発明の特に好ましい態様では、本出願人が既に提案している新規な攪拌装置を持つ穀物貯留槽(特願平5−168207号明細書が参照される)を前記穀物用貯留槽として用いる。すなわち、本発明の係る穀物乾燥処理施設の好ましい態様においては、前記穀物用貯留槽は角型の穀物用貯留槽であり、前記攪拌装置は、穀物用貯留槽における左右の側壁部間を橋絡するように該両側壁部上に走行可能な状態で乗架された第1の台車と、該第1の台車に横移動可能な状態で搭載された第2の台車と、該第2の台車に取り付けられた状態で上記穀物用貯留槽内に挿入されて回転せしめられる攪拌具と、上記第1の台車を上記穀物用貯留槽における前後の側壁部間を横切る方向に往復動させる第1の走行駆動機構と、上記第2の台車を上記左右の側壁部間を横切る方向に往復動させる第2の走行駆動機構と、が備えられ、上記第1の走行駆動機構における台車走行用の動力の一部が上記第2の走行駆動機構に伝達されて上記第2の台車の横移動用の動力として用いられるとともに、上記第1の走行駆動機構が上記第1の台車を上記前後の側壁部近傍にて所定の期間停留させるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明は上記のような穀物乾燥処理施設のレイアウトの好ましい態様をも開示している。
【0014】
【作 用】
単位農家から所定量の穀物が持ち込まれると、この穀物は穀物搬入部から各穀物用貯留槽に順次搬入される。各穀物用貯留槽は除湿空気の供給路に接続しており、送給される除湿空気により従来の穀物乾燥処理装置の場合と同様に穀物は乾燥を受ける。本発明の穀物処理施設においては、穀物用貯留槽のそれぞれに槽内の穀物を少なくとも上下方向に攪拌するための攪拌装置が取り付けられている。該攪拌装置の作用により、乾燥の過程において穀物用貯留槽内の穀物は全域にわたって等しく上下方向に攪拌される。そのために、従来の穀物乾燥処理施設におけるように、貯留ビン間であるいは乾燥タンクと入れ替えタンクとの間で穀物の入れ替えるいわゆるローテーション作業を行わなくても、貯留槽内に貯留された穀物は貯留槽内で等しい割合で乾燥され均一な水分のものとなり、同一の貯留槽内での穀物の除湿乾燥に乾燥ムラが生じない。
【0015】
投入された穀物用貯留槽内において所定の乾燥処理を受けた穀物は、搬出部を構成するボトムンコベアから調整タンク、籾摺機など従来と同じ搬出部を経て取り出される。
本発明による穀物乾燥処理施設においては、乾燥処理の過程において穀物が複数の貯留槽の間を移動することはない。そのために、従来の処理施設におけるように貯留穀物を排出して空になったビンに対する送風を中止し穀物を貯留したビンには送風を開始あるいは継続して行うためのシステムなども不要であり、当然に搬送中に穀物が経路外にこぼれ出たり搬送経路につまったりすることもない。それにより、システムの稼働中作業者がシステム全体をウオッチングすることが不必要となり、穀物の乾燥処理施設の無人化運転が事実上可能となる。また、穀物を搬送路に沿って長い距離搬送する過程において穀物に損傷が生じる恐れも回避できるとともに、ローテーションに風をとられないことから、除湿空気の全量を乾燥に関与させることが可能となる。
【0016】
なお、本発明による穀物乾燥処理施設において、前記のように、空気の供給路に接続する穀物用貯留槽であって前記攪拌装置を有しない穀物用貯留槽、あるいは空気の供給路に接続しない穀物用貯留槽であって前記攪拌装置を有しない穀物用貯留槽を付設する場合には、乾燥処理終了後の穀物あるいはほぼ終了した穀物を攪拌装置を有する貯留槽から上記のような攪拌装置を有しない貯留槽に移転させ、空となった攪拌装置を有する貯留槽をさらに未乾燥穀物の乾燥処理の目的で用いることが可能となり、穀物乾燥処理施設全体としての運転効率がさらに向上する。
【0017】
また、空気の供給路に接続する穀物用貯留槽であって攪拌装置を有する穀物用貯留槽および有しない穀物用貯留槽においては、乾燥処理の終了後あるいは必要なときにシャッタを閉塞するなどの手段により空気の供給路との接続を絶ち、そのまま穀物の貯留槽として用いうることは通常の除湿乾燥施設の場合と同様である。
【0018】
【実施例】
以下、図面を参照した実施例の説明により本発明をさらに詳細に説明する。
図1は本発明による穀物乾燥処理施設を概略示したものであり、前記図18において示したと同様に搬入側には、穀物集荷用の荷受けホッパー(1)、荷受け昇降機(2)、中継ぎコンベア(3)、粗選機(4)、計量機(5)などからなる穀物搬入部が設けられ、また搬出側には、調節タンク(6)、籾摺機(7)、揺動選別機(8)、出荷タンク(9)などからなる穀物搬出部が設けられる。
【0019】
これら搬入部と搬出部との間に互いに隣接して複数の穀物用貯留槽(図示のものにおいてはA1〜A7およびB1〜B7からなる2系列を有している)が配置され、荷受けされた穀物は該計量機(5)により所定量(例えば300kg)毎計量された後にビン投入エレベータEからトップコンベアTC介して、所定の穀物用貯留槽(A1〜A7およびB1〜B7)に順次投入される。
【0020】
この実施例において、少なくとも後記する攪拌装置を取り付けた穀物用貯留槽は角型の穀物用貯留槽であり、その下方部は除湿空気の供給路Pを形成しており、該除湿空気の供給路Pは従来知られた空気調和装置(20)、送風機(21)に接続していて、除湿空気が供給される。穀物用貯留槽群A1〜A7およびB1〜B7の下方にはボトムコンベアBCが設けてあり、処理済の穀物は該ボトムコンベアBCから前記ビン投入エレベータEに送られその上方部から切替え弁を介して調節タンク(6) に搬送され、以下穀物搬出部を順次通過して施設外に運ばれる。
【0021】
図2は本実施例による穀物乾燥処理施設の一例の主要部を示す上面図であり、角型の穀物用貯留槽A1〜A7およびB1〜B7が互いに近接して2列に配列している。列Aと列Bからなる穀物用貯留槽群の図において右側(以下便宜上、前方側という)近傍には前記した穀物搬入部および搬出部を構成する各部材が配置されており、左側(以下便宜上、後方側という)近傍には前記した空気調和装置(20)、送風機(21)とが各列毎に配置されている。穀物用貯留槽群の前方側であって列Aと列Bとの間の位置には前記したビン投入エレベータEが1機配置されており、さらに、列Aと列Bの中間位置であって穀物用貯留槽の上端部よりも上方位置には前記トップコンベアTCが1機配置されていて、該トップコンベアTCの前方端(上流端)は前記ビン投入エレベータEの上方放出口の下方位置に位置している。図2には示されないが、穀物用貯留槽の下端部よりも下方位置には前記ボトムコンベアBCが設けてあり、その前方端(送り下流端)はビン投入エレベータEの穀物投入口近傍に位置している(図1も参照されたい)。
【0022】
トップコンベアTCには各穀物用貯留槽A1〜A7およびB1〜B7に対応して開閉弁(図示されない)付きの穀物投入口TC1・・が設けてあり、また、各穀物用貯留槽の下方部分には後記するように穀物取出口8・・が前記ボトムコンベアBCに近接する位置に配置されている。それらの開口の開閉は適宜の制御機構を介して行われる。
【0023】
本発明において、各穀物用貯留槽には槽内の穀物を少なくとも上下方向に攪拌するための攪拌装置100が取り付けられている。この攪拌装置は貯留槽内の穀物を上下方向に実質的に均一に攪拌できるものであれば任意であるが、本出願人がすでに開発し「穀物用貯留槽のに攪拌装置」としてすでに出願している(特願平5−168207号など)ものが特に有効に機能する。以下、図3〜図17を参照しつつ攪拌装置および攪拌装置を取り付けた1つの穀物用貯留槽について説明する。
【0024】
図3は本発明において好適に用いられる穀物用貯溜槽の攪拌装置の一例を概略的に示している。この攪拌装置100は、図3に示されるように、横断面が正方形(ここでは縦横がそれぞれ4m程度)の角型の穀物用貯溜槽1上に設置される。穀物用貯溜槽1は、図4に示すように前後の側壁部2、3(仕切り壁部)と左右の側壁部4、5と底壁部6とからなっている。底壁部6は、穀物取出口8が設けられるとともに、例えば目の細かいメッシュ部材が用いられる等して図示は省略されているが、乾燥用の気体(除湿空気)を吹き出す無数の細孔状の通気孔が穀物取出口8にその吹き出し口を向けるようにして形成されており、穀物排出時は方向性を持った風流で穀物を上記穀物取出口8に集めて排出するようになっている。
【0025】
上記攪拌装置100は、一対の車輪10aが両端に取り付けられた狭幅枠形の第1の台車10を有している。この第1の台車10は、穀物用貯溜槽1の左右の側壁部4、5間を橋絡するように、側壁部4、5上に設置された枠状のレール付きフレーム12における左右一対のレール部14、15に走行可能な状態で乗架されている。この第1の台車10においては、図9の正面図をも参照すればよくわかるように、左右両側端に一対の車輪10a、10aが設けられた左右で一対のL字形の車輪支持部10fと本体部10Aの両端に設けられた支持壁部10dとを貫通するように後述するスプロケットホイール53、54の回転軸53a、54aがベアリング75、76を介して挿通せしめられており、この第1の台車10の本体部10A全体が上記回転軸53a、54aを枢軸として走行方向に沿って揺動し得るようにされている。
【0026】
また、第1の台車10には、それに設けられた前後一対のレール部18、19に第2の台車20が走行可能な状態で搭載されており、この第2の台車20の走行方向で見た両端には一対の車輪20a、20aが設けられるとともに、その両端近傍には、該槽1内の穀物を上下方向に攪拌するための2本のオーガー23、24が配されている。このオーガー23、24は自然状態では穀物用貯溜槽1内に鉛直に垂下されて軸受ブラケット17(図5)の軸受部17aに軸支された状態で該第2の台車20に搭載された攪拌用のモーター21、22によりベルト・プーリ式動力伝達機構28、29を介して回転駆動されるようになっている。
【0027】
そして、この例においては、第1の台車10を穀物用貯溜槽1における前後の側壁部2、3間を横切る方向に往復動させる第1の走行駆動機構30と、第2の台車20を上記左右の側壁部4、5間を横切る方向に往復動させる第2の走行駆動機構40と、が備えられている。
第1の走行駆動機構30は、フレーム12における、穀物用貯溜槽1の左側壁部4両端上隅部上に配された一対のスプロケットホイール31A、32A及びそれに巻き架けられて前後方向に回転(循環移動)するようにされた無端環状の走行用チェーン33とからなる左側巻掛伝導装置30Aと、この巻掛伝導装置30Aをチェーン式動力伝達機構49を介して駆動するギアードモーター36と、フレーム12における、穀物用貯溜槽1の右側壁部4両端上隅部上に配された一対のスプロケットホイール31B、32B及びそれに巻き架けられて前後方向に回転(循環移動)するようにされた無端環状の走行用チェーン34とからなる右側巻掛伝導装置30Bと、左右のスプロケットホイール32A−32Bを連結するドライブシャフト48と、走行用チェーン33、34と第1の台車10の両側部とを連結する第1のターンアーム45、46と、からなっている。
【0028】
上記第1のターンアーム45、46は、同一構成とされており、左側面(図3のA矢視図)を表す図5及び右側面(図3のB矢視図)を表す図6〜図8を参照すればよくわかるように、一端側寄りに長穴42が形成されてこの長穴42に第1の台車10に固定されたピン44が遊挿されるとともに、他端側が走行用チェーン33、34の特定ヶ所に相対回転可能にピン47で連結され、上記ピン44を支点にして旋回可能とされるとともに、該ピン44に案内されて長手方向に沿ってスライドできるようにされている。
【0029】
なお、上記走行用チェーン33、34は、その上半分(往路部分)がチェーンガイド73により支承案内されるとともに、第1の台車10の前記した車輪支持部10fに回転可能に配されたアイドラー38、39と動力取出用のスプロケットホイール53及びアイドラーとされるスプロケットホイール54(いずれも後述)にも掛け回されており、一定の張力が得られるようにされている。
【0030】
一方、第2の走行駆動機構40は、前記した図9をも参照すればよくわかるように、第1の台車10の左端側において上記車輪支持部10f及び支持壁部10dを貫通するように配されて左側の走行用チェーン33に噛合し、それとの相対速度差に応じて回転せしめられるようにされた動力取出用のスプロケットホイール53(この回転軸53a(図10、図11参照)が前記のように本体部10Aの支軸となる)と、このスプロケットホイール53が継手を介して連結された入力軸55及びこの入力軸55のトルクが伝達される出力軸56を有する、第1の台車10の左端部に設けられた台座部10c上に設置された減速用のギヤボックス57と、上記出力軸56に固定されたスプロケットホイール51及び第1の台車10に取り付けられたブラケット10eに回転可能に軸着されたスプロケットホイール52、59とそれらのスプロケットホイール51、52、59に巻き掛けられて穀物用貯溜槽1の左右方向に回転(循環移動)するようにされた無端環状の横移動用チェーン58とからなる第2の巻掛伝導装置40Aと、一端側が第2の台車20(の仕切りガイド板67)に相対回転可能に連結され、他端側が横移動用チェーン58の特定ヶ所に相対回転可能に連結された第2のターンアーム65と、からなっている。
【0031】
なお、上記ギヤボックス57の出力軸56の位置、すなわちスプロケットホイール51の位置は第2の台車20の左端部近傍とされているが、もう一方のスプロケットホイール52は第1の台車20の中央部、すなわち穀物用貯溜槽1を左右に2分割する縦断面上に位置するようにされている。
また、第2の台車20における第2のターンアーム65と横移動用チェーン58との間には仕切りガイド板67が配設されており、この仕切りガイド板67には、第2のターンアーム65の中央部近傍に突設されたピン68が挿入された円弧状の長穴69が形成されおり、この長穴69は、第2のターンアーム65の第2の台車20側の連結部を支点とする上下方向の揺動を規制する役目を果たす。
【0032】
以上のような基本構成に加えて、本実施例の攪拌装置100においては、第1の台車10の本体部10Aに搭載された第2の台車20に傾斜検出機構60が設けられている。この傾斜検出機構60は、図9及び図10、図11を参照すればよくわかるように、第2の台車20の幅方向に橋架された取付板63にボルト63a、63bにより固定された一対の水銀スイッチ61、62を備えている。この水銀スイッチ61、62は、底面が内側に凹む低い山形状とされてそれぞれに2つの溜部61A、61B及び62A、62B(図12に水銀スイッチ62を代表して示す)を持つ容器66A、66Bを有し、この容器66A、66Bが前記した第1の台車10の本体部10Aの揺動支軸とされるスプロケットホイール53、54の回転軸53a、54aの中心を通る鉛直面gを挟んで対称的にかつ互いに対向する側が下側となるように水平面に対して若干傾斜した状態で配され、それらの容器66A、66Bにおいて下側に位置する溜部61A、62Aに水銀64が溜められている。そして、充填された水銀64の側部に接するように第1の電極61a、62aが設けられるとともに、水銀64の底面に接するように上記第1の電極61a、62aから離隔して第2の電極61b、62bが設けられている。
【0033】
この水銀スイッチ61、62は、オーガー23、24が鉛直状態にあるときには、図12Aに示されるごとくに、溜部62A(61A)が溜部62Bより若干下側となるように取り付けられているので、水銀64は溜部62A側に位置し、この状態は、鉛直面gに対する容器66A、66Bすなわちオーガー23、24及びそれが取り付けられた第2の台車20を含む第1の台車10の本体部10A全体の傾斜(揺動)角度θが所定の値(例えば15°)に達するまで続く(図12B、図12C)。このように傾斜角度がθが所定値未満のときには、水銀64が第1の電極61a、62a及び第2の電極61b、62bの両方に接し、この第1の電極61a、62aと第2の電極61b、62bとがそれぞれ水銀64を介して電気的に接続(ON)される。それに対し、図12Dに示されるごとくに、上記傾斜角度θが所定値以上となったときには、水銀64が溜部62A(61A)から溜部62B(61B)へ移動し、電極62a−62b(61a−61b)間が電気的に遮断(OFF)される。このように電極間が遮断された状態は図12E、図12F、図12Aに示されるごとくに、再びオーガー23、24を含む第1の台車10の本体部10Aが鉛直状態に復元するまで続くようなっている。
【0034】
そして、図13に簡略に示されるごとくに、台車走行用のモーター36及びオーガー23、24駆動用のモーター21、22への電力供給を行う制御ユニット50に、上記水銀スイッチ61、62の第1の電極61a、62aがそれぞれ配線69a、69bにより接続されるとともに、第2の電極61b、62b相互が配線69cにより接続されている。この接続形態は、言い換えれば、水銀スイッチ61、62が電源を含む制御ユニット50に対して直列に配置されていることになる。
【0035】
したがって、それらの水銀スイッチ61、62の両方がON状態のときには、制御ユニット50からの信号(電流)が順次配線69a、水銀スイッチ61の第1の電極61a、容器66A内の水銀64、水銀スイッチ61の第2の電極61b、配線69c、水銀スイッチ62の第2の電極62b、容器66B内の水銀64、水銀スイッチ62の第1の電極62a、配線69b、を通って流れ、水銀スイッチ61、62の少なくとも一方がOFF状態のときには上記信号電流が遮断されることになる。
【0036】
なお、ここでは水銀スイッチ61、62が取付板63に水平面に対して若干傾斜した状態で取り付けられているが、その取付角度は上記ボルト63a、63bを緩めて容器66A、66Bを回転させることにより適宜変更することができ、それによって、該水銀スイッチ61、62がON状態からOFF状態に切り変わる傾斜角度θ及びOFF状態からON状態に復帰する角度を任意に設定できる。
上記のような水銀スイッチ61、62を備えた傾斜検出機構60から得られる信号(のON−OFF)に基づいて、制御ユニット50は台車台車走行用のモーター36への電力供給を選択的に断接するようにされている。
【0037】
〔上記攪拌装置の動作、作用、効果〕
上述のような構成とされたこの攪拌装置100においては、それをセットする際、例えば、第1の台車10を前側壁部2に最も近い位置に寄せるとともに、第2の台車20を第1の台車10の最も左端に寄せておき、第1のターンアーム45及び第2のターンアーム65のチェーン33、58側の軸着部をそれぞれ例えばスプロケットホイール32A、32B及び51における側端付近に位置させておく。このようにすると、第2の台車20に配されたオーガー23、24は、初期位置が図14において符号S、S’で示されるごとくに、前側壁部2の左コーナー部付近と貯溜槽1を左右に2分割する縦断面上に位置することになる。
【0038】
その状態で、前記図1、図2で説明したように穀物搬送部を構成する計量機(5)からの穀物をビン投入エレベータEからトップコンベアTCを介して、穀物用貯留槽1に投入する。例えは、先ず穀物用貯留槽A1に投入し、貯留槽に設けたレベルスイッチなどの手段により穀物用貯留槽A1に所定量投入されたことを検知し、人手によりあるいは適宜の制御機構により、トップコンベアTCに設けた穀物投入口TC1を切替え、次に穀物用貯留槽B1に投入を開始する。以下、順次その工程を繰り返してその日に搬入された穀物の貯留槽への貯留を終了する。
【0039】
その段階で、空気調和装置(20)、送風機(21)を作動させ、除湿空気の供給路Pから貯留槽1への除湿空気の供給を開始する。それと前後して走行用のモーター36及び攪拌用のモーター21、22を起動する。そうすると、図3及び図5に示されるごとくに、第1の巻掛伝導装置30A、30Bが作動し、第1の台車10が第1のターンアーム45、46を介して走行用チェーン33、34に引っ張られて該チェーン33、34と同じ速度で前後の側壁部2、3間を横切る方向に走行(前進)するとともに、オーガー23、24が回転して貯蔵穀物の攪拌作業を行いつつ第1の台車10及び第2の台車20と共に移動する。
【0040】
このときには、第1のターンアーム45、46と走行用チェーン33、34との連結部がチェーン33、34の上半分(往路部分)の位置にあるので、動力取出用のスプロケットホイール53は、チェーン33、34の往路部分と下半分(復路部分)とが逆方向に移動している関係上、第1の台車10の前進速度にチェーン33、34の移動速度を加算した回転速度、すなわちチェーン33、34の移動速度の2倍の速さで回転せしめられる。
【0041】
動力取出用のスプロケットホイール53が回転すると、そのトルクがギヤボックス57を介して第2の巻掛伝導装置40に伝達され、図9に示されるごとくに、第2の台車20が第2のターンアーム65を介して横移動用チェーン58の上半分(往路部分)に押されて該チェーン58と同じ速度で左右の側壁部4、5間を横切る方向に走行(横移動)する。この場合、第2の台車20の横移動速度は、動力取出用のスプロケットホイール53の回転がギヤボックス57で大きく減速されるので、第1の台車10の走行速度よりかなり遅くされる。
【0042】
このようにして、第1の台車10が走行用チェーン33、34の往路部分に引っ張られているときには、第2の台車20に配されたオーガー23、24の軌跡は上から見ると左右の側壁部4、5に対して第1の台車10と第2の台車20との速度比に応じた傾斜角度をもつものとなる(図14参照)。
そして、上記のように第1の台車10が走行しているとき(上記往路と後述の復路のいずれも)には、オーガー23、24に走行方向とは逆向きに貯溜穀物の抵抗が作用し、この抵抗に応じて、第1の台車10の本体部10Aが、図5(鎖線)及び図11に示されるごとくに、第2の台車20及びオーガー23、24を伴った状態で動力取出用のスプロケットホイール53及びアイドラーとされるスプロケットホイール54の回転軸53a、54aを枢軸として進行方向で見てオーガー23、24の下端が遅れるように揺動して鉛直面に対して傾斜し、本体部10Aが傾斜した状態で第1の台車10及びそれに搭載された第2の台車20が走行することになる。
【0043】
なお、第1の台車10の本体部10Aには、該第1の台車10の本体部10A全体の重量(第2の台車20やオーガー23、24の重量を含む)に加えて、オーガー23、24が貯溜穀物を下層から上層へ移し替えるように攪拌していることから、その攪拌作用の反作用が第2の台車20を介して加えられ、本体部10Aには鉛直下向きに比較的大きな荷重が与えられるので、貯溜穀物の抵抗が小さい場合には、第1の台車10はさほど傾斜しない。また、第2の台車20の横移動のスピードは上記のように遅くされているので、オーガー23、24に作用する貯溜穀物の抵抗のうち、第2の台車20の横移動方向とは逆方向に作用する成分は極めて小さく、無視しても差し支えない。
【0044】
上記に加え、この例においては、オーガー23、24(第2の台車20及び第1の台車10の本体部10A)の鉛直面gに対する傾斜角度θが例えば15°以上になったときには、前記したように水銀スイッチ61、62のいずれかがOFF状態となり、それが制御ユニット50に検知されて、制御ユニット50から台車走行用のモーター36への電力供給が所定の期間停止されて第1の台車10及び第2の台車20がその位置で停留するするようにされる(この点については後で詳しく説明する)。
【0045】
そして、走行用チェーン33、34と第1の台車10とを連結する第1のターンアーム45、46とチェーン33、34との連結部が図6及び図7(図3のB視図)の右側面図で代表して示されるごとくに、スプロケットホイール31A、31Bにおける側端付近まで来ると第1の台車10にチェーン33、34の引っ張り力が作用しなくなるので第1の台車10は停止する。この場合、第1の台車10は停止してもチェーン33、34は移動しているので、第1のターンアーム45、46は、該チェーン33、34に引っ張られて、図7において一点鎖線で示されるごとくに、長穴42がピン44に案内されて下向きスライドしつつピン44を支点にして旋回し、次いで上向きスライドしつつ旋回して、図7において実線で示されるごとくに、再び第1の台車10がチェーン33、34に第1のターンアーム45、46を介して引っ張られる状態となる。
【0046】
このように第1のターンアーム45、46のみがチェーン33、34に引っ張られて第1の台車10が停止している期間は、オーガー23、24は、後側壁部3に最接近した位置から離れることはない。従って、かかる第1の台車10の停留期間には、オーガー23、24により貯溜槽1の後側壁部3の近傍に位置する穀物がその停留時間に応じて上下方向に充分に攪拌されることになる。
【0047】
続いて、第1のターンアーム45、46が図7において実線で示される位置まで旋回して、長穴42の底部がピン44に当たると、第1の台車10が第1のターンアーム45、46を介してチェーン33、34の下半分(復路部分)に引っ張られてその走行方向が反転し、前側壁部2方向に走行する。このときには、チェーン33、34の移動速度と第1の台車10の移動速度は同一であることから、動力取出用のスプロケットホイール53とチェーン33、34との相対速度差が0となり、動力取出用のスプロケットホイール53は回転しないので、第2の台車20は横移動せず、停止したままとなる。それにより、第2の台車20に配されたオーガー23、24の軌跡は上から見ると左右の側壁部4、5に対して平行な直線を描くことになる(図14参照)。
【0048】
そして、第1の台車10が上述とは反対側のスプロケットホイール32A、32B近傍まで来ると、図8に示されるごとくに、第1の台車10に第1のターンアーム45、46を介してのチェーン33、34の引っ張り力が作用しなくなるので、前記した場合と同様に、第1の台車10は停止する。この場合も、第1の台車10は停止してもチェーン33、34は移動しているので、第1のターンアーム45、46は、該チェーン33、34に引っ張られて、図8において一点鎖線で示されるごとくに、長穴42がピン44に案内されて下向きスライドしつつピン44を支点にして旋回し、次いで上向きスライドしつつ旋回して、図8において実線で示されるごとくに、再び第1の台車10がチェーン33、34に第1のターンアーム45、46を介して引っ張られる状態となる。
【0049】
このように第1のターンアーム45、46のみがチェーン33、34に引っ張られて第1の台車10が停止いる期間は、動力取出用のスプロケットホイール53が回転せしめられるので、第2の台車20はわずかに横移動するが、オーガー23、24は、前側壁部2に最接近した位置からは離れるはことない。従って、かかる場合も台車10の停留期間には、オーガー23、24により前側壁部2の近傍に位置する穀物が上下方向に充分に攪拌されることになる。
【0050】
そして、第1の台車10及び第2の台車20は、引き続き上述と同様に走行移動するので、オーガー23、24は、図14に示されるごとくに左右方向にジクザク状の軌跡を描いて移動する。この場合、第2のターンアーム65と横移動用チェーン58との連結部が第1の台車10の中央部に配されたスプロケットホイール52の側端まで来ると、その連結部が横移動用チェーン58の下半分(復路部分)に位置することになるので、第2の台車20が第2のターンアーム65を介して押される状態から引っ張られる状態に変化し、第2の台車20の移動方向が反転する。この反転時には、オーガー23、24は、例えば図14において符号e、e’で示されるごとくに、貯溜槽1の中心と右側壁部5中央に近接した部位に位置し、以後は図の一点鎖線で示されるごとくに、それまでの軌跡(実線)に対して対称的な軌跡を描いて移動することになる。
【0051】
なお、この例においては、オーガー23、24は、図14に示されるごとくに、左右の側壁部4、5に対しては距離La、Lb(約20cm程度)まで近づけられ、前後の側壁部2、3に対しても距離Lc、Ld(約20cm程度)まで近づけられてそこで前記のように停留せしめられ、また、第1の台車10が前側壁部2と後側壁部3との間を横切る方向に走行する間に距離Le、Lf(30cm程度)だけ左右方向に移動せしめられる。なお、かかる軌跡は一例であってオーガー23、24の移動パターンは貯蔵穀物の乾燥状態等に応じて適宜変更できる。
【0052】
このような構成を有するこの例の攪拌装置100においては、第1の台車10を走行させる第1の走行駆動機構30に備えられるモーター36の動力の一部が動力取出用のスプロケットホイール53を介して第2の台車20を横移動させる第2の走行駆動機構40に伝達されるので、第1の台車10と第2の台車20を相互に直交する方向に走行させ得、動力源の共用化が図られる。従って、単一の動力源36で第2の台車20に設けられたオーガー23、24を貯溜槽1の前後方向に移動させながら左右方向にも移動させることができ、貯溜槽1内の穀物を全域にわたって等しく上下方向に攪拌することが可能となる。
【0053】
また、第1の走行駆動機構30が第1の台車10を前後の側壁部2、3近傍にて所定の期間停留させるようにされているので、オーガー23、24を近づけることが難しい貯溜槽1の内壁面の近傍に位置する穀物をも充分に攪拌することができる(これについては、後でさらに詳述する。)
さらに、第1の走行駆動機構30が巻掛伝導装置30A、30Bと特定形態のターンアーム45、46とで構成されているので、リミットスイッチ等の制御部品を使用することなく、第1の台車10を側壁部2、3近傍にて所定の期間停留させることができるとともに、2つの台車10、20の走行移動方向を反転することができ、動力源の共用化を図れることと相まって全体が簡素で合理的な構成となり、装置コストの低減化が図られる。
【0054】
そして、上記したように、この例の攪拌装置100にあっては、第1の台車10の本体部10が第2の台車20及びオーガー23、24を伴った状態で走行方向に沿って揺動し得るようにされていることから、オーガー23、24の軸受部17a(図5、図9)等に過大な荷重が加えられる以前に第1の台車10が進行方向とは逆方向に揺動し、鉛直面に対して傾斜せしめられるので、その軸受部17a等やオーガー23、24自体に作用する外力が緩和され、その結果、それらが破損し難くなり、装置の信頼性が向上する。
【0055】
また、第1の台車10は上記のように前後の側壁部2、3に最接近した位置で停止せしめられるが、かかる停止時点では、第1の台車10の本体部10A、第2の台車20及びオーガー23(24)は図15の実線で示されるごとくに鉛直面に対して傾斜した状態になっている。しかし、第1の台車10は所定の期間、側壁部2に最接近した状態で自動的に停留せしめられるので、この停留期間中にオーガー23、24は回転しながら自重と攪拌作用の反作用により図の白抜き矢印Pで示される方向に貯溜穀物Kをかき分けるようにして図の一点鎖線で示されるごとくに鉛直線に沿うように復元する。
【0056】
従って、上記実施例のように第1の台車10を側壁部2、3近傍にて所定の期間自動的に停留させるようにしたもとでは、オーガー23、24の下端と側壁部2、3との離間距離Gは極めて小なるものとされる。それに対し、第1の台車10を停留させずに直ちに反転走行させるようにした場合には、図の二点鎖線で示されるごとくに、オーガー23、24の下端側はさほど移動せず、上端側のみが白抜き矢印Qで示される方向に移動し、オーガー23、24の下端と側壁部2、3との離間距離Hは極めて大なるものとされる。
【0057】
このことから、上記例のように側壁部2、3近傍にて所定の期間停留させるようにした場合には、直ちに反転走行させるようにした場合に比して、オーガー23、24全体(特に下端部)を側壁部2、3により近接させることができ、乾燥遅れの生じやすい側壁部2、3近傍に位置する穀物Kを確実かつ充分に上下方向に攪拌することが可能となる。
【0058】
それに加えて、この例では、オーガー23、24の鉛直面gに対する傾斜角度θが所定値以上になったとき、水銀スイッチ61、62のいずれかがOFF状態となってそれが制御ユニット50により検知され、水銀スイッチ釦61、62が再び共にON状態となるまでの期間、モーター36への電力供給が停止されて第1の台車10及び第2の台車20が停留せしめられる。このときには、図16の実線で示されるごとくに、台車10、20が走行移動している際には、オーガー23、24が貯溜穀物Kの抵抗によって揺動して傾斜した状態にあってオーガー23、24の下端と貯溜槽1の底壁部6との間に大きな隙間hが生じていても、台車10の停留時に、上記側壁部2、3に最接近したときと同様にオーガー23、24が回転しながら自重と貯溜穀物を上下方向に積み替える際の攪拌作用の反作用を受けて図の鎖線で示されるごとくに貯溜穀物をかき分けるように鉛直面に沿う姿勢となるまで揺動して復元し、それに合わせて水銀スイッチ61、62も自動的にON状態に復帰する。そのため、オーガー23、24が傾斜した状態では届かない底壁部6付近(最下層)の穀物をも上層に積み替えることが可能となり、貯溜穀物の攪拌を均一に行うことができる。
【0059】
ここで、オーガー23、24が鉛直面gに対して所定角度以上傾斜したこと及び鉛直状態に復元したことが水銀スイッチ61、62により自動的に検出され、制御ユニット50により第1の台車10及び第2の台車20の走行停止及び走行再開が自動的に行われるのであるが、この場合、オーガー23、24が傾斜した状態から鉛直に復元するまでに要する時間は貯溜穀物の性状や堆積高さ等に応じたものとなる。そのため、最適な台車停留期間がタイマー計測等を必要としないで自動的に定められることになる。このことは、オーガー23、24が所定角度以上傾斜した状態から鉛直に復元するまでの時間、すなわち、台車10、20を停留させておくべき期間を別途に貯溜穀物の性状や堆積高さ等を勘案して設定しておく必要がないことを意味しており、しかも、台車停留期間を別途に設定することは貯溜穀物の性状や堆積高さ等が一様ではなくそれらを正確に把握することが現状では極めて難しいことを考慮すると、上記のように最適な停留期間が自動的に得られることは、貯溜穀物の攪拌性が向上するだけでなく装置の信頼性が著しく高められることになる。
【0060】
それに加えて、オーガー23、24が鉛直面に対して所定角度以上傾斜したことが水銀スイッチ61、62を備えた傾斜検出機構60により検知されて、台車10、20の走行停止−走行再開が自動的に行われることから、上記のように下層の穀物の未攪拌量を低減できる他、台車10、20の過剰揺動により生じる不整走行や脱輪等も防止でき、水銀スイッチ61、62を備えた傾斜検出機構60や制御ユニット50が安全装置としても働く。
【0061】
なお、水銀スイッチ61、62のいずれか一方がON状態からOFF状態となる傾斜角度θ及びOFF状態からON状態となる角度の値、すなわちオーガー23、24の許容最大揺動角度や台車10、20の停留時間等は、水銀スイッチ61、62の取り付け角度を調整することで任意に設定することができ、それにより、台車走行用のモーター36の速度を変えることを要しないで、オーガー23、24を側壁部2、3間において貯溜穀物の性状や堆積高さ等に応じた速度で移動させることができ、台車10の走行速度を可変にした場合と実質的に同じ効果が得られる。
【0062】
〔変形例〕図17
ところで、上記の例においては、第1の台車10の走行時に、第1の台車10の本体部10A,第2の台車20,及びオーガー23,24が鉛直面に対して一体的に揺動し得るようにされているが、必ずしも第1の台車10の本体部10A等を上記のように揺動可能としなくともよい。第1の台車10の本体部10A,第2の台車20,及びオーガー23,24が揺動しないように構成されている場合には、貯蔵穀物の性状や堆積高さ等によっては、台車10,20と共に移動するオーガー23,24がその貯蔵穀物から比較的大きな抵抗を受けて撓む(湾曲する)ことがある。そして、オーガー23,24が湾曲した状態であっても、台車10,20は上記のようにそのオーガー23,24を伴って移動することになる。この場合、例えば、第1の台車10は前後の側壁部2,3近傍で上記したように走行停止状態にされるが、かかる停止時点では、オーガー23(24)は図17の実線で示されるごとくに湾曲した状態になっている。しかし、第1の台車10は所定の期間、側壁部2に最接近した状態で停留せしめられるので、この停留期間中にオーガー23,24は回転しながらそれ自体が持つ弾性により図の白抜き矢印Pで示される方向に貯溜穀物Kをかき分けるようにして図の一点鎖線で示されるごとくに鉛直線に沿うように復元する。
【0063】
従って、この場合も、オーガー23,24の下端と側壁部2,3との離間距離Gは極めて小なるものとされる。それに対し、第1の台車10を停留させずに直ちに反転走行させるようにした場合には、図の二点鎖線で示されるごとくに、オーガー23,24の下端側はほとんど移動せず、上端側のみが白抜き矢印Qで示される方向に移動し、オーガー23,24の下端と側壁部2,3との離間距離Hは極めて大なるものとされる。そのため、上記のように側壁部2,3近傍にて所定の期間停留させるようにしたもとでは、たとえ本体部10A等が揺動しないように構成されていたとしても、オーガー23,24全体を側壁部2,3により近接させることができ、乾燥遅れの生じやすい側壁部2,3近傍に位置する穀物を確実かつ充分に攪拌することが可能となる。
【0064】
さらに、上記のように本体部10A等が揺動しないように構成されていて、オーガー23,24が湾曲した状態で台車10,20が走行すると、貯溜槽1の底部付近の穀物が充分に攪拌されないことになる。この場合には、前記第1の例のように水銀スイッチ61,62等で本体部10A等の傾斜角度を検知することはできないので、貯溜穀物からオーガー23,24が受ける抵抗を勘案して、第1の台車10を前後の側壁部2,3間を走行しているときに適宜所定の期間停止させるようになせばよい。このようになせば、台車10の停止時にオーガ23,24が上記側壁部2,3近傍にあるときと同様に鉛直線に沿うように復元するので、オーガー23、24の下端と貯溜槽1の底壁部6との間に形成される隙間hが小さくなり、貯溜槽1の底部付近の穀物をも充分に攪拌することが可能となる。
【0065】
なお、台車10の停止位置,停止期間等の制御は、例えば、貯溜穀物の乾燥度合等に応じてモーター36を所定期間駆動した後所定期間停止させる方法や、オーガー23,24に作用する穀物の抵抗を例えば圧電素子等を用いて検出し、その抵抗が設定値を越えたときに台車10を停止(モーター36を停止)する方法等、種々考えられる。
【0066】
また、上記した第1の例においては、オーガーを2本備えたものを示したが、貯溜槽の大きさによっては1本でもよく、当然ながら任意に選定できる。
また、オーガー23、24が鉛直面gに対して所定角度以上傾斜したことを検出する傾斜検出機構60としては、上記のような水銀スイッチ61、62を利用したものに限られる訳ではなく、既知の種々のセンサ、スイッチ類を使用することができる。
【0067】
本発明の穀物乾燥処理施設における好ましい態様においては、上記した攪拌装置を持つ複数の穀物用貯留槽A1〜A7およびB1〜B7が図1および2に示すように互いに接する状態で2列状に配置される。従って、各貯留槽内の穀物は常に上下方向の攪拌を受けることとなり、従来の乾燥処理施設におけるようにいわゆるローテーション作業を行わなくとも、除湿空気の供給による乾燥過程において槽内の穀物に乾燥むらが生じることなく、所望の乾燥処理を終了することができる。また、乾燥処理終了後の穀物をそのまま貯留しておくことも可能となり、従来のように、乾燥ビン、入れ替え瓶、貯留ビンというように複数種のビンを用意する必要がなく、遊休ビンも無くすことができ、施設費および維持費の全体としてのコストダウンとなる。
【0068】
また、本発明による穀物乾燥装置をもつ処理施設においては、前記のように乾燥処理の過程において穀物は一つの槽内のみを上下に移動するのみであって、複数の貯留槽の間を移動することはない。そのために、当然に搬送中に穀物が経路外にこぼれ出たり搬送経路につまったりすることもなく、システムを常時監視する必要がないことから穀物の乾燥処理施設の無人化運転が可能となる。また、搬送過程において穀物に損傷が生じる恐れも回避できるとともに、ローテーションに風をとられないことから、除湿空気の全量を乾燥に関与させることが可能となり、この点からもコストの低減をもたらす。
【0069】
さらに、本発明による穀物乾燥装置をもつ処理施設においては、上記のようにローテーションを必要としないことから、農家から搬入される穀物を順次あいている貯留槽に充填していくことが可能となり、また処理後の穀物をランダムに貯留槽から取り出し、計量や籾摺などを行うことも可能となる。そのために、図2に示すように、2列をなす貯留槽の中間に1本のビン投入エレベータEとそれに接続する1本のトップコンベアTCおよびボトムコンベアBCを配置するのみで、必要な穀物の搬入、貯留槽への投入、貯留槽からの排出、搬出部への搬入を行うことが可能となり、施設の簡素化を図ることが可能となる。
【0070】
なお、上記した攪拌装置はあくまでも例示であってこれに限るものではない。
すなわち、攪拌装置は貯留槽内の穀物を上下方向に実質的に均一に攪拌できるものであれば任意である。例えば、本出願人の先の出願にかかる、特願平4−302698号、特願平4−315155号、特願平4−317277号、特願平4−349420号、特願平3−349421号、特願平5−022805号、特願平5−022806号、特願平5−027796号、特願平5−042772号、特願平5−168207号、特願平5−197299号などの明細書に開示した攪拌装置は特に有効に適用することができる。
【0071】
さらに、特に図示されないが、複数の穀物用貯留槽は2系列ではなく1系列として配置することも可能であり、その場合には、攪拌装置を持つ角型の穀物用貯留槽群の長手方向の一方側に1機の前記穀物の搬入部などが配置され、他方側には前記除湿空気送風機が配置されるとともに、前記貯留槽群の上方に1本のトップコンベアおよび下方に1本のボトムコンベアが配置される構成となる。また、そのような1系列態様の施設を複数列併設して1つの穀物乾燥処理施設として構成することも可能である。さらに、図示の2系列の穀物用貯留槽群を持つ形式の場合であっても、前記ビン投入エレベタEなどの穀物の搬入部が1機であるこのとは必須でなく、搬入穀物量が多い場合が予想される地区に設置する場合などには、複数機のビン投入エレベタEなどの必要設備を設け、その搬入量に見合う移送量を持つトップコンベアTCを配置することも可能である。
【0072】
また、以上で説明では、穀物用貯留槽にはすべて攪拌装置が取り付けられているものとして説明したが、そのうちのいくつかを攪拌装置を有しない貯留槽としてもよい。その場合には、乾燥処理のほぼ終了した穀物を攪拌装置を有する貯留槽から前記攪拌装置を有しない貯留槽に移送し、空となった攪拌装置を有する貯留槽を再度未乾燥穀物の乾燥処理の目的で用いることが可能となり、穀物乾燥処理施設全体としての運転効率が向上する。
【0073】
さらに、空気の供給路に接続しない穀物用貯留槽であって攪拌装置を有しない穀物用貯留槽をさらに付設するようにしてもよく、その場合には乾燥処理を終えた穀物をそのような貯留槽に移送して貯留することにより、穀物乾燥処理施設全体としての運転効率がさらに向上する。
【0074】
【発明の効果】
本発明による穀物乾燥処理施設によれば、穀物の乾燥過程においていわゆるローテーション作業を必要としないことから、処理施設自体の簡素化と低コスト化に加え、システムの稼働中作業者がシステム全体をウオッチングすることが不必要となり、穀物の乾燥処理施設の無人化運転が事実上可能となる。また、搬送路に沿って長い距離搬送する過程において穀物に損傷が生じる恐れも回避できるとともに、ローテーションに風をとられないことから、除湿空気の全量を乾燥に関与させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による穀物乾燥処理施設の概略説明図。
【図2】本発明による穀物乾燥処理施設の好ましいレイアウトを示す上面図。
【図3】攪拌装置の1例の斜視図。
【図4】攪拌装置が設置される穀物用貯溜槽を示す斜視図。
【図5】攪拌装置の構成及び動作説明に供される図。
【図6】攪拌装置の構成及び動作説明に供される図。
【図7】攪拌装置の構成及び動作説明に供される図。
【図8】攪拌装置の構成及び動作説明に供される図。
【図9】攪拌装置の構成及び動作説明に供される正面図。
【図10】傾斜検出手段の構成の説明に供される図。
【図11】傾斜検出手段の動作の説明に供される図。
【図12】水銀スイッチの動作説明に供される図。
【図13】制御系を簡略に示す図。
【図14】オーガーの移動パターンの一例を示す図。
【図15】台車が側壁部近傍にあるときにおけるオーガーの作用の説明に供される図。
【図16】台車が側壁部間で停留せしめられた際のオーガーの作用の説明に供される図。
【図17】台車が側壁部間で停留せしめられた際のオーガーの作用の説明に供される図。
【図18】従来例による穀物乾燥処理施設の概略説明図。
【図19】従来例による他の穀物乾燥処理施設の概略説明図。
【符号の説明】
E…ビン投入エレベータ、A1〜A7、B1〜B7…穀物用貯留槽、TC…トップコンベア、BC…ボトムコンベア、P…除湿空気の供給路、(20)…空気調和装置、(21)…送風機、100…少なくとも上下方向に攪拌するための攪拌装置
Claims (5)
- 穀物搬入部と、空気の供給路に接続する多数の穀物用貯留槽と、穀物搬入部からこれら穀物用貯留槽に穀物を搬送する搬入部と、空気供給路に除湿空気を送給する除湿空気送風機と、処理を終えた穀物を搬出する搬出部とを備えた穀物乾燥処理施設において、前記穀物用貯留槽のそれぞれには槽内の穀物を少なくとも上下方向に攪拌するための攪拌装置が取り付けられており、前記穀物用貯留槽のうち少なくとも攪拌装置を取り付けた穀物用貯留槽は角型の穀物用貯留槽であり、
前記攪拌装置は、穀物用貯留槽における左右の側壁部間を橋絡するように該両側壁部上に走行可能な状態で乗架された第1の台車と、該第1の台車に横移動可能な状態で搭載された第2の台車と、該第2の台車に取り付けられた状態で前記穀物用貯留槽内に挿入されて回転せしめられる攪拌具と、前記第1の台車を前記穀物用貯留槽における前後の側壁部間を横切る方向に往復動させる第1の走行駆動機構と、前記第2の台車を前記左右の側壁部間を横切る方向に往復動させる第2の走行駆動機構と、が備えられ、
前記第1の走行駆動機構における台車走行用の動力の一部が前記第2の走行駆動機構に伝達されて前記第2の台車の横移動用の動力として用いられるとともに、前記第1の走行駆動機構が前記第1の台車を前記前後の側壁部近傍にて所定の期間停留させるように構成されていることを特徴とする穀物乾燥処理施設。 - 空気の供給路に接続する穀物用貯留槽であって、前記攪拌装置を有しない穀物用貯留槽をさらに有することを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥処理施設。
- 空気の供給路に接続しない穀物用貯留槽であって、前記攪拌装置を有しない穀物用貯留槽をさらに有することを特徴とする請求項1または2記載の穀物乾燥処理施設。
- 少なくとも前記攪拌装置を持つ角型の穀物用貯留槽の複数個が列状に配置された貯留槽群を有し、該貯留槽群の長手方向の一方側には前記穀物の搬入部および搬出部が配置され、他方側には前記除湿空気送風機が配置されており、かつ前記貯留槽群の上方にはトップコンベアおよび下方にはボトムコンベアが配置されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の穀物乾燥処理施設。
- 前記攪拌装置を持つ角型の穀物用貯留槽の複数個が列状に配置された貯留槽群を2列有し、該貯留槽群の長手方向の一方側には前記穀物の搬入部および搬出部が配置され、他方側には前記除湿空気送風機が配置されており、かつ列と列の相対向する部位の上方にはトップコンベアおよび下方にはボトムコンベアが各1機配置されていることを特徴とする、請求項1ないし3いずれか記載の穀物乾燥処理施設。
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