JP3560950B2 - 自走制御装置及びその制御方法、自走装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波発信器の電波到来方向に向かって自動運転する自走装置の自走制御装置及びその制御方法に係り、具体的には、無人搬送車、自動操舵車(ショッピングカート、荷物カート、乳母車など)、ペット型等のロボット、自動掃除機、自動ケーブル敷設車などの自走装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、物流システムなどで使用される無人搬送車は、屋内の場合には床に張られた磁気誘導テープの磁気により、また、屋外の場合には埋設された磁気誘導線の磁気により、誘導されて自動運転し移動する。また、従来のショッピングカート、荷物カート、乳母車などの操舵車においては、それを移動するために人間が手で押したり、引いたりしている。また、掃除機を使用する人は、その掃除機を持って掃除している。また、近年、犬型ロボットや猫型ロボットなどのペット型ロボットが実現され普及してきており、そのオーナーにとってペット型ロボットは、愛玩対象として扱われている。
【0003】
しかし、従来の無人搬送車では、床に張られた磁気誘導テープや埋設された磁気誘導線の磁気により誘導されるので、あらかじめ敷かれた軌道上でしか移動することができない。このため誘導経路を変更する場合には、屋内の場合は磁気誘導テープの張り替えが必要であり、他方、屋外の場合は地面を掘り起こして再度、磁気誘導線を埋設する必要があり、これらの作業が負担であるという問題もあった。このような理由から、携帯型電波発信器の電波到来方向に向かって自動運転し、任意に移動することができる無人搬送車の実現が要望されている。
【0004】
また、従来のショッピングカート、荷物カート、乳母車などの操舵車においては、それを移動するために人間が手で押したり、引いたりする必要があり、その労力が動かす人にとって負担になる場合があった。このため、人間に電波発信器を携帯させて、その携帯型電波発信器の電波到来方向に追従して走行し、手で押したり、引いたりする労力を要さない自動操舵車の実現が要望されている。
【0005】
また、大広間などの床に掃除機をかけることも、掃除する人には労力を要し、負担になる場合があった。このため、人間が掃除機を持って掃除することがないように、広間の両端に電波発信源が移動可能な発信器を設置して、その発信器の電波到来方向に追従して走行し掃除をする自動掃除機の実現が望まれている。
【0006】
また、従来のペット型ロボットではそのオーナーが公園などで一緒に散歩することはできなかった。このため、オーナーの所持している携帯型電波発信器の電波到来方向に向かって歩行し、オーナーと一緒に散歩することができるペット型ロボットの実現が要望されている。
【0007】
このように、移動する電波発信器(例えば、携帯型電波発信器)の電波到来方向に向かって自動運転する自走装置(無人搬送車、自動操舵車(ショッピングカート、荷物カート、乳母車など)、ペット型等のロボット、自動掃除機など)を実現するためには、電波発信器の電波到来方向を知り、この方向を運転制御装置に提供する必要がある。
【0008】
従来、携帯型電波発信器の電波到来方向を知る方法としては、例えば八木・宇田アンテナやパラボラアンテナなどの単一指向性アンテナを機械的に回転させる方法が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の単一指向性アンテナを機械的に回転させる方法では、アンテナを回転させるための駆動装置(モータ等)が必要であり、このためにその装置を小型化あるいは軽量化することが難しいという問題がある。したがって、この従来の方法を自走装置に適用すると、自走装置が大きく、あるいは重くなってしまい、その移動性が悪くなるという問題が生じる虞がある。
【0010】
ところで、電子的に指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナ(エスパアンテナ)装置が、例えば、文献「T.0hira et al. ”Electronically steerable passive array radiator antennas for low−cost analog adaptive beamforming,2000 IEEE International conference on phased Array System & Technology pp 101−104,Dana point,califormia,May 21−25,2000」や、特開2001−24431号公報に記載されており、公知となっている。このエスパアンテナは、無線信号が給電される励振素子と、この励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が給電されない少なくとも1個の非励振素子と、その励振素子に接続された可変リアクタンス素子とからなるアレーアンテナを備え、可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。そして、給電される励振素子から電波を受信することができるものである。
【0011】
このようにエスパアンテナは、電子的にその指向性を制御することができるので、携帯型電波発信器の電波到来方向を知るためにアンテナを回転させる必要がない。したがって、従来のようにモータ等の駆動装置を備える必要がないので、小型化あるいは軽量化に適している。
【0012】
このような理由から、このエスパアンテナにより指向性を変化させて受信した電波に基づいて、電波発信器の電波到来方向を知り、この方向に向かって自動運転することができる自走装置およびその自走制御装置の実現が要望されている。
【0013】
また、効率よく確実に、さらには携帯型電波発信器を持っている操作者や障害物等に追突することなく安全に目的地まで自動運転することができる自走装置およびその自走制御装置の実現も望まれている。
【0014】
また、複数の携帯型電波発信器と少なくとも一つの自走装置からなる自走装置システムを構成した場合に、目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、自動運転することができる自走装置およびその自走制御装置の実現も望まれている。さらには、その自走装置システムを複数同時に運用した場合に、システム間において目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、運用したいという要望もある。
【0015】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、エスパアンテナにより指向性を変化させて受信した電波に基づいて電波発信器の電波到来方向を知り、この方向に向かって自動運転することができる自走制御装置及びその制御方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明は、効率よく確実に、さらには携帯型電波発信器を持っている操作者や障害物等に追突することなく安全に目的地まで自動運転することができる自走制御装置及びその制御方法を提供することも目的とする。
【0017】
また、本発明は、複数の携帯型電波発信器と少なくとも一つの自走装置からなる自走装置システムを構成した場合に、目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、自動運転することができる自走制御装置及びその制御方法を提供することも目的とする。さらには、その自走装置システムを複数同時に運用した場合に、システム間において目的地の誤認識等の混乱をきたすことのない自走制御装置及びその制御方法を提供することも目的とする。
【0018】
また、本発明は、その自走制御装置を備え、小型化あるいは軽量化を実現することができる自走装置を提供することも目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の自走制御装置は、電波発信源の電波到来方向に向かって自走する自走制御装置であって、電子的に指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナと、前記電子制御式アレーアンテナの受信指向性を変化させて受信した電波に基づいて、受信信号の強度の最大方向の角度情報を求める電波到来方向検出手段と、前記角度情報で示される方向へ自走する運転制御手段とを具備することを特徴としている。
【0020】
請求項2に記載の自走制御装置は、請求項1に記載の自走制御装置において、目標の前記電波発信源を特定する識別情報を記憶する電波発信源識別情報記憶手段を備え、前記電波到来方向検出手段は、前記受信信号に含まれる識別情報と前記電波発信源識別情報記憶手段の識別情報とが一致したことを条件として、当該受信信号を電波到来方向の検出に使用することを特徴としている。
【0021】
請求項3に記載の自走制御装置は、請求項1に記載の自走制御装置において、前記受信信号が拡散符号により拡散されて無線伝送される場合において、前記電波到来方向検出手段は、予め設定されている拡散符号により前記受信信号を逆拡散して用いることを特徴としている。
【0022】
請求項4に記載の自走制御装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかの項に記載の自走制御装置において、前記電波到来方向からの受信信号強度またはこの受信信号強度レベルを検出するための信号の変化に基づいて、障害物へ接近したことを検出し、前記運転制御手段へ停止を指示する運転指示手段を具備することを特徴としている。
【0023】
請求項5に記載の自走制御装置は、請求項4に記載の自走制御装置において、前記運転指示手段は、前記電波到来方向からの受信信号強度またはこの受信信号強度レベルを検出するための信号の変化に基づいて、障害物から離れたことを検出し、前記運転制御手段へ運転再開を指示することを特徴としている。
【0024】
請求項6に記載の自走制御装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかの項に記載の自走制御装置において、前記運転指示手段は、前記電波到来方向からの受信信号強度の飽和から発散への変化点を検出し、この検出により目標の前記電波発信源の近くまで到着したと判断して、前記運転制御手段へ停止を指示することを特徴としている。
【0025】
請求項7に記載の自走装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかの項に記載の自走制御装置と、前記自走制御装置の運転制御に従って駆動する駆動手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0026】
請求項8に記載の制御方法は、電波発信源の電波到来方向に向かって自走する自走装置における制御方法であって、電子的に指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナの受信指向性を変化させる過程と、前記受信指向性を変化させて受信した電波に基づいて、受信信号の強度の最大方向の角度情報を求める過程と、前記角度情報で示される方向へ移動するように自走を指示する過程とを含むことを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による自走装置(無人搬送車)と携帯型電波発信器からなる無人搬送車システムの構成を示すブロック図である。この図1に示す無人搬送車システムは、一つあるいは複数の携帯型電波発信器1と、少なくとも一つの無人搬送車4とから構成される。この無人搬送車4は、エスパアンテナ5と、このエスパアンテナ5とケーブル6で接続された送受信装置7と、この送受信装置7の運転指示に従って自動運転する運転制御装置(無人搬送車コントローラ)8と、この無人搬送車コントローラ8の制御に従って駆動する走行モータ9と、この走行モータ9により駆動される車輪とを備える。そしてこの無人搬送車4は、走行モータ9の駆動により、任意の方向へ移動し、また停止することが可能である。
【0028】
送受信装置7は、エスパアンテナ5の受信指向性を変化させて受信した電波から、携帯型電波発信器1からの電波の受信信号強度の最大方向を電波到来方向として決定し、その受信信号強度の最大方向の角度情報を求める。例えば、エスパアンテナ5の受信ビームを、所定角度毎にすべての方位角にわたって形成し電波を受信する。そして、それら受信電波の受信信号強度の最大方向の角度情報を求めて無人搬送車コントローラ8へ入力する。無人搬送車コントローラ8は、入力された角度情報が示す方向へ自車が移動するように走行モータ9を制御する。
【0029】
また、送受信装置7は、携帯型電波発信器1のいずれか一つによる呼び出しのみに応答して、当該携帯型電波発信器1の電波到来方向に向かって自動運転するように無人搬送車コントローラ8へ指示する。
【0030】
図2は、図1に示す携帯型電波発信器1の斜視図である。この携帯型電波発信器1は携帯可能な構造となっており、中空の直方形状のプラスチックの筐体にて構成されている。この筐体内部には、公知のチップ誘電体アンテナ12が具備されている。また筐体表面には、無人搬送車4を呼び出すときに押す呼び出しスイッチ10と、無人搬送車4の運転を停止するときに押す運転停止スイッチ11と、腕に巻回されるための時計バンド等を取り付けるための取り付け部13a,13bと、首からぶら下げるためのストラップを取り付けるためのストラップ取り付け部14とが設けられている。
【0031】
図3は、携帯型電波発信器1の構成を示すブロック図である。図4は、携帯型電波発信器1から送信されるデータフォーマットを示す図であって、図4(a)は第1のデータフォーマットを示し、図4(b)は第2のデータフォーマットを示す。これら図3、図4を参照して、携帯型電波発信器1の構成とその動作を説明する。
【0032】
図3に示すように、呼び出しスイッチ10及び運転停止スイッチ11はコントローラ22に接続される。コントローラ22は、呼び出しスイッチ10あるいは運転停止スイッチ11が押されたことを検出して、呼び出しスイッチ10が押されたときに、図4(a)の第1のデータフォーマットで、各種データ(ビット同期、自己の識別符号(電波発信器ID)、呼び出し命令、及びデータ(UW;ユニークワード))を出力する。また、運転停止スイッチ11が押されたときには、図4(b)の第2のデータフォーマットで、各種データ(ビット同期、自己の識別符号(電波発信器ID)、運転停止命令)を出力する。なお、ビット同期は、クロックタイミング再生を行うためのデータである。また、電波発信器IDは、携帯型電波発信器1毎に固有のIDとして予め携帯型電波発信器1に設定されている。
【0033】
コントローラ22から出力された上記データは、拡散変調器23に入力され、この拡散変調器23により、拡散符号発生器24から出力された拡散符号と掛け合されて変調された後に、アップコンバータ(U/C)25に出力される。次いで、アップコンバータ25は、拡散変調器23から入力された拡散変調信号を、所定の無線周波数にアップコンバーョン(上への周波数変換)して、所定の送信帯域幅を有する帯域通過フィルタ(BPF)26へ出力する。この帯域通過フィルタ26を通過した信号は電力増幅器(PA)27に入力される。次いで、電力増幅器27は、入力された無線周波数の信号を電力増幅して、アンテナスイッチ(SW)28を介してチップ誘電体アンテナ12から放射する。
なお、本実施形態ではこのアンテナとしてチップ誘電体アンテナを用いたが、チップ誘電体アンテナに限定されるものではない。
【0034】
一方、受信時においては、チップ誘電体アンテナ12により受信された受信信号は、アンテナスイッチ(SW)28を介して低雑音増幅器(LNA)34に入力され、この低雑音増幅器34により増幅される。次いで、ダウンコンバータ(D/C)33が、その低雑音増幅器34により増幅された信号を所定の中間周波数(IF信号)に低域変換する。この低域変換されたアナログ信号は、A/D変換器32に出力され、このA/D変換器32によってディジタル信号に変換された後に、復調器30に入力される。次いで、復調器30は入力されたディジタル信号に対して、スペクトラム拡散変調方式の復調処理と、必要に応じて例えばBPSKの復調処理を実行した後に、この復調後のデータ信号をコントローラ22に出力する。
【0035】
図5は、図1に示す無人搬送車4の自動運転機能に係る構成を示すブロック図であって、エスパアンテナ5と送受信装置7については詳細な構成を示している。なお、無人搬送車コントローラ8および走行モータ9については、従来の自走装置と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0036】
先ず、エスパアンテナ5について説明する。図5に示すように、エスパアンテナ5は、接地導体41の中央部及びその周囲の部位に、励振素子A0及び非励振素子A1〜A6が配置される。これら励振素子A0及び非励振素子A1〜A6はそれぞれモノポール素子である。接地導体41は、各素子A0〜A6の長さL0,L1,・・・,L6に対して十分に大きい広さを有する導体板からなる。また、励振素子A0と、6本の非励振素子A1〜A6とは、接地導体41から電気的に絶縁され、かつ非励振素子A0を中心とする例えば半径r=λ/4(但し、λは波長を示す)の円形形状の位置に、互いに同一の60度の間隔で非励振素子A1〜A6が配置されるように設けられている。
【0037】
図6は、エスパアンテナ5の縦断面図である。この図6において、励振素子A0は、例えば1/4波長のモノポールアンテナ素子であり、接地導体41と電気的に絶縁されるとともに、図5に示すアンテナスイッチ43に接続されている。また、各非励振素子A1〜A6は、それぞれ可変リアクタンス素子42−1〜6を介して、接地導体41に対して高周波的に接地される。
【0038】
ここで、可変リアクタンス素子42−1〜6の動作を説明する。例えば、励振素子A0と非励振素子A1〜A6とにおいてそれぞれ長手方向の長さが実質的に同一であるとする。このような場合に、可変リアクタンス素子42−1〜6がインダクタンス性を有するならば、可変リアクタンス素子42−1〜6は延長コイルとなり、非励振素子A1〜A6の電気長が励振素子A0に比較して長くなるので反射器として機能する。一方、可変リアクタンス素子42−1〜6がキャパシタンス性を有するならば、可変リアクタンス素子42−1〜6は短縮コンデンサとなり、非励振素子A1〜A6の電気長が励振素子A0に比較して短くなるので、導波器として機能する。
したがって、各非励振素子A1〜A6に接続された可変リアクタンス素子42−1〜6のリアクタンス値を変化させることによって、エスパアンテナ5の平面指向特性を変化させることができる。
【0039】
次に、図5の送受信装置7において、このエスパアンテナ5の指向性を変化させる動作を説明する。本実施形態においては、30度間隔で12個の方向に対して主ビームを向けるための各リアクタンス値の組合せ(以下、この組合せのことをリアクタンス値セットと称する)を、予め計算してリアクタンス値セットテーブルに格納しておく。一つのリアクタンス値セットには6個の可変リアクタンス素子42−1〜6に対する6個のリアクタンス値が含まれている。図5のリアクタンス値セットテーブルメモリ60は、このリアクタンス値セットテーブルを記憶するためのメモリである。
【0040】
そして、ある1つの方向に主ビームを向けるとき、あるいは無指向性にするときに、送受信制御・運転指示部62は、リアクタンス値セットテーブルメモリ60から、該当する1つのリアクタンス値セットを読み出して、リアクタンス値信号として各可変リアクタンス素子42−1〜6に出力し、各リアクタンス値が各可変リアクタンス素子42−1〜6にそれぞれ設定される。これにより、エスパアンテナ5の指向性が変化することになる。
【0041】
なお、可変リアクタンス素子42−1〜6としては、具体的には、例えばバラクタダイオードを利用可能であり、この場合、送受信制御・運転指示部62は、バラクタダイオードに印加する逆バイアス電圧を変化させることによってバラクタダイオードの接合容量を変化させ、これにより、可変リアクタンス素子42−1〜6のリアクタンス値を変化させることができる。したがって、リアクタンス値セットには、バラクタダイオードに印加すべき逆バイアス電圧値の組合せを設定する。そして、送受信制御・運転指示部62は、読み出したリアクタンス値セットの逆バイアス電圧を、リアクタンス値信号として出力する。
【0042】
次に、図5の送受信装置7において、データを送信または受信する動作を説明する。送受信制御・運転指示部62から出力された送信データは、拡散変調器47に入力され、この拡散変調器47により拡散符号発生器48からの拡散符号と掛け合わされて変調され、アップコンバータ(U/C)46に出力される。次いで、アップコンバータ46は入力された拡散変調信号を所定の無線周波数にアップコンバージョン(上ヘの周波数変換)し、所定の送信帯減幅を有する帯域通過フィルタ(BPF)45を介して電力増幅器(PA)44に出力する。次いで、電力増幅器44は、入力された無線周波数の信号を電力増幅し、この電力増幅された信号がアンテナスイッチ(SW)43を介してエスパアンテナ5から放射される。
【0043】
一方、エスパアンテナ5により受信された受信信号は、アンテナスイッチ(SW)43を介して、低雑音増幅器(LNA)49に入力され、増幅され、次いでダウンコンバータ(D/C)50はその増幅された信号を所定の中間周波数(1F信号)に低域変換する。この低域変換されたアナログ信号は、可変利得アンプ(VGA)51に出力されるとともに自動利得制御(AGC)52にも出力される。自動利得制御52は、低域変換されたアナログ信号のレベルが低い場合、可変利得アンプ51の利得を高く設定し、逆に低域変換されたアナログ信号のレベルが高い場合には可変利得アンプ51の利得を低く設定して、可変利得アンプ51の出力レベルが一定になるように制御する。また、自動利得制御52は、可変利得アンプ51の利得を制御する信号を信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)としても出力する。
【0044】
一方、可変利得アンプ51の出力はA/D変換器53に出力される。 A/D変換器53は低域変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、このディジタル信号を復調器54に出力する。次いで、復調器54は入力されたディジタル信号に対して、スペクトラム拡散変調方式の復調処理と、必要に応じて例えばBPSKの復調処理を実行した後に、この復調後のデータ信号を送受信制御・運転指示部62へ出力する。また、その復調後のデータ信号のユニークワード(UW)部分(図4(a)のデータ(UW)に対応)をUW相関器56へ出力する。UW相関器56は入力されたデータ(UW)と、予め決定され設定されているデータ(UW)との自己相関を取る。次いで、このUW相関器56の出力をパワー計算部57によりパワー計算し、パワー計算部57の出力と、自動利得制御52から出力された信号(RSSI_A)とを掛け算器58により掛け合わせて、電波到来方向信号強度(RSSI)として送受信制御・運転指示部62へ出力する。
【0045】
図7は、電波到来方向信号強度(RSSI)が送受信制御・運転指示部62へ出力されるタイミングを示すタイミングチャートである。この図7を参照して、エスパアンテナ5の指向性を変化させて受信した電波に基づいて、受信信号強度の最大方向(電波到来方向)を決定する処理(電波到来方向検出処理)の動作を説明する。
図5の割り込み信号発生器61は、一定周期で割り込み信号(INT)を送受信制御・運転指示部62ヘ出力する。図7に示す例は、所定角度毎にすべての方位角にわたってエスパアンテナ5の主ビームを形成し電波を受信する場合であって、12個の割り込み信号(INT)により、30度ずつずらしながら、エスパアンテナ5の主ビームを360度一回転させている。
【0046】
先ず、送受信制御・運転指示部62は、電源投入後、1個目の割り込み信号(INT)を受け取ると、リアクタンス値セットテーブルメモリ60から0度の方向のリアクタンス値を読み出してリアクタンス値信号として出力し、各可変リアクタンス素子42−1〜6に設定する。これにより、エスパアンテナ5の主ビームは0度の方向へ向くことになる。
【0047】
この0度方向の主ビームにより受信された無線信号は、上記のように復調処理され、0度方向の電波到来方向信号強度(RSSI)が、2個目の割り込み信号(INT)で送受信制御・運転指示部62ヘ出力される。また、この2個目の割り込み信号(INT)で、送受信制御・運転指示部62は、リアクタンス値セットテーブルメモリ60から30度の方向のリアクタンス値を読み出してリアクタンス値信号として出力し、各可変リアクタンス素子42−1〜6に設定する。これにより、エスパアンテナ5の主ビームは30度の方向へ向くことになる。
【0048】
送受信制御・運転指示部62は、同様にして、12個目の割り込み信号(INT)まで、30度ずつずらしながらエスパアンテナ5の主ビームを360度一回転させて、方位角が30度毎の12方向分の電波到来方向信号強度(RSSI)を取得する。この電波到来方向信号強度(RSSI)は1つの方向当り2つ取得される。したがって、12方向分すなわちビーム1回転で24個(図7のRSSIの1a、1b、2a、2b、・・・、12a、12bに対応)の電波到来方向信号強度(RSSI)が取り出される。
【0049】
本実施形態では、ビーム1回転に要する時間は約0.5ミリ秒で実施可能であり、送受信制御・運転指示部62は、ビーム2回転に要する時間、約1ミリ秒分の電波到来方向信号強度(RSS1)を取り込む。したがって、1方向当り4個の電波到来方向信号強度(RSSI)が取り込まれ、送受信制御・運転指示部62は、これら4個の電波到来方向信号強度(RSSI)を平均化処理して当該方向の電波到来方向信号強度(RSSI)を求める。このようにして、12方向分の平均化処理を行い、12方向についての各方向の12個の電波到来方向信号強度(RSSI)を求める。次いで、これら12個の電波到来方向信号強度(RSSI)の内、最大値の方向を電波到来方向として決定する。
【0050】
送受信制御・運転指示部62は、上記電波到来方向検出処理により決定した電波到来方向についての角度情報を、無人搬送車コントローラインターフェイス64を介して無人搬送車コントローラ8へ通知する。これにより、無人搬送車コントローラ8が、この通知された角度情報によって示される方向(電波到来方向)へ移動するように、走行モータ9を制御する。
【0051】
図8は、図1に示す無人搬送車システムにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。この図8を参照して、無人搬送車4の運転を制御する動作を説明する。
先ず、ステップS1において、操作者が携帯型電波発信器1の呼び出しスイッチ10あるいは運転停止スイッチ11を押すと、ステップS2において、携帯型電波発信器1はデータを送信する。ここで、呼び出しスイッチ10が押された場合は、図4(a)に示す第1のデータフォーマットで、各種データ(ビット同期、自己の識別符号(電波発信器ID)、呼び出し命令、及びデータ(UW))が送信される。また、運転停止スイッチ11が押された場合には、図4(b)に示す第2のデータフォーマットで、各種データ(ビット同期、自己の識別符号(電波発信器ID)、運転停止命令)が送信される。
【0052】
一方、無人搬送車4において送受制御部・運転指示部62は、電源投入後、携帯型電波発信器1からのデータ待ち受け状態となる(ステップS11)。次いで、ステップS12において、携帯型電波発信器1からのデータを受信すると、ステップS13において、先ず、受信した第1または第2のデータフォーマットのデータの中から電波発信器IDを取得する。
【0053】
送受制御部・運転指示部62は、この電波発信器IDが電波発信器許可IDメモリ63に予め登録されているIDであるか否かを検証し、登録されていた場合は、当該電波発信器IDの携帯型電波発信器1を目標として選択し、この携帯型電波発信器1の方向を目的地の方向として設定する。この後、ステップS14へ処理を移行する。一方、他の電波発信器IDが登録されていた場合には、該他の電波発信器IDの携帯型電波発信器1が目標として選択されているので、当該電波発信器IDに係る制御処理を非許可として、処理を上記ステップS11へ戻す。
【0054】
このステップS13の処理によって、複数の携帯型電波発信器1と少なくとも一つの無人搬送車4からなる無人搬送車システムを構成した場合に、目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、自動運転することができるようになる。
【0055】
なお、電波発信器許可IDメモリ63に予め登録されているIDがなかった場合には、受信した電波発信器IDを電波発信器許可IDメモリ63に登録するようにしてもよい。この場合には、無人搬送車4の電源投入後、最も早く呼び出し命令を送信した携帯型電波発信器1が目標として選択される。
また、電波発信器許可IDメモリ63に登録されたIDは、電源断によって消去されるようにしてもよく、あるいは電波発信器許可IDメモリ63に不揮発性メモリを使用して電源断後も登録済みのIDを保持するようにしてもよい。また、マニュアル操作、あるいは遠隔操作によって電波発信器許可IDの登録内容を変更可能なようにしてもよい。
【0056】
次いで、ステップS14において、送受制御部・運転指示部62は、携帯型電波発信器1から受け取ったデータに含まれる命令が運転停止命令であるか否かを検証する。この結果、運転停止命令の場合は、ステップS19において、無人搬送車4を停止させるように無人搬送車コントローラ8へ指示する。この後、処理を上記ステップS11へ戻す。一方、運転停止命令ではなかった場合には処理をステップS15へ移行する。
【0057】
次いで、ステップS15において、送受制御部・運転指示部62は、携帯型電波発信器1から受け取ったデータに含まれる命令が呼出し命令であるか否かを検証する。この結果、呼出し命令の場合はステップS16へ処理を移行し、一方、呼出し命令ではなかった場合には処理を上記ステップS11へ戻す。
【0058】
次いで、ステップS16において、送受制御部・運転指示部62は、上記図7を参照して説明した電波到来方向検出処理を実行して、電波到来方向についての角度情報を求める。次いで、送受制御部・運転指示部62は、ステップS17において、障害物を避けるために、障害物検出処理を実行して障害物の有無を確認する。次いで、ステップS18において、目標として選択されている携帯型電波発信器1までの距離を求めるための発信器間距離推定処理を行う。次いで、ステップS19において、上記ステップS16、S17、S18で求めた結果(電波到来方向の角度情報、障害物の有無、目標の携帯型電波発信器1までの距離)に基づき無人搬送車制御処理を実行して、無人搬送車コントローラ8へ運転内容を指示する。これにより、無人搬送車コントローラ8によって無人搬送車4が自動運転されることになる。
【0059】
次いで、ステップS20において、送受制御部・運転指示部62は、携帯型電波発信器1へ応答信号を送信して上記ステップS11の待受状態に戻る。一方、携帯型電波発信器1はステップS3において、無人搬送車4からの応答信号を受信して上記ステップS2へ戻る。
【0060】
図9は、無人搬送車4と携帯型電波発振器1の間の距離と、電波到来方向信号強度(RSSI)及び信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)との関係を表わした特性波形図である。電波到来方向信号強度(RSSI)の波形は実線で示し、信号(RSSI_A)の波形は破線で示す。
この図9に示すように、無人搬送車4が携帯型電波発信器1に接近するに従って、電波到来方向信号強度(RSSI)は高くなり、他方、信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)は低くなる。
【0061】
図10は、無人搬送車4が無携帯型線発信器1に接近している途中において、A地点で障害物が無人搬送車4に接近し、その後遠ざかる場合の電波到来方向信号強度(RSSI)および信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)の関係を表わした特性波形図の一例である。電波到来方向信号強度(RSSI)の波形は実線で示し、信号(RSSI_A)の波形は破線で示す。
【0062】
上記図9、図10を参照して、図8のステップS17における障害物検出処理について説明する。図10に示すように、A地点付近において、電波到来方向信号強度(RSSI)は急激に低くなり、他方、信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)は急激に高くなり、電波到来方向信号強度(RSSI)及び信号(RSSI_A)は共に、図9に示すような障害物が接近していない場合の値とは異なる値になる。送受制御部・運転指示部62は、このような電波到来方向信号強度(RSSI)及び信号(RSSI_A)の変化を検出したときに、障害物に接近したと判断して無人搬送車4の運転を停止させる。これにより、無人搬送車4が障害物に追突することを防止する。
【0063】
一方、障害物が遠ざかると電波到来方向信号強度(RSSI)は急激に高くなり、他方、信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)は急激に低くなる。この後、電波到来方向信号強度(RSSI)及び信号強度レベルを検出するための信号(RSSI_A)は共に、図9に示すような障害物が接近していない場合の値に戻る。送受制御部・運転指示部62は、このような電波到来方向信号強度(RSSI)及び信号(RSSI_A)の変化を検出したときに、障害物が遠ざかったと判断して無人搬送車4の運転を再開する。これにより、障害物を避けた後に操作者が運転再開を指示する手間を省き、効率よく確実に目的地まで自動運転することができる。
【0064】
次に、図9を参照して、図8のステップS18における携帯型電波発信器間距離推定処理について説明する。図9に示す例では、無人搬送車4と携帯型電波発信器1の距離が接近し、およそ3mになると電波到来方向信号強度(RSSI)は飽和し、およそ3m以下になると発散する。送受制御部・運転指示部62は、このような変化点を検出すると、無人搬送車4が目標とする携帯型電波発信器1の近くまで到着したと判断して、無人搬送車4を自動停止させる。これにより、無人搬送車4が携帯型電波発信器1を持っている操作者に追突することを防止する。
【0065】
このように、上述した障害物検出処理または携帯型電波発信器間距離推定処理によって、効率よく確実に、さらには携帯型電波発信器を持っている操作者や障害物等に追突に追突することなく安全に目的地まで自動運転することができるようになる。
【0066】
なお、図9の各特性波形のデータ、及び図10に示すA地点付近における各特性波形のデータは、図5の受信信号強度値テーブルメモリ59に予め記憶されている。送受制御部・運転指示部62は、この受信信号強度値テーブルメモリ59に記憶されているデータを使用して、上記障害物検出処理または携帯型電波発信器間距離推定処理を行う。
【0067】
上述したように、本実施形態の無人搬送車によれば、エスパアンテナにより指向性を変化させて受信した電波に基づいて電波発信器の電波到来方向を知り、この方向に向かって自動運転することができる。これにより、操作者が有する携帯型電波発信器の電波到来方向に向かって自動運転し、任意に移動することができるという効果が得られる。
【0068】
また、小型化あるいは軽量化に適したエスパアンテナを用いることができるようになるので、無人搬送車を小型化あるいは軽量化することが可能となり、無人搬送車の移動性が向上するという効果が得られる。
【0069】
次に、上記図1の無人搬送車システムを複数同時に運用した場合に、システム間において目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、運用するための方法を説明する。図11に示すように、複数の無人搬送車システム100(グループ1〜N)を同時に運用する際には、グループ1〜Nの全ての携帯型電波発信器1に対して異なる電波発信器IDを割り当てて設定する。このようにすれば、グループ内、且つグループ間で、携帯型電波発信器1の電波発信器IDが固有なものとなるので、上記図8のステップS13の処理において混乱をきたすことなく、目標とする携帯型電波発信器1を特定することができるようになる。
【0070】
また、上記電波発信器IDの固有化による方法ではなく、無線信号に対して行う拡散化に使用する拡散符号を、グループ間で異なるものを使用するようにしてもよい。この場合には、図3に示す携帯型電波発信器1の拡散符号発生器24,31と図5に示す無人搬送車4の拡散符号発生器48,58において、同一グループの場合は同じ拡散符号であって、且つ他のグループが使用する拡散符号とは異なるものを使用するようにする。
【0071】
なお、上述した実施形態においては、携帯型電波発信器が電波発信源に対応する。また、送受制御・運転指示部が、電波到来方向検出手段および運転指示手段に対応する。また、電波発信器許可IDメモリが電波発信源識別情報記憶手段に対応する。また、無人搬送車コントローラが運転制御手段に対応する。また、自走制御装置は、電子制御式アレーアンテナ(エスパアンテナ)と、電波到来方向検出手段及び運転指示手段(送受制御・運転指示部)と、無人搬送車コントローラ(運転制御手段)とから構成される。
【0072】
また、上述した実施形態においては、本発明の自走装置の具体的な一実施例として無人搬送車に適用したが、他の装置にも同様に適用可能である。例えば、本実施形態を適用することにより、自動操舵車(ショッピングカート、荷物カート、乳母車など)、ペット型等のロボット、自動掃除機、自動ケーブル敷設車などを実現することができる。なお、これら自走装置は、自走制御装置(電子制御式アレーアンテナ(エスパアンテナ)と、電波到来方向検出手段及び運転指示手段と、運転制御手段)と、この自走制御装置の運転制御に従って駆動する駆動手段とを備える。この駆動手段は、自走装置が移動するための走行装置(例えば、車輪、ロボットの手または足)と、この走行装置を駆動するための走行モータなどから構成される。
【0073】
図12は、ショッピングカートに適用した場合の実施例を説明するための図である。この図12に示すように、ショッピングカート70は、図1の無人搬送車4と同様に、エスパアンテナ5と、送受信回路7と、カート用の運転制御装置(カートコントローラ)72と、カート用の走行モータ73と、この走行モータ73により駆動される車輪とを備えている。また、買い物客70は携帯型電波発信器1を持っている。これにより、ショッピングカート70は買い物客70の携帯型電波発信器1の電波到来方向に向かって追従して移動する。この結果、買い物客70はショッピングカート70を移動するために手で押したり、引いたりする必要がなく、その労力が軽減されるという効果が得られる。
【0074】
図13は、ペット型ロボットに適用した場合の実施例を説明するための図である。この図13に示すように、ペット型ロボット76は、図1の無人搬送車4と同様に、エスパアンテナ5と、送受信回路7と、ペット型ロボット用の運転制御装置(ロボットコントローラ)77と、ペット型ロボット用の走行モータ78と、この走行モータ78により駆動される手足を備えている。また、オーナー75は携帯型電波発信器1を持っている。これにより、ペット型ロボット76はオーナー75の携帯型電波発信器1の電波到来方向に向かって追従して移動する。この結果、オーナー75は、ペット型ロボット76と公園などで一緒に散歩することができるようになる。
【0075】
図14は、掃除機に適用した場合の実施例を説明するための図である。この図14に示すように、自動掃除機80は、図1の無人搬送車4と同様に、エスパアンテナ5と、送受信回路7と、掃除機用の運転制御装置(掃除機コントローラ)81と、掃除機用の走行モータ82と、この走行モータ82により駆動される車輪とを備えている。また、掃除する部屋の両端の壁92,93には、電波発信器90,91が移動可能なレール等が設置されており、電波発信器90,91はこのレールに沿って移動することができる。この電波発信器90,91は図3に示す携帯型電波発信器1と同様の構成を有している。
【0076】
自動掃除機80が壁92側へ走行するときは、壁92側の電波発信器90の電波到来方向に向かって自動走行するようにし、この場合、壁93側の電波発信器91の発信を停止させる。自動掃除機80が壁92側へ到着後、この壁92側の電波発信器90の発信を停止させる。次いで、壁93側の電波発信器91を壁92側の電波発信器90の対向位置からずらした後、電波発信器91の発信を開始する。これにより自動掃除機80は方向転換して、壁93側へ自動走行するようになり、走行しながら掃除を行う。同様な手順で、部屋全体の床を掃除することができる。
【0077】
図15、図16は、ケーブル敷設車に適用した場合の実施例を説明するための図である。この図15、図16に示す自動ケーブル敷設車95は、図1の無人搬送車4と同様に、エスパアンテナ5と、送受信回路7と、運転制御装置8と、走行モータ9と、この走行モータ9により駆動される車輪とを備えている。また、操作者は携帯型電波発信器1を持っている。図15に示す例では、上床と下床の二重構造となっている床の下床の上に、自動ケーブル敷設車95を置き、操作者は上床の上で、ケーブルを敷設したい方向へ移動する。これにより、自動ケーブル敷設車95は操作者の携帯型電波発信器1の電波到来方向に向かって追従して移動し、この結果、ケーブルが操作者の移動方向に沿って敷設される。したがって、ケーブルを敷設するために、ケーブル敷設方向の上床を外す必要がなく、その労力を軽減することができるという効果が得られる。
また、図16に示す例では、屋根裏にケーブルを敷設するために、天井の上に自動ケーブル敷設車95を置き、操作者は部屋内でケーブルを敷設したい方向へ移動する。この場合にも、自動ケーブル敷設車95は操作者の携帯型電波発信器1の電波到来方向に向かって追従して移動し、この結果、ケーブルが操作者の移動方向に沿って敷設される。したがって、ケーブルを敷設するために、屋根裏に入ってケーブルを引き回す等の必要がなく、その労力を軽減することができるという効果が得られる。
【0078】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電子的に指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナ(エスパアンテナ)の受信指向性を変化させて受信した電波に基づいて、受信信号の強度の最大方向の角度情報を求め、この角度情報で示される方向へ移動するように自走を指示するようにしたので、エスパアンテナにより指向性を変化させて受信した電波に基づいて電波発信器の電波到来方向を知り、この方向に向かって自動運転することができる。これにより、小型化あるいは軽量化に適したエスパアンテナを用いることができるようになるので、自走装置を小型化あるいは軽量化することが可能となり、自走装置の移動性が向上するという効果が得られる。
【0080】
また、請求項2に記載の発明によれば、目標の電波発信源を特定し、この電波発信源からの受信信号を電波到来方向の検出に使用するので、複数の携帯型電波発信器と少なくとも一つの自走装置からなる自走装置システムを構成した場合に、システム内の電波発信源毎に固有の識別情報を付与すれば、目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、自動運転することができるという効果が得られる。さらに、その自走装置システムを複数同時に運用した場合においても、全システム内の電波発信源毎に固有の識別情報を付与すれば、システム間において目的地の誤認識等の混乱をきたすことなく、運用可能である。
【0081】
また、請求項3に記載の発明によれば、拡散符号により、複数のシステム間の無線信号の分別を行うことができるので、これによっても、複数の自走装置システムを同時に運用可能である。
【0082】
また、請求項4に記載の発明によれば、障害物へ接近したことを検出して自動停止することができるので、障害物に追突することなく安全に目的地(電波発信源の近傍)まで自動運転することができる。
【0083】
また、請求項5に記載の発明によれば、障害物へ接近して停止した後、障害物から離れると、運転を自動的に再開するので、障害物を避けた後に操作者が運転再開を指示する手間を省き、効率よく確実に目的地まで自動運転することができる。
【0084】
また、請求項6に記載の発明によれば、目標の電波発信源の近くまで到着した時に、自動的に停止するので、電波発信源を持っている操作者に追突することを防止することができる。
【0085】
また、請求項1乃至請求項6のいずれかの項に記載の自走制御装置を備えることによって、無人搬送車、自動操舵車(ショッピングカート、荷物カート、乳母車など)、ペット型ロボット、自動掃除機、及び自動ケーブル敷設車などの自走装置を実現することが可能となり、さらに、その小型化あるいは軽量化を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による無人搬送車4と携帯型電波発信器1からなる無人搬送車システムの構成を示すブロック図である。
【図2】携帯型電波発信器1の斜視図である。
【図3】携帯型電波発信器1の構成を示すブロック図である。
【図4】携帯型電波発信器1から送信されるデータフォーマットを示す図である。
【図5】無人搬送車4の自動運転機能に係る構成を示すブロック図である。
【図6】エスパアンテナ5の縦断面図である。
【図7】電波到来方向信号強度(RSSI)が送受信制御・運転指示部62へ出力されるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】図1に示す無人搬送車システムにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】無人搬送車4と携帯型電波発振器1の間の距離と、電波到来方向信号強度(RSSI)及び信号(RSSI_A)との関係を表わした特性波形図である。
【図10】無人搬送車4が障害物に接近し、その後遠ざかる場合の電波到来方向信号強度(RSSI)および信号(RSSI_A)の関係を表わした特性波形図の一例である。
【図11】複数の無人搬送車システム100を同時に運用する際の処理を説明するための図である。
【図12】本発明による自走装置をショッピングカートに適用した場合の実施例を説明するための図である。
【図13】本発明による自走装置をペット型ロボットに適用した場合の実施例を説明するための図である。
【図14】本発明による自走装置を掃除機に適用した場合の実施例を説明するための図である。
【図15】本発明による自走装置をケーブル敷設車に適用した場合の実施例を説明するための第1の図である。
【図16】本発明による自走装置をケーブル敷設車に適用した場合の実施例を説明するための第2の図である。
【符号の説明】
1…携帯型電波発信器、4…無人搬送車、5…エスパアンテナ、6…ケーブル、7…送受信回路、8…無人搬送車コントローラ、9…走行モータ、10…呼び出しスイッチ、11…運転停止スイッチ、12…チップ誘電体アンテナ、13a,13b…時計バンドなど取り付け部、14…ストラップ取り付け部、22…コントローラ、23,47…拡散変調器、24,31,48,55…拡散符号発生器、25,46…アップコンバータ、26,45…帯域通過フィルタ、27,44…電力増幅器、28,43…アンテナスイッチ、30,54…復調器、32,53…A/D変換器、33,50…ダウンコンバータ、34,49…低雑音増幅器、41…接地導体、42−1〜6…可変リアクタンス素子、51…可変利得増幅器、52…自動利得制御器、56…ユニークワード相関器、57…パワー計算部、58…掛け算器、59…受信信号強度値テーブルメモリ、60…リアクタンス値セットテーブルメモリ、61…割込み信号発生器、62…送受信制御・運転指示部、63…電波発信器許可IDメモリ、64…無人搬送車コントローラインターフェイス、71…ショッピングカート、76…ペット型ロボット、80…自動掃除機、90,91…移動する電波発信器、95…自動ケーブル敷設車、100…無人搬送車システム
Claims (8)
- 電波発信源の電波到来方向に向かって自走する自走制御装置であって、
電子的に指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナと、
前記電子制御式アレーアンテナの受信指向性を変化させて受信した電波に基づいて、受信信号の強度の最大方向の角度情報を求める電波到来方向検出手段と、
前記角度情報で示される方向へ自走する運転制御手段と、
を具備することを特徴とする自走制御装置。 - 目標の前記電波発信源を特定する識別情報を記憶する電波発信源識別情報記憶手段を備え、
前記電波到来方向検出手段は、
前記受信信号に含まれる識別情報と前記電波発信源識別情報記憶手段の識別情報とが一致したことを条件として、当該受信信号を電波到来方向の検出に使用する
ことを特徴とする請求項1に記載の自走制御装置。 - 前記受信信号が拡散符号により拡散されて無線伝送される場合において、
前記電波到来方向検出手段は、
予め設定されている拡散符号により前記受信信号を逆拡散して用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の自走制御装置。 - 前記電波到来方向からの受信信号強度またはこの受信信号強度レベルを検出するための信号の変化に基づいて、障害物へ接近したことを検出し、前記運転制御手段へ停止を指示する運転指示手段
を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかの項に記載の自走制御装置。 - 前記運転指示手段は、
前記電波到来方向からの受信信号強度またはこの受信信号強度レベルを検出するための信号の変化に基づいて、障害物から離れたことを検出し、前記運転制御手段へ運転再開を指示する
ことを特徴とする請求項4に記載の自走制御装置。 - 前記運転指示手段は、
前記電波到来方向からの受信信号強度の飽和から発散への変化点を検出し、この検出により目標の前記電波発信源の近くまで到着したと判断して、前記運転制御手段へ停止を指示する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの項に記載の自走制御装置。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかの項に記載の自走制御装置と、
前記自走制御装置の運転制御に従って駆動する駆動手段と、
を備えたことを特徴とする自走装置。 - 電波発信源の電波到来方向に向かって自走する自走装置における制御方法であって、
電子的に指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナの受信指向性を変化させる過程と、
前記受信指向性を変化させて受信した電波に基づいて、受信信号の強度の最大方向の角度情報を求める過程と、
前記角度情報で示される方向へ移動するように自走を指示する過程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
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