JP3560262B2 - 容器状液体フィルタおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は容器状液体フィルタおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、不織布の多層積層体を容器状に一体成形して得られる、通液速度の調節が可能で成分抽出性能に優れた容器状液体フィルタおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からフィルタ用の汎用材料として、主に紙、織布、不織布などが用いられているが、近年、フィルタユニットの小型化、使い捨て、簡便性等の点から、フィルタ材料を立体的に成形して使用する方法が注目されている。
特に極細繊維不織布は、空気の浄化または成分抽出性能を向上させる目的でフィルタ分野に多く使用されているが、極細繊維不織布を立体形状のフィルタに成形する際には金型に極細繊維不織布が融着し易い、極細繊維不織布が熱収縮をする等の問題が生じ、また該成形フィルタは、変形し易いという欠点があった。
【0003】
このような極細繊維不織布の成形性および保型性の問題を解決するため、特開平7−136066号公報には、極細繊維不織布と熱可塑性合成繊維不織布からなる積層体を容器状に一体成形した容器状多層フィルタが提案され、液体により成分抽出を行う際の通液性を向上させるため、該容器状多層フィルタ底部の一部に透水剤を付与して透水性を持たせてもよいことを開示している。
しかしながら、上記技術では、一体成形した容器状多層フィルタに透水剤を付与するため、初期の透水性は向上するが、時間の経過とともに生じる目詰まりを効果的に防止することができないため、十分な抽出液が得難い。また通液速度を被抽出物に適した速度に調節することができない、生産性が悪いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の問題を解決し、製造の際の熱プレス成型による一体成形加工性および保型性を向上させるとともに、通液速度を被抽出物に適した速度に調節でき、かつ時間の経過とともに生じる被抽出物の目詰まりを効果的に防止することができる容器状液体フィルタおよびその製造方法に関する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1)極細繊維不織布および熱可塑性合成繊維不織布からなる多層積層体を、フランジ部と該フランジ部より展伸された側面および底面からなる成形部に一体成形した容器状フィルタにおいて、前記極細繊維不織布の少なくとも一層の全面または部分面に透水剤が付着され、かつ該容器状フィルタの内側表面は透水剤が付着していない熱可塑性合成繊維不織布で構成され、さらに前記多層積層体の少なくとも一部が接合されていることを特徴とする容器状液体フィルタ。
(2)多層積層体が、極細繊維不織布の両面に熱可塑性合成繊維不織布を積層したものであることを特徴とする(1)記載の容器状液体フィルタ。
(3)透水剤を付着させた極細繊維不織布の面積を被処理液体の種類により変化させたことを特徴とする(1)または(2)記載の容器状液体フィルタ。
(4)極細繊維不織布に透水剤を付着させた後、該極細繊維不織布の両面に熱可塑性合成繊維不織布を積層し、該積層体を加熱加圧プレス成形機により容器状に一体成形し、かつ該成形体の少なくとも一部を接合することを特徴とする容器状液体フィルタの製造方法。
【0006】
本発明に用いられる極細繊維不織布は密な構造の不織布であり、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどの溶融ポリマーを高圧ガス流とともに紡糸ノズルから噴射させるメルトブロー法、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリマーを有機溶媒に溶解させて高温高圧の溶液をつくり、これを紡糸ノズルで減圧させて有機溶媒を爆発的に気化させるノラッシュ紡糸法などの方法より得ることができる。
【0007】
極細繊維不織布の平均繊維径は、繊維の強度および通液性(フィルタ性能)の点から、0.5〜6.0μmが好ましく、より好ましくは1.0〜4.0μmの範囲である。また極細繊維不織布のみかけ密度は、0.05〜0.5g/cm3 の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜0.4g/cm3 の範囲である。みかけ密度が0.05g/cm3 未満の場合は、成形加工時の均一展伸性に劣り、0.5g/cm3 を超えると成形加工時に金型に密着や融着し易く、また均一展伸性に劣る場合がある。さらに極細繊維不織布の目付は、フィルタ性能の点から10〜100g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80g/m2である。
【0008】
本発明に用いられる熱可塑性合成繊維不織布は粗な密度の不織布で、熱プレス成形により展伸できるものであればよく、例えば、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、複合繊維、共重合繊維などの単一または2以上からなる短繊維、長繊維またはこれらの混合繊維を、公知のスパンボンド法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法などの方法により得ることができる。
【0009】
熱可塑性合成繊維不織布の平均繊維径は、補強性、プレフィルタ性等の点から、10〜100μmが好ましく、より好ましくは15〜60μmの範囲である。また補強性、プレフィルタ性等の点から、熱可塑性合成繊維不織布の目付は30〜300g/m2が好ましく、またみかけ密度は0.1〜0.6g/cm3 が好ましい。さらに熱可塑性合成繊維不織布は、例えば一対の凹凸金型を80〜230℃に加熱して成形加工を行なう際には少なくとも加熱温度での破断伸度が50%以上であることが好ましく、大変形の展伸(成形)加工を行なう際には破断伸度は100%以上であることがより好ましい。
【0010】
本発明の容器状液体フィルタは、上記極細繊維不織布と熱可塑性合成繊維不織布からなる多層積層体で構成されるため、一体成形加工性および保型性に優れるとともに、積層する不織布の構成繊維径、繊維密度、繊維量、素材によりフィルタの通液性を調節することができる。例えば、繊維構成に密度勾配を設け、粗な構造の熱可塑性合成繊維不織布層で大きな粒子を捕集し、密な構造の極細繊維不織布層で小さな粒子を捕集させることにより、良好な通液性を得ることができる。
【0011】
また本発明においては、上記多層積層体の極細繊維不織布の少なくとも一層には透水剤が付着されているため、該透水剤の付着量および付着面積などを変えることにより通液速度を変えることができ、成分抽出の目的に応じた成分抽出量の調節が可能である。
【0012】
本発明に用いられる透水剤としては特に制限はないが、食品用フィルタの場合には、食品添加物として認可されている、ショ糖、カルボキシルメチルセルロース、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エステルなどを用いることが好ましい。透水剤の付着量は通液性の点から、0.01〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3.0重量%の範囲である。また透水剤は、少なくとも極細繊維不織布の一層の全面または部分的に付着させることができるが、目詰まりを防止して通液速度を被抽出物に適した速度に調節する点からは透水剤を部分的に付着させるのが好ましい。透水剤を部分的に付着させる場合には、容器形状の側面および底面の両方に透水剤を部分的に付着させ、容器全体からの通液を可能にして目詰まりを効果的に防止することが好ましい。
【0013】
本発明において、一体成形されたフィルタの内側表面が透水剤を付着していない熱可塑性合成繊維不織布で構成され、極細繊維不織布の少なくとも一層の全面または部分面に透水剤が付着されているため、該フィルタ内に抽出液を注いだ初期には通液量を少なくすることができ、時間の経過とともに、抽出液中に透水剤が滲み出してまたは透水剤の非付着部に透水剤が移行して通液量を徐々に増加させることができる。このため、時間の経過により被抽出物の膨潤、拡大などが生じても不織布の目詰まりを効果的に防止しつつ充分な成分抽出を行なうことができる。例えば、レギュラーコーヒーの抽出を行う場合、抽出初期にはお湯とコーヒー粉末の接触時間が多くなり(約30〜120秒)充分な成分抽出ができ、しかも膨張したコーヒー粉末による目詰まりを生じることがない。
【0014】
また本発明の容器状液体フィルタは、フランジ部と、該フランジ部より展伸された側面および底面からなる成形部を有する容器形状のフィルタである。かかるフィルタは、上記不織布からなる多層積層体を、加熱−加圧プレス成形機で一体成形することにより得られる。
例えば、透水剤が付着された極細繊維不織布の両面に熱可塑性合成繊維不織布を積層し、この積層体シートを、加熱させた一対の凹凸金型の間に入れてプレス成形するか、または該積層体シートをあらかじめ成形温度に加熱した後、加熱していない凹凸金型でプレス成形する等の方法により一体成形する。成形温度は、容器形状、繊維材料などにより適宜選定されるが、通常は80〜230℃で行なわれる。また成形時の展開比(深さ/口径)は通常0.1〜1.5とされる。
粗な構造の熱可塑性合成繊維不織布の使用により、加熱−加圧プレス成形加工時に金型への融着および熱収縮性などの影響を少なくさせ、かつ成形品の保形性を向上させるなどの効果が得られる。
【0015】
さらに本発明の容器状液体フィルタは、少なくとも一部が接合されるように成形加工される。そのためには、例えば、フィルタのフランジ部分などを線状またはドット状に成形時に融着するように金型に工作して成形を行なう等の方法がとられる。積層された容器状フィルタの少なくとも一部を接合することにより、各不織布は分離することなく一体物として取扱いできるため、梱包作業性、フィルタ製品としての取扱い性が向上する。
【0016】
本発明の容器状液体フィルタは、極細繊維不織布の少なくとも一層に透水剤を付着させる工程および二種類以上の不織布を積層して加熱−加圧プレス成形機で容器状に一体成形する工程により製造される。本発明では、不織布に透水剤の付着処理をした後に一体成形を行うため、容器状液体フィルタの製造工程を簡素化することができる。
【0017】
透水剤を付着させる工程では、公知の透水剤界面活性剤等をグラビヤロール方式、キスロール方式、スプレー方式、浸漬方式等の手段により目的とする必要な量を不織布の全面または部分面に付着させる。透水剤の付着量の調節は、透水剤の濃度、加工速度、グラビヤロールの彫刻の深さなどにより行うことができる。また透水剤の付着面積の調節は、例えば、グラビヤロールの彫刻の形状をストライブ状や格子状等の連続模様または円、楕円、四角、菱形等の散点模様とし、その模様の大きさ、幅、間隔等を変えることにより行う。
このようにして得られた容器状液体フィルタは、熱可塑性合成繊維不織布の使用により優れた一体成形加工性および保型性を同時に得られ、また極細繊維不織布の少なくとも一層の全面または部分面に透水剤を付着させることにより、目詰まりを防止するとともに通液速度の調節を行うことができ、被抽出物に適した通液速度で成分抽出を行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例を示す容器状液体フィルタの斜視図である。図において、容器状液体フィルター1は、フランジ部2と、該フランジ部2より展伸された側面イと底面ロを有する成形部3からなり、フランジ部2に積層不織布の接合部5を形成させて一体化させて得られる。この容器状液体フィルタは、保型性に優れるため、既存容器上に簡便に装着でき、被抽出物を該フィルタ内に入れ、抽出液を注ぐだけで容易に成分抽出が行なえる。
【0019】
図2は、本発明の一実施例を示す容器状液体フィルタの断面図である。図において、容器状液体フィルタ1は、極細繊維不織布12の両面に熱可塑性合成繊維不織布11、13が積層されており、フランジ部2と成形部3とからなり、フランジ部2に接合部5を有する。
図3は、部分透水性の加工を行なう場合の代表的な透水剤の付着形状を示す図である。(1)はストライブ状の連続模様、(2)は格子状の連続模様、(3)は水玉状の不連続模様を示す。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものでない。なお、例中の目付、厚さ、平均みかけ密度および破断伸度は以下のようにして測定した。
(1) 目付(g/m2 ):単位面積当たりの質量でJIS−1906に準して測定した。
(2) 厚さ(mm):JIS−L−1906に準じて厚さを測定した。
(3) 平均みかけ密度:上記で測定した目付と厚さから下記式により算出した。
(平均みかけ密度)=(目付)/〔1000×(厚さ)〕
(4) 破断伸度:JIS−L−1906の測定方法に準じて測定した(雰囲気温度120℃)。
【0021】
実施例1
平均繊径1.6μm、平均みかけ密度0.16g/cm3 、目付20g/m2のプロピレン極細繊維不織布をメルトブロー方式で製造し、この極細繊維不織布の全面に、5重量%ポリグリセリン脂肪酸エステルのエタノール溶液を用いてグラビヤロール方式で、該不織布の重量に対して(以下同じ)0.2重量%の透水剤を付着させた。
次いで、平均繊径20μm、平均みかけ密度0.35g/cm3 、目付50g/m2のポリエステル長繊維不織布をスパンボンド方式で製造した。得られたポリエステル長繊維不織布の120℃の破断伸度は270%であった。
【0022】
上記で得られた極細繊維不織布の両面にポリエステル長繊維不織布を積層し、この積層体を、125℃の温度に加熱した口径70mm、深さ40mmの容器状の凹凸金型を用いて加熱−加圧プレスし、一体成形して本発明の容器状液体フィルタを得た(展開比=0.57)。
得られた容器状液体フィルタをカップの上に装着し、該フィルタ内に紅茶の葉約2g入れて、熱水で成分抽出を行なった。細かい葉の洩れもなく、香りの良い紅茶を飲むことができた。
【0027】
実施例2
平均繊維径2.0μm、平均みかけ密度0.12g/cm3 、目付50g/m2のプロピレン極細繊維不織布をメルトブロー方式で製造し、この極細繊維不織布に彫刻されたグラビヤロール線状模様を用いて透水剤面積が各々約20%、40%、100%となるように10重量%デカグリセリン脂肪酸エステルのエタノール溶液を用いて透水剤付与を行った。
【0028】
次いでポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.78)を用いて紡糸速度2300m/分でポリエステル長繊維ウエブを得た後、圧着面積率24%の織目柄エンボスロールと平滑ロールで部分熱圧着してスパンボンド方式の不織布中間体を得た。該不織布中間体を温度140℃のフェルトカレンダーに通して熱処理を行い、ポリエステル長繊維不織布を得た。この不織布の平均繊径は15μm、平均みかけ密度0.31g/cm3 、目付50g/m2 、120℃の加熱下での破断伸度が230%であった。
【0029】
上記で得られたそれぞれの極細繊維不織布の両側にポリエステル長繊維不織布を積層させ、それぞれ加熱−加圧プレス成形して本発明の容器状液体フィルタを得た。成形加工は、口径65mm、深さ40mmの容器状凹凸金型を温度140℃に加熱して一体成形した(展開比0.62)。
得られたそれぞれの容器状液体フィルタをカップの上に装着し、該フィルタ内にレギュラーコーヒー粉末12gを入れて180mlの熱水を注いで成分抽出を行った。注いだ熱水は、部分透水性の場合は、側面と底面から通過した。透水剤の付着面積による通液時間および成分抽出状態を観察し、その結果を表1に示した。表1から、透水剤の付着面積を変えることにより、通液時間が変化し、成分抽出性を変えられることがわかった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明の容器状液体フィルタは、一体成形性および保型性に優れるとともに、透水剤の付着量および付着面積を変えることにより、目詰まりを防止しつつ通液速度を調節できるため、目的に応じた成分抽出を行なうことができる。従って、本発明の容器状液体フィルタは、既存の容器、カップの上に装着が容易に行なえるため、紅茶、緑茶、レギュラーコーヒー粉末等の成分抽出フィルタ、または油こしフィルタなどの各種液体フィルタに利用できる。
また本発明の製造方法によれば、不織布に透水剤を付着させてから一体成形するため、製造工程が簡素化する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す容器状液体フィルタの斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示す容器状液体フィルタの断面図である。
【図3】部分透水加工を行う場合の代表的な透水剤の付着形状を示す図である。
【符号の説明】
1…容器状液体フィルタ、2…フランジ部、3…成形部、5…接合部、11、13…熱可塑性合成繊維不織布、12…極細繊維不織布、イ…側面、ロ…底面。
Claims (4)
- 極細繊維不織布および熱可塑性合成繊維不織布からなる多層積層体を、フランジ部と該フランジ部より展伸された側面および底面からなる成形部に一体成形した容器状フィルタにおいて、前記極細繊維不織布の少なくとも一層の全面または部分面に透水剤が付着され、かつ該容器状フィルタの内側表面は透水剤が付着していない熱可塑性合成繊維不織布で構成され、さらに前記多層積層体の少なくとも一部が接合されていることを特徴とする容器状液体フィルタ。
- 多層積層体が、極細繊維不織布の両面に熱可塑性合成繊維不織布を積層したものであることを特徴とする請求項1記載の容器状液体フィルタ。
- 透水剤を付着させた極細繊維不織布の面積を被処理液体の種類により変化させたことを特徴とする請求項1または2記載の容器状液体フィルタ。
- 極細繊維不織布に透水剤を付着させた後、該極細繊維不織布の両面に熱可塑性合成繊維不織布を積層し、該積層体を加熱加圧プレス成形機により容器状に一体成形し、かつ該成形体の少なくとも一部を接合することを特徴とする容器状液体フィルタの製造方法。
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