JP4081974B2 - 電子レンジ用飲料抽出フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドリップ式コーヒー等の飲料を電子レンジを用いて簡便に入れられるようにする電子レンジ用飲料抽出フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子レンジを用いて水を加熱し、一杯分〜数杯分のコーヒー、紅茶、緑茶等を簡便に入れることが行われている。
【0003】
ところで、コーヒー、紅茶、緑茶などの抽出液を得る場合に、コーヒー粉等の抽出材料を湯の中に浸漬しておくと濃い抽出液を得ることができるが、十分な濃度の抽出液が得られた後に、抽出かすをさらに抽出液中に浸漬しておくことは、風味が損なわれるので好ましくない。そこで、美味しい抽出飲料を得るためには、抽出液の濃度が十分である限り、抽出かすを抽出液から速やかに分離することが重要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電子レンジを用いてコーヒー等の抽出液を得る場合に、抽出液の濃度を十分とし、かつ、抽出液から抽出かすを速やかに分離することは容易でない。例えば、特開平3−258222号公報に記載の電子レンジ用コーヒーメーカーでは、容器内部の液体が所定の温度に達したときに自動的に開口する、形状記憶合金からなる弁体部を、水を収容しておく容器の底部に設け、電子レンジの作用によって容器内の水が所定の温度に達したときにその弁体が開き、濾過体上のコーヒー粉に注がれ、抽出液が下部の容器に溜まるようにしているが、このコーヒーメーカーは構造が複雑であり、一杯分〜数杯分のコーヒーを入れる使い捨てのドリッパーとしては使用することができない。
【0005】
これに対し、本発明では、電子レンジを用いてコーヒー、紅茶、緑茶等の飲料を抽出する場合に、より簡便な構成で抽出液を得られるようにし、かつ、コーヒー、紅茶、緑茶等の抽出材料が湯で抽出された後は、速やかに抽出液と抽出かすとが分離されるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電子レンジを用いて飲料抽出を行うために使用する電子レンジ用飲料抽出フィルターのフィルター構成について検討した結果、次のことを見出した。即ち、電子レンジ用飲料抽出フィルターを、厚さ方向に微細孔が形成された第1の不織布層と、第2の不織布層との積層構造とし、かつ第1の不織布層と第2の不織布層とをそれぞれ疎水性繊維から特定範囲の坪量で構成すると、第1の不織布層の微細孔が第2の不織布層の繊維で適度に塞がれ、第1の不織布層と第2の不織布層の両層を貫通する微細孔は径が極めて細くなり、数も少なくなるので、フィルターは常温の水に対して通液性が実質上なくなり、フィルター上に水を保持できること、したがって、フィルター上に水とコーヒー粉等の抽出材料を保持し、電子レンジ加熱すると、フィルター上にコーヒー等の昇温した抽出液を得られること、さらに、この昇温した抽出液はフィルターに対する表面張力が電子レンジ加熱前の水に対して相当に低くなり、フィルターを通液することを見出した。したがって、例えばフィルターを上端が開口した袋状に成形し、その中に常温の水とコーヒー粉等の抽出材料を入れてカップ上に置くと、その水と抽出材料は袋内に保持され、これを電子レンジにかけて水を加熱すると、袋内には抽出材料の抽出液が得られ、しかもその抽出液はフィルターを通り、フィルター下のカップに抽出液を捕集でき、フィルター上には抽出かすを残すことができる。
【0007】
そこで、本発明は、厚さ方向に平均孔径70〜250μmの微細孔が形成された第1の不織布層と、該第1の不織布層の微細孔の少なくとも一部を塞ぐように積層されている第2の不織布層からなり、第1の不織布層と第2の不織布層がそれぞれ疎水性熱融着性繊維からなり、第1の不織布層の坪量が10〜30g/m2、第2の不織布層の坪量が5〜30g/m2、第1の不織布層と第2の不織布層の総坪量が15〜60g/m2であるフィルターであって、第1の不織布層上に常温水と抽出材料を保持し、それを電子レンジ加熱することにより昇温した抽出液を得、かつ該抽出液のフィルターに対する表面張力が電子レンジ加熱前の常温水に比して低下することにより、抽出液を通液させることのできる電子レンジ用飲料抽出フィルターを提供する。
【0008】
また、本発明は、上述の電子レンジ用飲料抽出フィルターを、第1の不織布層を内側にし、上端が開口した袋状に成形した電子レンジ用袋状フィルターを提供する。
【0009】
さらに、本発明は、樹脂製のドリッパーの内壁の少なくとも一部に上述の電子レンジ用飲料抽出フィルターが貼付されてなる電子レンジ用ドリッパーを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0011】
図1は、本発明の電子レンジ用飲料抽出フィルター1の一例の模式的な断面図である。この電子レンジ用飲料抽出フィルター1は、第1の不織布層2と第2の不織布層3との積層構造を有している。このうち、第1の不織布層2は、ポリエステル、ポリオレフィン等の疎水性熱融着性繊維を湿式法で不織布に形成したものであり、湿式法における脱水減圧工程で厚さ方向に略直線状の微細孔4が形成されるようにしたものである。この微細孔4の平均孔径は、フィルター1に常温の水に対する非通液性と昇温したコーヒー等の抽出液に対する通液性を付与する点から、70〜250μmとする。ここで、微細孔4の平均孔径は、バブルポイント法から得られる数値である。バブルポイント法とは、毛細管現象によって細孔に液体を満たした状態のフィルターに一定流量(3L/min)の空気を流した時点での圧力を測定し、この圧力から細孔の平均孔径を算出する方法である。
【0012】
また、第1の不織布層2の坪量は、フィルター1に常温の水に対する非通液性と昇温したコーヒー等の抽出液に対する通液性を付与する点から、10〜30g/m2とする。
【0013】
なお、本発明において、第1の不織布層の形成方法は、厚さ方向に平均孔径70〜250μmの微細孔が形成され、坪量を10〜30g/m2とする限り、湿式法に限らず、スパンボンド法、サーマルボンド法等により形成してもよい。
【0014】
一方、第2の不織布層3は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の疎水性熱融着性繊維を坪量5〜30g/m2の不織布に形成したものである。これにより、フィルター1に常温の水に対する非通液性と昇温したコーヒー等の抽出液に対する通液性を付与することが可能となる。第2の不織布層3の形成方法としては、メルトブロー法、スパンボンド法、サーマルボンド法等をあげることができる。
【0015】
第2の不織布層3の構成繊維の繊維径としては、第1の不織布層2の微細孔4を適度に塞ぐ点から、平均繊維径を0.01〜6.0μmとすることが好ましい。
【0016】
第1の不織布層2と第2の不織布層3との積層方法は、各不織布層をそれぞれ形成後、熱エンボス等により両者を一体化してもよく、また、第1の不織布層2上で第2の不織布層3を形成することにより、第2の不織布層3の形成と第1の不織布層2との積層一体化を同時に行ってもよい。
【0017】
第1の不織布層2と第2の不織布層3の総坪量は15〜60g/m2とする。
【0018】
以上のように、第1の不織布層2と第2の不織布層3を形成することにより、第1の不織布層2の微細孔4が適度に第2の不織布3の構成繊維で塞がれ、かつこれら両層の構成繊維は疎水性であるために、電子レンジ用飲料抽出フィルター1の常温の水に対する実際上の通液性がなくなり、電子レンジ用飲料抽出フィルター1上に水を保持させることが可能となる。したがって、例えば、電子レンジ用飲料抽出フィルター1を、上端が開口した袋状に形成すると、その中にコーヒー粉、紅茶葉、緑茶葉等の抽出材料と水とを保持させることが可能となる。
【0019】
一方、第1の不織布層2と第2の不織布層3とを積層した電子レンジ用飲料抽出フィルター1は、昇温した抽出液に対する通液性は有するものとなる。特に、抽出材料としてコーヒー粉を使用する場合、コーヒー抽出液には抽出液の表面張力を顕著に低下させる両親媒性物質が含まれているため、抽出液中の両親媒性物質が電子レンジ用飲料抽出フィルター1に吸着し、フィルターの表面性状を疎水性から親水性に変え、抽出液の表面張力を著しく低下させるので、抽出液が電子レンジ用飲料抽出フィルター1を容易にしみ通るようになる。
【0020】
以上、図1に示した電子レンジ用飲料抽出フィルター1について本発明を説明したが、本発明の電子レンジ用飲料抽出フィルターは種々の態様をとることができる。例えば、強度を高め、こしを持たせるため、第2の不織布層3上にさらに第3の不織布層を積層してもよい。この場合、第3の不織布層としては、ポリエステルスパンボンド不織布等が好ましい。
【0021】
本発明の電子レンジ用飲料抽出フィルターは、任意の袋状に成形することができる。例えば、図2のように、汎用されているコーヒードリッパーにはめて使用する電子レンジ用袋状フィルター10は、電子レンジ用飲料抽出フィルター1を、第1の不織布層を内側にして折れ線11で折り、側面と底面に熱シール部12を設け、上部に開口部13を形成することにより得られる。
【0022】
この電子レンジ用袋状フィルター10の使用方法としては、図3に示すように、例えば、底部に流出孔の開いた一般的なドリッパー20の中にこの袋状フィルター10をはめ、その中にコーヒー粉21と水22を入れ、カップ23の上に載せる。なおこの場合、ドリッパー20やカップ23としては、電子レンジに使用するのことできる耐熱性材料(ポリプロピレン、ポリカーボネート、耐熱ガラス等)からなるものを使用する。
【0023】
袋状フィルター10内に単にコーヒー粉21と水22を入れた状態では、袋状フィルター10には未だ通液性がないので、コーヒー粉21と水22は共に袋状フィルター10内に保持されている。次に、このカップ23を電子レンジの庫内に入れ、電子レンジを作用させる。これにより、水22が加熱されて袋状フィルター10内にコーヒー抽出液を得られる。コーヒー抽出液は袋状フィルター10をしみ通るので、コーヒー抽出液をカップ23内に滴下させ、袋状フィルター10内に抽出かすを残すことができる。
【0024】
図4は、電子レンジに使用することのできるマイクロ波透過性樹脂からなるドリッパーの内壁に部分的に前述の電子レンジ用飲料抽出フィルター1を貼付し、ドリッパーとフィルターを一体化させた、使い捨ての電子レンジ用ドリッパー30の部分断面正面図(同図a)、部分断面側面図(同図b)、部分断面平面図(同図c)、切り欠き斜視図(同図d)であり、図5は、その使用方法の説明図である。この電子レンジ用ドリッパー30は、ドリッパー本体31が、上部が開口した略円錐状形状で、内壁の一部に上縁部32から底部の流出孔33に至る複数の溝34を有し、溝34上に電子レンジ用飲料抽出フィルター1が貼着されたものとなっている。
【0025】
この電子レンジ用ドリッパー30の使用方法としては、図5に示すように、電子レンジ用ドリッパー30を、電子レンジで使用することのできる材料からなるカップ23の上に載せ、電子レンジ用ドリッパー30内にコーヒー粉21と水22を入れる。このとき、電子レンジ用ドリッパー30に貼付されている電子レンジ用飲料抽出フィルター1は未だ通液性がないので、コーヒー粉21と水22は共に電子レンジ用ドリッパー30内に保持されている。次に、このカップ23を電子レンジの庫内に入れ、電子レンジを作用させる。これにより、水22が加熱されて電子レンジ用ドリッパー30内にコーヒー抽出液を得られ、そのコーヒー抽出液をカップ23内に滴下させ、抽出かすを電子レンジ用ドリッパー30内に残すことができる。
【0026】
本発明の電子レンジ用飲料抽出フィルターを用いた電子レンジ用ドリッパーは、図4の態様に限らず、ドリッパーの全面に電子レンジ用飲料抽出フィルターを貼付してもよい。また、電子レンジ用飲料抽出フィルターを貼付するドリッパー本体も略円錐状形状のものに限らない。例えば、円筒状等とし、その底部に電子レンジ用飲料抽出フィルターを貼付してもよい。
【0027】
また、本発明は、コーヒーの抽出に限らず、紅茶、緑茶等の種々の飲料を電子レンジを用いて抽出する場合のフィルターあるいはドリッパーとして、有用なものとなる。
【0028】
【実施例】
参考例
コーヒー抽出液の濃度と表面張力との関係を調べるため、表1に示す量の粗挽きコーヒー粉をそれぞれ140mLの熱水でドリップすることにより種々の濃度のコーヒー抽出液を得、各抽出液のポリプロピレン成形板に対する接触角を測定した。なおこの場合、熱水としては、水道水を加熱したものを用いた。また、接触角は、図6に示すようにポリプロピレン成形板40上に滴下したコーヒー抽出液の液滴41の端部における接線とポリプロピレン成形板40とのなす角度θを、各抽出液について5回ずつ測定し、その平均を求めた。結果を表1、図7に示す。
【0029】
これにより、コーヒー粉の使用量が増え、抽出液の濃度が高くなるのに伴って抽出液のポリプロピレン成形板に対する接触角が小さくなり、表面張力が小さくなることがわかる。このことから、コーヒー抽出液は、コーヒー抽出前の水に対して本発明のフィルターを通液し易いことがわかる。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1〜4、比較例1、2
表2に示すように、第1の不織布層、第2の不織布層又は第3の不織布を一体化させた積層構造フィルター(実施例1〜4)あるいは単一層構造のフィルター(比較例1、2)を作製し、それを図2のように袋状に成形した。
【0032】
各フィルターを市販の1〜2人用のコーヒードリッパーにセットし、それをコーヒーカップ上においた。また、フィルターをセットしたコーヒードリッパー内に市販のコーヒー粉10gを入れ、そこに28℃の水を140mL注水し、注水後30秒経過してから電子レンジ(500W)で所定時間加熱した。この場合、注水後コーヒードリッパーから抽出液が滴下を開始するまでの時間(滴下開始時間)と、注水後コーヒードリッパーから抽出液の滴下が完了するまでの時間(滴下完了時間)を測定した。同種のフィルターについて、同一条件での測定を複数回行った場合には、その平均値を求めた。これらの結果を表3に示す。
【0033】
また、カップに溜まった抽出液の濃度を、糖度計を用いて糖度に対応する数値として得た(Brix%)。この結果も表3に示した。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表3の結果から、実施例1〜4のフィルターを使用すると、フィルター内の水が電子レンジで加熱され、その後に抽出液の滴下が始まるのでカップ内にコーヒー抽出液を得ることができるが、比較例1、2のフィルターを使用すると、フィルター内の水が電子レンジで加熱される前に全て滴下してしまうので、カップ内にはコーヒー抽出液ではなく、単に水が溜まるのみであることがわかる。
【0037】
また、実施例3(d)、実施例4(c)、(d)では、コーヒー抽出液に濁りが見られたことから、カップ一杯分程度のコーヒーは、150秒以下の電子レンジ加熱で良好な濃さに得られることがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、電子レンジを用いた、コーヒー、紅茶、緑茶等の飲料の抽出を簡便に行うことができ、かつ、コーヒー、紅茶、緑茶等の抽出材が湯で抽出された後は、その抽出かすを速やかに抽出液から分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子レンジ用飲料抽出フィルターの模式的断面図である。
【図2】 本発明の電子レンジ用袋状フィルターの側面図である。
【図3】 本発明の電子レンジ用袋状フィルターの使用方法の説明図である。
【図4】 本発明の電子レンジ用ドリッパーの部分断面正面図、部部断面側面図、部分断面平面図及び切り欠き斜視図である。
【図5】 本発明の電子レンジ用ドリッパーの使用方法の説明図である。
【図6】 コーヒー抽出液のポリプロピレン成形板に対する接触角の測定方法の説明図である。
【図7】 コーヒー抽出液の濃度とポリプロピレン成形板に対する接触角との関係図である。
【符号の説明】
1…電子レンジ用飲料抽出フィルター
2…第1の不織布層
3…第2の不織布層
4…微細孔
10…電子レンジ用袋状フィルター
11…折れ線
12…熱シール部
13…開口部
20…ドリッパー
21…コーヒー粉
22…水
23…カップ
30…電子レンジ用ドリッパー
31…ドリッパー本体
32…上縁部
33…流出孔
34…溝
Claims (5)
- 厚さ方向に平均孔径70〜250μmの微細孔が形成された第1の不織布層と、該第1の不織布層の微細孔の少なくとも一部を塞ぐように積層されている第2の不織布層からなり、第1の不織布層と第2の不織布層がそれぞれ疎水性熱融着性繊維からなり、第1の不織布層の坪量が10〜30g/m2、第2の不織布層の坪量が5〜30g/m2、第1の不織布層と第2の不織布層の総坪量が15〜60g/m2であるフィルターであって、第1の不織布層上に常温水と抽出材料を保持し、それを電子レンジ加熱することにより昇温した抽出液を得、かつ該抽出液のフィルターに対する表面張力が電子レンジ加熱前の常温水に比して低下することにより、抽出液を通液させることのできる電子レンジ用飲料抽出フィルター。
- 第1の不織布層が湿式法により形成された不織布からなる請求項1記載の電子レンジ用飲料抽出フィルター。
- 第2の不織布層の構成繊維の平均繊維径が、0.01〜6.0μmである請求項1又は2記載の電子レンジ用飲料抽出フィルター。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ用飲料抽出フィルターを、第1の不織布層を内側にし、上端が開口した袋状に成形した電子レンジ用袋状フィルター。
- 樹脂製のドリッパーの内壁の少なくとも一部に請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ用飲料抽出フィルターが貼付されてなる電子レンジ用ドリッパー。
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