JP3559513B2 - 磁気抵抗効果素子、その製造方法及び製造装置並びに磁気再生装置 - Google Patents

磁気抵抗効果素子、その製造方法及び製造装置並びに磁気再生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果素子、その製造方法及び製造装置並びに磁気再生装置に関し、より詳細には、本発明は、電子を鏡面反射する磁気抵抗効果向上層としての酸化物層または窒化物層を有するスピンバルブ膜を用いた磁気抵抗効果素子、その製造方法及び製造装置並びに磁気再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク磁気記録装置(Hard Disk Drive:HDD)の高密度化を実現するために、磁気抵抗効果を用いた巨大磁気抵抗効果型(Giant MagnetoResistace effect:GMR)ヘッドの開発が進められている。更なる高密度化のためには、より高感度のSV−GMR(Spin−Valve Giant Magnetoresistive)ヘッドが必要であり、磁気抵抗変化率(以下、「MR変化率」と称する)のさらなる向上が重要である。
【0003】
本発明者らは、MR変化率の向上のためにスペキュラー(鏡面反射)効果を利用し、かつ実用的なスピンバルブ膜構造となる、NOL−SPSV(Nano OxideLayer Specular Spin−Valve)膜を提案した(Kamiguchi et al. ”CoFe SPECULAR SPIN VALVES WITH A NANO OXIDE LAYER”.Digests of Intermag’99, DB−01, 1999)。「NOL」(Nano Oxide Layer)と呼ばれる極薄の酸化層をフリー(磁化自由)層もしくはピン(磁化固着)層中に挿入し、その界面で伝導電子を反射させることによって、スピンバルブ膜を擬似的な人工格子膜のようにして、MR変化率を向上させることができる。本発明者らは、この構造によって、スピンバルブ膜のMR変化率を飛躍的に向上させることに成功した。
【0004】
しかしながら、ピン層中にNOLを挿入して、高いスペキュラー率を維持しつつ、NOLを介した上下ピン層の磁気的に十分な強さのカップリングを保つことは非常に困難である。
【0005】
例えば、酸素ガスをフローさせてNOLを形成する場合、高スペキュラー率を得るためにNOLを形成する酸化工程において酸素暴露量を多くすると、NOLを介した磁気的なカップリングは弱くなっていくのに対して、スペキュラー率はあまり向上しないという問題がある。
【0006】
逆に、弱い酸素暴露量で酸化すると、NOLを介した上下ピン層の磁気的なカップリングは強くなるが、高いスペキュラー率が得られなくなり、MR変化率があまり向上しないという問題があった。
【0007】
また、単純な酸素フローによる方法では、酸素フローだけをコントロールすれば良いので低酸素量から高酸素量まで制御性が良いというメリットはあるが、酸化プロセスにおいてエネルギを全く与えていないため、形成できるNOLの物性の制御範囲が狭く、プロセス上の制御範囲も非常に狭いものであった。
【0008】
一方、安定した酸化物による高スペキュラー率、酸素拡散の影響を小さいNOLを形成するために、上述したような単純な酸素フローによる酸化ではなく、高エネルギプロセスを用いるという考え方もある。
【0009】
例えば、酸素をプラズマ化して、イオンビームとして酸化したい膜表面に照射するという方法がある(Ion Beam Oxidation:IBO)。この手法は、高エネルギプロセスという点では有効だが、酸素プラズマを着火(発生)するまでのあいだ、サンプル表面が浮遊酸素に晒されてしまうため、単純酸素ガスによる酸化膜が形成されてしまい、初期成長NOLの部分では自然酸化膜と同様な層ができてしまうという問題があった。低エネルギ、低反応性で生成された初期NOL層は、MR変化率の指標となるΔGsを低下させてしまう。
【0010】
これは、プラズマ酸化やラディカル酸化の場合でも同様であり、プラズマエネルギによる高エネルギ酸化は可能なものの、初期成長NOLの部分において、どうしても浮遊酸素による自然酸化膜の影響がでてしまうという問題があった。
【0011】
以上、説明したように、自然酸化法の場合には、酸素フロー量の低酸素量から高酸素量まで酸素暴露量の制御性は比較的優れているものの、酸化時にエネルギが付与されないため高スペキュラー率が得られない。これに対して、IBO、ラディカル酸化やプラズマ酸化では、高エネルギ酸化という点では有利なものの、酸素量のコントロールが十分ではなく、低酸素量がコントロールできないばかりか、初期成長NOLとして自然酸化膜が形成されてしまうという問題点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、高スペキュラー率を得るということと、NOL中の酸素を熱的に安定にするために、エネルギ供給のない自然酸化では安定した酸化物を得ることが非常に困難であるとの結論に至った。しかしながら、従来の高エネルギプロセス手法では低酸素量がコントロール困難であり、かつ初期成長NOLが必ず自然酸化膜となってしまう。
【0013】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものである。すなわち、その目的は、エネルギ供給等による高反応性の利点を維持しつつ、初期成長による自然酸化膜の発生を防ぐことができる方法により形成した磁気抵抗効果素子、その製造方法及び製造装置並びに磁気再生装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の磁気抵抗効果素子は、2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子であって、酸化物または窒化物を主成分とする層をさらに有し、
前記酸化物または窒化物を主成分とする層は、それと接する層と比較して、アルゴン、キセノン、ヘリウム、クリプトン、ネオンのうちの少なくともいずれかの希ガスを相対的に多く含有することをことを特徴とする。
【0015】
ここで、前記酸化物または窒化物を主成分とする層に含有される前記希ガスの原子組成は、前記酸化物または窒化物を主成分とする層に接する前記層に含有される前記希ガスの原子組成の2倍よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
また、前記酸化物または窒化物を主成分とする層は、酸素とも窒素とも結合していない、Co、Fe、Niのいずれかの磁性遷移金属元素を含有することを特徴とする。
【0017】
また、前記酸化物または窒化物を主成分とする層の膜厚は、1nm以上3nm以下であることを特徴とする。
【0018】
また、前記酸化物または窒化物を主成分とする層は、Fe,Co,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Zr,Mo,Hf,Ta,W,Alのいずれかの酸化物または窒化物を主成分とすることを特徴とする。
【0019】
また、前記2つの強磁性層のいずれか一方は、磁化の方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層であり、前記2つの強磁性層のいずれか他方は、磁化の方向が外部磁界に応じて変化する磁化フリー層であり、前記磁気抵抗効果素子の抵抗は、前記磁化固着層の前記磁化の方向と前記磁化フリー層の前記磁化の方向との相対角度によって変化することを特徴とする。
【0020】
但し、磁気抵抗効果素子としては、実施形態において詳細に説明するスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子のほか、強磁性層が磁気結合した人工格子型の巨大磁気抵抗効果素子や、非磁性層として非磁性絶縁層を用いたトンネル時期抵抗効果素子などについても、本発明は同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0021】
一方、本発明の磁気抵抗効果素子の製造方法は、2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造方法であって、酸素及び窒素の少なくともいずれかを含有する雰囲気において母材の表面に希ガスのイオンまたはプラズマを照射することにより、前記母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程を備えたことを特徴とする。
【0022】
ここで、前記酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程は、前記希ガスのイオンまたはプラズマを生成する工程と、前記希ガスのイオンまたはプラズマを前記母材の表面に照射し、これとほぼ同時に前記雰囲気に酸素及び窒素の少なくともいずれかを導入する工程と、前記希ガスのイオンまたはプラズマの前記母材への照射を停止し、これとほぼ同時に前記雰囲気への前記酸素及び窒素の少なくともいずれかの導入を停止する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、前記酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程は、イオン源に前記希ガスを導入して前記希ガスのイオンまたはプラズマを生成する工程と、前記希ガスのイオンまたはプラズマを前記母材の表面に照射し、これとほぼ同時に前記イオン源に酸素及び窒素の少なくともいずれかを導入する工程と、前記希ガスのイオンまたはプラズマの前記母材への照射を停止し、これとほぼ同時に前記イオン源への前記酸素及び窒素の少なくともいずれかの導入を停止する工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
または、本発明の磁気抵抗効果素子の製造方法は、2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造方法であって、母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程を備え、前記酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程は、希ガスのプラズマを生成する工程と、前記希ガスのプラズマを生成する工程の後に、前記希ガスのプラズマを生成した雰囲気中に酸素及び窒素のいずれかを導入する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
ラディカル酸化において、初期ラディカルプラズマを生成する時に、最初から酸素ラディカルを生成しようとすると、ラディカル状態でない単純な酸素ガスがチャンバーに漏れ入り、ダーティーな自然酸化膜が形成されてしまう。これに対して、上記の構成によれば、ラディカルプラズマを生成する時に、最初は希ガスだけでプラズマを生成しておき、プラズマが安定したところで酸素ガスを導入し(例えばラディカル源に酸素を導入する)、酸素ガスの導入と同時に酸化が始まるようにする。従来のラディカル酸化では、こういう発想は全くなかった。
【0026】
ここで、前記希ガスのプラズマの生成が十分に安定したことを確認した後に、酸素及び窒素のいずれかを導入することが望ましい。
【0027】
また、前記母材は、Fe,Co,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Zr,Mo,Hf,Ta,W,Alの少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
【0028】
また、前記酸素は600ラングミュア以下であることを特徴とする。
【0029】
また、前記希ガスのイオンを照射する時間が5秒以上60秒以下であることを特徴とする。
【0030】
また、前記母材の表面に希ガスのイオンを照射するタイミングと、前記母材の表面を酸素及び窒素の少なくともいずれかに晒すタイミングとの時間差は15秒以内であることを特徴とする。
【0031】
また、前記母材の表面へのイオンの照射は、イオンビームの照射によって行うことを特徴とする。
【0032】
さらに、前記イオンビームの加速エネルギは50eV以上150eV以下であることを特徴とする。
【0033】
また、前記希ガスのイオンをRF励起のプラズマにより生成することを特徴とするで行うことを特徴とする。
【0034】
さらに、前述したいずれの製造方法においても、前記2つの強磁性層のいずれか一方は、磁化の方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層であり、前記2つの強磁性層のいずれか他方は、磁化の方向が外部磁界に応じて変化する磁化フリー層であり、前記磁気抵抗効果素子の抵抗は、前記磁化固着層の前記磁化の方向と前記磁化フリー層の前記磁化の方向との相対角度によって変化することを特徴とする。
【0035】
但し、磁気抵抗効果素子としては、実施形態において詳細に説明するスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子のほか、強磁性層が磁気結合した人工格子型の巨大磁気抵抗効果素子や、非磁性層として非磁性絶縁層を用いたトンネル時期抵抗効果素子などについても、本発明は同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0036】
一方、本発明の磁気抵抗効果素子の製造装置は、2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造装置であって、酸化室内に載置した母材の表面に希ガスのイオンを照射し、これとほぼ同時に前記母材の前記表面を1000ラングミュア以下の酸素及び窒素の少なくともいずれかに晒すことにより、前記母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする酸化物または窒化物を主成分とする層を形成可能としたことを特徴とする。
【0037】
ここで、前記2つの強磁性層のいずれか一方は、磁化の方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層であり、前記2つの強磁性層のいずれか他方は、磁化の方向が外部磁界に応じて変化する磁化フリー層であり、前記磁気抵抗効果素子の抵抗は、前記磁化固着層の前記磁化の方向と前記磁化フリー層の前記磁化の方向との相対角度によって変化することを特徴とする。
【0038】
但し、磁気抵抗効果素子としては、実施形態において詳細に説明するスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子のほか、強磁性層が磁気結合した人工格子型の巨大磁気抵抗効果素子や、非磁性層として非磁性絶縁層を用いたトンネル時期抵抗効果素子などについても、本発明は同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0039】
ここで、前記希ガスのイオンは、アルゴン、Xe、He、Kr、Neの少なくともいずれか希ガスのプラズマ化が可能なプラズマ源により生成することを特徴とする。
【0040】
また、前記イオンの加速エネルギが50eV以上150eV以下であることを特徴とする。
【0041】
また、前記酸素及び窒素の少なくともいずれかは1000ラングミュア以下であることを特徴とする。
【0042】
また、前記希ガスのイオンを生成するためのイオン源のポジティブグリッドの加速電圧用にグリッドに流れる電流がグリッドの単位平方インチ面積あたり、0.1mA/inch〜1mA/inchの制御が可能であることを特徴とする。
【0043】
また、前記磁気抵抗効果向上層は酸化室で形成され、前記酸化室は、前記母材を表面に有するウェーハを搬送する手段を有する搬送真空室と真空用バルブを介して接続され、その搬送真空室は、金属スパッタ成膜用真空室とも真空用バルブを介して接続されていることを特徴とする。
【0044】
一方、本発明の磁気再生装置は、前述したいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、磁気記録媒体に記録された磁気的情報を再生可能としたことを特徴とする。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明者は、エネルギの付与と酸素供給とを独立に行うような製造法にすることによって、初期NOLからエネルギ供給のある安定した酸化物が得られるとの結論に至った。つまり、従来の高エネルギプロセスでは酸素をプラズマ状態にしてから酸化室へ供給していたのに対し、本発明ではそのことが必ずしも重要ではなく、エネルギと酸素とを独立に供給することが最も望ましい手法であるという結論に至った。
【0046】
つまり、高エネルギのイオンのアシストがない状態や、ラディカル状態になっていないすなわち高反応性でない状態の、単純な分子酸素ガスに対しては、酸化したい膜表面が晒されないようにすることが重要であることがわかった。
【0047】
そして、具体的には、例えばイオンビームによるエネルギ供給を考える場合には、イオンビームは基本的にはアルゴン、Xe、Ne、またはHeなどの酸素を含まない希ガスのイオンビームを用い、イオンビーム照射の準備が整いイオンビームを母材の表面に照射するときに初めて酸素ガスを酸化室に導入するというシーケンスにすることによって、初期NOLから自然酸化膜のない高エネルギ酸化膜が得られることを見出した。
【0048】
酸化室への酸素の供給方法は、イオン源とは全く関係なく、酸化室に直接導入しても良いし、また希ガスイオンビームと同様のイオン源に供給することもできる。
【0049】
このように、高エネルギプロセスとして希ガスイオンによるアシスト効果を利用し、反応させたい酸素や窒素ガスとは別に、イオンを供給する本発明の酸化方法をIAOと命名した(Ion Assisted Oxidation)。
【0050】
本発明の基本的な考え方は、反応させたい酸素や窒素については、特にイオン化する必要がないため、酸素や窒素ガスの供給ラインは酸化室に通常の分子ガスとして供給する、というものである。
【0051】
しかし、本発明によるイオンやプラズマによるエネルギを与える前に酸素や、窒素が酸化室に導入されないような本発明による新しいIAOによるプロセスシーケンスを用いれば、従来IBO装置のイオンガンに酸素や窒素を供給しても実施することができる。また、通常のプラズマ酸化では酸素プラズマ酸化プロセスシーケンスのみが変わることになる。このIAOによるプロセスシーケンスの考え方は、従来のプラズマ酸化やラディカル酸化を用いた手法にも適用することが可能となる。例えば、通常のプラズマ酸化では酸素のプラズマを照射するという考え方だが、本発明ではアルゴンやXeなどの希ガスのプラズマを照射するところに酸素や窒素ガスは分子状態で与えればよいので、低酸素、低窒素量の制御が可能となる。
【0052】
また、本発明の手法をラディカル酸化に適用する場合は、ラディカル源でプラズマを生成する段階では酸素ガスは導入せず希ガスのみを導入して、希ガスプラズマが安定した後に、酸素ガスをラディカル源に導入して酸化工程を開始する。従来のラディカル酸化法では、初期のプラズマを生成する段階からラディカル源に酸素ガスを導入していたため、高反応性を有しない、ラディカル状態でない単純酸素分子ガスが膜表面に達し、低反応性過程によってダーティーな自然酸化膜が形成されてしまう。これに対して本発明によれば、酸素ガスをラディカル源に導入するタイミングを最適化することより、ダーティーな自然酸化膜の生成を防ぐことができる。
【0053】
以下、本発明の実施の形態について具体例を参照しつつ詳細に説明する。
【0054】
(第1の実施例)
まず、本発明の第1の実施例として、スピンバルブ構造の磁気抵抗効果素子に、IAO酸化を用いた低酸素量の酸化によるNOLを付与する具体例について説明する。
【0055】
本実施例においては、以下のような積層構成を有するNOL−SPSV(NOL−鏡面反射スピンバルブ)膜を形成した。ここで、各層のかっこ内の数字は、層厚(ナノメータ)を表す。
【0056】
Ta(2nm) キャップ層
TaO 反射層
Cu(1nm) 高導電層
CoFeNi(2nm)フリー層
Cu(2.2nm) 非磁性中間層
CoFe(2nm) ピン層▲2▼
NOL NOL
CoFe(1nm) ピン層▲1▼
PtMn(10nm) 反強磁性層
NiFeCr(5nm)下地膜▲2▼
Ta(3nm) 下地膜▲1▼
基板 基板
基板としては、実際のヘッドにおいてはシールド膜の上にアモルファスアルミナがコートされた「アルチック基板」を用いるが、膜特性を評価する場合には、熱酸化シリコン基板を用いた。両者の間で膜の特性が変わらないことは確認している。本実施例では熱酸化シリコン基板を用いた。なお、アモルファスアルミナがコートされたシリコン基板を用いた場合でも、膜特性は変わらない。
【0057】
図1は、本実施例においてNOL−SPSV膜を形成した成膜システムの構成を表す概略図である。
【0058】
すなわち、本成膜システム100は、トランスファー室102に対して、ロードロック室104のほか、プレクリーニング室106、酸化室108、2つのメタルデポジション室110及び112がそれぞれ真空バルブ104V〜112Vを介して接続されている。そして、以下に説明する各プロセスにおいて各室からトランスファー室を介して、ウェーハが搬送されるようになっている。
【0059】
ウェーハは、大気圧にしたロードロック室104に導入されるが、この時も、それ以外の全ての室はプロセスガスを導入しない状態の背圧が8×10−8torrよりも高真空に保たれている。ロードロック室はトランスファー室に真空バルブ104Vを介して結合されている。
【0060】
メタルデポジション室110、112は、スピンバルブ膜を成膜できるように薄膜金属成膜に適したものであり、少なくともいずれかのメタルデポジション室は6元以上の多元方式のもので、DC方式またはRF方式のPVD(Physical Vapor Deposition)スパッタ室でも、IBD(Ion Beam Deposition)スパッタ室でも構わない。また、図1に例示したように2つのメタルデポジション室を有さず、1つのメタルデポジション室のみでもスピンバルブ膜の材料数が足りれば構わない。本実施例の構成の膜においては、DCマグネトロン方式の6元PVDが可能なメタルデポジション室110、112で金属膜の部分を成膜した。
【0061】
ロードロック室104にセットされたウェーハは、まずプレクリーニング室106においてアルゴン(アルゴン)イオンビームによって表面吸着物をクリーニングされる。なお、ここではプレクリーニング室106を用いたが、メタルデポジション室110または112でPVDの逆スパッタしたり、IBDのアシストガンによってウェーハをクリーニングしても構わない。
【0062】
その後、ウェーハは、PVD方式のメタルデポジション室110または112に搬送され、Ta層、NiFeCr層、PtMn層、CoFe層がそれぞれ成膜される。
【0063】
ここで、下地膜のTa/NiFeCrに関しては、Ti、Zr、Hf、W、Nbおよびその合金材料やその他のバッファ層になる材料、NiFeCrの代わりにfcc(face centered cubic)配向を促進するシード層材料であっても構わない。もし、これらの下地バッファ層のいずれか1層で十分役割を果たすならば、2層積層膜ではなく1層構成でも構わない。良好な下地バッファ効果、シード効果をもたせるためには、これら下地層の膜厚を合計で3〜8nmとするのが好ましい。
【0064】
また、この上に成膜するPtMn層(反強磁性層)の代わりに、PdPtMn、IrMn、RuRhMnのようなほかの反強磁性材料を成膜しても構わない。膜厚としては、15nm〜7nm程度が好ましく、この範囲のなかでも反強磁性膜としての特性が得られるかぎり薄ければ薄いほど好ましい。これは、PtMnはMR変化率に対してシャント分流の効果をもってしまうので、シャント低減のためという意味合いと、シールドタイプのヘッドとして本発明が使われる場合には、高密度化に伴い狭ギャップにする必要があるため、スピンバルブ膜のトータル膜厚が薄ければ薄いほど好ましいからである。
【0065】
また、この反強磁性膜の上に成膜されるCoFe層(ピン層▲1▼)の代わりに、Co、Ni、Fe、NiFe、もしくはそれらの材料に添加元素を加えたものを用いてもよい。この膜は、この後に成膜されるNOLになる母材金属膜の材料と兼用できるときには成膜しなくとも構わない。この膜の好ましい範囲は、0〜3nmである。
【0066】
また、本実施例においては、単純ピン構造をとっているが、シンセティックアンチフェリ構造(Sy−AF構造)をとっても構わない。その場合には、PtMn等の反強磁性膜の上にCo、CoFe、NiFe、またはそれらの金属に添加元素を加えた磁性材料が成膜され、その上にRuが約1nm、その上に成膜される材料が本実施例でPtMnの上に成膜されたCoFe1nmと同様な役割を果たす膜となる。よって、Sy−AF構成の場合であっても、以下に説明することは本質的には変わらない。
【0067】
以上説明した積層金属膜を形成した後、上記(1)でNOL(Nano Oxide Layer)と明示されている部分となるべき金属膜も金属成膜室で成膜される。ここでは、Fe50Co50を約1nm成膜した。ここで、酸化膜であれば「NOL」という言葉で適切だが、本発明は必ずしも酸化膜だけに限定されない。そこで、本願明細書においては、酸化物だけでなく、窒化物、炭化物、硼素化物、フッ化物からなる薄膜も含めた一般的な呼び方として、「NOL」の代わりに「磁気抵抗効果向上層」なる言葉も併用する。
【0068】
すなわち、本願明細書において、「磁気抵抗効果向上層」とは、これらの材料を主成分とした薄膜であって、磁気抵抗効果素子中に設けられセンス電流として検出されるべき電流を構成する荷電粒子を反射させる作用を有するものをいう。
【0069】
磁気抵抗効果向上層となるべき母材金属の材料選定は、良好なスペキュラリティーを得るために非常に重要である。特に、ピン層側に挿入される磁気抵抗効果向上層については、磁気的な結合も達成しなければならないため、材料選定はさらに重要である。高スペキュラリティーと大きな磁気的結合を両立するための一つの条件として、少なくともCo、Fe、Niの3つのうちの1つの磁性金属元素を含むことが磁気抵抗効果向上層には望ましい。これら3種以外の元素でも、Mn,Cr,Vを含み、それら母材金属の中にB、Ti,Zr,Mo,Hf,Ta,W,Alを含んでいるものも用いることができる。
【0070】
磁気抵抗効果向上層としてNOLを用いる場合の母材としては、酸化によって形成されるNOLが高ネール点、高キュリー点をもつ、Fe、FeCo合金等が望ましい。これらの母材に、Cr、B、C等の添加元素を加えたものでも構わない。本実施例で用いたFe50Co50を母材にしたNOLは、後に述べるように、高いスペキュラリティーと高い磁気的カップリングとを両立できるが、Co90Fe10では良好な磁気カップリングは得られない。Co90Fe10を用いた場合には、本プロセスのような高エネルギ酸化ではなく、酸素をフローするだけの自然酸化をすれば磁気的カップリングは得られるが、スペキュラリティーは、本発明によるIAOを用い、NOLの母材としてFe50Co50を用いたものと比較して明らかに小さいので、不十分である。
【0071】
その後、ウェーハは、酸化室に搬送される。この室でのNOL形成プロセスが本発明による大きな特徴となるところである。ここでは本発明によるIAOプロセスを行う。
【0072】
図2は、IAOプロセスを行う酸化室の構成を例示する概念図である。すなわち、酸化室108は、クライオ・ポンプなどの排気ポンプ108Aにより減圧状態とすることができ、ウェーハを載置するホルダ108B、シャッター108C、イオン源108Dが設けられている。また、ウェーハ付近に酸素ガスを供給する酸素ガス導入系108Eと、イオン源にガスを導入するイオン源ガス導入系108Fと、酸化室にアルゴンガスを導入するアルゴン導入系108Gとが設けられている。それぞれの導入系は、マスフローコントローラなどの流量制御手段108H、108I、108Jを有する。
【0073】
IAOプロセスを行う酸化室108のひとつの特徴は、酸素ガス導入系108Eがイオン源108Dではなく酸化室108のウェーハ周囲に酸素を直接導入する点にある。また、エネルギ供給源としてイオン源108Dがあり、加速グリッド、減速グリッド、grand−グリッドを有する。さらに、プラス(+)にチャージされたイオンを中性化するためのニュートラライザも有する。イオン源用ガスとして、ここではアルゴン(アルゴン)ガスを用いる場合を例示したが、希ガスであれば、Xe、He、Ne、Kr等のガスを用いても構わない。
【0074】
なお、図2においては、膜表面にイオンビームを垂直(90°)に入射させる機構を例示したが、酸化膜厚を制御するためにイオンビームを斜めに入射させてもよい。この時に、入射角が傾斜する程、膜厚方向へのエネルギ供給の代わりに、膜表面近傍だけでのエネルギ照射に近づき、膜表面だけでの酸化膜を形成することが可能となる。つまり、装置構成としては、イオンビームの入射角度が90°の場合のみでなく、入射角度が10°程度の低角度までの範囲に対応するものであっても良い。
【0075】
2 図3は、本発明の酸化プロセス及びその前後のプロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【0076】
また、図4は、比較例として本発明者が実施した酸化プロセス及びその前後のプロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【0077】
まず、図4を参照しつつ、比較例の酸化プロセスについて説明する。
【0078】
比較例の酸化プロセスにおいては、まず、ステップS101において、メタルデポジション室においてPVD法やIBD法などにより金属膜を堆積する。
【0079】
次に、ステップS102において、ウェーハを酸化室に搬送する。
【0080】
次に、ステップS103において、酸素を含むイオンビームをストライクできる状態にする。具体的には、イオン源ガス供給系108Fを介してイオン源108Dに、酸素を含有したガスを導入し、イオン源108Dの内部でプラズマを発生させて安定化させる。この際に導入するガスは、酸素のみでも良く、または酸素とアルゴンやキセノンなどとの混合ガスでも良い。
【0081】
このステップにおいて、ホルダ108Bに載置されたウェーハは、シャッター108Cによって覆われているため、イオン源108Dから放出される酸素イオンビームはウェーハ表面には照射されない。しかし、イオン源108Dから漏れ出た酸素ガスは、シャッタ108Cの周囲からまわり込んでウェーハに達する。つまり、シャッタ108Cを閉じた状態でも、ウェーハは酸素ガスに晒されることとなる。その結果として、ウェーハの表面には自然酸化膜が形成されてしまう。
【0082】
次に、ステップS104においてウェーハに酸素イオンビームを照射する。具体的には、イオン源108Dのイオンビームが所定の条件で安定した状態で、シャッター108Cを開ける。酸素イオンビームが照射されることにより、ウェーハの表面が酸化されて酸化膜が形成される。
【0083】
そして、所定の時間イオン照射を実施したら、ステップS105において、シャッター108Cを閉じて酸化膜の形成を停止する。
【0084】
次に、ステップS106において、酸化室108をプロセスガスがない状態の真空度と同じオーダーぐらいまで排気する。
【0085】
その後、ステップS107において、ウェーハをPVDまたはIBDなどのメタルデポジション室に搬送し、ステップS108において、CoFe/Cu/CoFeNi/Cuの上層側の金属層を成膜する。
【0086】
以上、説明したように、比較例のプロセスにおいては、ステップS103においてイオン源108Dに酸素を含むガスを供給するが、この際に、イオン源108Dから漏れ出た浮遊酸素がシャッタ108Cの周囲からウェーハの表面にまわり込んで自然酸化膜を形成してしまう。
【0087】
さらに、ステップS105においてシャッタ108Cを閉じた後も、酸化室108の内部には浮遊酸素が残留し、ウェーハの表面に吸着する可能性がある。
【0088】
これに対して、図3に例示した本発明のプロセスによれば、このような「浮遊酸素」の発生を防ぐことができる。
【0089】
図3のプロセスを説明すると、以下の如くである。
【0090】
まず、ステップS1において、メタルデポジション室においてPVD法やIBD法などにより金属膜を堆積する。
【0091】
次に、ステップS2において、ウェーハを酸化室に搬送する。
【0092】
次に、ステップS3において、アルゴンイオンビームをストライクできる状態にする。具体的には、イオン源ガス供給系108Fを介してイオン源108Dにアルゴンを導入し、イオン源108Dの内部でプラズマを発生させて安定化させる。このときホルダ108Bに載置されたウェーハは、シャッター108Cによって覆われているため、イオン源108Dから放出されるアルゴンイオンビームはウェーハ表面には照射されない。但し、ウェーハは、シャッタ108Cの周囲からまわり込んでくるアルゴンガスには晒されることになる。しかし、この段階では、酸素は供給されていないので、ウェーハは浮遊酸素に晒されることはない。
【0093】
ここで、もし、図4に例示したIBOプロセスのように、酸素のイオンビームを最初から発生させようとすると、アルゴンなどで希釈されている、いないに関わらず、プラズマを発生させてストライクの準備をするまでの間に浮遊酸素にウェーハ表面が晒され、自然酸化膜が形成されることになる。これに対して、本発明ではイオンビーム用ガスには酸素を用いていないため、その心配はない。本実施例では酸素を用いたが、これは窒化膜を形成させるための窒素ガスを用いた場合などにも同様である。
【0094】
アルゴンイオンビームが所定の条件で安定したら、ステップS4において、シャッター108Cを開け、これと前後して酸素ガス導入系108Eから酸素ガスを酸化室108に導入する。ステップS4において、シャッタを開けるタイミングと酸素の導入のタイミングは、ほぼ同時であることが重要である。両者のタイミングは完全に一致する必要はないが、酸素導入が先になる場合でも、シャッタの開きが先になる場合でも1分以上の間隔がないことが望ましい。その間隔は、30秒以内とすることが望ましく、15秒以内とすることがさらに望ましい。
【0095】
本発明によれば、酸素の導入量を高い精度で制御でき、且つアルゴンイオン照射によって適度のエネルギを与えることにより酸化膜の膜質を改善する「アシスト効果」も得られる。そして、これらの効果は、それぞれ独立に制御性よくバランスさせることができる。ここで、本発明におけるアルゴンイオン照射の「アシスト効果」は、単純な分子ガスとして導入された酸素分子の酸素原子への解離や、イオン化、ラジカル化等を促進する効果も併せ持つと考えられる。これらの効果によりウェーハ表面での酸化反応を制御し、良質の酸化膜を高い制御性で得ることができる。
【0096】
ステップS4において用いるイオンビームの望ましい条件を表1として以下に表す。
【0097】
表1.イオンビームの条件
ビームエネルギ :50〜150eV
ビーム電流 :0.1〜1mA/inch
メタルエッチング速度 :1〜10A/分
照射時間 :5秒〜5分
上記のビーム電流は加速グリッドの単位平方インチ面積あたりの電流量である。すなわち、実際の電流量はグリッドの面積に応じて変化する。上記のイオンビームの条件は本発明において良好な特性のNOLを得る上で非常に重要であり、特にビームエネルギすなわち加速電圧は重要である。
【0098】
図5は、加速エネルギを変えた場合のNOL形成メカニズムの違いを概念的に表した説明図である。
【0099】
図5(a)に例示したように、加速エネルギが低い場合には、アルゴンイオン照射は酸素フローによって吸着された酸素を脱離する程度の効果で、良好な酸化膜を形成するほどのエネルギは与えられない。このとき、アルゴンイオンのエネルギは、金属表面のエッチングもほとんど生じない程度の範囲である。
【0100】
図5(b)に例示したように、加速エネルギが適度な大きさの場合には、酸素フローによって膜表面に吸着した反応性の弱い酸素を脱離させるだけでなく、NOLを形成すべき膜表面の母材金属の表面をもエッチングして、金属原子−金属原子の結合を解離することができ、酸素との反応性を向上させることが可能となる。つまり、金属のエッチングレートよりも酸素供給量が多ければ膜表面に良好な膜質の酸化膜が形成される。当然、このときのアルゴンイオンビームは金属表面のエッチングを行っているだけの効果だけではなく、酸化する際のエネルギアシスト源としても作用することになる。その結果、不必要な酸素がない強く結合した安定した酸化膜が形成されることになる。
【0101】
この最適なイオンの加速エネルギの範囲は概ね50〜150eVであり、80〜120eVの範囲にあることが特に望ましい。そのときの金属のエッチングレートは1−10Å/minである。
【0102】
これよりも加速エネルギが大きいと、今度は金属のエッチングレートのほうが酸素の供給よりも追いつかなくなりそもそも酸化膜が形成されなくなるばかりか、母材金属薄膜表面へのダメージも大きくなるため好ましくない。
【0103】
また、アルゴンイオン照射時間は5秒〜5分程度とすることが望ましい。これよりも短いとイオン照射の効果がなく、これよりも長いとイオン照射による下部層へのダメージが無視できなくなってくるからである。この理由のため、イオン照射時間は、5秒〜3分以内とすることが望ましく、10秒〜1分以内とすることがさらに望ましい。
【0104】
本実施例においては、加速エネルギ100eV、プラズマRFパワー50W、ポジティブ加速グリッド電流15mA、イオン照射時間20秒で行った。このプロセスによって母材のFeCo膜は酸化され、NOLとなる。本発明によって得られるNOLの特徴については、後の実施例に関して詳述する。
【0105】
ここで、酸素供給量の積算値は、非常に低酸素量とした。アルゴンガスが酸化室108に既に導入されている状態なため、正確なラングミュアー換算(1L =1×10−6torr・sec)はできないが、アルゴンガスが導入されていない高真空状態で測定した酸素量として、トータル約400Lの酸素を用いた。本実施例のような構成の膜においては、これよりも低ラングミュア−だとNOLを介した上下のピン層の磁気結合は良好だが、スペキュラリティーが十分ではなく、これよりの多くの酸素を導入すると、NOLを介した上下ピン層の磁気結合がferro結合ではなくなるため、よくない。
【0106】
ここで、この最適酸素量は、NOLになる母材金属材料に依存するだけでなく、NOLの下地の膜構成によっても変動するので、一律ではない。しかし、ひとつの基準として、本発明のような高エネルギプロセスで薄膜のNOLによる磁気結合をさせる場合には1000L以下であることが望ましい。このような低レベルの酸素量は、自然酸化する場合には酸化室108のサイズが小さく、酸素フロー法にある程度の工夫があれば制御可能な範囲だが、従来のIBOの手法では、プラズマを準備するだけのタイミングでサンプルが既に暴露されてしまう可能性のあるレベルの酸素量である。
【0107】
これに対して、本発明によれば、従来は困難であった低レベルの酸素量と高エネルギプロセスとを両立させることができる。なお、本発明のプロセスシーケンスは低酸素量のときに特に大きな効果を発揮するが、低酸素量のみに限定されるものではなく、比較的高レベルの酸素量の場合にも、同様に適用可能である。特に、安定した酸化物を形成するのが難しい母材材料を用いるような場合に、エネルギを付与できない自然酸化層よりもはるかに膜質の優れたNOLを本発明により形成することができる。
【0108】
以上、図3のステップS4に関して詳述した。
【0109】
このようにして所定の時間、酸素フローとイオン照射を実施したら、ステップS5においてシャッター108Cを閉じ、酸素ガスの供給を停止する。このとき、酸素ガスの供給の停止のほうが後になることは好ましくない。エネルギが与えられないままの浮遊酸素となる可能性の酸素が表面に残ってしまうからである。酸素ガスの供給は、シャッターを閉じてから少なくとも30秒以内に停止することが望ましく、15秒以内に停止することがさらに望ましい。
【0110】
これとは逆に、シャッターを閉じる前に酸素ガスの供給を停止することは望ましい場合がある。これは不要な酸素を脱離させ、同時に、低エネルギでのイオン照射によって、表面の平坦化も可能となる場合もあるからである。この場合にはイオン加速電圧を変えない場合には1分以内のイオン照射、加速電圧を変えた場合でも5分以内のイオン照射に留めておくことが望ましい。しかしながら、不必要なミリングの影響をなくすためには、15秒以内のイオン照射にしておくことが望ましい。
【0111】
このようにして酸化プロセスが終了したら、次に、ステップS6において、アルゴンガスの供給もストップし、プラズマパワー等もすべて停止して、酸化室108をプロセスガスがない状態の真空度と同じ程度の圧力まで排気ポンプ108Aにより排気する。
【0112】
その後、ステップS7において、ウェーハは、PVDまたはIBD方式のメタルデポジション室110または112に搬送され、ステップS8において、CoFe/Cu/CoFeNi/Cuの上層側の金属層が成膜される。ここで、下層のCoFe(ピン層▲2▼)がNOLを介してPtMnに接したCoFeピン層(ピン層▲1▼)と磁気的にカップリングされる。本構成ではNOLを介した上下のピン層はferro的に結合するが、材料、NOL厚を変えることによって、反強磁性的に結合させることも可能である。
【0113】
強磁性的に結合した場合にはピン層の磁化量が多くなってしまうため、バイアスポイントのコントロールという観点からはこのままではヘッドに適用することはできず、シンセティックアンチフェリ構造をとらなければならない。つまりPtMn/CoFe↓/Ru/CoFe↑/NOL/CoFe↑/...(↑は磁化方向を示す)のような構造にして、ピン層トータルでの実質的な磁化量を減らさなければならない。
【0114】
一方、NOLを介して反強磁性的に結合した場合には、Ruを用いたシンセティック構造にする必要はない。NOL上に成膜されるCoFe(ピン層▲2▼)には添加元素を加える場合もある。Cr、B、C、Si、Al、等を添加しても構わない。膜厚は1nm〜3nm程度が望ましい。その上のスペーサCu層(非磁性中間層)は、1.8〜2.5nm程度が望ましい。
【0115】
また、フリー層としてCoFeNiを用いたのは、CoFe/NiFe積層フリー層よりも高MR変化率が得られるからである。CoFeにNiを微量添加することによって、純粋なCoFeよりも低磁歪と低Hcが実現できる。フリー層上のCuはバイアスポイント上必要な高導電層であって、フリー層に印加される電流磁界を低減させることができる。膜厚は1nm〜3nm程度が好ましい。
【0116】
Cu(高導電層)上のTaOは、フリー層側のスペキュラー反射層である。すなわち、電子を反射する効果を有する。これは、母材となるTa膜をメタルデポジション室(PVD室またはIBD室)で成膜したのち、ピン層NOLと同様に酸化室108を用いて酸化することにより形成する。酸化プロセスのシーケンスもピン層NOLの場合と同様とすることができる。ただし、Taの場合には表面からの処理で膜厚の奥方向まで酸化することが困難な場合もあるため、金属層成膜とIAOによる酸化を複数回繰り返しても良い。IAOの最適条件範囲も概略、表1の条件と一致する。フリー層側のNOLに関しては、必ずしもIAOを用いなくても、TaO層をIBDで直接酸化物として成膜したり、反応性スパッタにより成膜してもよい。また、TaOではなく、アルミニウム酸化物、Fe酸化物等を用いても構わない。
【0117】
フリー層側NOLとなるTaO層を形成した後は、メタルデポジション室(PVD室またはIBD室)でTa層(保護キャップ層)を成膜する。この層はあるほうが望ましいが、プロセス上問題なければ、成膜しなくても構わない。
【0118】
前述のように、実際のヘッドとして応用するときには、Sy−AF構造を採用することが望ましい。その具体的な構成としては、例えば以下の積層構造を挙げることができる。ここで、各層に付した数字は層厚 (nm)を表す。
【0119】
基板/Ta3/NiFeCr3/PtMn10/CoFe1.5/
Ru0.9/CoFe0.5/NOL−pin1.5/CoFe2/
Cu2/CoFeNi1.5/Cu1/NOL−free1.5/Ta1
ここで、NOL−pinは例えばFeCo酸化物であり、NOL−freeはTa酸化物である。フリー層は、CoFe1/NiFe1の積層フリー層でも構わない。その他の層の材料についてもこれまで述べてきたような他の材料でも構わない。また、RuとNOLの間のCoFe0.5nmは、実際には酸化されてほとんど層の区別がつかないこともある。Sy−AF構造を採用した場合にも前述したように各層の機能は変わらないので、これまで述べてきたことは本質的には変わらない。
【0120】
また、上述した構成は、反強磁性膜がフリー層よりも下側にある、いわゆる「ボトムタイプ」のスピンバルブ膜であるが、これとは逆の「トップタイプ」のスピンバルブ膜であってもよい。その場合にも、単層ピン構造でも、Sy−AF構造でも基本的には本実施例と同じである。
【0121】
具体的には、単層ピン構造の場合には、以下の積層構造を挙げることができる。
【0122】
基板/Ta3/NiFeCr3/NOL−free1.5/Cu1/
CoFeNi2/Cu2/CoFe2/NOL−pin1.5/
CoFe1/PtMn10/Ta3
また、Sy−AF構造の場合には、以下の積層構造を挙げることができる。
【0123】
基板/Ta3/NiFeCr3/NOL−free1.5/Cu1/
CoFeNi2/Cu2/CoFe2/NOL−pin1.5/
CoFe0.5/Ru0.9/CoFe1.5/PtMn10/Ta3
上述の各構成においても各層の数字は層厚(nm)を表す。各層の材料については、基本的にボトムタイプの場合と同様である。
【0124】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、酸化室においてイオン源に酸素を導入する場合のプロセスシーケンスに関するものである。
【0125】
図6は、本実施例において用いることができる酸化室の構成を表す概念図である。
【0126】
また、図7は、図6の酸化室を用いて実施する酸化プロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【0127】
図6及び図7については、図2〜図4に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0128】
図6に表したように、本実施例における酸化室108は、イオン源108Dに酸素導入系108Eが接続され、酸素を含むイオンを生成することができる。
【0129】
このような酸化室108を用いて従来のIBO法を実施する場合、酸素プラズマを照射することを第1の目的としているため、酸素プラズマが安定化するのを待ってから、酸素イオンを基板に照射する。このために、プラズマが安定するまでの間に流す酸素ガスが酸化室内に漏れて浮遊酸素として作用することになる。
【0130】
これに対して、本実施例においては、シャッタ108Cを開けるタイミングとイオン源にガスを供給するタイミングとを調節することにより、浮遊酸素の発生を抑制しつつIAOを実施することができる。
【0131】
具体的には、図7に例示したようなIAOのシーケンスを用いればよい。IAOプロセスにおいては、酸素をプラズマとしてイオン照射することが目的ではなく、エネルギ源はあくまでも希ガスイオンである。従って、ガスは酸化室導入時には酸素分子でも構わない。つまり、ステップS3で希ガスイオンプラズマを生成した後、ステップS4Bにおいて希ガスイオンを照射するのとほぼ同時に、酸素ガスをイオン源108Dに導入すればよい。
【0132】
本発明において最も重要なことは、エネルギアシストがない状態で、浮遊酸素が酸化室内に導入されないようにすることである。ステップS4Bにおけるイオン照射と酸素導入とは、ほぼ同時に行うことになるが、そのタイミングは、第1実施例のステップS4において酸素ガスを酸化室に直接導入する場合と同様である。酸素ガスの代わりに窒素ガスなどを用いる場合も同様である。
【0133】
本実施例においても、微少量の酸素ガスを高い制御性で導入することができ、希ガスイオンの「アシスト効果」を得ることもでき、且つ浮遊酸素による自然酸化膜の生成も確実に抑制することができる。
【0134】
本発明による初期自然酸化膜を形成しない工程は、ラディカル酸化(あるいは窒化)の場合についても適用できる。
【0135】
ラディカル酸化の場合にも、酸素イオンビーム照射の場合と同様に、ラディカルを照射するために初期にプラズマを生成する必要があるが、従来手法によるラディカル酸化では、この初期のプラズマを生成する段階から酸素(窒化の場合は窒素)をラディカルプラズマ源に導入していため、プラズマが安定するまでの間にラディカルプラズマ源に導入された酸素ガスが、チャンバーへ漏洩して膜表面に達し、ダーティーな自然酸化層を形成してしまう。本発明による製造シーケンスを用いれば、このダーティーな自然酸化膜の影響をなくすことができる。
【0136】
具体的には、ラディカル源において初期にプラズマを生成する段階では、酸素ガスはラディカル源に供給せず、アルゴンなどの希ガスのみを供給する。その工程の後に、プラズマを生成したラディカルプラズマ源に酸素及び窒素ガスのいずれかを導入することによって、酸素ガスが膜表面に達するときは、初期の段階から高反応性を有するラディカル状態で供給することが可能となり、ダーティーな自然酸化膜(あるいは自然窒化膜)の影響をなくすことができる。
【0137】
このとき好ましくは、希ガスプラズマの生成が十分に安定したことを確認した後に、酸素および窒素のいずれかのガスを導入することが望ましい。本工程によって、良質な酸化膜(窒化膜)を形成することが可能となる。
【0138】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、独立したイオン源を持たない酸化室において酸素を導入する場合のプロセスシーケンスに関するものである。
【0139】
図8は、本実施例において用いることができる酸化室の構成を表す概念図である。
【0140】
また、図9は、図8の酸化室を用いて実施する酸化プロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【0141】
図8及び図9については、図2〜図7に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0142】
図8に表したように、本実施例における酸化室108は、独立したイオン源を有しない。その代わりに、プラズマ生成電源108Lに接続されたプラズマ生成電極108Mによって酸化室内部でプラズマが生成される。酸化室108に酸素導入系108Eと希ガス導入系108Gが接続され、希ガス含むプラズマを生成することができる。
【0143】
このような酸化室108を用いて従来のプラズマ酸化法を実施する場合、酸素プラズマを照射することを第1の目的としているため、酸化室108に酸素を導入してからプラズマの生成を開始していた。このために、プラズマが安定するまでの間に流す酸素ガスが酸化室内に漏れて浮遊酸素として作用することになる。
【0144】
これに対して、本実施例においては、酸素を導入するタイミングを調節することにより、浮遊酸素の発生を抑制しつつIAOを実施することができる。
【0145】
具体的には、図9に例示したようなIAOのシーケンスを用いればよい。IAOプロセスにおいては、酸素をプラズマとしてイオン照射することが目的ではなく、エネルギ源はあくまでも希ガスイオンである。従って、まず、ステップS3Cにおいて、導入系108Gから希ガスを導入してプラズマを生成する。この際に、酸素はまだ導入しない。そして、希ガスプラズマが生成されたら、ステップS4Cにおいて、酸素ガスを酸化室108に導入する。
【0146】
この場合に、実際には酸素ガスを酸化室に導入した瞬間には酸素プラズマが安定しないこともあり得る。しかし、本発明のIAO法においては、酸素をプラズマイオンとして供給することが本質的ではないのでこれでも構わない。最も重要なことは、エネルギアシストがない状態で、浮遊酸素が酸化室内に導入されないようにすることである。
【0147】
すなわち、本実施例においては、非常に弱いパワーで希ガスをプラズマ化し、その状態で酸素ガスを基板に導入することによって、酸化する。酸素導入時に、酸素がプラズマ化していても、プラズマ化していなくても構わない。そのため、酸素プラズマを生成する目的で大量の酸素を酸化室に導入する必要がない。
【0148】
一般に、プラズマを着火する時には、瞬間的に大量のガスを導入して圧力を上げる必要がある。しかし、本実施例においては、プラズマを生成するために瞬間的に導入されるのはあくまでも希ガスであって、酸素ガスは希ガスプラズマが着火されるのとほぼ同時に導入すればよい。希ガスプラズマの着火と酸素ガスの導入は、ほぼ同時となるタイミングで行うことが望ましく、このタイミングは、第1及び第2実施例と同様である。
【0149】
また、酸素ガスの代わりに窒素ガスなどを流して窒化膜などを形成する場合も同様に実施することができる。
【0150】
(第4の実施例)
次に、本発明の第4の実施例について説明する。本実施例は、酸素ガスを酸化室に均一に導入することができる導入方法に関するものであり、前述した第1あるいは第3実施例に適用可能なものである。
【0151】
図10〜図12は、本実施例の酸素導入系の構成例を表す概念図である。
【0152】
本発明においては、低酸素量でNOLを形成することがひとつのポイントである。このような低酸素量においては、酸素フローの方法についても工夫する必要がある。まず、酸化室108のサイズは可能な限り小さくし、酸素を導入した瞬間から酸化室の全体に拡散するまでの時間を短くすることが望ましい。
【0153】
さらに、酸素を導入する手法にも工夫が必要な場合もある。低酸素量の場合には、酸化室全体に酸素が拡散するまでの時間が酸素フローしている全体の時間に占める割合が大きい。そのため、酸素が導入されてから拡散するまでの時間においてもウェーハ内で酸素量の分布が生じないように工夫する必要がある。
【0154】
これに対して、図10に表した具体例においては、2本の酸素導入系108Eが設けられている。このように、酸素を2本以上の導入系108Eから導入することによって、酸素が酸化室内に拡散する過渡的状態でのウェーハ内での酸素量分布をできるだけ小さくすることができる。なお、ここで酸素導入系108Eのそれぞれが独立した流量制御手段108Hを有する必要はなく、共通の流量制御手段から分岐した複数の導入系が酸化室108に接続されていてもよい。
【0155】
図11に表した具体例の場合には、3本の酸素導入系が設けられている。このようにすれば、酸素を酸化室内にさらに均一に拡散させることが可能となる。もちろん、図示した具体例の他にも、4本、5本、6本あるいはそれ以上の複数管から酸素を導入できるようにしてもよい。
【0156】
一方、図12は、酸素導入系108Eの先端にディフューザ108Pを設けた具体例を表す概念図である。ディフューザ108Pは、酸化室108の内部に拡がり、複数の酸素噴出口108Qを有する。本具体例によれば、酸化室108への導入は単管でも、ディフューザ108Pを設けることにより酸素を均一に拡散させることができる。このようなディフューザを図10あるいは図11に表した複数の導入系のそれぞれの先端に設けても良い。
【0157】
また、図12に示したように酸化室の内部に半周程度広がるディフィーザの他にも、酸化室をほぼ全周囲を囲うようなディフィーザとしても良い。
【0158】
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例として、本発明の製造方法によって得られたNOLの特徴について説明する。すなわち、本実施例では、前述した第1実施例の製造法によって得られたNOL−SPSV膜の特徴について詳述する。
まず、シート膜Rsとしてのパフォーマンスであるが、シートコンダクタンス変化ΔGs=7.6mΩ−1、MR変化率15.6%、シート抵抗Rs=15.6Ω、Hua flat=500Oeと、本発明によって著しく特性が向上した。具体的には、GMR効果のポテンシャルを意味するΔGsの大幅な向上と、NOLを介した上下ピン層の良好な磁気的な結合を両立することに初めて成功した。以下に詳細を記述する。
【0159】
図13(a)は、酸化室へ導入する酸素量と得られたNOL−SPSVのΔGsとの関係を表すグラフ図である。すなわち、同図の横軸は、酸素導入量をラングミュア(L)で表し、縦軸は、得られたNOL−SPSV膜のシートコンダクタンス変化ΔGsを表す。ここで、シートコンダクタンス変化ΔGs=Gsmax−Gsmin と定義され、ここで、Gsmaxは、ピン層のフリー層の磁化が平行な場合のシートコンダクタンスであり、Gsminはピン層とフリー層の磁化方向が反平行な場合のシートコンダクタンスである。シートコンダクタンス変化ΔGsが大きいほど、MR変化が大きくなる。
【0160】
また、図13(a)において「IAO」と記したものは本発明の方法により形成したものを表し、「O−flow」と記したものは従来の単純酸素フロー法により自然酸化させて形成したものを表す。さらに、これらそれぞれについて、270℃における熱処理を1時間(1H)、10時間(10H)あるいは30時間(30H)施した。
【0161】
図13(a)からわかるように、単純酸素フローのものでは、導入酸素量を多くしても高ΔGsが得られない。つまり低スペキュラリティーのNOLしか形成できない。また、ΔGsが熱処理により減少し、熱的に不安定である。これは、NOLの酸素が不安定で、SPSV膜中に拡散することが原因であることがSIMS(secondary ion mass spectroscopy:2次イオン質量分析)によるデプスプロファイルによって確認された。さらに、導入する酸素量が低い条件において、ΔGsは酸素を導入しないものよりもかえって低下する傾向がでている。これは、極めて低い酸素量においては、膜質の良好な酸化NOLが形成されず、膜質の劣悪なダーティーな酸化層が形成されるためであると考えられる。
【0162】
これに対して、本発明によるIAOプロセスを用いた場合には、酸素量を増やすにしたがって、ΔGsが一旦劣化することもなく連続的に増加しており、極めて低い酸素量においても、安定した良質な酸化層が形成されていることを示している。これは、イオンビームのエネルギによるアシスト効果によるものであると考えられる。従来のIBO法で形成した場合には、エネルギアシスト効果は生ずるものの、酸素が最初に酸化室に導入されているときには、イオンアシストのない状態のまま酸素プラズマが生ずるまでにグリッドからもれた浮遊酸素に基板表面が晒されるため、NOLの初期層に関してはエネルギアシストのないダーティーな酸化層となってしまうのでよくない。
【0163】
また、図13から分かるように、本発明のIAOプロセスを用いた場合にはΔGsの耐熱性は極めて良く、270℃において30時間の熱処理を施した後でもΔGsの劣化は認められない。これは、単純酸素フローのものとは対照的な結果であり、本発明によるNOLが熱的に極めて安定であることを示している。
【0164】
図13(b)は、IAOによる低酸素量の条件で形成したスピンバルブ素子において、正規磁界方向に磁界を印加して得られるシート抵抗(Rs)−磁界(H)特性を表す。
【0165】
また、図13(c)は、IAOによる高酸素量の条件で形成した素子において、正規磁界方向に磁界を印加して得られるRs−H特性を表し、図13(d)は、同素子において正規磁界方向に対して垂直な方向に磁界を印加して得られるRs−H特性を表す。
【0166】
これらの評価結果から分かるように、IAOによる低酸素量の条件では、NOLを介した上下のピン層はferro的にピン結合しているのに対し、600Lよりも高酸素量の条件ではferro的でもなくantiferro的でもない90°方向近傍に傾いた結合をしている。このような結合では、高ΔGsがたとえ得られたとしても、実際のヘッドデバイスとしては使いようがない。
【0167】
図14及び図15は、上記のような良好なパフォーマンスが得られるためのNOLの特徴を表す概念図である。まず、400Lのように低酸素量の場合には、NOLの膜厚をTEM(transmission electron microcscopy:透過型電子顕微鏡)分析により膜厚を算出すると、約1.5nmであった。
【0168】
本発明によれば、アルゴンイオン照射によるエネルギ効果を利用しているため、NOLには、スパッタ法により成膜された上下のピン層P1、P2中に含まれるアルゴン量よりも大量のアルゴンが含まれている。具体的には、NOLに含まれるアルゴンの原子組成は、上下のピン層P1、P2に含まれるアルゴンの原子組成の2倍よりも大きい。例えば、ピン層に含まれるアルゴンの含有量が1原子%とすると、NOLには2原子%以上のアルゴンが含有されている。
【0169】
本発明者の試作評価の結果によれば、NOLに含まれるアルゴンの含有量は、原子%にして数原子%以上にもおよぶ場合が認められた。つまり、スパッタ法などにより形成されるピン層と比較すると、極めて多量のアルゴンが含まれていた。これは本発明によるプロセスを用いていれば、酸素量の多い少ないに関わらず共通の特徴であった。これは、断面TEMのEDX(energy dispersive x−ray spectroscopy)分析等によって、希ガスの量の分布を測定することができる。
【0170】
また、低酸素量における独特の特徴として、酸素と結合していない金属元素が多いということが挙げられる。特に、Co、Fe、Niが酸素と結合していない状態で存在する。これは、EXAFS(Extended X−ray Absorption Fine Sructure)による分析によって確認された。特に、Feは酸化状態であるのに対し、NOL用に成膜したFe50Co50においてCoの半分以上が金属状態になって存在している。これはFeのほうが酸化されやすく、Coが酸化されづらい材料であることに起因している。
【0171】
本発明によるIAOプロセスでは、そもそも酸素イオンをぶつけているのではなく希ガスイオンを照射しているので、酸素供給時にエネルギを与えた酸化を行っていると同時に、熱処理時などに悪影響を及ぼす余分な浮遊酸素を脱離して飛ばしているだけでなく、還元的な反応も生じさせている。つまり、酸化しにくいCoの場合には、一旦酸化しても希ガスイオンの照射によって、還元作用を起こし、金属状態で存在する確率が増えることになる。これが本質的にピン層の磁気結合に重要な一つの役割を与えている。磁気抵抗効果向上層(例えばNOL)中に酸素と結合していない磁性金属元素が存在することで、磁気抵抗効果向上層を介した上下のピン層P1、P2の磁気的に結合が安定化する。
【0172】
また、NOLの層厚が薄い場合に限ってferro結合しているのは、詳細なメカニズムは不明だが、NOL中に存在する金属Co原子は完全な結晶状態で存在しているわけではなく、また結晶粒になっていたとしても非常に微細なため、いずれにしてもNOL単体で強磁性を示すことは困難であり、せいぜいスーパーパラマグネティックな状態だからである。そして、NOLの膜厚が2nm程度と薄い場合には上下の強磁性ピン層P1、P2からの界面誘起効果が働き、NOL中に存在するCo磁性元素も強磁性的性質となって、上下のピン層が強磁性的結合を生じることも考えられる。このような効果が得られるためには、NOL厚は1nm〜3nmが望ましく、1〜2nmであることがさらに望ましい。尚、ここでのNOL厚は断面TEM分析のコントラストで金属部分と明らかに異なり、結晶の格子間隔も異なって観察される領域の膜厚である。
【0173】
一方、本発明によれば、浮遊酸素がない高エネルギプロセスによって、Feの安定した酸化物が膜厚方向に急峻性よく生成されているため、スペキュラリティー、すなわち電子の反射性が向上している。従来の単純な酸素フローによる自然酸化では、浮遊酸素は熱処理によって拡散し不安定なばかりか、材料選択をよほど厳重に行わない限り、NOL界面での組成急峻性にも問題を抱えるので、スペキュラリティーはどうしてもIAOプロセスよりも小さくなってしまう。
【0174】
本発明の製造方法によって、希ガスが磁気抵抗効果向上層中に混入することと、磁性金属元素が存在することの2つが重要であることが判明した。
【0175】
また、本実施例のようなNOL厚が1nm〜3nm程度の場合に限らず、NOL厚が2nmから5nmの場合でも本発明によるIAOプロセスは有効である。この場合には、NOLを介した上下のピン層の磁気結合は反強磁性的結合となる場合もあり得る。この場合には、Sy−AF構造で通常用いているRuは必要なくなり、これまでの実施例で述べてきた単層ピン構造と実質的な膜構成は同じでも、Sy−AF構造と同様にピン層からの漏洩磁界を低減させることができ、そのままヘッドに採用な構成となる。シャント層になる部分も減らすことができるので、MR変化率の観点からも有利である。この場合にもNOL材料はFe、もしくはFeCoを母材としたNOLであることが望ましい。
【0176】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例として、本発明の磁気再生装置について説明する。図1乃至図15に関して説明した本発明の磁気抵抗効果素子は、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気再生装置に搭載することができる。
【0177】
図16は、このような磁気記録装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本発明の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、長手記録用または垂直記録用磁気ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。磁気ディスク200は、長手記録用または垂直記録用の記録層を有する。磁気ディスク200は、磁気ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ153は、前述したいずれかの実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子を用いた磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0178】
磁気ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。
【0179】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0180】
アクチュエータアーム155は、固定軸157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0181】
図17は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム151を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
【0182】
サスペンション154の先端には、図1乃至図15に関して前述したいずれかの磁気抵抗効果素子を用いた再生用磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。記録用ヘッドを組み合わせても良い。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0183】
ここで、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)と磁気ディスク200の表面との間には、所定の浮上量が設定されている。
【0184】
図18(a)は、浮上量が所定の正の値の場合のヘッドスライダ153と磁気ディスク200との関係を表す概念図である。同図に例示したように、通常、多くの磁気記録装置においては、磁気ヘッド10を搭載したスライダ153は、磁気ディスク200の表面から所定の距離だけ浮上した状態で動作する。本発明においては、このような「浮上走行型」の磁気記録装置においても、従来よりも高分解能で低ノイズの再生を行うことができる。すなわち、図1乃至図15に関して前述したいずれかの磁気抵抗効果素子を採用することにより、再生すべきトラックからの微弱な磁化情報を確実に再生することができる。つまり、高い密度で記録された微小磁区からの信号を再生できるので、トラックピッチを縮小して、記録密度を大幅に向上させることができる。
【0185】
一方、記録密度がさらに上がると、浮上高を低下させて、より磁気ディスク200に近いところを滑空させて情報を読み取る必要が生ずる。例えば、1インチ平方あたり40G(ギガ)ビット程度の記録密度を得るためには、もはや、浮上にしていることによるスペーシングロスが大きくなり過ぎ、極低浮上によるヘッド10と磁気ディスク200とのクラッシュの問題も無視できなくなる。
【0186】
そのため、磁気ヘッド10と磁気ディスク200とを逆に積極的に接触させて、走行させる方式も考えられる。
【0187】
図18(b)は、このような「接触走行型」のヘッドスライダ153と磁気ディスク200との関係を表す概念図である。本発明の磁気ヘッドにおいても、媒体との接触面にDLC(Diamond−Like−Carbon)潤滑膜などを設けることにより「接触走行型」のスライダに搭載することが可能である。従って、図18(b)に例示したような「接触走行型」の磁気再生装置においても、隣接トラックからのクロストークを大幅に低減し、従来よりも大幅にトラックピッチを縮小してさらに高密度化された媒体の記録再生を安定して行うことができるようになる。
【0188】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0189】
例えば、磁気抵抗効果素子の基板、バッファ層、反強磁性層、ピン層、非磁性スペーサ層、フリー層、高導電層、スペキュラー層、保護層に関しては、前述した各具体例には限定されず、当業者が選択しうる範囲の全てを同様に用いて動揺の効果を奏する。
【0190】
また、磁気再生装置に関しても、再生のみを実施するものでも、記録・再生を実施するものあっても良く、また、媒体は、ハードディスクには限定されず、その他、フレキシブルディスクや磁気カードなどのあらゆる磁気記録媒体を用いることが可能である。さらに、磁気記録媒体を装置から取り外し可能した、いわゆる「リムーバブル」の形式の装置であっても良い。
【0191】
【発明の効果】
本発明によれば、希ガスのイオン等により酸化反応時に膜表面に高いエネルギを付与しつつ、浮遊酸素による自然酸化も抑制して、極めて低酸素量において膜質の良好な磁気抵抗効果向上層を形成することができる。
【0192】
そして、高感度且つ高信頼性を有する磁気抵抗効果素子を実現することができ、産業上のメリットは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例においてNOL−SPSV膜を形成した成膜システムの構成を表す概略図である。
【図2】IAOプロセスを行う酸化室の構成を例示する概念図である。
【図3】本発明の酸化プロセス及びその前後のプロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【図4】本発明の比較例として本発明者が実施した酸化プロセス及びその前後のプロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【図5】、加速エネルギを変えた場合のNOL形成メカニズムの違いを概念的に表した説明図である。
【図6】本発明の第2実施例において用いることができる酸化室の構成を表す概念図である。
【図7】図6の酸化室を用いて実施する酸化プロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施例において用いることができる酸化室の構成を表す概念図である。
【図9】図8の酸化室を用いて実施する酸化プロセスのシーケンスを表すフローチャートである。
【図10】本発明の第4実施例の酸素導入系の構成例を表す概念図である。
【図11】本発明の第4実施例の酸素導入系の構成例を表す概念図である。
【図12】本発明の第4実施例の酸素導入系の構成例を表す概念図である。
【図13】本発明の第5実施例において酸化室へ導入する酸素量と得られたNOL−SPSVのΔGsとの関係を表すグラフ図、及びシート抵抗Rsの評価結果を表すグラフ図である。
【図14】本発明により良好なパフォーマンスが得られるためのNOLの特徴を表す概念図である。
【図15】本発明により良好なパフォーマンスが得られるためのNOLの特徴を表す概念図である。
【図16】本発明の磁気記録装置の概略構成を例示する要部斜視図である。
【図17】アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。
【図18】(a)は、浮上量が所定の正の値の場合のヘッドスライダ153と磁気ディスク200との関係を表す概念図である。(b)は、このような「接触走行型」のヘッドスライダ153と磁気ディスク200との関係を表す概念図である。
【符号の説明】
100 成膜システム
102 トランスファー室
104 ロードロック室
106 プレクリーニング室
108 酸化室
108A 排気ポンプ
108B ホルダ
108C シャッター
108D イオン源
108E 酸素導入系
110、112 メタルデポジション室
150 磁気記録再生装置
152 スピンドル
153 ヘッドスライダ
154 サスペンション
155 アクチュエータアーム
156 ボイスコイルモータ
160 磁気ヘッドアセンブリ
200 媒体(磁気記録ディスク)

Claims (15)

  1. 2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、前記2つの強磁性層の少なくとも一方の強磁性層に設けられ酸化物または窒化物を主成分とする層と、を備え、
    前記酸化物または窒化物を主成分とする層は、それと接する層と比較して、アルゴン、キセノン、ヘリウム、クリプトン、ネオンのうちの少なくともいずれかの希ガスを、単位体積当たり多く含有することを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 前記酸化物または窒化物を主成分とする層に含有される前記希ガスの原子組成は、前記酸化物または窒化物を主成分とする層に接する前記層に含有される前記希ガスの原子組成の2倍よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記酸化物または窒化物を主成分とする層は、酸素とも窒素とも結合していない、Co、Fe、Niのいずれかの磁性遷移金属元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記酸化物または窒化物を主成分とする層の膜厚は、1nm以上3nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 前記酸化物または窒化物を主成分とする層は、Fe,Co,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Zr,Mo,Hf,Ta,W,Alのいずれかの酸化物または窒化物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  6. 前記2つの強磁性層のいずれか一方は、磁化の方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層であり、
    前記2つの強磁性層のいずれか他方は、磁化の方向が外部磁界に応じて変化する磁化フリー層であり、
    前記磁気抵抗効果素子の抵抗は、前記磁化固着層の前記磁化の方向と前記磁化フリー層の前記磁化の方向との相対角度によって変化することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造方法であって、
    酸素及び窒素の少なくともいずれかを含有する雰囲気において母材の表面に希ガスのイオンまたはプラズマを照射することにより、前記母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする層を前記2つの強磁性層の少なくとも一方の強磁性層に形成する工程を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
  8. 前記酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程は、
    前記希ガスのイオンまたはプラズマを生成する工程と、
    前記希ガスのイオンまたはプラズマを前記母材の表面に照射し、これとほぼ同時に前記雰囲気に酸素及び窒素の少なくともいずれかを導入する工程と、
    前記希ガスのイオンまたはプラズマの前記母材への照射を停止し、これとほぼ同時に前記雰囲気への前記酸素及び窒素の少なくともいずれかの導入を停止する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項7記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
  9. 前記酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程は、
    イオン源に前記希ガスを導入して前記希ガスのイオンまたはプラズマを生成する工程と、
    前記希ガスのイオンまたはプラズマを前記母材の表面に照射し、これとほぼ同時に前記イオン源に酸素及び窒素の少なくともいずれかを導入する工程と、
    前記希ガスのイオンまたはプラズマの前記母材への照射を停止し、これとほぼ同時に前記イオン源への前記酸素及び窒素の少なくともいずれかの導入を停止する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項7記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
  10. 2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造方法であって、
    母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする層を前記2つの強磁性層の少なくとも一方の強磁性層に形成する工程を備え、
    前記酸化物または窒化物を主成分とする層を形成する工程は、
    希ガスのプラズマを生成する工程と、
    前記希ガスのプラズマを生成する工程の後に、前記希ガスのプラズマを生成した雰囲気中に酸素及び窒素のいずれかを導入する工程と、
    を有することを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
  11. 前記2つの強磁性層のいずれか一方は、磁化の方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層であり、
    前記2つの強磁性層のいずれか他方は、磁化の方向が外部磁界に応じて変化する磁化フリー層であり、
    前記磁気抵抗効果素子の抵抗は、前記磁化固着層の前記磁化の方向と前記磁化フリー層の前記磁化の方向との相対角度によって変化することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
  12. 2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造装置であって、
    酸化室内に載置した母材の表面に希ガスのイオンを照射し、これとほぼ同時に前記母材の前記表面を1000ラングミュア以下の酸素及び窒素の少なくともいずれかに晒すことにより、前記母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする層を前記2つの強磁性層の少なくとも一方の強磁性層に形成可能としたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造装置。
  13. 前記2つの強磁性層のいずれか一方は、磁化の方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層であり、
    前記2つの強磁性層のいずれか他方は、磁化の方向が外部磁界に応じて変化する磁化フリー層であり、
    前記磁気抵抗効果素子の抵抗は、前記磁化固着層の前記磁化の方向と前記磁化フリー層の前記磁化の方向との相対角度によって変化することを特徴とする請求項12記載の磁気抵抗効果素子の製造装置。
  14. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、磁気記録媒体に記録された磁気的情報を再生可能とした磁気再生装置。
  15. 2つの強磁性層と、これらの強磁性層の間に設けられた非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子の製造方法であって、
    酸素及び窒素の少なくともいずれかを含有する雰囲気において母材の表面に希ガスの、ビームエネルギーが50eV〜150eVであるイオンビームを照射することにより、前記母材の表面を酸化または窒化させて、酸化物または窒化物を主成分とする層を前記2つの強磁性層の少なくとも一方の強磁性層に形成する工程を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
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