JP3559022B2 - 鉄筋籠のスペーサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、場所打ち杭工事などに使用される鉄筋籠のスペーサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
場所打ち杭の例えばアースドリル工法においては、設計杭径よりも大径の表層ケーシングを建込んだ後、支持層まで掘削し、掘削完了後に鉄筋籠を建込んでいる。この鉄筋籠の外側面には、主筋のコンクリートかぶり厚さ(例えば10〜15cm程度)を確保するために、スペーサが設けられている。
【0003】
図3は、従来のスペーサ50の一例であり、直線状の板材を成形加工して、中間部に鉄筋籠の外側に向かって突出する側面視が略コ字状や円弧状の凸部51を形成し、上下の端部に一体的な平板部52を形成したものであり、上下の平板部52を鉄筋籠1の主筋2に溶接53で固定している。
【0004】
このスペーサ50は、鉄筋籠1の円周方向に間隔をおいて複数配設され、鉄筋籠1の軸方向には例えば3mピッチで配設され、鉄筋籠の挿入の際には、掘削孔の断面中央に鉄筋籠をセットさせる機能も有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、鉄筋籠の組立てにおいては、溶接欠陥等による強度低下の恐れのある溶接をなくすことが要望されており、スペーサにおいても主筋やフープ筋への溶接による取付けを避ける必要がある。前述の図3の従来のスペーサ50では、主筋2に溶接53で固定しているため、主筋やフープ筋への溶接による取付けのないスペーサが要望されていた。
【0006】
図4は、その一例であり、このスペーサ60は、図5と同様の側面視が略コ字状や円弧状の凸部61の上端部に、フープ筋3に上から引っ掛けて取付けるフック部62を一体的に設け、凸部61の下端部の平板部63を補強リング(フラットバー)4の外面に溶接64で固定している。
【0007】
このスペーサ60の場合、補強リング4は強度部材ではないため、溶接しても問題はないものの、▲1▼ 補強リング4のある所しか取付けることができず、任意の位置にスペーサを配置できない、▲2▼ 溶接作業があるため取付けに時間とコストがかかる、▲3▼ フープ筋3と補強リング4に取付けるため、大きな力を受けた場合、変位する恐れがある、などの問題点がある。
【0008】
本発明は、前述のような従来の問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、鉄筋籠への溶接取付けを完全に無くすことができる共に、鉄筋籠のどの場所にも簡単に取付けることができ、さらに、スペーサ凸部の変形を確実に防止することができる鉄筋籠のスペーサを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、鉄筋籠の外側面に取付けられるスペーサであり、鉄筋籠の主筋軸方向に沿い鉄筋籠の外側に向かって突出する凸部の主筋軸方向の一端部に、鉄筋籠のフープ筋に主筋位置において取付けられる係止部が設けられ、前記凸部の主筋軸方向の他端部に、主筋に主筋直角方向から嵌合する嵌合溝を有する嵌合部が設けられ、前記凸部の係止部側の部分と嵌合部側の部分が主筋軸方向に沿う連結部材または斜めの連結部材により連結されていることを特徴とする鉄筋籠のスペーサである(図1,図2参照)。
【0010】
この請求項1において、スペーサの材質には硬質プラスチックや金属などを用いることができる。連結部材は、板状や棒状などとし、例えば、主筋の軸方向に沿う連結部材の両端部をそれぞれ凸部と係止部の接合部分及び凸部と嵌合部の接合部分に一体的に接続する(図2(a) 参照)。連結位置は、これに限らず、凸部の両端の部分であればよく、凸部の端部とコーナー部を斜めの連結部材で連結(斜めに1本あるいは斜めに2本の×字形)してもよいし、凸部の上下の辺部の中間同士を主筋の軸方向に沿う連結部材で連結してもよい。また、凸部の両側面に連結部材を設け、左右一対の連結部材で連結するのが好ましい。
【0011】
本発明の請求項2は、請求項1に記載の鉄筋籠のスペーサにおいて、係止部は、主筋を挟むようにフープ筋に引っ掛けられる左右一対のフック片を有していることを特徴とする鉄筋籠のスペーサである(図1,図2参照)。
【0012】
即ち、係止部は主筋位置でフープ筋に係止めできる形状であればよいが、左右一対のフック片を用いるのが好ましい。フック片は、図2(a) に示すように、鉄筋籠の内側から引っ掛ける形状が好ましいが、外側から引っ掛ける構造でもよい。
【0013】
本発明の請求項3は、請求項1に記載の鉄筋籠のスペーサにおいて、嵌合部は、主筋を挟む左右一対の嵌合片を有していることを特徴とする鉄筋籠のスペーサである(図1,図2参照)。
【0014】
即ち、左右一対の嵌合片で嵌合溝を形成し、主筋直角方向から嵌合部を主筋に押し込み、左右一対の嵌合片で挟んで嵌着させる。嵌合片は、板状のものなどでもよいが、図2に示すように、断面が円弧状で主筋軸方向に長い嵌合片で筒状の嵌合部とするのが好ましい。
【0015】
なお、スペーサは、係止部を上にし、嵌合部を下にして、鉄筋籠に取付けてもよいし、これとは逆に、係止部を下にし、嵌合部を上にして、取付けるようにしてもよい。
【0016】
以上のような構成のスペーサを建て込む前の鉄筋籠の外側面に主筋に沿って取付ける。取付けに際しては、係止部の一対のフック片等を主筋を挟むようにフープ筋に引っ掛けて、スペーサの一端部を主筋位置でフープ筋に係止し、嵌合部を主筋に対して押し込むことで嵌合溝を主筋に嵌着し、スペーサの他端部を主筋に固定する。
【0017】
鉄筋籠への溶接取付けを完全に無くすことができ、溶接欠陥等による強度低下を解消することができる。また、スペーサの端部を押し込むだけで、固定することができるため、スペーサを容易に短時間に取付けることができる。また、鉄筋籠に多数配置されている主筋とフープ筋の交差部に取付けるため、スペーサを任意の箇所に取付けることができる。さらに、主筋の位置に取り付けるため、スペーサを強固に取付けることができる。また、凸部の両端部を連結する連結部材により、凸部の剛性が増し、凸部が外力を受けて変形することがない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する一実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、表層ケーシングを用いるアースドリル工法等による場所打ち杭の鉄筋籠に本発明を適用した例である。図1、図2は、本発明の鉄筋籠のスペーサをブラスチックで構成した場合の一例を示したものである。
【0019】
図1に示すように、場所打ち杭に使用される鉄筋籠1は、円周方向に間隔をおいて平行に配設された多数本の主筋2と、この主筋2の外側に軸方向に所定のピッチで配設されたフープ筋3と、主筋2の内側にフープ筋3の取付ピッチよりも大きいピッチで配設された補強リング4(図4参照)から構成され、無溶接の場合には、主筋2とフープ筋3を結束線や結束金具などで固定し、主筋2と補強リング4が抱持金具などで固定される。
【0020】
このような鉄筋籠1の外側面に取付けられるスペーサ10を、図1、図2に示すように、主筋軸方向に沿い主筋直角方向の外側に向かって突出する略コ字状や円弧状の凸部11と、この凸部11の上部に一体的に設けられ、フープ筋3に主筋位置において主筋軸方向の下方から取付けられる係止部12と、凸部11の下部に一体的に設けられ主筋2に主筋直角方向から嵌合する嵌合溝13を有する嵌合部14と、係止部12と嵌合部14とを連結する連結部材15から構成し、係止部12と嵌合部14により主筋2に沿って簡単に固定できるようにし、さらに、連結部材15により凸部11が外力で変形しないようにする。
【0021】
係止部12は、凸部11の上端部から一体的に主筋2とほぼ平行に上に向かって突出する平板部12aと、この平板部12aから左右一対で一体的に突出し、外側(反主筋側)に向かって湾曲させた側面視が円形のフック片12b,12bからなる。
【0022】
このフック片12b,12bは、その対向間隔を主筋2の径より若干大きく形成し、フープ筋3の下から内側上方に挿入することで、主筋2を挟んでフープ筋3に引っ掛けることができる。引っ掛けた状態で平板部12aの内面中央部が主筋2に当るため、外力で内側に移動することが阻止される。フック片12bの側面視形状は、フープ筋3の外径とほぼ等しい内径で中心角が180 °以上の円弧であり、フープ筋3に嵌着し、上に外れないようにしている。また、フック片12bの先端には、折り返し片12cを設け、フープ筋3に容易に嵌着できるようにしている。
【0023】
嵌合部14は、凸部11の下端部から一体的に主筋2とほぼ平行に下に向かって突出する平板部14aと、この平板部14aの内側(主筋側)に一体的に設けられ、主筋2を挟んで左右一対の嵌合片14b,14bからなり、この左右一対の嵌合片14b,14bにより嵌合溝13が形成される。
【0024】
嵌合片14bは、主筋2の軸方向に長い部材であり、平面視形状は、一対で円形の嵌合溝13を形成すべく主筋2の外径とほぼ等しい内径の円弧であり、筒状の一対の嵌合片14b,14bにより挟まれた状態で主筋2に嵌着され、外力で外れないようにしている。なお、主筋2は通常凹凸の付いた異形棒鋼であり、嵌合片14bの内面における先端部側(鉄筋籠側)には、主筋2の軸方向に沿う係止め凸条14cを形成し、主筋2から外れないようにしている。また、嵌合片14bの先端部には、折り返し片14dを設け、主筋2に容易に嵌着できるようにしている。
【0025】
連結部材15は、主軸2と平行で凸部11の凹凸方向に幅のある板状の部材であり、その上下端部がそれぞれ、凸部11と係止部12の接続角部、凸部11と嵌合部14の接続角部に一体的に取付けられ、また、凸部11の左右両側面にそれぞれ配設される。従って、凸部11の上部と下部が左右一対の連結部材15により連結補強されることで、凸部11が係止部12と嵌合部14が離れる方向に変形するのを防止することができる。
【0026】
本実施形態のスペーサ10は、硬質プラスチック製であり、凸部11,係止部12,嵌合部14,連結部材15が一体成形される。なお、プラスチック製であるため、凹部11の両側面には補強リブ11aが設けられ、さらに内面(主筋側の面)には、縦横の補強リブ(図示省略)が設けられる。
【0027】
以上のような構成のスペーサ10を、組み立てられた鉄筋籠1の外側面に取り付けていく。鉄筋籠1の円周方向には、適当な間隔をおいた複数の主筋2の位置に配置し、鉄筋籠1の長手方向には、適当な間隔をおいた複数のフープ筋3の位置に配置する。取付けに際しては、フック片12b,12bを主筋2を挟むようにフープ筋3に引っ掛け、左右一対の嵌合片14b,14bを主筋2に押し込むだけで、スペーサ10を主筋2に簡単に固定することができる。
【0028】
掘削完了後に、このような鉄筋籠1をケーシング内、次いで掘削孔内に挿入する。スペーサ10の凸部11の円滑なガイド作用により鉄筋籠1が掘削孔Aの中心にセットされる。また、コンクリートの打設後にケーシングを引抜く際、スペーサ10の凸部11の位置決め作用により、鉄筋籠1の偏りが防止される。凸部11は、左右一対の連結部材15,15で補強されているため、変形することがなく、スペーサの機能を確実に果たすことができる。
【0029】
なお、本実施形態では、プラスチック製のスペーサについて例示したが、これに限らず、金属製でもよい。係止部12は、内側から引っ掛ける形状のフック片を例示しているが、これに限らず、外側から引っ掛ける形状のフック片でもよく、さらに、フック片に限らず、フープ筋3の下から内側に差し込む差し込み片方式等でもよい。嵌合部14は、一対の嵌合片14b,14bからなる筒状のものを例示しているが、これに限らず、板状のもの等でもよい。
【0030】
また、連結部材15は、図2の二点鎖線で示すように、凸部11の上下の斜辺部分であればよく、凸部11の端部とコーナー部を斜めの連結部材15で連結(斜めに1本あるいは斜めに2本の×字形)してもよいし、凸部11の上下の斜辺部の中間同士を主筋の軸方向に沿う連結部材15で連結してもよい。
【0031】
また、図示例では、係止部12を上にして取付けているが、これに限らず、係止部12を下にして取付けるようにしてもよい。
【0032】
なお、以上は、場所打ち杭工法の鉄筋籠に適用した例について説明したが、これに限らず、地中連続壁やその他の鉄筋籠にも本発明のスペーサを適用することができる。
【0033】
【発明の効果】
(1) スペーサの凸部の一端部に係止部を設け、他端部に嵌合部を設け、係止部をフープ筋に主筋位置で取付け、嵌合部を主筋に対して押し込むことで主筋に嵌着するようにしたため、鉄筋籠への溶接取付けを完全に無くすことができ、溶接欠陥等による強度低下を解消することができ、強度低下のない健全な場所打ち杭を造成することができる。
【0034】
(2) 時間とコストのかかる溶接作業を無くすことができるため、また、スペーサの端部を押し込むだけで、固定することができるため、スペーサを容易に短時間に取付けることができ、コストの低減を図ることができる。
【0035】
(3) 鉄筋籠に多数配置されている主筋とフープ筋の交差部に取付けるため、スペーサを任意の場所に取付けることができる。
【0036】
(4) 主筋の位置に取り付けるため、スペーサを強固に取付けることができ、大きな力を受けても、スペーサが変位する恐れがなく、スペーサとしての所期の目的を達成できる。
【0037】
(5) 凸部の両端部を連結する連結部材により、凸部の剛性が増加し、凸部が外力を受けて変形することがなく、スペーサの機能を確実に果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄筋籠のスペーサの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のスペーサであり、(a) は側面図、(b) は背面図、(c) はc−c断面図である。
【図3】従来の鉄筋籠のスペーサを示す側面図である。
【図4】従来の鉄筋籠の他のスペーサを示す斜視図である。
【符号の説明】
A…掘削孔
1…鉄筋籠
2…主筋
3…フープ筋
4…補強リング
10…スペーサ
11…凸部
12…係止部
12a…平板部
12b…フック片
12c…折り返し片
13…嵌合溝
14…嵌合部
14a…平板部
14b…嵌合片
14c…凸条
14d…折り返し片
15…連結部材
Claims (3)
- 鉄筋籠の外側面に取付けられるスペーサであり、鉄筋籠の主筋軸方向に沿い鉄筋籠の外側に向かって突出する凸部の主筋軸方向の一端部に、鉄筋籠のフープ筋に主筋位置において取付けられる係止部が設けられ、前記凸部の主筋軸方向の他端部に、主筋に主筋直角方向から嵌合する嵌合溝を有する嵌合部が設けられ、前記凸部の係止部側の部分と嵌合部側の部分が主筋軸方向に沿う連結部材または斜めの連結部材により連結されていることを特徴とする鉄筋籠のスペーサ。
- 請求項1に記載の鉄筋籠のスペーサにおいて、係止部は、主筋を挟むようにフープ筋に引っ掛けられる左右一対のフック片を有していることを特徴とする鉄筋籠のスペーサ。
- 請求項1に記載の鉄筋籠のスペーサにおいて、嵌合部は、主筋を挟む左右一対の嵌合片を有していることを特徴とする鉄筋籠のスペーサ。
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