JP3557875B2 - GaN系半導体素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は半導体素子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、サファイア基板とGaN系半導体からなる発光素子構造とを備えてなり、緑色乃至青色という短波長領域の光を発光する素子及びその製造方法の改良に関する。また、この発明は受光素子にも適用できる。
【0002】
【従来の技術】
GaN系の半導体は例えば紫外〜赤色の発光素子(現在は主に青及び緑色)として利用できることが知られている。かかる発光素子では、基板にサファイアが用いられ、例えばAlN製等のバッファ層を介してGaN系の半導体層が積層されて発光素子構造が形成される。発光素子構造としては、バッファ層の上にn型の第1の半導体層、活性層(発光層)及びp型の第2の半導体層を順次形成する構成である。成長の方法として有機金属化合物気相成長法(以下、「MOVPE法」という。)を採用した場合、第1及び第2の半導体層の成長温度に比べ、活性層の成長温度は低い。例えば、緑色発光ダイオードの場合、前者(GaN層)の成長温度は約900℃であるのに対し、活性層の量子井戸層(InGaN層)の成長温度は約600℃である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかるGaN系の半導体発光素子には発光効率の向上、長寿命化、歩留り向上が望まれている。
本発明者らは、n層を2層構造とし、最初の半導体層を形成した後、一旦ウエハ(基板+バッファ層+最初のn半導体層)を放冷し、その後、再度昇温して残りのn層を形成すると、素子の寿命が延びることを今回新たに見いだした。そして、かかる長寿命化の原因を見極めるべく鋭意検討を重ねた結果、GaN系半導体の熱膨張係数がサファイアの膨張係数よりも小さいことに気が付いた。
【0004】
従って、図1に示す如く、ウエハを昇温するとGaN系半導体層3が伸長されサファイア基板1側が圧縮するように素子が変形する。このとき、GaN系半導体層3内に引っ張り応力が生じ、その結果その結晶構造に転位5の発生するおそれがある。転位のある層の上に活性層を成長させると、活性層に当該転位の影響が及び、活性層はその本来の機能を発揮できなくなることになりかねない。
特に多重量子井戸構造の活性層では、量子井戸層(例えば、InGaN、成膜温度:600℃)とバリア層(例えば、GaN、成膜温度:900℃)が交互に形成されるので、ウエハはその温度が繰り返し大きく変化される。従って、半導体層に繰り返し応力がかかることとなり、活性層に転位が大きく影響する。
【0005】
また、図1のように撓んだものの上に半導体層を積層していくと、ウエハの最終段階においてもこの撓みが保存されるおそれがある。このように撓んだウエハ、特にサファイア基板を所望の形状(通常は矩形)に切り分けるのは困難であり、歩留まり低下の一因となりかねない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は本発明者らが見いだした上記課題の少なくとも1つを解決するためになされた。そしてその構成は次の通りである。
GaN系半導体からなる半導体素子を製造する方法であって、
前記GaN系半導体よりも熱膨張係数が大きな材料からなる基板の上に第1の半導体層を形成し、
該第1の半導体層の結晶構造に転位を発生させ、
該転位の発生された第1の半導体層の上に第2の半導体層を形成し、
その後、活性層を形成する、ことを特徴とする半導体素子の製造方法。
【0007】
上記のようにして半導体素子を形成すれば、図2に示すように、予め第1の半導体層13の結晶構造に転位12が発生されているため、その後の半導体層を形成する際の引っ張り応力は第1の半導体層13内に既にある転位12によって吸収緩和される。従って、第2の半導体層14において転位は殆ど発生することがない。よって、活性層15は転位12の影響を何ら受けることなく成長し、このようにして形成された活性層15はその本来の機能を発揮できる。即ち、発光効率が向上し、寿命が向上し、歩留まりが向上する。
第1の半導体層13に転位12が発生してその応力が逃がされるので、ウエハの反り返りが緩和される。従って、最終段階においてウエハは平板状に近くなり、これを所望の形状に切り分ける作業が容易になる。
【0008】
上記において GaN系の半導体層とはIII属窒化物半導体であって、一般的にAlXInYGa1ーXーYN(X=0、Y=0、X=Y=0を含む)で表される。
発光素子及び受光素子では、周知のように、活性層が異なる導電型の半導体層(クラッド層)で挟まれる構成であり、量子井戸構造やダブルヘテロ構造等が採用される。
かかるGaN系半導体層は例えばMOVPE法により形成される。
【0009】
GaN系半導体より大きい熱膨張係数を有し、かつ当該半導体の基板として汎用されるものとしてサファイア基板11がある。勿論、この発明に適用できる基板はサファイア基板に限定されるものではない。
【0010】
第1の半導体層13の材質は、GaN系のものであれば、特に限定されない。通常の発光素子の場合、サファイア基板の上にはn型のGaNからなる層が形成される。
この第1の半導体層13とサファイア基板11との間に、例えばAlNからなるバッファ層を形成することが好ましい。
【0011】
かかる第1の半導体層を基板上に形成すると、両者の熱膨張係数の違いから、ウエハは図1に示すように変形する。この第1の半導体層に転位を確実に発生させるには、これを基板とともに冷却(降温)する。発光素子構造の中で活性層、特に量子井戸層の成長温度(第4の温度)が最も低いことをを考慮して、ここでは当該活性層の成長温度(第4の温度)より低い温度(第2の温度)まで冷却する。これにより、当該転位を発生させるために冷却する工程でウエハは一旦図1の状態から平板状に戻り、第1の半導体層の圧縮応力が解放される。このときにも、第1の半導体層の結晶構造がずれて転位を生じさせる(図2参照)。
【0012】
その後、再度昇温して残りの半導体層14、15を形成するときには、GaN系半導体とサファイア基板との熱膨張係数の違いからウエハが変形するが、半導体層内の圧縮応力は主に第1の半導体層13に集中し、他の半導体層14、15には転位が殆ど発生しない。第1の半導体層13には既に転位12が生じており、その結晶構造がずれやすくなっているからである。
【0013】
温度制御の容易さを考慮すると、第1の半導体層13は室温まで冷却することが好ましい。
【0014】
第1の半導体層13内により積極的に転位12を発生させるため、急速冷却とすることもできる。
また、第1の半導体層13を基板11と共にその成長温度よりも高い温度まで昇温し、より強い引っ張り応力を第1の半導体層13に与え、その後冷却することによっても当該第1の半導体層13内に転位12を発生させることができる。この場合、冷却後の温度は次の半導体層14を形成する温度でよい。好ましくは、冷却後の温度を活性層15の成長温度よりも低くする。更に好ましくは、冷却後の温度を室温とする。
また、ウエハに物理的な力、例えばウエハが図1の様に撓むようにウエハを両側から圧縮する、第1の半導体層13に衝撃を加える、ことによって第1の半導体層13に転位12を発生させることもできる。
熱履歴と物理的な力との両者を組み合わせて第1の半導体層13に転位12を発生させることもできる。
【0015】
結晶構造に転位を持った第1の半導体層は1層に限られるものではなく、図3に示すように2層、及び2層以上、とすることができる。
図3では、下側の第1の半導体層13に転位12を発生させた後、上側の第1の半導体層13’の材料を成長させ、その後転位12’を発生させる。このとき、上下の第1の半導体層13及び13’の材料及び転位12及び12’の発生条件は、制御を容易にする見地から、同一とすることが好ましい。
【0016】
第2の半導体層14は転位12の発生した第1の半導体層13の直上に連続して形成される。この第2の半導体層14は活性層15の下地層となり、活性層15を形成するときに第1の半導体層13の転位12が影響しないようにする。そのためには、第1の半導体層13の材料となじみのよい材料で第2の半導体層14を形成することが好ましい。実施例では第2の半導体層14を、第1の半導体層13と同じ材料で形成した。
第2の半導体層14の膜厚は特に限定されないが、すべての層を形成した後、エッチングにより電極形成層(コンタクト層)として用いる場合にはn電極がこれに取り付けられるため(図4参照)、エッチングのマージンを考慮して膜厚を0.2μm〜1μmとすることが好ましい。
【0017】
【実施例】
以下、この発明の一の実施例を説明する。この実施例は発光ダイオード20であり、その構成を図4に示す。
【0018】
各半導体層のスペックは次の通りである。
【0019】
第2の半導体層24は活性層25側の低電子濃度n層とバッファ層22側の高電子濃度n+層とからなる2層構造とすることができる。
活性層25は量子井戸構造のものに限定されず、シングルへテロ型、ダブルへテロ型及びホモ接合型のものなどを用いることができる。
活性層25とp層26との間にマグネシウム等のp型不純物をドープしたバンドギャップの広いAlXInYGa1−X−YN(X=0,Y=0,X=Y=0を含む)層を介在させることができる。これは活性層25中に注入された電子がp層26に拡散するのを防止するためである。
p層26を活性層25側の低ホール濃度p層と電極27側の高ホール濃度p+層とからなる2層構造とすることができる。
【0020】
各半導体層は周知のMOVPE法により形成される。この成長法においては、アンモニアガスと3族元素のアルキル化合物ガス、例えばトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)やトリメチルインジウム(TMI)とを適当な温度に加熱された基板上に供給して熱分解反応させ、もって所望の結晶を基板の上に成長させる。
【0021】
第1の半導体層23を形成した後、この半導体層を基板と共に室温まで放冷する。これにより、第1の半導体層23の結晶構造に転位が発生する。
その後、第2の半導体層24の成膜温度まで基板及び半導体層を昇温し、第2の半導体層24を成長させる。以下の半導体層は一般的な方法で形成される。
【0022】
p層26を形成した後、このp層26、発光層25及び第2の半導体層24の一部をエッチングして、n電極29を取り付けるための部分を第2の半導体層24に形成する。
【0023】
透光性電極27は金を含む薄膜であり、p層26の上面の実質的な全面を覆って積層される。p電極28も金を含む材料で構成されており、蒸着により透光性電極27の上に形成される。
n電極29は、蒸着により第2の半導体層24へ取り付けられる。
【0024】
このようにして形成された実施例の発光ダイオード20は、第1の半導体層を形成後に冷却をしなかったもの(比較例)に比較して、その寿命が約10倍延びた。
【0025】
この発明は上記発明の実施の形態及び実施例の記載に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で当業者が想到し得る種々の変形態様を包含する。
【0026】
以下、次の事項を開示する。
(7) GaN系半導体からなる素子を製造する方法であって、
サファイア基板の上に、バッファ層を介して、第1の温度でn伝導型の第1の半導体層を成長させる第1のステップと、
前記サファイア基板と前記第1の半導体層を第2の温度まで降温する第2のステップと、
再び前記第1の温度まで昇温して、前記第1の半導体層の上に更にn伝導型の第2の半導体層を成長させる第3のステップと、
前記第1の温度より低くかつ前記第2の温度より高い第4の温度で活性層を形成する第4のステップと、を含んでなるGaN系半導体素子の製造方法。
(8) 前記第2のステップでは、前記サファイア基板と前記第1の半導体層とを放冷により室温まで降温する、ことを特徴とする(7)に記載のGaN系半導体素子の製造方法。
【0027】
(9) 前記第2のステップは前記第1の半導体層の結晶構造に転位を生じさせること、を特徴とする(8)に記載のGaN系半導体素子の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はサファイア製の基板とGaN系半導体層との熱膨張率の差に起因するウエハの反りを説明する図である。
【図2】図2は本発明の概念図である。
【図3】図3はこの発明の他の実施態様の概念図である。
【図4】図4はこの発明の実施例の発光ダイオードの構成を示す図である。
【符号の説明】
1、11、21 基板
5、12、12’ 転位
13、13’、23 第1の半導体層
14、24 第2の半導体層
15、25 活性層
20 発光ダイオード
Claims (3)
- GaN系半導体からなる半導体素子を製造する方法であって、
第1の温度でサファイア基板の上に第1の半導体層を形成する第1のステップと、
該第1の半導体層を前記基板とともに第2の温度まで降温して前記第1の半導体層の結晶構造に転位を生じさせる第2のステップと、
その後、昇温して第3の温度で、前記第1の半導体層の形成に連続して該第1の半導体層の直上に第2の半導体層を形成する第3のステップと、
その後、前記第2の温度以上の温度である第4の温度で活性層を形成する第4のステップと、からなるGaN系半導体素子の製造方法。 - 前記第2の温度は室温である、ことを特徴とする請求項1に記載のGaN系半導体素子の製造方法。
- GaN系半導体からなる半導体素子を製造する方法であって、
第1の温度でサファイア基板の上に第1の半導体層を形成する第1のステップと、
該第1の半導体層を前記基板とともに第2の温度まで降温して前記第1の半導体層の結晶構造に応力を吸収緩和する転位を生じさせる第2のステップと、
その後、昇温して第3の温度で、前記第1の半導体層の形成に連続して該第1の半導体層の直上に第2の半導体層を形成する第3のステップと、
その後、前記第2の温度以上の温度である第4の温度で活性層を形成する第4のステップと、からなるGaN系半導体素子の製造方法。
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