JP3554970B2 - 遠隔操作式排水栓装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は浴槽や洗面台などの底部に装設された排水栓装置に関し、更に詳しくは、遠隔操作により排水栓の開閉を行う遠隔操作式排水栓装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よく知られた遠隔操作式排水栓装置としては、図11乃至図13に示したようなものがある。以下に図11乃至図13に示した従来例の遠隔操作式排水栓装置を、図面を参照しつつ説明する。図11乃至図13に図示した従来例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載した排水栓、止水弁、弁支持部材、レリースワイヤ、操作スイッチ、その他の各部材より構成されて成る。排水栓は、内部に排水口を形成する略円筒形状であって、その外周面に雄螺子を設け、また排水口内周面に、水平に沿って凸部を突設している。弁支持部材は、排水栓の排水口に設けた凸部と係合する係合爪を下部に設けた円筒形状のリング部と、該リング部から支持筒の中心部に向かって延出されたアーム部と、アーム部の中心にアーム部と一体的に設けた、弁軸を収納すると共に、レリースワイヤと接続する接続部を備えた軸受け部と、からなる。止水弁は、上記排水口を開閉する弁部と、該弁部の中心より下方に向けて垂下された弁軸より成り、また該弁軸中に止水弁に加えられた、後述するインナーワイヤを破損してしまうような過大な応力(以下、「過応力」と呼ぶ)を緩和する衝撃緩和部材として緩和スプリングを配置している。レリースワイヤは、可撓性を備えた中空のアウターチューブと、該アウターチューブの内面を軸方向に進退するインナーワイヤと、インナーワイヤの一端に備えられ、弁支持部材の接続部に接続された際に上記止水弁の弁軸下方に配置されるロッド部と、レリースワイヤ内の操作スイッチ側に、インナーワイヤを操作スイッチ側に付勢する戻りスプリングを備えてなる。操作スイッチは、上記レリースワイヤに接続され、上記レリースワイヤのインナーワイヤの進退を行うことで、排水口を開閉させるものであって、またインナーワイヤの進退を保持するための保持機構として、従来よりよく知られているスラストロック機構(図示せず)を備えて成る。また、その他の部材として、上記排水栓の雄螺子と螺合する雌螺子を備えた開口部と排水口からの排水を下水側に排出するための排出口、及びレリースワイヤを通すための挿通孔を備えた排水エルボを備えてなる。
【0003】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして浴槽等に設けられた取着孔に取着される。まず排水栓を、取着孔を介して排水エルボの開口部と螺合させる。次にレリースワイヤの一方、ロッド部を備えない側を操作スイッチに接続し、またロッド部側の端部を、挿通孔を介して排水エルボから排水栓の排水口へと引き上げる。更にアウターチューブの端部を弁支持部材の軸受け部の接続部に接続した後、排水口内に弁支持部材を、リング部の外周が排水口の内周面に当接するようにして挿入し、更に排水口の凸部に係合爪を係合させて排水口に弁支持部材を固定する。この状態より、軸受け部内に止水弁の弁軸を収納させてロッド部の先端が弁軸の下方に配置されるようにして、遠隔操作式排水栓装置の取り付けが完了する。
【0004】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置を使用する場合、まず操作スイッチに操作を加えて止水弁が排水口を閉口した状態、即ち図11にあるようにレリースワイヤのインナーワイヤが操作スイッチ側に後退して、ロッド部が降下した状態とする。この状態より操作スイッチに操作を加えて、インナーワイヤを弁支持部材側に前進させると、ロッド部が上昇して弁部の弁軸下端に当接しこれを押し上げるため、図12にあるように止水弁全体が上昇して排水口を開口すると共に、スラストロック機構によって開口状態が保持される。この状態より操作スイッチに操作を加えてスラストロック機構の保持状態を解除すると、インナーワイヤが操作スイッチ側に後退し、ロッド部が下降するため、ロッド部に押し上げられていた止水弁も降下して排水口を閉口する。以後、この操作を繰り返すことで排水口の開閉を自在に操作することができる。
【0005】
また上記の遠隔操作式排水栓装置においては、止水弁の上昇時、すなわち排水口の開口時に止水弁を踏むなどして過応力が加えられたとしても、過応力によって弁軸内の緩和スプリングが収縮し、各部材に無理な加重の働くことなく排水口が閉口状態となるため、ロッド部やインナーワイヤが破損することもない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の遠隔操作式排水栓装置においては、インナーワイヤの端部にあるロッド部の上方に、軸受け部に収納される形で止水弁の弁軸が配置され、このロッド部の上端が止水弁の弁軸下端に当接して止水弁を押し上げることで排水口の開口を行っている。このため、排水口の開口を行う際に、インナーワイヤの進退を勢い良く行うと、止水弁が軸受け部より飛び出してしまい、改めて止水弁を排水栓の軸受け部内に嵌め込まない限り、排水口が閉口できなくなる場合がある。
【0007】
また、上記従来例のような遠隔操作式排水栓装置の施工作業等を行う場合に、レリースワイヤを排水栓の排水口から引きあげる必要があるが、この際誤ってロッド部やインナーワイヤをラジオペンチなどでつまんで持ち上げてしまい、インナーワイヤが無理に引き出され、インナーワイヤを挫屈させる等して破損してしまう場合があった。
【0008】
また、上記従来例では、緩和スプリングを止水弁の弁軸内に配置しているが、これによって止水弁の弁軸部分にある程度の長さが必要とされる。近年では床下配管部分の高さ幅を多少とも狭くするために、各種配管部材の高さ幅を低くしようとしている(以下「低床化」と呼ぶ)が、上記従来例にある遠隔操作式排水栓装置の場合は、弁軸と、特にその中に組み込まれる緩和スプリングの長さ分だけ、遠隔操作式排水栓装置の全高が必要とされるため、前述した低床化の目的に反することとなる。
【0009】
本発明は上記のような問題を解決するために発明されたものであって、レリースワイヤを用いた遠隔操作式排水栓装置において、1.勢いよく操作スイッチを操作した際に、止水弁が排水栓から飛び出すことを防止する。
2.施工時等におけるレリースワイヤの挫屈現象の発生を防止する。
3.遠隔操作式排水栓装置の全高を低くする。
4. 部材単価のコストダウンをはかる。
等を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置は、排水口(2)を設けた排水栓(1)と、該排水口(2)を開閉する弁部(4)を備えた止水弁(3)と、中空のアウターチューブ(5a)および該アウターチューブ(5a)中に進退自在に収納され、一方の端部が排水栓(1)内に配置されて、その進退の動作に対応して止水弁(3)が動作し排水口(2)の開閉を行うインナーワイヤ(5b)からなるレリースワイヤ(5)と、から構成された遠隔操作式排水栓装置において、インナーワイヤ(5b)の止水栓(1)側の端部と止水弁(3)とが、止水弁(3)の開閉操作によって着脱しない程度の強度で係合する係合機構を、前記インナーワイヤ(5b)の排水栓(1)内に配置する側の端部に備えられたロッド部(5c)と、前記止水弁(3)の弁部(4)に設けられた、ロッド部(5c)を脱着自在に係合させる係合口(4a)と、から構成したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0011】請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置は、前記遠隔操作式排水栓装置において、係合機構を、上記インナーワイヤの先端に設けた、外周面に凹を設けたロッド部(5c)と、上記弁部(4)に設けた、O−リング(O)を介して上記ロッド部(5c)と係合する、内周面に凹を設けた係合口(4a)と、から構成したことを特徴とするである。
【0012】
請求項3に記載の遠隔操作式排水栓装置は、前記遠隔操作式排水栓装置において、前記排水栓(1)の前記排水口(2)の内周面に水平に沿って凸部(16)を突設し、さらに、弁支持部材(14)を有し、前記弁支持部材(14)は、前記排水栓(1)の凸部(16)と係合する係合爪(17a)を下部に設けた円筒状のリング部(17)と、該リング部(17)からその中心に向かって延出されたアーム部(18)と、前記アーム部(18)と一体的に設けた接続部(6)を配置したものであって、前記接続部(6)は、アウターチューブ(5a)の端部を接続して、インナーワイヤ(5b)の配置を行う接続部(6)としたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0013】
請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置は、前記遠隔操作式排水栓装置において、遠隔操作式排水栓装置に、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を備えたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0014】
請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置は、上記段落0013に記載の遠隔操作式排水栓装置において、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を、弁部(4)から垂下して設けた、接続部(6)に任意方向に自在に摺接動作する安定壁(7)から構成したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0015】
請求項6に記載の遠隔操作式排水栓装置は、前記段落0013に記載の遠隔操作式排水栓装置において、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を、弁部(4)から垂下して設けた、排水口(2)側の内周面に対して任意方向に自在に摺接動作する安定翼(8)から構成したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0016】
削除
【0017】
請求項7に記載の遠隔操作式排水栓装置は、前記レリースワイヤ(5)中に、前記止水弁(3)に加えられた過応力若しくはインナーワイヤ(5b)の排水栓(1)側ではない方の端部に加えられた過応力を緩和する緩和部材を備えたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0018】
請求項8に記載の遠隔操作式排水栓装置は、上記段落0017に記載の遠隔操作式排水栓装置において、撃緩和部材を、緩和スプリング(11)としたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0019】
請求項9に記載の遠隔操作式排水栓装置は、上記段落0017に記載の遠隔操作式排水栓装置のレリースワイヤ(5)において、インナーワイヤ(5b)を、密なコイル形状とした線状鋼材より成し、更に前記インナーワイヤ(5b)の任意部分を、止水弁(3)に加えられた加重応力若しくはインナーワイヤ(5b)の排水栓(1)側ではない方の端部に加えられた過応力を緩和する緩和スプリング部(11a)としてインナーワイヤ(5b)に一体的に形成したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0020】
請求項10に記載の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、遠隔操作式排水栓装置に、前記インナーワイヤ(5b)の進退移動を保持する保持機構を設けると共に、更に前記インナーワイヤ(5b)の保持機構側に付勢する戻りスプリング(12)を備えたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0021】
請求項11に記載の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、レリースワイヤ(5)内に、止水弁(3)の脱着時等にインナーワイヤ(5b)がアウターチューブ(5a)より過度に引き出されることを防止するストッパー(13)を備えたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。図1乃至図3に図示した本発明の第一実施例による遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載した排水栓(1)、止水弁(3)、弁支持部材(14)、レリースワイヤ(5)、操作スイッチ(15)、その他の各部材より構成されて成る。排水栓(1)は、内部に排水口(2)を形成する略円筒形状であって、その外周面に雄螺子を設け、また排水口(2)内周面に、水平に沿って凸部(16)を突設している。弁支持部材(14)は、排水栓(1)の排水口(2)に設けた凸部(16)と係合する係合爪(17a)を下部に設けた円筒状のリング部(17)と、該リング部(17)からその中心に向かって延出されたアーム部(18)と、アーム部(18)の中心部にアーム部(18)と一体的に設けた、レリースワイヤ(5)のアウターチューブ(5a)の端部を接続する接続部(6)を備えてなる。止水弁(3)は、上下することで上記排水口(2)を開閉する弁部(4)と、止水弁(3)の上下動作を安定させる安定機構として、弁部(4)下面から垂下して設けられ、接続部(6)の外周面に摺接して上下方向に自在に動作する安定壁(7)を備えてなる。レリースワイヤ(5)は、図4に示したように可撓性を備えた中空のアウターチューブ(5a)と、該アウターチューブ(5a)の内面を軸方向に進退するインナーワイヤ(5b)と、インナーワイヤ(5b)の一端に備えられ、弁支持部材(14)の接続部(6)に接続された際に上記弁部(4)の下方から内部に配置される、外周面に凹を設けたロッド部(5c)と、インナーワイヤ(5b)がロッド部(5c)側に過度に飛び出すことを防止する、インナーワイヤ(5b)に設けられたストッパー(13)と、から成り、更にレリースワイヤ(5)内の操作スイッチ(15)側に、インナーワイヤ(5b)を操作スイッチ(15)側に付勢する戻りスプリング(12)と、過応力を緩和する緩和部材として、戻りスプリング(12)のバネ強度よりもバネ強度の強い緩和スプリング(11)を備えてなる。ロッド部(5c)と止水弁(3)との係合機構として、前記ロッド部(5c)先端の凹に、O−リング(O)を配置すると共に、止水弁(3)の弁部(4)には、ロッド部(5c)先端のO−リング(O)を脱着自在に係合させる凹を設けた係合口(4a)を備えてなる。操作スイッチ(15)は、上記レリースワイヤ(5)に接続され、上記レリースワイヤ(5)のインナーワイヤ(5b)の進退を行うことで、排水口(2)を開閉させるものであって、またインナーワイヤ(5b)の進退を保持するための保持機構として、従来よりよく知られているスラストロック機構(図示せず)を備えて成る。また、その他の部材として、上記排水栓(1)の雄螺子と螺合する雌螺子を備えた開口部(19a)と、排水口(2)からの排水を下水側に排出するための排出口(19b)、及びレリースワイヤ(5)を通すための挿通孔(19c)を備えた排水エルボ(19)を備えてなる。
【0023】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置は、以下のようにして浴槽等に設けられた取着孔に取着される。まず排水栓(1)を、取着孔を介して排水エルボ(19)の開口部(19a)と螺合させる。次にレリースワイヤ(5)の一方、ロッド部(5c)を備えない側を操作スイッチ(15)に接続し、またロッド部(5c)側の端部を、挿通孔(19c)を介して排水エルボ(19)から排水栓(1)の排水口(2)へと引き上げる。この際、本来であればアウターチューブ(5a)をつまんで引き上げるところ、誤ってロッド部(5c)やインナーワイヤ(5b)をつまんで引き出してしまった場合でも、インナーワイヤ(5b)に備えたストッパー(13)によって、インナーワイヤ(5b)が過度に引き出されてしまうのが防止されるため、インナーワイヤ(5b)を挫屈・破損してしまうことがない。更にアウターチューブ(5a)の端部を弁支持部材(14)の接続部(6)に接続した後、排水口(2)内に弁支持部材(14)を、リング部(17)の外周が排水口(2)の内周面に当接するようにして挿入し、更に排水口(2)の凸部(16)に係合爪(17a)を係合させて排水口(2)に弁支持部材(14)を固定する。この状態において、弁支持部材(14)によってロッド部(5c)の先端が排水口(2)の中心にて上方を向いて固定されてなるので、この先端にO−リング(O)を介して止水弁(3)の係合口(4a)の凹を係合させて本実施例の遠隔操作式排水栓装置の取り付けが完了する。
【0024】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置を使用する場合、まず操作スイッチ(15)に操作を加えて止水弁(3)が排水口(2)を閉口した状態、即ち図1にあるようにレリースワイヤ(5)のインナーワイヤ(5b)が操作スイッチ(15)側に後退して、ロッド部(5c)が降下した状態とする。この状態より操作スイッチ(15)に操作を加えて、インナーワイヤ(5b)を弁支持部材(14)側に前進させると、ロッド部(5c)が弁部(4)の係合口(4a)とO−リング(O)を介して係合しているため、ロッド部(5c)が止水弁(3)を押し上げ、それに伴って図2にあるように止水弁(3)全体が上昇して排水口(2)を開口すると共に、スラストロック機構によって開口状態が保持される。この状態より操作スイッチ(15)に操作を加えてスラストロック機構の保持状態を解除すると、インナーワイヤ(5b)が、止水弁(3)の自重と、戻りスプリング(12)のばね力によって操作スイッチ(15)側に後退し、ロッド部(5c)が下降するため、ロッド部(5c)に押し上げられていた止水弁(3)も降下して排水口(2)を閉口する。以後、この操作を繰り返すことで排水口(2)の開閉を自在に操作することができる。
【0025】
また、上記の遠隔操作式排水栓装置においては、従来例にあった弁軸(9)と軸受け部(10)を廃止して、止水弁(3)の上下とその動作の安定を、接続部(6)及び安定壁(7)にて行っているため、弁軸(9)もしくは軸受け部(10)の分だけアウターチューブ(5a)の取り付け位置を従来例よりも高くすることができる。これによって、取り付け位置が高くなった分だけレリースワイヤ(5)の曲がり半径を大きくするか、又は遠隔操作式排水栓装置の全高を低くできる。
【0026】
また、上記の遠隔操作式排水栓装置においては、止水弁(3)の上昇時、すなわち排水口(2)の開口時に止水弁(3)を踏むなどして過応力が加えられたとしても、レリースワイヤ(5)内の緩和スプリング(11)が収縮し、排水口(2)が閉口状態となるため、ロッド部(5c)やインナーワイヤ(5b)が破損することがない。このような構成は第一実施例のように弁軸(9)を廃止したため、衝撃緩和部材を止水弁内に組み込むことの困難な場合に特に有効である。
【0027】
また、ロッド部(5c)と、弁部(4)に設けた係合口(4a)とが、O−リング(O)を介して止水弁(3)の開閉操作によって着脱しない程度の強度で係合しているため、遠隔操作式排水栓装置の止水弁(3)が排水口(2)から外れることなく、遠隔操作式排水栓装置を利用することができる。また、戻りスプリング(12)のばね力を、排水口(3)の閉口のための応力として利用できるため、その分止水弁(3)を軽量化する事ができる。
【0028】
また止水弁(3)を排水栓(1)から外す場合、インナーワイヤ(5b)に設けたストッパー(13)によってインナーワイヤ(5b)が過度に引き出されることがないため、インナーワイヤ(5b)が破損することが無い。この特徴は、施工の際にレリースワイヤ(5)を引き上げる時にも効果的に作用し、該遠隔操作式排水栓装置のロッド部(5c)やインナーワイヤ(5b)をつまんで持ち上げてもレリースワイヤ(5)が破損することを防止する。
【0029】
次に本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。図5乃至図7に図示した本発明の第二実施例による遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載した排水栓(1)、止水弁(3)、弁支持部材(14)、レリースワイヤ(5)、操作スイッチ(15)、その他の各部材より構成されて成る。排水栓(1)は、内部に排水口(2)を形成する略円筒形状であって、その外周面に雄螺子を設け、また排水口(2)内周面に、水平に沿って凸部(16)を突設している。弁支持部材(14)は、排水栓(1)の排水口(2)に設けた凸部(16)と係合する係合爪(17a)を下部に設けた円筒状のリング部(17)と、該リング部(17)からその中心に向かって延出されたアーム部(18)と、アーム部(18)の中心部にアーム部(18)と一体的に設けた、レリースワイヤ(5)のアウターチューブ(5a)の端部を接続する接続部(6)を備えてなる。止水弁(3)は、上下することで上記排水口(2)を開閉する弁部(4)と、止水弁(3)の上下動作を安定させる安定機構として、弁部(4)下面から垂下して設けられ、排水口(2)側の内周面、本実施例であればリング部(17)の内周面に摺接して上下方向に自在に動作する安定翼(8)を備えてなる。レリースワイヤ(6)は、図8に示したように、可撓性を備えた中空のアウターチューブ(5a)と、該アウターチューブ(5a)の内面を軸方向に進退する、密なコイル形状とした線状鋼材より成したインナーワイヤ(5b)と、インナーワイヤ(5b)の一端に設けた、外周面に凹を備えたロッド部(7)と、から成り、更に前記インナーワイヤ(5b)の任意部分を、止水弁(3)に加えられた加重応力を緩和する緩和スプリング部(11a)として形成してなる。更にインナーワイヤ(5b)には、インナーワイヤ(5b)がロッド部(5c)側に過度に飛び出すことを防止するストッパー(13)を設けてなる。操作スイッチ(15)は、上記レリースワイヤ(5)に接続され、上記レリースワイヤ(5)のインナーワイヤ(5b)の進退を行うことで、排水口(2)を開閉させるものであって、またインナーワイヤ(5b)の進退を保持するための保持機構部として、従来よりよく知られているスラストロック機構(図示せず)を備えて成り、更にロッド部(5c)と止水弁(3)との係合機構として、前記ロッド部(5c)先端の凹に、O−リング(O)を配置すると共に、止水弁(4)の弁部(4)には、ロッド部(5c)先端のO−リング(O)を脱着自在に係合させる凹を設けた係合口(4a)を備えてなる。また、その他の部材として、上記排水栓(1)の雄螺子と螺合する雌螺子を備えた開口部(19a)と、排水口(2)からの排水を下水側に排出するための排出口(19b)、及びレリースワイヤ(5)を通すための挿通孔(19c)を備えた排水エルボ(19)を備えてなる。
【0030】
上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置は、上記第一実施例と同様の方法によって、浴槽等に設けられた取着孔に取着される。
【0031】
また、上記のように構成した遠隔操作式排水栓装置は、上記第一実施例と同様の操作を行うことで排水口(2)の開閉を自在に操作することができる。
【0032】
また、上記の遠隔操作式排水栓装置においては、従来例にあった弁軸(9)と軸受け部(10)を廃止して、止水弁(3)の上下とその動作の安定を、排水口(2)内に配されたリング部(17)内周面と安定翼(8)との摺動動作にて行っているため、弁軸(9)もしくは軸受け部(10)の分だけアウターチューブ(5a)の取り付け位置を従来例よりも高くすることができる。これによって、取り付け位置が高くなった分だけレリースワイヤ(5)の曲がり半径を大きくするか、又は遠隔操作式排水栓装置の全高を低くできる。
【0033】
また、上記の遠隔操作式排水栓装置においては、止水弁(3)の上昇時、すなわち排水口(2)の開口時に止水弁(3)を踏むなどして過応力が加えられたとしても、加重応力によってレリースワイヤ(5)内の緩和スプリング部(11a)が収縮し、インナーワイヤ(5b)に無理な応力が作用することなく排水口(2)が閉口状態となるため、ロッド部(5c)やインナーワイヤ(5b)が破損することがない。このような構成は第一実施例また第二実施例のように弁軸(9)を廃止したため、緩和部材を止水弁(3)内に組み込むことの困難な場合に特に有効である。また第一実施例のレリースワイヤ(6)に比べて、部品点数が減少しているため、その分コストダウンをはかることができる。
【0034】
また本発明の第二実施例は、段落0027、及び段落0028に記した上記第一実施例と同様の効果を備えてなる。
【0035】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明の構成は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、自在に構成を変更することができる。たとえば、遠隔操作式排水栓装置において、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を、図9及び図10に示したように、弁部(4)から垂下して設けた弁軸(9)と、排水口内に備えた、該弁軸(9)を任意方向にのみ摺接動作が自在となるように収納する軸受け部(10)と、から構成してもよい。これによって従来の部材をそのまま流用するなど、互換性やコスト面で有利な効果を上げることができ、また上記段落0027また段落0028に記載されているような効果を得ることもできる。また従来例のように緩和スプリング(11)を弁軸内に配置しないのであれば、弁軸(9)の長さはインナーワイヤ(5b)の動作幅だけあれば良いから、遠隔操作式排水栓装置の全高を従来例より狭くすることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成したため、以下のような効果を奏する。
1)インナーワイヤ先端と止水弁とを、止水弁の開閉操作によって着脱しない程度の強度で係合したことにより、止水弁の開閉の際に勢い余って止水弁が排水口から抜けることがない。
2)また、インナーワイヤにストッパーを設けた場合、ストッパーによってインナーワイヤが過度に引き出されることがないため、施工時等に誤ってロッド部やインナーワイヤをつまんでしまってもインナーワイヤが破損することが無い。
3)また、緩和スプリング、もしくは緩和用スプリング部を等の衝撃緩和用部材をレリースワイヤに組み込んだ場合、止水弁に衝撃緩和用部材を配置する必要がなく、遠隔操作式排水栓装置の全高を低く設けることができるようになった。この特徴は、排水栓の開閉動作の安定を安定壁や安定翼を用いて行うような、止水弁に衝撃緩和部材を配置が困難な場合に特に効果的に作用する。
4)また、インナーワイヤの保持機構と戻りスプリングを設けた場合、操作スイッチの押動で止水弁の開閉が自由自在に行えるようになった。またこの場合、戻りスプリングの力が、止水弁の閉口向きの力に付勢されるため、排水口の閉口をより確実に行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の閉口状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施例の開口状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第一実施例の部材構成を示す、一部を切り欠きした斜視図である。
【図4】本発明の第一実施例に用いられているレリースワイヤを示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施例の閉口状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第二実施例の開口状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第二実施例の部材構成を示す、一部を切り欠きした斜視図である。
【図8】本発明の第二実施例に用いられているレリースワイヤを示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施例の、閉口状態を示す断面図である。
【図10】本発明の他の実施例の、開口状態を示す断面図である。
【図11】従来の遠隔操作式排水栓装置の閉口状態を示す断面図である。
【図12】従来の遠隔操作式排水栓装置の開口状態を示す断面図である。
【図13】従来の遠隔操作式排水栓装置の部材構成を示す、一部を切り欠きした斜視図である。
【符号の説明】
1 排水栓
2 排水口
3 止水弁
4 弁部
4a 係合口
5 レリースワイヤ
5a アウターチューブ
5b インナーワイヤ
5c ロッド部
6 接続部
7 安定壁
8 安定翼
9 弁軸
10 軸受け部
11 緩和スプリング
11a 緩和スプリング部
12 戻りスプリング
13 ストッパー
14 弁支持部材
15 操作スイッチ
16 凸部
17 リング部
17a 係合爪
18 アーム部
19 排水エルボ
19a 開口部
19b 排水口
19c 挿通孔
O O−リング
Claims (11)
- 排水口(2)を設けた排水栓(1)と、
該排水口(2)を開閉する弁部(4)を備えた止水弁(3)と、
中空のアウターチューブ(5a)および該アウターチューブ(5a)中に進退自在に収納され、一方の端部が排水栓(1)内に配置されて、その進退の動作に対応して止水弁(3)が動作し排水口(2)の開閉を行うインナーワイヤ(5b)からなるレリースワイヤ(5)と、
から構成された遠隔操作式排水栓装置において、
インナーワイヤ(5b)の止水栓(1)側の端部と止水弁(3)とが、止水弁(3)の開閉操作によって着脱しない程度の強度で係合する係合機構を、
前記インナーワイヤ(5b)の排水栓(1)内に配置する側の端部に備えられたロッド部(5c)と、
前記止水弁(3)の弁部(4)に設けられた、ロッド部(5c)を脱着自在に係合させる係合口(4a)と、
から構成したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。 - 前記遠隔操作式排水栓装置において、係合機構を、上記インナーワイヤの先端に設けた、外周面に凹を設けたロッド部(5c)と、上記弁部(4)に設けた、O−リング(O)を介して上記ロッド部(5c)と係合する、内周面に凹を設けた係合口(4a)と、から構成したことを特徴とする上記請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置において、
前記排水栓(1)の前記排水口(2)の内周面に水平に沿って凸部(16)を突設し、
さらに、弁支持部材(14)を有し、
前記弁支持部材(14)は、前記排水栓(1)の凸部(16)と係合する係合爪(17a)を下部に設けた円筒状のリング部(17)と、
該リング部(17)からその中心に向かって延出されたアーム部(18)と、前記アーム部(18)と一体的に設けた接続部(6)を配置したものであって、前記接続部(6)は、アウターチューブ(5a)の端部を接続して、インナーワイヤ(5b)の配置を行う接続部(6)とした遠隔操作式排水栓装置。 - 前記遠隔操作式排水栓装置において、遠隔操作式排水栓装置に、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を備えたことを特徴とする上記請求項1又乃至請求項3に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記遠隔操作式排水栓装置において、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を、弁部(4)から垂下して設けた、接続部(6)に任意方向に自在に摺接動作する安定壁(7)から構成したことを特徴とする請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記遠隔操作式排水栓装置において、止水弁(3)の開閉動作を安定させる安定機構を、弁部(4)から垂下して設けた、排水口(2)側の内周面に対して任意方向に自在に摺接動作する安定翼(8)から構成したことを特徴とする請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記レリースワイヤ(5)中に、前記止水弁(3)に加えられた過応力若しくはインナーワイヤ(5b)の排水栓(1)側ではない方の端部に加えられた過応力を緩和する緩和部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記緩和部材を緩和スプリング(11)としたことを特徴とする、請求項7に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記遠隔操作式排水栓装置において、インナーワイヤ(5b)を、密なコイル形状とした線状鋼材より成し、更に前記インナーワイヤ(5b)の任意部分を、止水弁(3)に加えられた加重応力若しくはインナーワイヤ(5b)の排水栓(1)側ではない方の端部に加えられた過応力を緩和する緩和スプリング部(11a)としてインナーワイヤ(5b)に一体的に形成したことを特徴とする請求項7に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記遠隔操作式排水栓装置において、遠隔操作式排水栓装置に、前記インナーワイヤ(5b)の進退移動を保持する保持機構を設けると共に、更に前記インナーワイヤ(5b)の保持機構側に付勢する戻りスプリング(12)を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項9に記載の遠隔操作式排水栓装置。
- 前記遠隔操作式排水栓装置において、レリースワイヤ(5)内に、止水弁(3)の脱着時等にインナーワイヤ(5b)がアウターチューブ(5a)より過度に引き出されることを防止するストッパー(13)を備えたことを特徴とする上記請求項1乃至請求項10に記載の遠隔操作式排水栓装置。
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