JP3552563B2 - H形鋼のフランジ冷却装置およびフランジ冷却方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延によってH形鋼を製造する装置において、制御圧延・制御冷却によって高強度・高靭性のH形鋼を製造するためのH形鋼のフランジ冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、建築用の材料に対して耐震性に対する要求が高まっており、建築物の柱材や梁材として用いられるH形鋼においては、強度や靭性の優れたH形鋼が求められており、特にその製造法として圧延と冷却とを組み合わせた制御圧延・制御冷却が盛んに行なわれている。
高強度・高靭性の鋼材を製造する一般的な方法としては、1000℃以上に加熱したスラブやCCBB(continuous castin beam blank)素材を一旦中程度の厚みまで粗圧延し、その後、鋼板の温度が未再結晶温度域やあるいはその温度域に近い温度域で最終の仕上げ圧延を行ういわゆる制御圧延と、圧延後は加速冷却によってAr3 温度以上から500 ℃程度まで急冷(焼き入れ)することによって強度を出す、いわゆる制御冷却が行われている。
【0003】
このようなH形鋼のフランジに対して、仕上げ圧延機の後方において加速冷却装置を設けて制御冷却を行う従来の技術としては、フランジ内外面から同時に冷却する方法(特公平5−73806号公報、以下第1従来例と呼ぶ)、多段にスプレーノズルを配置しこれをガイドの後方からガイドに設けたスリットを通してH形鋼のフランジ外面を冷却する方法(特開平5−317948号公報、以下第2従来例と呼ぶ)、ノズルの高さを変更可能なガイドレールにノズルを取り付け高さを変更する方法(実開平5−93611号公報、以下第3従来例と呼ぶ)があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、図6にH形鋼各部寸法の名称を示す。H形鋼は、フランジ幅(H)、フランジ厚み(t2)、ウエブ高さ(B)、ウエブ厚み(t1)の各寸法が多種にわたるため、多品種のH形鋼を能率よく製造するために、第1従来例では、フランジ内面の冷却装置の幅、位置、高さ等を容易に変更可能とするか、位置調整自在とする必要があり、さらに、内面に冷却装置を設けると同装置H形鋼の通過に際して衝突の危険性があり、安定操業の点で問題があった。
【0005】
また、第2従来例のスプレーノズルを多段に配置する方法では、フランジ幅(H)の変更に対してはノズルの段を選択することによって変更可能であるが、加速冷却に必要な強冷却を行うためにはノズルを長手方向に密に配置する必要がある。
そして、通常H形鋼の搬送にはガイドによって搬送方向をサポートしているがノズルを密に配置するためにはそのガイドに多くの開口部を設ける必要があって、サイドガイド自身がガイドの役割を果たせず、ガイドの開口部に材料が突っ込み搬送トラブルを起こしたり、材料の衝突よるガイドの破損が生じたり問題が多いという問題点があった。
【0006】
従ってノズルを長手方向に密に配置するには限度があって例えばフランジ全面を1000〜3000L/min m2 という高水量密度で均一に冷却することは難しく、近年の制御冷却においては徹底した合金成分の合理化によって低コスト化、溶接性の向上が求められ、このような鋼については5℃/s以上の強冷却が求められている。しかしながら、内面冷却を行わないフランジ外面のみの冷却では20mm以上のフランジ厚みのH形鋼においては5℃/s以上の強冷却を実現することは難しかった。
【0007】
また、第3従来例のノズルの高さを変更可能なガイドレールにノズルを取り付け高さを変更する方法では、ノズルと被冷却部であるフランジとの距離がフランジ幅に応じて変わるため、同じ噴射条件ではフランジ幅の大きいH形鋼の冷却では水量密度が小さくなるため、冷却が弱く第2従来例と同様に圧延後の加速冷却には不向きであった。また、ノズルがフランジ面から離れると冷却水のフランジ面への衝突力が弱くなって、冷却水がフランジ面に沿って流下するときにフランジ下部が過冷却される問題があり、フランジ面の均一冷却が難しかった。
【0008】
また、従来の技術によるH形鋼のフランジの冷却の他の問題点はとしては、フランジ外面を冷却した冷却水がフランジ上端部を乗り越えてウエブに流れ込みウエブの上面の過冷却を引き起こしていたことである。
この乗り越え水は、ウエブ上面を必要以上に冷却するため、上部フランジが内側に倒れる傘折れやフランジの上下曲がり、ウエブの肉厚が薄い場合にはフランジ冷却中にウエブが座屈してウエブに変形が生じるウエブ波が発生して問題であった。
【0009】
そして、第1従来例ではフランジを内外面から一斉に冷却するのでウエブ上面の過冷却は比較的問題となりにくいが、薄肉ウエブのH形鋼は内外面同時冷却ではウエブ波を生じるので製造が難しかった。
また、第2従来例及び第3従来例のスプレーノズルから噴射した冷却水流でフランジ外面を冷却する方法では、ウエブヘ冷却水がフランジ上端を乗り越える対策として、冷却ノズルとフランジとの間にマスキングプレートを設けて、フランジ上端部にかかる冷却水を遮蔽する方法(特開昭62−248507号公報、特公平5−10967号公報)があった。
【0010】
しかしながら、これらの方法では、通常ノズルとフランジとの距離が100〜200mm離れているので、サイドガイド内を通過するH形鋼の位置が左右にずれると冷却水の衝突位置(高さ)が変わってしまうためにウエブヘの冷却水の乗り越えが発生してしまう。特に加速冷却では強冷却を実現するためにために噴射量を増やし、高水量密度での冷却が行われるが、この場合は特に冷却水の乗り越えが発生して問題となっていた。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、圧延法によって高強度・高靭性のH形鋼を能率良く製造可能とするために、H形鋼の仕上げ圧延後にH形鋼のフランジを強冷却して加速冷却を行うためのH形鋼のフランジ冷却装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るH形鋼のフランジ冷却装置は、H形鋼の熱間圧延ライン内の仕上げ圧延機の下流側に配置されて、該H形鋼のフランジを加速冷却するフランジ冷却装置であって、
該冷却装置は、前記H形鋼の両側フランジをライン両側より挟んで、これを案内するサイドガイドに形成された多数の噴射孔からなり、かつこれら噴射孔は、その孔軸が水平に対し先端側が下方向に傾斜して設定され、その直径が前記サイドガイドの厚みよりも小さく、その長さが5mm以上に設定され、かつ噴出する冷却水の流れがラミナーフローとなるように該冷却水の出口流速が1〜20m/sに調整されてなるものである。
【0013】
本発明の請求項2に係るH形鋼のフランジ冷却装置は、前記噴射孔の孔軸の角度を10〜30度の範囲に設定したものである。
また、本発明の請求項3に係るH形鋼のフランジ冷却装置は、前記噴射孔がストレートの直管であって、その入り口と出口とは面取りがなされているものである。
また、本発明の請求項4に係るH形鋼のフランジ冷却装置は、前記噴出する冷却水の流れが、前記H形鋼とフランジとの間に充満した冷却水の中を噴流が突き破って前記フランジ外面に新鮮な冷却水が供給されるものである。
さらに、本発明の請求項5に係るH形鋼のフランジ冷却方法は、H形鋼の熱間圧延ライン内の仕上げ圧延機の下流側において、該H形鋼のフランジを加速冷却するフランジ冷却方法であって、
前記H形鋼の両側フランジをライン両側より挟んで、これを案内するサイドガイドに形成された多数の噴射孔の孔軸の先端側が、水平に対し下方向に傾斜するように設定する工程と、
前記サイドガイドを左右に動かす工程と、
噴出する冷却水の流れがラミナーフローとなるように該冷却水の出口流速を1〜20m/sに調整する工程とを有し、
前記サイドガイドとH形鋼との距離を変えることによって、冷却水の衝突点位置を上下に調整するものである。
また、本発明の請求項6に係るH形鋼のフランジ冷却方法は、前記噴射孔の直径が前記サイドガイドの厚みよりも小さく、その長さが5mm以上に設定されているものである。
また、本発明の請求項7に係るH形鋼のフランジ冷却方法は、前記噴射孔の孔軸の角度を10〜30度の範囲に設定されているものである。
また、本発明の請求項8に係るH形鋼のフランジ冷却方法は、前記噴射孔がストレートの直管であって、その入り口と出口とは面取りがなされているものである。
また、本発明の請求項9に係るH形鋼のフランジ冷却方法は、前記噴出する冷 却水の流れが、前記H形鋼とフランジとの間に充満した冷却水の中を噴流が突き破って前記フランジ外面に新鮮な冷却水が供給されるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態に係るH形鋼のフランジ冷却装置の構成を示す断面図であり、圧延後のH形鋼1をH姿勢で連続的に搬送しながらその搬送の途中でオンラインでフランジの外面から冷却水を噴射して冷却を施る構成を示している。
【0015】
この実施の形態に係るH形鋼のフランジ冷却装置は、図1に示すように、H形鋼1のフランジ2の外面にサイドガイド4を兼ねた、多数の冷却水噴射孔3が開けられたガイドから冷却水が噴射されている。
また、この冷却水噴射孔3から噴射される冷却水は独立に流量制御とオンオフ制御が可能な複数のブロック5に分けられており、それぞれのブロック5には流量制御の流量調整弁6とオンオフ制御弁7が設けられている。この複数の流量制御可能なブロックの幅は、この冷却装置で製造されるH形鋼のフランジ幅に対応して複数設けられている。
【0016】
このように構成されたH形鋼のフランジ冷却装置では冷却装置自身であるサイドガイド4を被冷却体であるフランジ2に近接させることが可能であり、また、サイドガイド4自身に冷却水噴射孔3があるために、ノズルとなる冷却水噴射孔3とH形鋼1が接触してもノズルは破損することがない。
さらに、冷却水噴射孔3のピッチは任意に選べるので高水量密度例えば1000〜3000L/min m2 の冷却を容易に実現できる。
【0017】
また、ノズル自身はラインに対して直角に進退自在に取り付けられるので常にH形鋼1のフランジ2と近接したある距離、例えば10〜30mmをおいてノズルを配置することが可能で、H形鋼1のウエブ高さ(B)が変更してもノズルとフランジ2の距離を一定に保つべくノズルの位置調整が可能で冷却が安定している。
従って、スプレーノズルに見られるような流下水によるフランジ幅方向の冷却ムラもない。
【0018】
さらに、サイドガイド4に設けられた冷却水噴射孔3はその角度が水平に対して下向きに角度がついているそのため、噴射された冷却水はフランジ2外面に衝突した後下方に流下し、盛り上がってフランジ2を乗り越えてウエブ8へ流れ込みウエブ上面の過冷却を引き起こすようなことがない。
また、冷却水噴射孔3から噴射される冷却水の流れは円柱状のラミナーフロー(層流)となるようにしているのでフランジ面に衝突した際にその盛り上がりが少ない。
【0019】
また、スプレーノズルから噴射されたアトマイズ(飛散)状態の噴霧流では、フランジ面への衝突する液的の速度が速いために盛り上がりが大きくフランジ上端を乗り越える虞れがあるが、円柱状のラミナーフローでは衝突速度が遅いのでそのような盛り上がりは少ない。
また、スプレーノズルから噴射されたアトマイズされた噴霧流では液滴が四方八方に飛び散り、飛んだ液滴がフランジを乗り越える虞れがあるが、円柱状のラミナーフローではそのようなことがない。
さらに、サイドガイドを左右に動かしサイドガイドとH形鋼の距離を変えることによって、冷却水の衝突点位置を上下に調整することが可能である。基本的には冷却幅(冷却水の到達する範囲、高さ)は、ノズルの段数を変えることで変更するが、細かい調整は、サイドガイドの位置を動かし、冷却装置と被冷却面の距離を変え、到達位置を変更することで可能となる。
【0020】
次に、試験例に基づきこの実施の形態のH形鋼のフランジ冷却装置によるH形鋼のフランジの冷却について図1〜図4に基づき説明する。
【0021】
試験例1.
図2はこの実施の形態のH形鋼製造時の設備配置を説明するための説明図、図3,図4はこの実施の形態における冷却水の流れを説明するための説明図である。
この実施の形態は板厚250 mmのスラブを加熱炉で1250℃まで加熱し、その後、ブレークダウンミルによって該フランジ形状の素材をさらにユニバーサル方式の粗圧延機でリバース圧延することによってフランジの各部形状、寸法を整えて、仕上げる製造工程によりH形鋼を製造するH形鋼の製造ラインにおいて、圧延後のフランジを加速冷却することによって強度をあげる制御冷却を行っており、加速冷却の条件は770 ℃から500 ℃までを5〜10℃で加速冷却を施すいわゆる制御冷却を行うH形鋼の製造例である。
【0022】
図2に示すように、加熱炉9から抽出された厚み250 mmの第1のスラブは搬送テーブルを送られてブレークダウンミル10に送られて該H形鋼形状の素材に圧延された後、第1の粗圧延機群11及び第2の粗圧延機群12においてリバース圧延によってH形鋼の各部寸法を圧延成形すると共に、圧延温度を特定の温度領域で特定の圧下率で圧延を施す制御圧延が行われている。
そして、粗圧延後のH形鋼は直ちに仕上げ圧延機13に送られてフランジを垂直にたてる圧延が施され、約900 ℃で仕上げ圧延が完了した。
【0023】
その後直ちに、図1で示したこの実施の形態のフランジ冷却装置14に送られ、フランジ2外面を冷却して加速冷却が施された。
このフランジ冷却装置は長さが40mの通過型の冷却装置であるが、40m未満の長さのH形鋼はフランジ冷却装置内でオッシレーションさせることによって長時間の冷却可能な冷却装置である。
【0024】
また、サイドガイド4は高さ550 mmでガイドの肉厚は15mmの鋼板である。
この鋼板に直径3mmの冷却水噴射孔3が20mmピッチで千鳥状に開けられている。この時、噴射した冷却水が冷却水噴射孔出口でアトマイズしないようにサイドガイド4にあけた冷却水噴射孔3はストレートの直管で冷却水噴射孔入り口と出口は面取りがなされている。これは、冷却水が冷却水噴射孔出口近傍でアトマイズすると冷却水が上方へ飛び散り、液滴がフランジを乗り越えることを避けるためである。
【0025】
すなわち、この実施の形態のフランジ冷却装置で用いられている冷却水の流れは、図3の(a)に示すように、水道の蛇口から流下するような柱状の冷却水の流れが望ましく、スプレーノズルのようにノズル出口で冷却水が乱れてアトマイズしてしまうような流れ(図3の(b))は、望ましくない。これは、飛び散った液滴がフランジを乗り越えることを避けるための他、H形鋼−フランジ間に充満した冷却水の中を噴流が突き破ってフランジ外面に新鮮な冷却水が供給され、強冷却と均一冷却を実現させることから重要である。
また、図3の(a)に示すように水道の蛇口から流下するような柱状の冷却水の流れを得るためには、サイドガイド4に設けた冷却水噴射孔3の長さは、最低でも5 mm、望ましくは10mm程度必要である。ただし、長すぎると噴射の際の圧力損失が大きいのでこの実施の形態では10mmとしている。
【0026】
このように、冷却水の流れを円柱状のラミナーフローとするためには、冷却水噴射孔3における冷却水の出口流速を1〜20 m/s、望ましくは2〜5 m/sとする。これは、1 m/s以下では、冷却水が勢いが弱くフランジ外面に到達しにくく、20 m/s以上では流れが乱れて飛び散る虞れがあるためである。
【0027】
さらに、この実施の形態のフランジ冷却装置の冷却水噴射孔3は複数のブロック5に分割されており、それぞれのブロック5は冷却水を独立に流量制御かつオンオフ制御すべく流量調整弁6やオンオフ弁7が設けられている。この弁を調整することによってフランジ冷却装置は10の段に分けられており、それぞれの段の幅が50mmになっており通常製造するフランジ幅B150 、200 、250 、300 、350 、400 、500 mmのそれぞれについて冷却幅を制御することが可能である。
もちろん、各段の噴射冷却水量を変更することでフランジ幅方向の冷却能を変更することも可能で、幅内の温度偏差を解消し上下の曲がり防止や材質のバラツキを低減することも可能である。
【0028】
また、各冷却水噴射孔3は図4の(a)に示すように、下方に約10゜傾いている。これは噴射した冷却水がフランジに衝突した後上方に盛り上がりフランジ上端を乗り越えないようにするためである。
この角度が小さいと(孔が水平に近い,図4の(b))衝突した冷却水の盛り上がりが大きくフランジを冷却水が乗り越えやすく、逆にこの角度を大きくする(孔を下方へ傾ける,図4の(c))と、フランジとガイドの距離が変わった場合に冷却水がフランジに到達しにくくなって、冷却が弱くなる問題がある。
従ってこの角度は10〜30゜が望ましい。
また、ノズルがサイドガイド4と一体であるためにこの実施の形態ではフランジ2とノズルの距離を一定に、近接して一定に保ちやすく、そのため冷却水の衝突位置(高さ)が安定している。
また、サイドガイド4を動かすことで冷却水の到達する位置(高さ)を微調整可能である。
【0029】
このフランジ冷却装置に圧延直後のH形鋼を通過させて加速冷却を行った。H形鋼はウエブ高さHが572 mm、フランジ幅Bが510 mm、ウエブ厚みが60mm、フランジ厚み80mm、長さが13mで、仕上がり時のフランジは830 ℃であった。
このH形鋼をこの実施の形態のフランジ冷却装置に挿入し、後端がフランジ冷却装置内に入ったと同時に全段の冷却水噴射孔3から冷却水を噴射開始し、オッシレーションさせながら120 秒冷却した。
【0030】
この時、フランジ上端を冷却水が乗り越えることはなかった。なお、この時の冷却水の水量密度は1500L/min m2 とした。
そして、冷却後、復熱した後のフランジ温度を計測したところ500 ℃であってフランジ幅方向に、長手方向ともに均一な温度であった。冷却後、材質を調べたところ、当初予定の加速冷却効果が確認された。
【0031】
以上の操業を続けることで圧延機の稼働率を高く維持しながら様々なサイズのH形鋼を連続的に処理可能で、その際、フランジ上端から冷却水がウエブ上へ流れ込むことがなくウエブの過冷却がなく、それにともなうフランジの傘折れはなかった。また、t1 が12mm以下のような薄肉ウエブのH形鋼のフランジを加速冷却してもウエブ波等の問題はなかった。
【0032】
比較例.
この実施の形態の比較例としてスプレーノズルから冷却水をフランジに噴射し、フランジの冷却を行った場合の加速冷却の例を図5に示す、
なお、この比較例ではノズルとフランジ外面の間に遮蔽板を挿入し、フランジ上端部への冷却水の衝突を防止している場合である。
【0033】
この比較例では、搬送中のH形鋼の両フランジ2の外側にガイド15を設けて、そのガイド15には幅20mm高さ500 mmの冷却水を噴射するスリット状の孔16が200 mmピッチで開けられている。それぞれのスリット状の孔16の外側には市販の角吹きスプレーノズル17が設置されている。
そして、それぞれのノズルはH形鋼のフランジ面で幅30mm高さ500 mmの面積を冷却するようにその噴射角度が選定されている。
【0034】
なお、この時の各ノズルからの噴射水量は150 L/分、フランジ面での水量密度は冷却水が当たっている部分は約10000L/m2 分である。しかしながら、長手方向にはノズルピッチが200 mmであるので冷却能力としてはフランジ厚み25mmで冷却速度が4.2 ℃/sであった。加速冷却としては8〜10℃/s必要であるがこの冷却装置では冷却が不足していた。
また、ノズル配管施工上ノズルピッチは200 mmよりも短くすることは不可能であったのでこの装置では加速冷却装置としては能力が不十分であった。また、ノズルピッチを200 mmよりも短くするとガイドの強度が冷却水の噴射孔によって不足し、H形鋼の衝突によってガイドが容易に変形する、あるいはH形鋼のスムーズな搬送が難しいという問題があった。
【0035】
また、加速冷却として必要な冷却能力8〜10℃/sを得るためにはフランジ外面のみならず内面からの冷却が必要であった。フランジ内面に冷却装置を設けることを想定すると、H形鋼のサイズ変更に対し、その内法を変更する、高さを変更する等の駆動が必要で、かつH形鋼との衝突を防止するためのガイド設置等、設備費が膨大となる問題があった。
【0036】
ガイド15の外側には高さを変更可能な遮蔽板18を設けて、H形鋼のフランジ上端部へ衝突する冷却水を遮蔽した。さらに、遮蔽板の下には遮蔽板に衛来した冷却水が再度飛ばないように樋19を設けている。しかしながらこの加速冷却装置ではフランジの幅が200 mmから500 mmまでのH形鋼を製造しているためにその遮蔽板の位置調整幅は高さ約170 mm〜470 mmと300 mm稼働させなければならずそのための機構が複雑であった。
また、その遮蔽効果は、遮蔽板に一旦衝突した冷却水が遮蔽板の下端から再度吹き飛ばされてフランジ上端部を乗り越え、ウエブに一部到達し、完全な水切りは難しかった。
また、この比較例の冷却装置で実施の形態と同じ薄肉ウエブのH形鋼を冷却したところ、ウエブ波が発生した。
【0037】
この実施の形態では、サイドガイド4を兼ねた、多数の冷却水噴射孔3が開けられたガイドから冷却水が噴射し、冷却水噴射孔3をその角度が水平に対して下向きに角度をつけるようにしたので、冷却水がフランジ外面に効率よく到達するので冷却効率が高く、安定した加速冷却が可能となり、ノズルとガイドが一体であるのでその距離を近接させることができ、よりフランジ上端部まで冷却しても冷却水の乗り越えをなくすことが可能となり、噴射した冷却水がフランジ上端を乗り越えてウエブに達することがなくウエブの過冷却を防止することが可能となり、ウエブ上面の過冷却がなく、ウエブ波、傘折れ、上下曲がりがなく製品の歩留まりを高くすることが可能となる。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のH形鋼のフランジ冷却装置およびフランジ冷却方法によれば、冷却装置が、H形鋼の両側フランジをライン両側より挟んで、これを案内するサイドガイドに形成された多数の噴射孔からなり、かつこれら噴射孔は、その孔軸が水平に対し先端側が下方向に傾斜して設定したので、冷却水がフランジ外面に効率よく到達するので冷却効率が高く、安定した加速冷却ができ、ノズルとガイドが一体であるのでその距離を近接させることができ、よりフランジ上端部まで冷却しても冷却水の乗り越えをなくすことができ、噴射した冷却水がフランジ上端を乗り越えてウエブに達することがなくウエブの過冷却を防止することができ、ウエブ上面の過冷却がなく、ウエブ波、傘折れ、上下曲がりがなく製品の歩留まりを高くすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るH形鋼のフランジ冷却装置の構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態のH形鋼製造時の設備配置を説明するための説明図である。
【図3】実施の形態における冷却水の流れを説明するための説明図である。
【図4】実施の形態における冷却水の流れを説明するための説明図である。
【図5】比較例の冷却装置の構成を説明するための説明図である。
【図6】H形鋼各部寸法の名称を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 H形鋼
2 フランジ
3 冷却水噴射孔
4 サイドガイド
5 ブロック
6 流量調整弁
7 オンオフ制御弁
8 ウエブ
Claims (9)
- H形鋼の熱間圧延ライン内の仕上げ圧延機の下流側に配置されて、該H形鋼のフランジを加速冷却するフランジ冷却装置であって、
該冷却装置は、前記H形鋼の両側フランジをライン両側より挟んで、これを案内するサイドガイドに形成された多数の噴射孔からなり、かつこれら噴射孔は、その孔軸が水平に対し先端側が下方向に傾斜して設定され、その直径が前記サイドガイドの厚みよりも小さく、その長さが5mm以上に設定され、かつ噴出する冷却水の流れがラミナーフローとなるように該冷却水の出口流速が1〜20m/sに調整されてなることを特徴とするH形鋼のフランジ冷却装置。 - 前記噴射孔の孔軸の角度を10〜30度の範囲に設定したことを特徴とする請求項1記載のH形鋼のフランジ冷却装置。
- 前記噴射孔がストレートの直管であって、その入り口と出口とは面取りがなされていることを特徴とする請求項1または2記載のH形鋼のフランジ冷却装置。
- 前記噴出する冷却水の流れが、前記H形鋼とフランジとの間に充満した冷却水の中を噴流が突き破って前記フランジ外面に新鮮な冷却水が供給されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のH形鋼のフランジ冷却装置。
- H形鋼の熱間圧延ライン内の仕上げ圧延機の下流側において、該H形鋼のフランジを加速冷却するフランジ冷却方法であって、
前記H形鋼の両側フランジをライン両側より挟んで、これを案内するサイドガイドに形成された多数の噴射孔の孔軸の先端側が、水平に対し下方向に傾斜するように設定する工程と、
前記サイドガイドを左右に動かす工程と、
噴出する冷却水の流れがラミナーフローとなるように該冷却水の出口流速を1〜20m/sに調整する工程とを有し、
前記サイドガイドとH形鋼との距離を変えることによって、冷却水の衝突点位置を上下に調整することを特徴とするH形鋼のフランジ冷却方法。 - 前記噴射孔の直径が前記サイドガイドの厚みよりも小さく、 その長さが5mm以上に設定されていることを特徴とする請求項5記載のH形鋼のフランジ冷却方法。
- 前記噴射孔の孔軸の角度を10〜30度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項5または6記載のH形鋼のフランジ冷却方法。
- 前記噴射孔がストレートの直管であって、その入り口と出口とは面取りがなされていることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載のH形鋼のフランジ冷却方法。
- 前記噴出する冷却水の流れが、前記H形鋼とフランジとの間に充満した冷却水の中を噴流が突き破って前記フランジ外面に新鮮な冷却水が供給されることを特徴とする請求項5乃至8の何れかに記載のH形鋼のフランジ冷却方法。
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