JP3368853B2 - 形鋼の冷却装置 - Google Patents

形鋼の冷却装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、H形鋼、山形鋼等
の形鋼の仕上げ圧延後に加速冷却を行う冷却装置に係わ
り、特にH形鋼と山形鋼のような形状の異なった複数の
形鋼の兼用製造ラインでも、兼用して加速冷却できる冷
却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、建築用の材料に対して、耐震性に
対する要求が高まっており、建築物の柱材、梁材として
用いられるH形鋼や、鉄塔、建築物、造船用部材に用い
られる山形鋼においては、強度や靭性の優れたものが求
められており、特に圧延と冷却とを組み合わせた制御圧
延・制御冷却による形鋼の製造が行われている。
【0003】上記のような高強度、高靭性の鋼材を製造
する一般的な方法としては、1000℃以上に加熱した
スラブやビームブランクの素材を一旦中程度の厚みまで
粗圧延し、その後、鋼板の温度が未再結晶温度域やある
いはその温度域に近い温度域で最終の仕上げ圧延を行う
所謂制御圧延と、圧延後は加速冷却によってAr3温度
以上から500℃程度まで急冷(焼入れ)することによ
って強度を出す、所謂制御冷却が行われている。
【0004】また、H形鋼の制御圧延はH形鋼形状に造
形圧延されたあるいは鋳造された素形片を2つの縦ロー
ルと2つの水平ロールの間をリバース圧延することで連
続的にフランジ厚みとウェブ厚みを薄くしながら、圧延
する所謂ユニバーサル圧延法によって圧延し、圧延後
は、H形鋼のフランジに対して、仕上げ圧延機の後方に
おいて加速冷却装置を設けて制御冷却を行う。
【0005】また、山形鋼は複数のカリバーが刻まれた
圧延ロール間を通過、圧延しながら、徐々に造形を施す
ガリバー圧延法によって圧延し、圧延後は、H形鋼のフ
ランジに対して、仕上げ圧延機の後方において加速冷却
装置を設けて制御冷却を行う。
【0006】上記形鋼の圧延後に用いる加速冷却装置の
一例として、特開平5−317948号公報に、形鋼の
被冷却面におけるノズルからの噴射領域が均一衝突圧力
分布になるノズルを、この噴射領域の被冷却面高さ方向
の間隔が0〜5mmとなる範囲で竪方向に複数個配列
し、形鋼の被冷却面サイズに応じて水を噴射するノズル
個数を可変にしてなる形鋼の水冷装置が開示されてい
る。
【0007】上記形鋼の水冷装置によれば、上記構成に
よって、流量コントロールが簡便になり、安定したスプ
レー状態で、均一冷却が可能になり、ひいては冷却むら
が皆無になる旨記載されている。
【0008】また、実開平5−93611号公報には、
フランジ外側面を垂直に立てたH形鋼に対向させて、こ
のH形鋼の長手方向に揃う冷却液の吹付けノズル列をそ
なえ、ガイドレールをH形鋼のフランジ外側面に対して
斜めに配設して上記吹付けノズル列をガイドレールに沿
って移動可能にしたH形鋼のフランジ冷却装置が開示さ
れている。
【0009】上記H形鋼のフランジ冷却装置によれば、
上記構成によって、冷却しようとするフランジサイズや
フランジ面の温度分布に応じて均一冷却が可能となる旨
が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た特開平5−317948号公報、実開平5−9361
1号公報に開示された技術では、以下の問題がある。
【0011】H形鋼や山形鋼等の形鋼の製造ラインで
は、設備の稼動率向上や設備費の償却負担を少なくする
ために、1つの製造ラインでロールを組替える等によっ
て、兼用ラインとして、例えばH形鋼のユニバーサル圧
延と山形鋼のカリバー圧延とを行うことが多い。
【0012】このようにロールを組替えてH形鋼や山形
鋼の製造を行う兼用製造ラインでは、圧延後に制御冷却
を行うために、形状の全く違う被冷却材に冷却を施さな
ければならない。
【0013】このような形鋼の兼用製造ラインにおい
て、圧延後の加速冷却装置に、例えば、H形鋼と山形鋼
の兼用加速冷却装置として、特開平5−317948号
公報に開示された形鋼の水冷装置冷却装置、実開平5−
93611号公報に開示されたH形鋼のフランジ冷却装
置をそのまま適用して、これらをH形鋼と山形鋼を冷却
する場合、仮にH形鋼の冷却を満足させても、山形鋼の
頂点の位置がガイドから離れるために、スプレーノズル
から噴射した冷却水で山形鋼を冷却するとフランジ面内
の均一冷却が難しい。特に頂点部分は冷却ノズルとの距
離が離れるために冷却水が分散して見かけ上水量密度
(被冷却材の単位面積・単位時間当たりに受ける水量)
が山形鋼のフランジ下部に比べて少なくなるので、山形
鋼のフランジ内の不均一な冷却となる。即ち、特開平5
−317948号公報による冷却装置のノズルを、H形
鋼と山形鋼の冷却を兼用させて、等辺、不等辺山形鋼に
対して、噴射領域が均一衝突圧力分布になるように配置
することが困難である。また、実開平5−317948
号公報による冷却装置をH形鋼と山形鋼の冷却を兼用さ
せて、等辺、不等辺山形鋼に対して、吹付けノズル列を
ガイドレールに沿って移動させても、山形鋼のフランジ
面の均一冷却が困難である。
【0014】また、上記冷却装置に、上段のノズルの水
量を増やすかあるいはノズルピッチを上段が蜜になるよ
うに配置する等の対策をとったとしても、形鋼の兼用冷
却装置として、設備的に複雑で、且つ均一な冷却を満足
させることが困難である。
【0015】本発明は上記問題点の解決を図ったもので
あり、簡単な設備で、H形鋼と山形鋼のような形状の全
く違う被冷却材に対しても、兼用して均一に冷却を施す
ことのできる形鋼の加速冷却装置を提供することを目的
とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】第一の発明は形鋼の仕上
げ圧延後に加速冷却を行う冷却装置であって、ガイド
と、形鋼の被冷却面に対向してガイドに設けた冷却水噴
射孔と、ガイドを傾斜させる機構と、冷却水供給装置を
具備したことを特徴とする形鋼の冷却装置である。
【0017】第一の発明によれば、ガイドの形鋼の被冷
却面に対向した側に冷却水ノズルを設けて、ガイドを傾
斜させる機構を駆動させて、ガイドの形鋼の被冷却面に
対して、冷却水ノズルを常に適正な位置に保持させて加
速冷却を行うことができる。
【0018】第二の発明は第一の発明において、ガイド
を傾斜させる角度を鉛直方向から被冷却材側に5°以上
45°以下としたことを特徴とする形鋼の冷却装置であ
る。
【0019】対象とする形鋼では、45°を超える傾斜
角度を必要とするものが少なく、また、ノズルの支持が
困難になる。5°未満の傾斜角度では、目的とする効果
を達成できない。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図に
よって詳述する。
【0021】図1は本発明の一実施の形態でH形鋼の加
速冷却に用いた状態を示す縦断面図である。
【0022】図1において、冷却装置1は一対のサイド
ガイド2a、2bからなるガイド2と、被冷却面である
フランジ4a、4bの外側面に対向して設けた一対のサ
イドガイド2a、2bの冷却水噴射孔(以下冷却水ノズ
ルという)5a、5bと、一対のサイドガイド2a、2
bを傾斜させる機構である油圧シリンダ6a、6bと、
冷却水供給装置7a、7bから構成されている。符号8
はウェブである。
【0023】ノズル5a、5bは、鋼板に例えば直径3
mmの孔を20mmピッチで千鳥状に開けて、所定の長
さの直管状のノズルを形成して入側のヘッダ17a、1
7bから、均一にノズル5a、5bに圧縮された冷却水
が送入されるようにしている。
【0024】これは、後述するように、冷却水が噴射出
口近傍でアトマイズして冷却水が上方へ飛び散り、液滴
がフランジ4a、4bを乗り越えることを避け、且つ被
冷却面に冷却水がまんべんなく衝突するようにしてい
る。
【0025】油圧シリンダ6a、6bはロッド10a、
10bの先端を軸受け11a、11bに軸支して、後述
するサイドガイド2a、2bの傾斜の際に、ロッド10
a、10bを伸長させて、固定軸12a、12bを支点
としてサイドガイド2a、2bを傾斜させる。
【0026】冷却水供給系統13a、13bは流量調節
弁14a、14b、オンオフ弁15a、15bを設け
て、冷却水を定量的に冷却水ノズル5a、5bから噴射
できるようにしている。
【0027】また、冷却水供給管18a、18bには可
撓管を用いて、サイドガイド2a、2bの水平移動、傾
動に対応できるようにしている。
【0028】冷却装置1によれば、H形鋼3は垂直に立
てられて搬送ロール9上をH姿勢で冷却装置1に搬送ら
れ、冷却装置1内でその状態でH形鋼3のフランジ4
a、4bが冷却水ノズル5a、5bにより加速冷却され
る。即ち、冷却水ノズル5a、5bから被冷却面である
フランジ4a、4bの外側面に冷却水が噴射されてフラ
ンジ4a、4bが冷却される。
【0029】図2は本発明の一実施の形態で山形鋼の加
速冷却に用いた状態を示す縦断面図である。
【0030】図1と共通する個所には同じ符号を付け
て、その個所の一部の説明を省略した。
【0031】山形鋼19は頂点20cを上にして搬送ロ
ール9上を搬送されて、冷却装置1内でその状態で山形
鋼19のフランジ20a、20bが冷却水ノズル5a、
5bにより加速冷却される。即ち、冷却水ノズル5a、
5bから被冷却面であるフランジ20a、20bの外側
面に冷却水が適正に噴射できるように、油圧シリンダ6
a、6bを駆動させて、固定軸12a、12bを支点と
して山形鋼19のフランジ20a、20bの冷却に適し
た傾斜角度に傾動して、その状態を維持しながらフラン
ジ20a、20bが加速冷却される。
【0032】図3は本発明の冷却水の流れの様相の説明
図であり、図4は比較による冷却水の流れの様相の説明
図である。ここでは冷却装置1の片側のサイドガイド2
aを用いて冷却水の流れの様相の説明する。
【0033】冷却装置1のサイドガイド2aは一例とし
て高さ550mm、肉厚15mmの鋼板で形成されてい
る。この鋼板に直径3mmの孔を上下、左右方向に20
mmピッチで千鳥状に開けて、冷却水ノズル5aを形成
している。この時、噴射した冷却水が噴射口16aでア
トマイズしないようにサイドガイド2aに開けた孔は直
管状にする。これは、冷却水が噴射口16a近傍でアト
マイズすると冷却水が上方へ飛び散り、液滴がH形鋼3
のフランジ4aを乗り越えることを避けるためである。
水道の蛇口から流下するような円柱状の冷却水の流れを
得るためには、サイドガイド2aに設けた直管状の孔の
長さは、最低でも5mm、望ましくは10mm程度必要
である。ただし、長過ぎると噴射の際の圧力損失が大き
いので本実施例では10mmとしている。
【0034】この様に冷却水の流れを円柱状のラミナー
フローとするためには、冷却水ノズル5aの冷却水の出
口流速を1〜20m/s、望ましくは2〜5m/sとす
る。これは、1m/s未満では、冷却水の勢いが弱くフ
ランジ4aの外面に到達しにくく、20m/sを超えた
場合は流れが乱れて飛び散る怖れがあるためである。
【0035】比較として図4に示すサイドガイド2cの
スプレーノズル5cのように、スプレーノズル5cの噴
射口16bで冷却水が乱れてアトマイズしてしまうよう
な流れは望ましくない。
【0036】図1〜図4の実施の形態から明らかなよう
に、本発明の冷却装置1は、H形鋼3、山形鋼19の被
冷却面であるフランジの外側面に対向して一対のサイド
ガイド2a、2bを設け、サイドガイド2a、2bを各
々油圧シリンダ6a、6bで傾斜させて、上記被冷却面
であるフランジの外側面に対して冷却水ノズル5a、5
bを適正に位置決めして維持し、被冷却面を加速冷却す
ることができるので、搬送されるH形鋼3、山形鋼19
等の形状の異なる複数の形鋼に対して、一つの冷却装置
で均一な加速冷却ができる。勿論、兼用することなく、
山形鋼19等の形状の複雑な形鋼のみを加速冷却するこ
とができる。
【0037】
【実施例】次に、本発明の図1、図2に示す冷却装置を
図5に示す形鋼の製造ラインに用いた場合の実施例を詳
述する。図5は本発明の冷却装置を用いた形鋼の製造ラ
インを示す説明図である。
【0038】[実施例]形鋼の製造ライン26で、H形
鋼を製造する場合に、板厚250mmのスラブを加熱炉
21で1250℃まで加熱し、その後、ブレークダウン
ミル22によって、該スラブ形状の素材をさらにユニー
バサル方式の2つの粗圧延機23、24でリバース圧延
することによってフランジの各部形状、寸法を整えて、
最終の仕上げ圧延機25でH形状に仕上げられる。ま
た、形鋼の製造ライン26で、山形鋼を製造する場合
に、上記ブレークダウンミル22、粗圧延機23、2
4、仕上げ圧延機25の各ロールを組替えて、カリバー
圧延を行うことで上に凸の山形鋼を連続圧延する。ここ
では、圧延後のH形鋼と山形鋼のフランジの強度を向上
させるために本発明の冷却装置1を設けて、加速冷却す
る。加速冷却の条件として、770℃から550℃まで
を1〜10℃で加速冷却を施す。
【0039】加熱炉21から抽出された厚み250mm
の第1のスラブは搬送テーブルを送られ、次いでブレー
クダウンミル22に送られてH形鋼形状の素材に圧延さ
れた後、第1の粗圧延機群23及び第2の粗圧延機群2
4においてリバース圧延によってH形鋼の各部寸法を圧
延形成すると共に圧延温度を特定の温度領域で特定の圧
下率で圧延を施す制御圧延が行われる。粗圧延後のH形
鋼は直ちに仕上げ圧延機25に送られてフランジを垂直
にたてる圧延が施され、約900℃で仕上げ圧延が完了
した。その後直ちに、本発明の冷却装置1に送られ、H
形鋼のフランジ外面を冷却して加速冷却が施された。こ
の冷却装置1は長さが40mの通過型の冷却装置1であ
るが、40m未満の長さのH形鋼は冷却装置内でオッシ
レーションさせることによって長時間の冷却が可能であ
る。
【0040】冷却装置1のサイドガイド2a、2bは高
さ550mmでガイドの肉厚は15mmの鋼板である。
サイドガイド2a、2bに設けた孔の長さは、最低でも
5mm、望ましくは10mm程度必要である。ただし、
長過ぎると噴射の際の圧力損失が大きいので本実施例で
は10mmとした。
【0041】この鋼板に直径3mmの孔が20mmピッ
チで千鳥状に開けられ、冷却水ノズルが形成されてい
る。冷却水の流れは前述した図3に示すような円柱状の
冷却水の流れになっている。
【0042】この様に冷却水の流れを円柱状のラミナー
フローとするために、冷却水ノズルの噴射口における冷
却水の出口流速を1〜20m/s、望ましくは2〜5m
/sとする。これは、1m/s未満では、冷却水が勢い
が弱くフランジ外面に到達しにくく、20m/sを超え
た場合は流れが乱れて飛び散る怖れがあるためである。
【0043】この冷却装置1に圧延直後のH形鋼及び上
に凸の山形鋼を通過させて加速冷却を行った。H形鋼の
サイズはウェブの高さが572mm、ウェブの厚みが6
0mm、フランジの厚みは80mm、長さが13mで、
仕上がり時のフランジは830℃であった。このH形鋼
を本発明の冷却装置1に挿入し、後端が冷却装置内に入
ったと同時に全冷却水ノズルから冷却水を噴射開始し、
図示しないオッシーレイション装置によりオッシーレイ
ションさせながら120秒冷却した。この時、フランジ
上端を冷却水が乗越えることはなかった。なお、この時
の冷却水の水量密度は1500L/m2・分とした。冷
却後複熱した後のフランジの温度を計測したところ50
0℃であって、フランジの幅方向、長手方向ともに均一
な温度であった。冷却後、材質を調べたところ、当初予
定の加速冷却効果が確認された。
【0044】一方、山形鋼はフランジの二辺の長さが3
50mm、フランジ厚み32mm、長さが46mで仕上
がり時のフランジ温度が920℃であった。この山形鋼
を、H形鋼の冷却の終わった本発明の冷却装置1に搬送
速度1.6m/sで通過させた。なお、この時のサイド
ガイド2a、2bを鉛直に対して45°傾斜させた。こ
の時、冷却水の水量密度はH形鋼の冷却と同じく150
0L/m2・分とした。通過した後、複熱した状態の山
形鋼のフランジの温度を計測したところ、545℃であ
り、フランジ幅方向、長手方向ともに均一な温度であっ
た。冷却後、材質を調べたところ、当初予定の加速冷却
効果が確認された。
【0045】なお、この山形鋼を冷却する際に、サイド
ガイド2a、2bを傾ける角度は5°未満では傾ける効
果が少なく、45°を超えた場合には、ノズルの支持が
難しくなること、山形鋼の頂点と傾けたガイドとの接触
の虞れが生じることから好ましくは15〜45°程度で
ある。サイドガイド2a、2bを傾ける機構としては、
前述した図2に示すように、冷却装置1のサイドガイド
2a、2bの下端に設けた支点12a、12bを軸にサ
イドガイド2a、2bの上部に接続した油圧シリンダ6
a、6bが用いられる。油圧シリンダ6a、6bのロッ
ド10a、10bを駆動させることによって容易にサイ
ドガイド2a、2bを適正な傾斜角度に傾けることがで
きる。
【0046】以上の操業を続けることで圧延機の稼動率
を高く維持しながら、様々な形状の形鋼を連続的に加速
冷却処理が可能で、その際、サイドガイド2a、2bを
傾斜させるだけでH形鋼と山形鋼の形状の異なる形鋼の
加速冷却処理が可能となつた。この冷却装置1を用いた
方法であれば、ロール組替えにより圧延された形状の異
なる形鋼を、冷却装置1を兼用して連続的に加速冷却処
理が可能である。
【0047】次に、本発明の効果を明瞭にするために、
図6、図7に示す従来の冷却装置を用いて、比較を行っ
た。図6は比較のためにH形鋼の冷却に用いた従来型の
冷却装置の一例を示す概略図であり、図6は比較のため
に山形鋼の冷却に用いた従来型の冷却装置の一例を示す
概略図である。これを比較例1により詳述する。
【0048】[比較例1]本発明の比較例1として、サ
イドガイド27a、27bの後方に設置した多段ノズル
28から冷却水を噴射する従来型の冷却装置においてH
形鋼および山形鋼を冷却した場合を以下に説明する。
【0049】図6では、搬送中のH形鋼3の両フランジ
4a、4bの外側にサイドガイド27a、27bを設け
て、そのサイドガイド27a、27bには幅20mm、
高さ500mmの冷却水を噴射するスリット状の孔28
a、28bが200mmピッチで開けられている。それ
ぞれのスリット状の孔28a、28bの外側には5段の
市販の角吹きスプレーノズル29が設置されている。各
々の角吹きスプレーノズル29はH形鋼3のフランジ4
a、4b面で幅30mm×高さ100mmの面積を冷却
するようにその噴射角度が選定されている。なお、この
時の各角吹きスプレーノズル29からの噴射水量は30
L/分とした。フランジ面での水量密度は冷却水が当た
っている部分は約10000L/m2・分である。この
様に局部的に水量密度を大きくしなければならないの
は、長手方向にはノズル配置施工上ノズルピッチを20
0mmよりも短くすることは不可能であったので、局部
的に冷却を強くして全体としての冷却能力を大きくする
必要があった。
【0050】この冷却装置に実施例と同じサイズの山形
鋼19を通過させながら連続的に冷却した。その様相を
図7に示す。山形鋼19の頂点部分31はフランジ20
a、20bの下部部分30よりも角吹きスプレーノズル
29との距離が約250mm離れるので実質的に頂点部
分31の水量密度が小さくなり山形鋼のフランジ11
a、11bに不均一な冷却が生じた。その結果、冷却後
の材質を調べたところ、頂点部分31の冷却速度がフラ
ンジ下部部分30に比べて遅く、頂点部分31の冷却終
了温度はフランジ下部30の冷却終了温度より約5℃高
かったために強度不足が生じ、十分な加速冷却効果が得
られなかつた。
【0051】次に他の比較例を詳述する。図8は比較の
ための冷却装置の他の例を示す概略図である。図1と共
通する個所には同じ符号を付けて、その説明の一部を省
略した。これを比較例2により詳述する。
【0052】[比較例2]本発明の比較例2として、鉛
直においた実施例と同じサイドガイド2a、2bに設け
た冷却装置1で、サイドガイド2a、2bを傾けずに山
形鋼19を加速冷却した場合を以下に説明する。
【0053】図8に示すように、サイドガイド2a、2
bは実施例と同じ高さ550mm、肉厚15mmの鋼板
である。この鋼板に直径3mmの孔が20mmピッチで
千鳥状に開けられて冷却水ノズル5a、5bが形成され
ている。冷却水ノズル5a、5bから搬送中の山形鋼1
9(フランジ二辺20a、20bの長さが350mm、
フランジ厚み32mm、長さが46m、仕上がり時のフ
ランジ温度が920℃、搬送速度1.6m/sで通過)
に対して、冷却水ノズル5a、5bにより冷却水を噴射
させ冷却した。なお、冷却水ノズル5a、5bはサイド
ガイド2a、2bを鉛直にしているので、冷却水を水平
方向に噴射する。冷却水の水量密度はH形鋼3の冷却と
同じく1500L/分m2・分とした。通過した後、複
熱した状態のフランジ20a、20bの温度を計測した
ところ、山形鋼19の頂点部分31では620℃でフラ
ンジ下部部分30は540℃であり、フランジ20a、
20bの幅方向に、約80℃の温度ムラが生じた。冷却
後、材質を調べたところ、山形鋼の頂点部分31は当初
予定の加速冷却効果が得られず、強度不足となってい
た。
【0054】これは冷却水ノズル5a、5bの噴射出口
と被冷却材である山形鋼19の距離が頂点では約250
mm以上あるのに対して、フランジ下部では非常に近接
しているために頂点部分の冷却が弱くなり冷却速度が小
さく、冷却終了後の温度が高く冷却不足となったためで
ある。特にサイドガイド2a、2bの上部の冷却水ノズ
ル5a、5bの噴射口から噴射された冷却水は重力によ
って「おじぎ」してしまうために頂点部分31に十分な
速度で衝突しない。
【0055】そのために冷却水の噴射速度を速くすれば
よいが、本例では約2〜3倍の冷却水量、1〜3kg/
cm2Gの噴射圧力が必要で余分な水量、動力が必要と
なるので経済的ではない。
【0056】
【発明の効果】以上のように、本発明は、簡単な設備
で、H形鋼と山形鋼のような形状の全く違う被冷却材に
対しても、兼用して均一に冷却を施すことができ、その
結果、強度や靭性の優れた形鋼を効率よく、安定して製
造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態でH形鋼の加速冷却に用
いた状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態で山形鋼の加速冷却に用
いた状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の冷却水流れの様相を示す説明図であ
る。
【図4】比較のための冷却水流れの様相を示す説明図で
ある。
【図5】本発明の冷却装置を用いた形鋼の製造ラインを
示す図である。
【図6】従来型の冷却装置を用いたH形鋼の冷却状態を
示す概略図である。
【図7】従来型の冷却装置を用いた山形鋼の冷却状態を
示す概略図である。
【図8】冷却装置を傾動させない比較例の場合の山形鋼
の冷却状態を示す概略図である。
【符号の説明】 1 冷却装置 2 ガイド 2a、2b サイドガイド 3 H形鋼 4a、4b フランジ 5a、5b 冷却水ノズル 6a、6b 油圧シリンダ 7a、7b 冷却水供給装置 8 ウェブ 9 搬送ロール 10a、10b ロッド 11a、11b 軸受 12a、12b 固定軸 13a、13b 冷却水供給系統 14a、14b 流量調整弁 15a、15b オンオフ弁 16a、16b 噴射口 17a、17b ヘッダ 18a、18b 供給管 19 山形鋼 20a、25b フランジ 20 頂点 21 加熱炉 22 ブレークダウンロール 23、24 粗圧延機群 25 仕上げ圧延機 26 形鋼の製造ライン 27a、27b サイドガイド(従来型) 28a、28 スリット孔 29 角吹きスプレーノズル 30 フランジ下部部分 31 フランジ頂点部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−52020(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 45/02 320 B21B 1/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 形鋼の仕上げ圧延後に加速冷却を行う冷
    却装置であって、ガイドと、形鋼の被冷却面に対向して
    ガイドに設けた冷却水噴射孔と、ガイドを傾斜させる機
    構と、冷却水供給装置を具備したことを特徴とする形鋼
    の冷却装置。
  2. 【請求項2】ガイドを傾斜させる角度を鉛直方向から被
    冷却材側に5°以上45°以下としたことを特徴とする
    請求項1記載の形鋼の冷却装置。
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