JP3550403B2 - 抗潰瘍剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、米からの水抽出物または有機溶媒抽出物をそのまま、あるいはこれを含有したものを用いることにより、経口投与においても、皮下投与においても潰瘍を予防および治癒する効果をもつ抗潰瘍剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、米は主食以外に、清酒、焼酎、甘酒、みりん、酢、麹などとして用途開発され、古くから生活に欠かせないものとなっている。この他には、美容的用途として糠袋が知られている。これは、米を単なる主食であるとみるか、またはせいぜい澱粉源としてしかみていなかったということによるものであると思われる。また、糠袋にしても、皮膚に良いとされ、慣例的にそのまま使用されていたのみであり、有効成分という概念もなければ、抽出という考え方も全くなかったのである。
【0003】
一方、現在は日常生活においてストレス時代といわれ、生活環境の目まぐるしい変化、対人関係の複雑化により、ストレスを受けることが多くなってきている。また、従来、自然に存在しなかったものを数多く摂取する機会も多くなってきた。
【0004】
そこで、これらの要因により、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などに悩まされている人が多くなり、現在ではさまざまな抗潰瘍剤が開発利用されている。現在使用されている抗潰瘍剤をみると、大別して胃液の消化力抑制剤、胃液分泌抑制剤、粘膜保護組織修復剤などがあり、経口投与または皮下投与されている。しかし、これらのいずれの製剤も、単離された薬剤または合成された薬剤であり、それぞれに副作用があり、使用対象および使用量についての制限が厳しくなっており、有効で、しかも、安全な抗潰瘍剤は開発利用されていない。
【0005】
このため、これらの抗潰瘍剤は、安全性の点から常用できないので、予防とか、再発防止には利用できていない。一方、潰瘍の予防薬としては、整腸剤とか、胃酸の分泌抑制効果を持つ薬剤を用いているだけであり、これらも予防薬とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在、薬剤の人体に対する副作用が問題となっており、天然物で全く副作用がなく、しかも、予防薬、再発防止薬として常用しても十分に安全である抗潰瘍効果を持つ薬剤が要求されている。本発明は、抗潰瘍効果に優れ、安全で安価であり、しかも、予防薬、再発防止薬として常用しても、全く安全な米からの天然抗潰瘍剤を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、動植物合和すの観点から、主食である米を中心に種々の植物成分の研究を進めてきた。その過程で、米には今まで予測できなかった数多くの可能性、効果があることが判明してきた。そこで、主食として用いられ安全性が最も高いことが実証されている米をテーマとしてとりあげ、米の総合利用研究を行ってきた。そのうちの一つのテーマとして、米からの抗潰瘍剤について鋭意研究を重ねてきた。その過程で、米の抽出物をそのまま、あるいはこれを含有するものを経口および皮下投与したところ、どちらの場合も非常に顕著な抗潰瘍作用があることが判明し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、白米からの水抽出物または有機溶媒抽出物を有効成分として含む抗潰瘍剤であって、米を水抽出(酸、アルカリ抽出を含む)またはアルコールなどの有機溶媒で抽出することにより、簡単安価に、しかも、全く安全に上記の効果を顕す非常に優れた抗潰瘍剤が得られるのである。
【0009】
抽出を行う場合、まず、米を粉砕または粉体化すると表面積が大きくなるため、きわめて抽出効率が良好となる。この方法は、粉砕機または精米機等を用い、一般的な方法によればよい。粉砕しなくてもよいが、この場合には、米組織の分解および抽出に長時間を要する。
【0010】
水抽出に当たっては、米をそのまま、好ましくは粉砕または粉体化したものに加水する。米は玄米でも白米でもよい。加水量については、米に対して2〜5倍量で効率よく抽出されるが、収率、作業性、最終使用目的等に応じて適宜選定すればよい。この後、加温してゆき、沸騰状態になった時点で抽出を完了する。
【0011】
抽出を完了した後、使用目的により、圧搾、濾過を行えば、清澄な抽出エキスが得られる。なお、最初から熱水を加えて抽出を行ってもよい。
【0012】
水抽出の際の抽出温度は、抽出液中の有効成分が解明されていないが、この未知の有効成分が熱に安定であることは確認できたので、高温が効率的である。低温でも長時間おけば、充分に抽出を行うことができる。ただし、40℃以下の低温の場合は、pHを酸性あるいはアルカリ性にするか、防腐剤を加えることが必要である。抽出時間は、沸騰抽出の場合には数分でよいが、それ以下の中温の場合には数時間から一昼夜が必要である。低温の場合は、米の粉砕状態にもよるが、数日〜1ヶ月必要である。ただし、この場合にも、なるべく最後には加熱するのがより効果的である。
【0013】
水抽出の場合に最も問題になるのは、糊化現象である。糊状になれば、抽出効率が悪くなるのみでなく、実作業においては困難を極める。これを防ぐためには、アミラーゼを加えて反応させるか、塩酸などで酸性にして澱粉を分解すればよく、この方法を用いることにより、充分に解決でき、実用上も全く問題がない。
【0014】
抽出液中の有効成分は、酸、アルカリに安定であるためか、酸抽出あるいはアルカリ抽出を行うのも有効である。また、水抽出の場合、酸、アルカリで前処理するか、米の組織に働く酵素(例えば、アミラーゼ)を反応させて前処理を行い、抽出する方法が効果的である。これは、前処理により、有効成分がより抽出されやすくなるためであると思われる。
【0015】
さらに、有機溶媒抽出でも、本効果を持ったエキスが抽出されることが判明した。このことは、有効成分の解明を進める上で、また、有効成分をコンクに抽出したり、水に溶けないものとの配合という利用用途の上できわめて有効である。この場合、なるべく微粉砕または粉体化することが好ましい。また、ここで用いる有機溶媒は、アルコールのような人体に投与しても安全なものを使用することが望ましい。
【0016】
なお、本発明品の米からの抽出には、以上のように有機溶媒抽出または水抽出し、その抽出物中の有効成分をさらに溶媒抽出すると、より有効である。しかし、これは、濃縮状態が得られたためと思われ、澱粉などの不用なものを除いたり、濃縮することにより、同等の効果が得られる。
【0017】
米は主食として毎日食べており、あまりにも身近すぎて、このような抗潰瘍剤として使用するという概念すらなく、思いもよらないことであった。また、食べる以外には清酒、焼酎、酢などに用いられてきたが、米の抽出という考え方も方法も取られていない。これは、抽出しようとすると米の特性として糊状になり、従来の考え方では非常に困難であったことにもよるものと思われる。そのため、本発明においては、有機溶媒抽出、酸、アルカリ抽出などを用い、また、水抽出の場合、アミラーゼなどを作用させ、抽出を容易にすることにより、目的を達成することができるようにしたのである。
【0018】
このようにして十分抽出操作を行って初めて、非常に優れた抗潰瘍剤としての有効成分を抽出することができるのである。
【0019】
この本発明品の抗潰瘍剤としての効果をみるために、まず、拘束水浸ストレス潰瘍に対する本発明品の経口投与においての効果を調べた。その方法は、渡辺らの方法に準じて行った。すなわち、8週齢のddY系雄性マウスを24時間絶食後、実施例1により得た本発明品を0.3ml/マウス経口投与し、30分後にストレスゲージに入れ、15℃の水中に剣状突起まで浸し、拘束水浸ストレスを負荷した。5時間後に頸椎脱臼して屠殺し、胃を摘出した。その後、1%ホルマリン溶液1.5mlを胃内に注入し、さらに、同液中に浸すことにより胃組織を軽く固定し、24時間そのまま放置した。その後、大弯に添って切開し、腺胃部に発生した損傷の長さ(mm)を測定し、一匹当たりのその総和を潰瘍係数として表した。また、コントロールとしては、ストレスゲージに入れる30分前に同量の生理食塩水を経口投与したものを用いた。マウスは各々15匹ずつで行った。その
結果を示すと
【表1】のとおりである。
【0020】
【表1】本発明品の経口投与における拘束水浸ストレス潰瘍マウスに対する有効性
【0021】
【表1】のように、コントロールとして生理食塩水を投与したマウスにおける潰瘍係数の平均が65.4であるのに対して、本発明品を投与したマウスにおける潰瘍係数の平均は29.1となり、明らかに本発明品は、経口投与することにより拘束水浸ストレス潰瘍に対する抗潰瘍剤として有効であることが判明した。この結果、本発品は、胃腸粘膜から直接に作用して抗潰瘍剤として有効な効果を示すことが判明した。
【0022】
次に、拘束水浸ストレス潰瘍に対する本発明品の皮下投与においての効果を調べた。その方法は、経口投与の場合と同様に、渡辺らの方法に準じて行った。実施例1により得た本発明品を0.3ml/マウス皮下投与したもの、および生理食塩水を0.3ml/マウス皮下投与したもの各々15匹について、30分放置後、ストレスゲージに入れ、拘束水浸ストレスを負荷し、本発明品を皮下投与することによる拘束水浸ストレス潰瘍に対する有効性を調べた。その結果を示すと【表2】のとおりである。
【0023】
【表2】本発明品の皮下投与における拘束水浸ストレス潰瘍マウスに対する有効性
【0024】
【表2】のように、生理食塩水を0.3ml/マウス皮下投与したものにおける15匹の潰瘍係数の平均は43.0、本発明品を0.3ml/マウス皮下投与したものにおけるマウス15匹の潰瘍係数の平均は22.7であり、本発明品を皮下投与することにより抗潰瘍剤として有効であることが明らかになった。
【0025】
このように皮下投与することにより、本発明品が抗潰瘍剤として有効な抗潰瘍性を示したことは、本発明品が胃粘膜に直接的に効果を有するだけではなく、血液を通して根本的に防ぐという効果をも合わせ持っているということがいえる。
【0026】
以上の結果より、本発明品は、ストレス性の潰瘍に対して、経口投与においても、皮下投与においても有効であるということが判明した。
【0027】
次に、胃粘膜に直接作用しておこる潰瘍の一つであるエタノール性の潰瘍に対する本発明品の抗潰瘍剤としての有効性を経口投与において調べた。ストレス潰瘍に対して、本発明品が経口投与においても、皮下投与においても有効であることが判明しているので、ここでは経口投与の場合のみ行った。エタノール潰瘍はRobertらの方法に準じて行った。すなわち、8週齢のWistar/ST系雄性ラットを24時間絶食、16時間絶水後、実施例2によって得られた本発明品5gを生理食塩水10mlに溶かしたものを1.0ml/ラット経口投与し、その30分後、100%エタノールを1.0ml/ラット経口投与し、その30分後、頸椎脱臼して屠殺し、胃を摘出した。その後、1%ホルマリン溶液10mlを胃内に注入し、さらに、同液中に浸し、胃組織を軽く固定し、マウスの場合と同様に腺胃部に発生した潰瘍の総和を潰瘍係数として測定した。また、この場合も、コントロールとして生理食塩水を経口投与したものを用いた。ここでラットは各々15匹で行った。その結果を示すと
【表3】のとおりである。
【0028】
【表3】本発明品の経口投与におけるエタノール潰瘍ラットマウスに対する抗潰瘍性
【0029】
【表3】のように、コントロールとして生理食塩水を1.0ml/ラット経口投与したラットにおける潰瘍係数の平均は48.1であるのに対して、本発明品1.0ml/ラットを経口投与したラットにおける潰瘍係数の平均は19.1であり、本発明品は、胃粘膜に直接作用しておこるエタノール潰瘍に対しても有効な抗潰瘍剤であることが判明した。
【0030】
これらの結果より、本発明品は、有効ではあるが、胃腸に傷害を与えるような医薬品と併用することにより、それらの薬剤からの胃腸保護剤としても有効である。
【0031】
なお、米糠の不鹸化物中に含まれているとされるオリザノールは、実施例1〜3により得られた本発明品中には、高速液体クロマトグラフによる分析結果において、いずれも含まれていなかった。
【0032】
以上のとおり、本発明品が経口投与および皮下投与において、間接的潰瘍の代表としての拘束水浸ストレス潰瘍に対して有効であること、および直接的潰瘍の代表としてのエタノール潰瘍に対して有効であるという結果より、本発明品が潰瘍全般に有効であり、治療薬としても、予防薬としても有効であり、経口および皮下投与においても巾広く利用できることが判明した。
【0033】
【発明の効果】
本発明品は、間接的な潰瘍(ストレス潰瘍)および胃に直接作用する潰瘍(エタノール潰瘍)いずれにも顕著な効果を示す。しかも、経口投与においても、皮下投与においても多大の効果があることは、実用上内服用にも注射用にもどちらにも利用できるものであり、巾広い用途が見込まれる。このように顕著な抗潰瘍作用を持つものが、2000年来安全性が実証されている米から簡単安価に得られたことは画期的なことである。
【0034】
これにより、治癒効果だけでなく、常用しても一切問題がないことから、潰瘍の予防効果を合わせもち、予防医学の面でも非常に優れた事績になるとともに、潰瘍をわずらった人の再発防止という観点からも、これらの人々にとって大きい福音となるものである。
【0035】
【実施例】
実施例1
白米15kgをよく粉砕し、これに60℃の温水45lと液化酵素50gを加え、よく攪拌した。その後、徐々に温度を上げてゆき、5分間煮沸抽出した後、30℃まで冷却した。その後、しぼり機でしぼり、圧搾液41lを得た。
【0036】
実施例2
実施例1により得た圧搾液800mlを冷凍乾燥し、111.75gの冷凍乾燥品を得た。
【0037】
実施例3
白米1kgをよく粉砕し、95%アルコール3lを添加し、よく攪拌して放置した。4日後、しぼり機でしぼり、圧搾液2.5lと残渣1.2kgを得た。この圧搾液に500ml加水し、ロータリーエバポレーターによりアルコールを完全に除去し、本発明品50mlを得た。
Claims (2)
- リムラステスト陽性LPS以外の、白米からの水抽出物または有機溶媒抽出物を有効成分として含む抗粘膜潰瘍剤。
- 水抽出の場合、酸、アルカリで前処理するか、米の組織に働く酵素を反応させて前処理を行い抽出された、請求項1記載の抗粘膜潰瘍剤。
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JP40969290A JP3550403B2 (ja) | 1990-12-11 | 1990-12-11 | 抗潰瘍剤 |
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