JP3550130B2 - 地中の熱容量を最大限に活用した建物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建物に関する。さらに詳しくは地中の熱容量を最大限に活用した建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
地熱を活用した建物としては、外気を地中に埋設された熱交換装置等に通してから、又は直接、外気を床下空間に導入して、壁内空間を介して居室に地熱を伝達させる建物が知られている(特開昭57−51348号、特開昭63−217045号、特開平8−74344号、特開平10−280574号、特開平11−101474号、特開2000−97586号、特開2001−116291号又は特開2001−116292号の各公報)。
また、地熱エネルギーを補うため、上記のような建物の床下に暖房装置を配置したものも知られている(特開平6−299712号、特開平6−299713号又は特開平10−292930号の各公報)。
さらに、地熱エネルギーを補うため、上記のような建物に太陽エネルギーを活用できるようにした建物が知られている(特開昭57−62339号、特開昭57−62340号又は特開平296514号の各公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
外気を地中の熱交換装置又は床下空間に導入する従来の建物は、湿気を含んだ暖かい空気を導入したとき、熱交換装置内又は床下空間内で結露が生じるという問題点がある。さらに、熱交換装置を設置する場合、建物の大きさに比例して、熱交換装置等の設置コストがかかるという問題もある。
また、暖房装置を設置した建物は、上記問題点に加えて、通常の暖房装置に比較してはるかに高額な費用がかかるという問題点がある。
また、太陽エネルギーを活用した建物は、上記問題点に加えて、屋根の断熱が不十分となりやすく、特に夏季の小屋裏空間の利用が制限されるという問題がある。一方、曇天日には、太陽エネルギーを全く活用できないという問題点もある。
一方、地熱の活用を効果的にするため高断熱・高気密化することが好ましいけれども、従来の建物では、居室の換気をするための換気装置が別個に必要であるという問題点もある。
すなわち、本発明の目的は、結露の心配がなく、より簡便に省エネルギー化が達成できる建物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、地熱及び地中の熱容量と居室の換気とに着目し、最小限の冷房装置又は暖房装置(冷暖房装置)の稼働のみで夏涼しく、冬暖かい建物を提供し得ることを見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明の建物の特徴は、地中と熱伝導可能に配され、かつ外気と遮断された床下空間(1)と、
床下空間(1)と連通し、かつ構造材の外気側に断熱材(21)を貼設してこの(21)と壁材(18)との間に形成される壁内空間(2)と、
居室(3)から床下空間(1)へ排気するための排出口(4)と、
屋外から居室(3)に吸気するための吸気口(5)と、
壁内空間(2)から屋外へ排気するための排気口(6)とを設けてなる点を要旨とする。
【0005】
【作用】
本発明によると、吸気口(5)から居室(3)に吸気された外気は、排出口(4)を通して床下空間(1)へ、そして壁内空間(2)等へ導入され、壁内空間(2)等から排気口(6)を通して屋外へ排出される。これらの過程において、本発明の建物は、床下空間(1)がこの下のある地中(べた基礎のコンクリート等を含む)と熱伝導可能に配されているため、地熱(夏涼しく、冬暖かい)を最大限に活用することができる。
【0006】
すなわち、床下空間(1)は、外部から特別な熱の授受をしない限り、熱伝導により地熱又はこれに近い温度(年間平均気温に近い温度、例えば、東京では約15℃)を維持する。従って、外気と遮断された床下空間(1)の温度は、一般的に暖房が行われる晩秋から冬季を経て初春にかけて(冬季間)は外気温度より高く、晩春から夏季を経て初秋にかけて(夏季間)は外気温度より低くなる。本発明の建物では、この床下空間(1)の熱(温熱又は冷熱)を、床下空間(1)を構成する床材(17)、床下空間(1)と連通(空間的に連続)してなる壁内空間(2)を構成する壁材(18)、及びこれらの空間と連通する小屋裏空間(7)及び/又は天井懐空間(12)を構成する天井材(19)を介して居室(3)に伝達することができる。この結果、本発明の建物全体の温度は、冬季間は外気温度より高く、夏季間は外気温度より低く保つことができる。
なお、外気を直接床下空間(1)に導入することなく、床下空間(1)の温度に近い居室(3)の空気を床下空間(1)に導入するので、床下空間(1)等で結露が生じる心配はない。
【0007】
一方、外気温度と地熱温度との差が極めて高くなる冬季又は夏季においては、地熱のみでは居室(3)の温度コントロールが難しくなる(地熱の供給が十分でなくなる)場合がある。このようなときは一般的に冷暖房装置を稼働できるが、居室(3)で冷暖房装置により温度コントロール(空調)された空気(熱)は排出口(4)を通して床下空間(1)に伝達され、さらにこの温度コントロールされた熱は地熱として蓄えることができる。また、断熱材(21)を構造材の外気側に貼設することにより、外気と遮断された構造材にも熱を蓄えることができる。よって、構造材及び大きな熱容量を持つ地中に多量の熱(温熱又は冷熱)を蓄えることができ、またその熱を壁材(18)、床材(17)及び天井材(19)等を介して居室(3)に再び伝達することができる。従って、居室(3)の温度をコントロールするための冷暖房装置は、必要最小限の稼働で済むこととなる。また、晩秋又は初春等には、窓からの日差し等で暖まった昼間の温熱を構造材及び地中に蓄え、夜にその熱を活用することができるので、夜間の冷暖房の稼働はほどんど不要なものとなる。
【0008】
このようにして、本発明の建物は、構造材及び地中の大きな熱容量を最大限に活用できるため、必要最小限のエネルギーで、外気の温度変化に対して極めて影響の少ない居室環境を長時間にわたって維持することができる。すなわち、本発明によると、必要最小限のエネルギーで、夏涼しく、冬暖かい建物の提供を実現することができるのである。なお、本発明の建物には、必要により市販の温度コントロール付きの冷暖房装置を使用することにより、床下空間(1)からの熱供給量のコントロールを行う必要がない。また、以上のような熱の授受が行われると同時に、居室(3)に吸気口(5)を通して常に新鮮なの空気が導入されるため、特別な局所排気装置以外に、さらに換気装置を設ける必要がない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の建物は、木造、鉄筋造り、軽量コンクリート造り及びコンクリート造り等の何れにも適用できるが、木材の有する蓄熱機能、調湿機能及び吸着機能の観点から木造が好ましい。また、本発明の建物は、軸組工法、枠組壁工法、新在来工法及びこれらの組み合わせ等のいずれの工法にも適用できるが、特に高気密・高断熱の建物であることが好ましい。なお、軸組工法とは柱及び筋交い等を組み合わせて施工される工法であり、枠組壁工法とはいわゆる2×4パネル等を用いて施工する工法を意味する。また、新在来工法とは、軸組工法において、筋交いに代えて又はこれに加えて構造用合板等を施工する工法、及び鉄骨の柱に構造用合板等を組み合わせて施工する工法等を意味する。
【0010】
本発明の建物において、床下空間(1)は、布基礎又はべた基礎の外周部と、地面(又はべた基礎のコンクリート表面等)と、床材(17)とに囲まれることにより形成され外気と遮断される。なお、基礎(16)の外周部にはいわゆる床下換気孔は設けない。床下換気孔を設けると地熱が屋外へ放散しやすく、湿気を含む暖かい外気が入り込むことにより床下空間内で結露したり、雨水又は雪等の進入の原因ともなる。また、床下空間(1)と地中(べた基礎のコンクリート等を含む)との熱伝導性を確保するため、床下の地面(又はべた基礎のコンクリート表面等)には断熱材(21)は敷設しない。ただし、地中からの湿気の進入を防止するため、防湿用コンクリート及び/又は防湿シートを敷設することが好ましい。
【0011】
また、基礎(16)の外周部の外気側に断熱材(21)を配置することが好ましい。このように、いわゆる基礎外断熱にすると、床下空間(1)を外気の環境から遮断できることに加えて、基礎(16)の熱容量も活用することができる。さらに断熱材(21)をできるだけ地中深く埋設することが好ましい。このようにすることにより、床下の地中以外からの影響を最小限にすることができる。特に冷暖房装置により温度コントロールされた熱を地熱として蓄えるときにその効果が現れやすい。また、床下空間(1)の断熱性を高めるため、基礎(16)の外気側及びその反対側(内側)に断熱材(21)を配置することもできる。基礎(16)の外気側に断熱材(21)を設けるとき、断熱材(21)が外気と接しないように外装仕上げを行うことが好ましい。さらに、白蟻が発生する地域に基礎外断熱するときは、防蟻処理(蟻の進入路を絶つ又は防蟻剤の使用等)を施すことが好ましい。白蟻の発生が激しい地域(温暖な地域等)等では基礎(16)の内側のみに断熱材(21)を設けることができ、やむを得ないときは断熱材(21)を設けないこともできる。以上の基礎断熱の構成は、床下空間(1)及び床下の地面は外気の影響を受けやすいから、できるだけその影響を防止し、地中の熱容量を最大限に活用するために重要である。
【0012】
床下空間(1)の上部には、床材(17)を床下空間(1)と熱伝導可能に敷設する。すなわち、床材(17)には、断熱材(21)を貼設する等の断熱処理はしないことが重要である。床材(17)に断熱処理をしないことにより、床下空間(1)の熱が床材(17)を介して居室(3)に伝達することができ、また反対に居室(3)の熱(温熱又は冷熱)が床材(17)を介して床下空間(1)に伝達され、その熱を地熱として蓄えることができる。
【0013】
床材(17)には、居室(3)から床下空間(1)へ排気するための排出口(4)が設けられる。この排出口(4)を通して居室(3)で空調された空気が床下空間(1)に入る。これにより居室(3)の熱を床下空間(1)に伝え、さらにはこの熱は地熱として蓄えることができる。この排出口(4)は、居室(3)の熱のみならず空気も床下空間(1)に導入され、この空気は後述する壁内空間(2)を通り、排気口(6)から屋外に放出されるため、換気口としての働きもする。この排出口(4)は、通常、床材(17)に設けられるが、床下空間(1)とは連通しているが、後述する小屋裏空間(7)又は天井懐空間(12)には連通していない壁内の空間(例えば、柱等の挟まれた窓の下部等)に設けてもよい。このような箇所に設けることは、ホコリ、ゴミ、砂及び水等が入り込みにくいという観点から好ましい。なお、多層階建ての場合、上階の床材(17)と下階の天井材(19)の間にも、排出口(4)を設けてもよい。この排出口(4)を通じて、上階の空気(熱)が下階に通気(伝達)され、さらには床下空間(1)に伝達される。また、多層階建ての場合、この排出口(4)に替えて、またはこれに加えて、上階の居室(3)と下階の居室(3)とを連通する、階段室及び/又は上階の一部と下階の一部とを吹き抜けで一体化された空間を設けてもよい。
【0014】
本発明の建物は、基礎(16)の上の土台(20)、土台(20)に立設された柱、筋交い、桁等の横架材及び構造用合板等の構造材の外気側に断熱材(21)を貼設して躯体が構成される。このような外断熱構造であると、構造材が外気環境にさらされることがないので耐久性が飛躍的に向上する。さらに外断熱構造により、構造材が本来備えている機能(蓄熱機能等)を十分に活用することができる。そしてこの断熱材(21)と壁材(18)との間に壁内空間(2)が形成される。そして、壁材(18)に囲まれて居室(3)が形成される。なお、居室(3)、トイレ、階段室、浴室、洗面室及びキッチン等の相互間にも壁内空間(2)が形成される。この壁内空間(2)は、床下空間(1)と連通(空間的に連続)している。すなわち、壁内空間(2)を通し、そして壁材(18)を介してそれぞれの居室(3)に地熱が効率的に伝達できる。なお、壁内空間(2)の通気を確保するため、軸組工法のときは、立胴縁若しくは横胴縁の設置、間柱等への通気口の設置、又は特開2001−132140号公報に記載のTIP工法等を採用してもよい。また、構造用合板等を使用するときは、特開平8−82023号、特開平10−2046号、特開平10−102680号、特開平8−68133号又は特開2000−282602号の各公報等に記載された通気パネルを用いてもよい。ただし、これらの公報に開示された構造用合板等を使用するときは、断熱材(21)をこれらの構造用合板等の外気側に敷設する必要がある(そのままでは使用できない)。
【0015】
床下空間(1)及び壁内空間(2)を連通させる連通箇所は、例えば、▲1▼土台(20)、胴差及び床ばり等に取り付けられる根太(22)の上端を土台(20)や床ばり等の上端より高くして取り付け、根太(22)の上に敷設される床材下端と土台(20)や床ばり等の上端との間で連通させる方法、▲2▼土台(20)、胴差及び床ばり等の上端に一定間隔で欠き込み(凹部、図2を参照)を設け、この上に床材(17)を敷設することにより、欠き込み部で連通させる方法(根太レス工法A)、▲3▼土台(20)、胴差及び床ばり等の上に一定間隔で配置された桁材を設け、この桁材の上に床材(17)を敷設することにより、桁材間における土台(20)等の上端と床材(17)の下面との間で連通させる方法(根太レス工法B)、並びに▲4▼土台(20)、胴差及び床ばり等の上に、短軸方向の両端に開口部(ハニカム構造又は中空構造等)を持つ棒材を設け、この棒材の上に床材(17)を敷設することにより、この開口部で連通させる方法(根太レス工法C)等により形成することができる。これらのうち、施工の簡便性及びコスト等の観点から、▲1▼〜▲3▼の方法が好ましく、さらに好ましくは▲1▼及び▲2▼の方法、特に好ましくは▲2▼の方法である。
【0016】
連通箇所(1ケ所)の通気断面積(cm)は、7以下であることが好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは3.3以下である。また0.5以上が好ましく、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.4以上である。
【0017】
なお、▲1▼の工法を採用する場合、連通箇所の通気断面積が大きくなりやすいので、後述の通気制御口(8)を設けることが好ましい。また、根太レス工法A〜C(▲2▼〜▲4▼の工法)を採用する場合、床材(17)として居室(3)における荷重を支持し得る厚さの合板を使用する。そして、床材(17)は通常の根太(22)を使用することなく土台(20)等に締結される。この場合、欠き込み、桁材又は開口部を持つ棒材等により形成される連通箇所の長さは、床材(17)と土台(20)等との重ねしろ以上であれば特に制限がないが後述する通気制御口(8)としての作用を持たせるため、重ねしろより少なくとも0.2cm以上あることが好ましく、さらに好ましくは0.3cm、特に好ましくは0.5cm以上、最も好ましくは0.7cm以上である。また、土台(20)等の上面幅と同じとするか、またはこの上面幅より狭くしてもよい。狭くする場合、3cm以下の長さだけ狭いことが好ましく、さらに好ましくは2cm以下、特に好ましくは1.5cm以下、最も好ましくは1cm以下狭いことである。また、通気箇所は、上記の通気断面積の穴を一定間隔おきに設けることが好ましく、通気箇所を2個以上を並べてこれを一定間隔おきに設けてもよい。通気箇所を2個以上並べる場合、これらの通気断面積の合計は、上記の通気断面積の範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明において断熱材(21)としては、無機繊維状断熱材(グラスウール及びロックウール等)、現場で吹き付け施工される吹き付け断熱材(セルロースファイバー、吹き付け発泡ポリウレタン及び吹き付け発泡ポリイソシヌアレート等)及び発泡プラスチックボード(発泡ポリウレタンボード、発泡ポリスチレンボード及び発泡ポリエチレンボード等)等が使用できる。これらのうち、断熱性及び耐透湿性の観点から、吹き付け断熱材及び発泡プラスチックボードが好ましく、さらに好ましくは発砲プラスチックボードである。特に耐透湿性を高めるために、発泡プラスチックボード同士のつなぎ目への耐透湿テープ等の貼設、及び/又は発泡プラスチックボードと防湿ボード若しくは防湿フィルム等との併設が好ましい。
【0019】
さらに本発明の建物は、壁部分の断熱材(21)の外側に縦胴縁又は専用金具(外壁メーカーが外装材とセット販売している)等を介して外装材を敷設し、外装材と断熱材(21)との間に外気通気空間(9)を形成することが好ましい。外気通気空間(9)を設けることにより、壁全体の断熱効果をさらに高めることができ、さらに外装材の耐久性をさらに向上させることができる。外装材としては、防火性、施工性及び断熱性能等の観点から、パワーボード及びサイディング等のプレート状外装材を使用することが好ましい。
【0020】
建物内部には内装下地材としての床材(17)、壁材(18)及び天井材(19)等が敷設されることにより各居室が構成されるが、本発明を多層階の建物に適用する場合、下階の天井材(19)と上階の床材(17)との間には天井懐空間(12)が形成される。そして、この天井懐空間(12)は、下階の壁内空間(2)及び上階の壁内空間(2)の両方に連通している。このように連通していることにより、地熱が天井懐空間(12)及び上階の壁内空間(2)に伝達され、その上下階の居室(3)に熱(温熱又は冷熱)が伝えられる。すなわち、地熱が床下空間(1)、壁内空間(2)及び天井懐空間(12)に伝達されるから、各階のそれぞれの居室(3)を囲むすべての内装下地材を介して地熱が効率的に居室(3)に伝達することができる。
【0021】
天井懐空間(12)と下階の壁内空間(2)との連通箇所は、次のように形成される。すなわち、下階の天井材(19)は野縁に貼設され、野縁はつり木でつられた野縁受けに取り付けられる。この場合、天井材(19)は、はりの下面より低い位置に配置される。これにより天井懐空間(12)は下階の壁内空間(2)に対して、はりの下面と天井材(19)の上面とを通して連通(空間的に連続)する。一方、上階の床材(17)は、上記の▲1▼〜▲4▼と同様にして敷設されるので、天井懐空間(12)は上階の壁内空間(2)に対して連通する。
【0022】
本発明の建物の屋根は、構造材としての垂木及び屋根下地合板等の外側に断熱材(21)を配置して構成されることが好ましい。このような外断熱構造であると、構造材が外気環境にさらされることがないので、構造材等の耐久性が飛躍的に向上する。さらに外断熱構造により、構造材が本来備えている機能(蓄熱機能等)を十分に活用することができる。さらに小屋裏を居室(3)と同様に生活空間として活用することができる。
【0023】
最上階(平屋建てのとき1階、2階建てのとき2階、3階建てのとき3階)の居室(3)には、少なくとも一部分に天井材(19)を設け、天井材(19)及び屋根の構築により天井裏に小屋裏空間(7)を形成することが好ましい。この場合、最上階の天井材(19)は、天井懐空間(12)の場合と同様にして最上階の壁内空間(2)に対し連通する。すなわち、本発明の建物において、壁内空間(2)は、小屋裏空間(7)、床下空間(1)及び多層建てのときは天井懐空間(12)に通じており、躯体内部での空気が移動可能となる構造とすることが好ましい。なお、最上階の居室(3)の天井は、屋根裏を天井とする、いわゆる吹き抜け構造とすることもできる。この場合、吹き抜け構造の屋根部分は、壁内空間(2)のように内部が通気できるようにする必要がある。
【0024】
このように躯体内部での空気の移動ができると、地熱(夏涼しく、冬暖かい)を、床下空間(1)、壁内空間(2)、小屋裏空間(7)及び天井懐空間(12)に効率的に伝達することができる。さらにこのように躯体内部での空気が移動可能であると、躯体内部の構造材、すなわち、土台(20)、柱、梁、桁、構造用合板及び屋根下地用合板等の構造材を適度な乾燥状態に維持することができる。すなわち、居室(3)で空調された空気が躯体内部を自由に移動できるため躯体内部の湿潤化を防止でき、構造材の腐朽防止効果が極めて高い。従って、構造的な強度維持の他に、木造の場合のように木質材料が本来備えている機能(蓄熱機能、調湿機能及び吸着機能等)を建物全体の機能として長期に渡って発揮することができる。
【0025】
また、外壁と同様に、屋根の断熱材(21)の外側に縦胴縁等を介して屋根材(屋根外装材)を敷設し、屋根材の内側に屋根通気空間(10)を形成することが好ましい。屋根通気空間(10)を形成するときは、棟換気口(11)を設けることが好ましい。さらに好ましくは外気通気空間(9)と屋根通気空間(10)とを連通させることである。このように連通させることにより、基礎部分から入った外気が外気通気空間(9)を通り、屋根通気空間(10)に抜け、棟換気口(11)から排出されやすくなり、壁及び屋根の耐久性及び断熱効果をさらに高めることができる。例えば、夏季の日差しや隣接する建物の火災等の熱からも建物を保護することができる。さらに、壁内部を適度な乾燥状態に保つことができるので、カビの発生や白蟻等の侵入を防止することもできる。
【0026】
本発明の建物には、屋外から居室(3)に吸気するための吸気口(5)と、壁内空間(2)から屋外へ排気するための排気口(6)とを設けられている。これらを設けることにより、躯体内部での空気の移動がさらに容易となり、地熱を躯体全体にさらに伝達しやすくなる。しかもこのように吸気口(5)及び排気口(6)を設けると、新鮮な外気を吸気口(5)を通じて居室(3)に直接取り込むことができ、居室(3)の空気は床下空間(1)、壁内空間(2)、天井懐空間(12)及び小屋裏空間(7)を通じて、排気口(6)から屋外に排出することができる。従って、仮に一酸化炭素、ホルムアルデヒド、トルエン及びキシレン等の有害化学物質が躯体内部で多く発生したとしても、これらの有害化学物質を居室(3)に取り込むことなく屋外に排出でき、居室(3)を清浄な環境に維持できる。また、万が一、床下空間(1)、壁内空間(2)、天井懐空間(12)及び小屋裏空間(7)に結露等が生じても容易に外気に放出することができる。すなわち、構造材等が結露等からさらに保護されやすくなる。もちろん、台所、トイレ及び/又は浴室等には、通常の強制排気装置を設けてもなんら差し支えない。
【0027】
また、多層階の建物の場合、上階の換気効率を向上させる目的で、上階の居室(3)から外気へ直接排気する換気口(強制排気装置を附設してもよい)を設けてもよい。また、上階の居室(3)及び小屋裏空間(7)を連通する換気口を設けて、これを通じて排気口(6)から外気に排出することもできる。また、吸気口(5)及び排気口(6)には、吸排気が逆転しないよう逆流防止装置(逆止弁、シャッター又は強制排気装置若しくは強制吸気装置と連動する弁等)を設けることが好ましい。逆流防止装置を設けることにより、外気が直接、床下空間(1)に進入することを防止できる。
【0028】
さらに排気口(6)は、小屋裏空間(7)に設けることがより好ましい。このようにすると、地熱が躯体全体に広がりやすくなり、居室(3)に地熱がさらに伝達しやすくなる。さらに小屋裏空間(7)の有害化学物質や湿気等の排出もさらに容易となる。さらに排気口(6)に強制排気装置(13)を、及び/又は吸気口(5)に強制吸気装置(14)を配置することが特に好ましい。これらを設けることにより、躯体内部での空気の移動がさらに容易となり、地熱を躯体全体にさらに伝達しやすくなる。しかもこれらの設置により、躯体内部での温度差や風量等が小さいときでも、計画的かつ効率的に躯体内部の空気の移動させることができる。各居室へ吸気するための吸気ダクトのコスト等の観点からは、強制排気装置(13)を排気口(6)に設けることが好ましいが、居室(3)を微加圧状態とし吸気口以外からの外気の進入を防止できるという観点からは、強制吸気装置(14)を吸気口(5)に設けることが好ましい。なお、強制排気装置(13)及び強制吸気装置(14)はタイマーと連動させてもよい。タイマーと連動させることにより計画的に換気及び熱伝導を制御することができる。
【0029】
本発明の建物においては、屋外の新鮮な外気を居室(3)に供給しかつ居室(3)の温度コントロールされた熱(冷熱又は温熱)の損失をさらに低減するため、吸気口(5)及び排気口(6)を熱交換装置(15)に接続することができる。熱交換装置(15)としては、熱交換素子を収容してなり、居室(3)から排出する熱(温熱又は冷熱)を吸入される外気に伝達できる公知の熱交換装置等が使用できる。熱交換装置(15)を使用するときは、熱交換装置(15)と吸気口(5)及び排気口(6)とをダクト(吸気ダクト及び排気ダクト)で接続する。また熱交換装置(15)には、居室(3)に外気を供給するためのダクトが接続される。一方、壁内空間(2)の空気は、排気ダクトを設けて熱交換装置(15)に通気させてもよいが、熱交換装置(15)を壁内空間(2)、小屋裏空間(7)又は天井懐空間(12)に設置し、これらの空間の空気を直接、熱交換装置(15)に取り込むことがコスト及びスペース等の観点から好ましい。
【0030】
また、熱交換装置(15)には、強制吸排気装置を内蔵していてもよい。このような強制吸排気装置内蔵型の熱交換装置(15)を使用する場合、強制排気装置(13)及び強制吸気装置(14)を重複して設置する必要はない。このような吸排気内蔵型の熱交換装置(15)を使用する場合、強制吸気となるように設置することが好ましい。強制吸気により、居室内が微加圧状態となるので、万が一、建物に隙間があっても外気が熱交換装置(15)を通らないで直接、居室(3)に進入することがない。
【0031】
本発明の建物は、壁内空間(2)に通気制御口(8)を配することが好ましい。通気制御口(8)は、壁内空間(2)の状況{排出口(4)から壁内空間(2)までの距離、間柱や筋交い等の有無及び温度差等}によって通気リーク、通気量減少又は通気遮断等のばらつきを生じにくくするために配するものである。すなわち、通気制御口(8)は、床下空間(1)の空気(熱)を通気(伝達)しやすい壁だけを通気(伝達)させずに、どの壁内空間(2)へもまんべんなく均一に通気(伝達)させるためのものである。均一に通気(伝達)させることにより、居室(3)への熱伝導が均一かつ効果的(壁材の全てを熱伝導面として使用し得る)に行うことができる。また、通気制御口(8)は、強制排気装置(13)、強制吸気装置(14)及び/又は強制吸排気装置内蔵型の熱交換装置(15)を設けた場合に著しい効果を発揮するものである。そして、どの壁についても均一かつ効果的に結露の防止及び有害化学物質の排出等ができる。
【0032】
通気制御口(8)として、上述した壁内空間(2)と床下空間(1)又は天井懐空間(12)とを連通させる連通箇所が、そのまま通気制御口(8)として機能する。また、上記公報に記載された2×4通気パネルの排出口、パンチングメタル、金網、ハニカム構造材及び中空棒材等も通気制御口(8)として使用することができる。すなわち、通気制御口(8)としては、すべての壁内空間(2)において、水平方向に均一に通気を妨害できるもの、所謂ある種の通気妨害機能を持つものであれば使用できる。また、ファイヤーストッパー(通気役物)等も通気制御口(8)として利用できる(木造住宅工事共通仕様書、平成13年版、191頁、住宅金融公庫監修)。ファイヤーストッパーとしては、例えば、ニチハ株式会社の商品名:ファイアストップ(品番JE7135)等が挙げられる。ファイヤーストッパーは、本来、外気通気空間(9)に設けられ、階下での火災時に通気層内を熱気が上昇し、延焼が上階に広がることを一定時間くい止めるためのものであるので、壁内空間(2)に設けることによって、当然に本来の機能も発揮する。
【0033】
通気制御口(8)を使用する場合、通気制御口(8)は、壁内空間(2)の水平方向に均一に設置される。また、通気制御口(8)は一定間隔おきに設けることが好ましい。また、該水平方向では、通気制御口(8)のみで壁内空間(2)の上下を連通させ、通気制御口(8)以外では連通しない構造とするものである。また、通気制御口(8)を使用する場合、通気制御口(8)は床材(17)に近い高さに設置することが好ましく、多層階の建物のときは各階の床材(17)に近い高さに設置することが好ましく、さらに好ましくは連通箇所を通気制御口(8)として用いることである。通気制御口(8)の機能をさらに向上させるため、通気制御口(8)の通気断面積(cm)は、7以下であることが好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは3.3以下である。また0.2以上が好ましく、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.6以上、最も好ましくは0.8以上である。
【0034】
さらに本発明の建物の効果を高めるために、必要により本発明の建物に以下の事項を付加してもよい。
すなわち、床下空間(1)には、熱容量及び防湿性等をさらに向上させるため、炭及び/又はくり石を敷き詰めてもよい。炭及び/又はくり石を敷き詰めることにより、ホルムアルデヒド等の有害化学物質を吸着するという効果も発揮する。
【0035】
また、コスト面等で許されるなら、床下空間(1)を設ける替わりに、地下室(21)を設けてもよい。地下室(21)を設けることにより、地熱をさらに活用でき、地中の熱容量をさらに高めることができる。地下室(21)を設ける場合、地下室(21)は鉄筋コンクリート造りとすることが強度等の観点から好ましい。また、地下室(21)の断熱方法は、基礎(16)と同様に外断熱とし、床下及び地面には断熱材(21)を敷設しないことが重要である。また、防水措置を講じることが重要である。さらに、換気の観点から、床下空間(1)、排出口(4)及び壁内空間(2)を設け、地下室内の空気を地熱とともに、排出口(4)を通じて地下室の床下空間(1)へ、そして壁内空間(2)へ通気(伝達)させ、1階の壁内空間(2)へ通気(伝達)させることが好ましい。この場合、1階の床材(17)に設けた排出口(4)は、地下室(21)への吸気口としての機能を持たせてもよく、また、階段室等を通じて吸気を行ってもよい。なお、地下室(21)まで設けなくても、床下の地表を掘り下げ、床下空間(1)の体積を大きくすることも同様な効果が得られやすい。
【0036】
また、調理器具として、電磁調理器(IHヒーター)を設置することができる。電磁調理器を用いることにより、本発明の建物の効果をさらに高めることができる。すなわち、電磁調理器を用いると、空気を汚さない(燃料の燃焼による二酸化炭素及び水分等の発生がない)ため、汚れた空気を居室(3)から排出するための余分な外気を取り入れる必要がない。従って、居室環境と外気との通気を必要最低限に維持することができる。
【0037】
また、居室(3)、廊下、玄関ホール、床下空間(1)及び/又は地下室(21)等には、電気蓄熱型暖房器を設置してもよい。このような暖房器を用いると、輻射熱により建物全体を一定温度にしやすくなり、空気を汚さない。さらに安価(昼間の1/3〜1/4程度)な夜間電気エネルギーを利用して24時間暖房することができるというメリットもある。なお、このような暖房器の重量は、およそ100〜350kg(熱容量等により異なる)であるので設置する場合は床等の強度を十分考慮する必要がある。このような暖房器としては、商品シリーズ名を列挙すると、クレダ<日本ゼネラル・アプライアンス(株)>、暖吉くん<北海道電機(株)>、エルサーマット<日本スティーベル(株)>、おりびん<サンボット(株)>、オイルバーグ<クラリオン商事(株)>、サンレッジ<(株)インターセントラル>、ハーバーランド<京都インターナショナル(株)>、アルディ<(株)白山製作所>、LUNA<日本電熱(株)>、AEG<エレクトロラックス・ジャパン(株)>及びHVS<(株)ほくでんライフシステム>等が挙げられる。
【0038】
また、床下の地中に電気蓄熱型暖房プレートを埋設することができる。このようにすると、上記の電気蓄熱型の暖房器と同様の効果の他に、建物内に暖房装置の設置場所が不必要となり、広い居住空間を確保することができる。ただし、設置作業が煩雑な上、上記の電気蓄熱型暖房器よりも高価格であるというデメリットがある。
【0039】
本発明の建物は、すべての居室(3)のドアーを開放して使用することが好ましい(必要に応じて最小限度ドアーを閉める)。解放することにより、建物全体が一定温度に近づくため、居室(3)から出入りする際のヒートショックが極めて少なくなり、体力的な弱者、特に高齢者に対する安全性が高くなる。
人・場所等によっては必要としない場合もあるが、冷暖房装置の稼働が必要なときは、冷暖房装置を24時間連続運転することが好ましい。地中及び構造材は、極めて大きな蓄熱材として働くので、一度、最適に蓄熱されたなら、その後は極めて少ないエネルギーを供給するだけで一定温度を保つことができるので、本発明の建物の効果を最大限に発揮することができる。なお、外気温等によって異なるけれど、冷暖房装置の稼働を止めても、24〜48時間程度はほぼ一定温度を保つことができる。
【0040】
また、湯沸器及び風呂釜等の熱を多く発生する機器は、屋外に設置することが好ましく、さらに深夜電力を利用できる機器を使用することがコスト等の観点から好ましい。
また、南側屋外に、落葉樹を植えることも好ましい。このようにすると、本発明の建物は、夏に直射日光から遮られ、冬に直射日光をより多く浴びることができる。
本発明の建物は、建物の地中浅く(約3m以内)に地下水等が流れているとき本発明の効果を発揮しにくくなるので、流れをせき止める等の工事をすることが好ましい。
【0041】
次に本発明の建物に関して、好ましい態様における空気{熱(温熱又は冷熱)}の流れ(伝導)について、図を用いて説明する。なお、図1及び図3において、土台(20)、はり及び根太以外の構造材等は省略してある。また、太矢印は、空気(熱)の流れを示す。
図1は、根太レス工法で施工した本発明の建物の基本構造を模式的に示す縦断面図である。図1に示す建物には、強制排気装置(13)が設けられ、計画的に通気コントロールがなされるようになっており、また、外通気空間(9)、屋根通気空間(10)及び棟換気口(11)を設けたものである。
【0042】
まず、吸気口(5)から新鮮な外気が居室(3)に入る。居室(3)の空気は排出口(4)から床下空間(1)に入り、地熱と熱交換して、床下空間(1)及び壁内空間(2)を連通させる連通箇所{通気制御口(8)としても働く}を通して、すべての壁内空間(2)にほぼ均一に流れ込む。壁内空間(2)の空気は、小屋裏空間(7)へ移動し、強制排気装置(13)により排気口(6)を通して排出される。この一連の空気の流れにおいて、居室(3)の換気を行うと同時に、地熱と熱交換した温熱又は冷熱が床材(17)、壁材(18)及び天井材(19)を介して居室(3)に熱伝導される。また、居室(3)等で冷暖房装置を稼働させるときは、温度コントロールされた熱は、構造材や地中に蓄えられる。上記のようにして、この熱は再び居室(3)に伝達される。
一方、外気通気空間(9)に入った外気は、屋根通気空間(10)と通り、棟換気口(11)から再び屋外に放出される。この外気通気空間(9)に入った外気は断熱効果を高めると共に、壁内部を適度な乾燥状態に保つことができる。
【0043】
図3は、根太(22)を用いることにより、床下空間(1)及び壁内空間(2)を連通させる連通箇所を形成し、通気制御口(8)を壁内空間(2)に設けた本発明の建物の基本構造を模式的に示す縦断面図である。図3に示す建物には、強制吸気装置(14)付きの熱交換装置(15)を小屋裏空間(7)に設置した吹き抜け構造の2階建ての建物である。また、この建物には外通気空間(9)、屋根通気空間(10)及び棟換気口(11)が設けられている。
【0044】
まず、吸気口(5)から吸入された新鮮な外気は、熱交換装置(15)に入り、排気される空気と熱交換しながら、吸気ダクトを通り1階及び2階のそれぞれの居室(3)に入る。2階の居室(3)の空気は、吹き抜け部を通して、1階の居室(3)へ移動し、1階の居室(3)の空気と共に、排出口(4)から床下空間(1)に入る。そして、地熱と熱交換しながら連通箇所を通して、壁内空間(2)に入り、通気制御口(8)を通り、すべての壁内空間(2)をほぼ均一に流れる。壁内空間(2)の空気は、小屋裏空間(7)へ移動し、熱交換装置(15)に入り新鮮な外気と熱交換しながら、排気口(6)を通して排出される。この一連の空気の流れにおいて、居室(3)の換気を行うと同時に、地熱と熱交換した温熱又は冷熱が床材(17)、壁材(18)及び天井材(19)を介して居室(3)に熱伝導される。また、居室(3)等で冷暖房装置を稼働させるときは、温度コントロールされた熱は、構造材や地中に蓄えられる。上記のようにして、この熱は再び居室(3)に伝達される。
一方、外気通気空間(9)に入った外気は、屋根通気空間(10)と通り、棟換気口(11)から再び屋外に放出される。この外気通気空間(9)に入った外気は断熱効果を高めると共に、壁内部を適度な乾燥状態に保つことができる。
【0045】
以上の実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
<1> 地中と熱伝導可能に配され、かつ外気と遮断された床下空間(1)と、これと連通し、かつ構造材の外気側に断熱材(21)を貼設して形成される壁内空間(2)と、
居室(3)から床下空間(1)へ排気するための排出口(4)と、
屋外から居室(3)に吸気するための吸気口(5)と、
壁内空間(2)から屋外へ排気するための排気口(6)とを設けてなることを特徴とする建物。本発明の建物は、断熱材(21)に包まれた構造材等の熱容量のみならず、床下の大きな熱容量をも最大限に活用できるため、長時間にわたって外気の影響を受けにくい。従って、冷暖房設備を最小限で稼働させても、夏涼しく、冬暖かい環境を維持することができる。
【0046】
<2>床下空間(1)が、外気側に断熱材(21)を施した基礎(16)、地面(べた基礎のコンクリート表面等を含む)及び床材(17)により形成される<1>に記載の建物。床下空間(1)をこのように形成すると、基礎(16)の外周部の熱容量をも活用することができ、床下の熱容量をさらに高くすることができる。
【0047】
<3>排気口(6)が、壁内空間(2)と連通しかつ構造材の外気側に断熱材(21)を貼設してなる小屋裏空間(7)に配してなる<1>又は<2>に記載の建物。このようにすると、地熱が躯体全体にさらに広がりやすくなり、居室(3)に地熱がさらに伝達しやすくなる。また小屋裏空間(7)の有害化学物質や湿気等の排出もさらに容易となり、屋根の構造材の耐久性等がさらに向上する。
【0048】
<4>さらに、排気口(6)に強制排気装置(13)を設置し、かつ/又は吸気口(5)に強制吸気装置(14)を設置してなる<1>〜<3>のいずれかに記載の建物。これらを設けることにより、躯体内部での空気の移動がさらに容易となり、地熱を躯体全体にさらに伝達しやすくなる。しかもこれらの設置により、躯体内部での温度差や風量等が小さいときでも、さらに計画的かつ効率的に躯体内部の空気の移動させやすくなる。
【0049】
<5>さらに、壁内空間(2)に通気制御口(8)を配してなる<1>〜<4>のいずれかに記載の建物。通気制御口(8)を配すると、床下空間(2)の空気(熱)を通気(伝達)しやすい壁だけを通気(伝達)させずに、壁内空間(2)へまんべんなく均一に通気(伝達)させやすくなり、居室(3)への熱伝導がさらに均一かつ効果的に行うことができる。
【0050】
<6>通気制御口(8)の通気断面積が7cm以下である<5>に記載の建物。通気制御口(8)の口径が7cm未満であると、通気制御口(8)としての機能をさらに向上させることができる。
【0051】
<7>さらに、外気の出入りが自由であり、かつ壁の断熱材(21)と外装材との間に外気通気空間(9)を設けてなる<1>〜<6>のいずれかに記載の建物。このようにすると、壁全体の断熱効果をさらに高めることができる。また外壁の耐久性がさらに向上する。
【0052】
<8>さらに、屋根の断熱材(21)及び屋根材の間に外気通気空間(9)と連通する屋根気通気空間(10)と、屋根通気空間(10)及び外気を連通させる棟換気口(11)とを設けてなる<7>に記載の建物。このようにすると、基礎部分から入った外気が外気通気空間(9)を通り、屋根通気空間(10)に抜け、棟換気口(11)から排出され、壁及び屋根の断熱効果をさらに高めることができる。また外壁及び屋根材(瓦等)の耐久性がさらに向上する。
【0053】
<9>断熱材(21)が発泡プラスチックボードである<1>〜<8>のいずれかに記載の建物。発泡プラスチックボードを用いることにより、さらに断熱性及び耐透湿性が向上し、<1>の効果をさらに高くすることができる。
【0054】
<10>木造である<1>〜<9>のいずれかに記載の建物。木造であると、木材の有する蓄熱機能、調湿機能及び吸着機能等を活用することができ、<1>の効果をさらに高くすることができる。
【0055】
<11>床下空間(1)に炭及び/又は栗石を敷き詰めてなる<1>〜<10>のいずれかに記載の建物。炭及び/又は栗石を敷き詰めると、熱容量及び防湿性等をさらに向上させることができるほか、ホルムアルデヒド等の有害化学物質を吸着するという効果も発揮する。
【0056】
<12>床下空間(1)に替えて地下室(21)を設けてなる<1>〜<11>のいずれかに記載の建物。地下室(21)を設けると、床下の熱容量をさらに高めることができる。
【0057】
<13>電気蓄熱型暖房器を設置してなる<1>〜<12>のいずれかに記載の建物。輻射熱により建物全体を一定温度にしやすくなる。また空気を汚さない(燃料の燃焼による二酸化炭素及び水分等の発生がない)ため、汚れた空気を居室(3)から排出するための余分な外気を取り入れる必要がない。従って、居室環境と外気との通気を必要最低限に維持することができる。またさらに安価(昼間の1/3〜1/4程度)な夜間電気エネルギーを利用して24時間暖房することができるというメリットもある。
【0058】
<14>床下の地中に電気蓄熱型暖房プレートを埋設してなる<1>〜<13>のいずれかに記載の建物。電気蓄熱型暖房プレートを設置すると、この装置により調整された熱が直接地熱として蓄えることができる。さらに居室(3)にはこの装置の設置スペースが不必要となるため、広い居室空間を確保することができる。
【0059】
<15>電磁調理器(IH調理ヒーター)を設置してなる<1>〜<14>のいずれかに記載の建物。電磁調理器を用いると、居室(3)で二酸化炭素及び水分等の発生をさらに最小限にすることができるため、これらを居室(3)から排出するための余分な外気を取り入れる必要がない。従って、居室環境と外気との通気を必要最低限に維持することができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の建物は、断熱材(21)に包まれた構造材等の熱容量のみならず、地中の大きな熱容量をも最大限に活用できるため、長時間にわたって外気の影響を受けにくい。よって、冷暖房設備を最小限で稼働させても、夏涼しく、冬暖かい環境を維持することができる。
また、床下空間(1)に直接外気を導入することがないので、床下で結露が生じることがなく、万が一、床下空間(1)等で結露が発生した場合でも、排出口(4)から居室(3)の空気が床下空間(1)等に流入するので、速やかに乾燥状態に戻すことができる。よって、躯体内部において結露の心配がない。
さらに、本発明の建物は、地熱等の授受が行われると同時に、居室(3)に吸気口(5)を通して常に新鮮なの空気が導入されるため、特別な局所排気装置以外に、さらに換気装置を設ける必要がないというメリットもある。
従って、本発明の建物は、結露の心配がなく、極めて簡便に省エネルギー化を達成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】根太レス工法で施工した本発明の建物の基本構造を模式的に示す縦断面図である。
【図2】土台(20)に欠き込みを設けることにより形成した連通箇所を模式的に示す斜視透過図である。
【図3】根太(22)を用いることにより連通箇所を形成し、通気制御口(8)を壁内空間(2)に設けた本発明の建物の基本構造を模式的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 床下空間
2 壁内空間
3 居室
4 排出口
5 吸気口
6 排気口
7 小屋裏空間
8 通気制御口
9 外気通気空間
10 屋根通気空間
11 棟換気口
12 天井懐空間
13 強制排気装置
14 強制吸気装置
15 熱交換装置
16 基礎
17 床材
18 壁材
19 天井材
20 土台
21 断熱材
22 根太

Claims (4)

  1. 地中と熱伝導可能に配され、かつ外気と遮断された床下空間(1)と、
    床下空間(1)と連通し、かつ構造材の外気側に断熱材(21)を貼設してこの断熱材(21)と壁材(18)との間に形成される壁内空間(2)と、
    居室(3)から床下空間(1)へ排気するための排出口(4)と、
    屋外から居室(3)に吸気するための吸気口(5)と、
    壁内空間(2)から屋外へ排気するための排気口(6)とを設けてなることを特徴とする建物。
  2. さらに、排気口(6)に強制排気装置(13)を設置し、かつ/又は吸気口(5)に強制吸気装置(14)を設置してなる請求項1に記載の建物。
  3. さらに、壁内空間(2)に通気制御口(8)を配してなる請求項1又は2に記載の建物。
  4. 通気制御口(8)の通気断面積が7cm2以下である請求項3に記載の建物。
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