JP3549948B2 - 遮水材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、地中に掘削したボーリング孔内に挿入した保孔管と、そのボーリング孔内壁との間のすき間を密封して地下水の流出を防止する場合など、孔やすき間から流出する水を遮断する場合に用いられる遮水材及びその遮水材を用いた遮水具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地中に掘削したボーリング孔に保孔管を挿入し、その保孔管とボーリング孔内壁との間のすき間を密封する方法として、従来から一般に行われている方法は、ベントナイトペレットとセメントミルクを所望の深度と厚さに交互に投入して凝固させることにより遮水するという方法である。
【0003】
また、簡易な遮水手段として、吸水によって膨潤・膨張する性質を有するポリアクリル酸エステルと合成ゴムからなる帯状の膨張材を保孔管に巻き付け、これをボーリング孔内の水中に挿入して膨張させ、すき間を閉塞して遮水する方法も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記のベントナイトペレットとセメントミルクを用いる方法は、凝固した遮水構造物を外部から確認することが困難であるため、設計したとおりに出来上がっているかどうかの信頼性に乏しく、またコンクリート輸送管を直接前記のすき間に挿入してベントナイトペレットやセメントミルクを打込まなければならないので、装置が大掛りになるという欠点がある。
【0005】
また、前述の帯状の膨張材を巻付ける遮水方法は、その膨張材が水を吸収して一時的にはかなり膨張するが、膨張成分が水中に溶出すると収縮してしまったり、水がなくなると収縮してしまうという欠点がある。
【0006】
そこで、この発明は、上記のごとき問題の無い遮水材及びその遮水材を用いた遮水具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための遮水材は、セメント又はベントナイトのいずれか一方又は両方に、高分子水溶性エーテル化合物等の高分子系混和剤及び減水剤を添加した混練物を成形し、これを乾燥・固化させてなり、吸水により膨張し、その膨張状態のまま凝結する性質を有するようにしたものである。なお、必要に応じて細骨材を添加してもよい。
【0008】
また、上記の混練物に、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルを含む粒状のS.B.R.系ゴム等からなる膨張促進剤を添加してもよい。
【0009】
前記の目的を達成するための遮水具は、パイプ等でなる軸部材に所定の間隔をおいて一対の固定ツバを設け、上記軸部材のまわりにおいて上記各ツバの内面にそれぞれ吸水性膨張ゴム層を設けると共に、上記両ゴム層の間に上述の遮水材を介在し、上記吸水性膨張ゴム層として、上記遮水材より膨張速度の大きいものを用いた構成としたものである。
【0010】
上記の固定ツバの内側に可動ツバを嵌め、固定ツバと可動ツバの間に上記の吸水性膨張ゴム層を介在した構成、更に上記可動ツバと遮水材との間に同様の吸水性ゴム層を介在した構成とすることができる。
【0011】
【作用】
上述の遮水材は、これを遮水すべき孔やすき間に充填すると、その孔内或いはすき間内の水を吸水して、セメント(又はベントナイト)を含んだ高分子系混和材が膨張・膨潤して軟化・流動化する一方、セメント(又はベントナイト)が水と水和反応を生じて全体が膨張した状態で凝結・硬化する。これにより孔やすき間が閉塞される。凝結・硬化前に水による洗い出しを受けても、セメント、ベントナイト、骨材等は高分子系混和剤の作用により分離することがない。
【0012】
なお、減水剤は、成形品に必要な粘度を保持させると共に、前記の混練物を所定の寸法形状に成形したのち乾燥固化させてもセメント(又はベントナイト)の凝結を生じさせることがない。
【0013】
また、上述の遮水具は、その遮水具全体を遮水すべき孔やすき間に挿入すると、吸水性膨張ゴム及び遮水剤が吸水して膨張・膨潤を開始するが、吸水性膨張ゴムの方が速い速度で膨張して固定ツバに沿った上下2箇所で孔或いはすき間を閉塞する。遮水材は、その閉塞された空間内で、膨張・膨潤すると共に、軟化・流動化し、更に凝結・硬化して孔或いはすき間を閉塞する。
【0014】
なお、可動ツバを採用したものは、その可動ツバと固定ツバとの間に介在した吸水性膨張ゴム層の膨張により可動ツバが内側に押され、吸水により膨潤をはじめる遮水材を圧縮し、該遮水材の径方向への体積増加率及び膨張圧力を増大させる。
【0015】
更に、上記の構成に加えて、可動ツバと遮水材との間にも吸水性膨張ゴム層を介在させたものは、遮水材の径方向への体積増加率及び膨張圧力を一層増大させる。
【0016】
【実施例】
図1に示したものは遮水材1の一例であり、この遮水材1は遮水すべき孔やすき間の形状及び大きさに応じて成形される。図示の場合は、内径50mm、外径80mm、厚さ50mmに成形され、乾燥・固化したものである。
【0017】
上記の遮水材1は、ポルトランドセメント1kgに高分子系混和剤30〜100gを添加して混合したのち、減水剤200mlを添加して混練し、しかるのちに成形金型を用いて前記の形状に成形したのち、乾燥・固化させたものである。
【0018】
なお、ポルトランドセメントに代えて、或いはポルトランドセメントと共にベントナイトを用いることができる。
【0019】
上記の高分子系混和剤は、高分子水溶性エーテル化合物である。この高分子系混和剤は、セメント、骨材などの混練物の水による洗い出しや材料の分離が生じないように抵抗性をもたせる作用があり、吸水により膨張・膨潤する性質がある。
【0020】
図2は上記高分子系混和材の添加量に対する遮水材1の硬化時間の関係を示し、図3は上記高分子系混和剤の添加量に対する遮水材1の硬化時間の関係を示す。図4は上記の高分子系混和材に膨張促進剤としてポリアクリル酸エステルを添加した場合の遮水剤1の膨張率である。
【0021】
該膨張促進剤の添加により一層膨張が促進されると共に、これにより遮水材1の膨張率を制御することができる。
【0022】
図5は、膨張促進剤として、前記のポリアクリル酸エステルのほかに更にポリアクリル酸エステルを含む粒状S.R.B.系ゴムを添加した場合である。
【0023】
上記の遮水材は、それ単体で使用してもよいが、通常は作業の便宜等を考慮して図6に示した第2実施例のごとき構成の遮水具に組込んで使用に供される。
【0024】
図6に示した遮水具10は、軸部材2のまわりに前記の3個の遮水材1を挿通し、その遮水材1の上端面と下端面に同一の半径を有するドーナツ形の吸水性ゴム層3を重ね、その吸水性ゴム層3の内径面を軸部材2に接着剤4で固定する。
【0025】
また、上記各吸水性ゴム層3にほぼ同一半径の固定ツバ5を重ね、その固定ツバ5を接着剤4により軸部材2に固定している。
【0026】
上記の吸水性膨張ゴム層3は、ポリアクリル酸エステルと合成ゴムから成り、吸水すると、前述の遮水材1よりも速い速度で膨張する性質を有するものであって、例えば「ナイスシール」の商品名で市販されているものである。
【0027】
なお、輸送時その他の取扱い時において、遮水材1を保護するために、伸縮性ある筒状のネット6を両ツバ5間にわたり被せている。
【0028】
上記構成の遮水具10を、図7に示すようにボーリング孔7の内周面と保孔管8との間のすき間を遮水するために用いる場合は、前記の軸部材1としては、保孔管8を用い、予め測定した地盤中の不透水層9の位置に、前述の遮水具10を取付けておく。
【0029】
その保孔管8をボーリング孔7内に挿入して遮水具10を不透水管9に位置せしめる。遮水材1及びその上下の吸水性膨張ゴム層3が地下水に触れると、まず膨張ゴム層3が膨張してボーリング孔7の内周面に密着し、ツバ5に沿った二面でボーリング孔7内を制限する。その後遮水材1が膨張・膨潤して、更に軟化・流動化し、前記の膨張ゴム層3で制限された範囲内のボーリング孔7内で充満し、ボーリング孔7の内壁に密着した状態で凝結・硬化する。
【0030】
その後、膨張ゴム層3は、収縮するが、その時点では遮水材1が凝結・硬化しているので、差支えない。
【0031】
次に、図8に示した第3実施例の遮水具は、前記の構成に加える吸水性膨張ゴム層3と遮水材1との間の軸部材2のまわりに可動ツバ5’を介在したものである。
【0032】
上記の吸水性膨張ゴム層3が吸水により膨張すると、両方のツバ5、5’間で半径方向外方へ膨張すると共に、軸部材2の軸方向に沿って遮水材1の方向に膨張する。このため、遅れて膨潤・膨張を開始する遮水材1を圧縮させる。このため、遮水材1の半径方向への体積増加率及び膨張圧力を増大させ、ボーリング孔7の内壁との間の間隙を密に閉塞する。
【0033】
図9に示した第4実施例の遮水具は、前記第3実施例の可動ツバ5’に内向きの筒部5aを設け、その筒部5aを軸部材2に摺動自在に挿入し、更にその筒部5aのまわりにおいて可動ツバ5’と遮水材1との間に同様の吸水材膨張ゴム層3’を介在したものである。
【0034】
上記構成によると、膨張ゴム層3’も遮水材1の圧縮作用を行うので、遮水材1の半径方向への体積増加率及び膨張圧力が一層増大する。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、この発明の遮水材は吸水して膨張・膨潤し、軟化・流動化するだけでなく、同時にセメント又はベントナイトが水と反応することにより、膨張状態のまま凝結・硬化するので、長期にわたり高剛性の遮水を行うことができる。
【0036】
また、上記遮水材を用いた遮水具は、その両端に膨張速度の速い吸水性膨張ゴム層を備え、吸水時にその膨張ゴム層により制限された空間ができるので、遮水材は外部にはみ出すことなく、その空間内で膨張し、孔又はすき間の周壁に強い押圧力を及ぼして密着し、長期にわたり確実に遮水する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の遮水材の斜視図
【図2】高分子系混和剤の添加量と硬化時間の関係図
【図3】高分子系混和剤の添加量と膨張率の関係図
【図4】高分子系混和剤に膨張促進剤を加えた場合の添加量と膨張率の関係図
【図5】高分子系混和剤に他の膨張促進剤を加えた場合の添加量と膨張率の関係図
【図6】第2実施例の遮水具の断面図
【図7】同上の使用状態の断面図
【図8】第3実施例の遮水具の断面図
【図9】第4実施例の遮水具の断面図
【符号の説明】
1 遮水材
2 軸部材
3、3’ 吸水性膨張ゴム層
4 接着剤
5 固定ツバ
5’ 可動ツバ
5a 筒部
6 ネット
7 ボーリング孔
8 保孔管
9 不透水層
10 遮水具

Claims (5)

  1. セメント又はベントナイトのいずれか一方又は両方に、高分子水溶性エーテル化合物等の高分子系混和剤及び減水剤を添加した混練物を成形し、これを乾燥・固化させてなり、吸水により膨張し、その膨張状態のまま凝結する性質を有することを特徴とする遮水材。
  2. 上記混練物に、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルを含む粒状のS.B.R.系ゴム等からなる膨張促進剤を添加したことを特徴とする請求項1に記載の遮水材。
  3. パイプ等でなる軸部材に所定の間隔をおいて一対の固定ツバを設け、上記軸部材のまわりにおいて上記各ツバの内面にそれぞれ吸水性膨張ゴム層を設けると共に、上記両ゴム層の間に請求項1又は2に記載の遮水材を介在し、上記吸水性膨張ゴム層として、上記遮水材より膨張速度の大きいものを用いたことを特徴とする遮水具。
  4. パイプ等でなる軸部材に所定の間隔をおいて一対の固定ツバを設け、上記固定ツバの内側に可動ツバを嵌め、上記固定ツバと可動ツバとの間の該軸部材のまわりに吸水性膨張ゴム層を介在し、上記両可動ツバの間に請求項1又は2に記載の遮水材を介在し、上記吸水性膨張ゴム層として、上記遮水材より膨張速度の大きいものを用いてなる遮水具。
  5. 上記の各可動ツバと遮水材との間に上記と同じ吸水性膨張ゴム層を介在したことを特徴とする請求項4に記載の遮水具。
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