JP3547275B2 - 脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族ポリエステルの製造方法に関し、更に詳しくは、効率的に製造することにより色調、耐加水分解性等の品質に優れた脂肪族ポリエステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃プラスチックの堆積による環境破壊が深刻になり、安定さゆえに用いられていたプラスチック樹脂は法的に規制されつつある。このため、生分解性を有する脂肪族ポリエステルが注目されている。特に、脂肪族ポリエステルの1つであるポリカプロラクトン、特に低分子量のものは、ウレタンやポリエステルの原料、塗料等の原料として工業的に重要な物質である。生分解性を有するポリカプロラクトンの実用例としては、コンポスト用のビニール袋、釣り糸、ゴルフ用のティーなどがある。
【0003】
また、脂肪族ポリエステルは、高い結晶性、且つ融点が比較的低いという特性を有するため、上記生分解性の用途以外にも、人体各部の型取りを行なう用途、人体にフィットさせて使用する用途にも最適な材料として幅広く用いられている。例えば、倍力操作用物体(特開昭60−240692号公報)、プラスチック性粘土(特開昭61−42679号公報)、医療用ギブス(特開昭58−81042号公報)、スプリント剤、放射線照射用フェイス用マスク、あるいは、かつらの型取り剤(特開昭60−215018号公報)などがある。
【0004】
このような脂肪族ポリエステルの製造方法としては、環状エステルモノマーをアルカリ金属系化合物(特公昭40−26557号公報、U.S.P3,021,314号)、アルカリ土類金属化合物(U.S.P3,021,310号、3,021,311号)、スズ系化合物(特公昭41−19559号公報、特公昭64−1491号公報)、チタン系化合物、アルミニウム系化合物(特公昭43−2473号公報)などの各種金属化合物を用いて開環重合させる方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法は重合速度が非常に遅いため、長時間加熱して反応を続ける必要がある。従って長時間の高温下で生成した脂肪族ポリエステルが黄色に着色するという問題があった。このため、H.K.Hall,Jr.等(Polymer Bulletin 1990,24,227)は、(アセテート)トリフェニルスズを用いて反応時間を短縮させ、重合率90%を達成した。しかしこの方法では、用いる金属化合物量が0.25mol%以上と大量であり、ポリマー中に金属残存量が多く、熱安定性、耐加水分解性ひいては保存安定性が不十分となる。
【0006】
また、脂肪族ポリエステルは生分解性を有すると同時に、熱分解や加水分解も受けやすい。しかし、従来の合成法で脂肪族ポリエステルを合成すると、酸価が0.70mgKOH/g以上のポリマーとなる。酸価が高い脂肪族ポリエステルは、熱安定性、加水分解安定性が悪く、保存時の分子量低下や成形の際で加熱により低分子量化し樹脂の性質を損ねる場合がある。
これを解決すべく、ラクトン類の連続重合法として、ニーダーやエクストルーダーのようなスクリューまたはパドル型の撹拌翼を反応器内部に有し、反応系を撹拌し、且つ内容物を原料仕込口から製品取出し口に移送する装置を使用する方法がある。例えば、ラクトン類を原料とする弾性ポリエステルの連続製造方法が、特開昭61−281124、61−283619、61−287922、62−20525、60−27425、特開平2−302428、2−302429、2−302433、2−302434号公報に開示されている。
しかし、これらの方法はいずれも動的撹拌器を用いる反応装置である。高分子量の脂肪族ポリエステルを連続的に製造すると、反応物が高粘度化し、均一的な撹拌が困難になるが、この点が解決されていない。さらに、水分量、酸価等によって反応速度が異なる反応系では、これらのファクターの正確な制御が困難で、臨機応変に反応系の制御をすることが難しい。従って、生成したポリマーの滞留時間の調整も難しく、必要以上の加熱が生じたり、場合によっては反応時間の不足が起こる。
【0007】
従って従来技術に伴う問題点を解決すべく、効率的な生産により色調に優れるとともに、耐熱性および耐加水分解性に優れた脂肪族ポリエステルを製造する方法の開発が望まれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者等は環状エステルモノマーの開環重合について鋭意検討した結果、環状エステルモノマーに含まれる水分含有率と酸価が、重合速度および得られる分子量に大きな影響を及ぼしていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、水分含有率が80ppm以下であり、かつ酸価が0.10mgKOH/g以下の環状エステルモノマーを開環重合させることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するものである。また、重合開始剤にアルコールを用いて開環重合させることを特徴とする前記脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するものである。また、金属化合物を重合触媒に用いることを特徴とする前記脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するものである。また、環状エステルモノマーがラクトンまたはラクチドのいずれか1種以上である前記脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するものである。更に、連続重合装置に環状エステルモノマーを連続的に供給することを特徴とする前記脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するものである。加えて、酸価が0.70mgKOH/g以下の脂肪族ポリエステルであることを特徴とする前記脂肪族ポリエステルの製造方法を提供するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
なお、「ppm」は重量ppmを表し、「mgKOH/g」はモノマーまたはポリマー1g中の酸を中和するのに要するKOHの量(mg)を表わすものとする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法で使用する環状エステルモノマーは、ラクトン、ラクチドである。ラクトンは分子内環状エステル構造を有する化合物であり、具体的には、ε−カプロラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、ドデカノラクトン、β−プロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が例示できる。また本発明でいうラクチドとは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の2分子環状エステルであり、具体的には、乳酸、グリコール酸、エチルグリコール酸またはジメチルグリコール酸等の2分子環状エステルであるジグリコリド、ジラクチド、ジエチルグリコリド、ジメチルグリコリド、α,α−ジメチルグリコリド、L−ジラクチド、D−ジラクチド、D,L−ジラクチド,MESO−ジラクチド等が例示できる。本発明では、これらを単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0011】
本発明では、環状エステルモノマーの水分含有率が80ppm以下であることが好ましく、より好ましくは60ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。環状エステルモノマー中の水分は、重合速度と分子量の両方に影響を及ぼすため、水分含有率を80ppm以下に減少させると重合速度が速くすると共に高分子量のポリマーを得ることができる。
【0012】
環状エステルモノマーの脱水方法としては、モレキュラシーブス、活性アルミナなどをカラムに詰めモノマーを流し込む方法、モレキュラシーブスをモノマー中に直接投入し、しばらく静置する方法、モレキュラシーブスを投入し減圧下放置する方法、あるいは金属ナトリウム、CaH上で減圧蒸留する方法、ビス(4−イソシアナートフェニル)メタンオリゴマー上で減圧蒸留する方法、芒硝を入れ攪拌する方法などがある。これらによって、水分含有率80ppm以下の環状エステルモノマーを得ることができる。
【0013】
本発明では、環状エステルモノマーの酸価は、0.10mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.06mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.03mgKOH/gである。0.10mgKOH/g以下であれば、酸による重合反応の阻害を回避することができる。更に、モノマー中の酸はポリマー中に残存するため、酸価の低いモノマーを使用することにより、ポリマーの酸価を低下させ、加水分解や着色等の品質の低下を防止することができる。加えて、酸は重合速度を低下させるため、0.10mgKOH/g以下であれば、品質に優れる脂肪族ポリエステルを効率よく短時間で製造することができる。
【0014】
環状エステルモノマーの脱酸処理には、CaH上で減圧蒸留する方法、脱酸剤を用いる方法などがある。脱酸剤としては、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム−水酸化マグネシウム共沈物、塩基性アルミニウム・ナトリウム・カーボネート、合成ハイドロタルサイト、6ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウムとアルミナの固溶体などが用いられる。脱酸能は、酸を含む化学物質と酸そのものの種類により、用いる脱酸剤によって大きく異なるが、環状エステルモノマー中の酸を取り除く場合には、脱酸剤は合成ハイドロタルサイト、酸化マグネシウムとアルミナの固溶体などが好ましい。これらによって、環状エステルモノマーの酸価を0.10mgKOH/g以下にすることができる。なお、本発明においては、水分含有率と酸価が共に少ないことが好ましい。
【0015】
本発明では、上記環状エステルモノマーの開環重合に際し、アルコールを重合開始剤として使用することが好ましい。アルコールを開始剤として重合系に存在させることにより、系内に含まれる水分が開始剤として作用する割合が相対的に低下するので、末端にカルボキシル基を有するポリマーの生成が抑えられ、品質のよい脂肪族ポリエステルを製造することができる。
使用できるアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノールなどの他、エチレングリコール、1,3−プロパンジール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類を使用することができる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明では、環状エステルモノマーの開環重合に際し、金属化合物を重合触媒に用いることが好ましい。例えば、表−1に示す金属化合物を使用することができる。尚、表中、RおよびR’は、各々水素原子または炭素数1〜40のアルキル基、アシル基もしくはアリル基を示し、同一であっても異なっていてもよい。
【0017】
【表1】
Figure 0003547275
【0018】
表−1以外の金属化合物も含めて、具体的には、トリ(イソプロポキシ)アルミニウム、ジ(イソプロポキシ)エチルアルミニウム、イソプロポキシジエチルアルミニウム、塩化アルミニウム、テトラ(ブトキシ)チタン、テトラ(プロキシ)ジルコニウム、ジ(ブトキシ)亜鉛、ジ(2,2−ジメチル−3,5−ヘプタンジオネート)亜鉛、塩化亜鉛、テトラ(アセテート)スズ、トリ(アセテート)ブチルスズ、ジ(アセテート)ジブチルスズ、アセテートトリブチルスズ、トリ(アセテート)フェニルスズ、ジ(アセテート)ジフェニルスズ、(アセテート)トリフェニルスズ、ジ(メトキシ)ジブチルスズ、メトキシトリブチルスズ、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジブチルスズ、ジ(ラウレート)ジブチルスズ、ジ(オクタノエート)スズ、ジ(2,4−ペンタンジオネート)スズ、二塩化スズ、四塩化スズ、塩化鉄などが用いられる。これらのうち特にアルミニウム化合物、スズ化合物が好ましい。
【0019】
本発明では、重合開始剤としてアルコールを使用すると共に金属化合物を重合触媒として併用することが、触媒活性を向上させるためにより好ましい。
重合触媒と重合開始剤の組み合わせとして、例えば、1,5−ペンタンジオールとジ(ラウレート)ジブチルスズ、1,4−ブタンジオールとアセテートトリブチルスズ、エチレングリコールとトリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ等がある。組み合わせにより、金属化合物を単独で用いた場合よりも重合速度が速くなる。
【0020】
本発明では、環状エステルモノマーの開環重合に際し、連続重合装置に環状エステルモノマーを連続的に供給することが好ましい。
使用する連続重合装置としては、撹拌槽型反応器やプラグフロー型の反応器およびこれらを組み合わせたものを使用することができる。より具体的には、撹拌槽型反応器、スタティック・ミキサー、塔型反応器等を組み合わせた装置を使用することができる。
【0021】
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、得られる脂肪族ポリエステルの酸価は、0.70mgKOH/g以下であることが好ましく、特には0.50mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリマーの酸価は、耐熱性、耐加水分解性に関わり、酸価が低いほど安定性が向上する。本発明では酸価、水分含有率が低い環状エステルモノマーの使用をすることで、高効率で高分子量の脂肪族ポリエステルを得ることができ、しかも得られた脂肪族ポリエステルは高品質のものとなる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
L−乳酸を約200℃に加熱し減圧下で脱水縮合することにより、低分子量の乳酸オリゴマーを得た。これをSb触媒の存在下で解重合することによりラクチドを得た。
このラクチドにキョウワード2015(酸化マグネシウムとアルミナの固溶体:共和化学工業(株)製)を5wt%入れ2時間攪拌し、これにモレキュラシーブスを入れ一晩静置し乾燥させ、酸価0.01mgKOH/g、水分含有率32ppmのラクチドモノマーを得た。このモノマー144.4g(90wt%−1,2−ジクロロベンゼン溶液、902.5mmol)をN雰囲気下、180℃まで加熱し、そこへ1,4−ブタンジオール0.08ml(0.90mmol)、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ1.0×10−2ml(0.018mmol)を添加しポリラクチドを合成した。重合は3時間行ない、このときの重合率は89.8%であった。
得られたポリ乳酸の数平均分子量は97,500で、酸価は0.21mgKOH/gであった。
【0024】
(実施例2)
ε−カプロラクトンにキョウワード500−7(合成ハイドロタルサイト:共和化学工業(株)製)を5wt%を入れ2時間攪拌し、ε−カプロラクトンの酸価を約0.20mgKOH/gから0.03mgKOH/gまで脱酸し、モレキュラシーブスにより乾燥させた。得られた酸価0.03mgKOH/g、水分含有率60ppmのε−カプロラクトン100ml(902.4mmol)をN雰囲気下、180℃まで加熱し、エチレングリコール0.1ml(1.81mmol)、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ0.2×10−2ml(0.0036mmol)を添加しポリカプロラクトンを合成した。重合は3時間行ない、このときの重合率は99.5%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は45,800で、酸価は0.38mgKOH/gであった。
【0025】
(実施例3)
実施例2のキョウワード500−7に代えて、キョウワード1015(ハイドロタルサイト類化合物:共和化学工業(株)製)を5wt%用い、その他は実施例2と同様にしてε−カプロラクトンの酸価を約0.20mgKOH/gから0.05mgKOH/gまで脱酸し、その後モレキュラシーブスを入れ一晩静置し乾燥させた。得られた酸価0.05mgKOH/g、水分含有率60ppmmのε−カプロラクトン100ml(902.4mmol)をN雰囲気下、180℃まで加熱し、そこへ1,4−ブタンジオール0.08ml(0.90mmol)、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ1.0×10−2ml(0.018mmol)を添加しポリカプロラクトンを合成した。重合は4時間行ない、このときの重合率は99.6%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は75,600で、酸価は0.34mgKOH/gであった。
【0026】
(実施例4)
L−乳酸を用い実施例1と同様にして予めラクチドを得た。このラクチドを実施例2と同様にキョウワード500−7、モレキュラシーブスを用いて脱酸、脱水し、酸価0.04mgKOH/g、水分含有率12ppmのモノマーを得た。このモノマー144.4g(90wt%−1,2−ジクロロベンゼン溶液、902.5mmol)をN雰囲気下、180℃まで加熱し、そこへ1,4−ブタンジオール0.08ml(0.90mmol)、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ1.0×10−2ml(0.018mmol)を添加しポリラクチドを合成した。重合は2時間行ない、このときの重合率は83.5%であった。
得られたポリ乳酸の数平均分子量は99,200で、酸価は0.18mgKOH/gであった。
【0027】
(実施例5)
ε−カプロラクトンをCaH上で減圧蒸留し、その後モレキュラシーブスを入れ一晩静置し乾燥させた。得られた酸価0.01mgKOH/g、水分含有率40ppmのモノマーを用い、実施例1に記載の方法と同様にして1,4−ブタンジオールとトリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズとを添加しポリカプロラクトンを合成した。重合は3時間行ない、このときの重合率は99.6%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は80,300で、酸価は0.19mgKOH/gであった。
【0028】
(実施例6)
実施例2と同じ脱酸・脱水処理したε−カプロラクトンを用い、スタティック・ミキサーを備えた連続重合装置において、ε−カプロラクトンを1.5kg/h、予め調製しておいた触媒溶液(トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ、エチレングリコールおよびε−カプロラクトンの重量比1.15:6.0:1000の混合物)を0.15kg/hで供給し、反応器温度174〜180℃の条件で重合をおこなった。このときの重合率は96.8%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は68,400で、酸価は0.31mgKOH/gであった。
【0029】
(比較例1)
ε−カプロラクトンにモレキュラシーブスを入れ一晩静置し乾燥させ、水分含有率45ppm、酸価0.02mgKOH/gのε−カプロラクトンを得た。このε−カプロラクトン100ml(902.4mmol)に水分含有率が600ppmとなるように水を加え、180℃まで加熱し、そこへエチレングリコール0.05ml(0.90mmol)、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ0.5×10−2ml(0.0090mmol)を添加しポリカプロラクトンを合成した。重合は6時間行ない、このときの重合率は58.2%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は13,500で、酸価は2.2mgKOH/gであった。
【0030】
(比較例2)
ε−カプロラクトン(酸価0.20mgKOH/g)に実施例1と同様にキョウワード2015とモレキュラーシブスを用いて脱酸、脱水し、酸価0.06mgKOH/g、水分含有率200ppmのε−カプロラクトンを得た。このε−カプロラクトン100ml(902.4mmol)をN雰囲気下、180℃まで加熱し、エチレングリコール0.05ml(0.90mmol)、トリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズ0.5×10−2ml(0.0090mmol)を添加しポリカプロラクトンを合成した。重合は6時間行ない、このときの重合率は98.7%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は43,500で、酸価は0.78mgKOH/gであった。
【0031】
(比較例3)
比較例2のトリ(2−エチルヘキサノエート)ブチルスズに代えてトリ(アセテート)ブチルスズを用いた以外は、比較例2と同様に操作した。なお、ε−カプロラクトンは、酸価0.06mgKOH/g及び水分含有率200ppmであり、ε−カプロラクトン100mlのN雰囲気下、180℃での重合時間は6時間重合であった。このときの重合率は52.1%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は25,700で、酸価は0.76mgKOH/gであった。
【0032】
(比較例4)
実施例2と同じ脱酸・脱水処理したε−カプロラクトンを使用し、モノマー中に300ppmの水添加を行った。得られた酸価0.03mgKOH/g、水分含有率360ppmのモノマーを用い、実施例6と同様の条件で連続重合をおこなった。重合率は97.7%であった。
得られたポリカプロラクトンの数平均分子量は32,800で、酸価は1.2mgKOH/gであった。
【0033】
(結果)
(1)実施例1、3、4、5より、原料モノマーの水分含有率の低下に対応して、分子量が高く、酸価の低い脂肪族ポリエステルを得ることができた。
(2)実施例2の結果から、触媒の使用量が0.0036mmolと極めて低濃度であっても、重合率99.5%と優れた効果が得られた。
(3)実施例3と6との比較より、連続重合装置の使用によっても、同程度の分子量の脂肪族ポリエステルを製造することができた。
(4)各実施例と比較例1、2、3とを比較すると、水分含有率が高い原料モノマーを使用すると、重合反応に要する時間が長くなり、得られた脂肪族ポリエステルの分子量も低下した。
(5)実施例6と比較例4との比較から、連続重合装置を使用しても、原料モノマーの水分含有率に比例して、得られた脂肪族ポリエステルの分子量が低下した。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、モノマー中の水分量および酸価を一定値以下にすることで、高い重合速度で酸価の低い脂肪族ポリエステルを製造することが可能となる。

Claims (6)

  1. 水分含有率が80ppm以下であり、かつ酸価が0.10mgKOH/g以下の環状エステルモノマーを開環重合させることを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
  2. 重合開始剤にアルコールを用いて開環重合させることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  3. 金属化合物を重合触媒に用いることを特徴とする請求項1または2記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  4. 環状エステルモノマーがラクトンまたはラクチドのいずれか1種以上である請求項1から3のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  5. 連続重合装置に環状エステルモノマーを連続的に供給することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  6. 酸価が0.70mgKOH/g以下の脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
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